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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1350522
審判番号 不服2018-8492  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-20 
確定日 2019-04-23 
事件の表示 特願2016-529115「光送受信器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月30日国際公開、WO2015/198667、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月23日(優先権主張日 平成26年6月27日、優先権主張国 日本)を出願日とする国際出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 7月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年10月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 3月13日付け:拒絶査定(同年同月20日送達)
平成30年 6月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 8月23日付け:前置報告書
平成30年12月 7日 :上申書の提出
平成30年12月28日付け:当審拒絶理由通知書
平成30年 3月 8日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年3月13日付けの拒絶査定)の概要は、次のとおりである。

1 本願の請求項1ないし10に係る発明は、明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 本願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3 本願の請求項1ないし10に係る発明は、下記の引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-286195号公報
2.特開2014-109604号公報
3.特開2009-105157号公報
4.特開2013-054214号公報
5.特開2012-008480号公報
6.特開2010-008673号公報
7.特開2012-237841号公報

第3 当審拒絶理由の概要
平成30年12月28日付けの当審拒絶理由通知書の概要は、次のとおりである。

1 本願の請求項1ないし8に係る発明は、明確でないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし8に係る発明の意義を理解できるように記載されていないことから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成30年3月8日付けの手続補正書で補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。

「【請求項1】
表面が金属で覆われレーザダイオードを内蔵した素子、及び当該素子が側面に設けられた本体部を有し、前記素子が基板と接続されることにより自身の表面のグランドが前記基板側のシグナルグランドと一体となる光部品と、
前記基板及び前記光部品を収納した筐体と、
前記光部品の前記本体部及び前記素子の上に載せられ、当該光部品に電気的に接続された導電体と、
前記筐体の上面内壁に沿うように前記導電体と当該筐体との間に幅広面が配置され、前記シグナルグランドと当該筐体側のフレームグランドとを分離するシート状の絶縁体とを備え、
前記光部品と前記筐体との間に前記導電体及び前記絶縁体を配置した
ことを特徴とする光送受信器。
【請求項2】
前記筐体はメッキ処理が施された
ことを特徴とする請求項1記載の光送受信器。
【請求項3】
前記導電体は、前記筐体内において前記光部品の位置規制を行うガスケットである
ことを特徴とする請求項1記載の光送受信器。
【請求項4】
前記光部品は、光ファイバが接続される光コネクタを有し、
前記光部品の本体部と前記光コネクタとを絶縁する第2の絶縁体と、
前記光コネクタのレセプタクルと前記筐体とを電気的に少なくとも4点以上接続する第2の導電体とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光送受信器。」

第5 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号に基づく理由(明確性)について
当審拒絶理由通知の特許法第36条第6項第2号に基づく理由(明確性)の概要は、本願の請求項1について、「表面が金属で覆われた素子」、「筐体に収納され、表面が金属で覆われた素子を有し、自身の表面のグランドがシグナルグランドと一体である光部品を備えた光送受信器」、「前記光部品の一つの面」、「前記筐体内を通過するノイズに近い面の内壁」という記載が不明確であり、また、請求項2について、「電波吸収体」という記載が不明確であり、請求項1、2を引用する請求項3?8についても同様であるというものである。

これに対して、本願の請求項1は、上記第4のとおり、平成30年3月8日付けの手続補正書によって補正された。この補正により、「素子」が、「表面が金属で覆われレーザダイオードを内蔵した素子」であり、「光部品」の「側面に設けられた」ものであること、「光部品」が、「前記素子が基板と接続されることにより自身の表面のグランドが前記基板側のシグナルグランドと一体となる」ものであること、「筐体」が、「前記基板及び前記光部品を収納した」ものであること、「導電体」が、「前記光部品の前記本体部及び前記素子の上に載せられ」たものであること、及び、「絶縁体」が、「前記筐体の上面内壁に沿うように前記導電体と当該筐体との間に幅広面が配置され」たものであることが明確にされた。

また、元の請求項2及び元の請求項2に従属する各請求項は削除された。

したがって、当審拒絶理由通知の特許法第36条第6項第2号に基づく理由は解消した。

2 特許法第36条第4項第1号に基づく理由(委任省令要件)について
当審拒絶理由通知の特許法第36条第4項第1号に基づく理由の概要は、本願発明において、光部品と筐体との間で順に導電体及びシート状の絶縁体を備えたことで、どうして、光送受信器において、良好なフィルタ特性を得ることができるのかを理解できず、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし8に係る発明の意義を理解できるように記載されていないことから、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでないというものである。

これに対して、本願の発明の詳細な説明における「導電体51の表面抵抗」に関する記載は、平成30年3月8日付けの手続補正書による補正によって削除され、また、同日付けの意見書も参酌すると、当業者であれば、本願の発明な詳細の説明から、筐体における基板の領域と、絶縁体の領域の間の境界において、ノイズである電波の伝送モードが異なることから、その反射が生じ、結果としてノイズのフィルタ効果が得られることを理解できたものと考えられる。

したがって、当審拒絶理由通知の特許法第36条第4項第1号に基づく理由は解消した。

第6 原査定の理由について
1 特許法第36条第6項第2号に基づく理由(明確性)について
原査定の特許法第36条第6項第2号に基づく理由の概要は、請求項1ないし10における、「光部品」についての記載が不明確であるとするというものであるが、上記第5の1において記載したことと同様に、平成30年3月8日付けの手続補正書による補正後の請求項1ないし4において、記載の不明確性に基づく拒絶理由は解消されている。

