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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F25B
管理番号 1350549
審判番号 不服2017-14531  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-02 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2015-523063号「ブレイトンサイクル冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月30日国際公開,WO2014/018041,平成27年8月13日国内公表,特表2015-523538号,請求項の数(13)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 経緯の概略
本願は,2012年7月26日を国際出願日とする出願であって,平成27年12月10日付けで拒絶の理由が通知され,平成28年3月15日に意見書及び手続補正書が提出された。その後,平成28年8月31日付けで拒絶の理由が通知され,平成28年12月6日に意見書が提出されたが,平成29年5月24日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し,平成29年10月2日に拒絶査定不服審判が請求され,平成30年7月11日付けで拒絶の理由が通知され,平成30年10月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成30年11月29日付けで拒絶の理由が通知され,平成31年2月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明(以下,請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は,平成31年2月18日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1?13は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
200Kよりも低い温度の冷却を行うブレイトンサイクル冷却装置であって,
室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切る底部と,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する円筒状の側壁とを備えたカップ型の往復ピストンを有する,ブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項2】
前記ピストンの長さは,前記ピストンの直径よりも短い,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項3】
前記ピストンの底部の厚さは,前記ピストンの直径の25%よりも薄い,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項4】
前記ピストンは,高温端に駆動ステムを有し,空圧的な力または機械的な力が前記駆動ステムに作用して,前記ピストンを往復運動させる,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項5】
ガスは,高圧によって前記ピストンの低温端へ導かれ,ロータリーバルブを介して低圧へ排出される,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項6】
前記ピストンは,可変速度で往復運動する,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項7】
前記円筒状の側壁の内側は,少なくとも部分的に排気される,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項8】
前記ピストンの底部は,少なくとも80%の非金属材料を含む,請求項1に記載のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項9】
200Kよりも低い温度の冷却を行うガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置であって,
室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切る底部と,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する円筒状の側壁とを備えたカップ型の往復ピストンと,
前記ピストンの前記底部の高温端に取り付けられた駆動ステムと,を有するガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項10】
吸気バルブおよび排気バルブが,前記ピストンが前記シリンダの低温端の近くにあるときに高圧ガスを入れ,前記ピストンが前記シリンダの高温端の近くにあるときに低圧へガスを排気するために,前記シリンダの低温端に位置する,請求項9に記載のガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項11】
ロータリーバルブが,前記ピストンが前記シリンダの低温端の近くにあるときに高圧ガスを導き,前記ピストンが前記シリンダの高温端の近くにあるときに低圧へガスを排気するために,前記シリンダの低温端に位置する,請求項9に記載のガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項12】
前記ピストンは,可変速度で往復運動する,請求項9に記載のガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。
【請求項13】
ダブルバンパーは前記駆動ステムによって作動される,請求項9に記載のガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。」

第3 原査定の概要
原査定(平成29年5月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。すなわち,本願発明1?13は,以下の引用文献1?5に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 米国特許出願公開第2011/0219810号明細書
2 特開2006-274939号公報(周知技術を示す文献)
3 特開2006-275120号公報(周知技術を示す文献)
4 特表2003-523496号公報
5 特開平06-042405号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審にて通知した拒絶の理由の概要
当審にて通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。
1 平成30年7月11日付け拒絶理由通知
本件出願は,特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため,特許法36条6項1号及び同条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(1) 本願発明1,9は,具体的にどのような構成を備えているのか不明である。この点は,本願発明2?8,10?13についても同様である。

(2) 請求項2の「前記ピストンの長さ」が,具体的にどの寸法を示しているのか明確でない。

(3) 請求項8の「前記ピストンの底部は,少なくとも80%の非金属材料を含む」点に関し発明の詳細な説明には具体的な裏付けがないから,本願発明8は発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また,本願発明8における「ピストンの底部」が「底部キャップ」を意味しているならば,現在の記載ではその点が明確でない。

2 平成30年11月29日付け拒絶理由通知
請求項8の「前記ピストンの底部は,少なくとも80%の非金属材料を含む」点に関し発明の詳細な説明に明示がないから,本件出願は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

