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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1350537
審判番号 不服2017-17775  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-30 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2014-535023「共振器の最適化」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日国際公開、WO2013/053689、平成26年11月20日国内公表、特表2014-531048、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年(平成23年)10月14日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年10月31日付け:拒絶理由通知
平成29年 2月 1日 :意見書・手続補正書
平成29年 7月27日付け:拒絶査定(平成29年8月1日送達)
平成29年11月30日 :審判請求書
平成30年 8月17日付け:当審拒絶理由通知(以下「第1当審拒絶理由通知」といい、その理由を「第1当審拒絶理由」という。)
平成31年 2月21日 :意見書・手続補正書
平成31年 3月 8日付け:当審拒絶理由通知(以下「第2当審拒絶理由通知」といい、その理由を「第2当審拒絶理由」という。)
平成31年 3月22日 :意見書・手続補正書

2 本願発明の認定
本願の請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、平成31年3月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であるところ、そのうち、本願発明1、本願発明7及び本願発明12は次のとおりである。
もっとも、本願発明12は、請求項7?11を引用する形式で特定されているものであるから、以下では、これらの請求項のうち、最上位概念であるといえる請求項7に着目することとした上で、これを引用した発明を独立形式で書き下したものを「本願発明12-7」として認定することとした。

なお、本願発明2?6は、本願発明1を減縮したものであり、本願発明8?11は、本願発明7を減縮したものである。

[本願発明1]
「ある波長範囲の電磁放射を検出するように構成されたデバイスであって、
前記デバイスは、
基板と、
前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射の前記波長範囲内の所定の波長で共振するように構成された複数の共振器と、
前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と
を備えるとともに、
前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、デバイスであり、
その上で、前記デバイスは、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数が、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択されている、
デバイス。」

[本願発明7]
「基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成され、
前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと
を含む、方法。」

[本願発明12-7]
「基板と、
前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、前記電磁放射の所定の波長で共振する複数の共振器と、
前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と
を備え、
前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、
基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成され、
前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと
を含む、方法
に従って選択されているデバイス。」

3 原査定の拒絶の理由、第1当審拒絶理由及び第2当審拒絶理由の概要
(1)原査定の拒絶の理由について
上記理由の概要は次のとおりである。
平成29年2月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1,3?7,14に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
上記特許請求の範囲の請求項2,8に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1:英国特許出願公開第2470115号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2009/0220228号明細書

(2)第1当審拒絶理由について
上記理由の概要は次のとおりである。
ア 平成29年2月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(サポート要件違反)。
イ 発明の詳細な説明が、経済産業省令で定めるところにより記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(委任省令要件違反)。
ウ 発明の詳細な説明が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない(実施可能要件違反)。
エ 平成29年2月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明は、明確とはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(明確性要件違反)。

(3)第2当審拒絶理由について
上記理由の概要は次のとおりである。
平成31年2月21日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項13に係る発明は、明確とはいえないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(明確性要件違反)。

4 引用文献の記載事項等の認定
(1)引用文献1(英国特許出願公開第2470115号明細書)には、次の事項が記載されていると認められる(下線は当審が付した。以下同じ。)。
ア 「In a preferred embodiment each resonator is dimensionally optimised for a given electromagnetic wavelength and each resonator can be cylindrical, cupped, spherical, conical, stepped conical, tabulate or comprises one or more flat or curved surfaces. In a most preferred option each resonator is spherical, cylindrical or cupped in shape and the diameter of each sphere or cylinder is determined by the formula D=nλ/πμ where λ is the free space wavelength of the light, n is the resonance order and μ is the effective refractive index of the resonator.」(10頁9行?14行)
[当審訳:好適な実施形態では、各共振器が所定の電磁波長に寸法的に最適化されており、各共振器は円筒形、カップ形、球形、円錐形、段付円錐形、表形であるか、または1以上の平面あるいは湾曲面にすることができる。最も好適な選択肢では、各共振器が球形、円筒形、またはカップ形であり、各球または円筒の直径が式D=nλ/πμで決定され、ここでλは光の自由空間波長であり、nは共振次数であり、μは共振器の有効屈折率である。]、

