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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成25行ケ10172審決取消請求事件 判例 特許

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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1350627
異議申立番号 異議2017-701217  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-21 
確定日 2019-02-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6150634号発明「ごま含有乳化液状調味料、ごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6150634号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。 特許第6150634号の請求項1、2、4ないし9に係る特許を取り消す。 特許第6150634号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6150634号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成25年6月28日に出願されたものであって、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされ、平成29年6月21日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1ないし9に係る発明の特許について、平成29年12月21日に特許異議申立人 猪瀬 則之 により特許異議の申立てがされ、平成30年3月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内の平成30年5月2日に特許権者より乙第1ないし3号証を添付して意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年6月11日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、平成30年8月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内の平成30年10月29日に特許権者より乙第4号証を添付して意見書の提出がされ、平成30年11月19日に特許異議申立人より上申書の提出がされたものである。

第2 訂正の適否
1 平成30年5月2日の訂正の請求の訂正の内容
平成30年5月2日の訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」と記載されているのを「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」と訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至3のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1または2に記載」と訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1、2または4に記載」と訂正する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」と記載されているのを「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」と訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」と記載されているのを「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」と訂正する。

(7) したがって、特許権者は、特許請求の範囲を、次の訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料であって、
食用油脂の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、酢酸の含有量が0.4質量%以上1.1質量%以下であり、塩分の含有量が3.2質量%以上6.1質量%以下であり、酸度が0.45質量%以上1.30質量%以下に設定され、pHが3.9以上4.5以下に設定され、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有する
ことを特徴とするごま含有乳化液状調味料。
【請求項2】
常温にてB型粘度計で測定した粘度が、400mPa・S以上2000mPa・S以下であることを特徴とする請求項1に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量が1.0質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項5】
前記ごま含有乳化液状調味料が、たれ、ドレッシングまたはソースであることを特徴とする請求項1、2または4に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項6】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定し、pHを3.9以上4.5以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有させて乳化する工程を行うことにより、ごま含有乳化液状調味料のごま風味を増強させることを特徴とするごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法。
【請求項7】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量を1.0質量%以上20質量%以下とすることを特徴とする請求項6に記載のごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法。
【請求項8】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定し、pHを3.9以上4.5以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有させて乳化する工程を行うことにより、ごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感、まろやかさを強化させることを特徴とするごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感及びまろやかさの強化方法。
【請求項9】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量を1.0質量%以上20質量%以下とすることを特徴とする請求項8に記載のごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感及びまろやかさの強化方法。」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否並びに一群の請求項について
(1) 訂正事項1、5及び6は、それぞれ請求項1、6及び8の「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」について、「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」に特定することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものである。また、これらは、願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0025】に「本発明において『高甘味度甘味料』とは、甘味度の高い甘味料のことを指し、具体的にはショ糖の甘さと比較して大幅に(例えば100倍以上)甘い甘味料のことを指す。このような高甘味度甘味料の具体例としては、スクラロース(甘味度:600倍)、ステビア(甘味度:300倍)、アセスルファームK(甘味度:200倍)、サッカリン及びサッカリンナトリウム(甘味度:300倍)、アスパルテーム(甘味度:200倍)、ソーマチン(甘味度:2500倍)、カンゾウ抽出物(甘味度:250倍)、ネオテーム(甘味度:9000倍)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なお、甘味度とは、ショ糖1gを1とした場合の甘味料1g当りの甘味強度をいうと定義する。上記の高甘味度甘味料は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。」と記載されていることからして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(2) 訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(3) 訂正事項3及び4は、本件訂正前の請求項4が請求項1乃至3の記載を、本件訂正前の請求項5が請求項1乃至4の記載を、それぞれ引用していたところ、訂正事項2により請求項3を削除したため、それぞれこの請求項3の記載を引用しないものとしたのであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(4) 本件訂正前の請求項2ないし5は請求項1の記載を引用する関係にあるから、請求項1ないし5に係る訂正は一群の請求項ごとに請求された訂正であり、本件訂正前の請求項7は請求項6の記載を引用する関係にあるから、請求項6及び7に係る訂正は一群の請求項ごとに請求された訂正であり、本件訂正前の請求項9は請求項8の記載を引用する関係にあるので、請求項8及び9に係る訂正は一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、本件訂正は特許法120条の5第4項に適合するものである。

3 むすび
よって、本件訂正に係る訂正事項1ないし6は、特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、並びに、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕、〔8、9〕について、訂正することを認める。

第3 取消理由についての当審の判断
1 本件特許の請求項1、2、4ないし9に係る発明
本件特許の請求項1、2、4ないし9に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号により「本件発明1」等といい、総合して「本件発明」ともいう。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである(「第2 1 (7)」参照)。

2 取消理由の概要
本件訂正前に通知した平成30年3月2日付けの取消理由通知書に記載した取消理由1ないし4の概要は、次のとおりである。なお、上記取消理由1ないし4は本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。
(取消理由1) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が「甘味度が100以上2500以下」に関し不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(取消理由2) 本件特許は、平成29年3月7日付けの補正が、「甘味度が100以上2500以下」に関し願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(取消理由3) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が「高甘味度甘味料」及び「酵母エキス」に関し不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(取消理由4) 本件特許の請求項1ないし9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3 取消理由に引用した刊行物等
(1) 甲1:特開2006-61065号公報
(2) 甲2:特開2012-165759号公報
(3) 甲3:"ゴマの風味を増強-アサヒフード アンド ヘルスケア-酵母エキス「セサミースト」発売"の見出しの新聞記事、食品化学新聞、第1面、2012年9月6日号、食品化学新聞社
(4) 甲4:特開2012-135294号公報
(5) 甲5:株式会社えい(当審注:「えい」は偏が「木」で旁が「世」の漢字である。)出版社企画部編集室編、"ごまのすべてがわかる本"、株式会社えい(当審注:「えい」は偏が「木」で旁が「世」の漢字である。)出版社、2008年10月30日、p.122、125
(6) 甲6:ウェブサイト「まろやかさ Weblio類語辞典」の印刷物 2017年12月20日印刷
<URL:https://thesaurus.weblio.jp/content/%E3%81%BE%E3%82%8D%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%95>
(7) 甲7:ウェブサイト「甘味度 Wikipedia」の印刷物 2017年12月8日印刷
<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%98%E5%91%B3%E5%BA%A6>
(8) 甲8:前橋健二、"甘味の基礎知識"、日本醸造協会誌、106巻、12号、2011年、p.818-825
(9) 甲9:伊藤汎 ら編著、"光琳選書7 食品と甘味料"、平成20年10月1日、株式会社光琳、p.238-241、248-253、264-275、280-283、286,287、290-293
(10) 甲10:ウェブサイト「農畜産業振興機構HP お砂糖豆知識 砂糖類情報 2001年9月」の印刷物 2017年12月8日印刷
<URL:https://sugar.alic.go.jp/tisiki/ti_0109.htm>
(11) 甲11:藤井正美監修、"高甘味度甘味料スクラロースのすべて"、平成15年5月30日、株式会社光琳、p.3-7、27-31、61-65
(12) 甲12:ウェブサイト「スクラロース Wikipedia」の印刷物 2017年12月8日印刷
<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9>
(13) 甲13:特開2011-103795号公報

