ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S |
---|---|
管理番号 | 1350341 |
審判番号 | 不服2018-8924 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-28 |
確定日 | 2019-04-16 |
事件の表示 | 特願2014-128336「光学走査装置、及びレーザレーダ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月18日出願公開、特開2016- 8848、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成26年6月23日にされた特許出願である。 本願について、平成29年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年9月1日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲についての補正がなされ、同年10月31日付けで再度拒絶理由が通知され、翌平成30年1月11日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲についての補正がなされたが、同年3月30日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、査定の謄本が同年4月10日に送達された。これに対し、同年6月28日に拒絶査定不服審判が請求された。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし請求項5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成30年1月11日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 自動車に搭載される光学走査装置(10)であって、 レーザ光を発光する発光手段(21,71)と、 規定された駆動態様である規定駆動態様で駆動される偏向手段(24,25,72,74)であって、当該偏向手段の規定された部位である規定部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を適正角度範囲へ照射し、前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位である散乱部に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を散乱させるレンズである偏向手段と、 前記偏向手段にて散乱された前記レーザ光を受光する第1受光手段(60)と、 前記第1受光手段で受光した結果、受光強度が予め規定された閾値以上となると、基準位置に前記散乱部が位置することを検出する位置検出手段(42,S140,S230)と を備え、 前記偏向手段は、 直線運動を前記規定駆動態様として、駆動されることを特徴とする光学走査装置。 【請求項2】 前記第1受光手段は、 前記規定部位から前記適正角度範囲への光路上から外れ、前記散乱部にて散乱されたレーザ光の少なくとも一部が到達する位置に配置される ことを特徴とする請求項1に記載の光学走査装置。 【請求項3】 前記位置検出手段での検出結果に従って、前記発光手段におけるレーザ光の発光タイミングを制御する発光制御手段(42,S150?S170) を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光学走査装置。 【請求項4】 前記発光制御手段は、 前記位置検出手段にて基準位置に前記散乱部が位置することを検出してから、予め規定された規定時間が経過すると、前記発光手段にレーザ光を発光させる ことを特徴とする請求項3に記載された光学走査装置。 【請求項5】 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学走査装置と、 前記適正角度範囲からの前記レーザ光の反射光を受光する第2受光手段(30)と、 前記発光手段にてレーザ光を発光し、前記第2受光手段にて反射光を受光した結果に基づいて、前記レーザ光を反射した物体を検出する物体検出手段(42,S180,S260)と を備えたレーザレーダ装置。」 第3 原査定における拒絶理由の概要 この出願の請求項1ないし請求項5に係る発明は、以下の引用文献3及び引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献3.特開2007-155467号公報 引用文献4.特開2009-300399号公報 第4 引用文献に記載された発明等 1 引用文献3 引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (1) 段落0001 「【技術分野】 【0001】 本発明は、光ビームを所定の方向に走査する光ビーム走査装置に関するものである。」 (2) 段落0007から段落0009まで 「【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明では、光源装置と、該光源装置から出射された光ビームの入射位置により当該光ビームの出射方向が変化する光偏向素子と、該光偏向素子を駆動して当該光偏向素子に対する前記光ビームの入射位置を変化させる駆動装置とを有する光ビーム走査装置において、前記光偏向素子には、入射した光ビームを所定の角度範囲にわたって走査させる光走査領域と、入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する原点位置検出用出射領域とが形成され、前記原点位置検出用出射領域から光ビームが出射される方向に原点位置検出用光検出器が配置されていることを特徴とする。 【0008】 本発明において、光偏向素子には光走査領域が形成されているとともに、入射した光ビームを光走査領域とは異なる方向に出射する原点位置検出用出射領域が形成されているため、光源装置から出射された光ビームの入射位置に原点位置検出用出射領域が到来すると、この原点位置検出用出射領域から出射された光ビームは、原点位置検出用光検出器で検出される。このため、光偏向素子の原点位置を確実に検出できるので、この原点位置を基準にして、各時点において光ビーム走査装置から光ビームが出射された方向を把握できる。また、光源装置から出射された光ビームの入射位置に原点位置検出用出射領域が到来しない限り、光偏向素子から原点位置検出用光検出器に向けて光ビームが出射されないため、磁気センサやフォトインタラプタを採用した場合と違って、原点位置検出用出射領域から出射された光ビームを検出可能な位置であれば、原点位置検出用光検出器の位置精度が低くても、光偏向素子の原点位置を確実に検出できる。 【0009】 本発明において、前記原点位置検出用出射領域から出射された光ビームは、非合焦状態で前記原点位置検出用光検出器に到達することが好ましい。このように構成すると、前記原点位置検出用出射領域から出射された光ビームが前記原点位置検出用光検出器に到達する際、その光束の径が大きい。このため、原点位置検出用出射領域から出射された光ビームを検出可能な領域が広いので、原点位置検出用光検出器に求められる位置精度をさらに緩和することができる。」 (3) 段落0017 「【0017】 図1に示す光ビーム走査装置1は、概ね、光源装置10と、この光源装置10から出射された光ビームL0を偏向可能な透過型光偏向ディスク30と、この透過型光偏向ディスク30を回転駆動する駆動装置と、後述する原点検出機構8とを有している。光源装置10は、光源としてのレーザダイオード13と、このレーザダイオード13から出射されたレーザ光L0を所定の収束光として導く光学系19とを備えている。駆動装置4は、同期モータ40を備えており、同期モータ40の回転出力部が透過型光偏向ディスク30の中心孔31に嵌り、透過型光偏向ディスク30を保持している。図1には、透過型光偏向ディスク30は同期モータ40によって直接、駆動されるように表わしてあるが、駆動装置4に対して、同期モータ40の回転を伝達する伝達機構を設け、この伝達機構を介して透過型光偏向ディスク30が回転駆動される構成を採用してもよい。なお、同期モータ40としては、ステッピングモータなどの外部同期型のモータの他、ブラシレスモータ、直流整流子モータなどの内部同期型のモータを用いてもよい。また、同期モータ40としては、AC電源を用いた同期モータや、ACインダクタンス/コンデンサモータなどを用いてもよい。」 (4) 段落0032 「【0032】 (本形態の主な効果) 以上説明したように、本形態では、透過型光偏向ディスク30に光走査領域36が形成されているとともに、入射した光ビームを光走査領域36とは異なる方向に出射する原点位置検出用出射領域82が形成されているため、光源装置10から出射された光ビームL0の入射位置に原点位置検出用出射領域82が到来すると、この原点位置検出用出射領域82から出射された光ビームは、原点位置検出用光検出器81で検出される。このため、 透過型光偏向ディスク30の原点位置を確実に検出できるので、この原点位置を基準にして、各時点における光ビーム走査装置1から光ビームが出射された方向を把握できる。それ故、本形態の光ビーム走査装置1を車間距離測定装置や監視装置などに用いた場合、前走車両が位置する方向を確実に検出することができる。」 (5) 段落0046から段落0049まで 「【0046】 [その他の実施の形態] 上記形態では、透過型光偏向ディスク30に屈折型の光走査領域36を形成するとともに、透過型光偏向ディスク30に屈折型の原点位置検出用出射領域を設けたが、屈折型の光走査領域36を備えた透過型光偏向ディスク30に反射型の原点位置検出用出射領域を設けてもよい。 【0047】 また、上記形態では、光偏向素子として透過型光偏向ディスク30を用いた例であったが、光走査領域において光ビームが入射する角度位置によって光ビームを反射する方向が相違する反射型光偏向ディスクを用いてもよい。この場合、例えば、図2に示す透過型光偏向ディスク30の上面に反射層を形成して反射型光偏向ディスクを構成し、この反射型光偏向ディスクの上面に向けて光源装置から光ビームを出射すればよい。また、光源装置は、反射型光偏向ディスクの下面側からその上面の反射層に向けて光ビームを出射してもよい。さらに、このような透過型光偏向ディスクに原点位置検出用出射領域を形成するにあたっては、透過型の原点位置検出用出射領域を設けてもよい。 【0048】 また、上記形態では、光偏向素子としてディスク面に光走査領域を備えた偏向ディスクを用いた例であったが、ポリゴンミラーのように、側面に光走査領域を備えた光偏向素子を用いた場合には、その側面の一部に原点位置検出用出射領域を設けてもよい。 【0049】 さらに、光偏向素子としては回転駆動されるタイプのものに限らず、往復直線駆動されるものを用いた光ビーム走査装置に本発明を適用してもよい。」 