• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21F
管理番号 1350321
審判番号 不服2018-1208  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-10 
確定日 2019-03-27 
事件の表示 特願2013-114664「一般施設内に設置される放射性物質除去用の空気浄化システム、及び、その空気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-250270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月2日の出願(優先権主張 平成24年5月2日、以下「優先日」という。)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 1月19日付け:拒絶理由の通知
平成29年 4月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月14日 :意見書の提出
平成29年 9月 8日付け:拒絶査定(同年10月10日発送)
平成30年 1月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年10月 5日付け:拒絶理由の通知
平成30年12月10日 :意見書、手続補正書(以下、「本件補正」という。)の提出

第2 本願発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
放射線施設ではない一般施設内に設置され、上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させてろ過するシステム本体であって、
上記システム本体は、放射性物質から放出される放射線を遮蔽する放射線遮蔽板を有した前カバーと後カバーと左右側カバーとによって囲繞されると共に、上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させるファン及び駆動用モーターを有し、上記システム本体内には、順次上流側から下流側に向けて粗大塵埃を捕集・除去するプレフィルタと
0. 3μm以上の微粒子を捕集・除去するHEPAフィルタと、
1nm以下の細孔口径の均一なミクロポア (Micropore) を有して0. 3μm未満の粒子状物質、及び、無機の放射性ヨウ素などを物理吸着すると共に、有機の放射性ヨウ素などのガス状物質を化学吸着によって捕集・除去可能とするトリエチレンジアミンによる活性炭素繊維フィルタとを配置し、上記HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとは、上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合一体化していることを特徴とする放射性物質除去用の空気浄化システム。」

第3 拒絶の理由
平成30年10月5日付けの当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2004-191347号公報
引用文献2:特開昭61-124898号公報
引用文献3:特開2012-2714号公報(平成24年1月5日公開)
引用文献4:特開2008-249358号公報
引用文献5:特開2002-28415号公報
引用文献6:実願平4-57377号(実開平6-15718号)のCD-ROM
引用文献7:特開2006-57900号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、医療施設や原子力施設などで発生した放射性気体分の捕集除去作用を、特に既設の空気浄化装置を改変することなく付設するのに好適な放射性気体の吸着用フィルター装置に関するものである。」

イ「【0002】
【従来の技術】
従来、医療施設や原子力施設などにおいては、放射性ヨウ素などの放射性気体が排出されるため、空調施設の気体処理経路中に空気浄化装置を設置し、発生した放射性気体分の濃度を法律に規制された基準値以下に低下させた後、施設外に排出している。」

ウ「【0017】
図1に示すように、空調施設の気体処理経路中に介在される空気浄化装置10は、吸入口10a側に設けられているフィルター収納部10cに、比較的大型の粗塵の除去を行うプレフィルター11が配備されている。また、その後段に設けられているフィルター収納部10dに、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)12と、放射性気体の捕集除去を行うシート状チャコフィルター13(当審注:「シート状チャコールフィルター」の誤記。)が配備されている。
【0018】
具体的には、高性能フィルター12はフィルター収納部10dの約半分の高さ(1/2D)とされており、シート状チャコールフィルター13もフィルター収納部10dの約半分の高さ(1/2D)とされている。高性能フィルター12とシート状チャコールフィルター13は、パッキン15を介して一体に組み合わされた放射性気体の吸着用フィルター装置14として内蔵されている。なお、この吸着用フィルター装置14は、従来のように重量物である鉄製などのような金属製でなく、軽量な木製などによりハウジングを形成している。
【0019】
シート状チャコールフィルター13は、従来のように粉状あるいは粒状の活性炭によるものではなく、繊維状活性炭によりシート状に編組されている。この種のフィルターの素材として好適なものは、商品名:活性炭素繊維KF(東洋紡績(株)製)などがある。活性炭素繊維KFは、セルロース繊維を原料として製造される繊維状の活性炭とされ、比表面積が1000?2000m^(2)/gと大きく、5?100Åの細孔が開設されており、簿いシート状でも微細な被吸着物質をほとんど完全に捕集除去することができ、吸着容量は粉状あるいは粒状の活性炭に比べても著しく大きい吸着素材である。」