4 主な刊行物等の記載事項等
(1) 甲1には、次の事項が記載されている。
・「【0001】
本発明は、香味油脂由来の風味を発現し易くした風味に優れた水中油型乳化香味調味料およびその製造方法に関する。詳しくは、一般的に水中油型乳化調味料は、コク味を付与する食用油脂を配合し、これを乳化した調味料である。本発明は、通常用いられている食用油脂に加え風味を付与する香味油脂を配合し、特定の乳化材である蛋白質系乳化材を用いた水中油型乳化香味調味料である。更に、本発明は、前記蛋白質系乳化材で乳化した食用油脂の乳化物と、これとは別に前記蛋白質系乳化材で乳化した香味油脂の乳化物とが含有された状態で存在させることにより香味油脂由来の風味を発現し易くした風味に優れた水中油型乳化香味調味料およびその製造方法に関する。特に、ゴマ風味に優れた水中油型乳化香味調味料に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、生野菜、焼肉、しゃぶしゃぶ、豆腐等の食べ物は、ドレッシングやたれ等の調味料をかけたり、あるいは付けて喫食されている。これらの調味料は、従来、和風、中華、マヨネーズタイプ等、基本的配合物が中心であったが、近年、嗜好の多様化により例えば、ゴマ、生姜、ニンニク、ねぎ、玉葱、柑橘類等、種々の風味を特徴とした調味料が市販されている。これらの風味を特徴とした調味料の多くは、上記風味を付与する香味食材の粉砕物、例えば、香味食材を卸したもの、ペースト化したもの、あるいは刻んだもの等を配合している。例えば、特開平11-290036号公報(特許文献1)には、ゴマの風味に優れた調味料とするために製品に対し20?45%、好ましくは30?45%の練りゴマを配合したものが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1で提案されているように香味食材の粉砕物のみで風味を付与するには、調味料に多量の粉砕物を配合させる必要があった。そのため、特許文献1のような種子の粉砕物を用いた場合は、得られる調味料の食感が粉っぽくなり、また、生姜、ニンニク、ねぎ、玉葱、柑橘類等、香味野菜や果実等の粉砕物を用いた場合は、食材の繊維質により得られる調味料の食感が繊維っぽくなり、いずれにせよ香味食材の粉砕物のみで風味を付与すると得られる調味料は、食感が好ましくないという問題があった。」

・「【0006】
つまり、ドレッシングやたれ等の調味料は、調味料にコク味を付与するため、一般的にサラダ油等の食用油脂を配合している。このような食用油脂を配合した調味料は、食用油脂等の油性成分からなる油相と水や食酢等の水性成分からなる水相の状態より、油相が水相中に分散した水中油型乳化調味料と、油相が水相の上に積層した分離型調味料に分けられる。そして、香味油脂は、従来、上記特許文献2の実施例に開示されているように香味油脂以外の一般的な食用油脂と共に配合され、香味油脂が食用油脂と混合した混合油脂の状態で調味料に含有されている。」

・「【0011】
そこで、本発明の目的は、香味油脂および食用油脂を配合した水中油型乳化香味調味料であって、香味油脂の風味を発現し易くし香味油脂の風味に優れた水中油型乳化香味調味料およびその製造方法を提供するものである。」

・「【0017】
ここで水中油型乳化香味調味料とは、香味油脂や食用油脂等の油性成分からなる油相が水相中に分散した状態で維持され、配合原料である香味油脂由来の風味を有した調味料のことである。例えば、ゴマ風味の香味油脂を配合したゴマ風味の乳化型のドレッシングやたれ、生姜風味の香味油脂を配合した生姜風味の乳化型のドレッシングやたれ等が挙げられる。また、本発明の水中油型乳化香味調味料は、何れのpHのものでも良いが、pHが4.6以下のほうが常温流通可能な製品とするための、レトルト処理等の過度の熱処理や水分活性を0.94以下とする必要がなく、本発明の風味に優れた乳化状態を維持し易いことから好ましい。」

・「【0025】
本発明において蛋白質系乳化材とは、蛋白質を主成分とした乳化能力を有した乳化材をいい、食品の乳化材として使用されるものであればいずれのものでもよい。このような蛋白質系乳化材としては、例えば、卵黄、卵白、全卵またはこれらの乾燥物、ラクトアルブミン、カゼインカルシウムまたはカゼインナトリウム等が挙げられ、本発明は、これらの蛋白質系乳化材の1種または2種以上を選択し使用する。特に、上記蛋白質系乳化材の内、乳化力に優れ本発明の香味調味料の風味が長期に渡り維持され易いことから、卵黄、ラクトアルブミン、カゼインカルシウムまたはカゼインナトリウムが好ましく、卵黄がより好ましい。なお、本発明の蛋白質系乳化材には、乳化能力を損なわない範囲で蛋白分解酵素で処理したものも含まれ、上記卵黄および全卵には、これらの構成成分であるリン脂質をリン脂質分解酵素であるホスフォリパーゼA1、ホスフォリパーゼA2、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理したものも含まれる。
【0026】
以上、本発明の水中油型乳化香味調味料に配合する香味油脂、食用油脂および蛋白質系乳化材について説明したが、これらの配合原料以外に本発明の効果を損なわない範囲で各種原料を適宜選択し含有させることが出来る。例えば、食酢、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、醤油、味噌等の各種調味料、各種エキス、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉、湿熱処理澱粉、化工澱粉等の増粘材、卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン等の乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、香味食材や各種野菜の卸し、ペースト状物、裁断物等の具材の粉砕物等が挙げられる。」

