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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16K
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 F16K
管理番号 1350300
審判番号 不服2018-5544  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-23 
確定日 2019-04-16 
事件の表示 特願2013-232013「電動弁」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月18日出願公開、特開2015- 94372、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年11月8日の出願であって、平成29年7月14日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年7月25日)、これに対し、平成29年9月21日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、平成29年11月14日付で最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年11月21日)、これに対し、平成29年12月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年1月23日付で平成29年12月12日にされた手続補正を却下するとともに拒絶査定がなされ(発送日:平成30年1月30日)、これに対し、平成30年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。


2.審判請求時の手続補正
平成30年4月23日の手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
内部に弁室が画成されると共に側部と底部に第1開口と第2開口が形成された弁本体と、前記弁室に開口する弁口と弁座とを有して前記弁本体の前記第2開口に固着された弁座部材と、前記弁室に昇降可能に配置された弁体と、該弁体を前記弁座に対して昇降させる昇降駆動部と、を備えた電動弁であって、
前記弁体は、前記弁口に向かって開口する筒状体からなるとともに、昇降方向上方から、内径が一定の上側筒部と、内径が前記上側筒部の内周下端から前記弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がるスカート部とを備え、
前記上側筒部の中心穴が、前記昇降駆動部の推力を前記弁体に伝達する筒状の推力伝達部材の下部が嵌合される嵌合穴とされ、
前記スカート部の下端部が、前記弁座に接離して前記弁口を開閉する弁体部とされ、
前記弁体の昇降方向において、前記スカート部の寸法は、前記上側筒部の寸法よりも長いことを特徴とする電動弁。」

上記補正は、スカート部の内径の基端について「前記上側筒部の内周下端」との限定を付加し、同じくスカート部について「前記弁体の昇降方向において、前記スカート部の寸法は、前記上側筒部の寸法よりも長い」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
そして、以下に示すように、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、独立特許要件を満たすものである。


3.引用例
補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-13067号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
a「従来公知の弁箱と、これに取り付けられた中空円筒状の弁座と、弁内を往復動自在な弁体とから成り立っており、弁座又は弁体に設けられた多段の円孔部や、長孔部により高圧流体の減圧を行うこの形式の絞り弁は、絞り部の直後に弁体及び弁座のシール部があり、しかも、絞り部と、弁体及び弁座のシール部とが同一の箇所にあるために、弁体及び弁座のシール部は、弁の開放の際に、高圧流体によって絞り部の後部において発生する高速の噴流や、流体、例えば、蒸気中に含まれるドレンや、酸化スケールなどの吹き付けによってエロージョン(腐食)を受けることが多い。」(1頁右下欄11行-2頁左上欄2行)
b「既に、このエロージョンの防止対策として、弁体及び弁座のシール部に、ステライト盛り金を実施することが行われているが、ドレンや、酸化スケールなどの吹き付けに対しては、たとえ、ステライト盛り金などを実施したものとしても、これらの弁部材がエロージョンを受けることがあり、エロージョンに対して強い抵抗性を有している絞り弁の出現を、各方面から強く望まれているところである。」(2頁左上欄3-11行)
c「図に示すように、弁箱1に中空円筒状の弁座2が取り付けられており、弁箱1と、弁座2との間は、ガスケット3によりシールされている。また、弁座2と協同するように弁座2内にしゅう動自在に配置されている弁体4には、弁棒5がねじ込まれており、弁棒5は弁体4にねじ込まれた後、セットピン6によって弁体4に固定され、セットピン6の外表面は、抜け止め溶接をされている。
弁体4は、弁棒5によって、矢印Xによって示すように、上下運動が可能であるようにされ、この弁体4の上下運動により、弁座2の下部の中空円筒部5の壁に弁棒5の長手軸の方向に多段に設けられた多段の円形孔や、長孔の通過面積を弁体4の底部周辺によって絞ることにより順次変化させ、流体の圧力や、流量を調整するようにする。なお、図中、7及び8は、それぞれ、弁体4及び弁座2のシール面、9は、弁座2の中空円筒の壁に多段に設けられた円形孔又は長孔を示すものである。
特に、第2図は、第1図に示してある絞り弁の中間絞り状態における弁座2の要部の拡大図を示すものであるが、円形孔又は長孔9の出口部は、弁体4のシール面7によって通過面積の一部を閉塞された状態にあり、図に示した箇所Aの部分が最小通過面積部となる。従って、矢印fによて示す流体の流れは、円形孔又は長孔9の出口部においては、かなりの高速流となり、矢印Bの方向に進み、弁体4のシール面7に衝突した後、弁座2との間の最小通過面積部Aを通過し、その直後のシール面7と、これと対応してテーパ状に形成された弁座2のシール面8との間の最大流速部Cにおいて方向転換を行い、のど部10へ流れて行く。」(2頁左上欄15行-左下欄6行)

