• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1350261
審判番号 不服2018-7588  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-04 
確定日 2019-03-25 
事件の表示 特願2016-231088号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月 7日出願公開、特開2018- 86132号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月29日の出願であって、平成29年8月31日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月2日付け(発送日:平成30年3月14日)で拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年6月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年6月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
遊技者に利益を提供する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段と、
該判定手段の判定の結果に基づいて、図柄を変動表示させる変動時間を決定する決定手段と、
前記判定手段の判定の結果、前記特別遊技を実行すると判定された場合、前記変動時間が経過した後、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記特別遊技が終了した後、遊技者に有利な特定遊技状態とする遊技状態制御手段と、
を備え、前記変動時間は、第1の変動時間と、当該第1の変動時間より長い第2の変動時間とがあるとともに、前記特別遊技は、第1の利益を提供する第1特別遊技と、前記第1の利益より利益度が高い第2の利益を提供する第2特別遊技とがあり、前記決定手段は、前記特定遊技状態のときの前記判定手段による判定において前記特別遊技を実行すると判定された場合、当該特別遊技が前記第1特別遊技又は第2特別遊技の何れが実行されるかに応じて、前記第2の変動時間を決定可能とされたことを特徴とする遊技機。」
(平成29年10月26日になされた手続補正)
から、
「【請求項1】
A 遊技者に利益を提供する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段と、
B 該判定手段の判定の結果に基づいて、図柄を変動表示させる変動時間を決定する決定手段と、
C 前記判定手段の判定の結果、前記特別遊技を実行すると判定された場合、前記変動時間が経過した後、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
D 前記特別遊技が終了した後、遊技者に有利な特定遊技状態とする遊技状態制御手段と、を備え、
E 前記変動時間は、第1の変動時間と、当該第1の変動時間より長い第2の変動時間とがあるとともに、前記特別遊技は、第1の利益を提供する第1特別遊技と、前記第1の利益より利益度が高い第2の利益を提供する第2特別遊技とがあり、
F 前記決定手段は、前記特定遊技状態のときの前記判定手段による判定において前記特別遊技を実行すると判定された場合、当該特別遊技が前記第1特別遊技又は第2特別遊技の何れが実行されるかに応じて、且つ、前記第2特別遊技を実行するときは、図柄の変動回数に応じて、前記第2の変動時間を決定可能とされたことを特徴とする遊技機。」
(平成30年6月4日になされた手続補正)
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Fに分説した。)。

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「決定手段」が「第2の第2の変動時間を決定可能」であることに関して、「且つ、前記第2特別遊技を実行するときは、図柄の変動回数に応じて、」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、本願の出願当初明細書の段落【0046】、【0047】、図3に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2016-59544号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【0575】
次いで、主制御MPU4100aは、第二特別図柄側の抽選(変動)にかかる消化順位を更新すべく、n番目(nは2以上の自然数)の各記憶領域(記憶領域[2]4532b?記憶領域[4]4532d)に記憶される各種乱数を、n-1番目の記憶領域(記憶領域[1]4532a?記憶領域[3]4532c)にそれぞれシフトする(ステップS304)。これにより、少なくとも記憶領域[4]4532dには空きが生じるようになり、この記憶領域[4]4532dに第二特別図柄についての新たな始動情報(保留)が記憶可能とされるようになる。
・・・
【0581】
ステップS313又はステップS314の処理において、何れかのテーブルが選択された後、そのテーブルに基づき、ステップS303又はステップS307の処理にて取得された、いずれかの特別図柄に関する大当り判定用乱数が、大当りに相当する乱数(大当り値)であるか否かを判別する(ステップS315(大当り抽選))。そして、大当り値である場合には(ステップS315にてYES)、同じくステップS303又はステップS307の処理にて取得された、何れかの特別図柄に関する大当り図柄用乱数に基づいて大当りの種別を判定する(ステップS316)。その後、大当りの種別に応じたフラグをON状態(セット)にして(ステップS317)、ステップS318に移行する。」