上記(1)ないし(5)の記載によれば、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「車間距離測定装置に用いられ、光ビームを所定の方向に走査する光ビーム走査装置であって、 光源としてのレーザダイオードを備えている光源装置と、 該光源装置から出射された光ビームの入射位置により当該光ビームの出射方向が変化する透過型の光偏向素子であって、入射した光ビームを所定の角度範囲にわたって走査させる光走査領域と、入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域とが形成される光偏向素子と、 該光偏向素子を駆動して当該光偏向素子に対する前記光ビームの入射位置を変化させる駆動装置と、 前記原点位置検出用出射領域から光ビームが出射される方向に配置され、光ビームが非合焦状態で到達する原点位置検出用光検出器と を備え、 光偏向素子として、往復直線駆動されるものを用いた 光ビーム走査装置。」 2 引用文献4 引用文献4には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (1) 段落0001 「【技術分野】 【0001】 本発明は、光学素子を移動させることにより光線を所定の方向に照射する光照射装置に関し、特にレーザレーダ装置等においてレーザビームを照射するのに好適な光照射装置に関する。」 (2) 段落0005から段落0008まで 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ここで、ボイスコイルモータを用いる場合、フィードバック制御により送光用のレンズを動かすためには、以下の(1)及び(2)に示す条件を満足することが望ましい。 【0006】 (1) 自動車の走行中にレーザレーダで前方の障害物を検出して事故を防止するためには、自動車の走行状況や道路状況により、障害物を検出するのに最も適したスキャンパターンでレーザビームがスキャンされるようにする必要がある。例えば、自動車が高速道路を高速で走行している最中は、レーザビームのスキャン角度を狭めて比較的遠方の物体を重点的に検出できるようにすることが必要である。逆に、渋滞等により自動車の速度が落ちてきた場合には、進行方向正面の自動車に加えて、至近距離で隣接車線から車線変更してくる自動車等も的確に検出できるようにするために、レーザビームのスキャン角度を広くすることが必要である。これらのような場合は何れも、レーザビームのスキャン動作を継続しつつ、スキャン角度を徐々に変化させる必要がある。即ち、レーザビームのスキャンパターンを切り替えるにあたっては、VCMにより送光用のレンズの動きを制御するフィードバック制御を保った状態でレーザビームのスキャンパターンを徐々に変更させる必要がある。 【0007】 (2) …(略)… 【0008】 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、レーザビームのスキャンパターンを徐々に変更することができ、且つ位置検出素子の精度誤差を補正して正確なアクチュエータの位置制御を行うことができる光照射装置を提供することを目的とする。」 (3) 段落0013から段落0018まで 「【0013】 スキャナ部200は、レンズホルダ201と、アクチュエータ202と、光源203a及び203bと、PSD204a及び204bとを有し、スキャナ制御部300の制御の下、レーザビームを任意の方向(角度)に投射する。 【0014】 レンズホルダ201は、内部に、発光素子201aと、リレーレンズ201bとを有している。発光素子201aは、例えばレーザダイオードであり、発光装置500から供給される電流に応じた光をリレーレンズ201bの側に投射する。リレーレンズ201bは、発光素子201aからの光出力を、適当な広がり角を持った、レーザレーダに好適なレーザビームに成形して出射する。 【0015】 アクチュエータ202は、光学素子としてのレンズ202aが配置されている。本実施形態のアクチュエータ202は、例えばVCMの一種であるが、可動範囲が小さいので、ガイドロッド等のレール上を移動するような構造ではない。即ち、本実施形態のアクチュエータ202は、ワイヤバネ202bによってレンズホルダ201に支持され、図示矢印で示すX軸方向とX軸方向に直交するY軸方向とを移動自在に構成されている。 【0016】 アクチュエータ202は、ワイヤバネ202bから給電される電流を駆動コイル202cに流すことにより、駆動コイル202cと磁石202dとの間に発生する電磁力を受けてX軸方向の任意の位置に移動する。なお、Y軸方向については駆動コイルと磁石を図示していないが、X軸方向と同様の構造・原理に従ってY軸方向の任意の位置に移動する。このアクチュエータ202の移動に伴って、アクチュエータ202に配置されたレンズ202aも、レーザビームの光軸に垂直な平面内を移動する。 【0017】 以上の動作により、リレーレンズ201bから出射され、レンズ202aで屈折したレーザビームを、2次元状にスキャンさせることが可能である。 【0018】 ここで、アクチュエータ202の動きは、アクチュエータ202のX軸方向に沿った動きを検出するためのPSD204aと、アクチュエータ202のY軸方向に沿った動きを検出するためのPSD204bとによって検出される。即ち、光源203aとPSD204a、及び光源203bとPSD204bはそれぞれアクチュエータ202を挟むように配置されている。