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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 特29条特許要件(新規)  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1350284
審判番号 無効2017-800092  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2019-04-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第5643872号発明「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 1 本件審判の請求は、成り立たない。2 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 主な手続の経緯
本件特許第5643872号に係る出願(特願2013-93612号)は、平成11年5月6日を出願日とする特願平11-125903号の一部を平成19年6月11日に新たな出願(特願2007-154216号)とし、その一部を平成23年1月18日に新たな出願(特願2011-8226号)とし、さらにその一部を平成25年4月26日に新たな出願としたものであって、平成26年11月7日に特許権の設定登録(設定登録時の請求項の数は4。以下、「本件特許」という。)がされたものである。
これに対し、請求人から、本件特許の無効審判が請求され、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成29年 7月11日 特許無効審判請求
同年 7月25日 上申書提出(請求人)
同年 9月22日 審判事件答弁書提出
同年11月20日付け 審理事項通知
平成30年 1月23日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 1月23日付け、
同年 1月30日差出 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同年 2月 6日 第1回口頭審理
同年 2月14日 上申書提出(請求人)
同年 2月13日付け、
同年 2月14日差出 上申書(2)提出(請求人)
同年 4月 6日 上申書提出(請求人)

第2 本件特許に係る発明
本件特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」?「本件特許発明4」といい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。)。

「【請求項1】
気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキットであって、
水及び増粘剤を含む粘性組成物と、
炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤と、
を含み、
前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物が、前記粘性組成物と、前記複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤とを混合することにより得られ、前記二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の前記増粘剤の含有量が1?15質量%である、
キット。
【請求項2】
前記複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤が、酸として、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、及びリン酸ニ水素カリウムからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記粘性組成物が、増粘剤として、天然高分子、半合成高分子、及び合成高分子からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記粘性組成物が、増粘剤として、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1?3のいずれかに記載のキット。」

第3 当事者の主張
1 請求の趣旨及び無効理由に係る請求人の主張の概要
本件特許の請求項1?4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
無効理由は、下記(1)?(4)のとおりである。
また、証拠方法として書証を申出、下記(5)のとおりの文書(甲第1?9号証、以下、「甲1」などという。)を提出する。

(1)無効理由1
本件特許発明は、発明として完成していないものであるから、特許法第29条第1項柱書の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件特許発明は、発明の詳細な説明において、当該発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されておらず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(なお、請求人は、特許法第36条第4項第1号違反を主張しているが、本件には、平成6年改正特許法が適用されるところ、同趣旨を主張しているものと解されるので、このように認定する。)

(4)無効理由4
本件特許発明は、甲1に記載された発明及び周知技術又は公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(5)証拠方法
甲1:特開昭63-310807号公報
甲2:宇山みつ男・岡部美代治編著、「化粧品成分ガイド 第5版」、
フレグランスジャーナル社、2009年2月25日第5版第1刷、
16?23、38?39頁
甲3:光井武夫編、「新化粧品学」、株式会社南山堂、
1993年1月12日、356?369頁
甲4:鈴木一成著、「SUPER COSMETIC SCIENCE
スーパー・コスメティック・サイエンス-化粧品科学の最前線」、
中央書院、平成4年12月1日、122?129頁
甲5:下平正文 安積和夫監修、「ゲル化粧品で素肌美人 こんなに
きれい」、株式会社コスモトゥーワン、平成8年7月25日、
11?13、44?58、82?114頁
甲6:平野宗彦他、「特集2 シート状化粧品の開発動向 高分子水性
ジェルシートを応用したフェイスマスク」、FRAGRANCE
JOURNAL、1999年2月号、104?107頁
甲7:特開平6-179614号公報
甲8:平成27年(ワ)第8621号 補償金請求事件(以下、「本件関
連侵害訴訟」という。)の平成29年3月30日付け原告(本件特
許の特許権者、以下同じ。)第5準備書面
甲9:本件特許の出願審査過程において出願人(本件特許の特許権者)が
平成26年5月15日に提出した手続補正書(方式)

2 答弁の趣旨及び被請求人の主張の概要
(1)本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。請求人主張の無効理由はいずれも理由がない。
また、証拠方法として書証を申出、下記(2)のとおりの文書(乙第1の1?6の2号証、枝番を含む。以下、「乙1の1」などという。)を提出する。

(2)証拠方法
乙1の1:本件関連侵害訴訟の平成28年6月20日付け原告第1準備
書面
乙1の2:同平成28年8月5日付け原告第2準備書面
乙1の3:同平成28年10月24日付け原告第3準備書面
乙1の4:同平成29年2月17日付け原告第4準備書面
乙1の5:同平成29年3月30日付け原告第5準備書面
乙1の6:同平成29年5月8日付け原告第6準備書面
乙2:DSP五協フード&ケミカル株式会社のウェブサイトの画面印刷
(印刷日:平成29年6月13日)(http://www.ta
tourui.com/usage/)
乙3:新村出編、「広辞苑第六版」、株式会社岩波書店、2008年1月
11日 第六版 第一刷、2438頁(「複合」)
乙4の1:実験成績証明書(1)(作成日:平成28年2月17日、
作成者:株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ
医学博士 日置正人)
乙4の2:実験成績証明書(2)(同上)
乙4の3:実験成績証明書(3)(同上)
乙5の1:特許第4912492号公報
乙5の2:特許第4659980号公報
乙6の1:乙5の2の出願審査過程において出願人(本件特許の特許権者
)が平成16年4月26日に提出した意見書
乙6の2:乙5の2の出願審査過程において出願人(本件特許の特許権者
)が平成16年4月27日に提出した手続補足書

第4 当合議体の判断
当合議体は、本件特許発明について、以下述べるように、無効理由1?4にはいずれも理由がないと判断する。

1 本件特許発明について
(1)本件特許の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。なお、以下、下線は本審決による。
(本a)「【背景技術】
・・・
【0004】
炭酸ガスは血行をよくすることが知られており、炭酸ガスを含む湿布剤が提案されている・・・。しかしながら、・・・炭酸塩と有機酸を用いて発生させた炭酸ガスを水に溶かして溶存炭酸ガスとして利用するものであり、水に溶解する炭酸ガスの絶対量は極めて少ないため、実質的に効果は期待できない。
【0005】
・・・各々コーティングを施したアスコルビン酸と炭酸塩を含有する発泡性固形組成物を開示するが、・・・発生した炭酸ガスを保持する技術的課題は存在しない。
【0006】
・・・その実施例1?5で得られる溶液はいずれも発生する炭酸ガスを保持するのに十分な粘性はなく、発生した炭酸ガスは速やかに空気中に拡散するものである。
【0007】
・・・容器から出されたムース状潤滑剤は速やかに炭酸ガスを失い、性器に塗布する時点では炭酸ガスはほぼ完全に消失している。また、潤滑剤用途のためには非常に薄く塗布する必要があり、炭酸ガスを保持することができないものである。」

(本b)「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0010】
また本発明は、褥創、創傷、熱傷、口角炎、口内炎、皮膚潰瘍、き裂、びらん、凍瘡、壊疽などの皮膚粘膜損傷;移植皮膚片、皮弁などの生着不全;歯肉炎、歯槽膿漏、義歯性潰瘍、黒色化歯肉、口内炎などの歯科疾患;閉塞性血栓血管炎、閉塞性動脈硬化症、糖尿病性末梢循環障害、下肢静脈瘤などの末梢循環障害に基づく皮膚潰瘍や冷感、しびれ感;慢性関節リウマチ、頸肩腕症候群、筋肉痛、関節痛、腰痛症などの筋骨格系疾患;神経痛、多発性神経炎、スモン病などの神経系疾患;乾癬、鶏眼、たこ、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹などの角化異常症;尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症、化膿性湿疹などの化膿性皮膚疾患;除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす、肌荒れ、肌のくすみ、肌の張りや肌の艶の衰え、髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物、該組成物製造用キットを提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0020】
本発明の組成物は、・・・除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす、肌荒れ、肌のくすみ、肌の張りや肌の艶の衰え、髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題などを副作用をほとんどともなわずに治療及び予防あるいは改善でき、また所望する部位に使用すれば、その部位を痩せさせられる。」

