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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06F
管理番号 1350625
異議申立番号 異議2018-700287  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-05 
確定日 2019-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6231374号発明「タッチスクリーンパネル用導電粒子、およびこれを含む導電材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6231374号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6231374号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6231374号の請求項1-8に係る特許についての出願は、平成25年12月24日(パリ条約による優先権主張2012年12月31日、韓国、優先権主張2013年8月1日)に出願され、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がされ、平成29年11月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年4月5日に特許異議申立人三田翔により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年7月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である平成30年10月23日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人三田翔は、平成30年12月25日に意見書を提出した。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1のとおりである。
訂正事項1: 特許請求の範囲の請求項1に「前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする」と記載されているのを「導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」に訂正する。
上記訂正事項1に係る訂正前の請求項1-8について、請求項2、4、6及び7はそれぞれ請求項1を直接引用する請求項であり、また、請求項3は請求項2を、請求項5は請求項4を、請求項8は請求項7をそれぞれ引用しており、間接的に請求項1を引用するものであるから、上記訂正事項1により訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-8〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項1に係る特許発明は、導電粒子の変形に関し、「前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする」と特定している。
一方、訂正後の請求項1に係る発明は、「導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」との記載によって、特に括弧書き部分に記載された「破壊」の意味をより明確化して特定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、段落【0037】に「本発明の実施例に係る導電粒子は…(中略)…変曲点以前までは弾性変形が行われ、変曲点より後は塑性変形が主に行われる。」と記載され、また、図7とともに段落【0051】に「図7は電極の間に加わる力が除去される段階であって、異方性導電フィルム用樹脂は硬化が進み、導電粒子は変形した状態をそのまま維持する。」と記載されるから、本件発明の導電粒子が塑性変形することは記載があるが、このとき導電粒子全体が破壊することは記載がない。また、図1の導電粒子の力による圧縮変形状態を示すグラフを参照しても、導電粒子全体の破壊を意味する部分が図1のグラフ中に存在しないことは明らかであるといえる。
よって、訂正事項1に係る「導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項であると認められるから、上記訂正事項1の訂正は、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえない。
そうすると、上記訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1-8に係る発明(以下「本件発明1-8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1-8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

【請求項1】
複数の電極を互いに電気的に接続するタッチパネル用の導電粒子であって、前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極であり、
樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し、
前記導電粒子の平均直径は、4μm?16μmであり、
前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであり、
下記式1によるV値が6≦V≦25であり、
前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする、タッチスクリーンパネル用導電粒子。
(式1)
V(%)=Sv/D*100
(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである。)

【請求項2】
前記被覆層は表面に高さ50nm?500nmの突起を備えることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。

【請求項3】
前記突起が前記被覆層と同一の物質からなることを特徴とする、請求項2に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。

【請求項4】
前記被覆層は、Ni、Sn、Ag、Cu、Pd、Zn、W、P、BおよびAuよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。

【請求項5】
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。

【請求項6】
前記導電粒子はTSP(Touch Screening Panel)用異方性導電フィルム(ACF)に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。

【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項のタッチスクリーンパネル用導電粒子を含む異方性導電材料。

【請求項8】
請求項7の異方性導電材料を含む電子装置。

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1-8に係る特許に対して、当審が平成30年7月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1-8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

イ 請求項1-8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

ウ 請求項1-8に係る特許は、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

エ 請求項1-8に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1-8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

(2)各甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証(特開2011-243456号公報)には、以下の記載がある(下線は、注目箇所に当審が付した。以下同様。)。
(ア) 請求項1
「【請求項1】
基材粒子と、前記基材粒子の表面に設けられており、かつニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層とを有し、
前記ニッケル-ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であり、
導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10?25%圧縮変位したときに、前記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じる、導電性粒子。」

(イ) 請求項5
「【請求項5】
前記基材粒子の粒子径が、2?5μmであり、かつ、
前記ニッケル-ボロン導電層の厚みが、50?300nmである、請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性粒子。」

