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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01N
管理番号 1350925
審判番号 不服2018-1637  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-06 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2014-4475「蚊類防除用エアゾール、及びこれを用いた蚊類の防除方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年1月29日出願公開、特開2015-17083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成26年1月14日(優先権主張 平成25年6月11日)の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。
平成29年 2月 8日付け 拒絶理由通知
平成29年 6月 9日 意見書提出・手続補正
平成29年 6月26日付け 最後の拒絶理由通知
平成29年 9月 6日 意見書提出
平成29年11月 2日付け 拒絶査定
平成30年 2月 6日 審判請求
平成30年 9月 6日付け 拒絶理由通知
平成30年10月30日 意見書提出・手続補正

第2 特許請求の範囲の記載
この出願の請求項1?7に係る発明は、特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、平成30年10月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】(a)害虫防除成分としてメトフルトリン及び(b)有機溶剤を含有するエアゾール原液と、(c)噴射剤とを、エアゾール原液/噴射剤比率が10?20/80?90(容量比)となるように、定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器に充填した蚊類防除用エアゾールであって、
前記エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が14.3?30.0w/v%であり、
当該エアゾールの噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径が10?80μmであり、
前記定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により5.7mg以上の害虫防除成分を噴出させ、屋内の25m^(3)の処理空間において前記1回の噴霧処理から20時間経過後の蚊類に対するKT_(50)値が18.7分以下となるようになしたことを特徴とする蚊類防除用エアゾール。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
平成30年9月6日付けで当審が通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という)は、概略、以下のとおりのものである。

「本件出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物である「特開2010-280633号公報」に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

特開2010-280633号公報を、以下「刊行物1」という。
当審拒絶理由の対象となった請求項1に係る発明は、本願発明に対応するものである。

第4 当審の判断
当審は、上記第3の当審が通知した拒絶の理由のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 刊行物1に記載された事項

1a「【請求項1】害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10^(-4)?1×10^(-2)mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2?3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20?50/50?80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を5?12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることを特徴とする害虫防除方法。
【請求項2】前記害虫防除成分が、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の害虫防除方法。
【請求項3】前記害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の粒子径分布において、10?50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの20%以上が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するようになしたことを特徴とする請求項1又は2記載の害虫防除方法。
【請求項4】前記定量噴霧用エアゾールバルブの一回当たりの噴霧容量が、0.35?0.9mLであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の害虫防除方法。」

1b「【技術分野】【0001】本発明は、害虫防除方法に関するものである。
・・・・・
【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明の目的は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除方法を提供することにある。
・・・・・
【発明の効果】【0009】本発明の害虫防除方法によれば、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理することにより、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることができるので極めて実用的である。」

