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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1350271
審判番号 不服2018-6934  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-22 
確定日 2019-04-16 
事件の表示 特願2016- 3073「伝導性基板およびそれを含むタッチスクリーン」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 76270、請求項の数(27)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月28日、大韓民国)を国際出願日とする特願2014-502460号の一部を平成28年1月8日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月22日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月27日付けで手続補正がされ、同年6月12日付けで最後の拒絶理由通知がされ、同年9月19日付けで手続補正がされ、平成30年1月16日付けで平成29年9月19日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされたものである。

第2 平成30年1月16日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1.平成30年1月16日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成29年9月19日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1に係る発明は、引用文献1-7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成29年9月19日付けの補正は却下すべきものである。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-344163号公報
2.特開2010-027391号公報
3.国際公開第2008/108042号
4.国際公開第2010/090487号
5.特開2008-147356号公報
6.韓国公開特許第10-2010-0025675号公報
7.特開2000-275432号公報

2.原査定(平成30年1月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1-27に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記1-6の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006-344163号公報
2.特開2010-027391号公報
3.国際公開第2008/108042号
4.国際公開第2010/090487号
5.特開2008-147356号公報
6.韓国公開特許第10-2010-0025675号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1,2,15,16に「前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」という事項を追加する補正は、補正前の請求項1,2,15,16に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「暗色化層」の線幅を限定したものであり、かつ、補正の前後において、請求項1,2,15,16の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であり、また、前記追加された事項は当初明細書の段落【0050】、【0051】より明らかであるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-27に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-27に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明27」という。)は、平成30年5月22日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-27に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び本願発明2は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一面に備えられた電気伝導性パターン、および前記電気伝導性パターンの少なくとも一面に備えられ、前記電気伝導性パターンに対応する領域に備えられた暗色化層を含み、
前記暗色化層が可視になる一面に点光源から出た光を照射して得た反射型回折イメージの反射型回折強度が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、60%以上減少したものであり、
前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、
前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である、
伝導性基板。
【請求項2】
基材と、前記基材の少なくとも一面に備えられた電気伝導性パターン、および前記電気伝導性パターンの少なくとも一面に備えられ、前記電気伝導性パターンに対応する領域に備えられた暗色化層を含み、
前記暗色化層が可視になる一面に周辺光(Ambient light)を仮定した全反射率測定装置を用いて測定した全反射率(total reflectance)が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、20%以上減少したものであり、
前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、
前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である、
伝導性基板。」

本願発明3-14は、本願発明1又は本願発明2を直接又は間接的に引用し、本願発明1又は本願発明2を減縮した発明である。
本願発明15は本願発明1を、本願発明16は本願発明2をタッチスクリーンとした発明である。
本願発明17-27は、本願発明15又は本願発明16を直接又は間接的に引用し、本願発明15又は本願発明16を減縮した発明(本願発明17-26)及び本願発明15-26をディスプレイとした発明(本願発明27)である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献3について
引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

a)「[0107] <構成・製造手順例4>
(ブラックマトリックスを有する構成例)
対向基板2は、さらに、ブラックマトリクス46(遮光性膜)を有していてもよい。ブラックマトリクス46をさらに有する対向基板2の構成を図16に示す(本構成・製造手順例4では、構成・製造手順例2を基本構成とし、両者の差を明確となるような形で記載する)。図16(a)は、ブラックマトリクス46を対向基板2の構造を示す図である。図16(b)は、図13(a)におけるA-A’部分の断面図である。
[0108]
図16の対向基板2では、ガラス基板8と、金属配線10および金属配線14との間であって、金属配線10および金属配線14によって形成される格子形状に対応する位置に、ブラックマトリクス46が形成されている。これにより、対向基板2を採用した液晶パネル1において、対向基板2のガラス基板8に液晶パネル1の外部から入射される光の一部は、ガラス基板8上のブラックマトリクス46によって吸収されるので、対向基板2側から表示画像を観察したときの光の反射が少なくなる。したがって、対向基板2を採用した液晶パネル1が表示する画像のコントラストをより高めることができる。
[0109]
また、ブラックマトリクス46を形成することによって、金属配線10および金属配線14を形成するときに用いる配線材料として必ずしも低い反射特性を有する金属材料を選択する必要がなくなり、より抵抗の低いものを選択できる。すなわち観察者側から見たときの表面反射はブラックマトリクス46により抑えられるため、たとえ高い反射特性を有する金属材料、たとえばアルミなどを金属配線10や金属配線14に用いた場合でも、表面反射によるコントラスト低下を抑えることができる。」

