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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1350641
異議申立番号 異議2018-700362  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-01 
確定日 2019-02-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6223477号発明「接着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6223477号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正することを認める。 特許第6223477号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6223477号の請求項1?14に係る特許についての出願は、平成27年1月29日(優先権主張 平成26年1月31日(JP)日本国、平成26年1月31日(JP)日本国)を国際出願日とする日本語特許出願であって、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ、同年11月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成30年5月1日に特許異議申立人秋山満(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 7月24日付け:取消理由通知
同年 9月25日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年10月24日 :手続補正書(方式)の提出
同年12月10日 :意見書の提出(申立人)

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
平成30年9月25日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」ということがある。)の内容は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1(請求項1?14に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に、
「熱発泡剤と105℃以下の軟化温度を有するエポキシ樹脂を含む接着剤組成物からなる接着層と、
該接着層の上に形成され、熱可塑性樹脂を含むコート層を有する接着シートであって、
前記コート層は、常温でタックを示さず、
前記接着シートを、前記接着層の硬化開始温度以上に加熱することにより、前記コート層の少なくとも一部が、前記接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失し、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき
T3<T2
を満足することを特徴とする接着シート。」
とあるのを、
「熱発泡剤と105℃以下の軟化温度を有するエポキシ樹脂を含む接着剤組成物からなる接着層と、
該接着層の上に形成され、熱可塑性樹脂を含むコート層を有する接着シートであって、
前記コート層は、常温でタックを示さず、
前記接着シートを、前記接着層の硬化開始温度以上に加熱することにより、前記コート層の少なくとも一部が、前記接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失し、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき
21℃≦T2-T3
を満足することを特徴とする接着シート。」
と訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?14についても同様に訂正する。
なお、訂正事項1に係る訂正前の請求項1?14について、請求項2?14は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項2?14は訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されているから、本件訂正は一群の請求項1?14について請求されたものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、接着層の硬化開始温度T2とコート層のガラス転移温度T3との関係が「T3<T2」、すなわち0℃<T2-T3と規定されていたのを、「21℃≦T2-T3」と訂正することにより、T2及びT3の組合せを減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項1における「21℃」という下限値は、本件明細書の[0083]の表6に記載された実施例6において、接着層の硬化開始温度T2が151℃であり、コート層のガラス転移温度T3が130℃であることに基づくものであるから、訂正事項1は願書に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で行われたものである。
さらに、訂正事項1が、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。
そして、請求項1の訂正に連動する請求項2?14の訂正についても、請求項1と同様である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1?14に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?14に係る訂正事項1については、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1?14〕について訂正を認める。

3.本件発明について
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明14」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
熱発泡剤と105℃以下の軟化温度を有するエポキシ樹脂を含む接着剤組成物からなる接着層と、
該接着層の上に形成され、熱可塑性樹脂を含むコート層を有する接着シートであって、
前記コート層は、常温でタックを示さず、
前記接着シートを、前記接着層の硬化開始温度以上に加熱することにより、前記コート層の少なくとも一部が、前記接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失し、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき
21℃≦T2-T3
を満足することを特徴とする接着シート。
[請求項2]
前記熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
[請求項3]
T1が100℃以上200℃以下、T2が110℃以上250℃以下、T3が60℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の接着シート。
[請求項4]
加熱前の接着層の厚みをt1とし、コート層の厚みをt2としたとき、t2≦0.6・t1の関係を満足することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の接着シート。
[請求項5]
t2が0.5μm以上600μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の接着シート。
[請求項6]
t1が20μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の接着シート。
[請求項7]
前記接着剤組成物に含まれる前記エポキシ樹脂は、重量平均分子量が450以上1650以下であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の接着シート。
[請求項8]
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の接着シート。
[請求項9]
前記コート層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、及びナイロンからなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の接着シート。
[請求項10]
前記接着剤組成物に含まれる前記熱発泡剤は、熱膨張性微小球であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の接着シート。
[請求項11]
前記熱発泡剤は、接着剤組成物に含まれる熱硬化型樹脂100質量部に対して、1?30質量部含まれていることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の接着シート。
[請求項12]
接着層が形成される基材を含むことを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の接着シート。
[請求項13]
空隙の充填に用いることを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の接着シート。
[請求項14]
請求項1?13のいずれかに記載の接着シートを用いることを特徴とする画像表示装置、携帯電子機器又は自動車部品。」

4.取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1?14に係る特許に対して平成30年7月24日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
なお、各引用文献は、下記5.(1)「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。
理由I(進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1?14に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献1、2、4に記載された事項及びその他の事項(引用文献3、5、6)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

5.取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)引用文献及びその記載事項
1.特表2010-529285号公報(甲第1号証)
2.米国特許出願公開第2004/0076831号明細書(甲第2号証)
3.The Dow Chemical Company, "Resins from Dow Solid Epoxy Resins", EPOXY RESINS Product Overview Guide NORTH AMERICA, 米国, The Dow Chemical Company, p.12(甲第3号証)
4.米国特許第8105460号明細書(甲第4号証)
5.特願2015-560020号(本件特許に係る出願)における平成29年9月11日付け意見書(甲第5号証)
6.The Dow Chemical Company, "Product Information D.E.R.661", 商品カタログ, 米国, The Dow Chemical Company, 2000.12, p.1-2,[平成30年7月5日検索], インターネット

(i)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項18]
接着性材料を形成して自動車に適用する方法であって、以下の工程:
下記成分:
i)少なくとも15質量%かつ25質量%未満のエポキシ樹脂;
ii)少なくとも10質量%かつ15質量%未満のコポリマー;
iii)少なくとも13質量%かつ40質量%未満のコア/シェル衝撃改質剤;
iv)少なくとも17質量%かつ45質量%未満のエポキシ軟化剤;及び
v)少なくとも2質量%かつ6質量%未満の硬化剤
を含む接着性材料を形成する工程;
前記接着性材料を放出物質上の一部として配置する工程;
前記接着性材料を前記放出物質から除去し、前記接着性材料を前記自動車の第1表面の上又は隣に置く工程;及び
前記接着性材料が前記第1表面と前記自動車の第2表面を結合するように、前記接着性材料を120℃以上で加熱することによって活性化して、前記接着性材料を発泡かつ熱硬化させる工程
を含み;
前記接着性材料の硬化を含む活性化によって、前記衝撃改質剤が前記接着性材料内で不連続相を形成し;かつ
硬化すると、前記接着性材料が、0.8mm厚のEG-60被着体によるISO-11343の衝撃くさび剥離法を用いて約-40℃の温度で15N/mmより大きい衝撃強さを有するか、又は
硬化すると、前記接着性材料が、0.8mm厚のEG-60被着体によるISO-11343の衝撃くさび剥離法を用いて-30℃未満の温度で20N/mmより大きい衝撃強さを有する、
前記方法。
・・・
[請求項20]
前記接着性材料が、実質的に粘着性の外面と、一般的に粘着性でない取扱い層とを含み、かつ前記放出物質が前記外面の少なくとも一部に沿って配置される、請求項18又は19に記載の方法。」

(1-2)「[0001]
・・・
〔発明の分野〕
本発明は、一般的に接着性材料、該接着性材料の形成、及び該材料の、自動車などの製品の部品への適用に関する。
・・・
[発明が解決しようとする課題]
[0003]
従って、本発明は、自動車又は他の応用で使うために望ましい1つ以上の特性を示し、かつ/又は比較的適用しやすい、改良された接着性材料を提供しようとする。」

