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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B25B
管理番号 1350672
異議申立番号 異議2018-701025  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-19 
確定日 2019-03-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6346477号発明「パルスねじ締め装置の制御方法およびその制御装置ならびにねじ締め装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6346477号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6346477号の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成26年3月20日(パリ条約による優先権主張2013年(平成25年)3月22日、(FR)フランス共和国)に出願され、平成30年6月1日にその特許権の設定登録がされ、平成30年6月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年12月19日に特許異議申立人西野隆志(以下「特許異議申立人」という)により特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
特許第6346477号の請求項1?13の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
パルスねじ締め装置の制御方法であって、
前記装置が電気モータを備え、そのロータが遊びを有する伝動装置を介して回転駆動され得る端部材に連結され、前記ロータが、
・前記遊びがねじ締め方向にて最大となる最大後退位置と、
・前記遊びがねじ締め方向にて解消される衝突位置と
の間で回動可能であるような方法において、
少なくとも1つのねじ締めフェーズを含み、前記ねじ締めフェーズは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
前記モータに電気パルスを供給するステップであって、前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップと、
前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップと、
前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、
前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップと、
を含み、
前記制動するステップは、前記回転角の値が所定の閾値に到達した後に所与の期間にわたり実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
パルスねじ締め装置の制御方法であって、
前記装置が電気モータを備え、そのロータが遊びを有する伝動装置を介して回転駆動され得る端部材に連結され、前記ロータが、
・前記遊びがねじ締め方向にて最大となる最大後退位置と、
・前記遊びがねじ締め方向にて解消される衝突位置と
の間で回動可能であるような方法において、
少なくとも1つのねじ締めフェーズを含み、前記ねじ締めフェーズは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
前記モータに電気パルスを供給するステップであって、前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップと、
前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップと、
前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、
前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップと、
前記回転角が最大値に到達する瞬間を検出するステップと、
を含み、
前記制動するステップは、前記回転角の値が最大値に到達した後に所与の期間にわたり実行されることを特徴とする、方法。
【請求項3】
パルスねじ締め装置の制御方法であって、
前記装置が電気モータを備え、そのロータが遊びを有する伝動装置を介して回転駆動され得る端部材に連結され、前記ロータが、
・前記遊びがねじ締め方向にて最大となる最大後退位置と、
・前記遊びがねじ締め方向にて解消される衝突位置と
の間で回動可能であるような方法において、
少なくとも1つのねじ締めフェーズを含み、前記ねじ締めフェーズは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
前記モータに電気パルスを供給するステップであって、前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップと、
前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップと、
前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、
を含み、
前記各衝突サイクル後に、前記ロータの回転角を表す情報を測定するステップと、前記ロータの前記回転角の値が最大となる瞬間を検出するステップと、前記ロータの前記回転角の前記値が最大となる瞬間から前記最大後退位置の方向への前記ロータの反転角度を表す情報を判定するステップとを含み、前記制動するステップは、前記反転角度の値が所定の閾値に到達した際に実行されることを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記各制動ステップにおいて、前記制動ステップの開始以降の経過時間Tdfを判定するステップを含み、前記制動ステップは、前記経過時間Tdfの値が所定の閾値に到達した際に停止されることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記各制動ステップにおいて、前記ロータが前記最大後退位置に到達する瞬間を検出するステップを含み、前記制動ステップは、前記ロータが前記最大後退位置に到達した際に停止されることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記制動ステップは、前記モータの各相を短絡させるフェーズを含むことを特徴とする請求項1?5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
請求項1、4?6のいずれか1項に記載の制御方法を実行するように構成されたパルスねじ締め装置の制御装置であって、前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動する制動手段と、前記ロータの前記回転角を表す情報を前記各衝突サイクルにおいて判定する手段と、前記回転角の値が所定の閾値に到達した後に所与の期間にわたり前記制動手段を作動させる手段と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
請求項2、4?6のいずれか1項に記載の制御方法を実行するように構成されたパルスねじ締め装置の制御装置であって、前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動する制動手段と、前記ロータの前記回転角を表す情報を前記各衝突サイクルにおいて判定する手段と、前記ロータの前記回転角が最大値に到達する瞬間を検出する手段と、前記回転角の値が最大値に到達した後に所与の期間にわたり前記制動手段を作動させる手段と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項9】
請求項3?6のいずれか1項に記載の制御方法を実行するように構成されたパルスねじ締め装置の制御装置であって、前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動する制動手段と、前記ロータの前記回転角を表す情報を前記各衝突サイクルにおいて判定する手段と、前記ロータの前記回転角の値が最大となる瞬間を検出する手段と、前記ロータの前記回転角の前記値が最大となる瞬間から前記最大後退位置の方向への前記ロータの前記反転角度を判定する手段と、前記反転角度の値が所定の閾値に到達した際に前記制動手段を作動させる手段と、を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
前記制動ステップの開始以降の経過時間Tdfを各制動ステップにおいて判定する手段と、前記経過時間Tdfの値が所定の閾値に到達した際に前記制動手段を作動停止させる手段とを備えることを特徴とする請求項7?9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記ロータが前記ロータの最大後退位置に到達する瞬間を各制動ステップにおいて判定する手段と、前記ロータが前記最大後退位置に到達する際に前記制動手段を作動停止させる手段とを備えることを特徴とする請求項7?9のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制動手段は、前記モータの各相を短絡させる手段を備えることを特徴とする請求項7?11のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
請求項7?12のいずれか1項に記載の制御装置を備えたパルスねじ締め装置。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として特開2011-104672号公報(以下「文献1」という)及び特開2008-55580号公報(以下「文献2」という)を提出し、請求項1?13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?13に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4 文献の記載
(1)文献1には以下の記載がある。
ア 「【0026】
図1は本発明に係るインパクト工具の全体構造を示す縦断面図である。インパクト工具1は、充電可能なバッテリパック30を電源とし、モータ3を駆動源として打撃機構40を駆動し、出力軸であるアンビル46に回転と打撃を与えることによってドライバビット等の図示しない先端工具に連続する回転力や断続的な打撃力を伝達してネジ締めやボルト締め等の作業を行う。
【0027】
モータ3は、ブラシレスDCモータであって、側面から見て略T字状の形状を成すハウジング6の筒状の胴体部6a内に収容される。ハウジング6は、ほぼ対称な形状の左右2つの部材に分割可能に構成され、それら部材が複数のネジにより固定される。そのため、分割されるハウジング6の一方(本実施例では左側ハウジング)に、ネジを補強するための複数のネジボス20が形成され、他方(右側ハウジング)に複数のネジ穴(図示せず)が形成される。モータ3の回転軸19は、胴体部6aの後端側のベアリング17bと中央部付近に設けられるベアリング17aによって回転可能に保持される。モータ3の後方には6つのスイッチング素子10が搭載された基板7が設けられ、これらスイッチング素子10によってインバータ制御を行うことによりモータ3を回転させる。基板7の前方側には、回転子3aの位置を検出するためにホール素子やホールIC等の回転位置検出素子58が搭載される。」