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献3には、対向基板として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ガラス基板8と、金属配線10および金属配線14との間であって、金属配線10および金属配線14によって形成される格子形状に対応する位置に、ブラックマトリクス46が形成されており、これにより、対向基板2を採用した液晶パネル1において、対向基板2のガラス基板8に液晶パネル1の外部から入射される光の一部は、ガラス基板8上のブラックマトリクス46によって吸収されるので、対向基板2側から表示画像を観察したときの光の反射が少なくなる対向基板。」

2.引用文献1について
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

b)「【0072】
なお、導電部の入力者側の表面を低反射処理しておくと、金属の反射色が抑制され透光性電極の存在が目立たなくなる。更に入力者側と反対の面も低反射処理をしておくと、反対面からの反射色がディスプレイ画面に映り込んだりせず、視認性が向上するので特に好ましい。
【0073】
上記低反射処理の具体例としては、化成処理やめっき処理等の表面処理が挙げられる。
化成処理は、酸化処理、硫化処理することによって金属表面に低反射層を形成するものであり、例えば極細金属線の素材に銅を使用し、その表面に酸化処理によって酸化皮膜を形成すれば、極細金属線の断面寸法を減じることなくその極細金属線の表面を光反射防止性を備えた黒色に処理することができる。
【0074】
また、めっき処理として極細金属線に対して例えば黒色クロムめっきを施せば、極細金属線の表面を、光反射防止性を備えた黒色に処理することができる。また、高電流密度の銅めっきを施せば、茶褐色に処理することができる。
【0075】
また、上記低反射処理として電着塗料処理を用いることができる。」

3.引用文献2について
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

c)「【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る透明導電性フィルムの断面図である。図1に示すように、透明導電性フィルム10は、透明フィルム基材1と、この透明フィルム基材1の片面に順次形成された透明誘電体層2及び透明導電層3とを含む。更に、透明導電層3における透明誘電体層2とは反対側に、透明粘着剤層4を介して着色層5が設けられている。この着色層5は、波長380?780nmの光の平均吸収率が35?90%である。そして、透明フィルム基材1の屈折率をn1、透明誘電体層2の屈折率をn2、透明導電層3の屈折率をn3とした場合に、n2<n1<n3の関係を満足する。また、透明導電層3はパターン化されており、これによりパターン部Pとパターン開口部Oとが形成されている。
【0017】
透明導電性フィルム10によれば、波長380?780nmの光の平均吸収率が35?90%の着色層5を設けたことにより、視認面側からの外部光の反射率や、図示しない表示素子側からの内部光の透過率が低下する。この際、透明導電層3におけるパターン部P及びパターン開口部Oのいずれについても、上記反射率や透過率が小さくなるため、パターン部Pとパターン開口部Oとの間の反射率の差や、パターン部Pとパターン開口部Oとの間の透過率の差に関しても同様に小さくなる。これにより、パターン部Pとパターン開口部Oとの相違が抑制される。」

4.引用文献4について
引用文献4の第18頁第28-33行には、次の事項が記載されている。
日本語訳は、引用文献4の日本語ファミリー文献である、特開2012-517063号公報による。

d)