またアクチュエータ202にはスリット202e、202fが形成されている。このような構成において、アクチュエータ202の動きに連動してスリットの位置が移動することにより、各光源からの光はスリットを通過して、PSDに入射する光スポットの入射位置が移動する。このときの各PSDからの出力電流に基づき、アクチュエータ202の位置を示す位置検出信号が生成され、この位置検出信号がスキャナ制御部300に送られる。」 上記(1)ないし(3)の記載によれば、引用文献4には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「自動車の走行中に前方の障害物を検出するレーザレーダ装置においてレーザビームを任意の方向(角度)に投射する光照射装置を、 レーザダイオードである発光素子201aを有しているレンズホルダ201と、 光学素子としてのレンズ202aが配置されているアクチュエータ202であって、X軸方向とX軸方向に直交するY軸方向とを移動自在に構成され、その移動に伴ってレンズ202aもレーザビームの光軸に垂直な平面内を移動し、この動作により、レンズ202aで屈折したレーザビームを、2次元状にスキャンさせることが可能であるアクチュエータ202と、 アクチュエータ202のX軸方向及びY軸方向に沿った動きをそれぞれ検出するためのPSD204a及びPSD204bと で構成する。」 3 平成29年6月26日付け拒絶理由通知書で引用された文献 平成29年6月26日付け拒絶理由通知書で引用された文献である特開平1-50009号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (1) 第1頁左欄第16行から右欄第12行まで 「(産業上の利用分野) 本発明は回転するポリゴンミラーに光ビームを投射して光ビームを走査させるようにした光ビーム走査装置に関し、レーザビームの走査によって感光体上に画像の潜像を形成するレーザプリンタ等に利用される。 (従来の技術) この種の光ビーム走査装置では、ポリゴンミラーの反射面の角分割精度や回転ムラ、振動等の影響で光ビームの走査域が副走査方向に必ずしも揃わないことがあり、感光体上に歪んだ潜像が形成されることがある。 そこで、このようなことを解消するため、画像形成用光ビームが走査上手側の所定位置に達したことを検知する同期信号を発生させてその同期信号に基づいて光ビームの画像信号による変調を開始することが一般に行なわれている。」 (2) 第2頁右上欄第18行から左下欄第18行まで 「(問題点を解決するための手段) 本発明は、上記目的を達成するため、光ビームをポリゴンミラーに投射し、ポリゴンミラーの回転により光ビームを偏向走査して走査線を形成する光ビーム走査装置において、ポリゴンミラーのエツジ部による光ビームの反射散乱光が入射し、反射面による光ビームの反射光は入射しないポリゴンミラーの側部位置に検出器を配設し、この検出器の出力信号を同期信号としたことを特徴とする。 (作用) 本発明の上記構成によれば、ポリゴンミラーのエツジ部による反射散乱光は広い範囲に投射されるので、これを検出する検出器の位置は多少ずれても検出可能であり、かつポリゴンミラーのエツジ部の幅を光ビームのスポットに比して小さくすることによって高い検出精度を確保することができる。従って、検出器の細かな位置調整が不要となり、また移動、搬送時の振動による微少な位置ずれによって検出不可能となるというようなこともない。」 上記(1)及び(2)の記載によれば、引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「回転するポリゴンミラーに光ビームを投射して光ビームを走査させるようにした光ビーム走査装置において、 ポリゴンミラーのエツジ部による光ビームの反射散乱光が入射し、反射面による光ビームの反射光は入射しないポリゴンミラーの側部位置に検出器を配設し、この検出器の出力信号を光ビームが走査上手側の所定位置に達したことを検知する同期信号とする。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。 ア 引用発明の「光ビーム走査装置」は、「車間距離測定装置に用いられ」るものであるから自動車に搭載されるものであることが明らかであり、よって、これは本願発明1の「自動車に搭載される光学走査装置(10)」に相当する。 イ 引用発明における「光源としてのレーザダイオードを備えている光源装置」は、本願発明1における「レーザ光を発光する発光手段(21,71)」に相当する。 ウ 引用発明における「該光源装置から出射された光ビームの入射位置により当該光ビームの出射方向が変化する透過型の光偏向素子であって、入射した光ビームを所定の角度範囲にわたって走査させる光走査領域と、入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域とが形成される光偏向素子」は、「駆動装置」によって駆動されて「当該光偏向素子に対する前記光ビームの入射位置を変化させる」ものであるから、本願発明1における「偏向手段(24,25,72,74)」のように「規定された駆動態様である規定駆動態様で駆動される」ものであるといえる。 また、引用発明における上記「光偏向素子」は、「光走査領域」に光ビームが入射すると「入射した光ビームを所定の角度範囲にわたって走査させる」ものであり、これは、本願発明1における「偏向手段(24,25,72,74)」が、「当該偏向手段の規定された部位である規定部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を適正角度範囲へ照射」するものであることに相当する。 