(ウ) 請求項6
「【請求項6】
ニッケル-ボロン導電層の外表面に突起を有する、請求項1?5のいずれか1項に記載の導電性粒子。」

(エ) 段落【0010】-【0012】
「【0010】
本発明の目的は、電極間の接続に用いた場合に、電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が部分的に割れるので、導電性粒子により接続された電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。
【0012】
本発明のさらに限定的な目的は、導電性粒子により接続された電極に適度な圧痕を形成できる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体を提供することである。」

(オ) 段落【0024】-【0029】
「【0024】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面に設けられており、かつニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層とを有する。該ニッケル-ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量は97重量%以上である。
【0025】
ニッケルを含む導電層を有する導電性粒子により電極間を接続した場合には、電極間の接続抵抗を低くすることができる。本発明に係る導電性粒子は、導電層におけるニッケルの含有量が97重量%以上であるので、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0026】
また、ボロンを含まないニッケル導電層を有する導電性粒子では、該ボロンを含まないニッケル導電層が柔らかすぎて、電極間の接続時に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなることがある。例えば、ニッケルとリンとを含む導電層を有する導電性粒子では、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなりやすい。
【0027】
一方で、接続抵抗を低くするために、又は大きな電流が流れる用途に適するように、ニッケルとリンとを含む導電層の厚みを厚くすると、導電性粒子により接続対象部材又は基板が傷つくことがある。
【0028】
これに対して、本発明では、導電性粒子がニッケル-ボロン導電層を有するだけでなく、更に導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10?25%圧縮変位したときに、上記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じるので、電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる。例えば、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が適度に部分的に割れる。
【0029】
さらに、上記ニッケル-ボロン導電層は適度な硬さを有するので、導電性粒子を圧縮して電極間を接続したとき、電極に適度な圧痕を形成できる。なお、電極に形成される圧痕は、導電性粒子が電極を押してできた電極の凹部である。」

(カ) 段落【0037】
「【0037】
本実施形態の第1の主な特徴は、導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10?25%の圧縮変位したときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じることである(以下、このニッケル-ボロン導電層に割れが生じる導電性粒子の圧縮変位を、圧縮変位1と記載することがある)。すなわち、導電性粒子1,11では、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径をXとしたときに、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が0.8X?0.9Xとなったときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる。例えば、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径が5μmである場合には、導電性粒子1,11を圧縮させて、圧縮方向における導電性粒子1,11の粒子径が4?4.5μmとなったときに、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる。」

(キ) 段落【0046】
「【0046】
基材粒子2は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。導電性粒子1,11を用いて電極間を接続する際には、導電性粒子1,11を電極間に配置した後、一般的に導電性粒子1,11を圧縮させる。基材粒子2が樹脂粒子であると、圧縮により導電性粒子1,11が変形しやすく、導電性粒子1,11と電極との接触面積を大きくすることができる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。」

(ク) 段落【0054】-【0055】
「【0054】
なお、ニッケル-ボロン導電層3,12は、ニッケル及びボロン以外の原子を含んでいてもよい。ニッケル-ボロン導電層3,12は、ニッケル以外の他の金属を含んでいてもよい。
【0055】
上記他の金属として、例えば、金、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、クロム、チタン、アンチモン、ゲルマニウム、カドミウム、パラジウム、ビスマス、タリウム、錫-鉛合金、錫-銅合金、錫-銀合金及び錫-鉛-銀合金等が挙げられる。」

(ケ) 段落【0069】-【0071】
「【0069】
導電性粒子の表面に突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成する方法等が挙げられる。
【0070】
ニッケル-ボロン導電層3,12の厚みは、5?1000nmの範囲内にあることが好ましい。ニッケル-ボロン導電層3,12の厚みのより好ましい下限は10nm、更に好ましい下限は50nm、より好ましい上限は500nm、更に好ましい上限は300nmである。ニッケル-ボロン導電層3,12の厚みが上記下限を満たすと、導電性粒子1,11の導電性を十分に高めることができる。ニッケル-ボロン導電層3,12の厚みが上記上限を満たすと、基材粒子2とニッケル-ボロン導電層3,12との熱膨張率の差が小さくなり、基材粒子2からニッケル-ボロン導電層3,12が剥離し難くなる。
【0071】
ニッケル-ボロン導電層3,12の厚みは、50?300nmであることが特に好ましい。さらに、基材粒子の粒子径が2?5μmであり、かつ、上記ニッケル-ボロン導電層の厚みが、50?300nmであることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制できる。」

