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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1350510
審判番号 不服2018-6109  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-02 
確定日 2019-04-04 
事件の表示 特願2013-528445「位置検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日国際公開、WO2013/172315〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)5月13日(優先権主張 平成24年5月14日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年11月29日付け:拒絶理由通知書
平成29年 2月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月20日付け:拒絶理由通知書
平成29年 9月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 1月30日付け:拒絶査定(謄本送達日:同年2月6日)
平成30年 5月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年5月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年5月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所である。)
「【請求項1】
交流信号で励磁される2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の間隔で離隔されて配置されている前記コイル部と、
前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、1つのコイル対における各コイルのインピーダンス変化が互いに逆相特性を示すようにした前記磁気応答部材と、
各コイル対毎に、該対を構成する2つのコイルを直列接続したコイル直列接続回路を構成し、該コイル直列接続回路に前記交流信号を印加し、かつ、該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点から該2つのコイルのインピーダンスに応じた分圧出力電圧を該対の検出出力信号として、それぞれ取り出す回路と
を具え、
前記2対のコイルのうち、第1の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してサイン相の振幅特性を示し、第2の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してコサイン相の振幅特性を示し、
前記第1及び第2の対の各検出信号を外部に出力するように構成された位置検出装置であって、
前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して離隔して配置された変換装置に伝送され、該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含み、位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみであることを特徴とする位置検出装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年9月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
交流信号で励磁される2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の間隔で離隔されて配置されている前記コイル部と、
前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、1つのコイル対における各コイルのインピーダンス変化が互いに逆相特性を示すようにした前記磁気応答部材と、
各コイル対毎に、該対を構成する2つのコイルを直列接続したコイル直列接続回路を構成し、該コイル直列接続回路に前記交流信号を印加し、かつ、該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点から該2つのコイルのインピーダンスに応じた分圧出力電圧を該対の検出出力信号として、それぞれ取り出す回路と
を具え、
前記2対のコイルのうち、第1の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してサイン相の振幅特性を示し、第2の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してコサイン相の振幅特性を示し、
前記第1及び第2の対の各検出信号を外部に出力することを特徴とする位置検出装置。」

また、本件補正前の、平成29年2月6日にされた手続補正により補正されていた特許請求の範囲の請求項3の記載は次のとおりである。
「【請求項3】
前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して伝送される、請求項1又は2に記載の位置検出装置。」

(3)補正の内容
ア 本件補正の結果、本件補正後の請求項1には、「前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して」「伝送され」という事項が記載されることになった。
これは、本件補正前において、請求項1の記載を引用する請求項3に記載されていた事項である。
そうすると、本件補正のうち、本件補正後の請求項1に上記の事項を記載する補正は、本件補正前の請求項1を削除し、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を独立形式の請求項に変更する補正にほかならない。

イ 本件補正の結果、本件補正後の請求項1には、(前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して)「離隔して配置された変換装置に」(伝送され)、という事項が記載されることになった。
これは、上記アの「前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して」「伝送され」という事項について、伝送される先が「離隔して配置された変換装置」であるとの限定を付加するものである。

ウ 本件補正の結果、本件補正後の請求項1には、「該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含み、位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみである」という事項が記載されることになった。
これは、「位置検出装置」について、「位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみである」との限定を付加するとともに、上記イの「変換装置」について、「該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含み」との限定を付加するものである。

2 補正の適否
上記1(3)によれば、請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1を削除する補正と、本件補正前の請求項1を引用する請求項3を請求項1とした上で、その発明特定事項をさらに限定する補正とを含む。
前者は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当し、後者は、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、同条第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2011-153863号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る回転位置検出装置に使用されるレゾルバの構成例を示す概念図である。このレゾルバ1は、共に磁性材料で形成されたロータ3とステータ5とを備えている。
ロータ3は1個の突極を有する。ステータ5は、等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極を有し、対向する第1、第3磁極にそれぞれ単一のコイルL1、L3を巻着するとともに、対向する第2、第4磁極にそれぞれ単一のコイルL2、L4を巻着してある。
【0014】
図2に示すように、コイルL1、L3は互いに直列接続されて第1のコイル組を構成し、同様に、コイルL2、L4は互いに直列接続されて第2のコイル組を構成している。
第1のコイル組と第2のコイル組は、入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続されている。また、コイルL1、L3の共通接続点は、出力端子T_(OUT1)に接続され、コイルL2、L4の共通接続点は、出力端子T_(OUT2)に接続されている。
つまり、コイルL1?L4は、コイルL1、L2を上アームとしコイルL3、L4を下アームとするHブリッジ回路を構成するように、換言すれば、コイルL1、L4相互及びコイルL2、L3相互がそれぞれ対角に位置するHブリッジ回路を構成するように接続されている。」

【図1】 【図2】

「【0016】
ロータ3の形状は、各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定されている。
したがって、コイルL1?L4を上記のように結線すれば、コイルL1、L3のインダクタンスの基本波とコイルL2、L4のインダクタンスの基本波の位相が90度異なることになって、バランスの良い磁気回路が構成される。
【0017】
図3は、上記レゾルバ1を使用した本発明に係る回転位置検出装置の実施形態を示す。この図3に示すように、レゾルバ1には、CPU、DSP等のマイクロプロセッサを処理手段として使用した信号処理装置7が接続される。この信号処理装置7は、信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備えている。
上記信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13は、説明の便宜上、個別の機能を有する構成体として示してある。しかし、実際には、この信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13の機能は上記マイクロプロセッサによるプログラム処理によってもたらされるものである。
【0018】
信号発生部9は、所定周波数(例えば20KHz)の高周波パルス信号である基準パルス信号e_(m)を発生する。この基準パルス信号e_(m)は、マイクロプロセッサで使用されるベースクロック(例えば200MHz)を分周処理することによって得たものであり、励磁回路18のバッファ15を介してレゾルバ1の一方の入力端子T_(IN1)に入力されるとともに、インバータ17を介してレゾルバ1の他方の入力端子T_(IN2)に入力される。
この結果、レゾルバ1のコイルL1?L4が交番励磁されるので、例えば、レゾルバ1のロータ3がモータの回転軸に結合されている場合、このモータの回転に伴って、レゾルバ1の出力端子T_(OUT1),T_(OUT2)から図4、図5に示すようなパルス状の信号V_(1a),V_(2a)がそれぞれ出力される。図示のように、このレゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)の振幅は、レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化する。」