第5 原査定についての判断
1 引用文献,引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1には,以下の事項が記載されている。なお,訳は,引用文献1に対応する日本語特許公報(特表2013-522576号公報)による。
・「GAS BALANCED CRYOGENIC EXPANSION ENGINE」(表紙左欄)
(ガス圧を均衡させた極低温膨張エンジン(【発明の名称】))
・「[0002] This invention relates to an expansion engine operating on the Brayton cycle to produce refrigeration at cryogenic temperatures.」
(本発明は,極低温冷却を提供する,ブレイトンサイクルで運転する膨張エンジンに関する。(【0001】))
・「[0008] It is an object of the present invention to achieve good efficiency with a relatively light weight, compact, and reliable engine. Another objective is to have an engine that can be adapted to cooling a large mass from room temperature to a cryogenic temperature while fully using the compressor output, or optimized to produce refrigeration over a small range of cryogenic temperatures. A final objective is to have a Brayton cycle engine in the same size range as present GM cycle refrigerators so that the cold gas flow from the engine can be used to cool distributed loads.」
(本発明の目的は,比較的軽量でコンパクトな,信頼性の高いエンジンを実現することである。本発明のもう1つの目的は,コンプレッサの出力をフル利用しつつ,大質量を室温から極低温へと冷却するエンジン,あるいは,狭い極低温範囲において冷凍を提供するのに最適なエンジンを提供することである。本発明の最終目的は,現行のGMサイクル冷凍機と同様の大きさのブレイトンサイクルエンジンを提供し,これにより,エンジンからの低温ガスの流れを,分散した負荷を冷却するために使用できるようにすることである。(【0008】))
・「[0009] The present invention combines features of earlier designs in new ways to achieve good efficiency in relatively simple designs that have a small pressure difference between the warm and cold ends of the piston, a mechanically or pneumatically actuated drive stem, and opening and closing of the inlet and outlet valves that is coordinated with the piston position. … Pressure at the warm end of the piston, around the drive stem, can be kept close to the pressure at the cold end of the piston, while the piston is moving, by use of check valves connected between the warm end of the piston and the compressor supply and return lines, a regenerator connected between the warm and cold ends, or active valves that use ports in the same rotary or shuttle valves that actuate the inlet and outlet valves.」
(本発明は,従来的構造の特徴を新しい方法で組み合わせ,比較的シンプルな構造で高効率を実現するものであり,ピストンの低温側と高温側との圧力差が少なく,機械的にまたは空気圧によってドライブステムを作動させ,ピストンの位置に合わせて吸気バルブと排気バルブを開閉する構造になっている。…ピストンの作動中,ドライブステム周辺のピストン高温側の圧力は,ピストン低温側の圧力に近い圧力に保持される。これは,ピストンの高温側とコンプレッサの供給ラインおよび戻りラインとを連結するチェックバルブ,または高温側と低温側とを連結する再生器,あるいはアクティブバルブ(吸気および排気バルブを作動するのと同じロータリバルブまたはシャトルバルブのポートを使用する)の働きによるものである。(【0009】))
・「[0018] FIG. 1 is a cross section/schematic view of engine assembly 100 . An option A and an option B are shown; option A will be described first. Piston 1 reciprocates in cylinder 6 which has a cold end cap 9 , warm mounting flange 7 , and warm cylinder head 8 . Drive stem 2 is attached to piston 1 and reciprocates in drive stem cylinder 69 . The displaced volume at the cold end, DVc, 3 , is separated from the displaced volume at the warm end, DVw, 4 , by piston 1 and seal 50 . The displaced volume above the drive stem, DVs, 5 , is separated from DVw by seal 51 . Gas in DVs cycles in pressure from high pressure Ph to low pressure Pl as valves V 1 , 12 , and V 2 , 13 , alternately connect DVs to the high pressure supply line, 30 , and the low pressure return line, 31 . Refrigeration is produced when inlet valve Vi, 10 , is opened with DVc at a minimum, pushing piston 1 up, with DVc at Ph, against balancing pressures in DVw and DVs, then closing Vi, opening Vo, 11 , expanding the gas in DVc as it flows out to Pl, cooling as it expands. Gas at Pl is pushed out of DVc as piston 1 moves back towards cold end 9 . Cold gas flowing out through Vo passes through line 35 to heat exchanger 41 , where it is heated by the load being cooled, then flows through line 36 to counter-flow heat exchanger 40 where it cools incoming gas at Ph, prior to the high pressure gas flowing through line 34 to Vi.