(1-3)「[0007]
〔詳細な説明〕
本発明は、改良された接着性材料、及びそれを組み入れた物品の提供に基礎を置いている。本接着性材料は、典型的に自動車などの製品の1つ以上の部品の第1表面、第2表面、又は両方への構造接着を与えるために利用される。本接着性材料はさらに又は代わりに、構造のキャビティ内、又は構造の表面上、又は製品(例えば、自動車)の1つ以上の構造部材(例えば、ボディパネル又は構造部材)に構造補強、シーリング、バッフリング(baffling)、音響減衰特性又はその組合せを与えることができる。」

(1-4)「[0009]
〔エポキシ樹脂〕
本明細書では、エポキシ樹脂という用語を用いて、少なくとも1つのエポキシ官能基を含む通常のエポキシ物質のいずれをも意味する。・・・1つの典型的なエポキシ樹脂はフェノール樹脂であってよく、ノバラック型又は他型の樹脂でありうる。例えば、ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールF樹脂、その組合せなどを利用しうる。さらに、いくつかの異なったエポキシ樹脂の種々の混合物をも利用してよい。適切なエポキシ樹脂の例は商標名DER(登録商標)(例えば、DER331、DER661、DER662)で、Dow Chemical Company、Midland、Michiganから市販されている。」

(1-5)「[0015]
〔発泡剤〕
所望により、活性化可能材料内に開いた及び/又は閉じた多孔性構造を形成する不活性ガスを生成するため接着性材料に1種以上の発泡剤を添加してよい。この様式では、接着性材料から製作される物品の密度を下げることができる。さらに、接着性材料の膨張は、接着力、シーリング能力、音響減衰、又は両方を改善するのに役立ちうる。当然に、接着性材料は如何なる発泡剤も無いか又は実質的に無くてもよい(例えば、0.17質量%未満)。発泡剤及び発泡剤促進剤の量は接着性材料内で広く変化してよく、所望の多孔性構造のタイプ、接着性材料の膨張の所望量、膨張の所望速度などによって決まる。活性化可能材料内の発泡剤及び発泡剤促進剤の量の典型的範囲は、好ましくは質量百分率で接着性材料中、約0.001質量%?約5質量%の範囲である。好ましい実施形態では、接着性材料は相対的に低い膨張及び/又は発泡を示すか或いは膨張及び/又は発泡を示さない。このような実施形態では、発泡剤の量は典型的に接着性材料の2質量%未満、さらに典型的には1%未満、なおさらに典型的には0.5質量%未満である。
発泡剤は、特に化学的発泡剤を利用する場合、1つ以上の窒素含有基、例えばアミド、アミン等を含みうる。適切な発泡剤の例としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4_(i)-オキシ-ビス-(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トリヒドラジノトリアジン及びN,N_(i)-ジメチル-N,N_(i)-ジニトロソテレフタルアミドが挙げられる。
さらに又は代わりに物理的発泡剤を利用しうる。一例として、熱にさらされると軟化かつ膨張する、溶媒充填型ポリマーシェルを使用しうる。」

(1-6)「[0018]
・・・
接着性材料の成分を決定する場合、接着性材料が適切な時と温度でのみ活性化する(例えば、流動し、発泡し、又は別なやり方で状態を変える)ように接着性材料を形成することが重要であろう。例えば、いくつかの用途では、室温又は生産環境内の周囲温度で接着性材料が反応性であると望ましくない。さらに典型的には、より高い処理温度で該活性化可能材料が活性化してきて流動する。例として、特に例えば塗装準備工程中に、高温で又は高いエネルギーレベルを加えて他成分と共に活性化可能材料を処理する場合、自動車組立プラントで遭遇する温度のような温度が適切であろう。多くの塗装作業(例えば、ペンキ及び/又はe-コート硬化オーブン内、乾燥作業などで)で遭遇する温度は、例えば、約250℃まで又はそれより高い範囲である。
[0019]
〔接着性材料の形成と適用〕
・・・
使用する成分によっては、接着性材料を活性化(例えば、ガスを生成、流動、硬化、又は別の態様で活性化)させうる一定の活性化温度未満に成分の温度を確実に留めることが重要な場合がある。特に、接着性材料が発泡剤を含む場合、典型的に、接着性材料を形成中又は接着性材料を表面に適用する前に、発泡剤、硬化剤、又は両方を活性化するであろう温度未満に接着性材料の温度を維持することが望ましい。接着性材料を低温で維持することが望ましい状況では、圧力又は圧力と熱の組合せを用いて成分を半固体又は粘弾性状態で維持して、接着性材料の成分を混ぜることが望ましい。接着性材料に熱、圧力又は両方を加えるために押出機、その他の種々の機械を設計した。
接着性材料の形成後、典型的に表面又は基材に該接着性材料を適用して活性化する。活性化可能材料が発泡剤を含む状況では接着性材料の活性化は少なくともある程度の発泡を含みうる。該発泡は、活性化可能材料が基材を濡らし、該基材との密接な結合を形成するのを補助することができる。しかし、これとは別に、活性化可能材料が発泡せずに活性化して軟化及び/又は流動しても実質的に基材を濡らして密接な結合を形成しうることは当然である。密接な結合の形成は、典型的には接着性材料が硬化すると起こるが、必ずしもそうであるわけではない。」

(1-7)「[0020]
〔構造接着剤〕
・・・
本発明の接着性材料を手動又は自動で(例えば、表面上への直接押出しによって)表面に適用しうる。好ましい実施形態では、接着性材料をプレフォーム部分として適用する。該実施形態では、例えば成型若しくは押出し及び/又は切断によって、接着性材料を形作って、実質的に予め決定された寸法の接着性材料部分に形成する。その後、この接着性材料部分を次に表面(複数可)に手動で適用し、自動で適用し、又は手動と自動を併用して適用する。好ましい実施形態では、図1を参照すると、本明細書で既に述べたように、接着性材料部分30を放出物質32(例えば、剥離紙)上に位置づけて、後に接着性材料部分を除去して1つ以上の表面に手動で適用し、自動で適用し、又は手動と自動を併用して適用できるようにする。部分その他としての接着性材料は適用前に実質的に粘着性なので、接着性材料の適用、特に手動適用を補助するため、取扱い層32を接着性材料36に適用することができる。取扱い層34はフィルム、コーティング、粉末、繊維性材料、ウェブ、その組合せ等であってよい。適切な取扱い層の例は、米国特許第6,811,864号及び米国特許出願公開2004/0076831に開示されている(両文献の内容をあらゆる目的のため参照によってここに援用する)。従って、接着性材料部分は、取扱いを容易にするため一般的に粘着性のない層を(約10μm未満?約2cm(例えば、約1mm未満のオーダーで))備えうる。構造接着性材料、層、又は両方を本発明の接着性材料で形成することも考えられる。」

(1-8)「[図1]」



(ii)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「1 . A method of forming a synthetic material, comprising:
providing a base material for of one or more components, the base material being an expandable material that is tacky at a temperature between about 0℃. and about 80℃.; and
providing at least one substantially non-tacky surface to the base material to form the synthetic material with the at least one substantially non-tacky surface and at least one tacky surface.
2 . A method as in claim 1 wherein the step of providing at least one substantially non-tacky surface includes forming a liquid admixture and applying the liquid admixture to at least one surface of the base material for forming a coating, the coating including the at least one substantially non-tacky surface. 」(第8頁claim1、2)
(当審仮訳:「1.合成材料を形成する方法であって、1種以上の部品のための基材を提供すること、ここで、前記基材は約0℃?約80℃の温度で粘着性である膨張性材料である;及び、少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面及び少なくとも1つの粘着性の表面を有する合成材料を形成するために、少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面を前記基材に提供すること;を含む方法。
2.前記少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面を提供するステップが、液体混合物を形成するステップと、前記液体混合物を前記基材の少なくとも1つの表面に塗布してコーティングを形成するステップとを含み、ここで、前記コーティングは少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面である、請求項1に記載の方法。」