(本c)「【0030】
本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物をそばかすを減少させる、もしくは目立たなくさせる目的で使用する場合は、所望の部位のみを覆うよう塗布してもよいが、美白作用や部分肥満を改善する作用などが塗布部位に同時に現れるため、できる限り広範囲に、例えば顔の場合は顔全体に0.5mm以上・・・の厚さに、5分以上・・・塗布する。・・・本発明の組成物は1日1回?数回を週1回以上・・・総塗布回数が10回以上・・・塗布する。塗布終了後は拭き取るか、水などで洗い流すか、あるいはその両方を行ってもよい。
【0031】
本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を美白や肌の引き締め、肌質改善目的で使用する場合は、所望の部位を覆うように0.2mm以上・・・の厚さに、5分以上・・・塗布する。・・・本発明で言う肌質改善とは、滑らかできめが細かく、透明感があって化粧乗りのよい肌にすることを言う。美白効果や肌の引き締め効果、肌質改善効果は本発明の組成物を1回塗布するだけでも得られるが、1日1回?数回を週1回以上・・・可能な限り継続する。・・・
【0032】
本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を肌の若返り目的で使用する場合は、所望の部位を覆うように0.2mm以上・・・の厚さに、5分以上・・・塗布する。・・・本発明で言う肌の若返りとは、微視的皮膚表面の形状において皮溝、皮丘が消失もしくは不明瞭で、部分的もしくは広範囲に角質の剥離が生じている皮膚を皮溝、皮丘が明瞭で整った肌にすることを言う。本発明の組成物は1日1回?数回・・・塗布する。・・・
【0033】
本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、顎などの部分肥満を改善する目的で使用する場合は、所望の部位を覆うように0.2mm以上・・・の厚さに、5分以上・・・1日1回?数回・・・塗布する。・・・
【0034】
本発明の組成物は肌のくすみを取る作用があり、1回の塗布で美白効果が得られるが、該組成物を唇や乳頭などに塗布すれば色素沈着等でくすんだ色のこれらの部位を健康的な色にできる。この場合、本発明の組成物を所望の部位を完全に覆うように0.2mm以上・・・の厚さに、5分以上・・・1日1回?数回・・・効果が現れるまで塗布する。・・・」

(本d)「【0037】
二酸化炭素は、炭酸飲料や発泡性製剤のように短時間、例えば数秒から数分以内に消失するものではなく、本発明の組成物に気泡状態で保持され、持続的に放出される。
【0038】
本発明において、『二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収させることができる組成物』とは、好ましい具体例では、二酸化炭素を5分以上、・・・最も好ましくは2時間以上二酸化炭素を経皮・経粘膜吸収させることができる組成物を意味する。
・・・
【0042】
本発明の組成物は二酸化炭素の持続的経皮・経粘膜吸収が目的であるので、組成物を対象部位に適用する際には組成物中に気泡状二酸化炭素がより多く含まれていることが好ましく、組成物で対象部位を完全に覆うように厚めに塗布することが好ましい。・・・
・・・
【0045】
本発明の組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的、又は皮膚や粘膜に対する美容目的で使用する場合は、該組成物を直接使用部位に塗布することもできる・・・。・・・
【0046】
本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物は、・・・用時調製により使用することも可能である。・・・
・・・
【0064】
また、反応により二酸化炭素を発生する物質を水と増粘剤を含む組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させるか、又は本発明のキットの各成分を混合することにより本発明の組成物中に二酸化炭素を含有、保持させることができる。」

(本e)「【0069】
本発明の組成物は化粧料としては、美白、肌質改善、そばかす改善、肌の若返り、肌の引き締め、部分痩せ、除毛後の再発毛抑制、髪の艶改善効果などがあり、クリーム、ジェル、ペースト、パック、マスクなどの形状で使用できる。また、香料や色材が添加でき、香料としては天然香料、合成香料、調合香料などがあげられる。
【0070】
パックに配合できる添加物としては、パック時の清涼感を付加するために揮発性アルコールとしてエタノールなどを0.1?20重量%配合できる。また皮膚に潤いを与える目的などでポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ソルビトールなどの糖類を0.1?15重量%、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどのムコ多糖類などを保湿剤として0.1?25重量%配合できる。皮膚を軟化させる目的でオリーブ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、流動パラフィン、スクワラン、オレイン酸オクチルドデシルなどの油脂類を0.01?10重量%配合できる。美白、美肌、肌の若返り効果等を増強する目的でビタミンCとその誘導体やアルブチン、コウジ酸などの美白剤を0.01?15重量%、パントテニールエチルエーテルやプラセンタエキスなどの細胞賦活剤などを0.01?20重量%配合できる。アラントインやグリチルリチン塩などの消炎剤を0.01?10重量%、クロルヘキシジンやアクリノールなどの殺菌剤を0.1?20重量%、メチルパラベンや1,2-ペンタンジオールなどの防腐剤などを0.1?25重量%配合することもできる。油脂類の分離を防ぐ目的でポリキシエチレンノニルフェニルエーテルやソルビタンモノステアレートなどの界面活性剤を0.01?10重量%配合できる。
・・・
【0078】
・・・本発明のキットの塩基性組成物もしくは酸性組成物はチューブや広口容器に入れて使用できるが、チューブの場合は空の広口容器に出して二酸化炭素発生補助剤と混合して使う。広口容器の場合は底の角が丸い容器が二酸化炭素発生補助剤と混合攪拌しやすく好ましい。また広口容器の場合は本発明のキットから製造される組成物の体積が塩基性組成物もしくは酸性組成物と二酸化炭素発生補助剤との合計よりも増加するため、これら組成物の体積の1.5倍以上、好ましくは1.6倍以上、より好ましくは1.7倍以上、最も好ましくは1.8倍以上の容量の容器を使用する。容器の材質は塩基性組成物の場合は耐アルカリ性、酸性組成物の場合は耐酸性の材質であればいずれも制限なく使える・・・」

(本f)「【実施例】
【0079】
実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。
実施例1?84
塩基性組成物と酸との組み合わせよりなる本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表1?表7に示す。
・・・
〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕
<発泡性>
塩基性組成物50gと酸1gを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、その体積を測定する。これを10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め、評価基準1に従い発泡性を評価する。
【0080】
<評価基準1>
増加率 発泡性
70%以上 +++
50%?70% ++
30%?50% +
30%以下 0
体積の測定は、各々の測定時点での二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の高さをカップに記し、該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ、それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。
<気泡の持続性>
塩基性組成物50gと酸1gを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。
【0081】
<評価基準2>
減少率 気泡の持続性
20%以下 +++
20%?40% ++
40%?60% +
60%以上 0
体積の測定は、各々の測定時点での二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の高さをカップに記し、該組成物を除去した後でそれらの高さまで水を入れ、それらの水の体積をメスシリンダーで測定する。
・・・
【0089】
実施例85?108
酸性組成物と炭酸塩の組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表8?表9に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、酸(有機酸及び/又は無機酸)を表8、表9のように組み合わせ、酸性組成物をあらかじめ調製する。炭酸塩はそのまま、又は結晶の場合は粉砕して、又は適当な溶媒に溶解又は分散させて用いることもできる。酸性組成物と炭酸塩を混合し、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。
・・・
【0092】
実施例109?144
塩基性組成物と酸の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表10?表12に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表10?表12のように組み合わせ、塩基性組成物と酸の顆粒剤をあらかじめ調製する。この顆粒剤は徐放性であってもよい。塩基性組成物と酸の顆粒剤を混合し、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。・・・マトリックス基剤としては、・・・ポリエチレングリコール、・・・などがあげられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
・・・
【0099】
実施例145?179
酸性組成物と炭酸塩の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表13?表15に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表13?表15のように組み合わせ、酸性組成物と炭酸塩の顆粒剤をあらかじめ調製する。この顆粒剤は徐放性でもよい。酸性組成物と炭酸塩の顆粒剤を混合し、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。
・・・
【0106】
実施例180?226
酸性組成物と塩基性組成物の組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表16?表19に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)を表16?表19のように組み合わせ、酸性組成物と塩基性組成物を予め調製する。
酸性組成物と塩基性組成物を混合し、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。
・・・
【0113】
実施例227?249
炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物の組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表20?表21に示す。
〔製造方法〕
増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表20?表21のように組み合わせ、炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物をあらかじめ調製する。炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物を混合し、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。炭酸塩と酸の複合顆粒剤は炭酸塩と酸が徐放性であってもよい。
<炭酸塩と酸の複合顆粒剤の製造>
マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に炭酸塩と酸を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合はビーカー等の容器中でマトリックス基剤を無水エタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、炭酸塩と酸を溶解又は分散させ、十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し、顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。
<含水粘性組成物の製造>
ビーカー等の容器中で増粘剤を精製水に溶解又は膨潤させる。このとき必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解又は膨潤を促進してもよいし、増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておいて用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。
【0114】
なお、本発明において上記の炭酸塩と酸の複合顆粒の製造方法は本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。
〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕
<発泡性>
含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、その体積を測定する。含水粘性組成物と炭酸塩と酸の複合顆粒剤の混合物を10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め攪拌混合前の体積からの増加率をパーセントで求め、評価基準1に従い、発泡性を評価する。
【0115】
体積の測定は、実施例1?84の〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕の<発泡性>に記載の方法に従い測定する。
<気泡の持続性>
含水粘性組成物50gと炭酸塩1.2g相当量の炭酸塩と酸の複合顆粒剤とを直径5cm、高さ10cmのカップに入れ、10秒間に20回攪拌混合し二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。攪拌混合1分後の該組成物の体積を測定し、その2時間後の体積を測定して体積の減少率をパーセントで求め、評価基準2に従い、気泡の持続性を評価する。
【0116】
体積の測定は、実施例1?84の〔二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の評価〕の<気泡の持続性>に記載の方法に従い測定する。
【0117】
【表20】