イ 「【0030】
打撃機構40は、アンビル46、ハンマ41、スプロケット4の3つの主要部品により構成され、ハンマ41は遊星歯車減速機構21の複数の遊星歯車の回転軸を連結するように固定される。現在広く使われている公知のインパクト機構と違って、ハンマ41には、スピンドル、スプリング、カム溝、及びボール等を有するカム機構を有しない。そしてアンビル46とハンマ41とは回転中心付近に形成された嵌合軸41aと嵌合溝46fにより1回転未満の相対回転だけができるように連結される。アンビル46は、図示しない先端工具を装着する出力軸部分と一体に構成され、前端には軸方向と鉛直面の断面形状が六角形の装着穴46aが形成される。アンビル46の後方側はハンマ41の嵌合軸41aと連結され、軸方向中央付近でメタルベアリング16aによりケース5に対して回転可能に保持される。尚、これらアンビル46とハンマ41の詳細形状については後述する。」

ウ 「【0046】
図7(1)で示す状態からモータ3の反転を開始することにより、ハンマ41の突出部42を矢印71の方向に回転させる。この際、突出部45の反転側には回転角にして約120度分だけ切り欠き部が形成されるので、この反転の際に、突出部45はスプロケット4に当接することなく反転することが可能になる。即ち、図7(1)の状態から回転角にして約120度は、ハンマ41だけが反転し、アンビル46もスプロケット4も回転しない。
【0047】
さらにモータ3を逆回転させて、図7(3)に示すように突出部42は突出部48の外周側を通って矢印73の方向に回転すると、図7(4)に示すように突出部45の当接面45bが当接面4bに当接することによりスプロケット4が矢印75の方向に回転することになるが、すかさずカム27が矢印76のように揺動して、爪27aがギヤ部4cの歯に噛み合うことによりスプロケット4の回転は停止され、このスプロケット4の停止によりハンマ41の回転も停止される。このようにスプロケット4とカム27を用いることによって逆転状態のハンマ41の回転を停止させることができる。このブレーキ動作は機械要素によって実現しているので電力を消費することが無いので、ブレーキ動作のために電力を消費することを防ぐことができる。尚、図7(3)において突出部48の外径Ra1は、突出部42の内径Rh1よりも小さく構成され、両者は衝突しない。同様に、突出部47の外径Ra2は、突出部43の内径Rh2よりも小さく構成され、両者は衝突しない。従って、ブレーキ動作が行われるのはハンマ41だけであり、アンビル46には何ら影響しない。
【0048】
ハンマ41が停止したら、モータ3を起動して、ハンマ41を図7(3)の矢印74の方向(正回転方向)への回転を開始させる。そして、ハンマ41の正回転の回転を加速させ、加速中の状態のまま図7(5)に示す位置にて突出部42の打撃面42aは、アンビル46の被打撃面47aに衝突する。この衝突の結果、アンビル46には強力な回転トルクが伝達され、アンビル46は矢印77で示す方向に回転する。尚、図7(3)から(5)の間のハンマ41の移動によって突出部45も移動するが、この間は当接面4aにも4bのいずれにも接触しないため図7(6)に示すようにスプロケット4は回転しないで固定されたままである。」

エ 「【0062】
図10の例では、T2から一定の時間モータ3への駆動電流の供給を休止して、モータ3の回転速度を低下させる。この際、ハンマ41はアンビル46に遅れて回転することになるが、ハンマ41の回転が僅かに遅れても突出部45はスプロケット4の切り欠き部内に収まることができるので、スプロケット4によってハンマ41の回転が影響されることはない。モータ3の回転速度が矢印86aにまで低下した後に、演算部51(図8参照)は駆動信号83aを制御信号出力回路53に送ることによりモータ3にパルス状の駆動電流(駆動パルス)が供給され、モータ3を加速させる。尚、この加速時の制御は、必ずしもデューティ比100%で駆動という意味ではなく、100%未満のデューティ比で制御する事もありうる。次に、矢印86bの地点においてハンマ41がアンビル46に強く衝突することにより、矢印88aで示すように打撃力が与えられる。