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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F17C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F17C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F17C
管理番号 1350653
異議申立番号 異議2017-701149  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-06 
確定日 2019-03-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6142434号発明「ボイルオフガス冷却方法及び装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6142434号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕、23について訂正することを認める。 特許第6142434号の請求項1ないし3、5ないし7、12ないし22に係る特許を維持する。 特許第6142434号の請求項4、8ないし11、23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6142434号の請求項1?23に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年4月19日(GB)英国、2011年11月3日(GB)英国)を国際出願日とする出願であって、平成29年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年6月7日に特許掲載公報が発行された。その後の、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成29年12月 6日 : 特許異議申立人赤松智信(以下「特許異議申立人」という)による請求項1-23に対する特許異議の申立て
平成30年 2月27日付け: 取消理由通知書
平成30年 5月28日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年 7月 4日 : 特許異議申立人による意見書の提出
平成30年 8月13日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
平成30年11月19日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、上記平成30年5月28日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人には上記平成30年7月4日に一度意見書の提出の機会を与えている。そして、上記平成30年11月19日の訂正請求は、平成30年5月28日にされた訂正請求と同じ内容か、特許請求の範囲の請求項1に訂正前の請求項4、8?10に記載された事項を付加したことに係るか、請求項の削除に係るものだけであるから、上記意見書の提出により実質的に意見を述べる機会は与えられているし、特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したため、平成30年11月19日の訂正請求に対しては、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する特別の事情にあたると判断して、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えていない。

2.平成30年11月19日の訂正請求に対する訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却する方法であって」と記載されているのを、
「液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却して戻す方法であって」と訂正する(下線部は訂正箇所を示し、以下同じ)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
を含むことを特徴とする方法。」と記載されているのを、
「前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
を含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された圧縮BOG分流(31)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG分流(31)を膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
をさらに含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を提供するステップと;
前記冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を膨張させて、膨張した追加的冷却BOG流(13)を提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08b)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップと
をさらに含み、
前記膨張した冷却BOG流(33)を前記冷却された排気流(51)と熱交換するステップがさらに、BOG再循環流(35)を提供し、
前記ボイルオフガス流(01)を、前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)を提供するステップと;
前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4、8?11を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」と訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」と訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項4または5に記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」と訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?11のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7のいずれかに記載の方法。」と訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?12のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12のいずれかに記載の方法。」と訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項16に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項5または8に記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。」と訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項17に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?16のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12?16のいずれかに記載の方法。」と訂正する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項19に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?18のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12?18のいずれかに記載の方法。」と訂正する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項21に、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?20のいずれかに記載の方法。」と記載されているのを、
「をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12?20のいずれかに記載の方法。」と訂正する。

ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項23を削除する。

ここで、訂正事項1?12は、訂正前に引用関係を有する請求項1?22に対して請求されたものであり、また、訂正事項13は、請求項23に対して請求されたものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されている。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明が、液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却する方法に留めていたものを、訂正により、ボイルオフガス流を冷却してから液化カーゴに戻す後処理を伴うものへと限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、明細書の段落【0011】に「本発明は、非凝縮のボイルオフガス成分を含み得る冷却された排気流を、圧縮され、冷却され、そして膨張させたBOG流と熱交換する方法を利用する。このようにして、さらに冷却された排気流が提供され、この排気流では、以前は非凝縮であった成分が再液化され、その後に、液相で液化カーゴタンクに戻ることができる。」と記載され、ボイルオフガス成分を含む排気流が冷却後に液化カーゴタンクに戻ることが示されているから、訂正事項1は、明細書に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項1は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明のボイルオフガス(BOG)流(01)を冷却する方法について、冷却するための多数のステップを追加して、方法を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、訂正事項2として付加されたステップは、訂正前の請求項4、8、9、10に記載されていた事項であるとともに、明細書の段落【0021】、【0029】、【0031】、【0032】や図2にも記載されているから、訂正事項2は、明細書に記載された事項の範囲内のものと認められ、新規事項の追加に該当しない。さらに、訂正事項2は、発明特定事項を直列的に付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3及び13について
訂正事項3は請求項4、8?11を削除するものであり、また、訂正事項13は請求項23を削除するものであるから、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 訂正事項4?12について
訂正事項4?12は、請求項4、8?11が削除されるのに伴い、請求項5?7、12、13、16、17、19、21が引用する請求項数を減少させるものであるから、それぞれ特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正についてのまとめ
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-22〕、〔23〕について訂正を認める。