(2-2)「BACKGROUND OF THE INVENTION
[0003] It is generally known to apply a synthetic material such as an expandable material, a structural material, a foamable material or the like to an article of manufacture for imparting strength, acoustic damping characteristics or the like to the article. Such synthetic materials are frequently used in articles such as buildings, containers, automotive vehicles or the like. In certain situations, it may be desirable for one surface of such a synthetic material to be tacky while another surface of the material is substantially non-tacky, for example, to allow an individual applying the synthetic material to handle the non-tacky surface of the synthetic material while adhering the tacky surface of the material to an article. An example of such a synthetic material is disclosed in commonly owned copending application Ser. No. 10/217,991, filed Aug. 13, 2002, herein expressly incorporated for all purposes. Thus, the present invention seeks to provide a novel synthetic material having at least one tacky surface and at least one substantially non-tacky surface.
SUMMARY OF THE INVENTION
[0004] The present invention is directed to a synthetic material, a method of forming the synthetic material, articles incorporating the synthetic material and methods of applying or using the synthetic material. The synthetic material typically includes a base material that is tacky at a temperature of less than about 80℃. for providing at least one tacky surface. The synthetic material may also include a substantially non-tacky surface provided by a coating, film or treatment applied to the base material. The coating, film or treatment preferably provides the substantially non-tacky surface at a temperature of up to about 40℃., but may exhibit adhesivity at a temperature greater than 120℃. (e.g. upon activation by heat or other stimulus).」(第1頁BACKGROUND OF THE INVENTION [0003]?SUMMARY OF THE INVENTION[0004])
(当審仮訳:「背景技術
[0003]製品に強度、音響減衰特性などを付与するために、膨張可能な材料、構造材料、発泡可能な材料などの合成材料を前記製品に適用することは一般に知られている。このような合成材料は、建物、容器、自動車のような製品において頻繁に使用される。特定の状況では、そのような合成材料の一方の表面が粘着性であり、他方の表面が実質的に非粘着性であることが望ましい場合があり、例えば、前記合成材料を、前記合成材料の非粘着性の表面を取り扱い、前記合成材料の粘着性表面を製品に接着するように、個別に適用することを可能にするためである。このような合成材料の一例は、2002年8月13日に出願された、同一所有者の同時係属出願である米国特許出願10/217991号に開示されており、ここにあらゆる目的のために明示的に組み込まれる。したがって、本発明は、少なくとも1つの粘着性表面及び少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面を有する新規な合成材料を提供することを目指している。
発明の概要
[0004]本発明は、合成材料、合成材料を形成する方法、合成材料を組み込んだ物品及び合成材料を塗布又は使用する方法に関する。合成材料は、典型的には、少なくとも1つの粘着性表面を提供するために約80℃未満の温度で粘着性の基材を含む。合成材料はまた、基材に適用されたコーティング、フィルム又は処理によって提供される実質的に非粘着性の表面を含んでもよい。前記コーティング、フィルム又は処理は、好ましくは、約40℃までの温度で実質的に非粘着性の表面を提供するが、120℃を超える温度で接着性を示すことがある(例えば、熱又は他の刺激)。」

(2-3)「[0011] Base Material
[0012] Generally speaking, the base material of the present invention is at least partially tacky at room temperature (e.g., about 23℃.) and is also preferably tacky at temperatures between about 0℃. and about 80℃. Additionally, the base material preferably exhibits reinforcement characteristics (e.g., imparts rigity, stiffness, strength or a combination thereof to a member), acoustic characteristics (e.g., absorbs sound), sealing characteristics or other advantageous characteristics. It is also preferable for the base material to be heat activated to expand or otherwise activate and wet surfaces which the base material contacts. After expansion or activation, the base material preferably cures, hardens and adheres to the surfaces that it contacts. It is preferable for the coating, film or treatment to have minimal detrimental effects upon the adhesivity of the base material and it is contemplated that the coating, film or treatment may enhance the adhesivity of the base material.
[0013] Depending on the purpose of the synthetic material, it is preferable for base material to exhibit certain characteristics such that some or all of these characteristic may also be exhibited by the synthetic material. For application purposes, it is often preferable that the base material exhibit flexibility, particularly when the base material is to be applied to a contoured surface of an article of manufacture. Once applied, however, it is typically preferable for the base material to be activatable to soften, expand (e.g., foam), cure, harden or a combination thereof. For example, and without limitation, a typical base material will include a polymeric material, such as an epoxy resin or ethylene-based polymer which, when compounded with appropriate ingredients (typically a blowing and curing agent), expands and cures in a reliable and predicable manner upon the application of heat or the occurrence of a particular ambient condition. From a chemical standpoint for a thermally-activated material, the base material may be initially processed as a flowable material before curing. Thereafter, the base material preferably cross-links upon curing, which makes the material substantially incapable of further flow. 」(第1?2頁[0011]?[0013])
(当審仮訳:「[0011]基材
[0012]一般的に言えば、本発明の基材は、室温(例えば、約23℃)で少なくとも部分的に粘着性であり、また約0℃?約80℃の温度で粘着性であることも好ましい。
さらに、前記基材は、好ましくは強化特性(例えば、部材に剛性、剛性、強度又はそれらの組合せを付与する)、音響特性(例えば、音を吸収する特性)、シール特性又は他の有利な特性を示す。前記基材が熱活性化されて膨張するか、さもなければ活性化されて基材が接触表面を濡らすこともまた好ましい。膨張又は活性化の後、前記基材は好ましくは硬化して硬くなり、それが接触する表面に接着する。前記コーティング、フィルム又は処理は、前記基材の接着性に及ぼす影響を最小限に抑えることが好ましく、前記コーティング、フィルム又は処理が前記基材の接着性を高めることも企図される。
[0013]合成材料の目的に応じて、これらの特性の一部又は全部が合成材料によって示されるように、基材は特定の特性を示すことが好ましい。適用目的のためには、しばしば、基材が可撓性を示すことが、特に基材を製品の外形表面に塗布する場合には、好ましい。しかしながら、一旦適用された後、基材が軟化、膨張(例えば発泡)、硬化、硬化又はそれらの組合せのために活性化可能であることが典型的には好ましい。例えば、限定するものではないが、典型的な基材は、エポキシ樹脂又はエチレン系ポリマーなどのポリマー材料を含み、それは、適切な試薬(典型的には発泡剤及び硬化剤)と配合されたとき、熱の適用又は特定の周囲条件の発生時に信頼性及び予見性のある形で膨張及び硬化する。熱的に活性化された材料の化学的な観点から、基材は、硬化前は流動性材料のように最初に処理されてもよい。その後、硬化時に基材は好ましくは架橋するので、材料は実質的にさらに流動することができない。」