2 特許法第29条第1項第3号に基づく理由(新規性)及び特許法第29条第2項に基づく理由(進歩性)について
(1)引用文献等
ア 引用文献1
引用文献1(特開2007-286195号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0014】
図1は、実施形態に係る双方向通信光トランシーバの分解斜視図である。この光トランシーバ10は、光送信デバイスおよび光受信デバイスの双方を内蔵する双方向光サブアセンブリ(Bi-Directional Optical Sub-Assembly:BOSA)11と、このBOSA11に対して電気的な処理を施す集積回路(IntegratedCircuit:IC)73を搭載する回路基板12と、これらBOSA11と回路基板12とを、その位置を規定しつつ収納するハウジング13と、ハウジング13を覆い、BOSA11および回路基板12を外部から電磁的にシールドする金属製カバー14とを有する。回路基板12のうちIC73が搭載される主面と反対側の主面には、EMIシート82および絶縁フィルム83が順次に被せられている。
【0015】
この光トランシーバ10は、いわゆるプラガブル(挿抜可能)光トランシーバであり、ホストシステムに搭載されたケージに差し込まれ、そのケージ内に設けられた電気コネクタに、回路基板12の後端に形成された電気プラグ40を挿入し電気的導通を確保することで、ホストシステムと通信可能となる。このケージと光トランシーバ10との間の係合/解除機構を構成するベール(取っ手)15およびラッチ機構16がハウジング13に付属し、さらに、回路基板12の後端、すなわち、電気プラグ40、の位置をハウジング13に対して規定すべく、回路基板12はサブホルダ17を介してハウジング13に固定される。
【0016】
図2は、BOSA11の外観を示す斜視図である。BOSA11は、光ファイバを収容する円筒状のスリーブ18と、その光ファイバにそれぞれ光学的に結合された同軸型の発光サブアセンブリ(Transmitting Optical Sub-Assembly:TOSA)19および同軸型の受光サブアセンブリ(Receiving OpticalSub-Assembly:ROSA)20とを一体に組み立てた組立体である。BOSA11は、一つのスリーブ18に対し二つの同軸型光モジュール19、20がそれらの軸方向を略90°違えて設置されたT字状の外観形状を有する。TOSA19はスリーブ18と対向する位置に設置され、ROSA20はスリーブ18とTOSA19とを結ぶ光軸に対して直交する方向に設置されている。つまり、スリーブ18中の光ファイバとTOSA19は共通の光軸91を有しており、この光軸91と略直角をなすのがROSA20の光軸92である。
【0017】
図3は、BOSA11のハウジング13への固定の様子を示す、光トランシーバ10の長軸に沿った部分縦断面図である。この図では、カバー14や、後述する放熱シート50、EMIシート51などが省略されている。図3に示すように、スリーブ18の内部には、光ファイバ84を内蔵する円柱状のファイバスタブ85が収納されている。ファイバスタブ85の基端部を除く部分は、円筒状の内側スリーブ86によって覆われており、ファイバスタブ85および内側スリーブ86の双方の基端部には、ブッシュ87が取り付けられている。スリーブ18は、ブッシュ87の基端部を除く部分と内側スリーブ86を覆うように固定される。ブッシュ87の基端部は、後述する本体部21の先端面に固定されている。
【0018】
TOSA19およびROSA20は、いわゆる同軸型のパッケージを有している。つまり、TOSA19およびROSA20の各々では、円板状の金属製ステム23の一方の主面(以下、「上面」)上に半導体光素子が搭載されている。この半導体光素子は、TOSA19では発光素子であり、ROSA20では受光素子である。半導体光素子と外部との電気的接続は、ステム23に付属するリードピン24を介して行われる。リードピン24はステム23の他方の主面(以下、「底面」)に対してほぼ直角に外部に引き出される。したがって、TOSA19の光軸91とROSA20のリードピン24の長手方向とは略直角をなしている。
【0019】
スリーブ18、TOSA19およびROSA20の各々は、円筒状の本体部21に固定されている。本体部21には、光ファイバ84の光軸91をROSA20に向けて90°曲げるWDMフィルタ41(図3を参照)が内蔵されている。TOSA19は、波長1.3μm帯の光を発光し、光ファイバ84に入射させる。一方、ROSA20は、光ファイバ84から波長1.55μm帯の光を受光する。WDMフィルタ41は、これら波長1.3μm帯の光と波長1.55μm帯の光とを分離する。すなわち、WDMフィルタ41は、TOSA19から波長1.3μm帯の光を受けて光ファイバ84に送ると共に、光ファイバ84から波長1.55μm帯の光を受けてROSA20に送る。
【0020】
本実施形態では、TOSA19、ROSA20、および、本体部21、さらには、スリーブ18の外壁は全て金属製である。ただし、これらの部品は、金属製の基体に樹脂製の外壁を設けたものであってもよい。
【0021】
BOSA11のうちTOSA19、ROSA20および本体部21は、ハウジング13に設けられた空間13aに収容されている。また、ハウジング13の先端部には、外部の光ファイバの先端に装着された光コネクタを挿入可能な開口26aを有するレセプタクル部26が形成されており、スリーブ18の先端部はこの開口26a内に収容されている。開口26aと空間13aとの間には、両者を区画する隔壁27が設けられており、この隔壁27には、開口26aおよび空間13aに連通する貫通穴が設けられている。この貫通穴には、スリーブ18のうち先端部を除く部分が収容されている。」

