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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C01G
管理番号 1350578
審判番号 不服2018-10538  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-02 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2015-537320「ソルボサーマル処理によるチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法、ならびに前記混合酸化物を含む電極およびリチウム蓄電池」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月24日国際公開、WO2014/060662、平成28年 1月14日国内公表、特表2016-500635、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月12日(パリ条約による優先権主張 2012年10月17日(FR)フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月4日付けで拒絶理由が通知され、同年10月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成30年3月28日付けで、拒絶査定がされ、これに対し、同年8月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願発明は、平成29年10月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明6」という。)。
「 【請求項1】
少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、非晶形のチタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、
前記ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕する段階と、
破砕後に得られた混合酸化物をか焼する段階と、
を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項2】
チタンおよびニオブ前駆体のソルボサーマル処理を200から250℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項3】
か焼する段階より前に、非晶形の混合酸化物を洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項4】
前記か焼する段階を700から1200℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項5】
前記チタン前駆体が、オキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))、チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH_(3))_(2))_(4))、塩化チタン(TiCl_(4))、チタンブトキシド(Ti(OC_(4)H_(9))_(4))を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項6】
前記ニオブ前駆体が、塩化ニオブ(NbCl_(5))、ニオブエトキシド(Nb(OC_(2)H_(5))_(5))を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、
「この出願については、平成29年 7月 4日付け拒絶理由通知書に記載した理由3によって、拒絶をすべきものです。」
というものであるところ、理由3とは、
「3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
であり、原査定の備考の欄には、以下の記載がある。
「引用文献1には、「少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、非晶形のチタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、得られた混合酸化物をか焼する段階と、を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。」が記載されていると認める。
一方、引用文献1には、「前記ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕する段階」を備えることについては明記されていない。
しかしながら、引用文献2には、チタン-ニオブ混合酸化物を水熱合成(ソルボサーマル処理)した後に「機械的に破砕する」ことにより所期の粒径の酸化物粒子を得ることが記載されている。
そうすると、当業者であれば、引用文献1に記載の発明において所期の粒径の酸化物粒子を得るよう、引用文献2に記載の手段を採用して請求項1に係る発明とすることは通常の創作能力の発揮にすぎない。
…(略)…
そして、請求項2-6においてさらに特定する点は、引用文献1の上記適示箇所に記載されている。
よって、当業者であれば、引用文献1、2に記載の発明に基いて請求項1-6に係る発明とすることに何ら困難はない。」
上記において、
引用文献1は、特開2004-196641号公報、
引用文献2は、特開2010-188226号公報である。

第4 当審の判断
当審は、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない、と判断する。
理由は以下のとおりである。

1.引用文献1の記載事項
引用文献1には、「アナターゼ型結晶組成物およびその製造法」(発明の名称)について、次の記載がある。

「【請求項1】
金属酸化物の含有比率を金属原子の比率(mol%)に換算して表示した場合に50mol%≦Ti≦98.5mol%の範囲の酸化チタンと,1.5mol%≦Nb≦50mol%の範囲の酸化ニオブからなり,アナターゼ型結晶構造を有する固溶体であって,実質的にルチル相を含有しない組成物であることを特徴とするアナターゼ型結晶組成物。」

「【0006】
このような組成のアナターゼ型結晶は,半導性物質としての特性を有する。…(略)…なお,結晶相の同定はX線回折により行い,X線回折により回折ピークとして現れない非晶質相が含まれていてもよい。」

「【0010】
また,好適には,非晶質相を除いて,X線回折による同定において,酸化チタン以外の成分に起因するアナターゼ相以外の結晶相を実質的に含まず,結晶相としてはアナターゼ相単一相であることが好ましい。また,アナターゼ型結晶組成物において,好適には,アナターゼ型結晶を保つためには,チタニア結晶の結晶子径が100nm以下であることが必要である。チタニアの結晶子径が100nm以上になると一部が,ルチル型結晶へ相転移する。アナターゼ型結晶を保つため,70nm以下が好ましい。さらに好ましくは50nm以下がよい。」