(1-b)「【0592】
次に、大当り抽選(ステップS315)の結果などに基づいて特別図柄の変動パターンが設定される変動パターン設定処理について説明する。図88は、変動パターン設定処理の一例を示すフローチャートである。
・・・
【0596】
なお、リーチ判定用乱数に対して用意される所定の当り値の数については、通常外部不利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも非作動)、通常外部有利遊技状態(時短機能のみ作動)、確変外部不利遊技状態(確変機能のみ作動)、及び確変外部有利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも作動)の各遊技状態の別に異ならしめるようにしてもよい。例えば、この実施の形態にかかるパチンコ機1では、通常外部不利遊技状態においては、リーチ判定用乱数が所定の当り値であることに基づいて高期待演出を行うべきであると判断される確率は「1/12」となっているが、通常外部有利遊技状態や確変外部有利遊技状態においては、リーチ時の期待度がより高められるように(若しくは、効率の良い保留消化が行われるように)、より低い確率をもって高期待演出を行うべきであると判断されるようにしてもよい。また逆に、確変外部不利遊技状態においては、大当りである可能性をより高い頻度で意識付けさせることができるように、より高い確率をもって高期待演出を行うべきであると判断されるようにしてもよい。」

(1-c)「【0622】
図112は、通常外部有利遊技状態又は確変外部有利遊技状態のときに適用される変動パターンテーブルT4?T13を例示する一覧表図である。これらの変動パターンテーブルT4?T13のうち、変動パターンテーブルT4?T8は1回目から50回目までの変動に適用される変動パターンテーブルであり、変動パターンテーブルT9?T13は51回目以降の変動に適用される変動パターンテーブルである。また、変動パターンテーブルT4及びT9は、大当りの抽選結果が「確変当り(特定図柄当り)」の場合に選択されるテーブルであり、変動パターンテーブルT5及びT10は、大当りの抽選結果が「非確変当り(非特定図柄当り)」の場合に選択されるテーブルであり、変動パターンテーブルT6及びT11は、大当りの抽選結果が「ハズレ」且つリーチ判定の結果が「リーチあり」の場合に選択されるテーブルであり、変動パターンテーブルT7及びT12は、大当りの抽選結果が「ハズレ」且つリーチ判定の結果が「リーチなし」の場合に選択されるテーブルであり、変動パターンテーブルT8及びT13は、第二特別図柄の保留数が0の場合に選択されるテーブルである。なお、図112の当落の欄に記載の○は大当りを意味し、×はハズレ時の特定条件の不成立(純ハズレ)を意味する。
【0623】
変動パターンテーブルT4?T13のうちのいずれかの変動パターンテーブルが選択されると、主制御MPU4100aは、該選択されたテーブルを参照しつつ、上記ステップS303(図87参照)の処理にて取得された変動表示パターン乱数に基づいて時短遊技状態(外部有利遊技状態)における特別図柄の変動パターンを決定する(ステップS410)。このとき第一特別図柄表示器または第二特別図柄表示器(LED)の停止(点灯)態様も決定される。
【0624】
変動番号31、32及び33の変動パターンは、リーチ判定の結果が「リーチなし」且つ大当りの抽選結果が「ハズレ」の場合に選択される変動パターンである。変動番号31の変動パターンの変動時間Tf1は1.5秒であり、この実施形態における最短の変動時間である。また、変動番号32の変動パターンの変動時間Tf2は3秒であり、2番目に短い変動時間である。この変動時間Tf2(3秒)は、第二特別図柄の保留数を1以上回復(増加)させるのに十分な時間であり、後述する超時短モードにおいて第二特別図柄の保留数が0になった場合にも変動番号32の変動パターンが選択される(変動パターンテーブルT13参照)。また、変動番号33の変動パターンの変動時間Tf3は12秒であり、後述する通常時短モードにおいて第二特別図柄の保留数が0になった場合にはこの変動番号33の変動パターンが選択される(変動パターンテーブルT8参照)。
【0625】
変動番号34、36、38の変動パターンは、リーチ判定の結果が「リーチあり」且つ大当りの抽選結果が「当り」の場合に選択される変動パターンである。変動番号34の変動パターンは、リーチ種別がノーマルリーチの場合の変動パターンであり、変動時間Tg4は7.5秒である。また、変動番号36の変動パターンは、リーチ種別がロングリーチの場合に選択される変動パターンであり、変動時間Th3は30秒である。変動番号38の変動パターンは、リーチ種別がストーリーリーチの場合に選択される変動パターンであり、変動時間Ti1はこの実施形態において最長の変動時間である60秒である。変動番号40の変動パターンは、リーチ種別が枠側可動体リーチの場合に選択される変動パターンであり、変動時間Tj1はTg1と等しい7.5秒である。
【0628】
変動パターンテーブルT4及びT5に示されるように、通常外部有利遊技状態又は確変外部有利遊技状態における1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合(テーブルT4)も普通当りの場合(テーブルT5)も、変動番号38の変動パターン(ストーリーリーチ当り)が最も大きい確率(80%)で選択され、次いで、変動番号36の変動パターン(ロングリーチ当り)、変動番号34の変動パターン(ノーマルリーチ当り)の順に大きい確率で選択される。そして、変動番号40の変動パターン(枠側可動体リーチ当り)が2%という小さい確率で選択される。一方、変動パターンテーブルT9に示されるように、通常外部有利遊技状態又は確変外部有利遊技状態における51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合、変動番号40の変動パターン(枠側可動体リーチ当り)が50%という比較的大きい確率で選択される。これに対し、変動番号38の変動パターン(ストーリーリーチ当り)は10%という比較的小さい確率で選択される。また、変動パターンテーブルT10に示されるように、大当りの抽選結果が普通当りの場合、変動番号40の変動パターン(枠側可動体リーチ当り)は2%という小さい確率で選択される。」