【0118】
【表21】

【0119】
実施例250?272
塩基性組成物と酸含有シートの組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表22?表23に示す。
〔製造方法〕
炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、増粘剤、マトリックス基剤、精製水を表22?表23のように組み合わせ、塩基性組成物と酸含有シートをあらかじめ調製する。塩基性組成物と酸含有シートを接触させ、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。
・・・
【0122】
実施例273?294
酸性組成物と炭酸塩含有シートの組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を表24?表25に示す。
〔製造方法〕
炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、増粘剤、マトリックス基剤、精製水を表24?表25のように組み合わせ、酸性組成物と炭酸塩含有シートをあらかじめ調製する。酸性組成物と炭酸塩含有シートを接触させ、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を得る。
・・・
【0125】
実施例295(炭酸塩と酸と含水粘性組成物の組み合わせよりなる閉鎖療法用二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物)
・・・
実施例296(炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物の組み合わせよりなる閉鎖療法用二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物)
・・・
【0126】
・・・
実施例297(塩基性組成物と酸被覆顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物)
・・・
実施例298(炭酸塩及び植物精油含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物)
・・・
実施例299(含水粘性組成物と二酸化炭素よりなる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物)
・・・
試験例6(髪の艶に対する試験)
41歳男性。髪の艶がなくなり、老けた感じに見えるのを気にしていたため、実施例18の組成物20gを1日1回約15分間、毎日髪に塗布したところ、3日目から髪の艶がよくなった。
・・・
試験例8(顔と腹部の部分痩せ試験)
41歳男性。ふっくらした頬と太いウエストを痩せさせたいと希望し、実施例8の組成物を1日1回15分間、毎日右頬に30g、腹部に100g塗布した。2ヶ月後に右頬が5名の評価者全員により明らかに小さくなったと判断された。腹部はウエストが6cm減少した。
試験例9(肌質改善及び顔痩せ試験)
37歳女性。ふっくらした頬と荒れ肌、肌のくすみに悩み、種々の化粧品を試したが効果が得られなかった。実施例20の組成物50gを1日1回10分間、毎日顔全体に塗布したところ、1回目の塗布で肌のくすみが消えて白くなり、きめ細かい肌になった。2週間後には3名の評価者全員により、顔が小さくなったと判断された。
・・・
試験例13(腕の部分痩せ試験)
36歳女性。二の腕の太さを気にしていたため、実施例18の組成物30gを左の二の腕に塗布し、食品包装用フィルム(・・・)をその上からまいて6時間放置したところ、二の腕の周囲長が2cm減少した。
・・・
試験例26(そばかすについての試験)
38歳女性。長年そばかすに悩み、様々な化粧品を使用するも効果がなかったため、実施例298の組成物26.2gを1日1回20分間、毎日顔全体に塗布したところ、3日目でほくろの方が目立つほどにそばかすが薄くなった。
・・・
試験例33(除毛後の再発毛抑制試験)
38歳女性。腋のむだ毛を週2回剃刀で剃っていたが、剃刀で剃る回数を少なくできないかと悩んでいた。実施例135の組成物30gを両腋の下に各15gずつ1日1回15分間、毎日塗布したところ、1ヶ月後以降は腋のむだ毛は1度剃るとその後の再発毛が遅れ、1週間に1回剃刀で剃るだけでよくなった。
・・・
実施例302
水200mlにヒドロキシプロピルメチルセルロース4g、CMC-Na8g、炭酸水素ナトリウム2.4g、メチルパラベン0.2g、酢酸トコフェロール1g、ゼラニウム抽出液0.1g、ローズウッド抽出液0.1g、グレープフルーツ抽出液0.1g、銅クロロフィリンナトリウム微量を加え、ハンドミキサーで固形分が完全に分散、もしくは溶けるまで攪拌し、緑色の非常に粘稠な塩基性組成物215.9gを得た。その25gを計り取り、クエン酸コート白糖顆粒1.2gを加えて顆粒が完全に溶けるまで混合攪拌し、多量の気泡を含んだ薄緑色の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを得た。
・・・
実施例307
水10kgにヒドロキシプロピルメチルセルロース300g、CMC-Na500g、炭酸水素ナトリウム120g、月見草油5g、シソ抽出液5g、シコン抽出液5g、ニンジン抽出液5g、ローズマリー抽出液5g、ソウハクヒ抽出液5g、0.5%銅クロロフィリンナトリウム水溶液8g、天然ビタミンE油10g、フェノキシエタノール100gを加え、スターラーで固形分が完全に分散、もしくは溶けるまで攪拌し、ダークグリーンの非常に粘稠な塩基性組成物11.063kgを得た。その25gを計り取り、クエン酸コート白糖顆粒1.2gを加えて顆粒が完全に溶けるまで混合攪拌し、多量の気泡を含んだライトグリーンの二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを得た。
・・・
実施例309
水200mlに炭酸水素ナトリウム2g、アルギン酸Na6g、CMC-Na8g、1,3-ブチレングリコール2g、銅クロロフィリンナトリウム微量を加え、スターラーで固形分が完全に分散、もしくは溶けるまで攪拌し、暗緑色の非常に粘稠な塩基性組成物218gを得た。その25gを計り取り、クエン酸コート白糖顆粒1.2gを加えて顆粒が完全に溶けるまで混合攪拌し、多量の気泡を含んだペールグリーンの二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを得た。
・・・
実施例326
水200mlに炭酸水素ナトリウム2g、アルギン酸Na6g、CMC-Na8gを加え、スターラーで固形分が完全に分散、もしくは溶けるまで攪拌し、非常に粘稠な塩基性組成物214gを得た。その25gを計り取り、クエン酸コート白糖顆粒1.2gを加えて顆粒が完全に溶けるまで混合攪拌し、多量の気泡を含んだ黄白色の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを得た。
・・・
試験例35(組成物の流動性の評価試験)
1)塩基性もしくは酸性組成物の流動性
・・・
2)二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の流動性
本発明に用いる二酸化炭素経皮・経粘膜吸収組成物は、表面が滑らかな長さ40cmのガラス板の端に、その1gを直径1cmの円盤状に塗り、その円盤が上に来るように水平面に対して60度の角度で立てたときに、5秒後の該組成物の円盤の移動距離が15cm以内のものはそのまま皮膚粘膜に塗布して使うことができる。・・・
【0128】
本試験に供した実施例1?249、297?327の組成物はすべて移動距離が15cm以内であり、そのまま皮膚粘膜に塗布して使うことができるものであった。
試験例36(皮膚の若返り試験)
33歳の女性の右頬に実施例302の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを1日1回、1回15分間のパックを毎日、1ヶ月間続けた。試験開始から1ヶ月目にビデオスコープに20倍の拡大レンズを装着してこの女性の両頬の拡大写真を撮影した。対照として、4歳女児の右頬の写真を同様に撮影した。皮膚科医がこれらの写真を観察し、33歳女性の右頬の写真は4歳女児の右頬の写真と非常に近い皮溝パターンを示し、かつ肌のくすみが取れて若々しい肌であると評価した。一方左頬の写真は典型的な30代女性のみずみずしさを失った皮膚パターンを示していると判断し、本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物に肌の若返り効果があると評価された。
試験例37(顔の部分痩せ試験)
29歳の女性の右頬に実施例309の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを1回20分間、毎日塗布し、これを1ヶ月間続けた。本試験実施前日と終了翌日の2回正面からこの女性の顔写真を撮り、スキャナーでコンピュータに画像を読み込み、写真の縮尺率、撮影時の顔の傾きの補正を行ない、顔の横幅の変化を測定した結果、本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を塗布した頬が顔の横幅の割合で10.9%減少したことが明らかとなった。また本発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を塗布した頬が美白効果によって白くなったことも確認された。なお、この女性は試験期間中に体重が1kg増えたと申告したが、該組成物非塗布側の頬は顔の横幅の割合で15.2%増加していた。
試験例38(手の美白効果試験)
33歳の女性の右手の甲全体に実施例307の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを塗布した。5分後に該組成物をティッシュペーパーで除去した後、水で完全に洗い流し、タオルで手を拭いて左手と比較したところ、明らかに右手が白く透明な感じの肌になった。この美白効果は翌朝も持続した。
・・・
【0130】
・・・
試験例41(手の甲の美肌・美白試験)
33歳の女性の右手の甲全体に実施例307の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを塗布し、左手の甲全体に月見草油0.1g、シコン抽出液0.1g、ローズマリー抽出液0.1g、シソ抽出液0.1g、ソウハクヒ抽出液0.1g、ニンジン抽出液0.1gの混合液を塗布した。5分後に両手の甲を水で塗布物が完全に取れるまで洗い、タオルで手を拭いて両手を比較したところ、明らかに右手の甲が白く透明な感じの肌になったのに対し、左手の甲はやや肌が滑らかになり、若干の美白効果が感じられたに過ぎず、肌の透明感が認められることはなかった。右手甲の美白効果は翌朝も持続した。この結果から、本発明の組成物はハーブエキスの塗布よりも強い美肌、美白効果を有することが示唆された。
試験例42(手の甲の美肌・美白試験)
33歳の女性の右手の甲全体に実施例307の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物26.2gを、左手の甲全体に実施例326の組成物26.2gを塗布した。5分後に両手の甲を水で塗布物が完全に取れるまで洗い、タオルで手を拭いて両手を比較したところ、両手の甲共に試験前と比較して白く透明な感じになったが、右手の甲がより白く透明な感じの肌になった。両手甲の美白効果は翌朝も持続した。この結果及び試験例41の結果とを考え併せると、本発明の組成物は強い美肌、美白効果を有するとともに、ハーブエキスの経皮吸収効率を高め、ハーブエキスとの相乗効果をも有することが示唆された。」