(2-4)「[0020] In a highly preferred embodiment, the base material is epoxy-based and includes or is primarily composed of various epoxy containing materials. The base material may be formed from variety of formulations having epoxy material and preferably epoxy resin integrated therein. Epoxy resin is used herein to mean any of the conventional dimeric, oligomeric or polymeric epoxy materials containing at least one epoxy functional group. The epoxy materials may be epoxy containing materials having one or more oxirane rings polymerizable by a ring opening reaction.
・・・
[0022] In preferred embodiments, a substantial portion of the materials in the base material will typically have molecular weights that are low enough to maintain adhesive capability of the base material. For an elastomer-based or epoxy-based base material, it is preferable for at least about 5% by weight of the elastomer or epoxy materials to have a molecular weight less than about 1000 and more preferably at least about 10% by weight of the elastomer or epoxy materials have a molecular weight less than about 1000. It is also contemplated that, for maintaining adhesive capability, components such as plasticizers or processing oils may be added to elastomer-based or epoxy-based materials and particularly to the thermoplastic-based base material. 」(第2?3頁[0020]?[0022])
(当審仮訳:「[0020]非常に好ましい実施形態では、基材はエポキシ系であり、様々なエポキシ含有材料を含むか、又は主成分として構成されている。基材はエポキシ材料を含む様々な配合組成から形成されてよいものであり、好ましくはその中に組み込まれたエポキシ樹脂から形成される。本明細書において、エポキシ樹脂とは、少なくとも1つのエポキシ官能基を有する慣用の二量体、オリゴマー又はポリマーエポキシ材料のいずれの意味にも使用される。エポキシ材料は、開環反応によって重合可能な1つ以上のオキシラン環を有するエポキシ含有材料であってもよい。
・・・
[0022]好ましい実施形態では、基材中の実質的な部分の材料は、典型的には基材の接着能力を維持するのに十分な低い分子量を有する。エラストマー系又はエポキシ系の基材の場合、少なくとも約5重量%のエラストマー又はエポキシ材料が、約1000未満の分子量を有することが好ましく、より好ましくは少なくとも約10重量%のエラストマー又はエポキシ材料が、1000未満の分子量を有することが好ましい。また、接着能力を維持するために、可塑剤又は加工油などの成分がエラストマー系又はエポキシ系の材料、及び特に熱可塑性系の基材に添加され得ることも企図される。」)

(2-5)「[0024] Coating
[0025] According to one preferred embodiment, and referring to FIG. 2, a synthetic material 30 has a coating 32 that at least partially covers a surface 34 of a base material 36 for providing a substantially non-tacky or tack free surface 38 .
[0026] Preferably, the coating has some adhesive properties at elevated temperatures. For example, the coating may have a glass transition or activation temperature at or near the glass transition temperature or activation temperature of the base material (e.g., greater than 120℃.). Thus, the coating may become flowable and combine with the base material such that the coating, the base material or both can expand and/or adhere to a surface of a structural member.
[0027] Generally speaking, the coating is formed by applying an admixture to the base material in a partially or substantially liquid form followed by drying the admixture to form the coating. The admixture will typically include a combination of two or more of the following components: 1) one or more thermoplastic polymers; 2) one or more epoxy resins; 3) one or more curing agents (e.g., latent curing agents); and 4) a percentage solvent.
[0028] Preferably, the thermoplastic polymers, the epoxy resins, the curing agents or a combination thereof are provided in water-based forms to form the admixture as a water-based liquid, dispersion, emulsion, solution, a combination thereof or the like. It is also preferable for the thermoplastic polymers, the epoxy resins, the curing agents or combinations thereof to correspond and/or be identical to one or more components provided in the base material. Thus, any of the components of the admixture mentioned herein may also be present in the base material.
[0029] Examples of suitable thermoplastic materials include, but are not limited to, polyamides, polyolefins, polyethylene, polyvinyl chlorides, polyproylene, ethylenes combinations thereof or the like. The thermoplastic may be provided as a solid, but it preferably provided in at least partially liquid form (e.g., as an emulsion, a dispersion or the like). In one highly preferred embodiment, an ethylene based thermoplastic copolymer such as vinyl acetate ethylene is provided as an emulsion. According to preferred formulations, the admixture for the coating includes between about 5% and about 50% by weight thermoplastic polymers, more preferably, between about 10% and about 30% by weight thermoplastic polymers, and even more preferably between about 15% and about 25% by weight thermoplastic polymers. 」(第3頁[0024]?[0029])
(当審仮訳:「[0024]コーティング
[0025]1つの好ましい実施形態によれば、図2(当審注:後述されている部材の番号を参酌すると、「図1」の誤記と認められる。)に示すように、合成材料30は、実質的に非粘着性又は粘着性のない表面38を提供するために、基材36の表面34を少なくとも部分的に覆うコーティング32を有する。
[0026]好ましくは、前記コーティングは、高温でいくらかの接着特性を有する。例えば、前記コーティングは、前記基材のガラス転移温度又は活性化温度と同じ又はその付近のガラス転移又は活性化温度(例えば、120℃以上)を有することができる。したがって、前記コーティングは、前記基材又は両者が膨張及び/又は構造部材の表面に接着することができるように、流動性となり前記基材と結合することができる。
[0027]一般的に言えば、前記コーティングは、部分的又は実質的に液体の形態にある混合物を前記基材に塗布し、その後コーティングを形成するように前記混合物を乾燥させることにより形成される。前記混合物は、典型的には、以下の成分の2つ以上の組合せを含む。:1)1種以上の熱可塑性ポリマー;2)1種以上のエポキシ樹脂;3)1種以上の硬化剤(例えば、潜在性硬化剤);及び4)あるパーセンテージの溶剤。
[0028]好ましくは、前記熱可塑性ポリマー、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤又はそれらの組合せは、前記混合物が分散液、エマルション、溶液、又はそれらの組合せなどの水系液体を形成するように、水ベースの形態で提供される。前記熱可塑性ポリマー、前記エポキシ樹脂、前記硬化剤又はそれらの組合せが、基材中の1種以上の成分に対応する及び/又は同一のものであることもまた好ましい。したがって、本明細書に記載の前記混合物の成分はいずれも、前記基材中に存在してもよい。
[0029]適切な熱可塑性樹脂材料の例には、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレンの共重合体などが含まれるが、これらに限定されない。前記熱可塑性樹脂は固体として提供されてもよいが、好ましくは少なくとも部分的に液体の形態(例えば、エマルション、分散液など)で提供される。1つの非常に好ましい実施形態では、酢酸ビニルエチレンなどのエチレン系熱可塑性コポリマーがエマルションとして提供される。好ましい配合物によれば、コーティングのための混合物は、約5重量%?約50重量%の熱可塑性ポリマーを含有し、より好ましくは約10重量%?約30重量%の熱可塑性ポリマーを含有し、さらにより好ましくは約15重量%?25重量%の熱可塑性ポリマーを含有する。」)

(2-6)「

」(図1)

(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「

」(第12頁)
(当審仮訳:「固体エポキシ樹脂
グレード EEW(エポキシ当量)(gr/eq) 軟化点(℃) 説明
低分子量固体
D.E.R.^(TM)661 500-560 75-85
D.E.R.661固体エポキシ樹脂は標準的な"1-タイプ"のエポキシ樹脂です。適切な硬化剤とともに処方されたとき、それは、腐食的な雰囲気への暴露に耐える、多くの高品質の化学耐性コーティングのための優れたベースを形成します。」)

(iv)引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(4-1)「9. A method of applying an adhesive material to a member for providing sealing, structural adhesion, baffling, reinforcement or a combination thereof to the member, the method comprising:
providing the adhesive material; providing a handling layer; applying the handling layer to the adhesive material to form an adhesive part, the handling layer assisting the adhesive material in maintaining dimensional stability, the handling layer including: i. an epoxy resin the epoxy resin being solid; ii. an epoxy/elastomer adduct, a substantial portion of the adduct being solid; iii. a curing agent; iv. from about 1% to about 18% by weight of an elastomer that includes butadiene acrylonitrile rubber; and v. at least about 8% by weight of a core/shell polymer; wherein the core/shell polymer and at least a portion of the epoxy resin, the epoxy/elastomer adduct, or both are mixed and fed to an extruder in solid form without any liquid present; applying the adhesive part to a surface of the member, the member being part of an automotive vehicle; and activating the adhesive material during automotive paint or coating processing steps to cure and/or crosslink the adhesive material.」(第15欄claim9)
(当審仮訳:「9.部材に対して密封、構造的接着、調節、補強又はそれらの組合せを提供するために、部材に接着材料を塗布する方法であって、前記方法は:前記接着材料を提供するステップと;取扱い層を提供するステップと;接着部分を形成するために前記取扱い層を接着材料に塗布するステップと、ここで、前記取扱い層は、前記接着材料が寸法安定性を維持するのを助けるものであり、前記取扱い層は以下のものを含む:i.エポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂は固体であるもの;ii.エポキシ/エラストマー付加物であって、前記付加物の実質的な部分が固体であるもの;iii.硬化剤;iv.約1重量%?約18重量%のエラストマーであって、ブタジエンアクリロニトリルゴムを含むもの;v.少なくとも約8重量%のコア/シェルポリマー;ここで、前記コア/シェルポリマーと、エポキシ樹脂、エポキシ/エラストマー付加物又はその両方の少なくとも一つとが混合され、いかなる液体も存在しない固体形態で押出機に供給される;接着性部分を、自動車の一部である部材の表面に適用するステップと;及び自動車の塗装又はコーティングステップの間に接着材料を硬化及び/又は架橋するために、前記接着材料を活性化するステップと、を含む方法。」