3.当審の判断
(1)特許法第29条第2項
ア 訂正後の請求項1-23に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1-23に係る発明(以下「本件発明1」等という)は、その特許請求の範囲の請求項1-23に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却して戻す方法であって、前記液化カーゴが、1気圧で-110℃より高い沸点を有し、複数の成分を含む方法において:
前記液化カーゴからのボイルオフガス流(01)を、少なくとも第1圧縮段階(65)及び最終圧縮段階(75)を含む2つ以上の圧縮段階で圧縮して、圧縮BOG排出流(06)を提供するステップであって、前記第1圧縮段階(65)は第1段階排出圧力を有し、前記最終圧縮段階(75)は最終段階吸入圧力(75)を有し、1つ以上の中間圧縮BOG流(02,03,04)が、連続する前記圧縮段階間で提供されるステップと;
前記圧縮排出流(06)を冷却し分離して、冷却された排気流(51)を前記ボイルオフガスの非凝縮成分を含むガス流として提供し、前記ボイルオフガスの凝縮成分を含む冷却された圧縮BOG流(08)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を、前記第1段階排出圧力と前記最終段階吸入圧力との間の圧力まで膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
を含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された圧縮BOG分流(31)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG分流(31)を膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
をさらに含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を提供するステップと;
前記冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を膨張させて、膨張した追加的冷却BOG流(13)を提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08b)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップと
をさらに含み、
前記膨張した冷却BOG流(33)を前記冷却された排気流(51)と熱交換するステップがさらに、BOG再循環流(35)を提供し、
前記ボイルオフガス流(01)を、前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)を提供するステップと;
前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記膨張した冷却BOG流の、前記冷却された排気流(51)との熱交換がさらに、冷却された中間的圧縮BOG流(03)またはBOG再循環流(35)を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BOG再循環流(35)を、中間的圧縮BOG流(02,03a)に加えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08a)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ボイルオフガス流(01)を前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、冷却された中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記膨張した冷却BOG流(33)との熱交換がさらに、BOG再循環流を提供し、前記方法が:
前記ボイルオフガス流(01)を、前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記BOG再循環流を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)に加えて、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、冷却された中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
前記さらに冷却された排気流(53)を膨張させて、さらに冷却され膨張した排気流(61)を提供するステップと;
前記さらに冷却され膨張した排気流(61)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記さらに冷却された排気流(53)を分離して、排気排出流(55)及び冷却された排気BOG戻り流(57)を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記冷却された排気BOG戻り流(57)を膨張させて、膨張した冷却排気BOG戻り流(59)を提供するステップと;
前記膨張した冷却排気戻り流(59)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却された排気BOG戻り流(57)を膨張させて、膨張した冷却排気BOG戻り流(59)を提供するステップと;
前記膨張した冷却排気戻り流(59)を、前記排気排出流(55)と熱交換して、熱交換された排気BOG戻り流、冷却された排気排出流、及び他の排気排出流を提供するステップと;
前記冷却された排気排出流を膨張させて、膨張した冷却排気排出流を提供するステップと;
前記熱交換された排気BOG戻り流及び前記膨張した冷却排気排出流を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記さらに冷却された圧縮BOG流(09)を膨張させて、膨張した冷却BOG戻り流(10)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG戻り流(10)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記液化カーゴがLPGであることを特徴とする請求項1?3,5?7,12?16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記液化カーゴが3.5mol%以上のエタンを含むLPGであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧縮BOG排出流(06)を、1つ以上の熱交換流体で冷却して、前記冷却された圧縮BOG流(08)を提供することを特徴とする請求項1?3,5?7,12?18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記熱交換流体が、海水流及び/または外気流であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧縮段階(65,75)が、多段階圧縮機の圧縮段階であることを特徴とする請求項1?3,5?7,12?20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記圧縮BOG排出流(06)を冷却し分離するステップが:
前記圧縮BOG排出流(06)を、シェルアンドチューブ熱交換器内の熱交換流体で冷却して、温められた熱交換流体、前記冷却された排気流(51)、及び前記ボイルオフガスの凝縮成分を含む冷却された圧縮排出流(07)を提供し、前記冷却された圧縮排出流(07)を排出受入器(205)に渡し、この排出受入器が、前記冷却された圧縮BOG流(08)を排出すること;または、
前記圧縮BOG排出流(06)を、プレート型熱交換器(200)内で冷却して、冷却された圧縮排出流(07)を提供し、前記冷却された圧縮排出流(07)を、排出受入器(205)内で分離して、前記冷却された排気流(51)及び前記冷却された圧縮BOG流(08)を提供すること
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】(削除)」