「【0033】
実施例 1
チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))を用い,これを溶解した水溶液と,ニオブ化合物として塩化ニオブ(NbCl_(5))をエタノールに溶解した溶液を,チタンとニオブの合計の金属イオンの濃度が0.5mol/Lとなり,かつTi:Nb=100:0,90:10,80:20,70:30,60:40,50:50[mol%]の組成比になるように混合した溶液に,溶液を中和するのに必要な量の2倍の尿素を加え溶解し,混合溶液を調製した。次いで,この得られた混合溶液をステンレス製圧力容器に納めたフッ素樹脂製容器中に収容し,それを回転させることにより内容物を撹拌しながら加熱し,240℃の温度で5時間保持し,水熱反応させた。その後,その得られた生成物を,何れも限外濾過及び/または遠心分離操作により固液分離し,分離後さらに蒸留水を加えて再度撹拌した後,限外濾過及び/または遠心分離操作する工程を繰り返して得られた生成物を洗浄後,60℃で乾燥させた。」

「【0038】
実施例 3
チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))を用い,これを溶解した水溶液と,ニオブ化合物として塩化ニオブ(NbCl_(5))をエタノールに溶解した溶液を,チタンとニオブの合計の金属イオンの濃度が0.1mol/Lとなり,かつTi:Nb=100:0,92.5:7.5,80:20,70:30,60:40,50:50,45:55,40:60,0:100[mol%]の組成比になるように混合した溶液に,溶液を中和するのに必要な量の2倍量のアンモニア水を加え,沈殿物スラリーを含む混合溶液を調製し,ステンレス製圧力容器に納めたフッ素樹脂製容器中に収容した。これ以降の処理は,水熱処理,測定(X線回折,生成物の組成(Ti:Nb)を定量分析,紫外可視光吸収スペクトル)についても,実施例 1と同様な手法にしたがった。ただし,乾燥物はアルミナるつぼに入れ,大気中500?1100℃で電気炉を用いて焼成した。…(略)…
【0039】
…(略)…本発明組成範囲内のいずれの組成の生成粉体の結晶子径も15?35nmの範囲にあった。」

2.引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「アナターゼ型結晶組成物」、すなわち、「酸化チタンと,…酸化ニオブからなり,アナターゼ型結晶構造を有する固溶体であって,実質的にルチル相を含有しない組成物」(請求項1)の製造法の具体例として、実施例1、3などが記載され、その実施例3の製造法は、「チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))を用い,これを溶解した水溶液と,ニオブ化合物として塩化ニオブ(NbCl_(5))をエタノールに溶解した溶液」を「混合した溶液に,溶液を中和するのに必要な量の2倍量のアンモニア水を加え,沈殿物スラリーを含む混合溶液を調製し,ステンレス製圧力容器に納めたフッ素樹脂製容器中に収容し」、「実施例1と同様な手法」で水熱処理を行い、「乾燥物はアルミナるつぼに入れ,大気中500?1100℃で電気炉を用いて焼成」(【0038】)するという方法である。
その「実施例1と同様な手法」の水熱処理とは、容器を「回転させることにより内容物を撹拌しながら加熱し,240℃の温度で5時間保持し,水熱反応させた。その後,その得られた生成物を,何れも限外濾過及び/または遠心分離操作により固液分離し,分離後さらに蒸留水を加えて再度撹拌した後,限外濾過及び/または遠心分離操作する工程を繰り返して得られた生成物を洗浄後,60℃で乾燥させた。」(【0033】)というものである。
なお、引用文献1には、「アナターゼ型結晶組成物」すなわち、「酸化チタンと,…酸化ニオブからなり,アナターゼ型結晶構造を有する固溶体であって,実質的にルチル相を含有しない組成物」には、「非晶質相が含まれていてもよい」(【0006】)ことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、
「チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))を用い、これを溶解した水溶液と、ニオブ化合物として塩化ニオブ(NbCl_(5))をエタノールに溶解した溶液を混合した溶液に、溶液を中和するのに必要な量の2倍量のアンモニア水を加え、沈殿物スラリーを含む混合溶液を調製し、ステンレス製圧力容器に納めたフッ素樹脂製容器中に収容し、その容器を回転させることにより内容物を撹拌しながら加熱し、240℃の温度で5時間保持し、水熱反応させ、その後、その得られた生成物を、何れも限外濾過及び/または遠心分離操作により固液分離し、分離後さらに蒸留水を加えて再度撹拌した後、限外濾過及び/または遠心分離操作する工程を繰り返して得られた生成物を洗浄後、60℃で乾燥させ、乾燥物はアルミナるつぼに入れ、大気中500?1100℃で電気炉を用いて焼成する、酸化チタンと、酸化ニオブからなり、アナターゼ型結晶構造を有する固溶体であって、実質的にルチル相を含有しない、非晶質相が含まれていてもよい、アナターゼ型結晶組成物の製造法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

