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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1350229
審判番号 不服2017-6367  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-01 
確定日 2019-03-28 
事件の表示 特願2014-239280「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016- 97944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年11月26日の出願であって、平成28年3月18日付けで拒絶理由が通知され、同年5月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月13日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年1月24日付けで平成28年10月20日付け手続補正書でした補正を却下する旨の補正の却下の決定がされると共に拒絶査定がされ、平成29年5月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年5月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年5月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 平成29年5月1日付けの手続補正の内容
平成29年5月1日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年5月30日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものである。
なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
骨格用樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材に設けられ、タイヤ周方向に延びる補強コードと、被覆用樹脂材料で形成され、前記補強コードを被覆すると共に前記タイヤ骨格部材に接合された被覆用樹脂層と、前記被覆用樹脂材料よりも弾性率が高い接合用樹脂材料で形成され、前記補強コードと前記被覆用樹脂層との間に配置されて前記補強コードと前記被覆用樹脂層とを接合し、層厚が前記被覆用樹脂層よりも薄い接合用樹脂層と、を備える被覆コード部材と、
を有し、
前記タイヤ骨格部材は、ビード部と、前記ビード部のタイヤ径方向外側に連なるサイド部と、前記サイド部のタイヤ幅方向内側に連なるクラウン部と、を備え、
前記被覆コード部材は、前記補強コードが延びる方向と直交する方向の断面形状が略四角形状とされており、前記クラウン部の外周に螺旋状に巻回されると共にタイヤ幅方向に隣接する部分同士が接合されているタイヤ。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
骨格用樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材に設けられ、タイヤ周方向に延びる補強コードと、被覆用樹脂材料で形成され、前記補強コードを被覆すると共に前記タイヤ骨格部材に接合された被覆用樹脂層と、前記被覆用樹脂材料よりも弾性率が高い接合用樹脂材料で形成され、前記補強コードと前記被覆用樹脂層との間に配置されて前記補強コードと前記被覆用樹脂層とを接合する接合用樹脂層と、を備える被覆コード部材と、
を有し、
前記タイヤ骨格部材は、ビード部と、前記ビード部のタイヤ径方向外側に連なるサイド部と、前記サイド部のタイヤ幅方向内側に連なるクラウン部と、を備え、
前記被覆コード部材は、前記補強コードが延びる方向と直交する方向の断面形状が略四角形状とされており、前記クラウン部の外周に螺旋状に巻回されると共にタイヤ幅方向に隣接する部分同士が熱溶着によって接合されているタイヤにおいて、
前記接合用樹脂層は、層厚が前記被覆用樹脂層よりも薄い、タイヤ。」

2 本件補正の適否
2-1 本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「層厚が前記被覆用樹脂層よりも薄い」の位置を、主語として「前記接合用樹脂層は、」という記載を補い、文末の「タイヤ」の直前に移すことによって、請求項1に係る発明の特徴を明確にするものである。
また、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「隣接する部分同士が接合されている」を「隣接する部分同士が熱溶着によって接合されている」と、接合のされ方を熱溶着によるものに限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、特許法第17条の2第5項第4号に規定される明りようでない記載の釈明及び同法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2-2 独立特許要件の検討
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

(1)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
(ア)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/175453号(2014年10月30日国際公開、以下、「引用文献1」という。)には、「タイヤ」に関して、おおむね次の記載(以下、順に「記載事項1a」のようにいい、総称して「引用文献1の記載事項」という。)がある。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

1a 「技術分野
[0001] 本発明は、リムに装着されるタイヤに関する。」

1b 「背景技術
[0002] 従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材等を用いて形成された空気入りタイヤが用いられている。
[0003] 近年では、軽量化、成形の容易さ、リサイクルのし易さ等の理由から、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーといった熱可塑性の高分子材料をタイヤの材料として用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて形成された空気入りタイヤが開示されている。
[0004] 熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストであるが、特開2003-104008号公報のように、カーカスプライ等の補強部材を内包せずに均一な熱可塑性樹脂のみでタイヤを成形した場合、ゴム製の従来タイヤと同等の耐応力、耐内圧及び剛性を発揮することは容易には実現し難い。そのため、熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤには、従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能の実現が求められていた。
[0005] タイヤの耐久性を高める試みとしては、例えば、タイヤ本体(タイヤ骨格体)のトレッド底部のタイヤ半径方向外面に、補強コードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回した補強層を設けることにより、タイヤ本体の耐カット性や耐パンク性を改善する方法が提案されている(例えば、特開平03-143701号公報参照)。また、補強層(ベルト層)に用いられるスチールコード(ワイヤー)に関する技術として、ラジアルタイヤのカーカス層、ビード補強層、及びベルト層に用いられるタイヤ用スチールコード(例えば、特許第4423772号公報参照)や、スチールコード本体の周囲に熱可塑性樹脂中にエラストマーを分散させた熱可塑性エラストマー組成物を被覆したタイヤ補強用スチールコード(例えば、特開2010-53495号公報)が提案されている。」