図3及び下記【0029】の「レゾルバ1と信号処理装置7との間を結合する線路」という記載から、レゾルバ1と信号処理装置7との間は線路で結合されることが見て取れる。

「【0022】
A/D変換部11に入力された上記レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)は、図6、図7に示す信号V_(1d),V_(2d)に変換される。角度計算部13は、この信号V_(1d),V_(2d)を入力し、下式(1)に基づいてロータ3の回転位置(角度)θを計算する。
θ=tan^(-)(V_(1d)/V_(2d)) (1)
図8にθ(電気角)の計算結果を示す。このように、本実施形態の回転位置検出装置では、ロータ3が1回転(0°?360°の機械変化)する間に電気的に1周期の位置信号(0°?360°の電気角を示す信号)が得られる。」

「【0026】
図10にレゾルバの他の構成例を示し、図11にこのレゾルバ10を使用した本発明に係る回転位置検出装置の他の実施形態を示す。
レゾルバ10は、極数5のロータ3’を備える点で図1に示すレゾルバ1と相違する。このレゾルバ10は、上記レゾルバ1と同様に、励磁回路18を介して加えられる交番励磁パルス信号によってコイルL1?L4が励磁される。したがって、ロータ3’を回転させることにより、出力端子T_(OUT1),T_(OUT2)から図12、図13に示すような信号、つまり、ロータ3’の回転に伴うインダクタンスの正弦波状変化に応じて振幅が正弦波状に変化するパルス状の信号V_(11a),V_(22a)がそれぞれ出力される。
【0027】
信号V_(11a),V_(22a)は、該信号に含まれるノイズを削減するために図11に示すバンドパスフィルタ23に入力され、この結果、バンドパスフィルタ23からは信号V_(11a),V_(22a)に対応する信号V_(11a)’,V_(22a)’が出力される。・・・」

「【0029】
このバンドパスフィルタ23を用いた実施形態によれば、レゾルバ1の出力信号V_(11a),V_(22a)の変動ノイズの他、レゾルバ1と信号処理装置7との間を結合する線路に入り込むノイズも低減もしくは除去されるので、特に、上記結合線路が長い場合に有効である。・・・」

「【0033】
更に、図11に示す実施形態では、レゾルバ10の出力信号V_(11a),V_(22a)をバンドパスフィルタ23に入力しているが、このバンドパスフィルタ23を省略することも可能である。この場合、A/D変換部11の変換タイミング信号として図3に示す実施形態における変換タイミング信号が使用される。
一方、図3に示す回転位置検出装置においても、必要に応じてレゾルバ1とA/D変換部11との間にバンドパスフィルタを介在させることができ、その場合、A/D変換部11の変換タイミング信号として図11に示す実施形態における変換タイミング信号が使用される。そして、この回転位置検出装置を図9のモータ駆動システムに適用する場合には、レゾルバ1と制御回路20との間に上記バンドパスフィルタが設けられる。」

(イ)したがって、上記刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「回転位置検出装置に使用されるレゾルバであって、レゾルバ1は、共に磁性材料で形成されたロータ3とステータ5とを備え、
ロータ3は1個の突極を有し、ステータ5は、等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極を有し、対向する第1、第3磁極にそれぞれ単一のコイルL1、L3を巻着するとともに、対向する第2、第4磁極にそれぞれ単一のコイルL2、L4を巻着してあり(【0013】より。以下同様。)、
コイルL1、L3は互いに直列接続されて第1のコイル組を構成し、同様に、コイルL2、L4は互いに直列接続されて第2のコイル組を構成し、
第1のコイル組と第2のコイル組は、入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続され、コイルL1、L3の共通接続点は、出力端子T_(OUT1)に接続され、コイルL2、L4の共通接続点は、出力端子T_(OUT2)に接続され、コイルL1?L4は、コイルL1、L2を上アームとしコイルL3、L4を下アームとするHブリッジ回路を構成し(【0014】)、
ロータ3の形状は、各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定され、コイルL1?L4を上記のように結線すれば、コイルL1、L3のインダクタンスの基本波とコイルL2、L4のインダクタンスの基本波の位相が90度異なり(【0016】)、
レゾルバ1には、CPU、DSP等のマイクロプロセッサを処理手段として使用した信号処理装置7が接続され、信号処理装置7は、信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備え(【0017】)、
信号発生部9は、所定周波数(例えば20KHz)の高周波パルス信号である基準パルス信号e_(m)を発生し、基準パルス信号e_(m)は、励磁回路18のバッファ15を介してレゾルバ1の一方の入力端子T_(IN1)に入力されるとともに、インバータ17を介してレゾルバ1の他方の入力端子T_(IN2)に入力され、
この結果、レゾルバ1のコイルL1?L4が交番励磁されるので、レゾルバ1のロータ3がモータの回転軸に結合されている場合、このモータの回転に伴って、レゾルバ1の出力端子T_(OUT1),T_(OUT2)からパルス状の信号V_(1a),V_(2a)がそれぞれ出力され、このレゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)の振幅は、レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化し(【0018】)、
レゾルバ1と信号処理装置7との間は線路で結合され(図3、【0029】)、
A/D変換部11に入力された上記レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)は、信号V_(1d),V_(2d)に変換され、角度計算部13は、この信号V_(1d),V_(2d)を入力し、下式(1)に基づいてロータ3の回転位置(角度)θを計算し、
θ=tan^(-)(V_(1d)/V_(2d)) (1)、
回転位置検出装置では、ロータ3が1回転(0°?360°の機械変化)する間に電気的に1周期の位置信号(0°?360°の電気角を示す信号)が得られる(【0022】)、
回転位置検出装置に使用されるレゾルバ(【0013】)。」