イ 刊行物の記載
(ア)甲第1号証(国際公開第96/22221号)
上記甲第1号証には、ガス状炭化水素の再凝縮技術について、次の事項が記載されている。(下線は理解の便のため当審で付与)

a 「The invention concerns a method for recondensation of gaseous hydrcarbons from mixtures of inert gases and gaseous hydrocarbon, as stated in the introductory of claim 1.」(明細書1ページ3?5行)
(本発明は、請求項1の前提部において述べられるように、不活性ガスとガス状炭化水素との混合物からガス状炭化水素を再凝縮するための方法に関する。)

b 「Gas present in tanks in LPG/LEG ships at reloading is removed by means of nitrogen or an inert gas.」(明細書1ページ8?9行)
(再積み込み時にLPG/LEG船のタンク内に存在するガスは、窒素または不活性ガスを用いて除去される。)

c 「According to the present method, the condensate and the cargo gas composition are heat exchanged with a part of its condensate and cargo gas/inert gas mixture, which is to be relased to the atmosphere or burned, in a separate condensation step.
More particularly, after compression in at least one step the gas phase from the gas tank is partly condensed in the recondensation plant cargo condenser by means of cooling water or another suitable coolant. The mixture comprising condensate and cargo gas/inert gas is then conveyed to a first phase separator, e.g. the ordinary liquid collector in the recondensation plant.」(明細書2ページ1?8行)
(本方法によれば、凝縮液および貨物ガス組成物は、その凝縮液および貨物ガス/不活性ガス混合物の一部を用いて熱交換され、これは、別個の凝縮ステップにおいて、大気へ放出され、または燃焼される。
より詳細には、少なくとも1つのステップにおける圧縮の後、ガスタンクからの気相は、冷却水または別の適切な冷媒を用いて再凝縮設備貨物凝縮器(recondensation plant cargo condenser)において部分的に凝縮される。次いで、凝縮液と貨物ガス/不活性ガスとを含む混合物は、第1の相分離器へ、例えば、再凝縮設備における通常の液体収集器へ運ばれる。)

d 「According to Fig. 1 the storage tank 150 for LPG/LEG gas is supplied with an inert gas from line 190 whereby the off-gas is displaced and pushed out of the storage tank via line 100 (and later on in the recondensation course together with the return flow 113 from the recondensation plant) and line 101 to a first compression step 151. The compressed off-gas 102 is then cooled in an intermediate cooler, here indicated as an ordinary injection intermediate cooler by means of flow 117. The cooled off-gas is conveyed from the injection intermediate cooler via line 103 to a second compression step 152, optionally to the highest allowable pressure. It is then conveyed via line 104 to the cargo condenser 153, in which the superheated gas is cooled and condensed partially in heat exchange with a cryogenic coolant or an ordinary cooling medium (for example seawater).
At the outlet of the condenser 153 a part of the hydrocarbon content will be condensed, dependent on the temperature in flow 105 out of the heat exchanger and on the inert gas content.」(明細書3ページ12?25行)
(図1によれば、LPG/LEGガス用の貯蔵タンク150には、導管190から不活性ガスが供給され、それによって、オフガスが置換され、貯蔵タンクから導管100(および、後に、再凝縮過程においては、再凝縮設備からの還流113と共に)および導管101を介して第1の圧縮ステップ151へ押し出される。次いで、圧縮されたオフガス102は、ここでは、フロー117によって通常の噴射中間冷却器として示される、中間冷却器において冷却される。冷却されたオフガスは、噴射中間冷却器から導管103を介して第2の圧縮ステップ152へ、任意で、許容可能な最高圧力まで運ばれる。次いで、それは、導管104を介して貨物凝縮器153へ運ばれ、貨物凝縮器153において、過熱されたガスは、低温冷媒または通常の冷却媒体(例えば、海水)を用いた熱交換において部分的に冷却され、凝縮される。
凝縮器153の出口では、炭化水素含有量の一部が、熱交換器からのフロー105の温度と、不活性ガス内容物とに応じて、凝縮されるであろう。)

