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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1350514
審判番号 不服2018-7609  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-04 
確定日 2019-04-04 
事件の表示 特願2016-213981「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開、特開2017- 18745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成24年7月11日に出願した特願2012-155308号の一部を平成28年11月1日に新たな出願としたものであって、平成29年8月9日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年9月28日に意見書が提出されたが、平成30年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年11月1日にされた新たな出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「指で触れるときの静電容量の変化を検出するタッチパネル表示部と、指で押圧することで操作を行う押圧操作ボタン部とを備え、前記タッチパネル表示部は傾斜して配置し、前記押圧操作ボタン部は、前記タッチパネル表示部とは、分離独立して配置したことを特徴とする洗濯機。」

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、この出願の請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、引用文献3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2004/0163424号明細書
引用文献2.国際公開第2010/135478号
引用文献3.特開平10-127977号公報
引用文献4.特開2009-56221号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

(ア)「[0041] Referring to FIG. 3, the present invention includes a drum type washing machine 200, a first control panel 400 on the drum type washing machine 200, a dryer 300, and a second control panel 400 on the dryer 300. 」(当審訳:図3を参照。本発明は、ドラム式洗濯機200、ドラム式洗濯機200の第1制御パネル400、乾燥装置300、および乾燥機300の第2制御パネル400が設けられている。)

(イ)「[0042] The first control panel 400 includes a key part 410 for application of command for controlling the drum type washing machine or the dryer 300, a display part 420 for displaying an image in accordance with the command to the key part 410, a first case 430 for fastening the key part 410 and the display part 420 thereto, and a first controlling part (not shown) for controlling operation of a relevant appliance according to the command applied through the key part 410 or the display part 420. 」(当審訳:第1制御パネル400は、ドラム式洗濯機又は乾燥機300を制御するための指令の適用のためのキー部410、キー部410の指令に応じた画像を表示する表示部420、キー部410及び表示部420を固定するための第1の筐体430と、キー部410又は表示部420を介して印加される指令に応じて、該当する機器の動作を制御する第1制御部(図示せず)を備えている。)

(ウ)「[0050] Referring to FIG. 6, the control panels in accordance with a first preferred embodiment of the present invention include a first control panel 400 on a drum type washing machine 200 or a dryer 300 having a key part 410 for applying a command a user desires, and a display part 420 for displaying user's command given through the key part 410, or by user's touch thereon, ・・・ 」(当審訳:図6を参照。本発明の第1の好ましい実施形態による制御パネルは、ユーザが希望する指令を適用するキー部410と、キー部410から又はユーザがその上を触れて与えられるユーザーの指令を表示するための表示部420とを有する、ドラム式洗濯機200又は乾燥機300上の、第1制御パネル400と、・・・を含む。)

(エ)「[0051] The key part 410 or 510 includes a power key 411 or 511 for applying power to the drum type washing machine 200 or the dryer 300, a start/stop key 412 or 512 for applying an operation start command or an operation stop command to the drum type washing machine or the dryer, a back key 413 or 513 for displaying an image prior to an image displayed on the display part 420 or 520 presently, a home key 414 or 514 for initializing all menu, and my favorite key 415 or 515 for selecting a course the user desires. 」(当審訳:キー部410又は510は、ドラム式洗濯機200又は乾燥機300に電源を印加するための電源キー411又は511と、ドラム式洗濯機又は乾燥機に動作開始指令入力又は動作停止指令を与えるためのスタート/ストップキー412又は512と、表示部420、520に表示されている画像の前の画像を表示させるためのバックキー413又は513と、全メニューを初期化するためのホームキー414又は514と、ユーザの所望のコースを選択するためのお気に入りキー415又は515とを含む。)

(オ)「[0052] The display part 420 or 520 includes a touch panel 420 or 520 for displaying the command applied through the key part 410 or 510, and a menu for selecting a control operation proper to the drum type washing machine 200 or the dryer 300, and selecting the control operation for carrying out the operation. 」(当審訳:表示部420又は520は、キー部410又は510を介して印加される指令とドラム洗濯機200又は乾燥機300の制御操作を選択するメニューとを表示するとともに、実行する制御操作を選択するタッチパネル420又は520を含む。)