イ 刊行物2
(ア)本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-204317号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審で付した。)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術においては、互換性は向上するものの、同じハウジング内にレゾルバとレゾルバ制御回路とが配置されるため、両者を共通の環境下で用いることになる。
一方、堅牢性や耐環境性について、レゾルバ制御回路は、精密部品が搭載されることから一般にレゾルバよりも劣る。従って、上記特許文献1の構成では、レゾルバの堅牢性、耐環境性がいくら高くても、レゾルバ制御回路の耐えられる環境下で使用せざるをえないといった問題があった。」

「【0017】
〔発明4〕 更に、発明4のレゾルバ制御装置は、発明1乃至3のいずれか1に記載の回転角度位置検出装置において、前記レゾルバ信号受信手段は、前記レゾルバと自レゾルバ制御装置とを、電気ケーブルを介して互いに電気信号を送受信可能に接続する第1接続部を備え、前記信号送信手段は、前記制御装置と自レゾルバ制御装置とを、電気コネクタを介して互いに電気信号を送受信可能に且つ自レゾルバ制御装置を前記制御装置に固定接続する第2接続部を備える。
【0018】
このような構成であれば、レゾルバと自レゾルバ制御装置との間を電気ケーブルを介して接続することができるので両者の距離を離すことができる。これにより、例えば、レゾルバの使用環境の影響(発熱など)が及ぶ範囲外にレゾルバ制御装置を設置して使用することができる。従って、自レゾルバ制御装置がレゾルバの使用環境を制限することのない位置検出システムを構成することができる。」

「【0027】
モータ制御システム1は、図1に示すように、回転角度位置検出装置100と、モータ200と、モータ200の動作を制御するモータ制御装置300とを含んで構成される。
回転角度位置検出装置100は、レゾルバ装置30と、電気ケーブル70を介してレゾルバ装置30と互いに電気信号を送受信可能に接続されたレゾルバ制御装置40とを含んで構成される。
【0028】
レゾルバ装置30は、単極の3相のVR(可変リラクタンス)型レゾルバであって、回転子の回転角度位置に応じた3相の単極レゾルバ(ABS(Absolute))信号を出力する単極レゾルバ30aを含んで構成される。更に、レゾルバ装置30は、多極の3相のVR型レゾルバであって、回転子の回転角度位置に応じた3相の多極レゾルバ(INC(Increment))信号を出力する多極レゾルバ30iを含んで構成される。
【0029】
レゾルバ制御装置40は、レゾルバ装置30からの3相のレゾルバ信号(ABS信号及びINC信号)を受信し、該受信したレゾルバ信号に基づき回転子(モータの出力軸)の回転角度位置を検出し、該検出した回転角度位置を示す角度位置信号を生成する。・・・」

【図1】

「【0031】
・・・本実施の形態において、モータ200の回転子(モータ出力軸)と、レゾルバ装置30の中空構造の回転子とはビルトイン結合によって直結される。従って、モータ回転軸の回転と共にレゾルバ装置30の回転子が回転し、単極レゾルバ30a及び多極レゾルバ30iの各レゾルバロータが回転する。これにより、レゾルバ装置30からは、モータ出力軸の回転角度に応じた3相のレゾルバ信号が出力される。」

「【0037】
単極レゾルバ30aは、インナーロータ式レゾルバであって、中空環状の成層鉄心からなるレゾルバロータ18aと、レゾルバロータ18aと所定間隔をもって対向して配置された環状の成層鉄心からなるレゾルバステータ20aとを有して構成されている。レゾルバロータ18aは、クロスローラ軸受14の軸心に対して偏心させた内周を有し、レゾルバステータ20aには、複数のステータポールが円周方向に等間隔に形成されている。そのため、レゾルバロータ18aの1回転につきリラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力する。」

「【0040】
次に、図3に基づき、レゾルバ装置30、レゾルバ制御装置40及びモータ制御装置300の接続形態について説明する。
ここで、図3(a)及び(b)は、レゾルバ装置30、レゾルバ制御装置40及びモータ制御装置300の接続形態の一例を示す図である。
本実施の形態では、図3(a)に示すように、レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40とは、電気ケーブル70を介して電気的に接続される。ここで、電気ケーブル70の長さは、レゾルバ制御装置40が、レゾルバ装置30の使用環境による熱、ノイズ、振動等の影響を受けない距離(あるいは影響を無視できる距離)を空けられる長さを有している。なお、電気ケーブル70を介して両者の距離を空けられるだけでも熱、ノイズ、振動等の影響を低減する効果などが期待できるので、必ずしも影響を受けない(あるいは無視できる)程の長さを必要とはしない。」

「【0042】
また、電気ケーブル70は、より対線(ストレート線でもよい)にされた複数の電気信号線を絶縁材料で被覆した構成を有しており、本実施の形態では、それぞれ専用の電気信号線を介して、レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40との間で各種電気信号の送受信を行う。・・・」