1c 「発明が解決しようとする課題
[0006] 一般に、補強コードを用いる場合には、タイヤの性能上、タイヤ骨格体に補強コードが十分に固定されることが要求される。しかし、補強コードとしてスチールコード等の金属部材を用いた場合、通常の成型条件では補強コードとタイヤ骨格体との接着性を良好にすることは難しい。また、本発明者が検討したところ、タイヤ骨格体とスチールコード等の補強部材との接着耐久性を向上させることで、タイヤ自体の耐久性を向上させることができることを見出した。
[0007] これに対して、特許第4423772号公報に記載されたタイヤ用スチールコードは、ワイヤーで形成されたコアとシースとからなる撚り構造のスチールに対して熱可塑性エラストマー配合物を-充填するものである。しかしながら、このような技術はゴム製のラジアルタイヤに装着することを意図したものであり、特許第4423772号公報には、樹脂材料を用いたタイヤと補強部材との関係については開示されていない。また、特開2010-53495号公報に記載されたタイヤ補強用スチールコードもゴム製のラジアルタイヤへの装着を意図したものであり、タイヤ骨格体の形成に樹脂材料を用いたタイヤにおいて、補強部材とタイヤ骨格体との接着耐久性を向上させることについては開示されていない。
[0008] 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体を有し、耐久性に優れたタイヤを提供することを課題とする。」

1d 「課題を解決するための手段
[0009] 上記課題を達成するための具体的な手段は、以下の通りである。
樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格体と、該タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有し、前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、ホットメルト接着剤を含む接着層を介して、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性材料を含む被覆用組成物で被覆されているタイヤ。
[0009] なお、本明細書において、「樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、従来の天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムは含まない。
また、以下の樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士等、樹脂の主鎖を構成する骨格と共通する骨格を備えたものを意味する。
[0011] また、本明細書において「?」を用いて表される数値範囲は、「?」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。」

1e 「発明の効果
[0012] 本発明によれば、樹脂材料で形成されたタイヤ骨格体を有し、耐久性に優れたタイヤを提供することができる。」

1f 「[0099] 以下、図面に従って、本発明の実施形態に係るタイヤについて説明する。なお、以下に示す各図(図1A、図1B、図2、図3、及び図4)は、模式的に示した図であり、各部の大きさ及び形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
[第一の実施形態]
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10について説明する。図1Aは、第一の実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1Bは、リムに装着したビード部の断面図である。図1Aに示すように、第一の実施形態に係るタイヤ10は、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
[0100] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10は、リム20のビードシート21とリムフランジ22とに接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部(外周部)16と、からなるタイヤケース17を備えている。タイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料を用いて形成されている。
[0101] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、タイヤケース17は、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17Aを互いに向かい合わせ、タイヤ赤道面部分で接合することにより形成されている。
[0102] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10のビード部12には、従来の一般的な空気入りタイヤと同様に、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。また、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料であるゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。
[0103] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10のクラウン部16には、補強コードである樹脂被覆コード26が、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で、タイヤケース17の周方向に螺旋状に巻回されている。また、樹脂被覆コード26のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料であるゴムからなるトレッド30が配置されている。なお、樹脂被覆コード26の詳細については、後述する。」

1g 「[0108] 次に、図2を参照しながら、樹脂被覆コード26について説明する。図2は、第一の実施形態に係るタイヤのタイヤ回転軸に沿った断面図であり、樹脂被覆コードがタイヤケースのクラウン部に埋設された状態を示す。
図2に示すように、本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、樹脂被覆コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、その少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。そして、樹脂被覆コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する樹脂材料と密着した状態となっている。図2におけるLは、クラウン部16(タイヤケース17)に対する樹脂被覆コード26のタイヤ回転軸方向への埋設深さを示す。本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、樹脂被覆コード26のクラウン部16に対する埋設深さLは、樹脂被覆コード26の直径Dの1/2である。
[0109] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、樹脂被覆コード26は、スチール繊維を撚ったスチールコード(補強金属コード部材)27を芯として、そのスチールコード27の外周が、酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤を含む接着層25を介して、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物で被覆された構造を有している。樹脂被覆コード26のタイヤ径方向外周側には、ゴム製のトレッド30が配置されている。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
[0110] 本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、スチール繊維を撚ったスチールコード27の外周の全体を、酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤を含む接着層25を介して、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物で被覆した樹脂被覆コード26が、同種のポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料で形成されているタイヤケース17に、密着した状態で埋設されている。そのため、スチールコード27を被覆する被覆用組成物28とタイヤケース17との接触面積が大きくなり、樹脂被覆コード26とタイヤケース17との接着耐久性が向上し、その結果、タイヤの耐久性が優れたものとなる。
[0111] なお、本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、樹脂被覆コード26のクラウン部16に対する埋設深さLは、樹脂被覆コード26の直径Dの1/2であるが、1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることが特に好ましい。そして、樹脂被覆コード26の全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。樹脂被覆コード26の埋設深さLが、樹脂被覆コード26の直径Dの1/2を超えると、樹脂被覆コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。そして、樹脂被覆コード26の全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、樹脂被覆コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置された場合であっても、樹脂被覆コード26の周辺部に空気が入るのを抑制することができる。
[0112] スチールコード27を被覆する被覆用組成物28の層厚は、特に限定されるものではなく、平均層厚が0.2mm?4.0mmであることが好ましく、0.5mm?3.0mmであることが更に好ましく、0.5mm?2.5mmであることが特に好ましい。」