[0019] At the time that Vi is opened there is gas at Ph in DVs and gas at Pl in DVw. Admitting high pressure gas to DVc pushes the piston up, increasing the pressure in DVw toward Ph, and DVs to a pressure above Ph until V 2 is opened, connecting DVs to Pl through line 33 . When the pressure in DVw reaches Ph gas flows out through check valve CVh, 16 , to high pressure line 30 . In effect work is being done on the gas in DVw, equivalent the work done in the generator of a flywheel drive type engine. The area of the drive stem has to be sufficient for the force balance between Ph, minus the pressure drop in the heat exchanger, on the cold end of the piston to exceed Ph acting on the warm end of the piston in DVw, and Pl acting on the stem, and seal friction, for the piston to move up. The speed at which the piston moves is proportional to the force imbalance. With the piston at the top of the stroke Vi is closed, then Vo is opened and V 2 is closed, then V 1 is opened. With gas at Ph in DVs and at Pl in DVc, the piston starts to move down, the pressure in DVw drops to Pl, and is maintained at Pl while the piston moves down as gas flows through check valve CV 1 , 17 , from line 31 at Pl. With DVc at a minimum, valve V 1 is closed, completing the cycle. In one embodiment of this engine a multi-ported rotary valve contains ports for V 1 and V 2 and ports that activate lifters, as shown in FIG. 2 , that open and close Vi and Vo.
[0020] Embodiment 100 is shown with an option B that replaces check valves CVh, 16 , and CV 1 , 17 , with active valves V 3 , 14 , and V 4 , 15 . A rotary valve can have ports to implement valves V 1 , V 2 , V 3 , and V 4 , and to actuate opening and closing Vi and Vo.」
(図1は,エンジンアセンブリ100の断面図および回路図である。オプションAとオプションBとが示されているが,まずオプションAから説明する。ピストン1は,低温側キャップ9と,高温側取付フランジ7と,高温側シリンダヘッド8とを備えるシリンダ6内を往復する。ピストン1には,ドライブステム2が取り付けられており,ドライブステム2はドライブステム用シリンダ69内を往復する。低温側の変位容積部3(DVc)は,ピストン1およびシール50によって,高温側の変位容積部4(DVw)から分離される。ドライブステム2の上の変位容積部5(DVs)は,シール51によって,高温側の変位容積部4(DVw)から分離される。バルブ12(V1)とバルブ13(V2)が,高圧の供給ライン30と低圧の戻りライン31に,変位容積部5(DVs)をそれぞれ交互に接続するため,変位容積部5(DVs)内のガス圧は,周期的に高圧(Ph)と低圧(Pl)の間で変化する。低温側の変位容積部3(DVc)が最小容積の状態で,吸気バルブ10(Vi)が開き,高圧となった変位容積部3(DVc)が,変位容積部4(DVw)および変位容積部5(DVs)の平衡圧力に対抗して,ピストン1を押し上げ,その後,給気バルブ10(Vi)が閉じて排気バルブ11(Vo)が開き,低圧側にガスが流れ出るにつれ,変位容積部3(DVc)内のガスが膨張しながら冷えるため,冷却が生ずる。ピストン1が低温側端部9へと押し戻されるにつれ,低圧のガスは変位容積部3(DVc)から排出される。冷たいガスは,排気バルブ11(Vo)から流れ出て,ライン35を通って熱交換器41に至り,ここで冷却される負荷により熱せられ,その後,ライン36を通って逆流熱交換器40に至り,この逆流熱交換器40で,ライン34通って吸気バルブ10(Vi)へ向かう高圧流入ガスを冷却する。
吸気バルブ10(Vi)が開いた時点で,変位容積部5(DVs)内のガスは高圧,変位容積部4(DVw)内のガスは低圧である。変位容積部3(DVc)に高圧ガスが入ることにより,ピストン1は押し上げられ,変位容積部4(DVw)内の圧力を高圧へと,変位容積部5(DVs)内の圧力を超高圧へと増加させるが,これは,バルブ13(V2)が開き,ライン33を通じて変位容積部5(DVs)が低圧側と連結するまで継続する。変位容積部4(DVw)内の圧力が高圧に達すると,ガスはチェックバルブ16(CVh)を通って,高圧ライン30へと流れ出る。実質的に,フライホイールドライブ型エンジンのジェネレータで行われるのと同等の仕事が,変位容積部4(DVw)内のガスにより行われる。ドライブステム2の面積は,ピストン低温側の熱交換器における圧力低下を差し引いても,変位容積部4(DVw)内でピストン高温側に作用する高圧を上回る,ピストンの低温側の高圧と,ピストンが上昇する際の,ステムに作用する低圧およびシール摩擦との間の力平衡に十分なものである必要がある。ピストン1が動くスピードは,力の不均衡に比例する。ピストン1がストロークの最上端にある状態で,吸気バルブ10(Vi)が閉じ,その後,排気バルブ11(Vo)が開いてバルブ13(V2)が閉じ,続いてバルブ12(V1)が開く。変位容積部4(DVw)内のガスが高圧,変位容積部3(DVc)内のガスが低圧になると,ピストン1は降下を開始し,変位容積部4(DVw)内の圧力は低圧まで下がる。そして,ピストン1が降下し続け,ガスがチェックバルブ17(CVl)を通って低圧のライン31から流れる間,変位容積部4(DVw)内の圧力は低圧に維持される。変位容積部3(DVc)が最小容積になると,バルブ12(V1)は閉じ,サイクルが完了する。このタイプのエンジンの一態様においては,マルチポートのロータリバルブが,バルブ12,13(V1,V2)用のポートを含み,図2に示すように,吸気バルブ10(Vi)および排気バルブ11(Vo)を開閉するリフタを駆動する。
エンジンアセンブリ100の実施態様には,さらにオプションBが示される。このオプションBは,チェックバルブ16(CVh)および17(CVl)を,アクティブバルブ14(V3)および15(V4)に置き換えたものである。ロータリバルブを設けて,バルブ12?15(V1?V4)を作動し,吸気バルブ10(Vi)および排気バルブ11(Vo)を開閉する,複数のポートを備えるようにすることも可能である。(【0012】,【0013】))
・「[0032] … With the exception of engine 400 the engines have been sized to cool down a mass from room temperature to about 30 K assuming a maximum speed when warm of 6 Hz, and decreasing with temperature so the engines use the assumed flow rate at the assumed pressures throughout most of the cool down. 」
(エンジン400を除いた他のエンジンは,多量のガスを室温から約30Kまでの冷却することが可能であり,暖かい場合は6Hzの最大速度で運転し,温度の低下とともに減速して,エンジンが,冷却のほぼ全般にわたって,想定の圧力と流量で作動するよう設計されている。(【0026】))
イ 上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「室温から約30Kまでの冷却を行うガス圧を均衡させたブレイトンサイクルで運転するエンジンアセンブリ100であって,
高温側の変位容積部4(DVw)と低温側の変位容積部3(DVc)とを仕切り,シリンダ6内を往復するピストン1と,
前記ピストン1の高温端に取り付けられたドライブステム2と,を有するエンジンアセンブリ100。」