(コ) 段落【0086】
「【0086】
本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペースト、異方性導電インク、異方性導電粘接着剤、異方性導電フィルム、又は異方性導電シート等として使用され得る。本発明に係る異方性導電材料が、異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用される場合には、該導電性粒子を含むフィルム状の接着剤に、導電性粒子を含まないフィルム状の接着剤が積層されていてもよい。」

(サ) 段落【0102】-【0103】
「【0102】
(実施例2)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が3.75μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み168.4nm)が設けられた導電性粒子を得た。
【0103】
(実施例3)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が4.75μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Cに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み179.9nm)が設けられた導電性粒子を得た。」

(シ) 段落【0110】
「【0110】
(比較例3)
上記反応温度Xを50℃に変更したこと、並びにニッケルめっき液におけるジメチルアミンボランの濃度を0.92mol/Lから1.7mol/Lに変更したこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み120.5nm)が設けられた導電性粒子を得た。」

(ス) 段落【0122】の表1
表1から、実施例2の圧縮変位1は、15.0%であり、実施例3の圧縮変位1は、19.5%であり、比較例3の圧縮変位1は、17.1%であることが読み取れる。

(セ) 図7
図7の実施例2のn1?n3の3つのグラフから、実施例2の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.0mNであることが読み取れる。

(ソ) 図8
図8の実施例3と比較例3それぞれのn1?n3の3つのグラフから、実施例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、4.1mNであり、比較例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.6mNであることが読み取れる。

以上によれば、甲第1号証は、以下の発明(以下「甲1発明」という。)を開示していると認められる。

「導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が部分的に割れるので、導電性粒子により接続された電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子であって、
導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10?25%の圧縮変位したときに(圧縮変位1)、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じるものであり、
基材粒子2は、樹脂により形成された樹脂粒子であり、
ニッケル-ボロン導電層3,12は、ニッケル及びボロン以外の他の金属を含んでいてもよく、上記他の金属として、例えば、金、銀、パラジウム、銅、亜鉛、錫、等が挙げられ、
基材粒子の表面に無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成する方法によって、導電性粒子の表面に突起を形成し、
基材粒子の粒子径が2?5μmであり、かつ、上記ニッケル-ボロン導電層の厚みが、50?300nmであり、
異方性導電フィルム又は異方性導電シート等のフィルム状の接着剤として使用され、
実施例2は、粒子径が3.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み168.4nm)が設けられた導電性粒子であり、
実施例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み179.9nm)が設けられた導電性粒子であり、
比較例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み120.5nm)が設けられた導電性粒子であり、
実施例2の圧縮変位1は、15.0%であり、実施例3の圧縮変位1は、19.5%であり、比較例3の圧縮変位1は、17.1%であり、
実施例2の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.0mNであり、実施例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、4.1mNであり、比較例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.6mNである、
導電性粒子。」

イ 甲第2号証
甲第2号証(J Y He,et al.,“Fracture of micrometre-sized Ni/Au coated polymer particles,” JOURNAL OF PHYSICS D:APPLIED PHYSICS,英国,IOP PUBLISHING Ltd,2009年3月26日,42(2009)085405,p.1-5)には、特に、1ページの「アブストラクト」、1ページ左欄12-18行、2ページ左欄2-14行、2頁右欄13行-3ページ右欄11行、図2,図4(b)-(d)の記載を参照すると、表面を内層の厚さ約50nm/外層の厚さ約25nmのニッケル/金被覆層でコーティングした、直径3.8μm(被覆層を含めると直径3.95μm)のポリマー粒子は、変形初期の「StageI」では弾性変形すること(3ページ左欄17-18行、同ページ同欄24-27行の記載を参照)、「StageII」以降では、金属層のクラックと、金属層の剥離が発生して塑性変形すること(3ページ左欄28-38行の特に"a residual deformation"(残留変形)の記載を参照)が記載されているから、変曲点以降では、導電性粒子は「破壊」されると認められる。