また、引用発明における上記「光偏向素子」は、「屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域」に光ビームが入射すると「入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する」ものであり、このことと、本願発明1における「偏向手段(24,25,72,74)」が、「前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位である散乱部に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を散乱させる」ものであるということとは、「偏向手段」が、「前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を出射させる」ものであるという点で共通する。 また、引用発明における「透過型の光偏向素子」と、本願発明1における「レンズである偏向手段」とは、「透過型の偏向手段」であるという点で共通する。 以上によれば、引用発明における上記「光偏向素子」と、本願発明1における「規定された駆動態様である規定駆動態様で駆動される偏向手段(24,25,72,74)であって、当該偏向手段の規定された部位である規定部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を適正角度範囲へ照射し、前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位である散乱部に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を散乱させるレンズである偏向手段」とは、「規定された駆動態様である規定駆動態様で駆動される偏向手段であって、当該偏向手段の規定された部位である規定部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を適正角度範囲へ照射し、前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を出射させる透過型の偏向手段」である点で共通する。 エ 引用発明における「前記原点位置検出用出射領域から光ビームが出射される方向に配置され、光ビームが非合焦状態で到達する原点位置検出用光検出器」と、本願発明1における「前記偏向手段にて散乱された前記レーザ光を受光する第1受光手段(60)」とは、「前記偏向手段の前記規定部位とは異なる部位から出射された前記レーザ光を受光する第1受光手段」である点で共通する。 オ 引用発明における「入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域」及び「前記原点位置検出用出射領域から光ビームが出射される方向に配置され、光ビームが非合焦状態で到達する原点位置検出用光検出器」は、いずれも「原点位置検出用」とされているから、引用発明が、「原点位置検出用出射領域」から出射される光ビームを「原点位置検出用光検出器」で受光した結果により「原点位置」を検出する構成を備えていることが明らかである。 この「原点位置」を検出する構成と、本願発明1の「前記第1受光手段で受光した結果、受光強度が予め規定された閾値以上となると、基準位置に前記散乱部が位置することを検出する位置検出手段(42,S140,S230)」とは、「前記第1受光手段で受光した結果、基準位置に前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位が位置することを検出する位置検出手段」である点で共通する。 カ 引用発明における「光偏向素子として、往復直線駆動されるものを用いた」という事項は、本願発明1における「前記偏向手段は、直線運動を前記規定駆動態様として、駆動される」という事項に相当する。 (2) 一致点及び相違点 上記(1)の対比の結果をまとめると、本願発明1と引用発明とは、 「自動車に搭載される光学走査装置であって、 レーザ光を発光する発光手段と、 規定された駆動態様である規定駆動態様で駆動される偏向手段であって、当該偏向手段の規定された部位である規定部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を適正角度範囲へ照射し、前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位に前記発光手段からのレーザ光が照射されると、そのレーザ光を出射させる透過型の偏向手段と、 前記偏向手段の前記規定部位とは異なる部位から出射された前記レーザ光を受光する第1受光手段と、 前記第1受光手段で受光した結果、基準位置に前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位が位置することを検出する位置検出手段と を備え、 前記偏向手段は、 直線運動を前記規定駆動態様として、駆動されることを特徴とする光学走査装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ア 相違点1 本願発明1では、偏向手段が「レンズ」であり、「レンズ」である偏向手段の「前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位」が「レーザ光を散乱させる」「散乱部」であるのに対し、引用発明では、偏向手段が「透過型」のものではあるが「レンズ」とは特定されておらず、また、偏向手段の「前記規定部位とは異なる当該偏向手段の部位」が「入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域」であって光ビームを「散乱」させる領域とは特定されていない点。 