エ「【0024】
さらに、この放射性気体の吸着用フィルター装置14は、従来に比して著しく小型化が図られるので、新設の場合でも従来に比して大幅な小スペース化を測ることができる。」

オ 上記ウ及び図1から、空気浄化装置10は、吸入口10a及び排出口10bを有し、吸入口10aと排出口10bの間の気体処理経路の周囲は壁で囲われていることが理解できる。また、上流側に高性能フィルター12が、下流側にシート状チャコールフィルター13が配置されることが理解できる。

(2)引用発明
上記アないしオから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「医療施設や原子力施設などにおいて、放射性ヨウ素などの放射性気体の捕集除去を行う、小型化が図られた空気浄化装置であって、
空気浄化装置は、吸入口及び排出口を有し、吸入口と排出口の間の気体処理経路の周囲は壁で囲われており、
空気浄化装置には、吸入口側に設けられているフィルター収納部に、比較的大型の粗塵の除去を行うプレフィルターが配備され、
その後段に設けられているフィルター収納部において、上流側に、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)と、下流側に、放射性気体の捕集除去を行う、5?100Åの細孔が開設された繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルターがパッキンを介して一体に組み合わされて、放射性気体の吸着用フィルター装置として配備された、
空気浄化装置。」

第5 対比
本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明の「放射性ヨウ素などの放射性気体」、「空気浄化装置」、「比較的大型の粗塵の除去を行うプレフィルター」、「より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)」及び「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」は、本願発明の「放射性物質を含む空気」、「空気浄化システム」または「システム本体」、「粗大塵埃を捕集・除去するプレフィルタ」、「0.3μm以上の微粒子を捕集・除去するHEPAフィルタ」及び「活性炭素繊維フィルタ」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明は、放射性ヨウ素などの放射性気体の捕集除去を行う気体空気浄化装置であって、吸入口及び排出口を有するものであるから、本願発明の「システム本体」と引用発明の「空気浄化装置」とは、「上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させてろ過する」点で一致する。

ウ 引用発明の「空気浄化装置」は、吸入口と排出口の間の気体処理経路の周囲は壁で囲われているので、本願発明の「前カバーと後カバーと左右側カバーとによって囲繞される」との発明特定事項を備える。

エ 引用発明の「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」は、5?100Åの細孔が開設されたものであるので、放射性ヨウ素などの放射性気体だけでなく、HEPAフィルタを通過した0.3μm未満の粒子状物質や無機の放射性ヨウ素などを物理吸着するものであることは明らかであるから、本願発明の「システム本体」と引用発明の「空気浄化装置」とは、「1nm以下の細孔口径の均一なミクロポア(Micropore)を有して0.3μm未満の粒子状物質、及び、無機の放射性ヨウ素などを物理吸着すると共に、放射性ヨウ素などのガス状物質を捕集・除去可能とする活性炭素繊維フィルタ」が配置される点で一致する。

オ 引用発明では、「上流側に、より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)と、下流側に、放射性気体の捕集除去を行う、5?100Åの細孔が開設された繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルターがパッキンを介して一体に組み合わされて」いるから、本願発明の「HEPAフィルタ」及び「活性炭素繊維フィルタ」と引用発明の「より高い除塵作用を果たす高性能フィルター(HEPAフィルター)」及び「繊維状活性炭によりシート状に編組されてなるシート状チャコールフィルター」とは、それぞれ「一体化」している点で一致する。

カ 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
・一致点
「上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させてろ過するシステム本体であって、
上記システム本体は、前カバーと後カバーと左右側カバーとによって囲続されると共に、
上記システム本体内には、順次上流側から下流側に向けて粗大塵埃を捕集・除去するプレフィルタと
0.3μm以上の微粒子を捕集・除去するHEPAフィルタと、
1nm以下の細孔口径の均一なミクロポア(Micropore)を有して0.3μm未満の粒子状物質、及び、無機の放射性ヨウ素などを物理吸着すると共に、放射性ヨウ素などのガス状物質を捕集・除去可能とする活性炭素繊維フィルタとを配置し、
上記HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとが一体化している、
放射性物質除去用の空気浄化システム。」