ウ 甲第3号証
甲第3号証(関東学院大学表面工学研究所編、「図解 最先端表面処理技術のすべて」、初版、日本、株式会社工業調査会、2006年12月25日、p.64-67)には、特に、66ページ左欄13行-67ページ左欄30行、図5-図6(特に、図6の写真C、D)の記載を参照すると、ニッケル-金の2層被覆した粒子径4μmの樹脂粒子では、めっき膜厚が薄いと皮膜の割れやはがれが生じやすいことが記載されるとともに、図6の写真A-Dはいずれも不鮮明であるものの、写真C、Dでは皮膜が割れていることが記載されていると認められるから、変曲点以降では、導電性粒子の皮膜は「破壊」されると認められる。しかし、導電性粒子の全体が「前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」ことは記載されていない。

エ 甲第4号証
甲第4号証(特開2003-157717号公報)には、特に、段落【0008】、【0014】-【0015】、【0018】、【0026】、【0034】-【0035】、【0043】-【0046】、【0059】-【0060】、【0064】-【0065】、【0070】、図11(A)、(B)の記載を参照すると、甲第4号証の「比較例5」は、平均粒径5.2μmの「基材粒子1」の表面を、ニッケルと金の2層めっきした導電性粒子であって、圧縮歪み曲線において急激な歪みが観測される点以降では、めっき皮膜にクラックが生じることが記載されているから、変曲点以降では、導電性粒子のめっき皮膜は「破壊」されると認められる。
一方、甲4の「実施例1」は、「比較例5」と同一の「基材粒子1」の表面を、「銅」めっきした導電性粒子であって、少なくとも、変曲点以降で導電性粒子が「破壊」される旨の記載はない。
しかし、仮に、銅は延性が高い金属であることが技術常識であり、粒子の変形に合わせて被覆銅が伸びることで、破壊が生じないと推測できるとしても、「実施例1」の導電性粒子については、変曲点より前では弾性変形することも記載がないから、「前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」ものとは認められない。

(3)当審の判断
ア 特許法第36条第6項第2号について
(ア) 取消理由通知では、用語「破壊」の通常の意味からは、「樹脂微粒子」と「被覆層」からなる複合系導電粒子である本件発明1の導電粒子の「破壊」には、亀裂や割れ、クラックなどで「被覆層」だけが壊れる場合や、「剥離」するような場合も含まれると理解できる。しかし、「破壊」をこのように理解した場合、技術常識を参酌すると、本件特許明細書において、「ニッケル」で被覆した導電性粒子である、本件特許明細書の実施例1-9、11も、「銅」で被覆した導電性粒子である、本件特許明細書の実施例10も、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする」ものに該当しないと解されるから、請求項1における「塑性変形(破壊を除く)すること」が、具体的にどのような変形を規定しているのかが、明細書及び図面並びに出願時の技術常識を考慮しても不明確であり、また、請求項1を引用する請求項2-8についても同様である旨、通知した。
これに対して、前記「2(1)」のとおり、本件訂正前の「塑性変形(破壊を除く)すること」は、本件訂正により「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」であることが特定された。
そして、一般に、主にニッケルで被覆した導電性粒子では、圧縮変形によって変曲点以降では、被覆層にクラックや剥離などの「破壊」が生じることが「技術常識」であるとしても、クラックなどの被覆層の一部の破壊が、「導電粒子全体が破壊される場合」に含まれないことは明らかであるから、上記の技術常識を参酌しても、本件特許明細書において、少なくとも、「ニッケル」で被覆した導電性粒子である、本件特許明細書の実施例1-9、11については、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」ものに該当しないとはいえない。
そして、本件訂正により、例えば、「樹脂微粒子」と「被覆層」からなる複合系導電粒子において、被覆層の一部にクラックが生じるような塑性変形や、被覆層のクラックなしに塑性変形するような場合が、本件発明1の導電粒子が「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」に含まれていることが明確にされたことで、本件発明1の塑性変形の変形状態の技術的な意味が明確になったものと認められるから、請求項1は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2-8についても同様に、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。