(2)上記(1)からみて、本件特許発明について概ね次のことがいえる。
ア 従来から、炭酸ガス(すなわち、二酸化炭素)は血行をよくすることが知られており、また、炭酸塩と有機酸とを用いて炭酸ガスを発生させる技術が知られていたが、発生した炭酸ガスを保持する技術は知られていなかった(上記(本a))。
そこで、二酸化炭素を保持し、持続的に放出できる組成物を提供することを目的として、反応により二酸化炭素を発生する物質を水及び増粘剤を含む粘性組成物中で反応させると、気泡状で保持され、持続的に放出されるという知見に基づき(上記(本d))、「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」とを混合することにより得られる「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」とすることで、二酸化炭素を保持し、持続的に放出できるようにしたものである。
そして、本件特許発明においては、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に経皮・経粘膜吸収できるようにすることを解決課題とし、「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物」は、皮膚粘膜損傷、生着不全、歯科疾患などの疾患の他、美容上の問題及び部分肥満に有効な組成物を製造するためのキットとできるものであり(上記(本b))、化粧料としてパックの形状で使用できるものであることから(上記(本e))、「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」として、この組成物で対象部位を覆うように塗布して、二酸化炭素を持続的に経皮・経粘膜吸収できるようにすることで、上記課題の解決を図るものである(上記(本d))。

イ そして、上記課題を解決できることは、本件特許の発明の詳細な説明に、パック化粧料の各種用途の用法用量について記載されているように(上記(本c))、パック化粧料は、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出することにより、経皮・経粘膜吸収させるものであることからも理解でき、パック化粧料の効果は、二酸化炭素の経皮・経粘膜吸収により奏されるものであることも理解できる。

ウ また、本件特許発明は、「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」との組み合わせからなるものであるところ、この組み合わせに関する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物に関する実施例227?249には、発泡性や気泡の持続性を確認したことが記載されている(上記(本f))。
そして、パック化粧料の用途に関連する試験例として、試験例6、8、9、13、26、33、36、37、38、41、42が記載されており、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を適用することで、髪の艶、部分痩せ、肌質改善などに有効であったことが示されている(上記(本f))。
ここで、上記試験例では、実施例227?249ではなく、「増粘剤を含有する塩基性組成物」と「酸」との組み合わせからなる他の実施例の組成物が用いられている。
しかしながら、実施例1?294には、さらに「増粘剤を含有する酸性組成物」と「炭酸塩」との組み合わせ、あるいは「増粘剤を含有する酸性組成物」と「増粘剤を含有する塩基性組成物」との組み合わせなど各種の組み合わせが記載されており(上記(本f))、それらがいずれも水と増粘剤を含む粘性組成物中で炭酸塩と酸が反応することで二酸化炭素が発生し、発泡性、気泡の持続性を有することが確認されている。
そして、パック化粧料の用途に関する効果は、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出することにより奏されるものであることが理解できるのであるから、当業者であれば、本件特許発明に相当する実施例227?249の組成物を用いても、上記試験例の結果と同様に、二酸化炭素を発生させることができ、髪の艶、部分痩せ、肌質改善などに有効であることを合理的に推認できる。

2 証拠の説明及び証拠に記載された事項
(1)甲1は、発泡性化粧料の技術を開示する特許公報であり、次の記載がある。
(甲1a)「2.特許請求の範囲
(1)酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料。」(1頁左欄4?9行)

(甲1b)「(技術分野)
本発明は、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させる、ガス保留性、経日安定性、官能特性及び皮膚安全性に優れた発泡性化粧料に関する。」(1頁左欄11?15行)

(甲1c)「2剤型である為経日安定性に優れ、炭酸塩と水溶性高分子をポリエチレングリコールで被覆してなる第2剤と酸性物質である第1剤を用時混合する際に、炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を生成し、炭酸ガスの保留性が高まる事を見出し、本発明を完成するに至った。」(1頁右欄6?13行)

(甲1d)「第1剤と第2剤の使用割合は、重量比で100:1?1:1である。特に反応後の混合液がpH4.5?6.5になる様に第1剤と第2剤を混合する事が好ましい。
発泡性化粧料を使用するには、第1剤を容器に入れ、第2剤を加え、数十秒間撹拌した後適宜使用する。
・・・
また、当該発泡性化粧料は、ローション、エッセンス、ミルク、パック、ソープ等に適用する事が出来る。」(3頁左上欄19行?同頁右上欄11行)

(甲1e)「実施例1?11
〔発泡性エッセンス〕
第1表の組成の如く、発泡性エッセンスを調製し、前記の諸試験を実施した。
〔調製方法〕
<第1剤>
水にクエン酸を加えて撹拌し、均一に混和する。尚、クエン酸が溶け難い場合は適宜加熱する。
<第2剤>
約80℃にて、ポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し、熱時、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを加え、均一に混合した後室温まで冷却し、ポリエチレングリコールで被覆した粉末とした。
〔特性〕
第1表に示す如く、本発明の発泡性エッセンスは、発泡性、ガス保留性、経日安定性に優れ、また、官能特性等諸試験の総てに優れており、本発明の効果は、明らかであった。
第1表

」(3頁右下欄14行?4頁下欄第1表)

(甲1f)「比較例1?3
〔発泡性エッセンス〕
第2表の組成の如く発泡性エッセンスを調製し、前記諸試験を実施し、その特性を下段に示した。
〔調製方法〕
<第1剤>
(比較例1?3)
水にクエン酸を加えて撹拌し、均一に混合溶解する。尚、クエン酸が溶け難い場合は、適宜加温する。
<第2剤>
(比較例1)
常温でポリエチレングリコール(分子量4000)、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを均一に混和し、粉末とした。
(比較例2)
常温で炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを均一に混和し粉末とした。
(比較例3)
約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し、熱時、炭酸水素ナトリウムを加え、均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末とした。
〔特性〕
第2表に示す如く、第2剤調製時、炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムをポリエチレングリコールで被覆することなく単に混和しただけの比較例1は、実施例2に比べ発泡性はまずまずであったがガス保留性に著しく劣り、経日安定性にも劣った。
ポリエチレングリコールを用いなかった比較例2も同様の特性を示した。
第2剤に水溶性高分子を配合しなかった比較例3は、発泡性、経日安定性は良好であったがガス保留性に著しく劣り、泡の外観(キメ)も悪く粘度も不足していた。
第2表

」(5頁左上欄1行?同頁左下欄第2表)

(甲1g)「比較例4?10
〔1剤式発泡エッセンス〕
第3表の組成の如く、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンスを調製し、用時に10倍量(重量)の水と混合した。前記諸試験を実施し、その特性を下段に示した。
〔調製方法〕
(比較例4、5)
約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し、熱時、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、アルギン酸ナトリウムを加え、均一に混合した後、室温まで冷却し粉末とした。
(比較例6)
約80℃にてポリエチレングリコールを溶解し、熱時、炭酸水素ナトリウム、クエン酸を加え均一に混和した後室温まで冷却し、粉末とした。
(比較例7)
常温にて、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、アルギン酸ナトリウムを均一に混和した後粉末とした。
(比較例8)
常温にて、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール(分子量4000)を均一に混和し、粉末とした。
(比較例9)
約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し、熱時、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、クエン酸を加え均一に混和し、粉末とした。
(比較例10)
(1) 約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し、熱時アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末とした。
(2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し、熱時クエン酸を加えて均一に混合した後、室温まで冷却し粉末とした。
(1)に(2)を加え均一に混和した。
〔特性〕
第3表に示す如く、実施例2より水を除いた組成とほぼ同一な組成である比較例4、8?10は発泡性、ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが、経日安定性に著しく劣った。
配合比率を変えた、比較例5及びアルギン酸ナトリウムをのぞいた比較例6、ポリエチレングリコールを除いた比較例7でも経日安定性の改善にはいたらなかった。
第3表

」(5頁右下欄1行?6頁下欄第3表)

(2)甲2は、化粧品に関する書籍であるが、本件特許の出願日(遡及日)後のものである。

(3)甲3は、化粧品に関する書籍であるところ、基礎化粧品について記載されており、エッセンス(美容液)、パック・マスク、ひげそり用化粧料などと並んで、ジェルについて次の記載がある。
(甲3a)「1-6 ジェル
1-6-1.ジェルの目的・機能
ゼリーあるいはジェルと呼称される剤型で,外観状態が均一で透明?半透明を示しており水々しい感触を与える.かつては,水性ジェルの特徴である水々しくさわやかな使用感を生かして,サマー用化粧下地などに利用されてきた.最近では各種製剤技術が開発され多種の水性・油性ジェルが市場に現われ,水分補給,保湿以外の機能,すなわち血行促進,洗浄・メーク落し用製品として好評を得ている.」(357頁5?11行)

(甲3b)「表1-10.ジェルの目的・機能別分類」(357頁)に「目的・機能」の項に「血行促進(マッサージ用)」、「ジェルタイプ」の項に「水性ジェル」、「特徴」の項に「水性ジェルなので水々しい感触と高分子のすべりを利用して,なめらかなのびでマッサージしやすい.保湿剤が多く水が少ない系では温熱を感じる」と記載されている。