打撃力が与えられると再び、所定期間モータ3への駆動電流の供給を休止し、モータの回転速度が矢印86cで示すように低下した後に、演算部51は駆動信号83bを制御信号出力回路53に送ることによりモータ3を加速させる。すると、矢印86dの地点においてハンマ41がアンビル46に強く衝突することにより、矢印88bで示すように打撃力が与えられる。パルスモード(1)においては、上述したモータ3の「休止→正回転駆動」を繰り返す断続的な駆動が1回又は複数回繰り返されるが、より高い締め付けトルクが必要になったらその状態を検出し、パルスモード(2)による回転駆動モードに切り替える。高い締め付けトルクが必要になったか否かの判定は、例えば矢印88bで示す打撃力が与えられた際のモータ3の回転数(矢印86dの前後)を用いて判断することができる。
【0063】
パルスモード(2)は、モータ3を断続的に駆動し、パルスモード(1)と同様にパルス状にモータ3を駆動するモードであるが、「休止→逆回転駆動→ブレーキ(停止)→正回転駆動」を複数回繰り返すように駆動する。つまりパルスモード(2)においては、モータ3の正回転駆動だけでなく逆回転駆動をも加わるために、ハンマ41をアンビル46に対して十分な相対角だけ逆回転させた後に、ハンマ41を正回転方向に加速させて勢いよくアンビル46に衝突させる。このようにハンマ41を駆動することにより、アンビル46に強い締め付けトルクを発生させるものである。本実施例においては、逆回転駆動されたモータ3の回転を停止させる際に(図中矢印87b、87f付近)、モータ3に正転電流を加えてモータ3を減速・停止させるのではなく、ハンマ41をスプロケット4に衝突させることによりモータ3を減速・停止させるようにした。
【0064】
図10の例では時間T4でパルスモード(2)に切り替わると、モータ3の駆動を一時休止させて、その後、負の方向の駆動信号84aを制御信号出力回路53に送ることによりモータ3を逆回転させる。正転、逆転を行う際には、制御信号出力回路53から各スイッチング素子Q1?Q6に出力する各駆動信号(オンオフ信号)の信号パターンを切り替えることにより実現される。モータ3が所定の回転角分だけ逆回転したら(矢印87a)、突出部45の当接面45bがスプロケット4の当接面4bに衝突するため、モータ3の回転が止まる(矢印87b)。その後、モータ3の駆動を一時休止させて正回転駆動を開始する。このため、正の方向の駆動信号84bを制御信号出力回路53に送る。尚、インバータ回路52を用いた回転駆動においては、駆動信号をプラス側又はマイナス側に切り替えるものではないが、図10ではどちら方向へ回転駆動するか容易に理解できるように、駆動信号を+及び-方向に分けて模式的に表現した。
【0065】
モータ3の回転速度が最大速度に達する付近で、ハンマ41はアンビル46に衝突する(矢印87c)。この衝突によりパルスモード(1)で発生する締め付けトルク(88a、88b)に比べて格段に大きい締め付けトルク(89a)が発生する。このように衝突が行われると矢印87cから87dに至るようにモータ3の回転数が低下する。尚、矢印89aに示す衝突を検出した瞬間にモータ3への駆動信号を停止する制御をしても良く、その場合は締結対象がボルトやナット等の場合は打撃後に作業者の手に伝わる反動が少なくて済む。本実施例のように衝突後もモータ3に駆動電流を流すことにより作業者への反力がドリルモードに比較して小さく、中負荷状態での作業に適している。また、締め付け速度が速く、パルス強モードと比較して電力消費が少なくて済むという効果が得られる。その後、同様にして、「休止→逆回転駆動→ブレーキ→正回転駆動」を所定回数だけ繰り返すことにより強い締め付けトルクでの締め付けが行われる。時間T7において作業者がトリガ操作を解除することによってモータ3が停止し、締め付け作業が完了する。作業の完了は作業者によるトリガ操作の解除だけでなく、打撃衝撃検出センサ56(図8参照)の出力を元に、演算部51が設定された締め付けトルクでの締め付けが完了したと判断したらモータ3の駆動を停止するように制御しても良い。」