(イ)「【0055】
以下では、TOSA19のステム23に装着されるブラケット43について説明する。図11は、ブラケット43が装着されたBOSA11を示す斜視図であり、図12は、ブラケット43を示す斜視図である。図13は、ブラケット43が装着されたBOSA11の回路基板12への接続を示す平面図である。
【0056】
光トランシーバ10では、TOSA19およびROSA20のパッケージグランドは、TOSA19での大電流スイッチング動作がROSA20の小信号回路に影響しないように、ROSA20のグランドに統一されている。すなわち、ROSA20のパッケージのみならずTOSA19のパッケージも、ROSA20のグランドに接地されている。TOSA19に搭載された発光素子やモニタ用受光素子等のグランドは、少なくともTOSA19のパッケージから絶縁され、また、TOSA19のステム23に設けられた接地用リードピンも、TOSA19のパッケージから(従って、ステム23からも)絶縁されている。光トランシーバ10がホストシステム上に搭載されることによって、ホストシステム内でTOSA19のグランドとROSA20のグランドが接続され、そのときにTOSA19の接地用リードピンが接地されることになる。
【0057】
従って、この接地用リードピン、または接地用リードピンを硬質基板37のビアホール39に接続するための半田を、TOSA19のパッケージに接触させることはできない。そのため、余剰半田が毛細管現象によりステム23と硬質基板37の間に展がって接地用リードピンをステム23に電気的に導通させることがないように、TOSA19のステム23と硬質基板37との間隔を十分に確保しなければならない。
【0058】
さらに、本トランシーバ10はその動作速度がGHz帯に及ぶものである。一芯双方向光通信が規定されているのは、いわゆるギガビットイーサネット(登録商標)の規格(GBIC)であるが、その動作速度は1GHzを超える。この様な高速信号を扱う場合において、ROSA20に内蔵されているプリアンプでの発熱よりも、TOSA19に内蔵されているLD(レーザダイオード)での発熱がより大きくなる。さらに、プリアンプよりも、LDの温度特性、性能の温度依存性の方がはるかに大きいために、TOSA19の放熱機能を十分に確保しなければならない。
【0059】
このため、本実施形態では、TOSA19のステム23に対して図12に示されるブラケット43を装着した。ブラケット43は、複数のタブ46?48を有する導電性のリング部44と、リング部44の中心から離れるようにリング部44から延び出す導電性のフィンガ部45とを有している。本実施形態では、リング部44およびフィンガ部45の双方とも金属製である。リング部44は、TOSA19のステム23の側面に纏わり、フィンガ部45は回路基板12上の接地用導体パターン(GNDパターン)に接続される。これにより、TOSA19のステム23から回路基板12への放熱パスが確保される。
【0060】
図12に示すように、リング部44の一方の端面からは、三つの背高タブ46、三つの背低タブ47、ならびに二つのストッパタブ48が延び出している。背高タブ46と背低タブ47はリング部44の端面上で交互に配列されており、各タブの先端はリング部44の内側に向けてほぼ90°の角度で折り曲げられ、テーブル部49が形成されている。一方のストッパタブ48は、リング部44の端面上において、フィンガ部45と対向する位置に形成されており、他方のストッパタブ48は、同じ端面上において、もう一方のストッパタブ48とフィンガ部45との間に形成されている。
【0061】
TOSA19のステム23をリング部44に挿入すると、背低タブ47の先端のテーブル部49がステム23の底面に当接する(図11を参照)。すなわち、背低タブ47のテーブル部49は、TOSA19のステム23のリング部44への挿入に関して、ストッパの機能を果たす。一方、このようにしてTOSA19のステム23とブラケット43とが組み立てられた場合、この組立体から突出するリードピン24を硬質基板37のビアホール39に挿入すると、背高タブ46の先端のテーブル部49が硬質基板37に当接し、硬質基板37を支持する。すなわち、硬質基板37とステム23との間に二種のタブ46及び47の高さの差に等しい隙間が生ずる。本例ではこの隙間、すなわち二つのタブの高さの差を0.4mmに設定した。このように十分に大きな隙間が存在することにより、リードピン24を半田接続する際の余剰半田が硬質基板37とステム23との隙間に毛細管現象により展がることが避けられ、TOSA19の接地用リードピン(GNDリード)がステム23に電気的に導通することが避けられる。」