(4-2)「BACKGROUND OF THE INVENTION
For many years, industry has been concerned with designing and providing adhesive materials for providing baffling, sealing, noise/vibration reduction, reinforcement, structural attachment or the like to articles of manufacture such as automotive vehicles. In certain instances, it can be desirable to apply these adhesive materials as pre-formed parts or masses such as strips, tapes or the like. However, these masses of adhesive material can be tacky and can undesirably adhere to persons, clothing, machines or other objects prior to or during application of the adhesive materials to an article of manufacture. Moreover, these masses of adhesive material can also undesirably deform (e.g., stretch) prior to or during application thereof, particularly in situations where the masses of adhesive material are relatively compliant or flowable. Thus, it is generally desirable to provide these adhesive material masses with at least one relatively non-tacky surface for handling purposes and/or to provide some dimensional stability to the masses and either or both are preferably accomplished without significantly adversely altering adhesive properties of the masses. As such, the present invention provides a layer (e.g., a film) for use with adhesive materials wherein the layer is substantially non-tacky and/or the layer provides a degree of dimensional stability to the adhesive material.」(第1欄10?34行)
(当審仮訳:「背景技術
長年にわたり、産業界は、調節、密封、騒音/振動の低減、補強、構造的取り付けなどを自動車のような製品に提供するために、接着材料の設計及び提供に関係してきた。場合によっては、これらの接着材料をストリップ、テープなどのような予め形成された部品又は塊として適用することが望ましい場合がある。しかし、これらの接着材料の塊は粘着性であり、接着材料を製品に適用するに先立って又は適用中に、人、衣服、機械又は他の物体に望ましくないほど付着する可能性がある。さらに、これらの接着材料の塊は、特に、前記接着材料の塊が比較的柔軟又は流動性である状況において、それを適用するに先立って又は適用中に、望ましくないほど変形(例えば、伸長)する可能性もある。したがって、取り扱いの目的のために少なくとも1つの比較的非粘着性の表面を有するこれらの接着材料の塊を提供すること、及び/又は、前記塊にある程度の寸法安定性を提供すること、のいずれか又は両者が、好ましくは前記塊の接着性に著しく悪い変化なしに達成されることが、一般的に望ましい。このように、本発明は接着材料と共に使用する層(例えばフィルム)を提供するものであり、ここで、前記層は実質的に非粘着性であり、及び/又は、前記層は前記接着材料にある程度の寸法安定性を提供するものである。」

(4-3)「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT
The present invention is predicated upon the provision of a handling layer, adhesive parts formed with the handling layer and a process of forming and/or using the handling layer, the adhesive parts or both. The handling layer is typically substantially non-tacky and it is typically desirable for the handling layer to be relatively dimensionally stable. The handling layer can be employed in conjunction with a variety of different adhesive materials, but has been found particularly useful when employed in conjunction with activatable adhesive materials. As used herein, the term activatable is used to refer to adhesive materials that melt, flow, wet, cure (e.g., thermoset and/or harden), expand (e.g., foam) or any combination thereof due to chemical reaction, exposure to an ambient condition or external stimulus (e.g., heat, radiation, moisture), combinations thereof or the like and can additionally be used to describe the handling layer. The parts formed by the present invention can be applied to members or substrates of components of various articles of manufacture such as boats, trains, buildings, appliances, homes, furniture or the like. It has been found, however, that the parts are particularly suitable for application to members of automotive vehicles or other transportation vehicles.」(第2欄4?27行)
(当審仮訳:「好ましい形態の詳細な説明
本発明は、取扱い層、前記取扱い層と共に形成された接着部分、及び前記取扱い層、前記接着性部分又はその両者を形成及び/又は使用する方法、を提供することが予定されるものである。前記取扱い層は、典型的には実質的に非粘着性であり、前記取扱い層が比較的寸法安定であることが典型的には望ましい。前記取扱い層は、様々な異なる接着材料と組合せにおいて使用され得るが、活性化可能な接着材料との組合せにおいて使用される場合に特に有用であることが見出された。本明細書においては、活性化可能という用語は、化学反応、周囲条件への暴露、又は外部からの刺激(例えば、熱、放射線、湿分)、その組合せなどに起因する、接着材料の溶融、流動、湿潤、硬化(例えば、熱硬化及び/又は硬化)、膨張(例えば、発泡)又はそれらの任意の組合せを参照するために使用され、さらに、取扱い層を記述するためにも使用される。本発明によって形成された部品は、ボート、列車、建物、家電製品、住宅、家具などの様々な製品の部品の部材又は基板に適用することができる。しかしながら、これらの部品は、自動車又は他の輸送車両の部材への適用に特に適していることがわかった。」)

(4-4)「Adhesive Material
The adhesive material may have a formulation that includes or is based upon one or more polymers that make up a polymeric base material. The polymeric base material can include epoxy resin, urethane, phenoxy resin, acrylate, acetate, ethylene polymer (e.g., copolymer), elastomer, a combination thereof or the like. It shall be recognized that, depending upon the application, a number of baffling, sealing, structural reinforcing, adhesive (e.g., for structural bonding and/or adhesion) or other materials, which may be expandable (e.g., foamable to form structural or sealing foams) or non-expandable, may be formulated in accordance with the present invention.
A typical material includes the polymeric base material which, when compounded with appropriate ingredients (typically a blowing a curing agent or both), activates (e.g., expands, foams, softens, cures, cross-links or a combination thereof) in a reliable and predictable manner upon the application of heat or the occurrence of a particular ambient condition. From a chemical standpoint for a thermally-activated material, which may be structural, sealing or acoustical, can be initially processed as a flowable material before curing, and upon curing, the material will typically cross-link making the material incapable of further flow.」(第8欄27?50行)
(当審仮訳:「接着材料
接着材料は、ポリマー基材を構成する1つ以上のポリマーを含むか又はそれをベースとする配合物を有することができる。ポリマー基材は、エポキシ樹脂、ウレタン、フェノキシ樹脂、アクリレート、アセテート、エチレンポリマー(例えば、コポリマー)、エラストマー又はそれらの組合せなどを含むことができる。用途に応じて、多数の調節、密封、構造補強、接着(例えば、構造的結合及び/又は接着のための)又はその他のための材料を本発明に従って配合することができ、それらは膨張可能(例えば、構造的又は密封用の発泡体を形成するために発泡可能)であっても、非発泡性であってもよい。
典型的な材料は、ポリマー基材を含み、適切な試薬(典型的には発泡剤及び硬化剤)と配合されたとき、熱の適用又は特定の周囲条件の発生時に信頼性及び予見性のある形で活性化(例えば、膨張、発泡、軟化、硬化、架橋又はそれらの組合せ)される。熱的に活性化された材料の化学的な観点から、基材は、構造、密封、音響のいずれであっても、硬化前は流動性材料のように最初に処理されてもよく、硬化時には、典型的には基材がさらに流動することができなくなるように架橋形成される。」)