「【0045】
次に、図4に基づき、レゾルバ制御装置40の詳細な構成を説明する。
ここで、図4は、レゾルバ制御装置40の構成を示すブロック図である。
レゾルバ制御装置40は、図4に示すように、外部のレゾルバ装置30に電気ケーブル70を介して励磁信号を供給する励磁回路41と、励磁信号を供給するレゾルバを択一的に切り替える切替スイッチ41aと、単極レゾルバ30aから電気ケーブル70を介して入力される3相のABS電流信号を検出して、これを電圧信号に変換するI/V変換回路42aと、多極レゾルバ30iから電気ケーブル70を介して入力される3相のINC電流信号を検出して、これを電圧信号に変換するI/V変換回路42bと、電圧信号に変換された3相のABS信号を2相のABS信号に変換する相変換回路43aと、電圧信号に変換された3相のINC信号を2相のINC信号に変換する相変換回路43bとを含んで構成される。
【0046】
励磁回路41は、発振器を備え、絶対回転角を検出するための正弦波信号からなる交流信号(励磁信号)を出力する出力先のレゾルバを切替スイッチ41aを介して択一的に切り替え、切り替え先のレゾルバ30a又は30iに電気ケーブル70を介して励磁信号を出力する。
切替スイッチ41aは、励磁回路41から単極レゾルバ30a及び多極レゾルバ30iに励磁信号を出力するための経路上に配されており、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)47からのINC/ABS切替信号によって、これらのレゾルバ30a、30iへの励磁信号の出力経路を択一的に切り換える。具体的に、励磁回路41の励磁信号の出力経路を単極レゾルバ30aの信号出力端子に電気ケーブル70を介して電気的に接続されるケーブル端子COM1か、多極レゾルバ30iの信号出力端子に電気ケーブル70を介して電気的に接続されるケーブル端子COM2かのいずれか一方に切り替える。
【0047】
I/V変換回路42aは、単極レゾルバ30aのA相、B相、C相の各コイルに、電気ケーブル70を介して電気的に接続された抵抗R1、R2、R3から構成されており、これらの抵抗によって、各コイルを介して流れ込む電流信号を検出し、検出した電流信号を電圧信号に変換する。
I/V変換回路42bは、多極レゾルバ30iのA相、B相、C相の各コイルに、電気ケーブル70を介して電気的に接続された抵抗Ra、Rb、Rcから構成されており、これらの抵抗によって、各コイルを介して流れ込む電流信号を検出し、検出した電流信号を電圧信号に変換する。」

「【0049】
レゾルバ制御装置40には、更に、RDC45に出力する信号(ABS信号、INC信号)を切り替えるINC/ABS切替回路44と、アナログのABS信号及びINC信号をデジタルの信号に変換するRDC45と、該RDC45の分解能を切り替える分解能切替回路46と、ABS信号及びINC信号に基づき回転子(モータ回転軸)の回転角度位置を検出すると共に、各回路の動作を制御するASIC47と、補正データに基づきASIC47で検出された回転角度位置の誤差を補正するDSP(Digital Signal Processor)48と、補正データを記憶するメモリ49と、位置出力信号をモータ制御装置300に出力するためのラインドライバ50と、異常出力信号をモータ制御装置300に出力するラインに設けられ、出力端子とモータ制御装置300の入力端子とを絶縁するフォトカプラ51と、断線を検出する断線検出回路52とが形成されている。」

「【0051】
RDC45は、12ビットのA/D変換器を有しており、分解能切替回路46によって切り替えられた分解能で、INC/ABS切替回路44を介して入力される、アナログの2相のABS信号又はアナログの2相のINC信号を、デジタルの角度信号φに変換する。・・・」

「【0056】
更に、ASIC47は、RDC45からのABS信号及びINC信号のデジタル角度信号φに基づき、モータ回転軸の回転角度位置を検出する。・・・」

【図4】

(イ)上記記載から、刊行物2には次の技術が記載されていると認められる。
「回転角度位置検出装置100は、レゾルバ装置30と、電気ケーブル70を介してレゾルバ装置30と互いに電気信号を送受信可能に接続されたレゾルバ制御装置40とを含んで構成され(【0027】)、
モータ回転軸の回転と共にレゾルバ装置30の回転子が回転し、単極レゾルバ30a及び多極レゾルバ30iの各レゾルバロータが回転し(【0031】)、
レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40とは、電気ケーブル70を介して電気的に接続され、電気ケーブル70の長さは、レゾルバ制御装置40が、レゾルバ装置30の使用環境による熱、ノイズ、振動等の影響を受けない距離(あるいは影響を無視できる距離)を空けられる長さを有しており(【0040】)、
電気ケーブル70は、より対線(ストレート線でもよい)にされた複数の電気信号線を絶縁材料で被覆した構成を有しており、それぞれ専用の電気信号線を介して、レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40との間で各種電気信号の送受信を行い(【0042】)、
レゾルバ制御装置40は、外部のレゾルバ装置30に電気ケーブル70を介して励磁信号を供給する励磁回路41と、単極レゾルバ30aから電気ケーブル70を介して入力される3相のABS電流信号を検出して、これを電圧信号に変換するI/V変換回路42aと、多極レゾルバ30iから電気ケーブル70を介して入力される3相のINC電流信号を検出して、これを電圧信号に変換するI/V変換回路42bとを含んで構成され(【0045】)、
励磁回路41は、発振器を備え、絶対回転角を検出するための正弦波信号からなる交流信号(励磁信号)をレゾルバ30a又は30iに電気ケーブル70を介して出力する(【0046】)、
回転角度位置検出装置100(【0027】)。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明における、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3」及び「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4」は、本件補正発明における「2対のコイルを配置してなるコイル部」に相当する。
また、引用発明では、「第1のコイル組と第2のコイル組は、入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続され」、「信号発生部9は、所定周波数(例えば20KHz)の高周波パルス信号である基準パルス信号e_(m)を発生し、基準パルス信号e_(m)は、励磁回路18のバッファ15を介してレゾルバ1の一方の入力端子T_(IN1)に入力されるとともに、インバータ17を介してレゾルバ1の他方の入力端子T_(IN2)に入力され、この結果、レゾルバ1のコイルL1?L4が交番励磁される」から、引用発明において、「入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続され」、「基準パルス信号e_(m)」が、「励磁回路18のバッファ15を介してレゾルバ1の一方の入力端子T_(IN1)に入力されるとともに、インバータ17を介してレゾルバ1の他方の入力端子T_(IN2)に入力され」て、「交番励磁される」、「第1のコイル組と第2のコイル組」は、本件補正発明における「交流信号で励磁される2対のコイル」に相当する。
さらに、引用発明では、「ステータ5は、等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極を有し、対向する第1、第3磁極にそれぞれ単一のコイルL1、L3を巻着するとともに、対向する第2、第4磁極にそれぞれ単一のコイルL2、L4を巻着してあ」るから、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3」は、「ステータ5」の「等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極」のうち「対向する第1、第3磁極にそれぞれ」「巻着」され、「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4」は、「ステータ5」の「等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極」のうち「対向する第2、第4磁極にそれぞれ」「巻着」されていることになる。このことは、本件補正発明における「1つのコイル対における各コイルは所定の間隔で離隔されて配置されている」ことに相当する。