(カ)「[0054] If the user presses the may favorite key 415, for example, of the drum type washing machine 200, a menu is displayed on the touch panel, the display part 420, so that the user, by mere touch thereon, selects a washing condition as desired by setting a desired course, or by retrieving, and displaying a my favorite course stored therein already, and processes a washing cycle more conveniently with reference to the displayed menu. 」(当審訳:ユーザーは、ドラム式洗濯機200の、例えば、お気に入りキー415を押すと、メニューがタッチパネルを含む表示部420に表示され、ユーザーはその上を単に触れるだけで、所望のコースを設定や検索して所望の洗濯条件を選択したり、既に記憶さているお気に入りのコースが表示され、表示されたメニューを参照してより便利に洗濯サイクルを加工したりする。)

2 引用発明
前記1(オ)(カ)の記載によると、タッチパネル420を含む表示部420は、ユーザーが実行する制御操作の選択等を行うために、ユーザが触れたことを検出しているといえる。
また、引用文献1のFIG.3,FIG.4の図示内容によると、ドラム式洗濯機200の第1制御パネル400は、ドラム式洗濯機200の水平な上面に対して角度をもつて立ち上がっており、この第1制御パネル400に設けられた表示部420は、傾斜して配置されているといえる。
さらに、前記1(イ)の記載によると、第1制御パネル400は、ドラム式洗濯機を制御するための指令の適用のためのキー部410と、キー部410の指令に応じた画像を表示する表示部420とを備えるものであって、引用文献1のFIG.3,FIG.4の図示内容も考慮すると、キー部410と表示部420とは、別の位置に配置されているといえる。

したがって、引用文献1の前記記載事項(前記1(ア)?(カ))及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザーが触れたことを検出するタッチパネル420を含む表示部420と、ユーザが希望する指令を適用するキー部410とを備え、前記タッチパネル420を含む表示部420は傾斜して配置され、前記キー部410と前記タッチパネル420を含む表示部420とは、別の位置に配置されているドラム式洗濯機200」

3 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。

(キ)「[00128] Figure 6c illustrates a combined washer and dryer system for an individual appliance employing a small sensor /projector such as disclosed in my copending applications. Projector and sensor combinations of this type for example can be based on the Microvision brand "pico projector", which is slated for cell phone application. The projector 685 is controlled by computer 690 which receives inputs from the knob, switch and touch screen commands of the system. Video images are projected obliquely onto the rear of the screen and control surface 675 on which 3M TRAF turning film has been placed to turn the image toward the user. The projected image is over scanned on the screen such that all the screen surface desired may be illuminated. 」(引用文献2に対応する日本語特許出願(特願2012-512012号)の公表公報である特表2012-527847号公報の対応箇所(以下、「公表公報対応箇所」という。):【0091】図6cは、本出願人の同時係争中の特許出願に開示された小型センサ/プロジェクタを使用する個々の器具のための複合洗濯機及び乾燥機システムを示す。この形式のプロジェクタ及びセンサ組み合わせは、例えば、セルラーホンアプリケーションに予定されたマイクロビジョンブランド「ピコプロジェクタ(pico projector)」をベースとする。プロジェクタ685は、システムのノブ、スイッチ及びタッチスクリーンコマンドから入力を受け取るコンピュータ690によりコントロールされる。画像をユーザに向けてターンするための3M TRAFターンフィルムが載せられたスクリーン及びコントロール面675の背面にビデオ画像が斜めに投影される。投影画像は、スクリーン上でスキャンされ、望ましい全スクリーン面が照明される。)