(イ) 平成30年12月25日付け意見書について
特許異議申立人は、意見書において、「導電粒子全体が破壊」することが、どのような破壊を示すのか、本件の明細書に記載がなく、明細書及び図面を考慮しても不明確である旨、及び、参考資料1-4及び甲第2号証記載の技術常識によれば「導電粒子の破壊」はクラックを含む金属薄膜の破壊を示すと解される旨を主張する。
しかし、上記「2(2)」記載のとおり、訂正事項1に係る「導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項であると認められる。そして、上記(ア)記載のとおり、本件訂正により「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」と特定されたことで、例えば、導電粒子の被覆層の一部にクラックが生じるような塑性変形は、本件発明1の導電粒子が「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」に含まれることが明確にされ、塑性変形の変形状態の技術的な意味が明確になったものと認められるから、申立人の主張は採用できない。

イ 特許法第36条第6項第1号について
(ア) 特許法第36条第6項第1号(その1)について
取消理由通知では、本件特許明細書に「破壊を除く」塑性変形は記載されておらず、技術常識を参酌すると、本件特許明細書の実施例1-11も、請求項1の「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする」ものには該当しないと解され、請求項1を引用する請求項2-8についても同様である旨通知した。
これに対して、前記「2(1)」のとおり、本件訂正前の「塑性変形(破壊を除く)すること」は、本件訂正により「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」であることが特定された。
そして、前記「2(2)」のとおり、「導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項であると認められるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであるといえる。
また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2-8についても同様に、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものであるといえる。

(イ) 特許法第36条第6項第1号(その2)について
取消理由通知では、本件特許明細書の「実施例6」の「被覆層の層厚90nm」は、請求項1の「前記被覆層の厚さは、100nm?250nm」の数値範囲外であって、「実施例6」における「変曲点発生力」は「1.9(mN)」であることから、請求項1の「前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであり」、「前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである」という事項は、発明の詳細な説明中に記載されたものとはいえず、請求項2-8についても同様である旨通知した。
しかし、特許法第36条第6項第1号は、請求項の記載が実質的に明細書に開示した範囲を超えた場合に適用されるものであり、明細書の具体的な開示である実施例の記載の一部が請求項の記載範囲を超えたとしても、特許法第36条第6項第1号違反とはならない。そして、本件特許明細書の段落【0013】、【0042】、【0075】に、変形増加率の増加が開始する時点である「変曲点発生力が1.0mN?15mNである」ことが明確に開示されているから、請求項1の「前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであり」、「前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである」という事項は、発明の詳細な説明中に記載されたものではないとはいえない。請求項1を直接または間接的に引用する、請求項2-8についても同様である。

ウ 特許法第36条第4項第1号について
取消理由通知では、技術常識を参酌すると、「ニッケル」で被覆した導電性粒子である本件特許明細書の実施例1-9、11も、「銅」で被覆した導電性粒子である実施例10も、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(破壊を除く)することを特徴とする」ものに該当しないと解され、当業者が、本件特許に係る明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識とに基づいて、本件発明1を実施しようとした場合に、どのように実施するかを理解できないから、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されたものとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり、請求項1を引用する、請求項2-8についても同様である旨、通知した。
これに対して、前記「2(1)」のとおり、本件訂正前の「塑性変形(破壊を除く)すること」は、本件訂正により「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)すること」であることが特定された。
そして、前記「ア(ア)」のとおり、一般に、主にニッケルで被覆した導電性粒子では、圧縮変形によって変曲点以降では、被覆層にクラックや剥離などの「破壊」が生じることが「技術常識」としても、被覆層の一部の破壊にとどまるような塑性変形は、訂正後の「導電粒子全体が破壊される場合」に含まれないことは明らかであるから、上記の技術常識を参酌しても、本件特許明細書において、「ニッケル」で被覆した導電性粒子である、本件特許明細書の実施例1-9、11が、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」ものに該当しないとはいえない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また、請求項1を直接または間接的に引用する、請求項2-8についても同様に、当業者が請求項2-8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