e 「The partially condensed off-gas is then conveyed to a first phase separator 156 via line 105, in which inert-containing gas is separated and conveyed via line 107 to a separate heat exchanger 154 and heat exchanged to a part of its own condensate from line 106 after the latter has been cooled in the intermediate cooler 162. In the separate heat exchanger 154 further cargo gas is condensed from the gas flow from the top of the first phase separator. The resulting composition comprising condensate and inert gas/cargo gas is then withdrawn from the heat exchanger 154 in flow 108 and expanded in a throttle valve 157 to a lower pressure and transported to a second phase separator 160.
The condensate in line 106 from the first phase separator 156 is split into two flows: (i) flow 114 which is expanded to a pressure at or just above the pressure in the second compressor step in throttle valve 163 and transported to the intermediate cooler 162 and then to the suction end of the second compression step 152, and (ii) flow 115, which is also led to the intermediate cooler 162 and cooled by heat exchange with evaporating condensate in the parallel expanded flow 114, and the cooled condensate component flow is then conveyed to the separate heat exchanger 154 via line 118 and split into flow 111 and flow 110. Flow 111 is expanded in valve 155 and supplied to the separate heat exchanger 154 in which the condensate evaporates and is transported via line 113 back to the suction end of the first compression step 151. Second flow 110, is optionally cooled in the separate heat exchanger 154 and is then conveyed to the second phase separator 160 after expansion in valve 158.」(明細書3ページ26行?4ページ15行)
(次いで、部分的に凝縮されたオフガスは、導管105を介して第1の相分離器156へ運ばれ、第1の相分離器156において、不活性含有ガスが分離され、導管107を介して別個の熱交換器154へ運ばれ、導管106からのそれ自体の凝縮液が中間冷却器162において冷却された後に、導管106からのそれ自体の凝縮液の一部と熱交換される。別個の熱交換器154では、さらなる貨物ガスが、第1の相分離器の上部からのガスフローから凝縮される。次いで、凝縮液と不活性ガス/貨物ガスとを含む、結果として生じる組成物は、熱交換器154からフロー108へ引き出され、絞り弁157においてより低い圧力へ膨張され、第2の相分離器160へ移送される。
第1の相分離器156からの導管106中の凝縮液は、2つのフロー、すなわち、(i)絞り弁163において第2の圧縮器ステップにおける圧力または第2の圧縮器ステップより少し上の圧力へ膨張され、中間冷却器162へ、次いで、第2の圧縮ステップ152の吸引端へ移送されるフロー114と、(ii)やはり中間冷却器162へ導かれ、並行する膨張フロー114内の蒸発する凝縮液を用いた熱交換によって冷却されるフロー115であって、次いで、冷却された凝縮液成分フローが、導管118を介して別個の熱交換器154へ運ばれ、フロー111およびフロー110へ分割される、フロー115と、に分割される。フロー111は、弁155において膨張され、別個の熱交換器154へ供給され、別個の熱交換器154において、凝縮液は蒸発し、第1の圧縮ステップ151の吸引端へ導管113を介して移送される。第2のフロー110は、任意で、別個の熱交換器154において冷却され、次いで、弁158における膨張後に、第2の相分離器160へ運ばれる。)

f 「The liquid component from the second phase separator 160 is supplied to a storage tank 161. The gas component from the second phase separator is expanded in valve 159 and supplied to the separate heat exchanger 154 in which the hydrocarbon component(s) evaporate and cools condensate and gas fraction from the first phase separator 156 from flows 110 and 107, respectively.
The gas fraction from the second phase separator 160 is transported out of the separate heat exchanger 154 and to atmosphere in line 143 or to a flare for combustion.」(4ページ16?23行)
(第2の相分離器160からの液体成分は、貯蔵タンク161へ供給される。第2の相分離器からのガス成分は、弁159において膨張され、別個の熱交換器154へ供給され、別個の熱交換器154において、炭化水素成分は、第1の相分離器156からのフロー110および107それぞれからの凝縮液およびガス留分を蒸発させ、冷却する。
第2の相分離器160からのガス留分は、別個の熱交換器154から導管143中の空気へ、または燃焼のためにフレアへ移送される。)

g 「During the first period of the gas removal the off-gass from the cargo tank in for example LPG/LEG ships will be pure, i.e. free from inert gas, and the conventional recondensation plant may be used in a manner known per se directly for recovery of the off-gas, whereupon the condensate may be conveyed to a storage tank or similar.」(明細書4ページ24?27行)
(ガス除去の第1の期間中に、例えば、LPG/LEG船の貨物タンクからのオフガスは、純粋であり、すなわち、不活性ガスを含まず、従来の再凝縮設備が、オフガスの回復のためにそれ自体が知られている手法で直接使用されてもよく、その後、凝縮液は、貯蔵タンクまたは同様のものへ運ばれてもよい。)