「In a preferred embodiment the resonators work in the first order and only respond to a single wavelength in the spectrometer. Alternative embodiments envisage using resonators which work at a higher order (and are therefore larger and easier to manufacture with sufficient tolerance).」(11頁3行?5行)
[当審訳:好適な実施形態では、共振器が1次で動作し、分光器内の単一波長に反応する。代替実施形態は、高次で動作する共振器を用いることを想定している(したがってより大きく、十分な公差で製造が容易である)。]、

「Resonators can be placed along the waveguide in any order. However, the optimal positioning is for the smallest diameter resonator to be placed closest to the light entrance on the resonator and the largest being placed further away. Resonators between the first and last resonators increase sequentially in diameter.」(14頁下から7行?下から4行)
[当審訳:共振器は、任意の順序で導波路に沿って配置することができる。しかしながら、最適な位置調整では、最も小さな直径の共振器が光の入口の最も近くに配置され、最も大きなものはさらに遠くに配置される。最初と最後の共振器の間の共振器は、直径が順に増加する。]、

「The waveguide may consist of an angled rib-waveguide. This is to prevent back reflection from the end facets of the spectrophotometer chip. The height and width of the waveguide is optimized to allow maximum throughput of light into the spectrophotometer. As shown in figures 1 to 3, the cylindrical resonator will be closely coupled to the waveguide to allow evanescent leakage of the light into each resonator. Since each resonator targets a specific wavelength, the diameter, thickness and spacing relative to the waveguide is optimised to maximize light coupling efficiency and to minimize stray light. As a general design rule, the resonator diameter (D) will be designed such that D (wavelength *m/pi*n) wherein n is the effective refractive index of the semiconductor and m is the resonator order. Thus for a resonator sensitive to 1.5μm radiation, operating in second order, with a typical refractive index of 3.2 the diameter D is 300nm. This is well within the capabilities of ultraviolet or e-beam lithography techniques.」(19頁5行?16行)
[当審訳:導波路は、角度を成した肋骨状の導波路で構成することができる。これは、分光測光チップの端部ファセットから後方反射を防止するためである。導波路の高さと幅は、分光測光器への光の通過量を最大化するよう最適化される。図1?図3に示すように、円筒共振器は導波路に密接して結合され、各共振器にエバネセント光を漏洩させる。各共振器は特定の波長を対象にするため、直径、厚さおよび導波路に対する間隔が最適化されて光結合効率を最大化し、迷光を最小化する。一般的な設計ルールとして、共振器の直径(D)はD=(波長*m/pi*n)となるように設計され、ここでnは半導体の有効屈折率であり、mは共振器次数である。したがって2次で動作し、1.5μmの放射線に感受性のある共振器については、典型的な屈折率が3.2であり、直径Dは300nmである。これは、紫外線または電子ビームリソグラフィの技術に好適である。]、

「Tolerances 20nm are feasible using electron-beam or deep UV lithography. At the prototyping stage it is envisaged that electron-beam lithography would be used since it is extremely versatile and current technology is much better for attempting multiple designs on one wafer. In a production phase, electron-beam is also possible, however, deep-UV and holographic lithography techniques are much quicker at producing large numbers of devices with such tolerances.」(19頁17行?22行)
[当審訳:電子ビームまたは遠紫外線リソグラフィを用いて20nm未満の公差が実現可能である。プロトタイプを作る段階では、電子ビームリソグラフィを用いることが想定され、それは非常に用途が広く、現在の技術は1つのウェハ上に複数の設計を試みるのに非常に適しているからである。製造段階では、電子ビームも可能であるが、このような公差で多数のデバイスを製造する際には遠紫外線およびホログラフィックリソグラフィ技術が非常に高速である。]

イ 「Claims」
[当審訳:特許請求の範囲]、

「1) A spectrophotometer comprising a monolithic semiconductor substrate (1), one or more wavelength dispersing means (3-14), and one or more wavelength detecting means (3- 14), characterised in that there is no physical separation between the dispersing means (3- 14) and detecting means (3-14).」
[当審訳:1)モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3?14)と、1以上の波長検出手段(3?14)とを具える分光測光器であって、前記分散手段(3?14)と前記検出手段(3?14)との間に物理的分離がないことを特徴とする分光測光器。]