1c「【0011】本発明の害虫防除方法は、害虫防除成分が高濃度の害虫防除用エアゾールを少量一定量噴霧するので、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量も、1.0?30w/v%程度と高濃度となる。その調製に際し用いる溶剤としては、害虫防除成分の蒸気圧を考慮して炭素数が2?3の低級アルコールに特定され、エタノールやイソプロパノール(IPA)が一般的である。かかる低級アルコールは、速乾性で噴霧後速やかに揮発するので噴霧粒子を微細にし、害虫防除成分が空間で浮遊残留しやすくなる。
なお、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量が1.0w/v%未満であると所望の効果が得られないし、一方、30w/v%を超えるとエアゾール内容液の液性安定化の点で困難を伴う。
【0012】本発明の害虫防除方法は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む害虫防除用エアゾールを屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.35?0.9mLで噴霧し、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、十分量の噴霧粒子が床や壁に付着するようになして、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることに特徴を有する。
このために、本発明で用いる害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液/噴射剤比率が20?50/50?80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上であることを必須とする。
エアゾール原液/噴射剤比率が20/80より小さく噴射剤が多すぎると、噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足する。一方、50/50を超えると、逆に噴霧粒子が速やかに沈降し害虫防除成分の気中濃度が不十分となる。
噴射力についても、3.0g・f未満では噴霧の勢いが不足し、噴霧粒子が屋内の隅まで到達しないため満足な害虫防除効果が得られない。
【0013】本発明では、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、前記常温揮散性ピレスロイド化合物に加え、フタルスリン、レスメトリン、シフルトリン、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、フェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物などを若干量配合してもよい。
また、溶剤としても、炭素数が2?3の低級アルコールに加え、例えば、n-パラフィン、イソパラフィンなどの炭化水素系溶剤、炭素数3?6のグリコールエーテル類、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等を適宜添加可能である。
・・・・・
【0016】本発明で用いられる噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)、及び窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等の圧縮ガスがあげられ、そのうちの一種または二種以上を適宜採用することができるが、通常LPGを主体としたものが使いやすい。
本発明では、噴霧粒子の気中残存率と床面や壁への付着率を考慮して、エアゾール原液/噴射剤比率を20?50/50?80(容量比)とする。そのうえで、噴霧粒子の粒子径分布において、10?50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め、かつ全体の噴霧粒子のうちの20%以上が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着するように設計するのが好ましい。
【0017】上記害虫防除用エアゾールは、屋内で一定量噴霧処理するための定量噴霧用エアゾールバルブを備え、一回当たりの噴霧容量としては0.35?0.9mLが適当である。そして、噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上であれば、その用途、使用目的等に応じて、適宜噴口、ノズル、容器等の形状を選択すればよい。
例えば、上から押して噴霧するボタンと斜め上方向きのノズルを備えた卓上タイプとしたり、小型容器の携帯用として設計することができる。
【0018】本発明は、こうして得られた害虫防除用エアゾールを、屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.35?0.9mLで噴霧し、所定量の噴霧粒子を気中に浮遊残存させる一方、十分量の噴霧粒子が床や壁に付着するようになし、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするものである。
この際、噴射距離20cmにおける噴射力が噴霧粒子径とともに極めて重要なファクターであることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、特許文献1のエアゾール殺虫剤は、蚊等の飛翔害虫のみの防除を目的とし、処理薬剤量の気中残存率を高めるために噴霧粒子径を小さくさえすれば良く、噴射力を考慮する必要がなかったのであるが、本発明の害虫防除方法では、噴霧粒子径を比較的大きくする必要性から噴射力の範囲を特定しなければならなかったのである。
本発明において気中に噴霧される害虫防除成分量は、2?50mg/m^(3)程度が適当であり、1回の施用でその処理空間をおよそ5?12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることができる。
【0019】本発明の害虫防除方法が有効な害虫としては、屋内で飛翔して人に被害や不快感を与える害虫、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ブユ類、アブ類、ハチ類、ヨコバイ類などの各種飛翔害虫のほか、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、クロゴキブリ等のゴキブリ類、アリ類、コクヌストモドキ、コクゾウムシ、シバンムシ、ダンゴムシ、ワラジムシなどの匍匐害虫があげられるが、これらの害虫に限定されるものではない。」

1d「【実施例1】【0021】メトフルトリン4.0w/v%をエタノールに溶解してエアゾール原液を調製した。このエアゾール原液12mLと液化石油ガス18mL[エアゾール原液/噴射剤比率:40/60(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填して、本発明で用いる害虫防除用エアゾールを得た。
このエアゾールの噴射距離20cmにおける噴射力は6.5g・fで、10?50μmの噴霧粒子が全体の80%を占めた。
【0022】ほぼ密閉した6畳の部屋で、やや斜め上方に向けて前記エアゾールを0.6mL噴霧した。このエアゾールは、全体の噴霧粒子のうちの30%が噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着し、7時間以上にわたり蚊等の飛翔害虫を防除することはもちろん、ゴキブリ類、アリ類やシバンムシ等の匍匐害虫も寄せ付けず、非常に実用性の高いものであった。
【実施例2】【0023】実施例1に準じて表1に示す各種害虫防除用エアゾールを調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す。
(1)25m^(3)の部屋での飛翔害虫に対する防除効果
閉めきった25m^(3)の部屋の中央で供試エアゾールを斜め上方に向けて0.6mL噴霧した。直ちに、アカイエカ雌成虫50匹を放ち2時間暴露させた後、全ての供試蚊を回収した。その間、時間経過に伴い落下仰転したアカイエカ雌成虫を数え、KT_(50)値を求めた。同じ部屋で引き続き、噴霧4時間後、及び噴霧7時間後についても同様な操作を行った。
(2)匍匐害虫に対する忌避効果
20×20cmのガラス板6枚(チャバネゴキブリ用、クロヤマアリ用、及びアミメアリ用各2枚)を閉めきった25m^(3)の部屋の中央に設置した。供試エアゾールを部屋の中央から斜め上方に向けて0.6mL噴霧し、2時間後にガラス板3枚を回収した。この薬剤付着ガラス板1枚と無処理のガラス板1枚を隙間なく合わせて並べ、合わせ目に直径15cmのプラスチックリングの中心がくるように置いた。リング内にチャバネゴキブリ(♂♀各5匹)、クロヤマアリ(5匹)又はアミメアリ(5匹)を放って自由に徘徊させ、30分後に供試昆虫がどちらのガラス板に留まっているかを計数した。噴霧7時間後に回収した残りのガラス板3枚ついても同様な操作を行った。結果は以下の基準で示した。
◎:全てノックダウン又は致死、あるいは全ての供試昆虫が無処理ガラス板、○:供試昆虫の80?90%が無処理ガラス板(忌避活性あり)、△:供試昆虫の50?70%が無処理ガラス板(忌避活性の可能性)、×:忌避活性なし。
(3)噴霧粒子の床面及び壁面付着量
25m^(3)の部屋の床面及び壁面の数ケ所に20×20cmのガラス板を置き、噴霧処理1時間後に全てのガラス板を取り出し、付着した害虫防除成分をアセトンで洗い出してガスクロマトグラフィーにより分析した。得られた分析値を基に、噴霧処理1時間後までに床面に沈降するか、もしくは壁面に付着した害虫防除成分の、理論上の噴霧全体量に対する比率を求めた。
【0024】