(ウ)「【0064】
上述したBOSA11、回路基板12および固定ホルダ25をハウジング13に設置した後、放熱シート50およびEMIシート51がハウジング13に取り付けられる。図14は、この取り付けの様子を示す分解斜視図である。図15は、EMIシート51を示す斜視図である。図16は、図3のXVI-XVI線に沿った断面図であり、取り付け後の放熱シート50およびEMIシート51を示している。
【0065】
図14に示すように、取り付け前の放熱シート50は、方形の平板の一つの角を方形状に切り欠いた形状を有している。この切り欠きによって形成された比較的幅の狭い端部50aは、ハウジング13の上壁13aに設けられた凹部75に収容されている。
【0066】
EMIシート51は、電磁波を遮断してEMI(Electromagnetic Interference:電磁干渉)を防ぐ電磁シールド材である。図15に示すように、EMIシート51は、平板状のベース部52と、このベース部52に対して一段低く形成された湾曲部53およびフィンガ部54とを有する金属製の部品である。ベース部52は、放熱シート50の端部50aに重ね合わせて、ハウジング13の凹部75に収容されている。ベース部52の一端部は、斜め下方に折り曲げられて段差を形成しながら、湾曲部53およびフィンガ部54につながっている。湾曲部53は、BOSA11の本体部21の外周面に沿うように形成された部分円筒状の曲板であり、その断面が円弧状となっている。一方、フィンガ部54は
、方形状の平板であり、湾曲部53と相並んでベース部52から延び出している。
【0067】
図14に示すように、BOSA11の上に放熱シート50が載せられ、さらにその上にEMIシート51が重ねられる。放熱シート50は柔軟なので、EMIシート51の形状に合わせて変形し、BOSA11の本体部21の外周面及びステム23の側面に密着する。図16に示すように、ベース部52と湾曲部53およびフィンガ部54との間に形成された段差の高さは、凹部75の底面とBOSA11の本体部21との高さの差に相当する。
【0068】
図14および図16に示されるように、EMIシート51のベース部52を凹部75に収容すると、EMIシート51の湾曲部53がBOSA11の本体部21の外周面を覆い、フィンガ部54がTOSA19のステム23および硬質基板37の側面を覆う。これにより、ステム23およびリードピン24から漏洩するEMI雑音を効果的に遮断し、ROSA20の小信号増幅部への影響を抑制している。
【0069】
放熱シート50は、EMIシート51とBOSA11の間に挟まれ、BOSA11の本体部21およびTOSA19のステム23に接触している。放熱シート50は、熱伝導率の良好な樹脂、例えばシリコーン樹脂に熱伝導性粒子を添加したものからなる。放熱シート50は、EMIシート51とBOSA11に挟まれた上で、かつBOSA11に密着することで、BOSA11、特にTOSA19内で発生した熱を効果的にEMIシート51あるいはハウジング13に伝えて放熱効果を高める。
【0070】
また、他方において、放熱シート50は、EMIシート51と重ねてハウジング13の凹部75に収納されており、取り付け前の両シートを合わせた厚さは、この凹部75の深さよりもわずかに大きく設定されている。このため、両シートを取り付けた後、金属カバー14をハウジング13に被せると、放熱シート50は、EMIシート51を金属カバー14に押し付けて密着させ、放熱効果を高める作用を発揮する。」

(エ)引用文献1の図1ないし3は、次のとおりのものである。
【図1】


【図2】


【図3】


(オ)引用文献1の図1、2において、TOSA19が、BOSA11の本体部21の側面に設けられることが示されている。

上記記載及び図面に示された事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用文献1発明」という。)が記載されていると認められる。

「光送信デバイスおよび光受信デバイスの双方を内蔵する双方向光サブアセンブリ(Bi-Directional Optical Sub-Assembly:BOSA)と、このBOSAに対して電気的な処理を施す集積回路(Integrated Circuit:IC)を搭載する回路基板と、これらBOSAと回路基板とを、その位置を規定しつつ収納するハウジングと、ハウジングを覆い、BOSAおよび回路基板を外部から電磁的にシールドする金属製カバーとを有する、光トランシーバであって、
BOSAは、同軸型の発光サブアセンブリ(Transmitting Optical Sub-Assembly:TOSA)および同軸型の受光サブアセンブリ(Receiving OpticalSub-Assembly:ROSA)とを一体に組み立てた組立体であり、TOSAおよびROSAの各々は、円筒状の本体部に固定され、TOSA、ROSA、および、本体部の外壁は全て金属製であり、
TOSAは、BOSAの本体部の側面に設けられ、
TOSAには、LD(レーザダイオード)が内蔵され、
TOSAのステムに対してブラケットが装着され、ブラケットは、導電性のリング部44と、リング部の中心から離れるようにリング部から延び出す導電性のフィンガ部とを有し、リング部は、TOSAのステムの側面に纏わり、フィンガ部は回路基板上の接地用導体パターン(GNDパターン)に接続され、
BOSAの上に放熱シートが載せられ、さらにその上にEMIシートが重ねられ、
EMIシートは、電磁波を遮断してEMI(Electromagnetic Interference:電磁干渉)を防ぐ電磁シールド材であって、平板状のベース部と、このベース部に対して一段低く形成された湾曲部およびフィンガ部とを有する金属製の部品であり、
放熱シートは、熱伝導率の良好な樹脂からなる、
光トランシーバ。」

イ 引用文献2
引用文献2(特開2014-109604号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0035】
なお、第1の面17cと箱型パッケージ22の該表面との間に配置される熱伝導材41、また第2の面17dと筐体11の内面との間に配置される熱伝導材としては、エラストマのような弾性を有するシリコーンゴムに、金属やセラミック粒子等の熱伝導性の微粒子を混入して熱伝導率を高めた弾力性を有する樹脂シート状のものや、シリコン、アクリル等のペースト状の母材に、セラミックフィラー等を添加し熱伝導率を高めた部材などが好適である。或いは、熱伝導材としてグラファイトシートが用いられてもよい。熱伝導材は、電気伝導性を有していてもよく、また、電気絶縁性を有していてもよい。熱伝導材が電気伝導性を有する場合には、箱型パッケージ22の耐ノイズ性能が高められる。また、熱伝導材が絶縁性である場合には、箱型パッケージ22の接地電位系(シグナルグラウンド)と、筐体11の接地電位系(フレームグラウンド)とを効果的に分離することができる。」