(ク)「[00129] Two states are shown, each activated by electrical power and control button 671 or 672 as desired, to operate a washer or dryer portion of a machine, or pair of machines. Main control and selection knob 676 which may optionally have a stylish and informative screen in its center as disclosed in my pending 11/045,131 application, and other applications. The knob may be in the form of a ring of a radial thickness t, and if desired (and as disclosed in copending applications) may be designed in such a way as to be able to be pressed in or pulled out, to start or stop a cycle, just as many conventional knobs are today. The knob indicator may be a physical pointer, or it may as in 682 be simply projected on the screen surface, or alternatively it may be projected on the knob face or other knob surface. Two other knobs are provided in this one'. example 678 and 679. More knobs or switches or sliders or other controls may be provided as shown in copending applications. These controls may be optically sensed, but they may alternatively or in addition be sensed using electronic means known in the art. One of several desirable versions of the latter is a capacitive touch switch. 」(公表公報対応箇所:【0092】マシン又は一対のマシンの洗濯機又は乾燥機部分を動作するため、必要に応じて、電力及びコントロールボタン671又は672によって各々アクチベートされる2つの状態が示されている。メインコントロール及び選択ノブ676は、任意であるが、本出願人の係争中の特許出願第11/045,131号及び他の特許出願に開示されたように、スタイリッシュな情報スクリーンをその中心に有する。このノブは、半径方向厚みtのリングの形態であり、そして必要に応じて(同時係争中の特許出願に開示されたように)、多数の従来型ノブが今日そうであるように、押すか又は引いてサイクルをスタート又はストップすることができるように設計される。ノブインジケータは、物理的なポインタでもよいし、又は682のように、スクリーン表面に単に投影されてもよいし、或いはノブ面又は他のノブ表面に投影されてもよい。この例では、2つの他のノブ678及び679が設けられる。同時係争中の特許出願に示されたように、より多くのノブ又はスイッチ又はスライダー又は他のコントロールを設けてもよい。これらのコントロールは、光学的に感知できるが、それとは別に又はそれに加えて、この分野で知られた電子手段を使用して感知されてもよい。後者の多数の望ましい態様の1つは、容量性タッチスイッチである。)

第5 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ユーザーが触れたことを検出するタッチパネル420を含む表示部420」と、本願発明の「指で触れるときの静電容量の変化を検出するタッチパネル表示部」とは、「指で触れたことを検出するタッチパネル表示部」である点で共通する。すると、引用発明の「前記タッチパネル420を含む表示部420は傾斜して配置され」るという事項は、本願発明の「前記タッチパネル表示部は傾斜して配置し」という事項に対応する。
また、引用発明の「ユーザが希望する指令を適用するキー部410」について、前記1(カ)によると、キー部410を構成するお気に入りキー415は押されるものであって、引用文献1のFIG.3,FIG.4,FIG.6に図示された内容も考慮すると、指で押圧されて操作を行うものであることは明らかである。また、キー部410を構成する他の電源キー411、スタート/ストップキー412、バックキー413及びホームキー414についても、お気に入りキー415と同様に指で押圧されて操作を行うものと解することが自然である。すると、引用発明の「ユーザが希望する指令を適用するキー部410」は、本願発明の「指で押圧することで操作を行う押圧操作ボタン部」に相当する。
そして、引用発明の「キー部410」は、本願発明の「押圧操作ボタン部」に相当し、引用発明の「タッチパネル420を含む表示部420」は、本願発明の「タッチパネル表示部」に対応するから、引用発明の「前記キー部410と前記タッチパネル420を含む表示部420とは、別の位置に配置されている」という事項は、本願発明の「前記押圧操作ボタン部は、前記タッチパネル表示部とは、分離独立して配置した」という事項に対応する。
さらに、引用発明の「ドラム式洗濯機200」は、本願発明の「洗濯機」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「指で触れたことを検出するタッチパネル表示部と、指で押圧することで操作を行う押圧操作ボタン部とを備え、前記タッチパネル表示部は傾斜して配置し、前記押圧操作ボタン部は、前記タッチパネル表示部とは、分離独立して配置した洗濯機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
タッチパネル表示部について、本願発明は「指で触れるときの静電容量の変化を検出する」ものであるのに対して、引用発明は、指で触れたことを検出するものではあるが、静電容量の変化を検出するものであるか不明である点。