h 図1


i 甲第1号証に記載された発明
上記摘記事項からみて、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という)が記載されていると認められる。
「LPG/LEG船の貯蔵タンク150内のオフガスを、再積み込み時にLPG/LEG船内で再凝縮して貯蔵タンク161へ供給する方法であって、前記貯蔵タンク150がLPG/LEGガス用のものである方法において:
前記貯蔵タンク150からのオフガスを、第1の圧縮ステップ151により圧縮されたオフガス102とし、次いで、圧縮されたオフガス102を第2の圧縮ステップ152で最高圧力まで圧縮すること;
前記最高圧力まで圧縮されたオフガスを貨物凝縮器153で冷却、凝縮し、第1の相分離器156において不活性含有ガスが分離されて導管107を介して運び、第1の相分離器156からの凝縮液は導管106で運ぶこと;
前記第1の相分離器156からの凝縮液のフロー115を、分割してフロー111とし、弁155で膨張させ、熱交換器154で蒸発させ、前記第1の圧縮ステップ151の吸引端へ移送すること;
前記弁155で膨張させた凝縮液のフロー111を、前記分離された不活性含有ガスと熱交換器154で熱交換して、さらに冷却された不活性ガス等を含む組成物のフロー108を引き出すこと
を含み、
前記第1の相分離器156からの凝縮液のフロー115を、分割してフロー111として運ぶこと;
前記分割したフロー111を弁155で膨張させること;
前記膨張させたフロー111を、導管107を介して供給される不活性含有ガスと熱交換器154で熱交換して、さらに冷却された不活性ガス等を含む組成物のフロー108を引き出すこと
をさらに含み、
前記第1の相分離器156からの凝縮液から一部をフロー114として取り出すこと;
当該フロー114を絞り弁163で膨張させること;
当該フロー114を膨張させたものを、中間冷却器162において、前記第1の相分離器156からの凝縮液の一部であるフロー115と熱交換して、冷却された凝縮成分フローを導管118で運ぶこと
をさらに含み、
前記膨張させたフロー111を、導管107を介して供給される不活性含有ガスと熱交換器154で熱交換することで環流113を提供し、
前記貯蔵タンク150からのオフガスを、第1の圧縮ステップ151により圧縮して、圧縮されたオフガス102とすること;
前記フロー114を膨張させて中間冷却器162で熱交換したフロー117により、噴射中間冷却器で前記圧縮されたオフガス102を冷却し、冷却されたオフガスを提供すること;
前記環流113を第1の圧縮ステップ151へ押し出すこと、及び、前記冷却されたオフガスを第2の圧縮ステップ152の吸引端へ移送すること
をさらに含む方法。」

(イ)甲第2号証(国際公開第2010/108464号)
上記甲第2号証には、「液体ガス輸送用船舶のための駆動機械を運転するための方法及び装置」について、次の事項が記載されている。

a 「[0032] Die in Fig. IA dargestellte Anlage ist auf einem Schiff aufgebaut und zeigt einen Gasbehalter 20, aus dem uber eine Leitung 21 Boil-Off-Gas, nachstehend auch Medium genannt, entnommen werden kann.・・・ Die im Ausdampfbehalter 32 gebildete Flussigkeit wird uber eine Leitung 33 und ein Entspannungsventil 43 uber eine Leitung 44 an einen Einlass 45 des Gasbehalters 20 zuruckgefuhrt.」
(【0032】 図1Aで表わされた設備は船上に構築されており、導管21を介して、以下においては媒体とも呼ばれるボイルオフガスを取り出すことができるガスタンク20を示している。・・・蒸発タンク32内で形成された液体は、導管33と膨張弁43とを介し導管44を介して、ガスタンク20の流入口45に戻される。)

b 「[0033] Die dampfformige Phase des Gases im Ausdampfbehalter 32 fuhrt durch eine Leitung 34, uber den Warmetauscher 28, von dort uber eine Leitung 35 zum Warmetauscher 24 sowie eine Leitung 37 zuruck zu einem Einlass 42 des Kompressors 22.」
(【0033】 蒸発タンク32内のガスの蒸気相は、導管34を通り熱交換器28を介して、そこから導管35を介して熱交換器24に至り、かつ導管37を介してコンプレッサ22の流入口42に戻る。)

(ウ)甲第3号証(国際公開第2005/047761号)
上記甲第3号証には、「ボイルオフ・ガスの温度制御を行う装置と方法」について、次の事項が記載されている。

a 「The cold box 30 produces LNG, but the boil-off gas may not have been completely liquefied: Some portions of gas (predominantly nitrogen and some small amounts of methane) remain together with the LNG flowing out of the cold box. Hence, the nitrogen separator 80 and the accociated control unit 70 are customarily included in the circuit.
Subsequent of any necessary and desirable process steps, as may vary depending on the application, LNG is returned to the storage tank. This is indicated at the lower left-hand side of figure 2.」(明細書5ページ2-9行)
(【0023】
コールドボックス30はLNGを生じるが、ボイルオフ・ガスは完全には液化されない。一部のガス(主として窒素と少量のメタン)が残存し、コールド・ボックスからLNGと共に流出する。そして、窒素分離器80と関連する制御装置70が回路内に通常含まれる。
【0024】
用途により異なるが、必要で望ましい処理ステップの後で、LNGが貯蔵タンクに戻される。これは図2の左下側に示されている。)