(イ)引用発明における「磁性材料で形成されたロータ3」は、本件補正発明における「磁気応答部材」に相当する。
また、引用発明では、「ロータ3の形状は、各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定され」ているところ、「各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化する」ためには、「ロータ3」が「回転」すると「磁性材料で形成されたロータ3」が「各コイルL1?L4」に対して相対的に変位するよう配置されていることは明らかである。
したがって、引用発明における、「形状」が「各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定され」ている、「磁性材料で形成されたロータ3」は、本件補正発明における「前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材」に相当する。

(ウ)引用発明における「各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化する」ことから、引用発明では、「ロータ3の回転に伴って」、「ロータ3の回転位置(角度)θ」に応じて「磁性材料で形成されたロータ3」と「各コイルL1?L4」との相対的位置が変化し、「各コイルL1?L4のインダクタンスが」「変化する」ことも明らかである。
ここで、本件補正発明の「検出対象位置」については、本願明細書に「検出対象位置(回転位置)θ」(【0020】等)と記載されているから、引用発明における「ロータ3の回転位置(角度)θ」は、本件補正発明における「検出対象位置」に相当する。
また、インダクタンスはインピーダンスの一要素であるから、引用発明において「各コイルL1?L4のインダクタンスが」「変化する」ことは、「各コイルL1?L4」のインピーダンスが変化することであるともいえる。
したがって、引用発明における、「ロータ3の回転に伴って」、「ロータ3の回転位置(角度)θ」に応じて「磁性材料で形成されたロータ3」と「各コイルL1?L4」との相対的位置が変化し、「各コイルL1?L4のインダクタンスが」「変化する」ことは、本件補正発明における、「検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ」ることに相当する。

(エ)引用発明では、「ロータ3は1個の突極を有し」、「ロータ3の形状は、各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定され」ており、最終的に「回転位置検出装置では、ロータ3が1回転(0°?360°の機械変化)する間に電気的に1周期の位置信号(0°?360°の電気角を示す信号)が得られる」から、「各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化する」のは、「ロータ3」の1回転を1周期としたものであるといえる。
一方で、引用発明では、「ステータ5は、等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極を有し」、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3」は「対向する第1、第3磁極にそれぞれ」「巻着」され、「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4」は「対向する第2、第4磁極にそれぞれ」「巻着」されているから、「第1のコイル組」における「対向する第1、第3磁極にそれぞれ」「巻着」された「コイルL1、L3」のインダクタンス(インピーダンス)、及び、「第2のコイル組」における「対向する第2、第4磁極にそれぞれ」「巻着」された「コイルL2、L4」のインダクタンス(インピーダンス)は、それぞれのコイル組において、「ロータ3」の1回転を1周期とした「正弦波状」の「変化」について、互いに逆相の関係にあるのは明らかである。
したがって、引用発明における、「ロータ3は1個の突極を有し」、「ロータ3の形状は、各コイルL1?L4のインダクタンスがロータ3の回転に伴って正弦波状に変化するように設定され」、「ステータ5は、等角度間隔で順次配列する第1、第2、第3及び第4の磁極を有し」、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3」は「対向する第1、第3磁極にそれぞれ」「巻着」され、「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4」は「対向する第2、第4磁極にそれぞれ」「巻着」されていることは、本件補正発明における、「1つのコイル対における各コイルのインピーダンス変化が互いに逆相特性を示すようにした」ことに相当する。

(オ)引用発明における、「コイルL1、L3は互いに直列接続されて第1のコイル組を構成し、同様に、コイルL2、L4は互いに直列接続されて第2のコイル組を構成」することは、本件補正発明における、「各コイル対毎に、該対を構成する2つのコイルを直列接続したコイル直列接続回路を構成」することに相当する。
さらに、引用発明における、「第1のコイル組と第2のコイル組は、入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続され」、「基準パルス信号e_(m)は、励磁回路18のバッファ15を介してレゾルバ1の一方の入力端子T_(IN1)に入力されるとともに、インバータ17を介してレゾルバ1の他方の入力端子T_(IN2)に入力され」ることは、上記(ア)を踏まえると、本件補正発明における「該コイル直列接続回路に前記交流信号を印加」することに相当する。

(カ)引用発明における「コイルL1、L3の共通接続点」及び「コイルL2、L4の共通接続点」は、本件補正発明における「該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点」に相当する。
また、引用発明では、「コイルL1、L3の共通接続点は、出力端子T_(OUT1)に接続され、コイルL2、L4の共通接続点は、出力端子T_(OUT2)に接続され」、「レゾルバ1の出力端子T_(OUT1),T_(OUT2)からパルス状の信号V_(1a),V_(2a)がそれぞれ出力され」るから、引用発明における、「コイルL1、L3の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT1)」から「出力され」る「信号V_(1a)」、及び、「コイルL2、L4の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT2)から」「出力され」る「信号」「V_(2a)」は、本件補正発明における、「該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点から」出力される「該対の検出出力信号」に相当する。
そして、引用発明では、「出力信号V_(1a),V_(2a)の振幅は、レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化」するから、引用発明における、「コイルL1、L3の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT1)」及び「コイルL2、L4の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT2)から」、「振幅」が「レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化」する「出力信号V_(1a),V_(2a)」が出力されることは、上記(ウ)を踏まえると、本件補正発明における、「該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点から該2つのコイルのインピーダンスに応じた分圧出力電圧を該対の検出出力信号として、それぞれ取り出す」ことに相当する。