ウ 引用文献3
引用文献3(特開2009-105157号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0021】
次に、図3を参照して、FPC4とケースピン24dとの接続箇所を説明する。ケースピン24dは、FPC4のピン挿入孔26dに挿入されており、半田48を介してピン挿入孔26dに固定されている。そして、ケースピン24dは、導体パターン30dに半田48によって接続されている。よって、ステム22は、ケースピン24dを介して導体パターン30dに接続されているので、導体パターン30dは、フレームグランドFGとなる。
【0022】
FPC4とステム22との間には、絶縁板50が設けられている。絶縁板50は、0.1mm?0.5mm程度の厚みを有する絶縁性のシートであり、ステム22と導体パターン30eとを絶縁する。このように、絶縁板50は、ステム22に接続されるフレームグランドFGと、導体パターン30eに接続するシグナルグランドSGとを確実に絶縁する。」

エ 引用文献4
引用文献4(特開2013-054214号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0006】
このような電磁波放射の問題に対して、従来では、光トランシーバの筐体のシールド性を高め、筐体からの電磁波漏洩を抑えるような対策が取られている。例えば、光トランシーバの筐体内に導電性弾性体等のシールド材を配置して、筐体の隙間からの電磁波漏洩を抑制したり、あるいは、TOSAに電波吸収体を貼付して、外部への電磁波放射を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,459,918号明細書
【特許文献2】米国特許第6,371,787号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようなシールド材を用いてシールド性を向上させようとする場合、種々の形状の複数のシールド材を所定位置に配置しなければならないため、光トランシーバの組み立て作業性を低下させたり、あるいはシールド材が高価なため、光トランシーバのコストアップを招来したりする、等の課題がある。
また、TOSAに電波吸収体を貼付する場合、EMIの抑制効果を得るためには、ある程度広い面積に電波吸収体を貼付する必要がある。しかしながら、この場合、電波吸収体の反力によりTOSAへの機械的ストレスが増加して不具合の要因となったり、あるいは、電波吸収体によりTOSAの放熱面積が減少し、放熱特性が悪化したりする、という課題が生じる。」