1h 「[0114] 以下、本発明の第一の実施形態に係るタイヤの製造方法について説明する。
[タイヤケース成形工程]
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次に、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように、接合金型を設置する。ここで、上記接合金型は、タイヤケース半体の接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている(図示せず)。次に、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを形成する熱可塑性樹脂材料(本実施形態では、ポリアミド系熱可塑性エラストマー)の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、上記接合部が溶融し、タイヤケース半体同士が融着し、これら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。
[0115][樹脂被覆コード成形工程]
次に、樹脂被覆コード成形工程について説明する。リールからスチールコード27を巻出し、その表面を洗浄する。次に、スチールコードの外周を、押出機から押し出したホットメルト接着剤(本実施形態では、酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤)で被覆する。そして、接着剤層が形成されたスチールコードの外周を、押出機から押し出した被覆用組成物(本実施形態では、ポリアミド系熱可塑性エラストマー)で被覆することで、スチールコード27の外周がホットメルト接着剤を含む接着層を介して被覆用組成物28で被覆された樹脂被覆コード26を形成する。そして、形成された樹脂被覆コード26をリール58に巻き取る。
[0116][樹脂被覆コード巻回工程]
次に、図3を参照しながら、樹脂被覆コード巻回工程について説明する。図3は、樹脂被覆コード加熱装置及びローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に樹脂被覆コードを設置する動作を説明するための説明図である。図3において、樹脂被覆コード供給装置56は、樹脂被覆コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置された、樹脂被覆コード加熱装置59と、樹脂被覆コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の樹脂被覆コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、及び第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、第1のローラ60又は第2のローラ64の表面は、溶融又は軟化した樹脂材料の付着を抑制するために、フッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。以上により、加熱された樹脂被覆コードはケース樹脂に強固に一体化される。
[0117] 樹脂被覆コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70及びファン72を備えている。また、樹脂被覆コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間を樹脂被覆コード26が通過する加熱ボックス74と、加熱された樹脂被覆コード26を排出する排出口76とを備えている。
[0118] 本工程では、まず、樹脂被覆コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風によって加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した樹脂被覆コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り、加熱(例えば、樹脂被覆コード26の温度を100℃?250℃程度に加熱)する。加熱された樹脂被覆コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された樹脂被覆コード26の被覆樹脂がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化し、タイヤケース樹脂と溶融接合してクラウン部16の外周面に一体化される。このとき、樹脂被覆コードは隣接する樹脂被覆コードとも溶融接合される為、隙間のない状態で巻回される。これにより、樹脂被覆コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。
[0119] 樹脂被覆コード26の埋設深さLは、樹脂被覆コード26の加熱温度、樹脂被覆コード26に作用させるテンション、及び第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、樹脂被覆コード26の埋設深さLが、樹脂被覆コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。
[0120] 次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤等を用いて接着する。なお、トレッド30には、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
[0121](作用)
本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで形成されたタイヤケース17の外周面に、スチールコード27を芯とし、このスチールコード27を、酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤を含む接着層25を介して、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物28で被覆した樹脂被覆コード26が巻回されている。
被覆用組成物28に含まれる熱可塑性材料は、タイヤケース17を形成する樹脂材料と同種のポリアミド系熱可塑性エラストマーであるため、被覆用組成物28とタイヤケース17とは接着性が高い。また、接着層25に含まれる酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤は、スチールコード27、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物28との接着性が高い。このように、樹脂被覆コード26がタイヤケース17を形成する樹脂材料と同種のポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物28で被覆されていると、異種の樹脂材料を用いる場合と比較して、樹脂被覆コード26とタイヤケースとの硬さの差が小さくなる。そのため、樹脂被覆コード26をタイヤケース17に十分に密着・固定することができる。
さらに、本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、スチールコード27を、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む被覆用組成物28で直接被覆するのではなく、スチールコード27及び被覆用組成物28の両方に対して高い接着性を示す酸変性オレフィン系樹脂を含有するホットメルト接着剤を含む接着層25を介している。そのため、スチールコード27は、被覆用組成物28に対して優れた引き抜き耐性を示す。その結果、タイヤ製造時に気泡が残存するのを効果的に防止することができ、走行時に補強金属コード部材が動くことを効果的に抑制することができる。」