上記記載及び図面を参照すると、弁座の周囲から弁座内に向かって流体が流れているから、弁座周囲に当然に弁を形成する壁が設けられることにより弁室が設けられ、又、当該流体が流れるためには弁座に対する流入開口と底部の流出開口がなければならず、底部の流出開口は弁箱の開口であるから、内部に弁室が画成されると共に流入開口と底部に流出開口が形成された弁箱があるものと解せる。
上記記載及び第1図を参照すると、のど部から流出する流体は弁室から排出されるものであり、弁座は弁箱の流出開口に固着されているから、弁室にのど部と弁座シール面とを有して弁箱の流出開口に固着された弁座があるものと解せる。
上記記載及び第1図を参照すると、弁室に上下運動可能に配置された弁体が示されている。
上記記載及び第1図を参照すると、弁棒が上下運動しているので、弁体を弁座シール面に対し上下運動させる駆動源があるものと解せる。
上記記載及び第1図を参照すると、弁体は、のど部に向かって開口する筒状体からなるとともに、上下方向上方から、一定の内径を有する第1筒部と、第1筒部の内径よりも大きい一定の内径を有する第2筒部と内径が第2筒部の内周下端からのど部に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる第3筒部を有している。
上記記載及び第1図を参照すると、第1筒部の中心穴が、推力を弁体に伝達する弁棒の下部が嵌合される嵌合穴とされている。
上記記載及び第1図を参照すると、第3筒部の下端部が、弁座シール面に接離してのど部を開閉する弁体部であることが示されている。
上記記載及び第1図を参照すると、弁体の上下方向において、第2筒部及び第3筒部の寸法は、第1筒部の寸法よりも長いことが示されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「内部に弁室が画成されると共に流入開口と底部に流出開口が形成された弁箱と、前記弁室に開口するのど部と弁座シール面とを有して前記弁箱の流出開口に固着された弁座と、前記弁室に上下運動可能に配置された弁体と、前記弁体を前記弁座シール面に対し上下運動させる駆動源と、を備えた絞り弁であって、
前記弁体は、のど部に向かって開口する筒状体からなるとともに、上下方向上方から、一定の内径を有する第1筒部と、前記第1筒部の内径よりも大きい一定の内径を有する第2筒部と内径が前記第2筒部の内周下端からのど部に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる第3筒部とを備え、
前記第1筒部の中心穴が、推力を弁体に伝達する弁棒の下部が嵌合される嵌合穴とされ、
前記第3筒部の下端部が、前記弁座シール面に接離してのど部を開閉する弁体部とされ、
前記弁体の上下方向において、前記第2筒部及び前記第3筒部の寸法は、第1筒部の寸法よりも長い絞り弁。」との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

補正の却下の決定及び原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-130271号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。
d「図において、電動弁1は、板金製の筒状基体6を有する弁本体5と、この弁本体5内に昇降可能に配在された弁体20と、この弁体20を昇降させるべく、弁本体5の上側に取り付けられたステッピングモータ50とを備える。
弁本体5の筒状基体6には、弁室7が形成されるとともに、この弁室7に開口する横向きの第1入出口(導管継手)11が取り付けられ、さらに、その底部には下側から弁室7に開口する縦向きの弁口9及び弁座8aが形成された弁座部材8が固着され、この弁座部材8には、前記弁口9に連なる第2入出口(導管継手)12が取り付けられている。」(【0015】-【0016】)

上記記載事項からみて、引用例2には、
「内部に弁室が画成されると共に側部と底部に第1入出口と第2入出口が形成された弁本体と、弁座部材と、弁体と、前記弁体を弁座に対して昇降させるステッピングモータを備えた電動弁。」


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「流入開口」、「流出開口」、「弁箱」、「のど部」、「弁座シール面」、「弁座」、「上下運動可能」、「上下運動させる」、「上下方向」、「第1筒部」は、本願発明の「第1開口」、「第2開口」、「弁本体」、「弁口」、「弁座」、「弁座部材」、「昇降可能」、「昇降させる」、「昇降方向」、「上側筒部」に相当する。
引用発明の「第2筒部」と「第3筒部」が本願発明の「スカート部」に相当する。
引用発明の「前記弁室に開口するのど部と弁座シール面とを有して前記弁箱の流出開口に固着された弁座」は、本願発明の「前記弁室に開口する弁口と弁座とを有して前記弁本体の前記第2開口に固着された弁座部材」に相当する。
引用発明の「前記第3筒部の下端部が、前記弁座シール面に接離してのど部を開閉する弁体部」は、本願発明の「前記スカート部の下端部が、前記弁座に接離して前記弁口を開閉する弁体部」に相当する。