(4)甲4は、化粧品に関する書籍であり、マッサージに関する記載、メイクに関する記載ともに、パックについて次の記載がある。
(甲4a)「肌の血行をよくするはたらきをするのに、マッサージの他にパックがあります。肌の疲れをいやし、リフレッシュさせてくれるのです。パック剤を均等な厚さで肌の表面に塗り、一定の時間、静かに置いておきます。その間に、パック剤からの水分と、肌から蒸泄されてくる水分とによって、潤いがもたらされます。」(125頁8行?126頁2行)

(5)甲5は、オイルフリーであることを特徴とするゲル化粧品に関する書籍であり、ゲル化粧品を使用した読者からの感想や、当該ゲル化粧品に関する説明について次の記載がある。
(甲5a)「シミ、くすみがとれて『幸せな私』に!」(46頁3行)
(甲5b)「家族で悩んでいたアレルギーがゲルで解消」(50頁6行)
(甲5c)「肌の白さが戻りシミ、ソバカスが薄くなった」(54頁1行)

(甲5d)「ゲルは、大量の水分を吸収し、しかもその水分を逃さずに抱え込んでいます。ゲルには親水基(水と結合しやすい原子団)が、多く含まれ、この親水基が水を吸ったときにちょうど網目のような形になり、水をしっかり抱えて離さないのです。
このゲルは人間の細胞と同じような性格をもっているため、これを化粧品に使うことができれば、驚異的な効果をえることができるだろうことは、従来からよく知られていることでした。」(83頁13行?84頁4行)

(甲5e)「ゲルがなぜ注目され始めたのか
・・・
彼女たちは油脂の過酸化の害、乳化剤の害の被害者でもあったのです。」(85頁1?7行)

(甲5f)「ゲル化粧品は天然素材にこだわって作られた
・・・
ゲル化粧品に含まれる天然のゲルには大きく分けて、海のゲル、・・・の4種類があります。・・・
●海のゲル
・・・海草はその海水の成分をバランスよく含むといわれます。
日本人は古くからこの海草を食生活に取り入れてきました。・・・養毛・育毛や美肌に海草が効くことを知っていたのです。
・・・
・・・小ジワ、タルミ、荒れ性、乾燥肌の改善に大きな威力を発揮します。」(86頁1行?87頁9行)

(甲5g)「きわめて画期的、革命的なゲル化粧品
・・・
油が酸化した過酸化脂質がシミ、シワ、肌荒れの原因になる・・・。
従来の化粧品、合成化粧品、自然化粧品などは、ともに油が含まれている・・・。
・・・
皮脂膜を溶かし、皮膚細胞を破壊する乳化剤を毎日塗ったのでは、どんなに丈夫な皮膚も悲鳴を上げてしまいます。
しかしゲル化粧品はオイルフリー。油分をまったく使っていませんから、乳化剤を添加する必要はありません。
・・・
・・・素肌美を回復する力、老化を予防する実力があってこそはじめて、ゲル化粧品の有用性が証明されるといってよいでしょう。」(91頁8行?92頁13行)

(6)甲6は、化粧品に関する論文であるところ、次の記載がある。
(甲6a)「2.高分子水性ジェルシートの特長
・・・ジェル部分で皮膚を密封することにより皮膚の水分蒸散が抑えられ角質層が膨潤しやすい状態になる。これにより肌に有用な成分の吸収促進が期待できる。」(105頁左欄1?10行)

(7)甲7は、パック化粧料の技術を開示する特許公報であり、次の記載がある。
(甲7a)「【請求項1】アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料。」

(甲7b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のアルギン酸塩類を含む粉末状のパック化粧料は、次のような問題点があった。
(1)水を加えてかきまぜる際、ダマになりやすく、顔に塗布する際、均一な膜になりにくい。これは、アルギン酸水溶性塩類が一般に水に溶けにくいためである。」

(甲7c)「【0004】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、水とまざりにくい原因として、アルギン酸水溶性塩類の溶解性が挙げられることから、アルギン酸塩類についてはあらかじめ水に溶解させてゲル状とさせ、また反応が進行しないように、ゲル状パーツと粉末パーツの2パーツに分けることにより、使用性が良好で、経時で安定なパック化粧料が得られることを見い出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料である。
【0005】本発明のパック化粧料は、洗い落とす面倒のない、剥がすタイプのものでありながら、乾燥時間が短く、しかも皮膚に適度な緊張感があり、剥がすとき肌に残りにくく、とりやすい特色を有するほか、使用性が良好で、経時的にも安定であるという特徴がある。本発明のパック化粧料にあっては、使用直前にゲル状パーツと粉末パーツを混合する。この際、ゲル状パーツに含まれるアルギン酸水溶性塩類(例えばアルギン酸ナトリウム)と、粉末パーツに含まれる二価以上の金属塩(例えば硫酸カルシウム)とが水の存在下で化学式1に示すような硬化反応を起こして皮膚形成能のあるアルギン酸金属塩(例えばアルギン酸カルシウム)となり、この結果、弾力性のある凝固体が与えられる。その時、遅延剤(例えばリン酸三ナトリウム)の働きにより化学式2に示すような遅延反応も同時に起こって上記硬化反応の急激な進行が阻止される。」

(8)甲8は、本件関連侵害訴訟における特許権者による書面であるところ、次の記載がある。
(甲8a)「前腕内側に塗布することが困難であり、腕を少し傾けると零れ落ちそうになり、実験中、塗布部で一定に保持させることが困難であった。」(5頁1?2行)

(9)乙4の3は、特許権者が有する別件特許に関連した侵害訴訟において提出した書面であるところ、次の記載がある。
(乙4の3a)「5.実験内容
5-1.二酸化炭素発生パック剤の調製
鐘紡発明を利用した二酸化炭素発生パック剤として、表1に示す第1剤及び第2剤からなる用時混合型発泡性化粧料を調製した。なお、当該用時混合型発泡性化粧料の組成及び製造方法は、特開昭63-310807号公報の実施例9と同じである。」(1頁下から10?6行)

(乙4の3b)「5-3.実験結果
5-3-1.二酸化炭素の保持特性
・・・
鐘紡発明を利用した二酸化炭素発生パック剤では、第1剤への第2剤の添加直後に急激に発泡し、体積が、混合前の第1剤に比べて約3倍に増加した。第2剤の添加直後は液状であったが、1分間の撹拌操作後には粘性が認められた。但し、1分間の撹拌操作後では、体積が混合前の第1剤に比べて約1.2倍にまで低下しており、しかもダマ(第2剤が溶解せずに残った塊)が発生していた。撹拌操作終了から30分後以降では、体積が混合前の第1剤と殆ど同じになっていた。即ち、鐘紡発明を利用した二酸化炭素発生パック剤では、第1剤と第2剤の混合直後に大量の二酸化炭素が空気中に放出され、気泡状の二酸化炭素を安定に保持できないことが確認された。」(3頁3?20行)

3 無効理由1(29条1項柱書)について
(1)請求人は、最高裁判所第一小法廷判決昭和49年(行ツ)第107号審決取消請求事件、昭和52年10月13日で判示されたことを前提として、要するに、本件特許の発明の詳細な説明に記載されている試験例は、これらの詳細な条件や、評価手法などの記載がなく具体性に欠けるため、これらは全体として信用できないから、本件特許発明の技術内容によってその目的とする技術効果を挙げられることが立証されておらず、発明として未完成であると主張する。

(2)上記請求人の示す裁判例には、次のように判示されている。

特許法(以下「法」という。)2条1項は、「この法律で『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、「発明」は技術的思想、すなわち技術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当であり、技術内容が右の程度にまで構成されていないものは、発明として未完成のものであつて、法2条1項にいう「発明」とはいえないものといわなければならない(当裁判所昭和三九年(行ツ)第九二号同四四年一月二八日第三小法廷判決・民集二三巻一号五四頁参照)。

上記裁判例が判示するところによれば、当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていれば、発明として未完成のものとはいえないといえる。
そこで、これを踏まえて検討する。本件特許発明の目的とする技術効果は、上記1(2)イのとおり、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出することにより、経皮・経粘膜吸収させることでパック化粧料としての効果を奏するものとすることといえる。そして、上記1(2)ウのとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、実施例において、本件特許発明の二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を製造し、発泡性や気泡の持続性を確認したことが記載されており、試験例から、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物がパック化粧料の用途において効果を奏することを合理的に推認できる。
したがって、このような本件特許の発明の詳細な説明の記載に接した当業者であれば、本件特許発明について、反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていると理解できるといえる。
よって、本件特許発明が未完成であるとはいえない。