・「【0039】
[実施例2:ゴマ風味の水蒸気蒸留留出物含有油脂を配合]
下記の配合原料を準備し、まず、香味油脂の乳化物を製した。つまり、食用油脂であるサラダ油および香味油脂以外の蛋白質系乳化材である卵黄およびその他の水相原料をホモミキサーを用いて均一に分散させた後、当該分散分を攪拌させながら香味油脂を添加して乳化させ、水中油型の香味油脂の乳化物を製した。次に、前記香味油脂の乳化物を攪拌させながらサラダ油を添加して乳化させた後、切りゴマを均一に混合して水中油型乳化香味調味料を製した。得られた水中油型乳化香味調味料は、喫食したところ、香味油脂由来のゴマ風味に優れたものであった。
【0040】
<配合割合>
サラダ油 20.0%
香味油脂 2.0%
(水蒸気蒸留留出物含有油脂:香味食材として焙煎ゴマ使用)
卵黄(蛋白質系乳化材) 1.5%
切りゴマ 10.0%
食酢(酸度:4%) 17.5%
醤油 15.0%
砂糖 3.0%
食塩 3.0%
グルタミン酸ナトリウム 0.5%
かつおエキス 0.5%
キサンタンガム 0.2%
辛子粉 0.1%
清水 26.7%
????????????????????????
合計 100.0%」

以上のことを総合すると、甲1には、特に実施例2に係る記載に注目すると、次の「甲1発明」及び「甲1方法発明」が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「切りゴマ、サラダ油及び香味油脂、酸度4%の食酢、食塩及び醤油、卵黄、並びにグルタミン酸ナトリウム及びかつおエキスを含有する水中油型乳化香味調味料であって、
サラダ油及び香味油脂の含有量が22.0%であり、酸度4%の食酢の含有量が17.5%であり、食塩3.0%及び醤油15.0%の含有量であり、卵黄の含有量が1.5%である切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料であって、
前記切りゴマの含有量が10%である切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料。」

(甲1方法発明)
「切りゴマ、サラダ油及び香味油脂、酸度4%の食酢、食塩及び醤油、卵黄、並びにグルタミン酸ナトリウム及びかつおエキスを含有する水中油型乳化香味調味料におけるサラダ油及び香味油脂の含有量を22.0%とし、酸度4%の食酢の含有量を17.5%とし、食塩3.0%及び醤油15.0%の含有量とすることで、酸度を設定するとともに、卵黄の含有量が1.5%であり、0.5%のグルタミン酸ナトリウム及び0.5%のかつおエキスとを含有させて乳化させる、切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料に係る方法であって、
前記切りゴマの含有量が10%である方法。」

(2) 甲2には、次の事項が記載されている。
・「【要約】
【課題】本発明は、高甘味度甘味料であるスクラロースの新規用途に関する。
【解決手段】具体的には本発明は、スクラロースを含有する組成物であって、スクラロースの特性に基づいて、良好な甘味質を有する甘味組成物、不快臭・不快味がマスキングされた食品組成物、機能性食品組成物(粘性食品組成物、ゲル性食品組成物、乳化性食品組成物)、風味が改善された食品組成物、味質が改善された保存料及び食品組成物、フレーバー感が改善された香気性組成物を提供するものである。また本発明はスクラロースの甘味質改善剤、不快臭・不快味のマスキング剤、風味改善剤、機能改善剤(粘性、ゲル性、乳化性)、味質改善剤、フレーバー感改善・増強剤としての新規用途を提供するものである。」

・「【請求項77】
スクラロースをゴマ風味の向上に有効な量含有するゴマ食品。
【請求項78】
スクラロースを0.00001?0.5重量%の割合で含有する請求項77記載のゴマ食品。」

・「【0003】
本発明はスクラロースを含有することによって種々の特性を備えた組成物に関する。より詳細には、本発明は次に掲げる種々の特有な性質を有する組成物及びその用途に関する。
I.甘味組成物
II.不快臭・不快味がマスキングされた食品
III.機能性食品組成物
IV.風味が改善された食品
V.味質が改善された保存料及び食品
VI.フレーバー感が改善された香気性組成物」

・「【0097】
本来スクラロースは、サッカリンナトリウム等の従来の高甘味度甘味料が有するような雑味や甘味の後引き感が少なく、さっぱりとした爽やかな甘味質を有する良好な甘味料であるが、上記の範囲でギムネマ酸を配合することにより、爽やかな甘味にさらに厚みやコクといったボディー感を付与することができ、ショ糖により近い一層良好な甘味組成物として調製することができる。またスクラロース自身ショ糖の約600倍の甘味度を有しており低カロリー甘味料であるが、更にギムネマ酸を配合することにより、腸からの吸収が抑制され、実質的にノンカロリーの甘味組成物として調製することができる。」

・「【0439】
(7).スクラロースを含有する加工食品
本発明は、スクラロースをゴマ、味噌、生 姜及びこれらを含む食品、並びに燻製品に配合することにより、これらの各種加工食品特有の風味をより一層引き出すことができるという知見に基づくものである。以下、これらの加工食品について説明する。
【0440】
(a)ゴマ食品
ゴマはその栄養的価値に加えて、ゴマ特有の風味(香味)から総菜から菓子類まで広く用いられており、ゴマの風味を増強させるための方法も従来から種々検討されている。
【0441】
本発明は、スクラロースをゴマ又はゴマ成分を含有する食品に添加配合することによってゴマの香り高い香味を引きだたせてゴマの風味が一層増強した食品が得られるという知見に基づくものである。
【0442】
本発明が対象とするゴマ食品には、ゴマまたはゴマの成分を含有する食品が広く包含される。尚、ゴマの成分にはゴマ油が含まれる。制限はされないが、ゴマ含有食品としては、例えばゴマドレッシングやゴマだれ等のソース類;ゴマ入りアイスクリーム,ヨーグルト,シャーベット等の冷菓類,ゼリー、ムース等のデザート類、ゴマ入り煎餅,クッキー,饅頭,ゴマ餡、ケーキ等のゴマ入りの和洋菓子及びゴマ飴等の菓子類;ゴマ豆腐、ゴマ入り麺、ゴマ味噌、ゴマ和えの素、ゴマ入り調味料(例えば、ゴマ塩等のふりかけ)、ゴマ油等を挙げることができる。
【0443】
本発明に係るゴマ風味が増強された食品を得るためには、結果的に最終製品にスクラロースが含有されていればよく、スクラロースの配合の時期や順序等を問わない。また、スクラロースの配合方法も特に制限されず、粉末や顆粒状等といった固体状のスクラロースを配合しても、また溶液状態にしたスクラロースを配合してもよい。
【0444】
スクラロースのゴマ食品への配合割合は、ゴマの風味が向上(増強)する有効量であれば特に制限されず、対象とするゴマ食品の種類又はそれに含まれる各種成分に応じて適宜選択調整することができる。具体的には、制限されないが、ゴマ食品あたりスクラロースを0.00001?0.5重量%、好ましくは0.0001?0.5重量%の範囲から適宜選択して用いることができる。なお、スクラロース自体の甘味は0.0006重量%程度以上の配合で明瞭に感じられてくるため、甘味を控えたい場合にはその濃度未満で使用すればよく、かかる量は当業者が通常の能力の発揮により任意に調節しうるものである。また本発明はスクラロースのゴマ風味向上剤としての新規用途を提供するものである。当該ゴマ風味向上剤は、少なくともスクラロースを含有するものであればよいが、本発明の効果を損なわないことを限度に、スクラロース以外の他の甘味料、香料、防腐剤、安定化剤等といった他の成分を含んでいてもよい。
【0445】
本発明のゴマ風味向上剤は、粉末や顆粒状等といった固体状また溶液状のいずれの形態を採っていても良く、これらの形態で前述する各種ゴマ含有食品の調製の任意の段階に添加配合して用いられる。かかるゴマ風味向上剤の配合により、食品に含まれるゴマの風味を一層引きだたせることが可能になり、ゴマの香味並びに風味が一層向上したゴマ食品を調製することができる。
【0446】
なお、当該ゴマ風味向上剤の配合時期は特に制限されない。またゴマ風味向上剤のゴマ含有製品への配合割合は、前述する本発明のゴマ食品におけるスクラロースの配合割合に基づいて適宜選択される。
【0447】
また本発明は、上記ゴマ食品に、上記有効量のスクラロースを添加配合することを特徴とするゴマ食品のゴマ風味の向上(増強)方法、並びにゴマ食品の製造工程において上記の有効量のスクラロースを添加配合する工程を有するゴマ風味が向上(増強)したゴマ食品の製造方法を提供するものでもある。」