3.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO_(4))」、「ニオブ化合物として塩化ニオブ(NbCl_(5))」は、それぞれ、本願発明1の「少なくとも1つのチタン前駆体」、「少なくとも1つのニオブ前駆体」に相当するから、引用発明の、これら前駆体を「溶解した溶液を混合した溶液に、溶液を中和するのに必要な量の2倍量のアンモニア水を加え、沈殿物スラリーを含む混合溶液を調製し、ステンレス製圧力容器に納めたフッ素樹脂製容器中に収容し、その容器を回転させることにより内容物を撹拌しながら加熱し、240℃の温度で5時間保持し、水熱反応させ、その後、その得られた生成物を、何れも限外濾過及び/または遠心分離操作により固液分離し、分離後さらに蒸留水を加えて再度撹拌した後、限外濾過及び/または遠心分離操作する工程を繰り返して得られた生成物を洗浄後、60℃で乾燥させ」は、本願発明1の「少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理」に相当する。
そして、引用発明の、組成物の「乾燥物はアルミナるつぼに入れ、大気中500?1100℃で電気炉を用いて焼成する」は、本願発明1の混合酸化物を「か焼する段階」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、
「少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、チタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、
得られた混合酸化物をか焼する段階と、
を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。」
である点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

(相違点1)
ソルボサーマル処理によって得られる「チタンおよびニオブ混合酸化物」が、本願発明1は「非晶形」であるのに対して、引用発明は、「アナターゼ型結晶構造を有する固溶体であって、実質的にルチル相を含有しない、非晶質相が含まれていてもよい、アナターゼ型結晶組成物」である点

(相違点2)
「か焼する」混合酸化物が、本願発明1は、「ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕」した後に得られたものであるのに対して、引用発明は、水熱処理、洗浄、乾燥した後に得られたものである点

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先ず相違点2について検討する。
相違点2について原査定で引用された、引用文献2には、「酸化チタン系光触媒薄膜の製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。

「【請求項1】
ニオブ又はタンタルを0.2?25質量%の割合で含有し、粉末の拡散反射スペクトルにおいて、可視光領域で最大の反射率を示す波長における反射率が50%以上であり、1000?2500nmにおける反射率が可視域の最大反射率の半分以下である酸化チタン系粉末を、平均粒径100nm以下の微粒子に粉砕し、この酸化チタン系微粒子を溶媒に分散させた分散液を基板に塗布した後、乾燥して成膜することを特徴とする光触媒薄膜の製造方法。」