(4-5)「The thickness (t1) of the adhesive layer, as shown in FIG. 1 , can vary fairly significantly and can be greater or smaller than the thickness of the handling layer, unless otherwise specifically stated. In preferred embodiments, the thickness (t1) of the adhesive material is typically at least about 5×(5 times), more typically at least at least about 15×, still more typically at least about 25× and even possibly at least about 40× the thickness (t1) of the handling layer.」(第9欄4?11行)
(当審仮訳:「特段言及のない限り、接着剤層の厚さ(t_(1))は、図1に示すように、かなり大きく変えることができ、取扱い層の厚さより大きくても小さくてもよい。好ましい実施形態では、接着材料の厚さ(t_(1))は、典型的には、取扱い層の厚さ(t_(1))の少なくとも約5×(5倍)、より典型的には少なくとも約15倍、さらに典型的には少なくとも約25倍であり、可能であれば少なくとも約40倍であってもよい。」)

(v)引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(5-1)「(2)しかし、コート層を消失させるために重要なのは、コート層を構成する熱可塑性樹脂の種類ではなく、該樹脂のガラス転移温度(T3)が接着層の硬化開始温度(T2)より低いことです。これによって、接着シートがT2以上の温度で加熱されると、コート層の樹脂がガラス状態から可動状態となって流動する結果、コート層から消失します。」(第2頁9?12行[意見の内容](III)(2)))

(vi)引用文献6には、以下の事項が記載されている。
(6-1)「D.E.R.661
Solid Epoxy Resin
Description
D.E.R.^(*)661 solid epoxy resin is a reaction product of liquid epoxy resin and bisphenol-A」(第1頁左欄1?6行)
(当審仮訳:「D.E.R.661
固体エポキシ樹脂
説明
D.E.R.^(*)661固体エポキシ樹脂は、液体エポキシ樹脂とビスフェノール-Aとの反応生成物である。
」)

(6-2)「

」(第1頁中央?右欄1?11行)
(当審仮訳:「典型的な性質^(1)
エポキシ当量,(g/eq) 500-560 ASTM D-1652
粘度@25℃(77°F),(cSt) 165-250^(2) ASTM D-445
溶融粘度@150℃,(mPa.s)400-800 ASTM D-4287
軟化点(℃) 75-85 RPM 108-C
粒子評価 パス ASTM DowM 101668
色,白金コバルト 100Max.^(2) ASTM D-1209
含水量,(ppm) 5000Max. ASTM E-203
シェルフライフ,(月) 24
^(1)典型的な性質;仕様として解釈されるべきではない
^(2)ジエチレングリコールモノブチルエーテル中40重量%」)

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の摘記1-1の請求項18には、「接着性材料を形成して自動車に適用する方法」が記載されており、上記「接着性材料」は、「下記成分:i)少なくとも15質量%かつ25質量%未満のエポキシ樹脂;ii)少なくとも10質量%かつ15質量%未満のコポリマー;iii)少なくとも13質量%かつ40質量%未満のコア/シェル衝撃改質剤;iv)少なくとも17質量%かつ45質量%未満のエポキシ軟化剤;及びv)少なくとも2質量%かつ6質量%未満の硬化剤を含む接着性材料を形成する工程;」と「前記接着性材料を放出物質上の一部として配置する工程」とによって形成されることが記載されており、上記エポキシ樹脂については、「例えば、ビスフェノールA樹脂、ビスフェノールF樹脂、その組合せなどを利用しうる」ものであり、「適切なエポキシ樹脂の例は商標名DER(登録商標)(例えば、DER331、DER661、DER662)で、Dow Chemical Company、Midland、Michiganから市販されている」こと(摘記1-4)が記載されている。
また、摘記1-1の請求項18には、「前記接着性材料を前記放出物質から除去し、前記接着性材料を前記自動車の第1表面の上又は隣に置く工程;及び前記接着性材料が前記第1表面と前記自動車の第2表面を結合するように、前記接着性材料を120℃以上で加熱することによって活性化して、前記接着性材料を発泡かつ熱硬化させる工程」により、「前記接着性材料の硬化を含む活性化によって・・・硬化する」ことが記載されているところ、上記接着性材料には、「1種以上の発泡剤を添加してよい」こと、及び「物理的発泡剤・・・一例として、熱にさらされると軟化かつ膨張する、溶媒充填型ポリマーシェルを使用しうる」こと(摘記1-5)が記載され、「特に、接着性材料が発泡剤を含む場合、典型的に、接着性材料を形成中又は接着性材料を表面に適用する前に、発泡剤、硬化剤、又は両方を活性化するであろう温度未満に接着性材料の温度を維持」し、「接着性材料の形成後、典型的に表面又は基材に該接着性材料を適用して活性化する。活性化可能材料が発泡剤を含む状況では接着性材料の活性化は少なくともある程度の発泡を含みうる」ようにすること(摘記1-6)が記載されていることから、上記発泡剤は、熱により活性化される発泡剤であることも読み取れる。
加えて、「好ましい実施形態」として、摘記1-7には、「接着性材料をプレフォーム部分として適用する。・・・例えば成型若しくは押出し及び/又は切断によって、接着性材料を形作って、実質的に予め決定された寸法の接着性材料部分に形成する」こと、「図1(当審注:摘記1-8)を参照すると、・・・接着性材料部分・・・を放出物質・・・(例えば、剥離紙)上に位置づけて、後に接着性材料部分を除去して1つ以上の表面に手動で適用・・・できるようにする」ことが記載されており、そのとき、「接着性材料は適用前に実質的に粘着性なので、接着性材料の適用、特に手動適用を補助するため、取扱い層・・・を接着性材料・・・に適用することができる」こと(摘記1-7)、すなわち、「前記接着性材料が、実質的に粘着性の外面と、一般的に粘着性でない取扱い層とを含み、かつ前記放出物質が前記外面の少なくとも一部に沿って配置される」ようにすること(摘記1-1の請求項20)が記載されているところ、上記「接着性材料」の「適用前」の温度は、「室温又は生産環境内の周囲温度」(摘記1-6)にあるものといえる。
そうすると、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「下記成分:i)少なくとも15質量%かつ25質量%未満のエポキシ樹脂;ii)少なくとも10質量%かつ15質量%未満のコポリマー;iii)少なくとも13質量%かつ40質量%未満のコア/シェル衝撃改質剤;iv)少なくとも17質量%かつ45質量%未満のエポキシ軟化剤;及びv)少なくとも2質量%かつ6質量%未満の硬化剤、及び熱により活性化される発泡剤を含み、粘着性の外面を有する接着性材料と、上記粘着性の外面の少なくとも一部に沿って配置される放出物質(剥離紙)と、上記接着性材料に適用される、室温において粘着性でない取扱い層とを有する、接着性材料のプレフォーム部分。」(以下、「引用発明」という。)

また、上記摘記1-1の請求項18に記載された、「接着性材料を形成して自動車に適用する方法」は、「自動車の第1表面」と「自動車の第2表面」とを「結合するように、前記接着性材料を120℃以上で加熱することによって活性化して、前記接着性材料を発泡かつ熱硬化させる工程」を含む方法であるから、引用文献1には、以下の発明も記載されているものと認められる。
「引用発明の接着性材料のプレフォーム部分を用いる自動車部品。」(以下、「引用発明b」という。)