オ 上記記載からみて、文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。
「インパクト工具1の制御方法であって、
前記工具1がモータ3を備え、その回転子3aが1回転未満の相対回転ができる打撃機構40を介して回転駆動され得る、装着穴46aに装着される先端工具に連結され、前記回転子3aが、
・前記相対回転がねじ締め方向にて最大となる被打撃面47bと、
・前記相対回転がねじ締め方向にて解消される被打撃面47aと
の間で回動可能であるような方法において、
パルスモード(2)を含み、パルスモード(2)は、「休止→逆回転駆動→ブレーキ→正回転駆動」の少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
正の方向の駆動信号84bを送ってモータ3に電気パルスを供給するステップであって、回転子3aにより回転されるハンマ41の突出部42が被打撃面47bから被打撃面47aへと移動して前記相対回転を解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に打撃機構40を介して前記端部材に伝達されるステップと、
打撃機構40に対して回転子3aが反転するステップであって、その間に回転子3aの反転によりハンマ41の突出部42が被打撃面47aから被打撃面47bへと移動するステップと、
被打撃面47aから被打撃面47bへの突出部42の復帰時に回転子3aをカム27を用いて停止するステップと、
回転位置検出素子58で回転子3aの位置を検出するステップと、を含む方法。」

(2)文献2には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、インパクト式のネジ締め装置に関し、特に、エネルギー効率を向上させたインパクト式のネジ締め装置に関する。」

イ 「【0019】
図1および図2において、ネジ締め装置本体3は、作業者が片手で握るためのハンドルグリップ部を有したピストル形状のハンディタイプのものである。ネジ締め装置本体3は、本体ケーシング10に、モータ11、衝撃発生装置である遊星歯車機構12、トルク検出装置13、エンコーダ14、および出力軸15などが設けられて構成されている。図示しないスイッチを操作することによって、電源のオンオフが制御される。
【0020】
モータ11として、例えば3相のACサーボモータが用いられる。しかし、正逆の回転が可能であって、停止時にフリーの状態となり、かつ回転速度の制御が可能なものであれば、単相のACサーボモータ、誘導モータ、DCモータなど、他の種々のモータを採用することができる。
【0021】
遊星歯車機構12は、モータ11の回転を減速する減速機として動作するとともに、モータ11などの回転力を間歇的な衝撃力に変換する衝突エネルギ発生機構として動作する。
【0022】
遊星歯車機構12は、第1の遊星歯車機構61と第2の遊星歯車機構71とを連結して構成されている。第1の遊星歯車機構61と第2の遊星歯車機構71とは、それぞれのアウターギヤ62,72が互いに同軸上にあって、所定の相対角度範囲αにおいてのみ互いに相対回転が可能であり、相対角度範囲α外では互いに周方向に係合して相対回転が不能なように配置されている。また、第2の遊星歯車機構71のサンギヤ73は、第1の遊星歯車機構61のキャリヤ65の回転出力を入力として同軸上で回転するように連結されている。」