第6 判断
1 相違点について
以下、相違点ついて検討する。
前記第4 3(キ)及び(ク)、並びに引用文献2のFigure 6cの図示内容によると、引用文献2には、洗濯機において、電力及びコントロールボタン671又は672とは独立して、スクリーン及びコントロール面675にノブ678及び679が設けられ、このノブ678及び679の表面に画像が投影される点が記載されており、また、このノブ678及び679等が操作されることを光学的に又は電子手段を利用して感知してよく、電子手段を使用して感知する際には、特に容量性タッチスイッチを用いることが望ましい点が記載されている。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、洗濯機の操作表示部に関するものである点で技術分野が共通する上、引用発明のタッチパネル420を含む表示部420と、引用文献2に記載されたノブ678及び679等が設けられたスクリーン及びコントロール面675とは、ともに電源スイッチ等とは分離独立して配置されるものであって、ユーザの指が触れたことを感知してユーザーの操作を受け付ける機能とユーザーの操作を支援するための情報を表示する機能とを併せ持つものであって、作用・機能が共通しているといえる。
ここで、引用発明のタッチパネル420は、ユーザーの指が触れたことをどのような方式によって感知するものであるのか明示されていないところ、引用文献1に接した当業者であれば、引用発明のタッチパネル420を具体化するにあたり、指が触れたことを感知する種々の方式の中から、所望の方式のものの採用を試みるといえ、その際、前記したように技術分野が共通し、タッチパネル420を含む表示部420と作用・機能が共通するスクリーン及びコントロール面675を備えた引用文献2に記載された事項に基づき、引用文献2において操作を感知するために用いることが望ましいとされている容量性のものを採用し、本願発明の前記相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
また、引用発明の「タッチパネル420を含む表示部420」は傾斜して配置されるものであるが、傾斜して配置される部分に静電容量の変化によって指が触れたことを感知する方式の入力手段を設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4(特に「前記タッチ式スイッチ32は、静電容量型のもので、操作部44a?44gの表面の静電容量の可変を検出することにより、操作の有無を検出可能としたものである。」(段落【0022】)という記載、及び図1?図3の図示内容を参照。)に記載されているように本願出願前から周知の事項である。このことは、引用発明の「タッチパネル420を含む表示部420」が傾斜しているとしても、前記したように引用発明のタッチパネル420を具体化するにあたり、引用文献2に記載された事項に基づき、容量性のものを採用することが当業者にとって容易であることを裏付けている。

2 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において「本願発明は、この技術常識に反し、あえて静電容量式のタッチパネルを搭載した洗濯機を開発するに際して、誤検出する虞のある液体洗剤がタッチパネルに付着した場合でも、誤検出を抑制させるために、タッチパネルを傾斜して取り付けるものです。本願発明の構成では、タッチパネルに液体洗剤が落下した場合でも、タッチパネルを傾斜して装着しているため、液体洗剤は、傾斜によって流れ落ち、誤検出を抑制することができます。・・・(中略)・・・各引用文献には、静電容量式タッチパネルに汚れが付着した際の誤検出を抑制するための構成として、傾斜面に静電容量式タッチパネルを配置する構成は開示されておらず、各引用文献の組み合わせから導き出せるものではありません。」と主張している。
しかしながら、この出願のもとの出願(特願2012-155308号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面において、図1、図2及び図6に、静電容量の変化を検知するタッチパネル表示部38を傾斜して配置する点が示唆されてはいるが、明細書、特許請求の範囲に、この傾斜について言及する記載はない。
そして、このもとの出願の一部を新たな出願としたこの出願の明細書、特許請求の範囲又は図面においては、この傾斜に関し、図1、図2及び図6に示唆されている他、請求項1に「前記タッチパネル表示部は傾斜して配置し」と記載され、段落【0010】に請求項1と同様の記載があるものの、審判請求人が審判請求書で主張するような、タッチパネルに液体洗剤が落下した場合に、タッチパネルを傾斜して装着しているため、液体洗剤が傾斜によって流れ落ちるという作用や、静電容量式タッチパネルに汚れが付着した際の誤検出を抑制するという課題を傾斜面に静電容量式タッチパネルを配置することによって解決することについては、何等、記載されていない。
これに関連し、この出願の明細書には、静電容量式タッチパネルと液体洗剤の付着との関係について、
「【発明の効果】
【0011】
本発明の洗濯機は、押圧操作ボタン部において、液体洗剤の付着等が発生した際の誤動作を確実に防止することができる。」