引用発明の「内部に弁室が画成されると共に流入開口と底部の流出開口が形成された弁箱」と、本願発明の「内部に弁室が画成されると共に側部と底部に第1開口と第2開口が形成された弁本体」は、「内部に弁室が画成されると共に流入用の開口と底部に第2開口が形成された弁本体」で一致する。
引用発明の「絞り弁」と本願発明の「電動弁」は、「弁」で一致する。
引用発明の「前記弁体を前記弁座シール面に対し上下運動させる駆動源」と、本願発明の「該弁体を前記弁座に対して昇降させる昇降駆動部」は、「該弁体を前記弁座に対して昇降させる部材」の点で一致する。
引用発明の「前記弁体は、のど部に向かって開口する筒状体からなるとともに、上下方向上方から、一定の内径を有する第1筒部と、前記第1筒部の内径よりも大きい一定の内径を有する第2筒部と内径が前記第2筒部の内周下端からのど部に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる第3筒部とを備え」と、本願発明の「前記弁体は、前記弁口に向かって開口する筒状体からなるとともに、昇降方向上方から、内径が一定の上側筒部と、内径が前記上側筒部の内周下端から前記弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がるスカート部とを備え」は、「前記弁体は、前記弁口に向かって開口する筒状体からなるとともに、昇降方向上方から、内径が一定の上側筒部と、スカート部とを備え」で一致する。
引用発明の「弁棒」は筒状であって推力を伝達する部材であるから、引用発明の「前記第1筒部の中心穴が、推力を弁体に伝達する弁棒の下部が嵌合される嵌合穴」と、本願発明の「前記上側筒部の中心穴が、前記昇降駆動部の推力を前記弁体に伝達する筒状の推力伝達部材の下部が嵌合される嵌合穴」は、「前記上側筒部の中心穴が、部材の推力を前記弁体に伝達する筒状の推力伝達部材の下部が嵌合される嵌合穴」で一致する。

したがって、両者は、
「内部に弁室が画成されると共に第1開口と底部に第2開口が形成された弁本体と、前記弁室に開口する弁口と弁座とを有して前記弁本体の前記第2開口に固着された弁座部材、前記弁室に昇降可能に配置された弁体と、該弁体を前記弁座に対して昇降させる部材と、を備えた弁であって、
前記弁体は、前記弁口に向かって開口する筒状体からなるとともに、昇降方向上方から、内径が一定の上側筒部と、スカート部とを備え、
前記上側筒部の中心穴が、前記部材の推力を前記弁体に伝達する筒状の推力伝達部材の下部が嵌合される嵌合穴とされ、
前記スカート部の下端部が、前記弁座に接離して前記弁口を開閉する弁体部とされ、
前記弁体の昇降方向において、前記スカート部の寸法は、前記上側筒部の寸法よりも長い弁。」の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
第1開口に関し、本願発明は、弁本体の側部に形成されているのに対し、引用発明は、何処に形成されているか特定されていない点。
〔相違点2〕
弁体を弁座に対して昇降させる部材に関し、本願発明は、昇降駆動部を有するのに対し、引用発明は、駆動源は特定されていない点。
〔相違点3〕
弁体に関し、本願発明は、内径が上側筒部の内周下端から弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がるスカート部を有するのに対し、引用発明は、第1筒部の内径よりも大きい一定の内径を有する第2筒部と内径が前記第2筒部の内周下端からのど部に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる第3筒部を有する点。
〔相違点4〕
本願発明は、上側筒部の中心穴が昇降駆動部の推力を弁体に伝達する筒状の推力伝達部材の下部が嵌合される嵌合穴であるのに対し、引用発明は、上側筒部の中心穴が推力を弁体に伝達する筒状の弁棒の下部が嵌合される嵌合穴である点。
〔相違点5〕
弁に関し、本願発明は、電動弁であるのに対し、引用発明は、絞り弁である点。


5.判断
相違点1について
引用発明において、流入開口が弁本体の何処に設けられているか不明であるが、流入開口を側部に設けることは引用例2にもみられるように周知の事項であるから、引用発明において流入開口を側部に設けることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

相違点2、4、5について
引用発明において、弁棒を駆動するには当然に何某かの駆動源が必要であり、又、弁体を弁座に対して昇降させる昇降駆動部を備えた電動弁は引用例2にもみられるように周知の弁であるから、引用発明において、駆動源を昇降駆動部である電動弁とすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

相違点3について
本願発明は、スカート部が内径が上側筒部の内周下端から弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる形状を有し、且つ、スカート部の寸法が上側筒部の寸法よりも長い構成を有することにより、「弁体に設けられたスカート部(昇降方向に沿って内径が変化する部分)により、弁体の弁体部付近での渦発生に伴う弁体内部における気柱共鳴の発生が抑制されるため、電動弁に生じる異音を効果的に低減することが可能となる」作用効果を奏するが、引用例1、2には、スカート部が内径が上側筒部の内周下端から弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がる形状を有することは記載も示唆もないから、引用発明において、スカート部を相違点3に係る本願発明を特定する事項のようにすることは当業者が容易に考えられたものとすることはできない。


6.原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は「内径が前記上側筒部の内周下端から前記弁口に向かって連続的かつ縦断面直線状に拡がるスカート部」、「前記弁体の昇降方向において、前記スカート部の寸法は、前記上側筒部の寸法よりも長い」という事項を有するものとなっており、上述のように、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1-2に基づいて容易に考えられたものとすることはできないから、原査定を維持することはできない。


7.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-03-29 
出願番号 特願2013-232013(P2013-232013)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (F16K)
P 1 8・ 121- WY (F16K)
P 1 8・ 121- WY (F16K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 正木 裕也  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 堀川 一郎
長馬 望
発明の名称 電動弁  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  

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