(3)理由I(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、後者における「熱により活性化される発泡剤」、「エポキシ樹脂」、「粘着性の外面を有する接着性材料」、「接着性材料に適用される」、「取扱い層」及び「室温において粘着性でない」は、それぞれ前者における「熱発泡剤」、「エポキシ樹脂」、「接着剤組成物からなる接着層」、「接着層の上に形成され」、「コート層」及び「常温でタックを示さず」に相当する。
また、後者における「接着性材料のプレフォーム部分」は、「例えば成型若しくは押出し及び/又は切断によって、接着性材料を形作って、実質的に予め決定された寸法の接着性材料部分に形成」されたものであり(摘記1-7)、「接着性材料部分・・・を放出物質・・・(例えば、剥離紙)上に位置づけて」(摘記1-8)形成されるものであるから、実質的に「シート」の形状を有するものと認められる。
そうすると、両者は、
「熱発泡剤とエポキシ樹脂を含む接着剤組成物からなる接着層と、該接着層の上に形成されるコート層を有する接着シートであって、前記コート層は、常温でタックを示さない、接着シート。」の点で一致し、
相違点1:エポキシ樹脂が、前者においては「105℃以下の軟化温度を有する」のに対し、後者においてはそのようなことが明らかでない点、
相違点2:コート層が、前者においては「熱可塑性樹脂を含む」のに対し、後者においてはそのようなことが明らかでない点、
相違点3:接着層及びコート層が、前者においては「接着層の硬化開始温度以上に加熱することにより、前記コート層の少なくとも一部が、前記接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失」するものであるのに対し、後者においてはそのようなことが明らかでない点、
相違点4:接着層及びコート層が、前者においては「前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき 21℃≦T2-T3 を満足する」ものであるのに対し、後者においてはそのようなことが明らかでない点、
相違点5:接着シートが、後者においては「粘着性の外面の少なくとも一部に沿って配置される放出物質(剥離紙)」を有するのに対し、前者はそのような構成を備えることが特定されていない点
で相違する。そこで、上記相違点について検討する。

(イ)相違点4について
事案に鑑み、まず、相違点4について検討する。
引用文献1の摘記1-7には、「取扱い層」(本件発明1の「コート層」に相当する。)について、「適切な取扱い層の例は、米国特許第6,811,864号及び米国特許出願公開2004/0076831に開示されている」と記載されているから、後者の文献に当たる引用文献2に記載された事項について検討する。

(イ-1)「合成材料」の利用分野について
引用文献2の摘記2-2には、「建物、容器、自動車のような製品において」、「製品に強度、音響減衰特性などを付与するために、膨張可能な材料、構造材料、発泡可能な材料などの合成材料を前記製品に適用すること」が一般に知られており、「そのような合成材料の一方の表面が粘着性であり、他方の表面が実質的に非粘着性であることが望ましい場合があ」ること、「例えば、前記合成材料を、前記合成材料の非粘着性の表面を取り扱い、前記合成材料の粘着性表面を製品に接着するように、個別に適用することを可能にするため」に、「合成材料の一方の表面が粘着性であり、他方の表面が実質的に非粘着性」であることが望まれることが記載されている。
これらの記載からみて、引用文献2に記載された「合成材料」は、引用発明の「接着性材料のプレフォーム部分」及び本件発明1の「接着シート」に相当し、その利用分野及び利用目的は、引用文献1の摘記1-3等に記載された引用発明の利用分野及び利用目的(「典型的に自動車などの製品の1つ以上の部品の第1表面、第2表面、又は両方への構造接着を与えるために利用される。・・・構造部材(例えば、ボディパネル又は構造部材)に構造補強、シーリング、バッフリング(baffling)、音響減衰特性又はその組合せを与えることができる。」)と共通するものである。
また、引用文献2に記載された「合成材料の非粘着性の表面を取り扱い、・・・粘着性表面を製品に接着するように、個別に適用する」という目的は、引用文献1の摘記1-7に記載された、引用発明の「接着材料」に「取扱い層」を設ける目的(「接着性材料の適用、特に手動適用を補助するため、取扱い層・・・を接着性材料・・・に適用する」)と共通するものといえる。

(イ-2)「合成材料」の形成方法について
引用文献2の摘記2-1には、上記合成材料を形成する方法について、「1種以上の部品のための基材を提供すること、・・・;及び・・・少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面を前記基材に提供すること;を含む方法。」及び「前記少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面を提供するステップが、液体混合物を形成するステップと、前記液体混合物を前記基材の少なくとも1つの表面に塗布してコーティングを形成するステップとを含み、ここで、前記コーティングは少なくとも1つの実質的に非粘着性の表面である、請求項1に記載の方法。」が記載されており、摘記2-5には、「コーティングは、部分的又は実質的に液体の形態にある混合物を前記基材に塗布し、その後コーティングを形成するように前記混合物を乾燥させることにより形成される」ことが記載されている。
これらの記載からみて、引用文献2に記載された「基材」及び「コーティング」は、それぞれ引用発明における「粘着性の外面を有する接着性材料」及び「取扱い層」に相当するものといえる。

(イ-3)基材について
引用文献2の摘記2-3には、上記合成材料を構成する「基材」について、「室温(例えば、約23℃)で少なくとも部分的に粘着性であり、また約0℃?約80℃の温度で粘着性であることも好ましい」こと、「前記基材が熱活性化されて膨張する・・・こともまた好まし」く、「膨張又は活性化の後、前記基材は好ましくは硬化して硬くなり、それが接触する表面に接着する」こと、「典型的な基材は、エポキシ樹脂・・・などのポリマー材料を含み、それは、適切な試薬(典型的には発泡剤及び硬化剤)と配合されたとき、熱の適用又は特定の周囲条件の発生時に信頼性及び予見性のある形で膨張及び硬化する」ものであることが記載され、摘記2-4には、「非常に好ましい実施形態では、基材はエポキシ系であり、様々なエポキシ含有材料を含むか、又は主成分として構成されている」こと、「エポキシ材料が、約1000未満の分子量を有することが好ましく、より好ましくは少なくとも約10重量%の・・・エポキシ材料が、1000未満の分子量を有することが好ましい」ことが記載されている。これらの記載からみて、引用文献2に記載された「合成材料」の「基材」は、引用文献1の摘記1-4?1-6等に記載された引用発明の「接着材料」と同じく「エポキシ樹脂」、「発泡剤」、「硬化剤」を含有し、室温において粘着性を有する組成物であるといえる。

(イ-4)コーティングについて
引用文献2の摘記2-5には、上記合成材料を構成する「コーティング」について、「一般的に言えば、・・・部分的又は実質的に液体の形態にある混合物を前記基材に塗布し、その後コーティングを形成するように前記混合物を乾燥させることにより形成される。前記混合物は、典型的には、以下の成分の2つ以上の組合せを含む。:1)1種以上の熱可塑性ポリマー;2)1種以上のエポキシ樹脂;3)1種以上の硬化剤(例えば、潜在性硬化剤);及び4)あるパーセンテージの溶剤」、及び「適切な熱可塑性樹脂材料の例には、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、エチレンの共重合体などが含まれるが、これらに限定されない」ものであり、「1つの非常に好ましい実施形態では、酢酸ビニルエチレンなどのエチレン系熱可塑性コポリマーがエマルションとして提供される。好ましい配合物によれば、コーティングのための混合物は、約5重量%?約50重量%の熱可塑性ポリマーを含有し、より好ましくは約10重量%?約30重量%の熱可塑性ポリマーを含有し、さらにより好ましくは約15重量%?25重量%の熱可塑性ポリマーを含有する」ものであることが記載されている。