・「【0494】
V.味質が改善された保存料及び食品
本実施形態にかかる発明は、食品添加剤として使用されている保存料にスクラロースを配合することによって保存料の味質を改善できること、また各種食品にスクラロースを配合することによってそれらの各種食品の味質を有意に改善できることを見出して開発されたものである。
【0495】
すなわち、本発明は(1).スクラロースを含有することによって味質が改善された食品添加用保存料、並びに(2).スクラロースを含有することによって味質が改善された食品である。
【0496】
・・・(略)・・・
【0513】
(2).食品一般
本発明は、スクラロースを各種食品に用いることにより、食品の味質自体を有意に改善し、食品のもつ本来の味質をより引き出し、また好ましくない味質を緩和することにより、総合的に食品のおいしさを向上させること、さらに、この効果は、甘味料としては効果が認められない濃度範囲においても顕著に認められるという知見に基づくものである。
【0514】
本発明に係る味質の改善された食品を得るためには、結果的に最終食品にスクラロースが含有されていればよく、スクラロースの配合の時期や順序等を問わない。また、スクラロースの配合方法も特に制限されず、粉末や顆粒状等といった固体状のスクラロースを配合しても、また溶液状態にしたスクラロースを配合してもよい。
【0515】
本発明の効果を得るためのスクラロースの食品への配合割合は、食品の種類等によって異なり、一概に特定できないが、通常食品あたりスクラロース0.00001?0.5重量%、好ましくは0.0001?0.1重量%の範囲から適宜選択して用いることができる。なお、スクラロース自体の甘味はスクラロースの水溶液では0.0006重量%程度以上で感じられてくるため、甘味料を兼ねて甘味の発現を求める場合はその濃度以上で使用し、また甘味を控えたい場合にはその濃度未満で使用すればよく、かかる量は当業者が通常の能力の発揮により任意に調節しうるものである。
【0516】
本発明によれば、食品の味質自体が有意に改善され、食品のもつ本来の味質がより引き出され、高められ、また好ましくない味質が緩和され、総合的においしさが向上した食品となるが、食品中に含有されるミネラルやビタミンによる好ましくない風味はマスキングされ、また、食塩やカリウム塩を含む場合には風味が一段と高まり、塩かどが抑えられ苦味もマスキングされて、よりまろやかで上質な味質となる。特に、食塩を含有する食品においては、さらに嫌みのない甘味がより強くエンハンスされ、嗜好面でより好ましい食品が調製される。
【0517】
・・・(略)・・・
【0519】
本発明に係る味質の改善された食品の対象となる食品を具体例で示すと、以下に掲げるすべての食品から選ばれる1種または2種以上の食品からなる食品、以下に掲げるすべての食品の1種または2種以上の食品を原材料としてなる食品、以下に掲げるすべての食品の1種または2種以上の該食品を含有してなる食品が例示される。
【0520】
(2-1).農産食品・農産加工食品:
玄米、・・・(略)・・・ごま、ねりごま、・・・(略)・・・青みる。
【0521】
(2-2).乳油製品:
牛乳、・・・(略)・・・植物油として、だいず・なたね・綿実・ごま・サフラワー・コーン・ひまわり・やし・オリーブ・米糠・調合油、 動物油として、・・・(略)・・・鯨油。
【0522】
・・・(略)・・・
【0525】
(2-6).調味料:
砂糖・・・(略)・・・ドレッシング、ドレッシングタイプ調味料、・・・(略)・・・醗酵調味料、風味調味料、・・・(略)・・・ごま油、・・・(略)・・・ガラスープ。」

・「【0719】
実施例(IV-7-13)しゃぶしゃぶのゴマダレ
練りゴマ 13.00
薄口醤油 12.00
醸造酢 11.00
ガーリックパウダー 0.10
ジンジャーパウダー 0.10
ホワイトペッパー 0.10
チキンエキス 3.00
酵母エキス 3.00
ゴマ油 1.00
果糖ぶどう糖液糖 8.00
味醂 15.00
白味噌 10.00
増粘剤製剤(キサンタンガム、ペクチン) 3.50
スクラロース 0.018
香料 0.15
水 残 部
合 計 100.00
上記処方に従って各成分を混合し、攪拌しながら80℃まで加熱して、しゃぶしゃぶのゴマダレを得た。得られたゴマダレはゴマの風味が増強されており、美味しいものであった。」