エ 特許法第29条第2項について
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア) 甲1発明の「電極間の接続抵抗を低くすることができる導電性粒子」は、本件発明1の「複数の電極を互いに電気的に接続するタッチパネル用の導電粒子であって、前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極であ」る「タッチスクリーンパネル用導電粒子」と、「複数の電極を互いに電気的に接続する導電粒子であ」る「導電粒子」である点で共通するといえる。

(イ) 甲1発明の「樹脂により形成された樹脂粒子であ」る「基材粒子の表面に無電解めっきによりニッケル-ボロン導電層を形成し」ていることは、本件発明1の「樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し」ていることに相当する。

(ウ) 甲1発明の「基材粒子の粒子径が2?5μmであり、かつ、上記ニッケル-ボロン導電層の厚みが、50?300nmであり」、「実施例2は、粒子径が3.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み168.4nm)が設けられた導電性粒子であり、実施例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み179.9nm)が設けられた導電性粒子であり、比較例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み120.5nm)が設けられた導電性粒子であ」ることは、甲第1号証において「導電性粒子の平均直径」が「基材粒子の粒子径+2×(導電層の厚み)」で計算できることを考慮すると、本件発明1の「前記導電粒子の平均直径は、4μm?16μmであ」ることに相当する。

(エ) 甲1発明の「ニッケル-ボロン導電層の厚みが、50?300nmであり」、「実施例2は、粒子径が3.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み168.4nm)が設けられた導電性粒子であり、実施例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み179.9nm)が設けられた導電性粒子であり、比較例3は、粒子径が4.75μmである樹脂粒子の表面にニッケル-ボロン導電層(厚み120.5nm)が設けられた導電性粒子であ」ることは、本件発明1の「前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであ」ることに相当する。

(オ) 甲1発明の、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じる「圧縮変位1」は、本件発明1の「V値」に相当する。
よって、甲1発明の「導電性粒子1,11を圧縮した場合に、導電性粒子1,11が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子1,11の粒子径の10?25%の圧縮変位したときに(圧縮変位1)、ニッケル-ボロン導電層3,12に割れが生じるものであり」、「実施例2の圧縮変位1は、15.0%であり、実施例3の圧縮変位1は、19.5%であり、比較例3の圧縮変位1は、17.1%であり、実施例2の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.0mNであり、実施例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、4.1mNであり、比較例3の圧縮変位1での圧縮荷重値は、2.6mNである」ことは、本件発明1の「下記式1によるV値が6≦V≦25であり」、「(式1)V(%)=Sv/D*100(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである。)」ことに相当する。

よって、本件発明1と甲1発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

[一致点]
「複数の電極を互いに電気的に接続する導電粒子であって、
樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し、
前記導電粒子の平均直径は、4μm?16μmであり、
前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであり、
下記式1によるV値が6≦V≦25であり、
前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする、導電粒子。
(式1)
V(%)=Sv/D*100
(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである。)」

[相違点1]
本件発明1では、導電粒子が「タッチパネル用」の「タッチスクリーンパネル用導電粒子」であって、複数の電極が「前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極」であるのに対して、甲1発明では、導電粒子が「タッチパネル用」の「タッチスクリーンパネル用導電粒子」ではなく、複数の電極が「前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極」ではない点。

[相違点2]
本件発明1では、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」のに対して、甲1発明では、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」ことが特定されていない点。