(1-d)「【0656】
タイマにセットされた変動時間がタイムアップしていれば(ステップS501におけるYES)、上記ステップS413の処理にてONにセットした特図LED作動フラグをOFFにセットする(ステップS502)。この特図LED作動フラグがOFFにセットされると、上記ステップS305又は上記ステップS309の処理にて設定された特別図柄変動フラグの値に基づいて、第一特別図柄表示器または第二特別図柄表示器としての複数のLEDの点灯パターンにかかる変動表示(特別図柄の変動)が終了されるようになる。また、液晶表示装置1400において大当り抽選についての表示演出が行われているときにはこれを終了させるべく、周辺制御基板4140に対し、同表示演出における演出結果が確定表示されるべき旨を示す確定停止コマンドをセットする(ステップS503)。なお、この確定停止コマンドは、図84に示したコマンド送信処理(ステップS17)によって周辺制御基板4140に送信される。これにより、液晶表示装置1400においては、周辺制御基板4140側による後述の制御を通じて、同表示演出における演出結果を確定表示させるようになる。ただし、この実施の形態にかかるパチンコ機1では、周辺制御基板4140における制御モードによっては、確定停止コマンドを受信したにもかかわらず液晶表示装置1400における表示演出を終了させずに、その後のオープニング期間まで当該表示演出が延長されるように制御することがあることは上述した通りである。
【0657】
次いで、大当りフラグがONであるか否かを判断する(ステップS504)。大当りフラグがONであれば(ステップS504におけるYES)、大当りに当選されたことが示されるように特別図柄が変動停止された処理段階にあるとして処理フラグを「3」に更新し(ステップS505)、当該変動中処理を終了する。
・・・
【0660】
次に、処理フラグが「3」のときに実行される大当り遊技開始処理(ステップS200)について説明する。図90は、大当り遊技開始処理の一例を示すフローチャートである。
【0661】
同図90に示されるように、大当り遊技開始処理(ステップS200)では、主制御MPU4100aは、まず、ステップS601の処理として、条件装置を作動させる。次いで、ステップS2602の処理として、通常外部不利遊技状態や通常外部有利遊技状態にあるときよりも条件装置の作動を伴う当り(大当り)の当選確率を高くする機能(確率変動機能)が作動中(確率変動状態)であるか否かを判断する。そしてこの結果、確変外部不利遊技状態、及び確変外部有利遊技状態のいずれかの遊技状態にあり、確率変動機能が作動中である旨判断されたときには(ステップS602におけるYES)、この確率変動機能の作動を停止させる(ステップS603)。」