(キ)引用発明において、上記(オ)及び(カ)の動作を担う、「第1のコイル組と第2のコイル組は、入力端子T_(IN1)、T_(IN2)間において並列接続され、コイルL1、L3の共通接続点は、出力端子T_(OUT1)に接続され、コイルL2、L4の共通接続点は、出力端子T_(OUT2)に接続され」た、「コイルL1、L2を上アームとしコイルL3、L4を下アームとするHブリッジ回路」は、本件補正発明における「回路」に相当する。

(ク)引用発明における、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT1)」から「出力され」る「信号V_(1a)」は、本件補正発明における「第1の対の前記検出出力信号」に相当し、引用発明における、「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT2)から」「出力され」る「信号」「V_(2a)」は、本件補正発明における「第2の対の前記検出出力信号」に相当する。
また、引用発明では、「コイルL1?L4を上記のように結線すれば、コイルL1、L3のインダクタンスの基本波とコイルL2、L4のインダクタンスの基本波の位相が90度異なり」、「出力信号V_(1a),V_(2a)の振幅は、レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化し」、「A/D変換部11に入力された上記レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)は、信号V_(1d),V_(2d)に変換され、角度計算部13は、この信号V_(1d),V_(2d)を入力し」、「θ=tan^(-)(V_(1d)/V_(2d))」「に基づいてロータ3の回転位置(角度)θを計算し」ているところ、引用発明における、「コイルL1、L3のインダクタンスの基本波とコイルL2、L4のインダクタンスの基本波」であり、「振幅」が「レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化」する「出力信号V_(1a),V_(2a)」は、「位相が90度異なり」、また、「θ=tan^(-)(V_(1d)/V_(2d))」「に基づいてロータ3の回転位置(角度)θを計算」する際の「信号V_(1d),V_(2d)」に変換されるものであるから、「信号V_(1a)」は「ロータ3の回転位置(角度)θ」に対してサイン相の振幅特性を示し、「信号V_(2a)」は「ロータ3の回転位置(角度)θ」に対してコサイン相の振幅特性を示しているといえる。
したがって、引用発明における、「第1のコイル組を構成」する「コイルL1、L3の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT1)」から「出力され」る「信号V_(1a)」、「第2のコイル組を構成」する「コイルL2、L4の共通接続点」「に接続され」る「出力端子T_(OUT2)から」「出力され」る「信号」「V_(2a)」は、「コイルL1、L3のインダクタンスの基本波とコイルL2、L4のインダクタンスの基本波」であって互いに「位相が90度異なり」、「振幅」が「レゾルバ1のロータ3の位置変化によるコイルL1?L4のインダクタンスの正弦波状変化に応じて正弦波状に変化」し、「θ=tan^(-)(V_(1d)/V_(2d))」「に基づいてロータ3の回転位置(角度)θを計算」する際の「信号V_(1d),V_(2d)」に変換される、ということは、本件補正発明における、「前記2対のコイルのうち、第1の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してサイン相の振幅特性を示し、第2の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してコサイン相の振幅特性を示」すことに相当する。

(ケ)引用発明における、「レゾルバ1には」、「信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備え」た「信号処理装置7が接続され」、「レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)」が「A/D変換部11に入力され」ることは、本件補正発明における「前記第1及び第2の対の各検出信号を外部に出力する」ことに相当する。
また、引用発明における「回転位置検出装置に使用される」「レゾルバ1」は、本件補正発明における「位置検出装置」に相当する。

(コ)引用発明における「信号処理装置7」は、本件補正発明における「変換装置」に相当する。
また、引用発明における、「レゾルバ1には」、「信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備え」た「信号処理装置7が接続され」、「レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)」が「A/D変換部11に入力され」ることは、本件補正発明における「前記各コイル対の前記検出出力信号は」、「変換装置に伝送され」ることに相当する。
そして、引用発明における、「レゾルバ1と信号処理装置7との間」を「結合」する「線路」と、本件補正発明における「ツイストペアケーブル」とは、「線路」である点で共通する。
したがって、引用発明における、「レゾルバ1には」、「レゾルバ1と信号処理装置7との間」を「結合」する「線路」を介して、「信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備え」た「信号処理装置7が接続され」、「レゾルバ1の出力信号V_(1a),V_(2a)」が「A/D変換部11に入力され」ることと、本件補正発明における、「前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して離隔して配置された変換装置に伝送され」ることとは、「前記各コイル対の前記検出出力信号は、線路を介して変換装置に伝送され」る点で共通する。

(サ)引用発明では、「信号処理装置7は、信号発生部9、A/D変換部11及び角度計算部13を備え」、「角度計算部13は、この信号V_(1d),V_(2d)を入力し」、「ロータ3の回転位置(角度)θを計算し」ており、引用発明における、「信号処理装置7」が、(「出力信号V_(1a),V_(2a)」から「変換され」た)「信号V_(1d),V_(2d)を入力し」、「ロータ3の回転位置(角度)θを計算」する「角度計算部13を備え」ていることは、本件補正発明における、「該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含」むことに相当する。

