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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1350499 |
審判番号 | 不服2017-16082 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-10-30 |
確定日 | 2019-04-04 |
事件の表示 | 特願2016-209778「回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日出願公開、特開2017- 85102〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成28年6月24日(優先権主張 平成27年10月27日)に出願した特願2016-125784号の一部を同年10月26日に新たな出願としたものであって、同日付けで手続補正がなされ、同年12月6日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成29年1月16日付けで意見書のみ提出され、同年3月8日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月11日付けで意見書のみ提出されたが、同年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされた。 その後、当審の平成30年11月22日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成31年1月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成31年1月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板であって、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されており、 当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されており、前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下であり、 前記ダレ部側である前記裏面が、絶縁基板との接合面とされてなる回路基板用金属板。」 3.引用例 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開2010-10561号公報(以下、「引用例」という。)には、「パワーモジュール用基板」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。 (1)「【請求項2】 セラミックス基板の表面にろう材層を介在させて金属板を積層し、これらを加熱することにより前記ろう材層を溶融して前記セラミックス基板に前記金属板をろう付け接合するパワーモジュール用基板の製造方法であって、 前記ろう材層は、前記金属板の側面積に対して0.20?0.22倍の体積のものを用いることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。 【請求項3】 前記金属板は平板から打ち抜き成形されることにより形成され、前記ろう材層は、前記平板の片面に予め形成され、前記金属板の打ち抜き成形により同時に成形されたものであることを特徴とする請求項2記載のパワーモジュール用基板の製造方法。」 (2)「【0011】 以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。 最初に、本発明に係るパワーモジュール用絶縁基板が用いられるパワーモジュールについて図1により説明しておくと、このパワーモジュール1は、セラミックス基板2を有するパワーモジュール用基板3と、該パワーモジュール用基板3の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品4と、パワーモジュール用基板3の裏面に接合される冷却器5とから構成されている。 【0012】 パワーモジュール用基板3は、セラミックス基板2の表面側に電子部品4を搭載するための回路層用金属板6が積層され、セラミックス基板2の裏面側に放熱層用金属板7が積層され、この放熱層用金属板7に冷却器5が取り付けられる構成である。 また、セラミックス基板2は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、若しくはAl2O3(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを母材として形成されている。回路層用金属板6は、純アルミニウム若しくはアルミニウム合金により形成され、放熱層用金属板7は、純度99.0wt%以上の純アルミニウムにより形成されている。」 (3)「【0015】 次に、このように構成されるパワーモジュール1を製造する方法について説明する。 まず、セラミックス基板2の製作に際して、これを複数個形成し得る広い面積のセラミックス平板11を製作しておく(図3参照)。 一方、回路層用金属板6及び放熱層用金属板7は、セラミックス基板2と同様に、複数個形成し得る広い面積の金属平板12をそれぞれ用意し、これを打ち抜いて回路層用金属板6及び放熱層用金属板7として製作される(図3には回路層用金属板6のみ示す)。このとき、金属平板12の片面に予めろう材箔13を貼付しておく。 【0016】 このろう材箔13は、Al-Si系、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系またはAl-Mn系等が用いられ、金属平板12の片面に樹脂コーティング層を介して貼付される。この樹脂コーティング層の有機物樹脂としてはオクタンジオールが用いられる。このオクタンジオールは、可塑剤等として用いられているもので、常温で液体(融点-40℃以下)であるので、コーティングし易く、また、沸点も244℃であり、その後のろう付け温度(例えば640℃)で完全に脱脂される。 これら金属平板12とろう材箔13とは、例えばロール状のものを繰り出し、金属平板12に有機物樹脂をコーティングしながらろう材箔13を重ね合わせる方法により製作される。また、使用されるろう材箔13の厚さとしては、打ち抜かれる金属板12の側面積に対してろう材層13aの体積が0.20?0.22倍となるように、金属板6,7の平面積に応じて設定される。 【0017】 そして、このろう材箔13を貼付した各金属平板12から回路層用金属板6及び放熱層用金属板7の外形にそれぞれ打ち抜き成形し、これら回路層用金属板6及び放熱層用金属板7のろう材層側をセラミックス平板11の両面にそれぞれ重ね合わせる。この場合、いわゆるプッシュバック法により、金属平板12から打ち抜いた回路層用金属板6及び放熱層用金属板7を再度金属平板12の打ち抜き穴内に押し戻して、これら回路層用金属板6及び放熱層用金属板7を各金属平板12の打ち抜き穴の中に保持させた状態としておき、これらをセラミックス平板11の両面に配置した状態で、各金属平板12から回路層用金属板6及び放熱層用金属板7を押し出してセラミックス平板11に重ね合わせる方法とすることもできる。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0020】 このろう付け工程においては、クッションシート15のクッション性により、セラミックス平板11及び両金属板6,7が片当たりすることなく、面方向に均一に加圧され、したがって、その間の溶融ろう材が金属板6,7の周縁からほぼ均等にはみ出してくる。 