オ 引用文献5
引用文献5(特開2012-008480号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0022】
図1は、本実施形態に係る光トランシーバ100の分解斜視図である。図2Aは、光トランシーバ100の上面図であり、図2Bは、光トランシーバ100の側面図である。図3は、図2Aに示す光トランシーバ100のIII-III線断面図である。図4は、図2Aに示す光トランシーバ100のIV-IV線断面図である。図5は、図2Bに示す光トランシーバ100のV-V線断面図である。
【0023】
図1?図5に示すように、光トランシーバ100は、ケース10、回路基板16、入出力用コネクタ20、多重器22、分離器24、光送信アセンブリ26、光受信アセンブリ28、アタッチメント30(第1保持部材)、トレイ40(第2保持部材)、電波吸収シート50、および電波吸収放熱シート52を含んで構成される。
【0024】
ケース10は、たとえばアルミで形成された上ケース12と下ケース14とからなり、種々の部品(光送信アセンブリ26、光受信アセンブリ28、アタッチメント30、トレイ40など)を収納するための内部空間を有する。ケース10は、その内部空間に収納される部品を保護するとともに、それらから発せられる熱を外部に放散する役割を果たす。なお、上ケース12と下ケース14は、たとえばネジで固定される。
【0025】
回路基板16は、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基板と、基板上に形成された図示しない配線パターンと、を含み、下ケース14にネジで固定されている。回路基板16上には、アタッチメント30およびトレイ40の他に、図示しない電子部品が搭載されている。また、回路基板16の一端には、外部との電気的接続のための端子18が設けられている。
【0026】
入出力用コネクタ20は、たとえばプラスチックで形成された、外部から挿入される光ファイバとの光学的接続のためコネクタである。入出力用コネクタ20は、入力用コネクタと出力用コネクタとを含み、ケース10の内側に形成された収納部に嵌め込んで固定されている。
【0027】
多重器22は、複数の光信号を1つの光信号に多重化して出力するマルチプレクサである。多重器22は、主に金属で形成され、ケース10にネジで固定されている。
【0028】
分離器24は、1つの光信号を複数の光信号に分離して出力するデマルチプレクサである。分離器24は、主に金属で形成され、ケース10にネジで固定されている。
【0029】
光送信アセンブリ26は、電気信号を光信号に変換するための発光素子を内蔵する1または複数の光アセンブリである(ここでは4つ)。光送信アセンブリ26は、アタッチメント30に接着固定され、アタッチメント30を介して回路基板16に搭載されている。
また、光送信アセンブリ26は、回路基板16と電気的に接続されており、その電気的接続には半田を使用することができる。
【0030】
光受信アセンブリ28は、光信号を電気信号に変換するための受光素子を内蔵する1または複数の光アセンブリである(ここでは4つ)。光受信アセンブリ28は、光送信アセンブリ26と同様、アタッチメント30に接着固定され、アタッチメント30を介して回路基板16に搭載されている。また、光受信アセンブリ28は、回路基板16と電気的に接続されており、その電気的接続には半田を使用することができる。
【0031】
アタッチメント30は、光送信アセンブリ26を保持するための光送信アセンブリ保持部32と、光受信アセンブリ28を保持するための光受信アセンブリ保持部34と、を有する絶縁性の保持部材である。アタッチメント30は、たとえばプラスチックで形成され、回路基板16にネジで固定される。
【0032】
アタッチメント30には、トレイ40を保持するために、トレイ40の係合用突起44に係合する係合孔36が形成されている。
【0033】
また、アタッチメント30には、光送信アセンブリ26と光受信アセンブリ28とに挟まれた部分の一側面を縦断する凹状の電波吸収シート固定溝38(第1溝部)が形成されている。この電波吸収シート固定溝38は、電波吸収シート50の一辺部を挟持するために設けられた構造である。つまり、アタッチメント30は、光送信アセンブリ26と光受信アセンブリ28とトレイ40に加えて、電波吸収シート50を保持する役割も有している。
【0034】
トレイ40は、光ファイバの余長処理を行うために光ファイバを複数回巻いて配置するための光ファイバ巻装領域42を有する保持部材であり、たとえばプラスチックで形成されている。トレイ40には、アタッチメント30の係合孔36に係合する係合用突起44が形成されており、トレイ40は、アタッチメント30を介して回路基板16に搭載される。
【0035】
トレイ40には、開口部46が形成されており、開口部46の内側に光送信アセンブリ26、光受信アセンブリ28およびその他の図示しない電子部品を配置することができるようになっている。
【0036】
また、トレイ40には、開口部46の内側面を縦断する凹状の電波吸収シート固定溝48(第2溝部)がさらに形成されている。図5に示すように、電波吸収シート固定溝48は、トレイ40がアタッチメント30を介して回路基板16に搭載された場合に、アタッチメント30の電波吸収シート固定溝38に相対するよう形成されている。すなわち、アタッチメント30およびトレイ40は、電波吸収シート固定溝38と電波吸収シート固定溝48とが相対するよう配置された状態で回路基板16に搭載されている。
【0037】
この電波吸収シート固定溝48は、電波吸収シート50の一辺部を挟持するために設けられた構造である。つまり、本実施形態に係るトレイ40は、光ファイバに加えて、電波吸収シート50を保持する役割も有している。
【0038】
電波吸収シート50は、たとえばエチレン酢酸ビニル共重合体と軟磁性粉とから形成された、矩形板状の電波吸収体である。図1および図3に示すように、本実施形態では、この電波吸収シート50が、光送信アセンブリ26と光受信アセンブリ28との間を仕切るよう回路基板16上に立てた状態で固定される。そのために、電波吸収シート50は、下辺部(下ケース14側の辺部)が回路基板16に接するよう、その下辺部に隣接する一辺
部が電波吸収シート固定溝38に挟持され、その一辺部に対向する対向辺部が電波吸収シート固定溝48に挟持されている。これにより、回路基板16上に搭載される光送信アセンブリ26と光受信アセンブリ28との間の干渉(クロストーク)が低減される。
【0039】
電波吸収放熱シート52は、たとえばシリコーンゴムと軟磁性粉とから形成された、電波吸収可能な粘土状の弾性部材である。図3および図4に示すように、本実施形態では、この電波吸収放熱シート52が、アタッチメント30の一部とトレイ40の一部と電波吸収シート50の上辺部(上ケース12側の辺部)とによって下から支持され、かつ上ケース12によって上から押圧された状態で固定される。
【0040】
なお、電波吸収放熱シート52のアタッチメント30から外にはみ出す部分の長さは、アタッチメント30の高さ未満であることが望ましい。また、電波吸収放熱シート52のトレイ40から外にはみ出す部分の長さは、トレイ40の高さ未満であることが望ましい。そうすれば、粘土状の材料で形成された電波吸収放熱シート52の一部が、回路基板16に接することを防ぐことができる。」

カ 引用文献6
引用文献6(特開2010-008673号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0004】
図1は一芯双方向光送受信器の筐体内部を示す斜視図である。一芯双方向光送受信器の本体筐体2は表面に亜鉛めっきやニッケルめっきが施された鋼板により形成されることが多い。本体筐体2の内部には、双方向光送受信デバイス4と回路基板12とが収容される。」