ウ 判断
(ア) 事案に鑑み、[相違点2]について、検討する。
甲第1号証の図5-図8を参照すると、甲第1号証における導電性粒子は、圧縮変位1(図5のA1)よりも前では、荷重と変位とはほぼ比例することから、圧縮変位1よりも前では、導電層も、導電層を含む導電性粒子全体も、弾性変形をしていると解することが自然である。
一方、圧縮変位1(図5のA1)よりも後では、導電層が割れることから、「導電層」の部分は塑性変形すると理解できるが、導電層を含む導電性粒子の全体として、「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」か否かは記載がなく、読み取れない。
ここで、甲第1号証は、特に段落【0010】-【0012】、段落【0024】-【0029】(上記(2)ア(エ)-(オ)を参照。)に記載されるように、導電性粒子を適度に圧縮したときに、「導電層」が部分的に割れることで、導電性粒子による「電極」の損傷を抑制することが目的であり、特に、導電性粒子によって電極上に適度な数の「圧痕」を形成することを目的としている。そして、「ボロンを含まないニッケル導電層が柔らかすぎ」るために、甲第1号証では、特に、ニッケル-ボロン導電層におけるボロンの含有量を所定の範囲とする構成を備えるものであり、導電性粒子を適度に圧縮したときに、導電層が部分的に割れるので、導電性粒子により接続された電極の損傷を抑制でき、従って電極間の接続抵抗を低くすることができるという発明である。
より具体的には、甲第1号証の段落【0122】の表1には、ボロン含有量が1-3%である「実施例1-4」と、ボロンを含有しない「比較例1」、ボロン含有量が4-5%の「比較例2-3」とが記載されており、段落【0122】の表1の最下行「圧痕の有無」を参照すると、実施例1-4の導電性粒子では所望の「圧痕」が形成される一方、比較例1-3では所望の「圧痕」は形成されない。
そして、「甲1発明」としては、甲第1号証の実施例1-4、比較例1-3のうち、導電性粒子の大きさ等が本件発明1の数値範囲に含まれている、実施例2、実施例3、比較例3に基づいて認定したものである。しかし、これら実施例2、実施例3、比較例3の導電性粒子の導電層が圧縮により破壊された以降の、導電性粒子全体の変形状態については特に記載されておらず、これら導電性粒子の全体が、変曲点よりも後では、「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」か否かは読み取れない。
また、甲1号証の他の箇所の記載を参照しても、甲第1号証の導電性粒子の全体が、変曲点よりも後では、「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」ことは記載も示唆もない。
そもそも、甲1発明は、導電性粒子を適度に圧縮したときに、ニッケル-ボロン導電層が部分的に割れて、電極の損傷を防止することに着目してなされた発明であるから、導電層が割れてからの導電性粒子の全体の変形状態を規定する必要はないといえる。
一方、本件発明は、非常に小さい力でも電極が破壊される傾向がある、タッチスクリーンパネル用の「ペーストからなる電極」の破損防止を目的とする発明であって(段落【0010】、【0047】)、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という構成を採用したものである。
そして、本件特許明細書の段落【0039】の変曲開始変形率の値である「Vが25を超過する場合は、導電粒子の変形に必要な力が大きいため、…(中略)…また、弾性変形による回復力が強いため、ACF接合ボンディングの際に外力が除去された後にも、電極を押し上げる効果が起こり、これは短絡或いは抵抗増加をもたらす。」との記載を参照すると、仮に導電粒子の全体が(塑性変形ではなく)弾性変形する場合、電極の接合のための外力を除去した後に、導電粒子が電極を押し上げ、電極の短絡等をもたらすという不具合が生じることが理解できる。

取消理由通知では、[相違点2]について、さらに甲第2号証を引用して、甲第2号証の1ページの「アブストラクト」、2ページ左欄2-14行、2頁右欄13行-3ページ右欄11行、図2,図4(b)-(d)の記載を参照すると、表面をニッケル/金被覆層でコーティングしたポリマー粒子では、変形初期の「StageI」では弾性変形すること(3ページ左欄17-18行の記載を参照)、「StageII」以降では、金属層のクラックと、金属層の剥離が発生して塑性変形すること(3ページ左欄28-38行の記載を参照)が記載されているから、甲1発明の導電性粒子の変形の態様として、甲第2号証に記載の変形の態様を採用すると共に、この際、塑性変形として「破壊を除く」ものを適宜選択することによって、上記本件発明1の[相違点2]に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである旨、通知した。
しかし、上記「(2)イ 甲第2号証」記載のとおり、そもそも甲第2号証の被覆層で覆われたポリマー粒子は、直径3.8μmのポリマー粒子を厚さ約50nmのニッケルの内層と、厚さ約25nmの金の外層からなる被覆層で覆った、直径3.95μmのポリマー粒子であるから、本件発明の導電性粒子の数値範囲とは異なるものである。そして、甲第2号証の直径3.95μmのポリマー粒子の全体についての変形状態を、サイズも組成も異なる甲第1号証の導電性粒子に対して適用することはできない。
したがって、甲第1号証と甲第2号証とを組み合わせても、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という本件発明1の構成を想定することはできない。
さらに、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という本件発明1の構成は、甲第3号証(上記「(2)ウ」を参照。)にも、甲第4号証(上記「(2)エ」を参照。))にも、記載されていない。