(シ)引用発明における「レゾルバ1」は、電気部品としては、「コイルL1、L3」、「コイルL2、L4」と、それらを接続して「Hブリッジ回路を構成」するための配線を有しており、このことは、本件補正発明における、「位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみである」ことと、「位置検出装置の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線である」点で共通する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「交流信号で励磁される2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の間隔で離隔されて配置されている前記コイル部と、
前記コイル部に対して相対的に変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象位置に応じて該部材と前記コイル部との相対的位置が変化し、この相対的位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、1つのコイル対における各コイルのインピーダンス変化が互いに逆相特性を示すようにした前記磁気応答部材と、
各コイル対毎に、該対を構成する2つのコイルを直列接続したコイル直列接続回路を構成し、該コイル直列接続回路に前記交流信号を印加し、かつ、該コイル直列接続回路における前記2つのコイルの接続点から該2つのコイルのインピーダンスに応じた分圧出力電圧を該対の検出出力信号として、それぞれ取り出す回路と
を具え、
前記2対のコイルのうち、第1の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してサイン相の振幅特性を示し、第2の対の前記検出出力信号が前記検出対象位置に対してコサイン相の振幅特性を示し、
前記第1及び第2の対の各検出信号を外部に出力するように構成された位置検出装置であって、
前記各コイル対の前記検出出力信号は、線路を介して変換装置に伝送され、該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含み、位置検出装置の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線である位置検出装置。」

(相違点)
(相違点1)
本件補正発明では、各コイル対の検出出力信号が「ツイストペアケーブル」を介して「離隔して配置された」変換装置に伝送されるのに対して、引用発明では、出力信号V_(1a),V_(2a)が「線路」を介して信号処理装置7に入力されているものの、「線路」が「ツイストペアケーブル」であるとは特定されておらず、「信号処理装置7」が「レゾルバ1」から離隔して配置されているかどうかも不明な点。

(相違点2)
本件補正発明では、「位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみである」のに対して、
引用発明では、「レゾルバ1」自体が、電気部品として、「コイルL1、L3」、「コイルL2、L4」と、それらを接続して「Hブリッジ回路を構成」するための配線を有しているものの、その他に電気部品を有していないかどうかは不明(すなわち、「レゾルバ1」の電気部品はコイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみであるかどうかは不明)であり、
さらに、引用発明では、「励磁回路18」と、「レゾルバ1」及び「信号処理装置7」との関係が不明であって(すなわち、「励磁回路18」が「レゾルバ1」側の構成である可能性を排除しておらず)、(「レゾルバ1」の電気部品はコイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみであったとしても、)「レゾルバ1」側の電気部品はコイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみであるかどうかは不明な点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
(ア)刊行物2に記載された技術は、【0006】に記載されたように、「同じハウジング内にレゾルバとレゾルバ制御回路とが配置される」と、「堅牢性や耐環境性について、レゾルバ制御回路は、精密部品が搭載されることから一般にレゾルバよりも劣る」から、「レゾルバの堅牢性、耐環境性がいくら高くても、レゾルバ制御回路の耐えられる環境下で使用せざるをえない」ことを課題にしたものであって、上記(2)イ(イ)に記載したように、「レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40とは、電気ケーブル70を介して電気的に接続され、電気ケーブル70の長さは、レゾルバ制御装置40が、レゾルバ装置30の使用環境による熱、ノイズ、振動等の影響を受けない距離(あるいは影響を無視できる距離)を空けられる長さを有しており、電気ケーブル70は、より対線(ストレート線でもよい)にされた複数の電気信号線を絶縁材料で被覆した構成を有しており、それぞれ専用の電気信号線を介して、レゾルバ装置30とレゾルバ制御装置40との間で各種電気信号の送受信を行い、レゾルバ制御装置40は」、「単極レゾルバ30aから電気ケーブル70を介して入力される3相のABS電流信号を検出して」、「多極レゾルバ30iから電気ケーブル70を介して入力される3相のINC電流信号を検出」する、「回転角度位置検出装置100」に関するものである。ここで、刊行物2に記載された技術における「レゾルバ装置30」、「レゾルバ制御装置40」は、それぞれ、本件補正発明における「位置検出装置」、「変換装置」に相当し、また、引用発明における「レゾルバ1」、「信号処理装置7」に対応する。
引用発明と刊行物2に記載された技術とは、ともに、レゾルバ1(レゾルバ装置30)のロータ3(レゾルバロータ)をモータの回転軸(モータ回転軸)に結合し、レゾルバ1(レゾルバ装置30)と信号処理装置7(レゾルバ制御装置40)との間を線路(電気ケーブル70)で結合するものであるから、引用発明に接し、刊行物2に記載された技術を知る当業者であれば、引用発明において刊行物2に記載された技術を適用して、レゾルバ1と信号処理装置7との間を、信号処理装置7が、レゾルバ1の使用環境による熱、ノイズ、振動等の影響を受けない距離(あるいは影響を無視できる距離)を空けられる長さを有する「電気ケーブル70」で結合するようにすること、すなわち、信号処理装置7をレゾルバ1から離隔して配置されるものとして構成することは、容易に想到できたことである。