b 「Figure 4 illustrates an alternative embodiment of the apparatus according to the invention. As an alternative to mixing the fully evaporated LNG from conduit 26 with the boil off gas feed line upstream of the combined mist separator and heat exchanger (as shown in figure 2), is to route conduit 26' to the discharge of the first compression stage of compressor 10. This may result in marginal power savings.」(明細書6ページ10-14行)
(【0031】
図4は本発明に基づく装置の代替的実施態様を示す。導管26からの完全に蒸発したLNGをボイルオフ・ガス供給配管を用いて、(図2に示すように)ミスト分離器・熱交換器の一体化装置の上流で混合する代わりとして、導管26’を圧縮機10の第一圧縮段の吐き出し口に接続することである。これにより、僅かな動力節減になる。)

(エ)甲第4号証(米国特許第5036671号明細書)
上記甲第4号証には、「天然ガスを液化する方法」について、次の事項が記載されている。

a 「Liquid from phase separator 16 also enters passage 72 at a suitable position in heat exchange apparatus 140 as previously described and is vaporized and heated also to ambient temperature. The total stream heated in passage 72 leaves heat exchange apparatus 140 by way of line 82.」(6欄32-37行)
(相分離器16からの液体は、前述されたような熱交換装置140内の適切な位置における流路72にも入り、気化され、やはり周囲温度まで加熱される。流路72において加熱されたストリーム全体は、熱交換装置140から導管82を経由して離れる。)

b 「Liquid leaves phase separator 34 through line 42 and is expanded either by valve 48 directly into the top of the liquid natural gas (LNG) storage tank 54 or by valve 44 into phase separator 50.」(6欄45-49行)
(液体は、導管42を通って相分離器34を離れ、弁48によって直接液体天然ガス(LNG)貯蔵タンク54の上部へ、または弁44によって相分離器50内へ、膨張される。)

c 「The gas leaves intercooler 68 and is compressed, together with the gas in line 82, in the second stage 84 of the compressor.」(6欄下から2行-7欄1行)
(ガスは中間冷却器68を離れ、導管82内のガスと共に、圧縮器の第2のステージ89において圧縮される。)

ウ 本件発明1について
本件発明1の「液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却して戻す方法」は、最初に「前記液化カーゴからのボイルオフガス流(01)を、」「2つ以上の圧縮段階で圧縮して、圧縮BOG排出流(06)を提供するステップ」及び、「前記圧縮排出流(06)を冷却し分離して、」「前記ボイルオフガスの凝縮成分を含む冷却された圧縮BOG流(08)を提供するステップ」を行うことで、液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を冷却された圧縮BOG流(08)にするものである。
次に、前記圧縮BOG流(08)に対して、以下の2つの処理を行う。
「前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された圧縮BOG分流(31)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG分流(31)を膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
前記膨張した冷却BOG流(33)を前記冷却された排気流(51)と熱交換するステップがさらに、BOG再循環流(35)を提供」することからなる処理。(以下「処理A」という)
「前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を提供するステップと;
前記冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を膨張させて、膨張した追加的冷却BOG流(13)を提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08b)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップと
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)を提供するステップ」からなる処理。(以下「処理B」という)
その後、上記処理Aによって提供された「BOG再循環流(35)」及び上記処理Bによって提供された「冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)」は、以下のステップで混合されて「第2圧縮段階の吸入側」に供給されるようになっている。
「前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップ」
そして、上記処理A及び処理Bは、両方ともに「前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して」行われ、かつ、それぞれの処理で提供された流体を混合していることからみても、並列的に処理が行われているものである。