(イ) 平成30年12月25日付け意見書について
特許異議申立人は、意見書において、甲第1号証はA2以降の区間では導電性粒子全体が弾性変形するとの主張は失当であり、甲第1号証はA1以降では金属層の破壊によって塑性変形している旨、甲第2号証のポリマー粒子はStage2で塑性変形している旨、参考資料6-10によれば、導電性粒子の心材となる樹脂粒子は、本件発明の変形増加率の増加が開始する時点における外力の範囲では塑性変形するものである旨を主張する。
しかし、上記(ア)記載のとおり、甲第1号証には、導電性粒子の全体として、圧縮変位1(図5のA1)よりも後では、(A2以降の区間も含めて)「塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)する」か否かは記載がなく、読み取れない。
また、特許異議申立人主張のとおり甲第2号証のポリマー粒子がStage2で塑性変形するとしても、上記(ア)記載のとおり、甲第2号証のポリマー粒子の変形状態を、サイズも組成も異なる甲第1号証の導電性粒子に適用することはできない。
また、特許異議申立人主張のように、一般に、樹脂粒子が、外力を増すことで塑性変形をするとしても、このような技術的事項から直ちに、所定サイズの樹脂微粒子と被覆層からなる複合系導電粒子において、「前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壊される場合は除く)することを特徴とする」という、本件発明1の構成が導けないことは明らかである。
よって、申立人の主張は採用できない。

(ウ) まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2-8についても同様に、甲1発明及び甲第2号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1-8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を互いに電気的に接続するタッチパネル用の導電粒子であって、前記複数の電極のうちの少なくとも一方がペーストからなる電極であり、
樹脂微粒子、および前記樹脂微粒子の外面に形成される被覆層を有し、
前記導電粒子の平均直径は、4μm?16μmであり、
前記被覆層の厚さは、100nm?250nmであり、
下記式1によるV値が6≦V≦25であり、
前記導電粒子を圧縮変形させる場合、前記導電粒子の変形増加率の増加が発生する時点よりも前では、前記導電粒子は弾性変形をし、当該時点よりも後では、前記導電粒子は、塑性変形(前記導電粒子全体が破壞される場合は除く)することを特徴とする、タッチスクリーンパネル用導電粒子。
(式1)
V(%)=Sv/D*100
(式中、Vは変曲開始変形率を示し、Svは前記導電粒子を前記導電粒子に加える外力(load)を増加させたときに前記導電粒子の前記変形増加率(=△圧縮変形量/△外力)の増加が発生する時点の圧縮変形量を示し、Dは前記導電粒子の平均直径(μm)を示し、前記変形増加率の増加が開始する時点における前記外力は、1.9?13.5mNである。)
【請求項2】
前記被覆層は表面に高さ50nm?500nmの突起を備えることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項3】
前記突起が前記被覆層と同一の物質からなることを特徴とする、請求項2に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項4】
前記被覆層は、Ni、Sn、Ag、Cu、Pd、Zn、W、P、BおよびAuよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項5】
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdよりなる群から選ばれる1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項6】
前記導電粒子はTSP(Touch Screening Panel)用異方性導電フィルム(ACF)に含まれることを特徴とする、請求項1に記載のタッチスクリーンパネル用導電粒子。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項のタッチスクリーンパネル用導電粒子を含む異方性導電材料。
【請求項8】
請求項7の異方性導電材料を含む電子装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-04 
出願番号 特願2013-265643(P2013-265643)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G06F)
P 1 651・ 537- YAA (G06F)
P 1 651・ 536- YAA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中田 剛史遠藤 尊志藤原 拓也  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
登録日 2017-10-27 
登録番号 特許第6231374号(P6231374)
権利者 株式会社ドクサンハイメタル
発明の名称 タッチスクリーンパネル用導電粒子、およびこれを含む導電材料  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  
代理人 特許業務法人小野国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 小野国際特許事務所  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  
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