(1-e)「【0683】
また一方、上記ステップS809の処理において、ラウンド遊技が既に最大回数分だけ行われた旨判断されたときは、役物連続作動装置の作動が停止することによって大当り(条件装置の作動を伴う当り)に当選されたことに応じた開閉部材2006の動作(大当り遊技)が不可能とされる状態に移行することとなる。すなわちこの場合、主制御MPU4100aは、ステップS811?ステップS817の処理を実行することにより、例えばステップS317(図87参照)の処理にて大当りフラグとは別に主制御基板4100(主制御MPU4100a)のRAMにて記憶されている当該大当り遊技の実行契機とされた大当りの当選種に基づいて、大当り遊技後の遊技状態を設定してから当該大当り遊技処理を終了させる。なお、ここでの当選種とは、確率変動機能や時短機能を作動させる当選種であるか否かについてのものであり、例えば当該大当り遊技の実行契機とされた大当りが大当りCである場合には、当該大当りである旨判断されたときの遊技状態に応じて時短機能を作動させるものであるか否かについての情報の内容が異なることとなる。」

(1-f)「



また、引用例1には以下の事項が記載されているものと認定できる。

(1-g)段落【0596】には、「通常外部有利遊技状態(時短機能のみ作動)、確変外部不利遊技状態(確変機能のみ作動)、及び確変外部有利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも作動)・・・パチンコ機1」と記載され、段落【0628】には、「通常外部有利遊技状態又は確変外部有利遊技状態における1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合(テーブルT4)も普通当りの場合(テーブルT5)も、変動番号38の変動パターン(ストーリーリーチ当り)が最も大きい確率(80%)で選択され、・・・一方、変動パターンテーブルT9に示されるように、通常外部有利遊技状態又は確変外部有利遊技状態における51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合、・・・変動番号38の変動パターン(ストーリーリーチ当り)は10%という比較的小さい確率で選択される。」と記載され、段落【0623】には、主制御MPU4100aは、該選択されたテーブルを参照しつつ、上記ステップS303(図87参照)の処理にて取得された変動表示パターン乱数に基づいて時短遊技状態(外部有利遊技状態)における特別図柄の変動パターンを決定する」と記載されている。
そして、記載事項(1-f)の図112には、変動時間が60秒となる変動番号38の変動パターンは、51回目以降の変動の非確変当りの場合(テーブルT10)では、3%の確率で選択されることが示されている。
よって、引用例1には、「主制御MPU4100aは、通常外部有利遊技状態(時短機能のみ作動)又は確変外部有利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも作動)において、変動時間が60秒となる変動番号38の変動パターンは、1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合(テーブルT4)も非確変当りの場合(テーブルT5)も80%の確率で選択され、51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が確変当りの場合(テーブルT9)は、10%の確率で選択され、非確変当りの場合(テーブルT10)は、3%の確率で選択されるパチンコ機1」が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-f)の記載事項及び上記(1-g)の認定事項を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「a 特別図柄に関する大当り判定用乱数が、大当りに相当する乱数(大当り値)であるか否かを判別する大当り抽選を行う主制御MPU4100aと(段落【0575】、【0581】)、
b 大当り抽選の結果などに基づいて特別図柄の変動パターンとともに変動時間を設定する主制御MPU4100aと(段落【0592】、【0623】、【0625】)、
c 変動時間がタイムアップしていれば、大当りフラグがONであるか否かを判断して、処理フラグを「3」に更新し、大当り遊技開始処理を実行する主制御MPU4100aと(段落【0656】、【0657】、【0660】、【0661】)、
d 大当り遊技後に確率変動機能や時短機能を作動させる遊技状態を設定する主制御MPU4100aと、を備え(段落【0683】)、
e 変動時間は、変動番号34の変動パターンの7.5秒と、変動パターン36の変動パターンの30秒と、変動パターン38の変動パターンの60秒があるとともに、大当りの抽選結果が「非確変当り」と「確変当り」の場合があり、「非確変当り」の場合に変動パターンテーブルT4及びT9が選択され、「確変当り」の場合に変動パターンテーブルT5及びT10が選択され(段落【0622】、【0625】)、
f 主制御MPU4100aは、通常外部有利遊技状態(時短機能のみ作動)又は確変外部有利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも作動)において、変動時間が60秒となる変動番号38の変動パターンは、1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT4)も「非確変当り」の場合(テーブルT5)も80%の確率で選択され、51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT9)は、10%の確率で選択され、「非確変当り」の場合(テーブルT10)は、3%の確率で選択されるパチンコ機1(認定事項(1-g))。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する(下記の見出しの(a)?(f)は、引用発明の構成に対応している。)。

(a)引用発明の「大当り」は、遊技者に利益を提供する特別遊技を実行するものであることは自明な事項である。
よって、引用発明の「特別図柄に関する大当り判定用乱数が、大当りに相当する乱数(大当り値)であるか否かを判別する大当り抽選を行う主制御MPU4100a」は、本願補正発明の「遊技者に利益を提供する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段」に相当する。