(2) 引用文献2?5
ア 引用文献2には,以下の事項が記載されている。
・「【0021】
本実施例1の排気熱回収装置は,排気熱を利用して作動流体を断熱圧縮→等圧受熱→断熱膨張→等圧放熱させて駆動力を得るブレイトンサイクル機関であって,図1に示す如く,吸入した作動流体を断熱圧縮する圧縮機10と,この圧縮機10で断熱圧縮された作動流体に高温流体の熱を等圧力で吸熱させる熱交換器20と,この熱交換器20で等圧受熱された作動流体を断熱膨張させる膨張機30とを備えている。」
・「【0032】
本発明に係る膨張機30は,容積Vexpが一定のシリンダ31と,このシリンダ31内を往復移動するピストン32と,このピストン32を往復移動させるクランクシャフト13及びコネクティングロッド34と,熱交換器20で等圧受熱された作動流体をシリンダ31内に導く吸気流路(作動流体流路)35と,断熱膨張後の作動流体をシリンダ31の外に導く排気流路36とを備えている。」
・「【0096】
先ず,本実施例6の膨張機530は,実施例1の膨張機30と同様のシリンダ31,ピストン32,クランクシャフト13,コネクティングロッド34及び排気流路36を備えており,そのシリンダ31の頂面の略中央に連通孔31aが形成され,そのピストン32の頂面の略中央に弁体押圧部39が突設されている。」
イ 引用文献3には,以下の事項が記載されている。
・「【0001】
この発明は,ブレーキシリンダ用ピストンに関するものであり,過酷な熱的条件の下で高い性能を発揮することが求められるブレーキシリンダ用ピストンに関するものであって,熱的に極めて厳しい条件下でも,安定して高いブレーキ性能を発揮することができるものである。」
・「【0010】
次いで,図面を参照しながら,実施例を説明する。
この実施例のキャリパはアルミ合金(A6061)製であり,したがって,シリンダ1は同アルミ合金製である。ピストン2はピストンベース側の外周に設けた環状溝に弾性シールRを装着した形式のものであり,互いに別体別材の円筒状のパッド側部2aとカップ型のピストンベース側部2bとからなる複合型である。」
ウ 引用文献4には,以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【発明の背景】
本出願は,GMディスプレーサ/蓄熱器における振動の低減に関し,特に,空気圧駆動GMディスプレーサ/蓄熱器における振動低減に関する。GM型の低温冷凍機は,高圧ガス状冷媒を膨張させて極端に低い温度を実現する際の主要な要素として多段ディスプレーサ/蓄熱器を含む。」
・「【0027】
図2aは,上方(頂部)位置にあり,すなわちチャンバ36,38の容積が最大である本発明によるエキスパンダ10’を示している。図2bは,図のようにディスプレーサ14,16が右側に移動した後の,内部容積36,38がほぼなくなる下方(底部)位置にある同じエキスパンダ10’を示している。図1a,1bおよび図2a,2bの実施形態間の主な違いは,従来技術の機械加工された低温デルリンバンパ40が,ディスプレーサ組立体14,16の上方側(高温)に位置する第2のOリングバンパ54と交換されていることである。
【0028】
具体的には,「O」リング54(図4)は溝付きホルダ56内に保持されている。保持器58は,通常デルリンで作られており,Oリング54をホルダ56の溝の中に維持するが,バンパおよび溝に他の断面が使用されるときには必要とされないであろう。ディスプレーサ組立体14,16が上方位置(図2a)から下方位置(図2b)へ移動すると,ディスプレーサ組立体14,16の運動は,駆動ステム18’のフランジ60がバンパ/保持器の組合せ54,58と接触することによって停止させられる。バンパ54は,弾性材料,たとえば,ブナゴムなどのエラストマであり,組立体全体は,ディスプレーサ14,16の往復運動行程のいずれの終了位置でも,ディスプレーサとそれぞれのエンドキャップ42,43とが直接物理的に接触することがないような寸法になっている。
【0029】
エラストマバンパ44,54は,従来技術のデルリンバンパよりもかなり多くのエネルギーを吸収する。往復運動行程の両方の終了位置でエラストマバンパを使用できるため,従来技術(図1a,1b)と比べて,このようなエキスパンダを含む冷却システムの動作時の騒音および振動が大幅に低減される。」
エ 引用文献5には,以下の事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,ヴィルミエヒートポンプと呼ばれる空調用外燃機関の構成を簡素化し加工を容易にするとともに,熱性能を向上させるピストン構造に関するものである。」
・「【0005】図4は上記低温ピストン2の一部を破断して示す正面図であり,同図において,17は軽量化と熱伝導低減のために低温ピストン2に設けられた中空空間で,低温ピストン2の基部に設けられた小孔18を介して第2の中温作動空間4bと連通している。」
・「【0010】ここで,効率よく気体に圧力変化を生じさせて冷暖房を行うには,温度の異なる低温作動空間4aと第2の中温作動空間4bとの間の熱の移動を極力防ぐ必要があり,例えば低温ピストン2においては伝導による熱移動を防ぐために,図4に示すような中空空間17を設けている。
【0011】そして,この中空空間17は小孔18を介して第2の中温作動空間4bと連通されており,これにより,中空空間17の気体の圧力と第2の中温作動空間4bの気体の平均圧力とがほぼ等しくされて,低温ピストン2の肉厚が中空空間17の圧力と,変動する低温作動空間4aの圧力との差圧に耐え得る程度にされている。そして,低温ピストン2は樹脂などの自己潤滑性のあるスライドリング21を介し,金属などで構成される低温シリンダ4の摺動壁19に接し,円滑に往復運動する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来の空調用外燃機関は以上のように構成されているので,例えば低温ピストン2には伝導による熱移動を防ぐべく中空空間17が必要であり,このために金属板の絞り加工や,金属塊の切削加工などを必要とするほか,低温ピストン2と摺動壁19にはともに自己潤滑性がないところから,例えば低温ピストン2に樹脂などの自己潤滑性のある材料で加工されたスライドリング21を介して摺動壁19に沿って往復運動させる必要があった。」
・「【0022】また,17は低温ピストン2Aの伝熱による熱の流れを低減するために,この低温ピストン2A内に形成された中空空間,18はこの中空空間17と第2の中温作動空間4bとを連通する小孔で,その低温ピストン2Aの基部に穿設されている。19は低温シリンダ4の摺動壁,22は低温ピストン2Aと既述のクランク5とを連結するピストンロッドである。」