・相違点1
空気浄化システムが、本願発明では、「放射線施設ではない一般施設内に設置され」るのに対し、引用発明では、一般施設に設置されるか否か不明である点。

・相違点2
前カバーと後カバーと左右側カバーは、本願発明では「放射性物質から放出される放射線を遮蔽する放射線遮蔽を有」するのに対し、引用発明ではそのようなことが不明である点。

・相違点3
本願発明では、上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させる「ファン及び駆動用モーター」を有するのに対し、引用発明では、「ファン及び駆動用モーター」を有するか否か不明である点。

・相違点4
放射性ヨウ素などのガス状物質を捕集・除去可能とする活性炭素繊維フィルタが、本願発明では「トリエチレンジアミンによる」ものであって、有機の放射性ヨウ素などのガス状物質を化学吸着によって」捕集・除去可能とするものであるのに対し、引用発明ではそのようなことが不明である点。

・相違点5
HEPAフィルタと上記活性炭素繊維フィルタとの一体化は、本願発明では、「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合」することによりなされているのに対し、引用発明では、そうなっていない点。

第6 判断
(1)相違点についての検討
ア 相違点1について
(ア)以下の引用文献8には、住環境における放射能の影響を最小限にするために、セシウムを吸着するフィルタを使用することを提案する記載があり、引用文献8の2ページには、「はじめに」と題する文章と共に「平成24年1月」との日付が記載されているから、引用文献8に記載された内容は、平成24年1月に公知となったものと認められる。
また、以下の引用文献9には、2012年2月22日付けで、ヨウ素-131、セシウム-137、ストロンチウム-90等が除去できる家庭用空気清浄機の発売を知らせる記載がある。
さらに、以下の引用文献10は、WEBに平成2011年5月23日付けで掲載された記事であり、その内容は、日本アムウェイが、自社の空気清浄機を社内検証し、部屋内の放射能「ヨウ素-131」と「セシウム-137」を帯びた浮遊塵を低減させる効果を有することを公表したというものである。

引用文献8:
“セシウムキャッチャー サンフィルター”, [online], 2012年1月,サンコーポレーション株式会社,[2018年12月18日検索],インターネット<URL:http://www.technotrading.co.jp/products/files/products02_sunfilter.pdf>

引用文献9:
“ワカイダエンジニアリング|放射線管理関連機器”, [online], 2012年1月20日, 株式会社ワカイダ・エンジニアリング,[2018年12月18日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20120120222350/http://www.wakaida.jp>

引用文献10:
“日本アムウエイ 空気清浄機が放射能低減 米アムウェイが検証し効果発表|月間ネットワークビジネスweb”, [online], 2011年5月23日, 株式会社サクセスマーケティング,[2018年12月18日検索],インターネット<URL:https://www.network-b.com/2011/05/23/>

以上の引用文献8ないし10の記載を踏まえると、東日本大震災による原子力発電所の事故によって発生した空気中に浮遊する放射線を放出する粒子が住環境等にも侵入する可能性が懸念され、遅くとも、本願の優先日前の平成24年2月末までには、住環境等における空気中に浮遊する「ヨウ素-131」や「セシウム-137」等の粒子をフィルタや空気清浄機を用いて除去しようとする課題が広く知られていたことは明らかである。
そして、住環境は、本願発明でいう「放射線施設ではない一般施設」であるから、引用発明の空気浄化システムを「放射線施設ではない一般施設」に設置することは、当業者であれば適宜行い得ることである。

イ 相違点2について
放射性物質除去用の空気浄化システムの技術分野において、フィルタを放射線遮蔽材で囲繞することは、例えば、引用文献2(第2頁左下欄2?3行、同頁右下欄7-19行、第2図を参照。)に記載されているように、本願の優先日前に周知であるから、これを引用発明に適用することは、当業者が適宜なし得ることである。

ウ 相違点3について
送風機を備える空気浄化システムは、例えば、引用文献3(段落0050等を参照。)に記載されるように、本願の優先日前に周知である。
そして、引用発明が、本願発明と同様に、「上流側の吸込口から下流側の排出口へと放射性物質を含む空気を通過させてろ過する」ものである以上、「ファン及び駆動用モーター」を備える必要があることは明らかであって、引用発明に上記周知技術を適用することは、当業者が適宜なし得ることである。