1i 「実施例
[0142] 以下、本発明により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
[0143][実施例1]
上述の樹脂被覆コード成形工程に従い、平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)に、240℃で加熱溶融させた表1に記載のホットメルト接着剤A-1を、平均層厚が100μmとなるように付着させた後、押出機にて押し出した樹脂N-1で被覆し、冷却することにより、マルチフィラメントの外周がホットメルト接着剤A-1を含む接着層を介して被覆用組成物N-1で被覆された補強金属コードを得た。
得られた補強金属コードを用いて、上述の第一の実施形態と同様の方法により、タイヤを形成した。タイヤ骨格体の形成材料には、表1に記載のN-1を用いた。
[0144][実施例2?11、及び15]
実施例1において、ホットメルト接着剤A-1を、表1に記載のホットメルト接着剤に変更した以外は実施例1と同様にして、補強金属コード及びタイヤを作製した。」

1j 「[0163]
[表1]
・・・(略)・・・
[0164]
※表中の成分は、次のとおりである。
・A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」(マレイン酸変性オレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂)、融点:143℃)
・・・(略)・・・
・N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)」

1k 「



(イ)引用発明
a 引用文献1の記載事項を、実施例1に関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「実施例発明」という。)が記載されていると認める。

「平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)に、240℃で加熱溶融させたホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」を、平均層厚が100μmとなるように付着させた後、押出機にて押し出した樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で被覆し、冷却することにより、マルチフィラメントの外周がホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」を含む接着層を介して被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で被覆された補強金属コードを得、得られた補強金属コードを用い、タイヤ骨格体の形成材料には、樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」を用いて、第一の実施形態と同様の方法により形成したタイヤ。」

b 実施例発明における「タイヤ」は、「第一の実施形態と同様の方法により形成した」ものであるから、実施例発明における「タイヤ骨格体」は、「環状」(記載事項1d、1f及び1k参照。)である。
したがって、実施例発明における「タイヤ骨格体の形成材料には、樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」を用いて」は、「樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で形成された環状のタイヤ骨格体」と言い換えることができる。

c 実施例発明における「タイヤ」は、「第一の実施形態と同様の方法により形成した」ものであるから、実施例発明における「タイヤ骨格体」は、「リム20のビードシート21とリムフランジ22とに接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部(外周部)16と、からなるタイヤケース17」(記載事項1f及び1k参照。)である。
したがって、実施例発明における「タイヤ骨格体」は、「リム20のビードシート21とリムフランジ22とに接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部(外周部)16と、を備える」ものであるといえる。

d 実施例発明における「タイヤ」は、「第一の実施形態と同様の方法により形成した」ものであるから、実施例発明における「補強金属コード」は、「タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、その少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている」(記載事項1g参照。)ものである。
また、実施例発明における「補強金属コード」は、「図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された樹脂被覆コード26の被覆樹脂がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化し、タイヤケース樹脂と溶融接合してクラウン部16の外周面に一体化される。」(記載事項1h参照。)ものである。
さらに、上記cによると「タイヤケース17」は「タイヤ骨格体」である。
したがって、実施例発明における「補強金属コード」は、「平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)に、240℃で加熱溶融させたホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」を、平均層厚が100μmとなるように付着させた後、押出機にて押し出した樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で被覆し、冷却することにより、マルチフィラメントの外周がホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」を含む接着層を介して被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で被覆された」ものであって、「タイヤ骨格体に設けられ、図3の矢印R方向に回転するタイヤ骨格体のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられ」、「加熱された樹脂被覆コード26の被覆樹脂がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化し、タイヤ骨格体を形成する樹脂と溶融接合」するものである。

e 実施例発明における「タイヤ」は、「第一の実施形態と同様の方法により形成した」ものであるから、実施例発明における「補強金属コード」は、「図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された樹脂被覆コード26の被覆樹脂がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化し、タイヤケース樹脂と溶融接合してクラウン部16の外周面に一体化される。このとき、樹脂被覆コードは隣接する樹脂被覆コードとも溶融接合される為、隙間のない状態で巻回される。」(記載事項1h参照。)ものである。
また、上記cによると「タイヤケース17」は「タイヤ骨格体」である。
したがって、実施例発明における「補強金属コード」は、「タイヤ骨格体のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられ」、「樹脂被覆コードは隣接する樹脂被覆コードとも溶融接合される」ものである。