一方、甲1発明の「LPG/LEG船の貯蔵タンク150内のオフガスを、再積み込み時にLPG/LEG船内で再凝縮して貯蔵タンク161へ供給する方法」を、本件発明1と対比してみると、本件発明1の上記処理処理A及び処理Bに対応する部分は、以下のとおりである。
「前記第1の相分離器156からの凝縮液のフロー115を、分割してフロー111として運ぶこと;
前記分割したフロー111を弁155で膨張させること;
前記膨張させたフロー111を、導管107を介して供給される不活性含有ガスと熱交換器154で熱交換して、さらに冷却された不活性ガス等を含む組成物のフロー108を引き出すこと
前記膨張させたフロー111を、導管107を介して供給される不活性含有ガスと熱交換器154で熱交換することで環流113を提供」すること。(処理Aに対応する部分で以下「処理a」という)
「前記第1の相分離器156からの凝縮液から一部をフロー114として取り出すこと;
当該フロー114を絞り弁163で膨張させること;
当該フロー114を膨張させたものを、中間冷却器162において、前記第1の相分離器156からの凝縮液の一部であるフロー115と熱交換して、冷却された凝縮成分フローを導管118で運ぶこと
前記フロー114を膨張させて中間冷却器162で熱交換したフロー117により、噴射中間冷却器で前記圧縮されたオフガス102を冷却し、冷却されたオフガスを提供すること;」(処理Bに対応する部分で以下「処理b」という)
そして、上記処理a又は処理bの「第1の相分離器156からの凝縮液」とは、すなわち本件発明1の「冷却された圧縮BOG流(08)」に相当し、それぞれの処理内容から考えて、同様に「環流113」は「BOG再循環流(35)」に、「冷却されたオフガス」は「冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)」にそれぞれ相当するものと認められる。
しかし、甲1発明における上記処理a及び処理bは、両処理が並列的に行われるものではなく、最初に第1の相分離器156からの凝縮液を2本に分流して処理bを行い、さらに、一方の冷却されたフロー115を用いて処理aを行うものであるから、2つの処理が直列的に行われている点で、甲1発明は本件発明1と相違している。
また、上記処理bの後に処理aが行われていることから、処理bを行うことで提供される「冷却されたオフガス」はその後「第2の圧縮ステップ152の吸引端へ移送する」ことになるのに対し、処理aを行うことで提供される「環流113」はその後「第1の圧縮ステップ151へ押し出す」ことになり、それぞれの流体の供給先が異なることになり、この点でも甲1発明は本件発明1と相違している。

そうすると、本件発明1が上記処理A及び処理Bを並列的に行うもので、それぞれの処理で提供された「前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップ」を有しているのに対し、甲1発明は上記処理bの後に処理aを行うもので、処理bを行うことで提供される「冷却されたオフガス」はその後「第2の圧縮ステップ152の吸引端へ移送」され、処理aを行うことで提供される「環流113」はその後「第1の圧縮ステップ151へ押し出す」ことになる点で、両者は相違している。
そして、上記相違点については、甲第2号証ないし甲第11号証には記載も示唆もされていない。
さらに、上記相違点に係る「前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップ」を行うことで、第1圧縮段階と第2圧縮段階との間の中間圧力でBOG再循環流(35)を圧縮BOG流に戻すことができ、改善された冷却性能と効率を提供する効果が得られるものである。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

エ 本件発明2、3、5?7、12?22について
本件発明2、3、5?7、12?22は、本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を限定するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第11号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
したがって、本件発明2、3、5?7、12?22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)特許法第29条第1項第3号
本件発明1は、上記(1)で示したとおり、甲1発明と対比すると相違点を有していて一致しないから、甲1発明と同一ではない。
また、本件発明1は、甲第2号証ないし甲第11号証に記載された発明でもない。
よって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2、5、12、13、17、19、20に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