(3) 甲3には、次の事項が記載されている。
・「ゴマの風味を増強
-アサヒフード アンド ヘルスケア-
酵母エキス『セサミースト』発売
アサヒフード アンド ヘルスケアは、ゴマ風味調味料『セサミーストMT』を市場投入し、秋冬製品に向けて本格的に生産販売に力を入れる。酵母エキスをベースに乾燥酵母などをバランス良く配合し加熱加工することによりゴマ様の風味を持たせたもの。少量の添加でゴマの風味と香ばしさを引き立てるため、ゴマの使用量を減らしてもおいしさを保ち、コストダウン、カロリーオフができる。同社の試験では、ゴマの量を3割減らしても変わらない風味を補うことができた。近年、ゴマの価格が上げ基調であり、同品への期待は高い。
セサミーストMTは、同社がセルビアの工場で安定生産するグルタミン酸高含有量酵母エキス『ハイパーミースト』と乾燥酵母を国内工場で加熱加工して生産される。香ばしくローストしたゴマの風味を付与し、エンハンスする。また、酵母エキスとしての旨味、コク味も強い。力価が高く少量の添加で効果が得られる。ドレッシング、担々麺を始めとするラーメンスープ、鍋のゴマだれやスープなどゴマの風味が合う幅広い食品への使用が可能である。
練りゴマ10%の試料の練りゴマ量を30%ダウンし、セサミ-ストを0.3%添加したときの同品と香気特性を調べた。練りゴマの香気成分を分析するとロースト香が90%、ナッツ香が7%、脂肪様香が2%、甘い香りが1%である。セサミーストMTの添加によりゴマ30%低減品のロースト香を90%まで回復し、ナッツ香は185%、脂肪様香は170%まで補うことができた。また同品のゴマドレッシングへの添加効果を調べたところ、風味・香ばしさ・ボディー感が付加され、コクや旨みがアップし、美味しさを全般的に増強することができた。」

(4) 甲4には、次の事項が記載されている。
・「【0032】
本発明のゴマ含有酸性乳化液状調味料は、上述した全光線透過率が前記特定範囲であることに加えて製品の粘度が0.1?5Pa・s、好ましくは0.1?4Pa・sである。粘度が前記範囲であることにより、本発明のゴマ含有酸性乳化液状調味料は、保管後においてもゴマの焙煎風味を充分に感じることができるものとなる。これに対して、粘度が前記範囲より高い場合は、保管後のゴマの焙煎風味が弱く感じられ好ましくない。一方、粘度が前記範囲よりも低い場合は、食用油脂を乳化液状調味料中に安定して分散させ難いため分離が生じ易く、ゴマの焙煎風味も弱くなる傾向がある。粘度の調整は、食用油脂含有量にもよるが、上述したガム質の含有量により調整することができる。なお、本発明における前記粘度は、BH形粘度計で、品温20℃、回転数:10rpmの条件で粘度が0.8Pa・s未満のときローターNo.1、0.8Pa・s以上3.2Pa・s未満のときローターNo.2、3.2Pa・s以上のときローターNo.3を使用し、測定開始後ローターが2回転した時の示度により算出した値である。」

(5) 甲5には、次の事項が記載されている。
・「ごまは生のままでは食べられない。煎ることによってはじめて、あの独特の香りとプチプチした食感が得られる。『ごまを煎る』ことは、ごまを食べるにあたって基本中の基本なのだ。」(122頁下から2段目1?7行)

・「切りごまは香りがよく出るので、料理の仕上げにふりかけると風味がよい。すりごまほど油分が出ないので、さっぱりとごまの風味を味わいたいときに効果的。
しかし、すりごまとちがって粒の大きさがばらばらで尖っているので、口当たりとしてはやや悪いともいえる。
作り方は、煎ったごまをみじん切りの要領で包丁で刻む。ふきんやキッチンペーパーを敷いた上で切ると、ごまが飛び散らなくてよい。」(125頁上欄5?19行)

(6) 甲6には、「まろやかさ」の「類語」として「おいしさ・旨さ・まろやかさ・味のよさ」と記載されている

5 各取消理由についての判断
(1) 理由1(36条6項2号)について
「第2」にて述べたように、本件訂正により本件発明の発明特定事項である「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」は「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」に訂正された。
一般に、測定方法や測定条件等の相違により甘味度の測定値に多少の差が生じることは否定できないものの、例えば甲2にも「スクラロース自身ショ糖の約600倍の甘味度を有して」いる旨記載されている(上記「4(2)」参照。)ように、スクラロースの甘味度が100以上2500以下である600倍程度であることは技術常識といえる。そして、「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」という発明特定事項は実質的に高甘味度甘味料としてスクラロースを特定しており、その意味内容は明確であって、当該特定によって発明が不明確であるともいえない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備であるとはいえず、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

(2) 理由2(17条の2第3項)について
「第2」にて述べたように、本件訂正により本件発明の発明特定事項である「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」は「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」に訂正され、当該訂正は本件明細書の【0025】の記載からして、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、何ら新たな技術的事項を本件発明に導入するものではない。そして、本件明細書の【0025】の記載は願書に最初に添付した明細書の記載のとおりである。
したがって、本件特許は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない補正を含むものとはいえず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

(3) 理由3(36条6項1号)について
「高甘味度甘味料」と呼称されるものには「スクラロース」の他にも多種存在し、本件明細書において本件発明の効果が確認できたのは「高甘味度甘味料」のうち「スクラロース」に関して記載されているのみであるところ、「第2」にて述べたように、本件訂正により本件発明の発明特定事項である「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料」は「甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」に訂正された。すなわち、本件発明において含有する「高甘味度甘味料」は「スクラロース」に限定されている。
ところで、本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書に記載された、「本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ごまを増量しないにも関わらず、ごま風味、焙煎感、まろやかさを強化し、全体として風味バランスの良いごま含有乳化液状調味料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、ごまを増量しないにも関わらず、ごま含有乳化液状調味料のごま風味を確実に増強しうる方法を提供することにある。」(【0007】)といえる。加えて、「酵母エキス」として、いろいろな酵母のいろいろなエキスが挙げられることは一般常識といえるところ、本件明細書の発明の詳細な説明に「酵母エキス」の具体的な特定がないことから、「酵母エキス」の用語は本件明細書等において具体的なものの総称として用いられているものと認められる。
そして、「酵母エキス」の有無による本件発明に係る効果の差異は、本件明細書の「試験6」に係る記載(【0060】ないし【0066】)からすると、試験例「6C」と「6E」ないし「6G」とを比較することで確認でき、「焙煎感」、「ごま感」及び「まろやかさ」はいずれも「非常に好ましい」であるところ、「総合評価」のレベルにおいて「◎4(非常に好ましいよりもかなり良い)」と「◎5(非常に好ましいよりも非常に良い)」であることが分かる。すなわち、「酵母エキス」を含有させるか否かはその効果に関して本質的な事項というよりも、評価レベルが最良であるか否かに係るものに留まるものである。
そうすると、旨み等を得るために酵母エキスの具体的なものを特定せずに、すなわちどのようなものでも酵母エキスと称するものを含有させることが、斯界においてよく行われるといえることも考慮すると、発明特定事項として酵母エキスの具体的な特定がないとしても、当業者がその効果を予測できないものとはいえないし、本件発明がその課題を解決できることを認識できないとはいえない。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が「高甘味度甘味料」及び「酵母エキス」に関し不備であるとはいえず、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