ウ 「【0031】
例えば図5(C)に示すように、アウターギヤ72がアウターギヤ62と係合していない位置(初期位置、加速位置)にあるときに、モータ11に電流を流して正方向(M1方向)に回転させ、これによってアウターギヤ72を逆方向(M2方向)に回転させて加速し、図5(B)に示すようにアウターギヤ72をアウターギヤ62に衝突させてインパクトを発生させる。
【0032】
第2の遊星歯車機構71のアウターギヤ72が第1の遊星歯車機構61のアウターギヤ62に衝突した後は、モータ11に流す電流を零にするかまたは逆方向に電流を流すことによってモータ11を逆方向(M2方向)に回転させ、第2の遊星歯車機構71のアウターギヤ72を正方向(M1方向)に回転させて第1の遊星歯車機構61のアウターギヤ62との係合位置から離す。その結果、アウターギヤ72は図5(C)に示す位置(初期位置)に戻る。
【0033】
つまり、高速側である第1の遊星歯車機構61のサンギヤ63が何回転かする間に、低速側である第2の遊星歯車機構71のアウターギヤ72が相対角度範囲αの中で回転し、アウターギヤ72の突出係合部721,722がアウターギヤ62の突出係合部621,622に実際に当たったときに衝撃を発生する。
【0034】
以下において、モータ11の回転力を衝撃力に変換するメカニズムについてさらに詳しく説明する。
【0035】
すなわち、上のようにアウターギヤ72が相対角度範囲αの中で回転している間において、出力軸15は、負荷であるネジによって回転できない状態にある。したがって、キャリヤ75も回転できない状態にある。そこで、サンギヤ73が回転すると、プラネットギヤ74は自転するが、キャリヤ75が回転できないので、プラネットギヤ74は公転することなく、アウターギヤ72を回転させる。アウターギヤ72が回転し、その突出係合部721,722がアウターギヤ62の突出係合部621,622に衝突すると、アウターギヤ72はそれ以上回転することができないので停止することとなるが、その時点においてモータ11、入力軸63a、サンギヤ63、キャリヤ65などに蓄えられた回転による慣性エネルギー(イナーシャ)は、突出係合部721,722が突出係合部621,622に衝突した瞬間に、プラネットギヤ74およびキャリヤ75を介して出力軸15に回転衝撃力として伝達される。その結果、負荷にであるネジに対して、回転衝撃力による締付トルクTQが発生する。負荷は、締付トルクTQによって回転する。その回転角度は衝撃力の大きさによる。
【0036】
このように、アウターギヤ72が初期位置STで停止した状態から、モータ11の回転によって回転駆動され、高速回転となったところでアウターギヤ62に衝突し、衝突によってその時点の慣性エネルギーが衝撃力に変換され、これによる大きなトルクが出力軸15から締付トルクTQとして得られる。
【0037】
したがって、相対角度範囲αは、モータ11が立ち上がって最大回転速度または適度な回転速度に達することが可能なように設定されている必要がある。相対角度範囲αは、いわば遊星歯車機構12における遊び角度ともいうべきものであり、この遊び角度の存在によって慣性エネルギーが蓄えられるのである。本実施形態において、相対角度範囲αは60度に設定されている。」

エ 「【0053】
すなわち、ネジ締め装置1では、インパクトモードにおいて、アウターギヤ72がアウターギヤ62に衝突した時点でモータ11の電流を零にする。つまり、衝撃力が発生した直後においてモータ11の電流を零にしてエネルギーの供給を停止する。そうすると、それまで回転していた部分の慣性エネルギーによる衝撃力のみに基づいて、負荷であるネジを回転させて締め付けることとなり、つまり締付トルクTQが得られることとなり、本体ケーシング10にはその締付トルクTQによる反力が全く現れない。その結果、ネジ締め装置本体3を手で持って操作している作業者には衝撃による反力が作用せず、片手持ちで操作しても作業者の負担とならない。」

オ 「【0086】
インパクトモードでは、モータ11に流れる電流の方向および大きさを制御し、遊星歯車機構12において衝撃トルクを発生するように制御する。インパクトモードにおいて、モータ11には電流指令データD1Tにより指定される電流が流れる。モータ11の回転速度は、設定された電流値に応じて変化する。」