( 本発明の一実施形態によれば、前記導電性パターンは黒化することができる。高温で金属材料を含むペーストを焼成すれば、金属光沢が発現され、光の反射などによって視認性が悪くなり得る。このような問題は、前記導電性パターンを黒化させることによって防止することができる。前記導電性パターンを黒化させるために、導電性パターン形成のためのペーストに黒化物質を添加するか、前記ペーストを印刷および焼成後黒化処理を行うことによって導電性パターンを黒化させることができる。)

5.引用文献5について
引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

e)「【要約】
【課題】ディスプレイの表示面からの出射光や外部からの入射光の反射を防止して、表示画面の視認性を向上させることを目的とする黒化層の形成が容易であり、且つ基材-金属層界面の密着性に優れた薄い黒化層を形成することが可能な金属黒化処理方法を提供する。
【解決手段】少なくとも透明基材、銅メッシュ層、及び黒化層が積層されてなるディスプレイ用電磁波遮蔽フィルタの黒化層を形成するための金属黒化処理方法であって、テルルが溶解された塩酸溶液であり、該塩酸溶液中におけるテルルの濃度(酸化物換算濃度)が0.01?0.45重量%であり、塩酸濃度が0.05?8重量%である金属黒化処理液に、少なくとも透明基材、及び銅メッシュ層を含んでなる積層体を接触させて、当該銅メッシュ層の表面に黒化層を形成する工程を含む、金属黒化処理方法。」

f)「【0048】
〔層構成〕
以下、本発明の電磁波遮蔽フィルタの層構成について説明する。
先ず、図2は本発明による電磁波遮蔽フィルタについて、基本的な形態を例示する模式的断面図である。
図2(A)の電磁波遮蔽フィルタは、透明基材11上に銅メッシュ層14が積層された積層体に対し、銅メッシュ層が露出されている部分に黒化層17が積層された構成である。透明基材11と銅メッシュ層14は直接積層されているが、他の層を介して積層されていてもよい。
例えば、図2(B)の電磁波遮蔽フィルタは、透明接着剤層15が、透明基材11と銅メッシュ層14との間に介在することにより、これら両層を接着積層させている。同図は、銅メッシュ層を銅箔から形成した場合のものであり、その結果、メッシュ状領域の開口部103も含めて透明基材11の全面に透明接着剤層15が存在する形態である。
また、図2(C)は電解メッキ法で電磁波遮蔽フィルタを形成された場合の層構成の例示であり、透明基材11上に導電処理層13が形成され、更にその上に銅メッシュ層14が積層され、更に銅メッシュが露出されている部分に黒化層17が積層されている構成である。

・・・(中略)・・・

【0054】
(黒化層)
黒化層は、ディスプレイの前面に備えて用いる際に、該黒化層に外光を吸収させて外光の反射を防止することを目的として、上記金属黒化処理方法により銅メッシュ層の表面及び側面上に形成される層である。外光の反射を防止することにより、ディスプレイの画像コントラストが向上し、視認性が向上する。」

6.引用文献6について
引用文献6には、要約欄に次の事項が記載されている。

g)

(当審訳:要約
本発明はブラックマトリックス用薄膜製造方法に関することで、特にガラス基板の上にアルミナ(Al_(2)O_(3))層を形成する段階; 前記アルミナ(Al_(2)O_(3))層の上にクロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層を形成する段階; 及び前記クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層の上にクロム(Cr)層を形成する段階を含むブラックマトリックス用薄膜製造方法に対することである。 本発明によるとブラックマトリックス用薄膜の製造の時光遮断効果を向上させることができるアルミナ(Al_(2)O_(3))層を蒸着して形成することで光遮断効果が高いブラックマトリックス用薄膜を提供することができる効果がある。)