(b)引用発明の「変動時間」が、本願補正発明の「図柄を変動表示させる変動時間」に相当することは明らかである。
よって、引用発明の「大当り抽選の結果などに基づいて特別図柄の変動パターンとともに変動時間を設定する主制御MPU4100a」は、本願補正発明の「該判定手段の判定の結果に基づいて、図柄を変動表示させる変動時間を決定する決定手段」に相当する。

(c)引用発明の「変動時間がタイムアップ」する点、「大当りフラグがONである」と判断する点は、それぞれ、本願補正発明の「変動時間が経過」する点、「特別遊技を実行すると判定する」点に相当する。
よって、引用発明の「変動時間がタイムアップしていれば、大当りフラグがONであるか否かを判断して、処理フラグを「3」に更新し、大当り遊技開始処理を実行する主制御MPU4100a」は、本願補正発明の「前記判定手段の判定の結果、前記特別遊技を実行すると判定された場合、前記変動時間が経過した後、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段」に相当する。

(d)引用発明の「確率変動機能や時短機能を作動させる遊技状態」は、本願補正発明の「遊技者に有利な特定遊技状態」に相当する。
よって、引用発明の「大当り遊技後に確率変動機能や時短機能を作動させる遊技状態を設定する主制御MPU4100a」は、本願補正発明の「前記特別遊技が終了した後、遊技者に有利な特定遊技状態とする遊技状態制御手段」に相当する。

(e)引用発明の「変動番号34の変動パターンの7.5秒と、変動パターン36の変動パターンの30秒」、「変動パターン38の変動パターンの60秒」は、それぞれ、本が補正発明の「第1の変動時間」、「第2の変動時間」に相当する。
また、引用発明の「非確変当り」と「確変当り」のいずれも大当りであるから、特別遊技を行うものであり、「確変当り」の方が、「非確変当り」よりも利益度が高いことは明らかであるから、引用発明の「非確変当り」(の特別遊技)、「確変当り」(の特別遊技)は、それぞれ、本願補正発明の「第1特別遊技」、「第2特別遊技」に相当する。
よって、引用発明の「変動時間は、変動番号34の変動パターンの7.5秒と、変動パターン36の変動パターンの30秒と、変動パターン38の変動パターンの60秒があるとともに、大当りの抽選結果が「非確変当り」と「確変当り」の場合があ」る点は、本願補正発明の「前記変動時間は、第1の変動時間と、当該第1の変動時間より長い第2の変動時間とがあるとともに、前記特別遊技は、第1の利益を提供する第1特別遊技と、前記第1の利益より利益度が高い第2の利益を提供する第2特別遊技とがあ」る点に相当する。

(f)引用発明において、変動時間が60秒となる変動パターンは、51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT9)は、10%の確率で選択され、「非確変当り」の場合(テーブルT10)は、3%の確率で選択されるから、「確変当り」か「非確変当り」の何れが実行されるかに応じて、変動時間が60秒となる変動時間が決定可能といえる。
また、引用発明において、変動時間が60秒となる変動パターンは、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT4、T9)は、1回目から50回目までの変動では80%の確率で選択され、51回目以降の変動では10%の確率で選択されるから、図柄の変動回数に応じて変動時間が60秒となる変動時間が決定可能といえる。
なお、変動時間が60秒となる変動パターンは、1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT4)も「非確変当り」の場合(テーブルT5)も80%の確率で選択されるものであり、仮に、1回目から50回目までの変動では、「確変当り」か「非確変当り」の何れが実行されるかに応じて、変動時間が60秒となる変動時間を決定していないとしても、上記のとおり、51回目以降の変動では、「確変当り」か「非確変当り」の何れが実行されるかに応じて異なる確率で選択されるから、「確変当り」か「非確変当り」の何れが実行されるかに応じて、変動時間が60秒となる変動時間を決定しており、これらを総合すれば、「確変当り」か「非確変当り」の何れが実行されるかに応じて、変動時間が60秒となる変動時間が決定可能ということができる。
よって、引用発明の「主制御MPU4100aは、通常外部有利遊技状態(時短機能のみ作動)又は確変外部有利遊技状態(確変機能、時短機能がいずれも作動)において、変動時間が60秒となる変動番号38の変動パターンは、1回目から50回目までの変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT4)も「非確変当り」の場合(テーブルT5)も80%の確率で選択され、51回目以降の変動では、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT9)は、10%の確率で選択され、「非確変当り」の場合(テーブルT10)は、3%の確率で選択されるパチンコ機1」は、本願補正発明の「前記決定手段は、前記特定遊技状態のときの前記判定手段による判定において前記特別遊技を実行すると判定された場合、当該特別遊技が前記第1特別遊技又は第2特別遊技の何れが実行されるかに応じて、且つ、前記第2特別遊技を実行するときは、図柄の変動回数に応じて、前記第2の変動時間を決定可能とされた」「遊技機」に相当する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、全ての点で一致し、相違点はない。