「2) The spectrophotometer according to claim 1, characterised in that the dispersing means (3-14) and detecting means (3-14) have no physically moving parts.」
[当審訳:2)請求項1に記載の分光測光器において、前記分散手段(3?14)および前記検出手段(3?14)が物理的な可動部品を有さないことを特徴とする分光測光器。]、

「3) The spectrophotometer according to claim I or claim 2, characterised in that the dispersing means (3-14) and detecting means (3-14) is a micro-resonator (3-14).」
[当審訳:3)請求項1または2に記載の分光測光器において、前記分散手段(3?14)および前記検出手段(3?14)が微小共振器であることを特徴とする分光測光器。]、

「4) The spectrophotometer according to claim 3, characterised in that each micro-resonator (3-14) is sized to optimally accept a wavelength, of light or plurality of wavelengths of light in that the diameter (D) of each resonator is determined by the formula D=nλ/πμ.」
[当審訳:4)請求項3に記載の分光測光器において、各微小共振器(3?14)が1つの波長の光または複数の波長の光を受光するのに最適なサイズであって、各共振器の直径(D)が式D=nλ/πμで決定されていることを特徴とする分光測光器。]、

「5) The spectrophotometer according to claim 3 or claim 4, characterised in that each micro-resonator acts as a detector of the level of light of a particular wavelength.」
[当審訳:5)請求項3または4に記載の分光測光器において、各微小共振器が特定の波長の光のレベルの検出器として動作することを特徴とする分光測光器。]、

「6) The Spectrophotometer according to any one of the preceding claims, characterised in that the spectrophotometer contains one or more waveguide means (2).」
[当審訳:6)請求項1?5の何れか1項に記載の分光測光器において、当該分光測光器が1以上の導波手段(2)を具えることを特徴とする分光測光器。]、

「7) The spectrophotometer according to claim 6, characterised in that each resonator (3-14) forms part of the waveguide means (2), or each resonator (3-14) is optimally positioned in proximity to the waveguide means (2).」
[当審訳:7)請求項6に記載の分光測光器において、各共振器(3?14)が前記導波手段(2)の一部を形成しているか、または各共振器(3?14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置されていることを特徴とする分光測光器。](当審注:「The spectrophotometer according to claim 5」は、「The spectrophotometer according to claim 6」の明らかな誤記であると認められるので、誤記を正した上で認定した。)、

(2)上記(1)の各事項によれば、引用文献1には、次の装置発明(以下「引用装置発明」という。)及び方法発明(以下「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用装置発明及び引用方法発明の認定に用いた引用文献1の記載箇所等を括弧内に示してある。

[引用装置発明]
「モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3?14)と、1以上の波長検出手段(3?14)とを具える分光測光器であって、前記分散手段(3?14)と前記検出手段(3?14)との間に物理的分離がない分光測光器であって、(請求項1)
前記分散手段(3?14)および前記検出手段(3?14)が微小共振器であり、(請求項3)
各微小共振器(3?14)が1つの波長の光を受光するのに最適なサイズであって、各共振器の直径(D)が式D=nλ/πμで決定されており、(請求項4)
ここでλは光の自由空間波長であり、nは共振次数であり、μは共振器の有効屈折率であり、(上記ア)
当該分光測光器が1以上の導波手段(2)を具え、(請求項6)
各共振器(3?14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置されており、(請求項7)
各共振器は特定の波長を対象にするため、直径、厚さおよび導波路に対する間隔が最適化されて光結合効率を最大化し、迷光を最小化され、(上記ア)
高次で動作する共振器を用いることが想定され、したがってより大きく、十分な公差で製造が容易である(上記ア)
分光測光器。」

[引用方法発明]
「モノリシック半導体基板(1)と、1以上の波長分散手段(3?14)と、1以上の波長検出手段(3?14)とを具える分光測光器であって、前記分散手段(3?14)と前記検出手段(3?14)との間に物理的分離がない分光測光器であって、(請求項1)
前記分散手段(3?14)および前記検出手段(3?14)が微小共振器であり、(請求項3)
各微小共振器(3?14)が1つの波長の光を受光するのに最適なサイズであって、各共振器の直径(D)が式D=nλ/πμで決定されており、(請求項4)
ここでλは光の自由空間波長であり、nは共振次数であり、μは共振器の有効屈折率であり、(上記ア)
当該分光測光器が1以上の導波手段(2)を具え、(請求項6)
各共振器(3?14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置されており、(請求項7)
各共振器は特定の波長を対象にするため、直径、厚さおよび導波路に対する間隔が最適化されて光結合効率を最大化し、迷光を最小化される、(上記ア)
分光測光器において、
より大きく、十分な公差で製造を容易とするために、共振次数として高次を選択する(上記ア)
方法。」