「【0054】
また、後述するように、タッチパネル表示部38における入力操作は、使用者の指先による静電容量の変化を検知することで行うため、完全に誤動作を防止することが難しく、仮に、電源入りボタンをタッチパネル表示部38に設けた場合に、水や洗剤が画面上の電源入りボタン(図示せず)の上に付着してしまうと、それを使用者が操作したものとして誤検知し、誤動作して洗濯機の電源が入ってしまうことが考えられる。」

「【0094】
図11(a)?(c)からすると、感度高さに対して導電性の低い水の感度高さHaは閾値S以下であるが、導電性の高い液体洗剤の感度高さHbであれば閾値S以上となってしまい、誤検知が生じ誤動作してしまう可能性があることがわかる。」

「【0098】
しかしながら、前述のように、スタートボタン54、電源入りボタン52、電源切りボタン53、戻るボタン55は、タッチパネル表示部38から、分離、独立させたことにより、運転開始、電源入り、電源切り、表示画面を一つ前に戻す機能については、誤検知がなくなり、操作性と安全性を確保することができるようになる。」

「【0101】
また、タッチパネル表示部に水や洗剤が付着した場合でも、電源入りや電源切り、スタートボタンといった安全性に関係が深い操作ボタンについてはタッチパネル表示部から分離、独立して設けることにより、安全性が確保できる。なお、タッチパネル表示部のなかで操作する内容は、コース設定における時間設定など、不安全につながらないような内容に限定している。」

といった記載があるが、これらの記載から読み取れる事項は、静電容量の変化を検知するタッチパネル表示部を用いた場合、水や液体洗剤がタッチパネル表示部の画面上に付着し、誤検知が生じるという課題を前提に、安全性に関係が深い操作ボタンは、タッチパネル表示部から分離、独立させた押圧操作ボタンとして設けることにより安全性を確保することができるという事項である。一方で、図1、図2及び図6に、静電容量の変化を検知するタッチパネル表示部38を傾斜して配置する点が示唆されているとしても、この傾斜した配置によって、液体洗剤が流れ落ちるという作用や、静電容量式タッチパネルの誤検出を抑制できるという事項は、明細書の前記記載から何等、読み取ることはできない。むしろ、静電容量の変化を検知するタッチパネル表示部38を図示されたように傾斜して配置したとしても、静電容量式タッチパネルの誤検出を十分に抑制できないからこそ、安全性に関係が深い操作ボタンを、タッチパネル表示部38から分離、独立して配置しているものと解される。
これらを総合すると、審判請求書における審判請求人の主張は、この出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項に基づくものではなく、そもそも、この出願のもとの出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項に基づくものでもないから、審判請求人のこの主張を採用し、本願発明の進歩性を肯定することはできない。
仮に、審判請求書において審判請求人が主張するタッチパネルに液体洗剤が落下した場合に、タッチパネルを傾斜して装着しているため、液体洗剤が傾斜によって流れ落ちるという作用や、静電容量式タッチパネルに汚れが付着した際の誤検出を抑制するという課題を傾斜面に静電容量式タッチパネルを配置することによって解決することが、明細書、特許請求の範囲又は図面に開示されていなくても、当業者にとって自明であるということであれば、引用発明のタッチパネル420を含む表示部420も傾斜して配置されているのであるから、引用発明のタッチパネル420として、引用文献2に記載された事項に基づき、容量性のものを採用することが当業者にとって容易であることを裏付けることになる。

3 本願発明の効果について
本願発明の作用効果については、引用発明、引用文献2に記載された事項及び前記周知の事項から当業者が予測できる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び前記周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-01 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2016-213981(P2016-213981)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 柿崎 拓
長馬 望
発明の名称 洗濯機  
代理人 野村 幸一  
代理人 鎌田 健司  

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