イ 相違点2 位置検出手段が、本願発明1では、「受光強度が予め規定された閾値以上となると」検出を行うものであるのに対し、引用発明では、そのように検出を行うものであるかどうかが不明である点。 (3) 相違点についての判断 まず、相違点1について検討する。 引用発明が相違点1に係る本願発明1の構成を備えるようにするには、引用発明において、「該光源装置から出射された光ビームの入射位置により当該光ビームの出射方向が変化する透過型の光偏向素子」として「レンズ」を採用し、また、「入射した光ビームを前記光走査領域による走査方向と異なる方向に出射する屈折型又は反射型の原点位置検出用出射領域」を「レーザ光を散乱させる」「散乱部」を備えるものとし、さらにその「散乱部」を「レンズ」の「部位」とする必要がある。 この点について、引用文献4又は引用文献2に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に想到し得るかどうかを検討するに、まず、引用文献4に記載された技術事項は、レンズが配置されているアクチュエータを移動させることで、レンズで屈折したレーザビームを2次元状にスキャンさせるというものである。また、引用文献2に記載された技術事項は、光ビームを走査させるためのポリゴンミラーのエッジ部による反射散乱光を検出し、これにより光ビームが走査上手側の所定位置に達したことを検知するというものである。 そして、引用発明において引用文献4に記載された上記技術事項を採用して、光偏向素子において光ビームを走査する機能を有する「光走査領域」を「レンズ」とし、また、引用発明において引用文献2に記載された上記技術事項を採用して、光偏向素子において原点位置の検出に用いられる「原点位置検出用出射領域」に「散乱部」を設けることが、いずれも当業者にとって容易に想到し得ることといえたとしても、これによって導き出されるのは、「レンズ」である「光走査領域」とは別の領域である「原点位置検出用出射領域」に「散乱部」を設けた構成であって、「レンズ」に「散乱部」を設け、「散乱部」を「レンズ」の「部位」とした構成までは、上記技術事項から導き出すことができない。 したがって、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献4及び引用文献2に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。 (4) 本願発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願発明1は、相違点2を検討するまでもなく、引用文献3、引用文献4及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 2 本願発明2ないし本願発明5について 本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1の構成を全て含むから、少なくとも本願発明1と引用発明との相違点(相違点1及び相違点2)で引用発明と相違する。 そして、上記1(3)のとおり、相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明と引用文献4及び引用文献2に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできないから、相違点1に係る本願発明2ないし本願発明5の構成も同様である。 したがって、本願発明2ないし本願発明5は、引用文献3、引用文献4及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第6 原査定について 上記第5のとおり、本願発明1ないし本願発明5は、引用文献3、引用文献4及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 したがって、原査定の理由は、維持することができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願は拒絶をするべきものであるということはできない。 また、他に、本願は拒絶をするべきものであるとする理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-04-01 |
出願番号 | 特願2014-128336(P2014-128336) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01S)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 渡辺 慶人、中村 説志、濱本 禎広 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
櫻井 健太 中塚 直樹 |
発明の名称 | 光学走査装置、及びレーザレーダ装置 |
代理人 | 名古屋国際特許業務法人 |