5 原査定の拒絶の理由に対する判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用装置発明との対比
(ア)本願発明1の「ある波長範囲の電磁放射を検出するように構成されたデバイスであって、」との特定事項について
a 引用装置発明の「分光測光器」は、本願発明1の「ある波長範囲の電磁放射を検出するように構成されたデバイス」に相当する。
b よって、引用装置発明は、本願発明1の「ある波長範囲の電磁放射を検出するように構成されたデバイスであって、」との特定事項を備える。

(イ)本願発明1の「基板と、」との特定事項について
a 引用装置発明の「モノリシック半導体基板(1)」は、本願発明1の「基板」に相当する。
b よって、引用装置発明は、本願発明1の「基板と、」との特定事項を備える。

(ウ)本願発明1の「前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射の前記波長範囲内の所定の波長で共振するように構成された複数の共振器と、」との特定事項について
a 引用装置発明の「微小共振器」は、本願発明1の「共振器」に相当する。そして、引用装置発明の「微小共振器」は、「モノリシック半導体基板(1)」上に存在すると解されるとともに、「各共振器」という特定がある以上、「複数」存在すると解されるから、引用装置発明は、本願発明1の「前記基板上の複数の共振器」との特定事項を備える。
b 引用装置発明は「各微小共振器(3?14)が1つの波長の光を受光するのに最適なサイズであ」るから、引用装置発明の「微小共振器」は、本願発明1でいう「電磁放射の前記波長範囲内の所定の波長で共振するように構成された」ものといえる。
c よって、引用装置発明は、本願発明1の「前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射の前記波長範囲内の所定の波長で共振するように構成された複数の共振器と、」との特定事項を備える。

(エ)本願発明1の「前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と」との特定事項について
a 引用装置発明の「導波手段」は、本願発明1の「導波路」に相当する。そして、引用装置発明の「導波手段」は、「モノリシック半導体基板(1)」上に設けられていると解されるから、引用装置発明は、本願発明1の「前記基板上の導波路」との特定事項を備える。
b 引用装置発明は、「各共振器(3?14)が前記導波手段(2)の近くに最適に配置され」るとともに、「各共振器は特定の波長を対象にするため、直径、厚さおよび導波路に対する間隔が最適化されて光結合効率を最大化」されるものであるから、引用装置発明の「導波手段」は、本願発明1でいう「電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている」ものといえる。
c よって、引用装置発明は、本願発明1の「前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と」との特定事項を備える。

(オ)本願発明1の「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、」との特定事項について
引用装置発明は、上記特定事項を備えない。

(カ)本願発明1の「その上で、前記デバイスは、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数が、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択されている、」との特定事項について
上記特定事項は、上記(オ)で検討した本願発明1の特定事項を前提としているものであるから、引用装置発明は、本願発明1の「その上で、前記デバイスは、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数が、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択されている、」との特定事項も備えない。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明1と引用装置発明とは、
「ある波長範囲の電磁放射を検出するように構成されたデバイスであって、
前記デバイスは、
基板と、
前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射の前記波長範囲内の所定の波長で共振するように構成された複数の共振器と、
前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と
を備える、
デバイス。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は、「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」とともに、「その上で、前記デバイスは、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数が、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択されている」のに対し、
引用装置発明は、そうなっていない点。

ウ 相違点1の判断
(ア)引用文献1は、相違点1に係る構成、すなわち、「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」とともに、「その上で、前記デバイスは、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数が、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択されている」という構成、を開示も示唆もしない。
そうすると、当業者は、引用装置発明及び引用文献1の記載に基づいて、相違点1の構成に至ることはない。
そして、引用文献2の記載を考慮しても、上記の判断が左右されることはない。