(3)請求人は、本件特許発明が未完成である理由として、各試験の原データ及び被験者の情報の開示は一切なく、実験乃至試験が実際に行われたか明らかでないこと、仮に実験乃至試験がなされていたとしても、各試験例に使用された組成物が発明の詳細な説明に記載された実施例の組成物であったかどうか明らかでないこと、発明の詳細な説明のその他の記載をみても、本件組成物に本件特許発明が所期する技術効果が実際に確認されたことを窺い知ることはできないことを挙げる。
さらに、発明の詳細な説明の実施例のうち、例えば実施例85?108など、試験例に全く使用されていないものは、架空のものであるから、試験例そのものも架空であることの合理的疑いが生じていること、そもそも気泡状の二酸化炭素が経皮吸収されることはないから、その意味でも本件特許発明は未完成であると主張する。
しかしながら、上記1のとおり、本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例、試験例には、具体的な組成、製造方法、試験方法及び結果が示されている。そして、本件特許発明は、二酸化炭素を組成物中に保持し、持続的に放出させることにより技術効果を挙げるものであることも理解できる。
したがって、各試験の原データ等の開示がないことや、二酸化炭素の発泡性、気泡の持続性は確認しているが、二酸化炭素の経皮吸収による有効性が確認されていない実施例が存在するからといって、それだけの理由で、実施例、試験例が架空のものであるとか信憑性に欠けるなどということにはならない。
また、本件特許の発明の詳細な説明に、気泡状の二酸化炭素を経皮吸収させるとは記載されていないから、この点に関する請求人の主張は前提において誤りである。

(4)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1には、理由がない。

4 無効理由2(36条6項1号)について
(1)請求人は、「特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するといい得るには、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明に、当業者において、特許請求の範囲に記載された課題が解決されるものと認識し得る程度の記載ないし示唆があるか、又は、その程度の記載や示唆がなくとも、当該発明の特許出願時の技術常識に照らし、当業者において、当該課題が解決されると認識し得るものであることを要する(知財高裁平成21年8月18日第4部判決・判タ1331号252頁)。」ことを前提として、要するに、次のように主張する。
すなわち、本件特許の発明の詳細な説明には、課題に関して多数の疾患等の治癒が挙げられているところ、実施例では、発泡性と持続性についての実験結果が記載されているのみで、試験例はあるものの全ての疾患に関する課題が解決されたことは示されていないうえ、評価方法が妥当でなく、疾患等を治癒する機序の記載がないなど記載が不充分であること、さらに、疾患等の治癒等には気泡状の二酸化炭素の経皮吸収以外の要因が作用した可能性もあるところ、その構成要素が発明特定事項にも本件特許明細書にも記載されていないことから、本件特許発明を実施例に限定して検討しても、多数の課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえず、実施例以外のパック化粧料を得るためのキットについても課題が解決できることを当業者が認識できるとはいえない旨主張する。

(2)そこで検討するに、発明の詳細な説明に疾患等の治療に関する課題も記載されており、それら全ての疾患等の治癒について試験例などによって課題が解決できることが示されていないからといって、そのことで本件特許発明がサポート要件に違反しているということにはならない。

(3)すなわち、発明の詳細な説明の記載から複数の課題が把握できる場合は、そのうちのいずれかの課題を解決するための手段が請求項に反映されていることを要するところ、本件特許の発明の詳細な説明には、疾病などの治療の他、「除毛後の再発毛抑制(むだ毛処理);そばかす、肌荒れ、肌のくすみ、肌の張りや肌の艶の衰え、髪の艶の衰えなどの皮膚や毛髪などの美容上の問題及び部分肥満に有効な二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物、該組成物製造用キットを提供することを目的とする」ことも記載されている(上記(本b))。
そうすると、本件特許発明はパック化粧料を得るためのキットに特定されており、上記1(2)アのとおり、本件特許発明は、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に経皮・経粘膜吸収できるようにすることを解決課題とし、「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」として、この組成物で対象部位を覆うように塗布して、持続的に経皮・経粘膜吸収できるようにすることで、上記課題の解決を図るものであることを、当業者は認識できるといえる。

(4)そして、上記1(2)イのとおり、パック化粧料の用途に関する効果は、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出することにより奏されるものであることが理解できるところ、上記1(2)ウのとおり、実施例及び試験例から、本件特許発明の「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」が、二酸化炭素を発生させることができ、パック化粧料の用途に関する効果を奏することを当業者は理解できるものである。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであると認められる。
ここで、化粧料の分野では、物理、化学的測定による数値などを伴わない官能評価は一般的に用いられる手法であるから、効果に関して官能評価の結果しか示されていないとしても、それだけでサポート要件に違反するとはいえない。

(5)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由2には、理由がない。

5 無効理由3(36条4項)について
(1)請求人は、「本件特許発明のように、一定の組成割合を有する公知の物質から成るものに係る発明においては、一般に、当該組成割合を構成する物質の名称及びその組成割合が示されたとしても、それのみによっては、当業者が当該用途の有用性を予測することは困難であり、当該組成物を当概用途に容易に実施することができないから、そのような発明について実施可能要件に適合するといい得るには、発明の詳細な説明に、当該用途の有用性を裏付ける程度に当該発明の目的、構成及び効果が記載されていることを要する(前掲知財高裁平成21年8月18日第4部判決)。」ことを前提として、要するに、本件特許の発明の詳細な説明には、用途に関して疾患の治療が挙げられているところ、例えば、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、スモン病等の現代医学をもってしても特効薬がないような症状についても、短期間で劇的に治癒するような記載がされているが、そのような作用効果があるかについては一切記載されておらず、仮に一部でも疾患の治癒があったとしても、それは気泡状の二酸化炭素の経皮吸収以外の要因が作用した可能性があり、その説明も一切されていないので、本件特許明細書に挙げられる多数の疾患等一般について、作用効果を奏することを裏付ける程度の記載がされているとは到底いえない旨主張する。

(2)そこで検討するに、実施可能要件に関しては、本件特許発明のような物の発明の場合、その発明を実施することができるとは、その物を製造し、かつその物を使用できることである。
そして、これについて、本件特許の発明の詳細な説明には、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物は、二酸化炭素を気泡状態で保持し、持続的に放出し、5分以上、最も好ましくは2時間以上経皮・経粘膜吸収させることができるものであるところ(上記(本d))、実施例227?249に、本件特許発明に係る二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の具体的な製造方法が記載され、発泡性や気泡の持続性を確認したことが記載されている(上記(本f))。したがって、当業者は、本件特許発明に係る二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物を、過度の試行錯誤を要することなく製造することができる。
また、パック化粧料及びキットについても具体的に記載されており(上記(本c)、(本e))、試験例35には、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物としたときにそのまま皮膚粘膜に塗布して使うことができることも記載されている(上記(本f))。これらの記載に加え、本件特許の出願時の技術常識も考慮すれば、当業者は、本件特許発明に係る気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキットを製造でき、また使用できることを、容易に理解できる。
以上のように、発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明を、製造できかつ使用できるように記載されているから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

(3)請求人は、疾患の治療に関して実施可能に記載されていない旨主張しているが、本件特許発明は、「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」に特定されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物の用途の一つとして疾患の治療が記載されており、仮に、疾患の治療に関して実施可能に発明の詳細な説明が記載されていないとしても、それは、本件特許発明に関することではなく、そのことのみでは、実施可能要件違反とはならない。請求人の主張は前提において誤りである。

(4)小括
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由3には、理由がない。

6 無効理由4(29条2項)について
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1の上記(甲1a)及び(甲1e)の実施例1?11からみて、甲1には、次の「甲1-1発明」が記載されていると認められる。

「クエン酸を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとをポリエチレングリコール(分子量4000)で被覆した粉末を第2剤とする用時混合型発泡性エッセンス。」

イ また、甲1の上記(甲1f)の比較例2からみて、甲1には、次の「甲1-2発明」が記載されていると認められる。

「クエン酸を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを均一に混合した粉末を第2剤とする用時混合型発泡性エッセンス。」

(2)甲1-1発明を主引用発明とする理由について
ア 本件特許発明1との対比
(ア)甲1-1発明の「クエン酸」は、本件特許発明1の「酸」に相当し、甲1-1発明の「炭酸水素ナトリウム」は、本件特許発明1の「炭酸塩」に相当する。
また、甲1-1発明の「アルギン酸ナトリウム」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0058】「本発明で増粘剤に用いる半合成高分子の中のアルギン酸系高分子としてはアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどがあげられる。」からみて、本件特許発明1の「増粘剤」に相当する。

(イ)甲1-1発明は「用時混合型」であり、使用時に第1剤と第2剤とを混合するものであるから、使用前には第1剤と第2剤とが分けられていることは自明である。したがって、第1剤と第2剤とで「キット」ということができる。
そして、本件特許発明1の「キット」も「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」とに分けられているところ、甲1-1発明の「クエン酸を水に溶解して得られる水溶液」である「第1剤」は「酸」を含み、「アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとをポリエチレングリコール(分子量4000)で被覆した粉末」である「第2剤」は「増粘剤」と「炭酸塩」とを含むから、甲1-1発明と本件特許発明1とは、「酸を含む成分」と「増粘剤を含む成分」とを含む点で共通し、甲1-1発明は「増粘剤を含む成分」に「炭酸塩」を含み、本件特許発明1は、「酸を含む成分」に「炭酸塩」を含むことから、甲1-1発明と本件特許発明1とは、「増粘剤を含む成分又は酸を含む成分のいずれか一方に炭酸塩が含まれている」点で共通する。