2 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを,その有する機能に照らして対比してみるに,引用発明における「エンジンアセンブリ100」は,「室温から約30Kまでの冷却を行う…ブレイトンサイクルで運転する」ものであるから,本願発明1と同様に,「200Kよりも低い温度の冷却を行うブレイトンサイクル冷却装置」である。
また,引用発明は「室温から約30Kまでの冷却を行う」ものであるから,引用発明の「高温側の変位容積部4(DVw)」,「低温側の変位容積部3(DVc)」,「シリンダ6」は,それぞれ,本願発明1の「室温に近い空間」,「200Kよりも低い膨張空間」,「室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ」に相当する。
そして,引用発明の「ピストン1」は,「高温側の変位容積部4(DVw)と低温側の変位容積部3(DVc)とを仕切り,シリンダ6内を往復する」ものであるから,本願発明1の「往復ピストン」と,「室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切(り)」,「室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する」「往復ピストン」との限りで一致する。
そうすると,本願発明1と引用発明とは,次の点で一致し,相違する。
(一致点1)
「200Kよりも低い温度の冷却を行うブレイトンサイクル冷却装置であって,
室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切り,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する往復ピストンを有する,ブレイトンサイクル冷却装置。」
(相違点1)
本願発明1は,「往復ピストン」が,室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切る「底部」と,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する「円筒状の側壁」とを備えた「カップ型」のものであるのに対し,引用発明においては,「ピストン1」がそのように構成されていない点。