f したがって、実施例発明は、次の発明(以下、「引用発明」という。)に言い換えることができる。

「樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で形成された環状のタイヤ骨格体と、
前記タイヤ骨格体に設けられ、前記タイヤ骨格体のクラウン部の外周面に螺旋状に巻きつけられた平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)と、前記マルチフィラメントを被覆する被覆用組成物N-1で形成された被覆層と、前記マルチフィラメントと前記被覆層との間に配置されたホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」で形成された接着層とを備え、加熱された前記被覆層が、前記クラウン部の外周面に接触することで、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化して前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂N-1と溶融接合されてなる補強金属コードと、
を有し、
前記タイヤ骨格体は、リムのビードシートとリムフランジとに接触する1対のビード部と、ビード部からタイヤ径方向外側に延びるサイド部と、一方のサイド部のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部のタイヤ径方向外側端とを連結する前記クラウン部と、を備え、
前記補強金属コードは、前記クラウン部の外周面に、螺旋状に巻きつけられ、前記被覆層は隣接する被覆層とも溶融接合されているタイヤ。」

イ 引用文献2の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-46019号公報(平成24年3月8日出願公開、以下、「引用文献2」という。なお、平成29年1月24日付けの補正の却下の決定において引用文献5として引用された文献である。)には、「タイヤ」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献2の記載事項」という。)がある。

・「【0205】
<試料片の作製>
・・・(略)・・・
2)三井化学社製、アドマーQE060
(ガラス転移温度 4℃、弾性率875MPa)」

ウ 引用文献3の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-166723号公報(平成24年9月6日出願公開、以下、「引用文献3」という。なお、平成29年1月24日付けの補正の却下の決定において引用文献4として引用された文献である。)には、「タイヤ」に関して、おおむね次の記載(以下、「引用文献3の記載事項」という。)がある。

・「【0177】
前記各表における略称の説明を下記に示す。
※ ポリアミドエラストマー
・・・(略)・・・
・UBESTA「XPA9055X1」宇部興産(株)製(弾性率303MPa)」

エ 周知文献1の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-189084号公報(平成26年10月6日出願公開、以下、「周知文献1」という。なお、平成28年6月21日付け拒絶理由通知書において引用文献6として引用された文献であり、平成29年1月24日付けの補正の却下の決定において引用文献3として引用された文献である。)には、「タイヤ」に関して、おおむね次の記載(以下、「周知文献1の記載事項」という。)がある。

・「【0030】
次に、補強層14は、樹脂材料を用いて形成されたコード被覆層34によって被覆されたコード30を、クラウン部22の外周に、タイヤ周方向に螺旋状に直接巻いて構成されている。この補強層14は、従来のゴム製の空気入りタイヤにおいて、カーカスプライのタイヤ半径方向外側に配置されるベルト層に相当するものである。
【0031】
コード被覆層34に用いられる樹脂材料としては、タイヤ骨格部材12を構成する樹脂材料と同種のものであっても、異種のものであってもよい。樹脂材料として、タイヤ骨格部材12を構成する樹脂材料と同種のものを用いると、該タイヤ骨格部材12との接着を良好に行うことができる。
【0032】
図1から図3において、トレッド部材16は、補強層14のタイヤ半径方向外側に配置されている。このトレッド部材16の内周には、補強層14が入る凹部20がタイヤ周方向に連続して形成されている。この凹部20は、タイヤ骨格部材12のクラウン部22からタイヤ半径方向外側に凸状となる補強層14の外形に沿うように、トレッド部材16の内周に形成されている。本実施形態では、補強層14が断面矩形に突出していることから、凹部20も断面矩形に形成されている。
・・・(略)・・・
【0039】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態では、コード被覆層34により被覆されたコード30に張力を与えながら、該コード30をタイヤ骨格部材12のクラウン部22の外周に直接巻き付けて配置することにより、補強層14を形成している。補強層14とタイヤ骨格部材12との間には、クッションゴム等は配置されない。またコード被覆層34は樹脂材料で構成されており、クッションゴムと比較して、トレッド部材16の加硫接着時に変形し難い。」

・「【図1】



・「【図4】



オ 周知文献2の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-205462号公報(平成26年10月30日出願公開、以下、「周知文献2」という。)には、「タイヤ及びタイヤの製造方法」に関して、おおむね次の記載(以下、「周知文献2の記載事項」という。)がある。