カ 図5

キ 上記記載からみて、文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という)が記載されている。
「インパクト式のネジ締め装置の制御方法であって、
前記装置がモータ11を備え、そのロータが遊び角度を有する遊星歯車機構12を介して回転駆動され得る出力軸15に連結され、前記ロータが、
・前記遊び角度がねじ締め方向にて最大となる図5(A)に示す後退位置と、
・前記遊び角度がねじ締め方向にて解消される図5(B)に示す衝突位置と、
の間の相対角度範囲aで回動可能であるような方法において、
インパクトモードを含み、前記インパクトモードは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
モータ11に電流パルスを供給するステップであって、前記ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(C)に示す初期位置から図5(B)に示す衝突位置へと移動して前記遊び角度を解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に遊星歯車機構12を介して出力軸15に伝達されるステップと、
遊星歯車機構12に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(B)に示す衝突位置から図5(C)に示す初期位置へと移動するステップと、を含む方法。」

(3)特許異議申立人が、文献1及び文献2の他に証拠として提示している、「電気工学ポケットブック(JR版) -第3版-」(電気学会編、オーム社、昭和54年7月10日発行、以下「文献3」という)には、以下の記載がある。
ア 「〔2〕制動の種類 制動はその目的によって i.停止や減速を目的とするもの ii.制動しつつ運転を続けるもの の二つに分けることができる.」(16-21ページ右欄26?30行)

イ 「このうち,電気的制御法には次のような種類がある.・・・(2)逆相制動 正転中に逆転の接続に切り換えて制動するもの」(16-21ページ下から4行?16-22ページ左上欄3行)

5 当審の判断
(1)文献1を主引用例とする場合
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「インパクト工具1」、「モータ3」、「回転子3a」、「1回転未満の相対回転ができる」こと、「打撃機構40」、「装着穴に装着される先端工具」、「相対回転」、「被打撃面47b」、「被打撃面47a」、「パルスモード(2)」は、本件発明1の「パルスねじ締め装置」、「電気モータ」、「ロータ」、「遊びを有する」こと、「伝動装置」、「端部材」、「遊び」、「最大後退位置」、「衝突位置」、「ねじ締めフェーズ」にそれぞれ対応する。
引用発明1の「正の方向の駆動信号84bを送ってモータ3に電気パルスを供給するステップ」、「回転子3aにより回転されるハンマ41の突出部42が被打撃面47bから被打撃面47aへと移動して前記相対回転を解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に打撃機構40を介して前記端部材に伝達されるステップ」、「打撃機構40に対して回転子3aが反転するステップ」、「その間に回転子3aの反転によりハンマ41の突出部42が被打撃面47aから被打撃面47bへと移動するステップ」、「被打撃面47aから被打撃面47bへの突出部42の復帰時に回転子3aをカム27を用いて停止するステップ」、「回転位置検出素子58で回転子3aの位置を検出するステップ」は、本件発明1の「前記モータに電気パルスを供給するステップ」、「前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップ」、「前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップ」、「その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップ」、「前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップ」、「前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップ」にそれぞれ対応する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致するとともに相違する。
<一致点>
「パルスねじ締め装置の制御方法であって、
前記装置が電気モータを備え、そのロータが遊びを有する伝動装置を介して回転駆動され得る端部材に連結され、前記ロータが、
・前記遊びがねじ締め方向にて最大となる最大後退位置と、
・前記遊びがねじ締め方向にて解消される衝突位置と
の間で回動可能であるような方法において、
少なくとも1つのねじ締めフェーズを含み、前記ねじ締めフェーズは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
前記モータに電気パルスを供給するステップであって、前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップと、
前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップと、
前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、
前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップと、を含む方法。」である点。
<相違点1>
本件発明1が、「前記制動するステップは、前記回転角の値が所定の閾値に到達した後に所与の期間にわたり実行される」のに対し、引用発明1の制動するステップは、回転子3aの位置検出とは関係なくカム27を用いて回転子3aを停止する点。
相違点1について検討すると、文献2には、以下の(2)で説示するとおり、「前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップ」自体が記載されておらず、文献2に接した当業者が、相違点1について容易に想到するということはできない。
また、特許異議申立人は、上記相違点1については、文献1に記載されていると主張している。しかし、文献1の「回転子3aの位置を検出するためにホール素子やホールIC等の回転位置検出素子58が搭載される」(段落【0027】)との記載から、回転子3aの位置検出を行うことまでは認められるが、文献1には、ロータの回転角に所定の閾値を設定し、その回転角の位置からロータの制動を実行することは記載されていない。つまり、文献1のインパクト工具は、突出部45の当接面45bが当接面4bに当接することで、カム27を用いて機械的にハンマ41を停止させるブレーキ動作を行う(段落【0047】参照)ことを「制動」としているもので、回転位置検出素子58により判定した閾値となる回転位置から制動を作動させるものではない。よって、特許異議申立人の主張には理由がない。
さらに、文献3にも上記相違点1に関する記載は見当たらないし、上記相違点1が従来周知の事項であるとする根拠もない。
よって、本件発明1は、引用発明1及び文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