(2) 判断
引用発明は,「比較的軽量でコンパクトな,信頼性の高いエンジンを実現する」ことを目的としたものであるが(前記1(1)),引用文献1には,軽量化との関係で,ピストン1の形状,構造を変更することに関し特段記載,示唆は認められない。
また,引用文献2?5には,ブレイトンサイクル冷却装置における往復ピストンの軽量化のために,往復ピストンを,ピストン底部及び円筒状の側壁とを備えたカップ型のピストンとする点について,特段記載は認められない(引用文献2には,図10において,ブレイトンサイクル機関に係る膨張機530のシリンダ31内のピストン32が,ピストン底部及び円筒状の側壁とを備えている点が見て取れるにとどまる。引用文献3には,ブレーキシリンダ用ピストンに関し,円筒状のパッド側部2aとカップ型のピストンベース側部2bとからなるピストン2が記載されているのみである。引用文献5には,ヴィルミエヒートポンプと呼ばれる空調用外燃機関に関し,軽量化と熱伝導低減のために,低温ピストン2,2Aに中空空間17を設ける点が記載されているが,カップ型のピストンは記載がない。引用文献4をみても,カップ型のピストンは記載がない。(前記1(2)ア?エ))。
そうすると,引用発明において,ピストン1について,ピストン底部及び円筒状の側壁とを備えたカップ型のピストンとすることについて,動機付けは認められない。
したがって,引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて,相違点1に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものとは認められない。
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