(イ)これに対し、原査定は、引用文献1が、次の各記載、すなわち、
i より大きく十分な公差で製造を容易とするために高次で動作する共振器を用いること、
ii 光の入射側から出射側に沿って直径が連続的に増加するように共振器を配置すること、
iii 共振器の直径が共振次数に比例すること、
という記載を有していることをもって、相違点1が開示されている、ないし、開示されていないとしても設計的事項にすぎない旨判断する。

しかしながら、上記の各記載は、いずれも、各共振器の共振次数が異なる構成を開示するものではないから、上記の各記載からは、相違点1のうち、例えば、「共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」という構成を把握できないというべきである。
そして、共振器ペア内の2つの共振器の共振次数をあえて異なるようにするということが、設計的事項であるとする根拠もない。

原査定の判断を支持することはできない。

エ 本願発明1の判断の小括
よって、本願発明1は、引用装置発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1を減縮したものに相当するから、上記(1)と同様の理由により、引用装置発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本願発明7について
ア 本願発明7と引用方法発明との対比
(ア)本願発明7の「基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成され、」との特定事項について
上記(1)ア(ア)?(エ)と同様の理由により、引用方法発明は、本願発明7の上記特定事項を備える。

(イ)本願発明7の「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、」との特定事項について
a 上記(1)ア(オ)と同様に、引用方法発明は、本願発明7の「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」との特定事項を備えない。
b 引用方法発明の「より大きく、十分な公差で製造を容易とするために、共振次数として高次を選択する方法」は、本願発明7の「デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法」に相当する。
c このように、引用方法発明は、本願発明7の「デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、」との特定事項を備えるが、「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」との特定事項を備えない。

(ウ)本願発明7の「前記波長範囲を選択するステップと、」との特定事項について
引用方法発明は、「分光測光器」を設計する方法に係るものであるから、当然に、本願発明7でいう「前記波長範囲を選択するステップ」を備えると解される。

(エ)本願発明7の「前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、」との特定事項について
引用方法発明は、「分光測光器」を設計する方法に係るものであり、「分光測光器」に含まれる「各微小共振器」が「特定の波長を対象にする」ものであるから、上記(ウ)も踏まえると、当然に、本願発明7でいう「前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップ」を備えると解される。

(オ)本願発明7の「前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、」との特定事項について
引用方法発明においても、当然に、「前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当た」るものとされていると解される。

(カ)本願発明7の「その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと」との特定事項について
上記特定事項は、上記(イ)aで検討した本願発明7の特定事項を前提としているものであるから、引用方法発明は、本願発明7の「その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと」との特定事項も備えない。

(キ)本願発明7の「方法」との特定事項について
引用方法発明の「方法」は、本願発明7の「方法」に相当する。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明7と引用方法発明とは、
「基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成された、
デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、を含む、方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点2]
本願発明7は、「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」とともに、「その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップ」を備えるのに対し、
引用方法発明は、そうなっていない点。

ウ 相違点2の判断
相違点2は、上記(1)ウで検討した相違点1と実質的に変わるところはないから、同様の理由で、当業者は、引用方法発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、相違点2の構成に至ることはない。

エ 本願発明7の判断の小括
よって、本願発明7は、引用方法発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本願発明8?11について
本願発明8?11は、本願発明7を減縮したものに相当するから、上記(3)と同様の理由により、引用方法発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本願発明12-7について
ア 本願発明12-7と引用装置発明との対比
(ア)本願発明12-7の「基板と、
前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、前記電磁放射の所定の波長で共振する複数の共振器と、
前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と
を備え、」との特定事項について

上記(3)ア(ア)と同様の理由により、引用装置発明は、本願発明12-7の上記特定事項を備える。

(イ)本願発明12-7の「前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、
基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成され、
前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている、デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと
を含む、方法
に従って選択されている」との特定事項について

上記(3)ア(イ)?(キ)と同様の理由により、引用装置発明は、本願発明12-7の上記特定事項のうち、

「前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、
基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成された、
デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、
を含む方法
に従って選択されている」との特定事項を備え、

「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」とともに、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、「その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと」を含む方法に従って選択されているとの特定事項を備えない。