(イ-5)基材の活性化温度及びコーティングのガラス転移温度について
引用文献2の摘記2-5には、「好ましくは、前記コーティングは、高温でいくらかの接着特性を有する。例えば、前記コーティングは、前記基材のガラス転移温度又は活性化温度と同じ又はその付近のガラス転移又は活性化温度(例えば、120℃以上)を有することができる。したがって、前記コーティングは、前記コーティング、前記基材又は両者が膨張及び/又は構造部材の表面に接着することができるように、流動性となり前記基材と結合することができる」と記載されている。
ここで、引用文献2に記載された「基材の・・・活性化温度」は本件発明1における「T2」に相当し、引用文献2に記載された「コーティング・・・のガラス転移・・・温度」は本件発明1における「T3」に相当すると解されるが、引用文献2には、基材の活性化温度及びコーティングのガラス転移温度の具体的な数値までは記載されていないから、引用文献2における上記の記載を参酌しても、両温度の差(上記相違点4に係る「T2-T3」)を21℃以上にすることが、引用文献2に記載されているとはいえない。
また、引用文献2の上記記載に基づいて、コーティングは、基材が活性化温度以上(例えば、120℃以上)に加熱されたとき、流動性となり、基材と一緒になって構造部材の表面に接着することができるようになるように、上記活性化温度(T2)と同じ又はその付近のガラス転移温度(T3)を有する組成物として調製されるものと理解することができるとしても、「T2と同じ又はその付近のT3」という記載乃至示唆から、上記相違点4に係る「21℃≦T2-T3」の関係を有する具体的な温度設定に至ることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(イ-6)他の引用文献及び周知技術について
さらに、他の公知文献(引用文献4)及びその他の文献(引用文献3、5、6)を参照しても(摘記3-1?摘記6-2)、引用発明における「粘着性の外面を有する接着性材料」の活性化温度(T2)と、「取扱い層」(T3)とを、上記相違点4に係る「21℃≦T2-T3」の関係を有する具体的な温度に設定することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえないし、そのような温度設定が、本件特許に係る出願の優先日前に周知の技術的事項であったとも認められない。

(イ-7)申立人の主張について
申立人は、平成30年12月10日に提出した意見書の第3頁において、「そして、『コーティングが流動性となり基材と結合する』という現象を発現する為には、コーティングの『ガラス転移温度』が基材の『活性化温度』よりも低いことが当然必要であるが、それに加えて引用文献2の上記の記載は、
(1)コーティングの『ガラス転移温度』≒基材の『ガラス転移温度』
(2)コーティングの『活性化温度』≒基材の『活性化温度』
という2つの教示も具体的に意味している。・・・
これら教示のうち、特に教示(1)に従ってコーティング材料を選定すると、必然的に、そのコーティングの『ガラス転移温度(T3)』と基材の『活性化温度(T2)』は訂正後の請求項1の特定事項『21℃≦T2-T3』の範囲内となる筈である。なぜならば、基材に使用する発泡性エポキシ樹脂の塗工液の『活性化温度(T2)』は、硬化前の発泡性エポキシ樹脂の『ガラス転移温度』よりもかなり高い温度に設定されるのが一般的だからである。」と主張している。
しかし、引用文献2に記載された「コーティング材料」は、粘着性の「基材」の表面に実質的に非粘着性の表面を形成するために設けられるものであるから(摘記2-1、2-2)、「粘着性」の基材のガラス転移温度は比較的低く設定されている可能性はあるとしても、「非粘着性」のコーティング材料のガラス転移温度までもが上記教示(1)に従って同程度に低く設定されるとは考え難く、そうすると、引用文献2における上記教示を参酌しても、上記相違点4に係る「21℃≦T2-T3」の関係を有する具体的な温度設定をすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。

(イ-8)相違点4についてのまとめ
以上のことから、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、引用発明、及び引用文献1、2、4に記載された事項及びその他の事項び周知技術を参酌しても当業者が容易に想到することができたものとすることができない事項である。

(ウ)本件発明1についてのまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用発明、引用文献1、2、4に記載された事項及びその他の事項(引用文献3、5、6)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

イ 本件発明2?13について
本件発明2?13は、いずれも本件発明1を直接又は間接的に引用する発明であり、本件発明1の構成要件をさらに限定する要件を備える発明である。
そこで、本件発明2?13と引用発明とを対比、検討すると、本件発明1と同様の理由により、両者は少なくとも上記相違点4の点で実質的に相違するものであり、当該相違点4に係る構成については、引用発明、及び引用文献1、2、4に記載された事項及びその他の事項び周知技術を参酌しても当業者が容易に想到することができたものとすることができない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2?13は引用発明、引用文献1、2、4に記載された事項及びその他の事項(引用文献3、5、6)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

ウ 本件発明14について
本件発明14は、「請求項1?13のいずれかに記載の接着シートを用いることを特徴とする画像表示装置、携帯電子機器又は自動車部品。」に係る発明である。
本件発明14と引用発明bとを対比すると、後者における「接着性材料のプレフォーム部分」及び「自動車部品」は、それぞれ前者における「接着シート」及び「自動車部品」に相当するから、両者は、
「接着シートを用いる自動車部品。」の点で一致し、
相違点1’:接着シートが、前者においては「請求項1?13のいずれかに記載の接着シート」であるのに対し、後者においては「引用発明の接着性材料のプレフォーム部分」である点
で相違する。
そして、相違点1’は、具体的には、上記5.(3)ア(ア)「本件発明1と引用発明との対比」に記載した相違点1?相違点4に相当し、相違点4については、上記5.(3)ア(イ)「相違点4について」に記載したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は引用発明b、引用文献1、2、4に記載された技術的事項及びその他の事項(引用文献3、5、6)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

エ 理由I(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由通知に記載した理由I(進歩性)の理由によっては、本件請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。

6.特許異議申立理由について
申立人が申し立てた特許異議申立理由は、取消理由通知に記載した理由I(進歩性)に相当するから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

7.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱発泡剤と105℃以下の軟化温度を有するエポキシ樹脂を含む接着剤組成物からなる接着層と、
該接着層の上に形成され、熱可塑性樹脂を含むコート層を有する接着シートであって、
前記コート層は、常温でタックを示さず、
前記接着シートを、前記接着層の硬化開始温度以上に加熱することにより、前記コート層の少なくとも一部が、前記接着層とコート層の界面からコート層表面に至る範囲で消失し、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき
21℃≦T2-T3
を満足することを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記熱発泡剤の熱発泡温度をT1とし、前記接着層の硬化開始温度をT2とし、前記コート層のガラス転移温度をT3としたとき、T3<T1≦T2の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
T1が100℃以上200℃以下、T2が110℃以上250℃以下、T3が60℃以上140℃以下であることを特徴とする請求項2に記載の接着シート。
【請求項4】
加熱前の接着層の厚みをt1とし、コート層の厚みをt2としたとき、t2≦0.6・t1の関係を満足することを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の接着シート。
【請求項5】
t2が0.5μm以上600μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の接着シート。
【請求項6】
t1が20μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項4又は5に記載の接着シート。
【請求項7】
前記接着剤組成物に含まれる前記エポキシ樹脂は、重量平均分子量が450以上1650以下であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の接着シート。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の接着シート。
【請求項9】
前記コート層に含まれる前記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、及びナイロンからなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の接着シート。
【請求項10】
前記接着剤組成物に含まれる前記熱発泡剤は、熱膨張性微小球であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の接着シート。
【請求項11】
前記熱発泡剤は、接着剤組成物に含まれる熱硬化型樹脂100質量部に対して、1?30質量部含まれていることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の接着シート。
【請求項12】
接着層が形成される基材を含むことを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の接着シート。
【請求項13】
空隙の充填に用いることを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の接着シート。
【請求項14】
請求項1?13のいずれかに記載の接着シートを用いることを特徴とする画像表示装置、携帯電子機器又は自動車部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-19 
出願番号 特願2015-560020(P2015-560020)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 牟田 博一  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 天野 宏樹
日比野 隆治
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6223477号(P6223477)
権利者 ソマール株式会社
発明の名称 接着シート  
代理人 舛谷 威志  
代理人 加藤 慎司  
代理人 中尾 洋之  
代理人 舛谷 威志  
代理人 加藤 慎司  
代理人 中尾 洋之  

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