「【0010】
〔酸化チタン系微粒子〕
本発明で用いる酸化チタン系微粒子としては、ニオブ又はタンタルを0.2?25質量%の割合で含有し、乾燥粉末の拡散反射スペクトルにおいて、可視光領域で最大の反射率を示す波長における反射率が50%以上であり、1000?2500nmにおける反射率が可視域の最大反射率の半分以下である酸化チタン系粉末を、平均粒径100nm以下に粉砕・解砕したものを用いる。この平均粒径は、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法などで測定されるもので、液中に分散された状態での値である。後に実施例でその粒度分布の例を示す。微粒子の平均粒径は、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは40nm以下である。100nmを超えると十分な活性が得られにくい。この平均粒径に本質的に下限値は無いが、5nmより細かくするのは現実的に難しい上、活性もそれほど向上は期待できないので、5nm以上が好ましい。」

「【0022】
本発明の酸化チタン系微粒子は、上述の通り、チタンとニオブ又はタンタルの水溶性化合物を出発原料とし、還元剤の共存下でいわゆる水熱反応を行うことによって合成される酸化チタン系粉末を、更にビーズミル、二流体衝突法などにより解砕し、水系溶媒に分散することにより得られる。
…(略)…
【0024】
〔塗布用溶液の作成〕
このようにして得られた酸化チタン系微粒子を分散させた液を基板等に塗布して光触媒薄膜を形成する。
…(略)…
【0027】
〔塗布による光触媒薄膜の作成〕
上記の塗布用溶液を用いて、既に技術的に確立した方法により光触媒薄膜を形成することが出来る。例を挙げれば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、はけ塗り法、含浸法、ロール法、ワイヤーバー法、バーコーター法、ダイコーティング法等が挙げられる。塗布後は、室温(25℃)?200℃で10分?10時間乾燥することが好ましい。」

引用文献2には、「ニオブ又はタンタルを0.2?25質量%の割合で含有」(請求項1)する、「水熱反応を行うことによって合成される酸化チタン系粉末を、更にビーズミル、二流体衝突法などにより解砕し、水系溶媒に分散することにより得られ」(【0022】)た、「酸化チタン系微粒子を分散させた液を基板等に塗布し」た後に「乾燥」して成膜(【0024】、【0027】)することが記載されており、酸化チタン系粉末の「解砕」は、「100nmを超えると十分な活性が得られにくい」(【0010】)ため、「平均粒径100nm以下」(請求項1)とするために行うものであると解される。
そうすると、引用文献2においては、水熱処理で得られたニオブを含む酸化チタン系粉末を、「平均粒径100nm以下」とするように「解砕」(機械的に破砕)し、この粒子を分散した分散液とした後に乾燥することは記載されているが、焼成(か焼)することについては記載も示唆もない。
そして、水熱処理、洗浄、乾燥した後のチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕した後に焼成(か焼)することが、当業者の技術常識であったと認めるに足る証拠もない。
また、引用文献1には、引用発明について「アナターゼ型結晶を保つためには、チタニア結晶の結晶子径が100nm以下であることが必要である。」(【0010】)及び「生成粉体の結晶子径も15?35nmの範囲にあった」(【0039】)こと等、結晶子径についての言及はあるものの、生成粉体の平均粒径については何らの記載も示唆もされてはいない。
そうすると、引用発明において、か焼するチタンおよびニオブ混合酸化物について、水熱処理、洗浄、乾燥した後のチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕した後に得られたものとすることを、当業者が容易に想到し得たことである、ということはできない。

そして、本願発明1では、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項があることによって、発明の詳細な説明【0027】?【0028】及び図1cに記載されるように、「混合酸化物に二つの集団を有する特定の粒度分布を与えることが可能となる」という、引用文献1、2の記載事項からは当業者が予測し得ない格別な作用効果を奏するものである。

(3)まとめ
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用文献1、2の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たということはできず、その余の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明2?6について
本願発明2?6は、本願発明1を引用し、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様な理由から、引用発明及び引用文献1、2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、引用文献1、2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2015-537320(P2015-537320)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C01G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大城 公孝  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 小川 進
菊地 則義
発明の名称 ソルボサーマル処理によるチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法、ならびに前記混合酸化物を含む電極およびリチウム蓄電池  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  

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