イ 請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)と引用発明1とを対比すると、両発明は、上記アで示した一致点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明2が、「前記回転角が最大値に到達する瞬間を検出するステップと、を含み、前記制動するステップは、前記回転角の値が最大値に到達した後に所与の期間にわたり実行される」のに対し、引用発明1の制動するステップは、回転子3aの位置検出とは関係なくカム27を用いて回転子3aを停止する点。
相違点2について検討すると、上記アの相違点1に示す理由と同様の理由により、文献2に接した当業者が、相違点2について容易に想到するということはできず、本件発明2は、引用発明1及び文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

ウ 請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という。)と引用発明1とを対比すると、両発明は、上記アで示した一致点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明3が、「前記各衝突サイクル後に、前記ロータの前記回転角の値が最大となる瞬間を検出するステップと、前記ロータの前記回転角の前記値が最大となる瞬間から前記最大後退位置の方向への前記ロータの反転角度を表す情報を判定するステップとを含み、前記制動するステップは、前記反転角度の値が所定の閾値に到達した際に実行される」のに対し、引用発明1の制動するステップは、回転子3aの位置検出とは関係なくカム27を用いて回転子3aを停止する点。
相違点3について検討すると、上記アの相違点1に示す理由と同様の理由により、文献2に接した当業者が、相違点3について容易に想到するということはできず、本件発明3は、引用発明1及び文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

エ 請求項4?13に係る発明について
請求項4?13に係る発明は、本件発明1?3のいずれか又は全てを、直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1?3に対して、さらに技術的事項を追加したものである。
よって、上記ア?ウに示した理由と同様の理由により、請求項4?13に係る発明は、引用発明1及び文献2、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

(2)文献2を主引用例とする場合
ア 請求項1に係る発明について
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「インパクト式のネジ締め装置」、「モータ11」、「遊び角度」、「遊星歯車機構12」、「出力軸15」、「図5(A)に示す後退位置」、「図5(B)に示す衝突位置」、「インパクトモード」は、本件発明1の「パルスねじ締め装置」、「電気モータ」、「遊び」、「伝動装置」、「端部材」、「最大後退位置」、「衝突位置」、「ねじ締めフェーズ」にそれぞれ対応する。
引用発明2の「モータ11に電流パルスを供給するステップ」、「前記ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(C)に示す初期位置から図5(B)に示す衝突位置へと移動して前記遊び角度を解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に遊星歯車機構12を介して出力軸15に伝達されるステップ」、「遊星歯車機構12に対して前記ロータが反転するステップ」、「その間に前記ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(B)に示す衝突位置から図5(C)に示す初期位置へと移動するステップ」は、本件発明1の「前記モータに電気パルスを供給するステップ」、「前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップ」、「前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップ」、「その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップ」にそれぞれ対応する。
そうすると、両発明は、以下の点で一致するとともに相違する。
<一致点>
「パルスねじ締め装置の制御方法であって、
前記装置が電気モータを備え、そのロータが遊びを有する伝動装置を介して回転駆動され得る端部材に連結され、前記ロータが、
・前記遊びがねじ締め方向にて最大となる最大後退位置と、
・前記遊びがねじ締め方向にて解消される衝突位置と
の間で回動可能であるような方法において、
少なくとも1つのねじ締めフェーズを含み、前記ねじ締めフェーズは少なくとも1つの衝突サイクルを含んでおり、前記衝突サイクルが、
前記モータに電気パルスを供給するステップであって、前記ロータが前記最大後退位置から前記衝突位置へと移動して前記遊びを解消することにより運動エネルギーが蓄積され、前記運動エネルギーがトルクパルスの間に前記伝動装置を介して前記端部材に伝達されるステップと、
前記伝動装置に対して前記ロータが反転するステップであって、その間に前記ロータが前記衝突位置から前記最大後退位置へと移動するステップと、を含む方法。」である点。
<相違点4>
本件発明1が、「前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップと、を含み、前記制動するステップは、前記回転角の値が所定の閾値に到達した後に所与の期間にわたり実行される」のに対し、引用発明2は、ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(B)に示す衝突位置から図5(C)に示す初期位置へと移動する際に特に制動は付与されない点。
相違点4について検討すると、上記(1)アで説示したとおり、文献1には「前記制動するステップは、前記回転角の値が所定の閾値に到達した後に所与の期間にわたり実行される」点が記載されておらず、文献1に接した当業者が、相違点4について容易に想到するということはできない。
また、特許異議申立人は、上記相違点4については、文献2に記載されていると主張している。しかし、「制動」を行っていることの根拠として示された文献2の「前記ハンマーがアンビルに衝突したことが検出されてから予め設定された第1の時間が経過したときに、前記ハンマーが前記初期位置に戻ったとして前記モータに電流を流してハンマーを正方向に回転させる」(段落【0014】)というモータ制御は、初期位置での加速に相当するものであって、初期位置に戻す際の制動とはいえない。すなわち、「制動」には、「停止」の他に「減速」させる意味もある(文献3の記載を参照)が、本件発明1における「制動」が「停止」を意味することは、明細書の段落【0061】の記載からみて明らかであるから、文献2でいう正方向の回転は、本件発明1の「制動」とはいえない。そうすると、そもそも制動を行わないものについて、相違点4を満たしているとはいえないから、特許異議申立人の主張には理由がない。
さらに、文献3にも上記相違点4に関する記載は見当たらないし、上記相違点4が従来周知の事項であるとする根拠もない。
よって、本件発明1は、引用発明2及び文献1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