・「【0059】
図2に示すように、補強コード部材22のコード端部22Aの埋め込み深さL1は、コード端部22Aの縦幅L0の5?100%の範囲内に設定されている。
なお、縦幅L0及び埋め込深さL1はともに、コード端部22Aの中心(本実施形態では、補強コード24の中心)を通る前述の垂線PLに沿って計測した長さである。
【0060】
また、補強コード部材22は、クラウン部16への埋め込み深さがコード中間部22Bからコード端部22Aに向かって次第に深くなっている。なお、埋め込み深さが次第に深くなる長さは、補強コード部材22をタイヤケース17に巻き付けた際の略一周分の長さよりも短くすることが好ましい。
【0061】
補強コード部材22は、補強コード24と、この補強コード24を被覆する樹脂被覆層26を含んで構成されている。
補強コード24は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成されている。
樹脂被覆層26は、被覆用の樹脂材料で構成され、断面形状が略四角形状とされている。なお、樹脂被覆層26の断面形状は略四角形状に限定されない。例えば、断面円形状や、断面台形状であっても構わない。
【0062】
なお、本実施形態では、樹脂被覆層26を形成する被覆用樹脂材料として、熱可塑性樹脂を用いている。
【0063】
また、クラウン部16と補強コード部材22、具体的には、樹脂被覆層26とが溶着されている。また、補強コード部材22は、タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合(本実施形態では、溶着)されている。なお、補強コード部材22のタイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は、一部分でも全部でも構わないが、接合面積が広いほど補強コード部材22(補強層28)によるタイヤケース17の補強効果が向上する。この補強コード部材22によってクラウン部16の外周に補強層28が形成される。」

・「【図2】



カ 周知文献3の記載事項
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-210487号公報(平成26年11月13日出願公開、以下、「周知文献3」という。)には、「タイヤ及びタイヤの製造方法」に関して、おおむね次の記載(以下、「周知文献3の記載事項」という。)がある。

・「【0044】
図1、図2に示すように、タイヤケース17の外周、具体的には、クラウン部16の外周には、補強コード部材22が配設されている。この補強コード部材22は、補強コード24とこの補強コード24を被覆する樹脂被覆層26とを含んで構成されている。
【0045】
補強コード24は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成されている。
【0046】
樹脂被覆層26は、被覆用の樹脂材料(被覆用樹脂材料)で形成され、断面形状が略四角形状とされている。なお、樹脂被覆層26の断面形状は略四角形状に限定されない。例えば、断面円形状や、断面台形状であっても構わない。
【0047】
なお、本実施形態では、樹脂被覆層26を形成する被覆用樹脂材料として、熱可塑性樹脂を用いている。
【0048】
補強コード部材22は、タイヤ周方向に螺旋状に巻かれると共に、タイヤケース17の外周(具体的には、クラウン部16の外周)に接合されている。
【0049】
また、補強コード部材22は、タイヤ軸方向に隣接する部分同士が接合されている。なお、補強コード部材22のタイヤ軸方向に隣接する部分同士の接合は、一部分でも全部でも構わないが、接合面積が広いほど補強コード部材22で構成される補強層28の剛性が向上する。
【0050】
なお、本実施形態の補強コード部材22は、樹脂被覆層26がタイヤケース17の外周(具体的には、クラウン部16の外周)に溶着され、かつ、樹脂被覆層26のタイヤ軸方向に隣接する部分同士が溶着されている。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明における「樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」」は、本願補正発明における「骨格用樹脂材料」に相当し、「タイヤ骨格体」は「タイヤ骨格部材」に相当するから、引用発明における「樹脂N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」で形成された環状のタイヤ骨格体」は、本願補正発明における「骨格用樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格部材」に相当する。

イ 引用文献2の記載事項によると、「ホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」」の弾性率は875MPaであり、引用文献3の記載事項によると、「被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」」の弾性率は303MPaであるから、引用発明における「ホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」」は「被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」」よりも弾性率が高いといえる。
引用発明における「前記タイヤ骨格体のクラウン部の外周面に螺旋状に巻きつけられた平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)」は、本願補正発明における「タイヤ周方向に延びる補強コード」に相当する。
引用発明における「前記マルチフィラメントと前記被覆層との間に配置されたホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」で形成された接着層」は、本願補正発明における「前記補強コードと前記被覆用樹脂層との間に配置されて前記補強コードと前記被覆用樹脂層とを接合する接合用樹脂層」に相当する。
引用発明における「前記クラウン部の外周面に接触することで、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化してタイヤ骨格体を形成する樹脂N-1と溶融接合されてなる」「加熱された前記被覆層」は、本願補正発明における「被覆用樹脂材料で形成され、前記補強コードを被覆すると共に前記タイヤ骨格部材に接合された被覆用樹脂層」に相当する。
したがって、引用発明における「前記タイヤ骨格体に設けられ、前記タイヤ骨格体のクラウン部の外周面に巻きつけられた平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)を撚った撚り線)と、前記マルチフィラメントを被覆する被覆用組成物N-1で形成された被覆層と、前記マルチフィラメントと前記被覆層との間に配置されたホットメルト接着剤A-1:三井化学(株)製の「アドマーQE-060」で形成された接着層とを備え、加熱された前記被覆層が、前記クラウン部の外周面に接触することで、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化して前記タイヤ骨格体を形成する樹脂N-1と溶融接合されてなる補強金属コード」は、本願補正発明における「前記タイヤ骨格部材に設けられ、タイヤ周方向に延びる補強コードと、被覆用樹脂材料で形成され、前記補強コードを被覆すると共に前記タイヤ骨格部材に接合された被覆用樹脂層と、前記被覆用樹脂材料よりも弾性率が高い接合用樹脂材料で形成され、前記補強コードと前記被覆用樹脂層との間に配置されて前記補強コードと前記被覆用樹脂層とを接合する接合用樹脂層と、を備える被覆コード部材」に相当する。