(4) 理由4(29条2項)について
ア 本件発明1及び4について
本件発明1の発明特定事項をすべて含む(本件発明2において本件発明1に追加して特定される事項を含まない)本件発明4と甲1発明とを対比すると、用語の意味内容や機能等からして、甲1発明の「切りゴマ」は、甲5の記載事項「ごまは生のままでは食べられない。」及び「切りごまは・・・(略)・・・、煎ったごまをみじん切りの要領で包丁で刻む。」(上記「4(5)」参照。)を考慮すると、本件発明4の「焙煎ごま粉砕物」に相当している。
また、甲1発明の「サラダ油及び香味油脂」は本件発明4の「食用油脂」に相当し、同様に、「並びに」は「及び」に、「水中油型乳化香味調味料」は「乳化液状の調味料」に、「切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料」は「ごま含有乳化液状調味料」に、それぞれ相当している。
さらに、甲1発明の「酸度4%の食酢」は、本件明細書の「本発明における『酢酸』は主として食酢に由来する成分であって、そのような食酢としては特に限定されず、例えば、穀物酢、米酢、米黒酢、りんご酢、醸造アルコールを原料に製造される醸造酢や、合成酢等が挙げられる。」(【0020】)の記載からすると、本件発明4の「酢酸」に相当し、甲1発明の「食塩及び醤油」は、本件明細書の「本発明における『塩分』は主として食塩(醤油等を使用した場合にはその中に含まれる食塩)に由来するものであって、塩分の含有量は3.2質量%以上6.1質量%以下に設定され、好ましくは塩分の含有量は3.3質量%以上5.6質量%以下に設定される。」(【0022】)の記載からすると、本件発明4の「塩分」に相当し、甲1発明の「卵黄」は、甲1の「卵黄および全卵には、これらの構成成分であるリン脂質をリン脂質分解酵素であるホスフォリパーゼA_(1)、ホスフォリパーゼA_(2)、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理したものも含まれる」(上記「4(1)」の【0025】参照。)の記載、及び、本件明細書の「本発明において『加工卵黄』とは、鶏卵から得られる生卵黄に対して何らかの加工処理を施したものを指しており、具体的には、生卵黄に対して濾過処理、乾燥処理、殺菌処理、冷凍処理、タンパク質分解酵素などによる酵素処理、酵母などによる脱糖処理、脱コレステロール処理等から選択される1種または2種以上の処理を施したもの等を挙げることができる。」(【0024】)の記載からすると、本件発明4の「加工卵黄」に相当している。
そして、甲1発明の「酸度4%の食酢の含有量が17.5%」であることから、その酢酸の含有量は4%×17.5%であるので約0.7%であるといえ、あわせて甲1発明の酸度も約0.7質量%といえ、甲1発明の「食塩3.0%及び醤油15.0%の含有量」であることから、その食塩の含有量は、醤油の塩分配合量が15%程度である技術常識を考慮すると、3.0%+15.0%×15%であるので約5.25%であるといえる。
したがって、本件発明4と甲1発明とは、
「焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、を含有する乳化液状の調味料であって、
食用油脂の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、酢酸の含有量が0.4質量%以上1.1質量%以下であり、塩分の含有量が3.2質量%以上6.1質量%以下であり、酸度が0.45質量%以上1.30質量%以下に設定され、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であるごま含有乳化液状調味料であって、
前記焙煎ごま粉砕物の含有量が1.0質量%以上20質量%以下であるごま含有乳化液状調味料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明4では「高甘味度甘味料」を含有し、「0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」であるのに対し、甲1発明では、スクラロースを含有していない点。

<相違点2>
本件発明4では「酵母エキス」を含有し、「0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキス」であるのに対し、甲1発明では、酵母エキスを含有していない点。