7.その他の文献について
また、特開2009-259063号公報(以下、「引用文献7」という。)の段落【0012】には「タッチパネルの製造方法においても、前記第1電極および第2電極の線幅をディスプレイのブラックマトリクスの幅よりも狭く形成」する旨記載されている。更に、特開2010-198615号公報(以下、「引用文献8」という。)の図13,図17には、導電トレース3111の幅よりブラックマトリクス192の幅を大きくすることが示されている。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「ガラス基板8」、「金属配線10および金属配線14」、「ブラックマトリクス46」、「対向基板2」は、それぞれ、本願発明1の「基材」、「電気伝導性パターン」、「暗色化層」、「伝導性基板」に相当するものであり、引用発明は、「基材と、前記基材の少なくとも一面に備えられた電気伝導性パターン、および前記電気伝導性パターンの少なくとも一面に備えられ、前記電気伝導性パターンに対応する領域に備えられた暗色化層を含」む「伝導性基板」であるといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点と相違点とがあるといえる。

〈一致点〉
「基材と、前記基材の少なくとも一面に備えられた電気伝導性パターン、および前記電気伝導性パターンの少なくとも一面に備えられ、前記電気伝導性パターンに対応する領域に備えられた暗色化層を含む、
伝導性基板。」
である点。

〈相違点〉
本願発明1は、
「前記暗色化層が可視になる一面に点光源から出た光を照射して得た反射型回折イメージの反射型回折強度が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、60%以上減少したものであり、」
「前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、」
「前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」
ものであるのに対し、引用発明は、そのような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献3には、暗色化層(ブラックマトリクス46)の材料や線幅についての記載乃至示唆はない。
上記摘記事項b)に記載されるように、引用文献1には、「導電部の入力者側の表面を低反射処理し、金属の反射色が抑制され透光性電極の存在が目立たなくするものであり、低反射処理の具体例としては、化成処理やめっき処理等の表面処理が挙げられ、化成処理は、酸化処理、硫化処理することによって金属表面に低反射層を形成するものであり、例えば極細金属線の素材に銅を使用し、その表面に酸化処理によって酸化皮膜を形成すれば、極細金属線の断面寸法を減じることなくその極細金属線の表面を光反射防止性を備えた黒色に処理する」技術(以下、「引用文献1記載の技術」という。)が記載されており、
上記摘記事項c)に記載されるように、引用文献2には、「透明導電層3における透明誘電体層2とは反対側に、透明粘着剤層4を介して着色層5が設けられ、この着色層5は、波長380?780nmの光の平均吸収率が35?90%であり、波長380?780nmの光の平均吸収率が35?90%の着色層5を設けたことにより、視認面側からの外部光の反射率や、表示素子側からの内部光の透過率が低下する」技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されており、
上記摘記事項d)に記載されるように、引用文献4には、「導電性パターン形成のためのペーストに黒化物質を添加するか、前記ペーストを印刷および焼成後黒化処理を行うことによって導電性パターンを黒化させること」により、「金属光沢が発現され、光の反射などによって視認性が悪くなる問題を、前記導電性パターンを黒化させることによって防止する」技術(以下、「引用文献4記載の技術」という。)が記載されているものの、
引用文献1,2,4には、暗色化層をアルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含むものとすることや、電気伝導性パターンの線幅より所定の値だけさらに大きい幅を有するものとする記載乃至示唆はない。
また、上記摘記事項e)、f)に記載されるように、引用文献5には、「透明基材11上に銅メッシュ層14が積層された積層体に対し、銅メッシュ層が露出されている部分に黒化層17が積層され」、「黒化層は、ディスプレイの前面に備えて用いる際に、該黒化層に外光を吸収させて外光の反射を防止することを目的と」し、「銅メッシュ層の表面及び側面上に形成される」技術(以下、「引用文献5記載の技術」という。)が記載されており、引用文献5には、暗色化層を電気伝導性パターンの線幅より大きい幅を有するものとすることは記載されているものの、暗色化層をアルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含むものとする記載乃至示唆はなく、上記摘記事項g)に記載されるように、引用文献6には、「アルミナ(Al_(2)O_(3))層を形成する段階; 前記アルミナ(Al_(2)O_(3))層の上にクロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層を形成する段階; 及び前記クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層の上にクロム(Cr)層を形成する段階を含むブラックマトリックス用薄膜製造方法」により、「光遮断効果が高いブラックマトリックス用薄膜を提供する」技術(以下、「引用文献6記載の技術」という。)が記載されており、引用文献6には、暗色化層をアルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含むものとすることは記載されているものの、暗色化層を電気伝導性パターンの線幅より所定の値だけさらに大きい幅を有するものとする記載乃至示唆はない。
さらに、引用文献7及び引用文献8にも、暗色化層を電気伝導性パターンの線幅より大きい幅を有するものとすることは記載されているものの、暗色化層をアルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含むものとする記載乃至示唆はない。
したがって、引用発明において、暗色化層の材料や線幅を、「前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、
前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」ものとし、かつ、「前記暗色化層が可視になる一面に点光源から出た光を照射して得た反射型回折イメージの反射型回折強度が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、60%以上減少したもの」とすることが当業者に容易に想到し得たことを示す証拠はなく、技術常識を考慮しても自明といえるものでもない。
よって、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の「前記暗色化層が可視になる一面に点光源から出た光を照射して得た反射型回折イメージの反射型回折強度が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、60%以上減少したものであり、」を「前記暗色化層が可視になる一面に周辺光(Ambient light)を仮定した全反射率測定装置を用いて測定した全反射率(total reflectance)が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、20%以上減少したものであり、」としたものであるが、本願発明1と同様に、引用発明において、暗色化層の材料や線幅を、「前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、
前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」ものとし、かつ、かつ、「前記暗色化層が可視になる一面に周辺光(Ambient light)を仮定した全反射率測定装置を用いて測定した全反射率(total reflectance)が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、20%以上減少したもの」とすることが当業者に容易に想到し得たことを示す証拠はなく、技術常識を考慮しても自明といえるものでもない。
したがって、本願発明2は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明3-14について
本願発明3-14は、本願発明1又は本願発明2を直接又は間接的に引用するものであり、上記「1.本願発明1について」又は「2.本願発明2について」にて述べたのと同じ理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