エ 相違点4について
活性炭素繊維フィルタにトリエチレンジアミンを添着されることにより、放射性有機ヨウ素を除去する技術は、例えば、引用文献3(段落0056を参照。)及び引用文献4(段落0016を参照。)に記載されているように、本願の優先日前に周知である。
そして、これを引用発明の活性炭素繊維フィルタに採用することは、当業者が容易になし得ることである。

オ 相違点5について
引用文献5の段落0061の記載及び図2からは、「白炭を担持したフィルター3」と「除塵フィルター4」の2つのフィルタの互いの表裏面が「接着し、一体化」していることが理解できる。
引用文献6の段落0015の記載及び図1からは、「上流層1のネット」と「下流層2の不織布」の2つのフィルタが積層されたものであって、熱融着または接着により積層されていることが理解できる。
以上の引用文献5及び6の記載を踏まえると、2種類のフィルタを互いの表裏面で接合一体化する技術は、本願の優先日前に周知であったといえる。
そして、引用発明も、上記第4の1(1)エにあるように、小型化を課題としていることを踏まえれば、引用発明において、「HEPAフィルタ」と「活性炭素繊維フィルタ」とを一体化するに際し、上記周知技術を適用し、「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合」するようになすことは、当業者であれば容易になし得ることである。

(2)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成30年12月10日の意見書において、概ね以下のようなことを主張している。

ア 「2種類のフィルタを互いの表裏面で一体化する技術または表裏面で接して一体化する技術として、引用文献5(段落0061及び図2を参照。)、引用文献6(段落0015及び図1を参照。)及び引用文献7(段落0009及び図1(d)から、集塵フィルタ2と脱臭フィルタ3は表裏で接して一体化し、空気清浄フィルタXをなすものと理解できる。)に記載されているように、いずれも本願の優先日前に周知であるとしても、また、引用発明も小型化を課題としても、引用発明のHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとの一体化として具体的構成が相違するにも関わらず、また、作用効果も相違する以上周知技術とするのは誤りであると確信します。」

イ 「本願発明は簡単な構成で効率よく捕集・除去することができるものであり、換言すれば、HEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとが互いの表裏面で接するように接合一体化し、これにより放射性物質を簡単な構成で効率よく捕集・除去するという顕著な効果を有するものです。
各引用文献で放射性物質を捕集・除去するためには、それぞれのフィルタが互いに対向するように組み合わされていますが、本願発明ではHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとは互いの間隔をおかず1組のフィルタとして接合一体化しているものです。したがって、小型の室内空気浄化装置などとしても用いることができる放射性物質除去用フィルタを組み合わせした放射性物質除去用の空気浄化装置を提供するものです。」

ウ 「本願発明は、段落【0014】にあるように、・・・(略)・・・簡単な構成であっても、「上記HEPAフィルタの下流側である裏面側と上記活性炭素繊維フィルタの上流側である表面側とが互いの表裏面で接して接合一体化している」というきわめて簡単な構造であっても、きわめて効率よく放射性物質の除去が行えるフィルタを備えた放射性物質除去用の空気浄化装置を提供できます。」

上記主張について検討すると、上記(1)オで検討したとおり、2つのフィルターを互いの表裏面で接合一体化する技術を本願の優先日前に周知であるといえる。
そして、上記(1)オで検討したように、引用発明のHEPAフィルタと活性炭素繊維フィルタとを上記周知技術により接合一体化することにより、2つのフィルタの間隔がなくなることから、「小型の室内空気浄化装置などとしても用いることができ」、「簡単な構造」となることは、明らかである。
また、2つのフィルタを接合一体化することで、放射性物質の捕集・除去に関して、特段の作用効果を奏するものでもない。
したがって、上記審判請求人の主張を採用することができない。

(3)本願発明の作用効果について
上記相違点1ないし5を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)小括
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-21 
結審通知日 2019-01-28 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2013-114664(P2013-114664)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南川 泰裕右▲高▼ 孝幸長谷川 聡一郎  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 西村 直史
野村 伸雄
発明の名称 一般施設内に設置される放射性物質除去用の空気浄化システム、及び、その空気浄化装置  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