<相違点3>
本件発明4では「pHが3.9以上4.5以下に設定され」るのに対し、甲1発明ではそのpHが不明である点。

上記各相違点について、以下検討する。
相違点1については、甲1に「ゴマ風味に優れた水中油型乳化香味調味料」(上記「4(1)」の【0001】参照。)と記載されていることからすると、甲1発明において、よりゴマ風味に優れたものとする動機付けを示唆しているといえるところ、甲2には「スクラロースを0.00001?0.5重量%の割合で含有する」ことで、「スクラロースをゴマ風味の向上に有効な量含有するゴマ食品」であって、「スクラロースを0.018質量%含有させた」「しゃぶしゃぶのゴマダレを得た。得られたゴマダレはゴマの風味が増強されており、美味しいものであった。」ことが記載されている(上記「4(2)」参照。)から、よりゴマ風味に優れたものとするべく、スクラロースをゴマ風味の向上に有効な量含有させることで、甲1発明をして上記相違点1に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2については、よりゴマ風味に優れたものとする動機付けが甲1に示唆されていることは先に述べたとおりであるし、さらに甲1に「本発明の効果を損なわない範囲で各種原料を適宜選択し含有させることが出来」、「各種エキス」「が挙げられる」ことが記載されている(上記「4(1)」の【0026】参照。)ところ、甲3には「ゴマの風味を増強」する「酵母エキス『セサミースト』」について、「酵母エキスをベースに乾燥酵母などをバランス良く配合し加熱加工することによりゴマ様の風味を持たせたもの。少量の添加でゴマの風味と香ばしさを引き立てるため、ゴマの使用量を減らしてもおいしさを保ち、コストダウン、カロリーオフができ」、「香ばしくローストしたゴマの風味を付与し、エンハンスする。また、酵母エキスとしての旨味、コク味も強い。力価が高く少量の添加で効果が得られる。ドレッシング、担々麺を始めとするラーメンスープ、鍋のゴマだれやスープなどゴマの風味が合う幅広い食品への使用が可能である」こと、「練りゴマ10%の試料の練りゴマ量を30%ダウンし、セサミーストを0.3%添加したときの」「同品と香気特性を調べた。練りゴマの香気成分を分析するとロースト香が90%、ナッツ香が7%、脂肪様香が2%、甘い香りが1%である。セサミーストMTの添加によりゴマ30%低減品のロースト香を90%まで回復し、ナッツ香は185%、脂肪様香は170%まで補うことができた。また同品の」「ゴマドレッシングへの添加効果を調べたところ、風味・香ばしさ・ボディー感が付加され、コクや旨みがアップし、美味しさを全般的に増強することができた」ことが記載されている(上記「4(3)」参照。)から、特定の酵母エキスを例えば0.3%の少量添加することで、ゴマドレッシングへ風味・香ばしさ・ボディー感を付加し、コクや旨みがアップし、美味しさを全般的に増強することができるのであって、甲1に挙げられる「各種エキス」として「酵母エキス」の一般的なものを採用できるのであるから、採用する具体的「酵母エキス」に応じてその添加量を調整することも含め、甲1発明をして上記相違点2係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。なお、特許権者は、平成30年5月2日の意見書において、乙第2号証(ウェブサイト「アサヒビール食品株式会社のホームページ ビール酵母食品 ビール酵母(栄養酵母)粉末200g」の印刷物 2018年4月26日印刷<URL:https://www.asahi-fh.com/products/supplement/beeryeast/beeryeast04.html>)及び乙第3号証(ウェブサイト「ゴマ Wikipedia」の印刷物 2018年4月26日印刷<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%9E>)を提示しつつ、「食材の繊維質により得られる調味料の食感が繊維っぽく」との甲1の記載も引用して、概ね「食感が繊維っぽくなる繊維質を含む乾燥酵母の添加が、まろやかさの強化に関してマイナスに作用し、全体としての風味バランスの向上に至らないと予想され」る旨主張する(9頁29-31行)が、当該甲1の記載は「多量の粉砕物を配合させる」ことによる問題であるし、乙第2号証が示す食物繊維の含有量は「ビール酵母」のものであって必ずしも「酵母エキス」のものではないので、当該主張を採用できるものではない。

相違点3については、甲1に「また、本発明の水中油型乳化香味調味料は、何れのpHのものでも良いが、pHが4.6以下のほうが常温流通可能な製品とするための、レトルト処理等の過度の熱処理や水分活性を0.94以下とする必要がなく、本発明の風味に優れた乳化状態を維持し易いことから好ましい。」(上記「4(1)」の【0017】参照。)と記載されていることからすると、甲1発明をして上記相違点3に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本件発明4が奏する効果について本件明細書の記載を見ても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、甲1発明及び上記の事項(甲1ないし3に記載された事項)から予測し得る程度のものと認められる。なお、特許権者は、平成30年10月29日の意見書(7、8頁)において、乙第4号証(山野善正編、「おいしさの科学事典」、初版第2刷、株式会社朝倉書店、2004年4月1日、p72-75)を提示しつつ、「まろやかさ」や「全体としての風味バランスのよい」ことに係る本件発明4の効果について、本件特許に係る出願時の技術水準からは予想外である旨主張するものの、甲2の「スクラロースを各種食品に用いることにより、食品の味質自体を有意に改善し、食品のもつ本来の味質をより引き出し、また好ましくない味質を緩和することにより、総合的に食品のおいしさを向上させること、さらに、この効果は、甘味料としては効果が認められない濃度範囲においても顕著に認められ」(段落【0513】)「よりまろやかで上質な味質となる」(段落【0516】)ことが知られていた本件特許に係る出願時の技術水準からすると、当該主張を採用できるものではない。
したがって、本件発明4は、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本件発明4は本件発明1の発明特定事項をすべて含むから、本件発明1は、本件発明4と同様に、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
調味料の粘度をどの程度とするかはその用途等に応じて当業者が適宜設定し得ることといえるところ、甲4に、BH形粘度計で、品温20℃、回転数:10rpmの条件で測定した、ゴマ含有酸性乳化液状調味料の粘度が0.1?5Pa・s、好ましくは0.1?4Pa・sである旨、記載されている(上記「4(4)」参照。)ことからして、ゴマ含有乳化液状調味料の「常温にてB型粘度計で測定した粘度が、400mPa・S以上2000mPa・S以下である」とすることは、格別特殊な数値範囲であるとはいえないことを考慮すると、甲1発明をして「常温にてB型粘度計で測定した粘度が、400mPa・S以上2000mPa・S以下である」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、本件発明2は、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明5について
本件発明5において、本件発明1、2または4に追加して特定されている「前記ごま含有乳化液状調味料が、たれ、ドレッシングまたはソースである」点に関し、乳化液状調味料として、たれ、ドレッシングまたはソースを採用することは、例示するまでもなく周知であって、甲1にも調味料として「ドレッシングやたれ」が記載されている(上記「4(1)」参照。)ことからすると、甲1発明をして、たれ、ドレッシングまたはソースとすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そうすると、本件発明5は、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明6及び7について
特許発明7と甲1方法発明とを対比すると、用語の意味内容や機能等からして、甲1方法発明の「乳化させる」ことは、本件発明7の「乳化する工程を行う」ことに相当しているとともに、先に「ア」で述べたのと同様である。
したがって、本件発明7と甲1方法発明とは、
「焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄を含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、乳化する工程を行う、ごま含有乳化液状調味料に係る方法であって、
前記焙煎ごま粉砕物の含有量が1.0質量%以上20質量%以下である方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1’>
本件発明7では「高甘味度甘味料」を含有し、「0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」であるのに対し、甲1方法発明では、スクラロースを含有していない点。

<相違点2’>
本件発明7では「酵母エキス」を含有し、「0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキス」であるのに対し、甲1方法発明では、酵母エキスを含有していない点。

<相違点3’>
本件発明7では「pHが3.9以上4.5以下に設定され」るのに対し、甲1方法発明ではそのpHが不明である点。

<相違点4>
本件発明7では、「ごま含有乳化液状調味料のごま風味を増強させる」「ごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法」であるのに対し、甲1方法発明では、「切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料に係る方法」であるものの、「ごま風味を増強させる」ものであるか不明である点。