ウ 引用発明における「前記タイヤ骨格体は、リムのビードシートとリムフランジとに接触する1対のビード部と、ビード部からタイヤ径方向外側に延びるサイド部と、一方のサイド部のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部のタイヤ径方向外側端とを連結する前記クラウン部と、を備え」は、本願補正発明における「前記タイヤ骨格部材は、ビード部と、前記ビード部のタイヤ径方向外側に連なるサイド部と、前記サイド部のタイヤ幅方向内側に連なるクラウン部と、を備え」に相当する。

エ 引用発明における「前記補強金属コードは、前記クラウン部の外周面に、螺旋状に巻きつけられ、前記被覆層は隣接する被覆層とも溶融接合されている」は、本願補正発明における「前記被覆コード部材」は「前記クラウン部の外周に螺旋状に巻回されると共にタイヤ幅方向に隣接する部分同士が熱溶着によって接合されている」に相当する。

オ したがって、両者は、
「骨格用樹脂材料で形成された環状のタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材に設けられ、タイヤ周方向に延びる補強コードと、被覆用樹脂材料で形成され、前記補強コードを被覆すると共に前記タイヤ骨格部材に接合された被覆用樹脂層と、前記被覆用樹脂材料よりも弾性率が高い接合用樹脂材料で形成され、前記補強コードと前記被覆用樹脂層との間に配置されて前記補強コードと前記被覆用樹脂層とを接合する接合用樹脂層と、を備える被覆コード部材と、
を有し、
前記タイヤ骨格部材は、ビード部と、前記ビード部のタイヤ径方向外側に連なるサイド部と、前記サイド部のタイヤ幅方向内側に連なるクラウン部と、を備え、
前記被覆コード部材は、前記クラウン部の外周に螺旋状に巻回されると共にタイヤ幅方向に隣接する部分同士が熱溶着によって接合されているタイヤ。」
である点で一致し、以下の点で相違または一応相違する。

<相違点1>
被覆コード部材(補強金属コード)に関して、本願補正発明においては、「前記補強コードが延びる方向と直交する方向の断面形状が略四角形状とされており」と特定されているのに対して、引用発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2>
本願補正発明においては、「前記接合用樹脂層は、層厚が前記被覆用樹脂層よりも薄い」と特定されているのに対し、引用発明においては、そのようには特定されていない点。

(3)相違点についての判断
そこで、相違点1及び2について、以下に検討する。

ア 相違点1について
周知文献1ないし3の記載事項によると、タイヤのクラウン部に巻回する被覆コード部材(補強金属コード)の形状を略四角形状とすること、また、タイヤのクラウン部に巻回する被覆コード部材(補強金属コード)の形状として略四角形状、円形状又は台形状のどれを使用しても構わないことは、本願出願前に周知である(周知文献1については、図面からタイヤのクラウン部に巻回する被覆コード部材(補強金属コード)の形状が略四角形状であることが看取される。周知文献2については、【0061】を、周知文献3については、【0046】を特に参照。以下、併せて「周知技術」という。)。
そして、引用発明において、被覆コード部材(補強金属コード)の形状について、周知技術として知られている略四角形状、円形状又は台形状の中から略四角形状を選択し、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、引用発明における「補強金属コード」について、記載事項1g([0111])の「本発明の第一の実施形態に係るタイヤ10では、樹脂被覆コード26のクラウン部16に対する埋設深さLは、樹脂被覆コード26の直径Dの1/2であるが、1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることが特に好ましい。」及び記載事項1k(図2)には、「略円形状」であり、それが「クラウン部」に埋設されるものであるとの記載がうかがえるが、「略四角形状」でも「クラウン部」に埋設することは可能であるから(たとえば、周知文献2の【0059】及び図2には、略四角形状の被覆コード部材(補強金属コード)をクラウン部に埋設することが記載されている。)、引用発明における「補強金属コード」を「略四角形状」とすることを阻害するものではない。