(ウ)本願発明12-7の「デバイス」との特定事項について
引用装置発明の「分光測光器」は、本願発明12-7の「デバイス」に相当する。

イ 一致点及び相違点の認定
上記アによれば、本願発明12-7と引用装置発明とは、
「基板と、
前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、前記電磁放射の所定の波長で共振する複数の共振器と、
前記基板上の導波路であって、電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路と
を備え、
前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、
基板と、前記基板上の複数の共振器であって、前記複数の共振器のそれぞれが、電磁放射のある波長範囲内の所定の波長で共振する複数の共振器と、前記基板上の導波路であって、前記電磁放射を前記複数の共振器に案内するために前記複数の共振器と結合されている導波路とを備え、前記波長範囲の電磁放射を検出するように構成された、
デバイスにおける前記複数の共振器の共振次数を選択する方法であって、
前記波長範囲を選択するステップと、
前記波長範囲から前記複数の共振器のそれぞれのためのターゲット波長である前記所定の波長を決定するステップと、
前記複数の共振器のそれぞれの共振器の共振波長が、前記共振器のための前記ターゲット波長に当たり、
を含む、方法
に従って選択されているデバイス。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点3]
本願発明12-7は、「前記複数の共振器は、隣接する波長で共振するように構成された2つの共振器をそれぞれが含む複数の共振器ペアを含み、それぞれの共振器ペア内の前記2つの共振器は異なる共振次数で動作するよう構成されている」とともに、前記導波路に沿った前記複数の共振器のそれぞれの共振次数が、「その上で、前記複数の共振器のそれぞれの前記共振次数を、前記複数の共振器への光の結合を最大化するように選択するステップと」を含む方法に従って選択されているのに対し、
引用装置発明は、そうなっていない点。

ウ 相違点3の判断
相違点3は、上記(1)ウで検討した相違点1及び上記(3)ウで検討した相違点2と実質的に変わるところはないから、同様の理由で、当業者は、引用装置発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、相違点3の構成に至ることはない。

エ 本願発明12-7の判断の小括
よって、本願発明12-7は、引用装置発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本願発明12のうち、請求項8?11を引用している部分について
これらの部分は、本願発明12-7を減縮したものに相当するから、上記(5)と同様の理由により、引用装置発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)原査定の拒絶の理由についての小括
以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。

6 第1当審拒絶理由に対する判断
(1)明確性要件違反(上記3(2)エ)について
平成31年2月21日提出の手続補正書によって特許請求の範囲が補正されたことにより、請求項1?12の記載は明確となった(なお、さらに平成31年3月22日に手続補正書が提出されているが、請求項1?12の記載は補正されていない。)。
よって、この拒絶の理由は解消した。

(2)サポート要件違反、委任省令要件違反及び実施可能要件違反(上記3(2)ア?ウ)について
上記各理由は、いずれも、各請求項に記載された課題解決手段では、各発明の課題を解決することはできない、という認定・判断に由来するものである。
これに対し、請求人は、平成31年2月21日提出の意見書において、「隣接する波長で動作する2つのディスク共振器の両方を同じように次数を大きくすると、両方のディスク共振器の寸法が大きくなるので、一方のディスク共振器の次数だけを大きくした場合に比べ、ディスク共振器全体のサイズが大きくなってしまう。これに対し、本願発明では、次数を異ならせることで、歩留まりとディスク共振器全体のサイズとの両方に関する要求を満たすように設計できる。」旨主張した。
しかるに、この主張を踏まえれば、当業者は、発明の詳細な説明及び図面の記載並びに技術常識に照らして、各請求項に記載された課題解決手段によって各発明の課題を解決できることを認識できると認めるのが相当である。
したがって、上記各理由は成り立たない。

7 第2当審拒絶理由に対する判断
上記理由は、平成31年2月21日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項13の記載が明確でないとするものであるが、平成31年3月22日提出の手続補正書によって、当該請求項13は削除された。
よって、この拒絶の理由は解消した。

8 むすび
以上のとおり、原査定の理由、第1当審拒絶理由及び第2当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2014-535023(P2014-535023)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 536- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 下村 一石廣崎 拓登  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 山村 浩
星野 浩一
発明の名称 共振器の最適化  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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