(ウ)甲1-1発明の「エッセンス」と、本件特許発明1の「パック化粧料」とは、「化粧料」である点で共通する。
また、甲1-1発明は、上記(甲1d)のとおり、水及びクエン酸を含有する第1剤と炭酸水素ナトリウムを含有する第2剤とを使用時に混合するものであり、甲1の上記(甲1b)の「炭酸ガスによる・・・発泡性化粧料」との記載からも明らかなとおり、第1剤と第2剤とを混合すると気泡状の二酸化炭素を発生する組成物である。そして、上記(甲1b)のとおり、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるものであるから、二酸化炭素を経皮・経粘膜吸収させる組成物であるといえる。
したがって、甲1-1発明の「用時混合型発泡性エッセンス」は、本件特許発明1の「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料」と、「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなる化粧料」である点で共通する。

(エ)甲1-1発明は、ポリエチレングリコール(分子量4000)を含むが、本件特許発明1の「水及び増粘剤を含む粘性組成物」、「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」は他の成分を含むものでよく、しかも本件特許の発明の詳細な説明の実施例109?144には、ポリエチレングリコールなどのマトリックス基剤を用いることが記載されている(上記(本f))。
したがって、この点は相違点とはならない。

(オ)以上のことから、本件特許発明1と甲1-1発明とは、次の一致点及び相違点1?3を有する。

一致点:
「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなる化粧料を得るためのキットであって、
増粘剤を含む成分と、
酸を含む成分と、
ここで、増粘剤を含む成分又は酸を含む成分のいずれか一方に炭酸塩が含まれている
を含み、
前記組成物が、前記増粘剤を含む成分と、酸を含む成分とを混合することにより得られる、
キット。」である点

相違点1:
「キット」が、本件特許発明1は、「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と、「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」とを含むのに対し、甲1-1発明は、「クエン酸を水に溶解して得られる水溶液」である「第1剤」と、「アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとをポリエチレングリコール(分子量4000)で被覆した粉末」である「第2剤」とからなる点

相違点2:
本件特許発明1は、「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の前記増粘剤の含有量が1?15質量%」と特定されているのに対し、甲1-1発明は不明な点

相違点3:
「化粧料」が、本件特許発明1は「パック化粧料」であるのに対し、甲1-1発明は「エッセンス」である点

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
a 甲1-1発明は、炭酸ガスによる血行促進作用を利用する化粧料に関するところ、2剤型であるため経日安定性に優れており、また、クエン酸を水に溶解して得られる水溶液(クエン酸水溶液)を第1剤とし、アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した粉末を第2剤としたことで、用時混合する際に、炭酸ガスの泡が徐々に発生するとともに、アルギン酸ナトリウムの粘性によって安定な泡を生成し、炭酸ガスの保留性を高めたものである(上記(甲1a)、(甲1c))。

b ここで、上記2(3)?(6)のとおり、甲3?6には、化粧品の剤型の一つであるジェル(ゲル)についての記載があり、本件出願日(遡及日)当時、化粧品の剤型としてジェルは周知であったといえる。
しかしながら、甲1-1発明は、第1剤と第2剤とを用時混合すると、水とアルギン酸ナトリウムとを含むことから、アルギン酸ナトリウムの粘性によってジェルと類似の状態を呈するようになることが予測されるので、混合する前の第1剤を予めジェルとする理由は見あたらない。
したがって、化粧品の剤型としてジェルが周知であるからといって、甲1-1発明における第1剤であるクエン酸水溶液を、敢えてジェルとしておく動機付けは見出せない。

c また、甲7には、アルギン酸水溶性塩類(アルギン酸ナトリウム)と二価以上の金属塩類との硬化反応を利用した剥がすタイプのパック化粧料が開示され、アルギン酸ナトリウムは水を加えてかきまぜる際、水に溶けにくいためダマになりやすく、均一な膜になりにくいため、予め水に溶解させてゲル状とし、二価以上の金属塩類は粉末状とすることが記載されている(上記(甲7a)?(甲7c))。
しかしながら、甲7に記載されたパック化粧料は、甲1-1発明のように、アルギン酸ナトリウムの粘性を利用するものでも、二酸化炭素を利用するものでもないから、甲1-1発明とは技術的関連性がない。
したがって、甲1-1発明に、甲7に記載された、アルギン酸ナトリウムを予め水に溶解させてゲル状としておくという技術的事項を適用する動機付けはない。

d 甲1-1発明は、上記aで示したとおり、2剤型であるため経日安定性に優れており、また、クエン酸水溶液を第1剤とし、アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した粉末を第2剤としたことで、用時混合する際に、炭酸ガスの泡が徐々に発生するとともに、アルギン酸ナトリウムの粘性によって安定な泡を生成し、炭酸ガスの保留性を高めたものである。
それに対し、甲1の比較例4?10では、クエン酸について、水溶液として2剤型とすることなく、粉末として炭酸水素ナトリウムと共に、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡性エッセンスとすると、経日安定性に劣ることが示されていることから(上記(甲1g)、甲1-1発明において、第1剤に含まれるクエン酸を、炭酸水素ナトリウムを含む第2剤に移動させて、複合粉末剤とすることには、阻害要因がある。
そして、甲1-1発明において、第1剤に含まれるクエン酸を、第2剤へ移動して炭酸水素ナトリウムと共に複合粉末剤とし、第2剤に含まれるアルギン酸ナトリウムを第1剤へ移動して水とアルギン酸ナトリウムのみが含まれる粘性組成物とすることは、甲1-1発明とは全く異なる組成の発泡性エッセンスとするものであって、そのような全く異なる組成とした場合においても、甲1-1発明の経日安定性や炭酸ガスの保留性等の効果が維持されると予測することは困難である。
そうすると、甲1-1発明において、第1剤に含まれるクエン酸を、第2剤へ移動して炭酸水素ナトリウムと共に複合粉末剤とし、同時に、第2剤に含まれるアルギン酸ナトリウムを第1剤へ移動して水とアルギン酸ナトリウムのみが含まれる粘性組成物として、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、阻害要因があるといわざるを得ない。

e したがって、少なくとも相違点1は、甲1-1発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(イ)本件特許発明1の効果について
上記1(2)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明に示された実施例及び試験例から、本件特許発明1の「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」は、パック化粧料の用途に関して、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出させることで、経皮・経粘膜吸収させることにより効果を奏するものである。

(ウ)小括
したがって、相違点1以外の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-1発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を引用して、さらに限定するものであるから、いずれも上記イと同様の理由により、甲1-1発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

エ 請求人の主張の検討
(ア)a 請求人は、甲1-1発明には、上記認定の相違点1と同旨の相違点があることを認めたうえで(請求書21頁15?19行)、要するに、次のように主張する。
(A)血行促進及び美白等の課題の解決策の一つとして、化粧品の剤型としてジェルを選択することは周知技術であること(甲2?甲6)、(B)膜の均一性を確保するためにアルギン酸塩類は予めゲル化させることが公知技術であること(甲7)、(C)特許権者も認めるとおり、皮膚に対する塗布を容易にするという観点からジェルが望ましいことが知られている(甲8)(請求書21頁下から3行?24頁16行)。
したがって、上記に加え、技術の豊富化及び構成の簡素化の観点から、当業者であれば、甲1-1発明において、第2剤のうちのアルギン酸ナトリウムのみを第1剤に移動することで第1剤をジェルとし、第1剤のクエン酸を第2剤に移動して第2剤を複合粉末剤とすることは容易である(請求書24頁下から6行?25頁11行)。

b しかしながら、上記(A)については、上記2(3)?(6)のとおり、化粧品の剤型の一つであるジェルについての記載があるものの、ジェル自体に血行促進等の有用な生理活性効果があるとは記載されていないので、「血行促進及び美白等の課題の解決策の一つとして、化粧品の剤型としてジェルを選択することは周知技術である」とはいえない。なお、甲2は、本件特許の出願日(遡及日)後に発行された書籍であるから、請求人が主張する周知技術の根拠とすることはできない。
上記(B)については、上記イ(ア)cのとおり、甲1-1発明とは技術的関連性がないから、甲1-1発明に甲7に記載された技術を組み合わせる動機付けはない。
そして、上記(C)については、上記イ(ア)bのとおり、甲1-1発明は、第1剤と第2剤とを用時混合すると、アルギン酸ナトリウムの粘性によってジェルと類似の状態を呈するようになることが予測されるので、ジェルは皮膚に対する塗布を容易にするとしても、甲1-1発明の混合する前の第1剤を予めジェルとする理由は見あたらない。なお、甲8は、別事件において特許権者が提出した準備書面(平成29年3月30日付け)において、炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含む粉末剤と、酸と水を含む液剤との組み合わせからなる2剤タイプの二酸化炭素発生パック剤(甲1-1発明と類似するもの)について実験を行った結果を示したものに過ぎないから、甲8の記載内容に基づいて相違点1の容易想到性を検討することはできない。
したがって、請求人が主張するように、甲2?8から理解される事項によって、上記相違点1が容易になし得たこととはいえない。