イ 相違点2について
記載事項1i([0143])の「240℃で加熱溶融させた表1に記載のホットメルト接着剤A-1を、平均層厚が100μmとなるように付着させた」という記載によると、引用発明における「ホットメルト接着剤A-1を含む接着層」の平均層厚は100μmである。
他方、記載事項1g([0112])の「スチールコード27を被覆する被覆用組成物28の層厚は、特に限定されるものではなく、平均層厚が0.2mm?4.0mmであることが好ましく、0.5mm?3.0mmであることが更に好ましく、0.5mm?2.5mmであることが特に好ましい。」という記載によると、引用発明における「被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」」による「被覆」の平均層厚は、0.2mm?4.0mmであることが好ましく、0.5mm?3.0mmであることが更に好ましく、0.5mm?2.5mmであることが特に好ましいものである。
したがって、引用発明における「ホットメルト接着剤A-1を含む接着層」が、「被覆用組成物N-1:宇部興産(株)製の「UBESTA XPA9055X1」」による「被覆層」よりも薄いことは明らかである。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
仮に、相違点2が実質的な相違点であるとしても、記載事項1gを考慮して、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 効果について
本願補正発明により奏される効果は、本願の明細書の「請求項1に記載のタイヤでは、接合用樹脂層の層厚を被覆用樹脂層の層厚よりも薄くしていることから、例えば、接合用樹脂層の層厚を被覆用樹脂層の層厚以上としたものと比べて、接合用樹脂層が軟らかくなる。これにより、タイヤ転動時のタイヤ変形に対して接合用樹脂層の追従性が向上し、接合用樹脂層に不具合が生じるのを抑制できる。」(【0009】)、「請求項1に記載のタイヤでは、被覆コード部材をタイヤ骨格部材のクラウン部の外周に螺旋状に巻回していることから、クラウン部のタイヤ周方向剛性が向上する。」(【0011】)及び「この結果、タイヤの耐久性が向上する。」(【0081】)という記載からみて、「タイヤ転動時のタイヤ変形に対して接合用樹脂層の追従性が向上し、接合用樹脂層に不具合が生じるのを抑制できる」、「クラウン部のタイヤ周方向剛性が向上する」及び「タイヤの耐久性が向上する」という効果であるといえるが、これらの効果は、引用文献1の記載事項、特に記載事項1bないし1eからみて、引用発明が有している効果又は引用発明及び周知技術から予測可能な効果であるといえ、格別顕著なものとはいえない。
請求人は、審判請求書において、本願補正発明は、「クラウン部の外周に沿った面におけるタイヤ幅方向(補強コードが延びる方向と直交する方向)の面内せん断剛性が高められ、旋回走行時におけるタイヤの抵抗力が向上し、耐久性が高められている。すなわち、被覆コード部材がタイヤ幅方向に隣接し、かつ、この隣接する被覆コード部材同士が「熱溶着によって」一体化されることで、被覆コード部材は補強コードが埋設された高剛性の板状部材として機能する。」及び「補強コードからクラウン部までの剛性段差を緩和しつつ、接合用樹脂層が被覆用樹脂層よりも厚い場合と比較して、タイヤの面外曲げ剛性を低減し、接合用樹脂層の割れを抑制している。これによりタイヤは柔軟に変形することができ、脆性的に変形することが抑制されるため、耐久性が高められている。」という相反する2つの効果を両立させたものである旨主張するが、これらの効果は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されておらず、当該主張は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に基づかない主張であるので、採用できない。また、これらの効果は、引用発明及び周知技術から予測可能なものであり、格別顕著なものともいえない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-3 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成28年5月30日に提出された手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)のとおりである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2014/175453号
2.特開2013-180652号公報
3.特開2011-42235号公報
4.国際公開第2013/089111号
5.特開2006-282102号公報
6.特開2014-189084号公報
なお、上記文献中、国際公開第2014/175453号及び特開2014-189084号公報は、上記第2[理由]2 2-2における引用文献1及び周知文献1である。

3 引用文献の記載事項等
引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2 2-2(1)アのとおりである。
また、引用文献2及び3並びに周知文献1ないし3の記載事項は、上記第2[理由]2 2-2(1)イないしカのとおりである。

4 対比・判断
上記第2[理由]2 2-1で検討したように、本願補正発明は本願発明を明りようにした上でその発明特定事項に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に限定を加えた本願補正発明が、上記第2[理由]2 2-2(2)ないし(4)のとおり、引用発明及び周知技術(周知技術については、上記第2[理由]2 2-2(3)アのとおりである。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、本願補正発明と同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
なお、請求人は、平成29年1月24日にされた補正の却下の決定についても取り消すべきものであることを請求の趣旨として審判を請求しているが、当該決定が違法であることの具体的理由を説明する記載が請求書にはないこと、また、請求人は、補正却下された補正(平成28年10月20日付け)に代えて、新たに補正(平成29年5月1日付け)をしていること等を総合的に勘案すると、請求人の上記請求を認容することはできない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-26 
結審通知日 2018-05-08 
審決日 2018-05-21 
出願番号 特願2014-239280(P2014-239280)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60C)
P 1 8・ 575- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平野 貴也松岡 美和  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 加藤 友也
阪▲崎▼ 裕美
発明の名称 タイヤ  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
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