このようにしてセラミックス平板11に両金属板6,7をろう付けした後、セラミックス平板11を1個ずつに切断分割すると、セラミックス基板2の両面に回路層用金属板6及び放熱層用金属板7がろう付けにより固着したパワーモジュール用基板3が製作される。」 ・上記引用例に記載の「パワーモジュール用基板」は、上記(2)の記載事項、及び図1によれば、セラミックス基板2の表面側に電子部品4を搭載するための回路層用金属板6が積層されてなるものである。 ・上記(1)の【請求項3】、(3)の記載事項、及び図3によれば、回路層用金属板6は、ろう材箔13を貼付した金属平板12から打ち抜き成形により形成され、ろう材箔13から同時に打ち抜き成形されたろう材層側がセラミックス基板2との接合面とされてなるものである。 したがって、パワーモジュール用基板を構成する「回路層用金属板」に着目してこれを発明として捉え、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ろう材箔を貼付した金属平板から打ち抜き成形により形成されてなる回路層用金属板であって、 前記ろう材箔から同時に打ち抜き成形されたろう材層側がセラミックス基板との接合面とされてなる回路層用金属板。」 4.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、 (1)引用発明における「ろう材箔を貼付した金属平板から打ち抜き成形により形成されてなる回路層用金属板であって」によれば、 引用発明における「回路層用金属板」は、本願発明でいう「回路基板用金属板」に相当し、 引用発明の「回路層用金属板」にあっても、金属平板から打ち抜き成形、すなわちプレス機械による打ち抜きによって成形される金属板であり、その切断面には当然、せん断面領域と破断面領域とが形成され、金属板の一方の面(本願発明でいう「裏面」)と切断面のせん断領域とがなす角部にはいわゆるダレ部が形成されてなるものであるといえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、「プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板であって、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されており、当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されて」なるものである点で一致するということができる。 (2)本願発明では、「前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点で相違している。 (3)引用発明における「前記ろう材箔から同時に打ち抜き成形されたろう材層側がセラミックス基板との接合面とされてなる回路層用金属板。」によれば、 引用発明における「セラミックス基板」が、本願発明でいう「絶縁基板」に相当し、 引用発明の「回路層用金属板」にあっても、その一方の面(ろう材層側の面)がセラミックス基板に接合されてなるものであることから、 本願発明と引用発明とは、「当該回路基板用金属板の一方の面が、絶縁基板との接合面とされてなる」ものである点で共通するといえる。 ただし、絶縁基板との接合面とされてなる当該回路基板用金属板の一方の面が、本願発明では、ダレ部が形成されている「裏面」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点で相違している。 よって、本願発明と引用発明とは、 「プレス成形により形成されてなる回路基板用金属板であって、プレス成形による切断面を有し、該切断面に、破断面領域とせん断面領域とが形成されており、 当該回路基板用金属板の裏面と前記切断面のせん断面領域とがなす角部に、前記切断面側に向けて当該回路基板用金属板の厚みを漸減させる向きに湾曲するダレ部が形成されており、 当該回路基板用金属板の一方の面が、絶縁基板との接合面とされてなる回路基板用金属板。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、「前記ダレ部を通る断面視で、当該回路基板用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 [相違点2] 絶縁基板との接合面とされてなる当該回路基板用金属板の一方の面が、本願発明では、ダレ部が形成されている「裏面」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 5.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 例えば特開2002-263748号公報(段落【0002】?【0007】を参照)、特開2006-7268号公報(段落【0001】?【0012】を参照)に記載のように、打ち抜き加工により打ち抜かれた切片側を加工品として利用する場合、当該加工品が高い寸法精度で得られるように、いわゆるダレ部を極力少なくすることはごく普通に望まれることであって、ダレ部を極力少なくするための各種手段も周知である。また、引用例には、あえて(積極的に)ダレ部を形成するとか、ダレ部が少ないと不都合があるといった記載はないことから、引用発明においても、打ち抜き成形される回路層用金属板について、その角部に形成されるダレ部を極力少なくすること、具体的には、本願発明で特定する「ダレ部を通る断面視で、回路層用金属板の幅Wpに対するダレ部形成領域の幅Wdの割合が、百分率で表して10%以下」を満たすものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 [相違点2]について 引用例には、回路層用金属板を、ろう材箔を貼付した金属平板から打ち抜き成形するに際し、打ち抜きがろう材箔が貼付されている面側からなのか、あるいは、ろう材箔が貼付されていない面側からなのか、どちらの方向から行われるのかは明記されていないが、どちらの方向から打ち抜くかは当業者が適宜定め得る事項にすぎず、例えば特開2014-168811号公報(特に段落【0040】?【0042】、図5を参照)には、セラミックス基板に接合される回路パターン形状の銅金属板を、ろう材付きシートが片面に貼付された銅金属板のろう材付きシートが貼付されていない面側から打ち抜き加工することにより形成することが実質的に記載されているといえるところであり、引用発明においても、回路層用金属板を、ろう材箔が貼付されていない面側から打ち抜き成形するようにし(この場合、ろう材箔が貼付されている面側、すなわち接合面側の角部にいわゆるダレ部が形成されることになる)、相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明が奏する効果についてみても、引用発明から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-01-31 |
結審通知日 | 2019-02-05 |
審決日 | 2019-02-18 |
出願番号 | 特願2016-209778(P2016-209778) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 貴志 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
井上 信一 山澤 宏 |
発明の名称 | 回路基板用金属板、回路基板用金属板成形品、回路基板およびパワーモジュールならびに、パワーモジュールの製造方法 |
代理人 | アクシス国際特許業務法人 |