上記各相違点について、検討すると、上記相違点1’ないし3’については、それぞれ、先に「ア」で述べた上記相違点1ないし3と同様であるところ、甲1に「ゴマ風味に優れた水中油型乳化香味調味料」(上記「4(1)」の【0001】参照。)と記載されていることから、よりゴマ風味に優れたものとする動機付けによって、甲1方法発明をして「ごま風味を増強させる」ものとすることで、上記相違点4に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明7が奏する効果について本件明細書の記載を見ても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、甲1方法発明及び上記の事項(甲1ないし3に記載された事項)から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件発明7は、甲1方法発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本件発明7は本件発明6の発明特定事項をすべて含むから、本件発明6は、本件発明7と同様に、甲1方法発明及び甲1ないし3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明8及び9について
特許発明9と甲1方法発明とを対比すると、用語の意味内容や機能・構造等からして、甲1方法発明の「乳化させる」ことは、本件発明9の「乳化する工程を行う」ことに相当しているとともに、先に「ア」で述べたのと同様である。
したがって、本件発明9と甲1方法発明とは、
「焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄を含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、乳化する工程を行う、ごま含有乳化液状調味料に係る方法であって、
前記焙煎ごま粉砕物の含有量が1.0質量%以上20質量%以下である方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1’’>
本件発明9では「高甘味度甘味料」を含有し、「0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロース」であるのに対し、甲1方法発明では、スクラロースを含有していない点。

<相違点2’’>
本件発明9では「酵母エキス」を含有し、「0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキス」であるのに対し、甲1方法発明では、酵母エキスを含有していない点。

<相違点3’’>
本件発明9では「pHが3.9以上4.5以下に設定され」るのに対し、甲1方法発明ではそのpHが不明である点。

<相違点5>
本件発明9では、「ごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感、まろやかさを強化させる」「ごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感及びまろやかさの強化方法」であるのに対し、甲1方法発明では、切りゴマ含有水中油型乳化香味調味料に係る方法であるものの、「ごま風味、焙煎感及びまろやかさを強化させる」ものであるか不明である点。

上記各相違点について、検討すると、上記相違点1’’ないし3’’については、それぞれ、先に「ア」で述べた上記相違点1ないし3と同様である。また、上記相違点5に関しては、甲1に「ゴマ風味に優れた水中油型乳化香味調味料」(上記「4(1)」の【0001】参照。)と記載されていることから、よりゴマ風味に優れたものとする動機付けによって、さらに、甲3に記載された「ゴマドレッシングへの添加効果を調べたところ、風味・香ばしさ・ボディー感が付加され、コクや旨みがアップし、美味しさを全般的に増強することができた」こと、及び、甲6の「まろやかさ」に係る記載事項、並びに、甲2の「スクラロースを各種食品に用いることにより、食品の味質自体を有意に改善し、食品のもつ本来の味質をより引き出し、また好ましくない味質を緩和することにより、総合的に食品のおいしさを向上させること、さらに、この効果は、甘味料としては効果が認められない濃度範囲においても顕著に認められ」(段落【0513】)「よりまろやかで上質な味質となる」(段落【0516】)ことが知られていた本件特許に係る出願時の技術水準からすると、甲1方法発明をして「ごま風味、焙煎感及びまろやかさを強化させる」ものとすることで、上記相違点5に係る本件発明9の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明9が奏する効果について本件明細書の記載を見ても、当業者にとって格別予想外の効果であるとはいえず、甲1方法発明及び上記の事項(甲1ないし3及び6に記載された事項)から予測し得る程度のものと認められる。

したがって、本件発明9は、甲1方法発明並びに甲1ないし3及び6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

また、本件発明9は本件発明8の発明特定事項をすべて含むから、本件発明8は、本件発明9と同様に、甲1方法発明並びに甲1ないし3及び6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ まとめ
よって、本件発明1、2、4ないし9は甲1に記載された発明(甲1発明又は甲1方法発明)並びに甲1ないし3及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成30年3月2日付け及び平成30年8月24日付けで通知した取消理由のとおり、本件発明1、2、4ないし9は甲1に記載された発明(甲1発明又は甲1方法発明)並びに甲1ないし3及び6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2、4ないし9についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、特許法113条2号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。
そして、請求項3に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料であって、
食用油脂の含有量が1質量%以上50質量%以下であり、酢酸の含有量が0.4質量%以上1.1質量%以下であり、塩分の含有量が3.2質量%以上6.1質量%以下であり、酸度が0.45質量%以上1.30質量%以下に設定され、pHが3.9以上4.5以下に設定され、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有する
ことを特徴とするごま含有乳化液状調味料。
【請求項2】
常温にてB型粘度計で測定した粘度が、400mPa・S以上2000mPa・S以下であることを特徴とする請求項1に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量が1.0質量%以上20質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項5】
前記ごま含有乳化液状調味料が、たれ、ドレッシングまたはソースであることを特徴とする請求項1、2または4に記載のごま含有乳化液状調味料。
【請求項6】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定し、pHを3.9以上4.5以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有させて乳化する工程を行うことにより、ごま含有乳化液状調味料のごま風味を増強させることを特徴とするごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法。
【請求項7】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量を1.0質量%以上20質量%以下とすることを特徴とする請求項6に記載のごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法。
【請求項8】
焙煎ごま粉砕物、食用油脂、酢酸、塩分、加工卵黄、高甘味度甘味料及び酵母エキスを含有する乳化液状の調味料における食用油脂の含有量を1質量%以上50質量%以下とし、酢酸の含有量を0.4質量%以上1.1質量%以下とし、塩分の含有量を3.2質量%以上6.1質量%以下とすることで、酸度を0.45質量%以上1.30質量%以下に設定し、pHを3.9以上4.5以下に設定するとともに、卵黄の含有量が0.80質量%以上2.2質量%以下であり、0.005質量%以上0.04質量%以下の甘味度が100以上2500以下である高甘味度甘味料としてのスクラロースと、0.10質量%以上0.40質量%以下の酵母エキスとを含有させて乳化する工程を行うことにより、ごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感、まろやかさを強化させることを特徴とするごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感及びまろやかさの強化方法。
【請求項9】
前記焙煎ごま粉砕物の含有量を1.0質量%以上20質量%以下とすることを特徴とする請求項8に記載のごま含有乳化液状調味料のごま風味、焙煎感及びまろやかさの強化方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-25 
出願番号 特願2013-135786(P2013-135786)
審決分類 P 1 651・ 55- ZAA (A23L)
P 1 651・ 121- ZAA (A23L)
P 1 651・ 537- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 崇之  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
田村 嘉章
登録日 2017-06-02 
登録番号 特許第6150634号(P6150634)
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 ごま含有乳化液状調味料、ごま含有乳化液状調味料のごま風味増強方法  
代理人 渥美 久彦  
代理人 渥美 久彦  
代理人 渥美 久彦  

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