3 本願発明2?8について
本願発明1を特定するための事項をすべて含む本願発明2?8は,さらに限定された事項について検討するまでもなく,本願発明1と同様の理由により,引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

4 本願発明9について
(1) 対比
本願発明9と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明における「エンジンアセンブリ100」は,「ガス圧を均衡させた」ものであるから,本願発明9の「ガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置」に相当し,引用発明の「ドライブステム2」は,本願発明9の「駆動ステム」に相当する。
そして,本願発明1と引用発明との関係を参考にすると(前記2(1)),本願発明9と引用発明とは,次の点で一致し,相違する。
(一致点2)
「200Kよりも低い温度の冷却を行うガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置であって,
室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切り,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する往復ピストンと,
前記ピストンの前記底部の高温端に取り付けられた駆動ステムと,を有するガスバランス型のブレイトンサイクル冷却装置。」
(相違点2)
本願発明9は,「往復ピストン」が,室温に近い空間と200Kよりも低い膨張空間とを仕切る「底部」と,室温および200Kよりも低い温度の間の温度勾配を有するシリンダ内を滑走する「円筒状の側壁」とを備えた「カップ型」のものであるのに対し,引用発明においては,「ピストン1」がそのように構成されていない点。

(2) 判断
相違点2は,前記相違点1と実質的に同じであるから,同様の理由により,本願発明9は,引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

5 本願発明10?13について
本願発明9を特定するための事項をすべて含む本願発明10?13は,さらに限定された事項について検討するまでもなく,本願発明9と同様の理由により,引用発明及び引用文献2?5に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

6 以上のとおりであるから,原査定を維持することはできない。

第6 当審にて通知した拒絶の理由についての判断
1 平成31年2月18日の手続補正書により補正された特許請求の範囲は前記第2のとおりであるところ,当該補正により,本願発明1,9の具体的な構成が明確になった。

2 本願明細書の発明の詳細な説明(特に,【0009】,【0017】【表1】),及び図1,2の記載を総合すると,発明を実施するための形態の「エンジン100」における「ピストン1」の,「カップの底部2」及び「底部キャップ4」,「円筒状のスリーブ3」がそれぞれ,本願発明1?9における「往復ピストン」の「底部」,「側壁」に対応していることがわかる。
以上を前提にすると,本願発明2に係る「ピストンの長さ」とは,「側壁」の長さに「底部」の厚さを加えた長さ(「円筒状のスリーブ3」の長さに「カップの底部2」の厚さと「底部キャップ4」の厚さを加えた長さ)であることがわかる。
そして,本願発明8に係る「ピストンの底部は,少なくとも80%の非金属材料を含む」点について,発明の詳細な説明には,「底部キャップ4」が繊維強化プラスチックのような材料で形成されること(【0009】),「カップの底部2」及び「底部キャップ4」全体に対する「底部キャップ4」の割合が88.9%(=24mm/27mm×100)であること(【0017】【表1】)が記載されており,本願発明8は,発明の詳細な説明において開示されていると認められる。
なお,請求人も同旨を主張している(平成30年10月12日及び平成31年2月18日意見書)。

3 以上のとおりであるから,当審にて通知した拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審にて通知した拒絶の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2015-523063(P2015-523063)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F25B)
P 1 8・ 537- WY (F25B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 宮崎 賢司
窪田 治彦
発明の名称 ブレイトンサイクル冷却装置  
代理人 緒方 雅昭  
代理人 宮崎 昭夫  
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