キ 引用文献7
引用文献7(特開2012-237841号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0018】
本発明の光モジュール10は、図1に一例として示すような光レセプタクル11と複数の光素子ユニットを備えたユニット集合体12からなる構成のものを対象とする。また、光レセプタクル11とユニット集合体12とは、光レセプタクル11側に挿入される光ファイバとユニット集合体12側の光素子とを、光学的に光結合させるスタブ13(スタブフェルールともいう)により、連結一体化される構成のものを対象とする。
【0019】
光レセプタクル11は、フェルールが挿入されるスリーブ17、該スリーブの基端部が嵌合されるスタブ13、該スタブに圧入嵌合されるスリーブホルダ15、該スリーブホルダにより保持され、スリーブ17を保護する金属シェル18により構成される。スリーブ17は、例えば、ジルコニア等のセラミック材で形成され、スリ割を入れて径方向に伸縮可能な割スリーブで形成される。このスリーブ17は、フェルールの位置決めを行い、その着脱を容易にする機能を備え、スタブ13の一方の端部に弾性的に嵌合させて保持される。
【0020】
スリーブホルダ15は、金属で形成され、圧入孔15aを有し、スタブ13に対して圧入嵌合により固定される。このスリーブホルダ15は、スリーブ17及び金属シェル18を所定位置に保持すると共に、搭載機器のフレーム等に結合して光モジュールを支持固定して、電磁シールドを行う機能を備えている。金属シェル18は、スリーブ17を外力から保護すると共に、電磁シールドを行い、スリーブホルダ15に圧入して一体化される。
【0021】
ユニット集合体12は、金属製の集合筐体20を用いて、例えば、3つの光素子ユニットが組み付けられる。第1の光素子ユニット21は、発光素子として、例えば、EML素子(Electro-absorption Modulator Integrated Laser Diode:変調器集積型半導体レーザ)を用いた10Gbps(波長1577nm)の送信用の光素子ユニットである。また、第2の光素子ユニット22は、発光素子として、例えば、DML素子(Direct Modulation Laser Diode:直接変調レーザ)を用いた1Gbps(波長1490nm)の送信用の光素子ユニットである。第3の光素子ユニット23は、例えば、10Gbps(波長1270nm)または1Gbps(波長1310nm)の受光素子を用いた受信用の光素子ユニットである。
【0022】
3つの光素子ユニット21,22,23は、光アイソレータ、波長分波フィルタ、集光レンズ等を用いて、スタブ13の光ファイバ13aに光学的に結合される。この光結合は、レーザ等の発光素子を用いた送信用の光素子ユニット21,22においては、ジョイントスリーブ2等を用いて調芯された後、集合筐体20にYAGレーザによる溶接あるいは接着剤で固定される。また、受信用の光素子ユニット23においては、ジョイントスリーブを用いることなく調芯(ジョイントスリーブを用いてもよい)されて、集合筐体20にYAGレーザによる溶接あるいは接着剤で固定される。
【0023】
集合筐体20は、スタブ13に予め圧入嵌合されている金属製のブッシュ16に当接して位置決めされ、ブッシュ16にXで示す部分をYAGレーザ等で溶接することにより取付け固定される。集合筐体20をブッシュ16に固定することで、スタブ13の下端(光ファイバ13aの光結合端)と各光素子ユニット21?23の光素子とが光学的に光結合される。
【0024】
スタブ13は、電気的絶縁性を有する材料で形成され、光レセプタクル11のスリーブ17と同じような、ジルコニア等のセラミック材で形成することができる。スタブ13の中心には、短尺の光ファイバ13aが配設される。光ファイバ13aは、スリーブ17により位置決めされた光コネクタの光ファイバとユニット集合体12側の光素子とを光学的に結合する。また、スタブ13は、上記したように、光レセプタクル11とユニット集合体12とを光学的に結合する他に、機械的にも連結一体化する部材としての機能も備える。
【0025】
光レセプタクル11のスリーブホルダ15とユニット集合体12のブッシュ16は、電気的に絶縁される間隙14をあけてスタブ13に圧入嵌合され、互いに電気的には導通しないようにスタブ13にして取付け固定される。
本発明においては、特に間隙14の部分に絶縁リング19を嵌合し、スタブ13に対するスリーブホルダ15とブッシュ16の圧入嵌合長を増強させたことを特徴とする。この構成により、光レセプタクル11と複数の光素子ユニットからなるユニット集合体12の固定強度を高めることができ、衝撃等が加わって光結合状態が変動するのを抑制することができる。
【0026】
図2は、光レセプクル11とユニット集合体12との電気絶縁部分を説明する部分拡大図で、図2(A)は断面図、図2(B)と図2(C)は実施形態を説明する図である。
【0027】
図2(A)に示すように、スリーブホルダ15は、その圧入孔15aによりスタブ13上に圧入嵌合で固定され、次いで絶縁リング19が嵌合される。この絶縁リングの嵌合は、スリーブホルダ15とブッシュ16の圧入嵌合による保持強度よりは小さい保持強度で、緩めに圧入嵌合するようにしてもよい。この場合、絶縁リング19は、スリ割をいれて径方向に伸縮可能な割リングとしてもよく、また、精密仕上げした精密リングとしてもよい。
【0028】
そして、ブッシュ16は、絶縁リング19に当接するように圧入され、その圧入孔16aによりスタブ13上に圧入嵌合で固定される。スリーブホルダ15とブッシュ16は、絶縁リング19により所定の間隙14をあけて電気的に絶縁される。なお、ブッシュ16から突き出るスタブ13の内端13bの突き出し量は、各部の部品寸法と治具等により管理規制される。
【0029】
間隙14の部分に配される絶縁リング19は、スリーブ17と同じ電気的絶縁性のあるジルコニア等のセラミック材で形成することができる。また、スリーブ17を所定の幅(厚さ)でスライスし、その両面を研磨したものを用いることも可能である。この絶縁リング19で間隙14を埋めることにより、ブッシュ16に衝撃によるモーメントがかかっても、絶縁リング19を介してスリーブホルダ15にも応力が及び、ブッシュ16とスリーブホルダ15が一体的な状態となる。このため、光モジュールの外形寸法を同じにして、スリーブホルダ15とブッシュ16の圧入嵌合長を実質的に増加させたことと等しくなり、衝撃等により位置ずれが生じるのを効果的に抑制することができる。
【0030】
また、スリーブホルダ15の間隙形成側にスリーブホルダ外径より小径の凸段部15bを設け、ブッシュ16の間隙形成側にもブッシュ外径より小径の凸段部16bを設け、この凸段部15bと16bで絶縁リング19を保持する。また、絶縁リング19は、凸段部15b,16bと同じ外径とすることにより、スリーブホルダ15とブッシュ16で均一に圧接保持され、一体性を高めることができる。
【0031】
また、図2(B)に示すように、ユニット集合体の集合筐体20は、ブッシュ16の外周のXで示す部分でYAGレーザ等により溶接される。絶縁リング19は、ブッシュ16の外径より内側に形成された小径の凸段部15bと16bで規制される外径で形成すると、ブッシュ16の影になって溶接による影響が受けにくい状態となる。この結果、溶接時の飛沫が付着して絶縁耐圧が低下するのを抑制することができる。
【0032】
なお、図2(C)に示すように、凸段部15bと16bは、スリーブホルダ15とブッシュ16の双方に設けなくても、いずれか一方の側に設けるだけでも絶縁リング19の圧接保持を良好にすることができる。この場合、ブッシュ16側の凸段部16aを省略し、スリーブホルダ15側の凸段部15bのみとすることにより、図2(B)の場合と同様に、YAGレーザによる溶接の影響を受けにくくすることができる。」