(イ)a さらに、請求人は、甲1-1発明の第1剤を予めジェルとすることについて、口頭審理陳述要領書において、次のように主張している。
「甲1-1発明は、『炭酸ガスの保留性向上』という課題を解決するために、『粘性によって安定した泡を形成し、炭酸ガスの保留性を高める』ことを前提として、液状の第1剤が粘性を帯びてくる前に炭酸ガスが抜けることの問題点に着眼し、第2剤をポリエチレングリコールで被覆し、炭酸ガスの発生自体を遅延させようとしたものである。すなわち、甲1には、液状の第1剤が粘性を帯びてくる前に炭酸ガスが空気中に逃げることが問題として示されており、第2剤をポリエチレングリコールにて被覆して炭酸ガスの発生速度を遅延させることが回答として示されている。
しかし、この回答は、第2剤をポリエチレングリコールで被覆することにより炭酸ガスの発生速度を遅延させるという間接的方法により解題を解決しようとしたものであり、より良い(可能性のある)解決策として、炭酸ガスが発生する前に液状の第1剤に粘性を帯びさせるという直接的方法があることは自明である。特に、アルギン酸の塩類であるアルギン酸ナトリウムを増粘剤として利用する場合において、アルギン酸ナトリウムの水溶液に対する溶解に時間を要するという根本的問題は解決されていないことは当業者であれば容易に認識できる。なぜなら、確かに、第2剤をポリエチレングリコールで被覆することにより、炭酸ガスの発生速度は遅延するが、アルギン酸ナトリウムの溶解も遅延するからである。」(7頁下から10行?8頁8行)

b しかしながら、甲1には、「炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を生成し、炭酸ガスの保留性が高まる事を見出し、本発明を完成するに至った。」(上記(甲1c))と記載されているものの、「(アルギン酸ナトリウムが溶解して)液状の第1剤が粘性を帯びてくる前に炭酸ガスが抜けることの問題点」については具体的に記載されておらず、また、請求人の「より良い(可能性のある)解決策として、炭酸ガスが発生する前に液状の第1剤に粘性を帯びさせるという直接的方法があることは自明である。」との主張には、何ら具体的な根拠がない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

(ウ)請求人は、口頭審理陳述要領書、及び口頭審理後に提出した上申書及び上申書(2)とともに、参考書面1?35(これ以外に上記陳述要領書などの本文中に文献名を記載しただけのものもある)を提示して、炭酸ガスを利用したパック型化粧料は周知である、2剤型の化粧料では第1剤と第2剤とをジェルと粉末の組み合わせとすることは技術常識である、アルギン酸ナトリウムはダマ形成問題があるため中性又は塩基性水溶液とする、媒質の粘性が増大すると気泡の安定性が高まる、粉末を複合剤とすることは周知であるとともに利便性が向上することが知られているなど縷々主張する。
しかしながら、請求人の示した参考書面は証拠としてではなく参考資料として提出されたものであって(調書参照)、相違点1の上記判断に影響を与えるものではない。

オ 甲1-1発明を主引用発明とする理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲1-1発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲1-2発明を主引用発明とする理由について
ア 本件特許発明1との対比
(ア)甲1-2発明は、上記(2)で検討した甲1-1発明に対し、「第2剤」の「アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム」とを「ポリエチレングリコール(分子量4000)で被覆」せずに「均一に混合」したものである点で相違するものである。

(イ)したがって、本件特許発明1と甲1-2発明とは、次の一致点及び相違点1’?3’を有するといえる。

一致点:
「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなる化粧料を得るためのキットであって、
増粘剤を含む成分と、
酸を含む成分と、
ここで、増粘剤を含む成分又は酸を含む成分のいずれか一方に炭酸塩が含まれている
を含み、
前記組成物が、前記増粘剤を含む成分と、酸を含む成分とを混合することにより得られる、
キット。」である点

相違点1’:
「キット」が、本件特許発明1は、「水及び増粘剤を含む粘性組成物」と、「炭酸塩及び酸を含む、複合顆粒剤、複合細粒剤、または複合粉末剤」とを含むのに対し、甲1-2発明は、「クエン酸を水に溶解して得られる水溶液」である「第1剤」と、「アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとを均一に混合した粉末」である「第2剤」とからなる点

相違点2’:
本件特許発明1は、「二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物中の前記増粘剤の含有量が1?15質量%」と特定されているのに対し、甲1-2発明は不明な点

相違点3’:
「化粧料」が、本件特許発明1は「パック化粧料」であるのに対し、甲1-2発明は「エッセンス」である点

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1’について
a 甲1-2発明は、第2剤がポリエチレングリコールで被覆されていないことだけが甲1-1発明とは異なる、比較例2から認定される発明であって、ポリエチレングリコールで被覆しなかった結果、ガス保留性に著しく劣るものであったことが示されたものである(上記(甲1f))。

b 甲1-2発明において、ガス保留性を向上させようとする当業者であれば、甲1-1発明のように第2剤についてポリエチレングリコールで被覆したものとするといえる。
そうすると、上記(2)イ(ア)b及びcのとおり、本件出願日(遡及日)当時、化粧品の剤型としてジェルは周知であること(甲3?6)、及び、甲7には、アルギン酸ナトリウムと二価以上の金属塩類との硬化反応を利用した剥がすタイプのパック化粧料が開示され、アルギン酸ナトリウムは水を加えてかきまぜる際、ダマになりやすいため、予め水に溶解させてゲル状とし、二価以上の金属塩類は粉末状とすることが記載されていることを考慮しても、甲1-2発明において、ポリエチレングリコールで被覆して甲1-1発明のようにするのではなく、敢えて甲1-1発明とは全く異なる組成とすること、具体的には、甲1-2発明において、第2剤のうちのアルギン酸ナトリウムのみを第1剤に移動することで第1剤をジェルとし、第1剤のクエン酸を第2剤に移動して第2剤を複合粉末剤として、相違点1’に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、容易に想到することができたものということはできない。

(イ)本件特許発明1の効果について
上記1(2)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明に示された実施例及び試験例から、本件特許発明1の「気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物からなるパック化粧料を得るためのキット」は、パック化粧料の用途に関して、発生した二酸化炭素を保持し、持続的に放出させることで、経皮・経粘膜吸収させることにより効果を奏するものである。

(ウ)小括
したがって、相違点1’以外の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-2発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

ウ 本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を引用して、さらに限定するものであるから、いずれも上記イと同様の理由により、甲1-2発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものとはいえない。

エ 請求人の主張の検討
(ア)請求人は、甲1-2発明の容易想到性について、口頭審理陳述要領書で次のように主張する。
「すなわち、甲1-2発明が炭酸ガスの保留性において甲1-1発明に劣後する理由は、液状の第1剤が粘性を帯びてくる前に炭酸ガスが抜ける程度が大きいからである。そうすると、技術の豊富化を図る観点から、甲1-2発明を主引例発明として、甲1-1発明とは異なる方向により、その改良を試みることには十分な動機付けがある。そして、二酸化炭素を組成物中に閉じ込め、空気中に逃げることを防止するための方法として、二酸化炭素の発生前に液体に粘性を帯びさせる方法(水溶液に対し混合前に増粘剤を添加して粘性組成物としておく方法)があるところ、その方法を目指して改良することを基礎付ける要因として、前記2-3-2に記載のとおり、利便性向上及びダマ形成問題の回避が指摘できるのである。
また、前記のとおり、アルギン酸ナトリウムを増粘剤として水溶液に添加する場合には、酸性水溶液ではなく、中性水溶液又は塩基性水溶液が選択されることも技術常識である。
以上のとおりであるから、甲1-2発明を主引例発明として、第1剤である酸性水を水溶性含水粘性組成物に置換することは容易というべきである。」(12頁下から4行?13頁11行)

(イ)そこで検討するに、請求人の主張する「二酸化炭素を組成物中に閉じ込め、空気中に逃げることを防止するための方法として、二酸化炭素の発生前に液体に粘性を帯びさせる方法(水溶液に対し混合前に増粘剤を添加して粘性組成物としておく方法)がある」とするに足る証拠はない。
また、仮にそのような方法を採用するとしても、「利便性向上及びダマ形成問題の回避」を考慮するのであれば、甲1に開示されている増粘剤(水溶性高分子及び/又は粘土鉱物)や、化粧料に利用可能なことが知られている増粘剤のうちから、利便性やダマ形成に問題のない増粘剤を検討することも十分想定されるのであり、「利便性向上及びダマ形成問題の回避」を根拠として、甲1-2発明において、アルギン酸ナトリウムを他の増粘剤に変更することなく、第1剤にアルギン酸ナトリウムを移動し、第2剤にクエン酸を移動することが容易であるとはいえない。

オ 甲1-2発明を主引用発明とする理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲1-2発明及び甲3?7に記載の周知技術又は公知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括
よって、請求人の主張する無効理由4には、理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1?4はいずれも理由がないので、本件の請求項1?4に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-04-24 
結審通知日 2018-04-26 
審決日 2018-05-08 
出願番号 特願2013-93612(P2013-93612)
審決分類 P 1 113・ 536- Y (A61K)
P 1 113・ 1- Y (A61K)
P 1 113・ 121- Y (A61K)
P 1 113・ 537- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 関 美祝
長谷川 茜
登録日 2014-11-07 
登録番号 特許第5643872号(P5643872)
発明の名称 二酸化炭素経皮・経粘膜吸収用組成物  
代理人 柴田 和彦  
代理人 高橋 淳  
代理人 迫田 恭子  
代理人 伊藤 博昭  
代理人 水谷 馨也  
代理人 田中 順也  
代理人 山田 威一郎  
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