4.むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?3、5?7、12?22に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1?3、5?7、12?22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件発明4、8?11、23に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による本件発明4、8?11、23に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化カーゴからのボイルオフガス(BOG)流(01)を海上の輸送船内で冷却して戻す方法であって、前記液化カーゴが、1気圧で-110℃より高い沸点を有し、複数の成分を含む方法において:
前記液化カーゴからのボイルオフガス流(01)を、少なくとも第1圧縮段階(65)及び最終圧縮段階(75)を含む2つ以上の圧縮段階で圧縮して、圧縮BOG排出流(06)を提供するステップであって、前記第1圧縮段階(65)は第1段階排出圧力を有し、前記最終圧縮段階(75)は最終段階吸入圧力(75)を有し、1つ以上の中間圧縮BOG流(02,03,04)が、連続する前記圧縮段階間で提供されるステップと;
前記圧縮排出流(06)を冷却し分離して、冷却された排気流(51)を前記ボイルオフガスの非凝縮成分を含むガス流として提供し、前記ボイルオフガスの凝縮成分を含む冷却された圧縮BOG流(08)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を、前記第1段階排出圧力と前記最終段階吸入圧力との間の圧力まで膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
を含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された圧縮BOG分流(31)を提供するステップと;
前記冷却された圧縮BOG分流(31)を膨張させて、膨張した冷却BOG流(33)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された排気流(51)と熱交換して、さらに冷却された排気流(53)を提供するステップと
をさらに含み、
前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分を取り出して、冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を提供するステップと;
前記冷却された追加的圧縮BOG分流(11)を膨張させて、膨張した追加的冷却BOG流(13)を提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08b)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップと
をさらに含み、
前記膨張した冷却BOG流(33)を前記冷却された排気流(51)と熱交換するステップがさらに、BOG再循環流(35)を提供し、
前記ボイルオフガス流(01)を、前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記膨張した追加的冷却BOG流(13)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)を提供するステップと;
前記冷却されたBOG再循環流(35)を、前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03a)に加えて生じる流れ(03b)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記膨張した冷却BOG流の、前記冷却された排気流(51)との熱交換がさらに、冷却された中間的圧縮BOG流(03)またはBOG再循環流(35)を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BOG再循環流(35)を、中間的圧縮BOG流(02,03a)に加えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記冷却された圧縮BOG流(08)の一部分(08a)と熱交換して、さらに冷却された圧縮BOG流(09)を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ボイルオフガス流(01)を前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG流(33)を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)と熱交換して、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、冷却された中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記膨張した冷却BOG流(33)との熱交換がさらに、BOG再循環流を提供し、前記方法が:
前記ボイルオフガス流(01)を、前記第1圧縮段階(65)で圧縮して、第1の中間的圧縮BOG流(02)を、中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記BOG再循環流を、前記第1の中間的圧縮BOG流(02)に加えて、冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、冷却された中間的圧縮BOG流として提供するステップと;
前記冷却された第1の中間的圧縮BOG流(03)を、第2圧縮段階の吸入側に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
【請求項11】(削除)
【請求項12】
前記さらに冷却された排気流(53)を膨張させて、さらに冷却され膨張した排気流(61)を提供するステップと;
前記さらに冷却され膨張した排気流(61)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記さらに冷却された排気流(53)を分離して、排気排出流(55)及び冷却された排気BOG戻り流(57)を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1?3,5?7,12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記冷却された排気BOG戻り流(57)を膨張させて、膨張した冷却排気BOG戻り流(59)を提供するステップと;
前記膨張した冷却排気戻り流(59)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却された排気BOG戻り流(57)を膨張させて、膨張した冷却排気BOG戻り流(59)を提供するステップと;
前記膨張した冷却排気戻り流(59)を、前記排気排出流(55)と熱交換して、熱交換された排気BOG戻り流、冷却された排気排出流、及び他の排気排出流を提供するステップと;
前記冷却された排気排出流を膨張させて、膨張した冷却排気排出流を提供するステップと;
前記熱交換された排気BOG戻り流及び前記膨張した冷却排気排出流を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記さらに冷却された圧縮BOG流(09)を膨張させて、膨張した冷却BOG戻り流(10)を提供するステップと;
前記膨張した冷却BOG戻り流(10)を、貯蔵タンク(50)に渡すステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記液化カーゴがLPGであることを特徴とする請求項1?3,5?7,12?16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記液化カーゴが3.5mol%以上のエタンを含むLPGであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記圧縮BOG排出流(06)を、1つ以上の熱交換流体で冷却して、前記冷却された圧縮BOG流(08)を提供することを特徴とする請求項1?3,5?7,12?18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記熱交換流体が、海水流及び/または外気流であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧縮段階(65,75)が、多段階圧縮機の圧縮段階であることを特徴とする請求項1?3,5?7,12?20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記圧縮BOG排出流(06)を冷却し分離するステップが:
前記圧縮BOG排出流(06)を、シェルアンドチューブ熱交換器内の熱交換流体で冷却して、温められた熱交換流体、前記冷却された排気流(51)、及び前記ボイルオフガスの凝縮成分を含む冷却された圧縮排出流(07)を提供し、前記冷却された圧縮排出流(07)を排出受入器(205)に渡し、この排出受入器が、前記冷却された圧縮BOG流(08)を排出すること;または、
前記圧縮BOG排出流(06)を、プレート型熱交換器(200)内で冷却して、冷却された圧縮排出流(07)を提供し、前記冷却された圧縮排出流(07)を、排出受入器(205)内で分離して、前記冷却された排気流(51)及び前記冷却された圧縮BOG流(08)を提供すること
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-22 
出願番号 特願2014-505710(P2014-505710)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F17C)
P 1 651・ 113- YAA (F17C)
P 1 651・ 851- YAA (F17C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 谿花 正由輝  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 栗田 雅弘
中川 隆司
登録日 2017-05-19 
登録番号 特許第6142434号(P6142434)
権利者 バブコック アイピー マネジメント(ナンバーワン)リミテッド
発明の名称 ボイルオフガス冷却方法及び装置  
代理人 齋藤 恭一  
代理人 齋藤 恭一  
代理人 杉村 憲司  
代理人 杉村 憲司  

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