(2)対比・判断
ア 本願発明1
(ア)対比
本願発明1と引用文献1発明を対比する。

a 引用文献1発明の「発光サブアセンブリ(Transmitting Optical Sub-Assembly:TOSA)」は、「LD(レーザダイオード)が内蔵され」たものであり、その外壁は「金属製」であるから、本願発明1の「表面が金属で覆われレーザダイオードを内蔵した素子」に相当する。

b 引用文献1発明の「双方向光サブアセンブリ(Bi-Directional Optical Sub-Assembly:BOSA)」は、その「本体部の側面」に「TOSA」が設けられ、その外壁も「金属製」であって、「ブラケット」による「TOSAのステムの側面」と「回路基板上の接地用導体パターン(GNDパターン)」との接続によって、その表面である「外壁」も「回路基板上の接地用導体パターン(GNDパターン)」と接続されることとなるから、本願発明1の「当該素子が側面に設けられた本体部を有し、前記素子が基板と接続されることにより自身の表面のグランドが前記基板側のシグナルグランドと一体となる光部品」に相当する。

c 引用文献1発明の「金属製カバー」は、「BOSAおよび回路基板を外部から電磁的にシールドする」ものであり、「「BOSA」および「回路基板」を収納しているから、本願発明1の「前記基板及び前記光部品を収納した筐体」に相当する。

d 引用文献1発明の「放熱シート」は、「樹脂」であるから、絶縁体であるといえ、引用文献1発明の「EMIシート」は、金属製の部品であるから、導電体であるといえ、引用文献1発明において、「BOSAの上に放熱シートが載せられ、さらにその上にEMIシートが重ねられ」ているから、これらの「放熱シート」及び「EMIシート」は、絶縁体及び導電体として、「BOSA」及び「金属製カバー」の間に配置されているといえる。

e 引用文献1発明の「光トランシーバ」は、光の送受信を行うものであるから、本願発明1の「光送受信器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用文献1を対比したときの一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「表面が金属で覆われレーザダイオードを内蔵した素子、及び当該素子が側面に設けられた本体部を有し、前記素子が基板と接続されることにより自身の表面のグランドが前記基板側のシグナルグランドと一体となる光部品と、
前記基板及び前記光部品を収納した筐体と、
前記光部品と前記筐体との間に導電体及び絶縁体を配置した、
光送受信器。」

【相違点1】
本願発明1においては、「前記光部品の前記本体部及び前記素子の上に載せられ、当該光部品に電気的に接続された導電体と、前記筐体の上面内壁に沿うように前記導電体と当該筐体との間に幅広面が配置され、前記シグナルグランドと当該筐体側のフレームグランドとを分離するシート状の絶縁体とを備え」ているのに対し、引用文献1発明は、このような構成を有しない点。

(イ)判断
a 特許法第29条第1項第3号に基づく理由(新規性)について
上記相違点は、設計上の微差等として実質的な相違点にならないものとはいえず、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえない。

b 特許法第29条第2項に基づく理由(進歩性)について
上記相違点について検討する。

引用文献1発明の「放熱シート」は、「熱伝導率の良好な樹脂」であって、「BOSA」の放熱のために、直接接触する形で「BOSA」の上に載せられているものであり、引用文献1発明の「EMIシート」は、「金属製の部品」である、「電磁シールド材」であって、放熱シートによって絶縁されることによって通常の電磁シールドとして機能しているものである。

すなわち、引用文献1発明において、「放熱シート」及び「EMIシート」の配置を、上記相違点1に係る構成のように変更すると、「放熱シート」と「EMIシート」の積層順が逆になることになるから、それぞれの部材の主たる機能が阻害されることとなり、よって、このような構成変更には阻害要因があるといえる。また、本願発明1は、上記相違点1に係る構成を備えたことによって、領域の間の境界においてノイズである電波の伝送モードを異ならせて反射を生じさせノイズのフィルタ効果を得るものであるが、かかる効果を有する、本願発明1は、引用文献1発明から容易に発明できたものとはいえない。

引用文献2ないし7にも、上記相違点1に係る構成は、記載も示唆もされていない。

したがって、本願発明1は、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものではない。

イ 本願発明2ないし4
本願発明2ないし4は、本願の請求項1に従属する請求項2ないし4に係る発明であって、本願発明1の構成を全て含むものであるから、上記第6の2(2)アに記載したものと同様の理由によって、引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものではない。

第7 むすび
以上のとおり、当審拒絶理由及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2016-529115(P2016-529115)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G02B)
P 1 8・ 536- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井部 紗代子佐藤 宙子  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 山村 浩
古田 敦浩
発明の名称 光送受信器  
代理人 坂元 辰哉  
代理人 田澤 英昭  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 井上 和真  
代理人 中島 成  

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