(イ)また、上記刊行物2に記載された技術では、上記「電気ケーブル70」は、「より対線(ストレート線でもよい)にされた複数の電気信号線を絶縁材料で被覆した構成を有して」いるところ、刊行物2に記載された技術における「より対線」「にされた複数の電気信号線」を用いる「電気ケーブル70」は、本件補正発明における「ツイストペアケーブル」に相当するものである。
一般に、「ツイストペアケーブル」については、例えば、原査定の拒絶の理由で周知技術を示す文献として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-153510号公報に「【0023】図7はレゾルバケーブル41の他の構成例を示す断面構造図である。同図において、81,82,83は相対位置検出用のレゾルバ60の信号線と共通線とをツイストペアにしたツイストペアケーブルであり、81aはA相の信号線、82aはB相の信号線、83aはC相の信号線、81b?83bは共通線である。また、84,85,86は絶対位置検出用のレゾルバ50の信号線と共通線とをツイストペアにしたツイストペアケーブルであり、84aはA相の信号線、85aはB相の信号線、86aはC相の信号線、84b?86bは共通線である。・・・また、それぞれがツイストペアケーブルなので、各々の信号線と共通線との距離を等しくとることができる。かかる構成により、各相のレゾルバ信号の電気的な干渉を抑えることができる。」と記載されているように、レゾルバ信号の電気的な干渉を抑えることができるものとして当業者には知られている。
そして、刊行物1にも「バンドパスフィルタ23を用いた実施形態によれば、・・・レゾルバ1と信号処理装置7との間を結合する線路に入り込むノイズも低減もしくは除去されるので、特に、上記結合線路が長い場合に有効である。」(【0029】)と記載されるように、結合する線路に入り込むノイズを低減することは当業者が通常考慮する事項であるから、引用発明において上記刊行物2に記載された技術を適用する際に、「より対線(ストレート線でもよい)にされた複数の電気信号線を絶縁材料で被覆した構成を有して」いる「電気ケーブル70」として、「より対線」「にされた複数の電気信号線」を用いる設計を選択することは、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)したがって、引用発明において、刊行物2に記載された技術を、「電気ケーブル70」として「より対線」「にされた複数の電気信号線」を用いる設計を選択して適用することで、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

イ 相違点2について
(ア)上記刊行物2に記載された技術では、「発振器を備え、絶対回転角を検出するための正弦波信号からなる交流信号(励磁信号)をレゾルバ30a又は30iに電気ケーブル70を介して出力する」「励磁回路41」について、「レゾルバ制御装置40は、外部のレゾルバ装置30に電気ケーブル70を介して励磁信号を供給する励磁回路41」「を含んで構成」している。
したがって、刊行物2に記載された技術に接した当業者であれば、引用発明の「励磁回路18」が「レゾルバ1」の使用環境による熱、ノイズ、振動等の影響を受けないように、刊行物2に記載された技術における「励磁回路41」を「レゾルバ制御装置40」に含める構成を引用発明において採用し、引用発明における「励磁回路18」を「信号処理装置7」に含めるよう構成することは、容易に想到できたことである。

(イ)また、引用発明の「レゾルバ1」は、「ロータ3」と「ステータ5」とを有しているが、「ロータ3」は、「磁性材料で形成され」て「1個の突極を有し」、「モータの回転軸に結合されて」「回転」することで、「各コイルL1?L4のインダクタンスが」「正弦波状に変化する」ことを引き起こすものであるから、その動作に電気的な信号を必要としておらず、電気部品を有することは想定されていない。
そして、引用発明では、「レゾルバ1」の(「ステータ5」の)電気部品として、コイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線以外の構成について特段触れられていない。

(ウ)ところで、例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-309067号公報には、以下のように記載されている。
「【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種のレゾルバのステータ構造としては、一般に、図9で示す構成が採用されていた。すなわち、図9において符号1で示されるものは多層状の鉄心であり、この鉄心1の内側には、多数の歯部2とスロット3が円周方向に交互に形成されている。この各歯部2には、輪状に形成され各歯部2に対応して突出した部分を有する絶縁部材4を介してステータ巻線5が巻回されており、このステータ巻線5と鉄心1の各歯部2とは電気的に絶縁されている。前記ステータ巻線5の端線は、コネクタ6に接続されたリード線7に半田等を介して接続されている。」

この記載からもわかるように、レゾルバのステータ構造として、レゾルバのステータに含まれる電気部品が、ステータ巻線5と、ステータ巻線5と外部とを電気的に接続する線のみであるものが、従来より知られている。

(エ)上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、上記(ウ)のように、レゾルバのステータに含まれる電気部品が、ステータ巻線5と、ステータ巻線5と外部とを電気的に接続する線のみであるレゾルバのステータ構造を知る当業者にとっては、上記(イ)のように、「レゾルバ1」の電気部品として、コイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線以外の構成について特段触れられていない引用発明に接した場合に、引用発明の「レゾルバ1」の電気部品は、コイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみであると解するのが自然であるといえる。

(オ)よって、上記(ア)によれば、引用発明において刊行物2に記載された技術を適用し、引用発明における「励磁回路18」を「信号処理装置7」に含めるよう構成することは、当業者にとって容易であり、そうすると、「励磁回路18」は、「信号処理装置7」側の構成であって、「レゾルバ1」側の構成ではない。
また、上記(エ)によれば、引用発明に接した当業者にとっては、引用発明の「レゾルバ1」の電気部品は、コイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみである。
したがって、引用発明において刊行物2に記載された技術を適用して、「レゾルバ1」側の電気部品をコイルL1、L3、コイルL2、L4とそれに関連する配線のみであるとすることは、当業者が容易に想到できたことである。

ウ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び刊行物2に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年5月2日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年9月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項、及び平成29年2月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項2及び3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

本願発明は、引用文献2(特開2011-153863号公報(前記刊行物1))に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2に記載された発明は、前記第2の[理由]2(2)ア(イ)に記載した引用発明のとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記各コイル対の前記検出出力信号は、ツイストペアケーブルを介して離隔して配置された変換装置に伝送され」という事項、及び、「該変換装置の側に前記検出出力信号に基づき位置検出情報を生成するための電気部品を含み、位置検出装置の側の電気部品は前記コイルとそれに関連する配線のみである」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項については、前記第2の[理由]2(3)イに記載した本件補正発明と引用発明との「一致点」に全て含まれる。
したがって、本願発明は引用発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-04 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-19 
出願番号 特願2013-528445(P2013-528445)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01D)
P 1 8・ 113- Z (G01D)
P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 須原 宏光
中村 説志
発明の名称 位置検出装置  
代理人 飯塚 義仁  

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