(3)請求人の主張について
請求人は、「本願発明は、特別遊技が第1特別遊技又は第2特別遊技の何れが実行されるかに加え、適度な間隔で特別遊技を実行するためには好都合且つ簡易な条件である図柄の変動回数に応じて第2の変動時間を決定可能であるため、特定遊技状態のとき、特別遊技の種類及び図柄の変動回数に応じたより一層適度な間隔で特別遊技を実行することができるのに対し、引用文献1に記載の発明は、少なくとも図柄の変動回数に応じて第2の変動時間を決定するものではなく、本願発明の重要な特徴を具備していない。」(審判請求書「(b)本願発明と引用文献との対比」)と主張する。
しかしながら、上記(2)(f)で検討したとおり、引用発明において、変動時間が60秒となる変動パターンは、大当りの抽選結果が「確変当り」の場合(テーブルT4、T9)は、1回目から50回目までの変動では80%の確率で選択され、51回目以降の変動では10%の確率で選択されるから、図柄の変動回数に応じて変動時間が60秒となる変動時間が決定可能といえる。
もっとも、本願補正発明の「図柄の変動回数に応じて」「第2の変動時間を決定可能」とするとの特定事項は、本願の実施例の記載における1?50回までは、(全て)150秒(第2の変動時間)が決定され、51回目以降は決定されないものに対応するものと認められる(段落【0047】、図3)。しかしながら、当該「変動回数に応じて」「決定する」とは、必ずしも、変動回数に応じて150秒(第2の変動時間)とするか否かを決定することだけではなく、変動回数に応じて150秒(第2の変動時間)とする確率を変え、それに基づいて変動時間が決まることも含むものと解される。
したがって、本願補正発明の上記特定事項は、引用発明における「1回目から50回目までの変動では80%の確率で選択され、51回目以降の変動では10%の確率で選択される」ものも含むものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成29年10月26日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
遊技者に利益を提供する特別遊技を実行するか否かの判定を行う判定手段と、
該判定手段の判定の結果に基づいて、図柄を変動表示させる変動時間を決定する決定手段と、
前記判定手段の判定の結果、前記特別遊技を実行すると判定された場合、前記変動時間が経過した後、前記特別遊技を実行する特別遊技実行手段と、
前記特別遊技が終了した後、遊技者に有利な特定遊技状態とする遊技状態制御手段と、
を備え、前記変動時間は、第1の変動時間と、当該第1の変動時間より長い第2の変動時間とがあるとともに、前記特別遊技は、第1の利益を提供する第1特別遊技と、前記第1の利益より利益度が高い第2の利益を提供する第2特別遊技とがあり、前記決定手段は、前記特定遊技状態のときの前記判定手段による判定において前記特別遊技を実行すると判定された場合、当該特別遊技が前記第1特別遊技又は第2特別遊技の何れが実行されるかに応じて、前記第2の変動時間を決定可能とされたことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない、また、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2016-59544号公報

3 刊行物
引用例1及びその記載事項、並びに引用発明は、上記「第2[理由]3(1)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「決定手段」が「第2の第2の変動時間を決定可能」であることに関して、「且つ、前記第2特別遊技を実行するときは、図柄の変動回数に応じて、」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]3(2)、(3)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明であるから、本願発明も引用例1に記載された発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-15 
結審通知日 2019-01-21 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2016-231088(P2016-231088)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也柳 重幸岩永 寛道  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 松川 直樹
平城 俊雅
発明の名称 遊技機  
代理人 越川 隆夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