イ 請求項2に係る発明について
本件発明2と引用発明2とを対比すると、両発明は、上記アで示した一致点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点5>
本件発明2が、「前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、前記ロータの回転角を表す情報を判定するステップと、前記回転角が最大値に到達する瞬間を検出するステップと、を含み、前記制動するステップは、前記回転角の値が最大値に到達した後に所与の期間にわたり実行される」のに対し、引用発明2は、ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(B)に示す衝突位置から図5(C)に示す初期位置へと移動する際に特に制動は付与されない点。
相違点5について検討すると、上記アの相違点4に示す理由と同様の理由により、文献1に接した当業者が、相違点5について容易に想到するということはできず、本件発明2は、引用発明2及び文献1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

ウ 請求項3に係る発明について
本件発明3と引用発明2とを対比すると、両発明は、上記アで示した一致点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点6>
本件発明3が、「前記衝突位置から前記最大後退位置への前記ロータの復帰時に前記ロータを制動するステップと、を含み、前記各衝突サイクル後に、前記ロータの回転角を表す情報を測定するステップと、前記ロータの前記回転角の値が最大となる瞬間を検出するステップと、前記ロータの前記回転角の前記値が最大となる瞬間から前記最大後退位置の方向への前記ロータの反転角度を表す情報を判定するステップとを含み、前記制動するステップは、前記反転角度の値が所定の閾値に到達した際に実行される」のに対し、引用発明2は、ロータにより回転されるアウターギヤ72の突出係合部721,722が図5(B)に示す衝突位置から図5(C)に示す初期位置へと移動する際に特に制動は付与されない点。
相違点6について検討すると、上記アの相違点4に示す理由と同様の理由により、文献1に接した当業者が、相違点6について容易に想到するということはできず、本件発明3は、引用発明2及び文献1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

エ 請求項4?13に係る発明について
請求項4?13に係る発明は、本件発明1?3のいずれか又は全てを、直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1?3に対して、さらに技術的事項を追加したものである。
よって、上記ア?ウに示した理由と同様の理由により、請求項4?13に係る発明は、引用発明2及び文献1、3に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

6 むすび
以上のとおり、請求項1?13に係る発明は、文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-03-19 
出願番号 特願2014-58385(P2014-58385)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 栗田 雅弘
齋藤 健児
登録日 2018-06-01 
登録番号 特許第6346477号(P6346477)
権利者 エタブリスマン・ジョルジュ・ルノー
発明の名称 パルスねじ締め装置の制御方法およびその制御装置ならびにねじ締め装置  
代理人 坂田 泰弘  
代理人 田中 祐  
代理人 徳本 浩一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 久保 幸雄  
代理人 森本 聡二  
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