4.本願発明15-16について
本願発明15は本願発明1を、本願発明16は本願発明2をタッチスクリーンとした発明であり、上記「1.本願発明1について」又は「2.本願発明2について」にて述べたのと同じ理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

5.本願発明17-27について
本願発明17-27は、本願発明15又は本願発明16を直接又は間接的に引用するものであり、上記「1.本願発明1について」又は「2.本願発明2について」にて述べたのと同じ理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
本願発明1及び本願発明15は、「前記暗色化層が可視になる一面に点光源から出た光を照射して得た反射型回折イメージの反射型回折強度が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、60%以上減少したものであり、」
「前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、」
「前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」との構成を有するものであり、
本願発明2及び本願発明16は、「前記暗色化層が可視になる一面に周辺光(Ambient light)を仮定した全反射率測定装置を用いて測定した全反射率(total reflectance)が、前記電気伝導性パターンがAlからなり、暗色化層を含まないことを除いては同一の構成を有する伝導性基板に比べ、20%以上減少したものであり、」
「前記暗色化層は、アルミナ(Al_(2)O_(3))層、クロム酸化物(Cr_(2)O_(3))層およびクロム層の積層構造を含み、」
「前記暗色化層の線幅は、前記電気伝導性パターンの線幅より下記数学式1に応じた値だけさらに大きい幅を有し、
[数学式1]
Tcon×tangentΘ_(3)×2
前記数学式1において、Tconは、前記電気伝導性パターンの厚さであり、Θ_(3)は、タッチスクリーンの使用者の視覚が位置したところから入射した光が前記電気伝導性パターンおよび前記暗色化層のコーナーを通過する時、光が前記基材の表面に対する法線となす角度である」との構成を有するものであり、また、本願発明3-14は、本願発明1又は本願発明2を直接又は間接的に引用するものであり、本願発明17-27は、本願発明15又は本願発明16を直接又は間接的に引用するものであるから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2016-3073(P2016-3073)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 伝導性基板およびそれを含むタッチスクリーン  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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