【0025】

【0026】試験の結果、害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10^(-4)?1×10^(-2)mmHgであるピレスロイド化合物、好ましくは、メトフルトリン、プロフルトリン及びトランスフルトリンから選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2?3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20?50/50?80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールは、屋内で一定量噴霧処理することによって、飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれに対しても、7時間以上にわたり優れた害虫防除効果を保持した。
これに対し、比較例1のように、害虫防除成分として蒸気圧が2×10^(-4)mmHg未満であるd,d-T80-プラレトリンを用いた場合、害虫防除成分の噴霧粒子が気中に長く残存せず短時間で床面に沈降するため、匍匐害虫に対しては相応の害虫防除効果を奏するものの、飛翔害虫に対する害虫防除効果は速やかに低下した。このような傾向は、所定の害虫防除成分を用いたとしても、エアゾール原液/噴射剤比率が50/50より大きい比較3や、溶剤として2?3の低級アルコールではなくケロシンを用いた比較5においても認められた。
一方、比較2のように、エアゾール原液/噴射剤比率が20/80より小さいと、噴霧粒子が微細になりすぎ、また、比較4の如く、噴射力が3.0g・f未満であると、噴霧粒子が床面や壁面に付着する割合が低くなり、いずれも匍匐害虫に対する害虫防除効果の低下を招いた。
このように、本発明の害虫防除方法によってのみ、飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれに対しても、7時間以上にわたり優れた害虫防除効果が得られることが明らかとなった。」

2 刊行物に記載された発明
刊行物1は、「害虫防除成分として30℃における蒸気圧が2×10^(-4)?1×10^(-2)mmHgであるピレスロイド化合物から選ばれた1種又は2種以上、並びに溶剤として炭素数が2?3の低級アルコールを含むエアゾール原液と噴射剤とからなり、エアゾール原液/噴射剤比率が20?50/50?80(容量比)で、しかも噴射距離20cmにおける噴射力が3.0g・f以上である定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を5?12時間にわたり飛翔害虫並びに匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とすることを特徴とする害虫防除方法」(1a 請求項1)に関し記載するものであって、その具体例として、実施例2には「実施例1に準じて表1に示す各種害虫防除用エアゾールを調製し、下記に示す試験を行った。その試験結果を纏めて表2に示す」(1d【0023】)と記載されている。

この【表1】(1d【0024】)には、実施例1に準じて調製された「本発明4」として、害虫防除成分がメトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%、溶剤がエタノール、他成分が界面活性剤0.3w/v%及び水20w/v%、噴射剤がLPG(液化石油ガス)及び窒素ガス、原液/噴射剤比が30/70、噴射距離20cmにおける噴射力が4.8g・f、10?50μmの噴霧粒子が83%の害虫防除用エアゾールが記載されている。

そうすると、実施例1に準じて調製された「本発明4」の害虫防除用エアゾールとして、表1の記載を実施例1の調製方法(1d【0021】)にあてはめて書き下すと、刊行物1には、
「害虫防除成分としてメトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%、並びに、他成分として界面活性剤0.3w/v%及び水20w/v%を、エタノールに溶解してエアゾール原液を調製し、このエアゾール原液と噴射剤として液化石油ガス及び窒素ガス[エアゾール原液/噴射剤比率:30/70(容量比)]を定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器に加圧充填した害虫防除用エアゾールであって、このエアゾールの噴射距離20cmにおける噴射力は4.8g・fで、10?50μmの噴霧粒子が全体の83%を占める、害虫防除用エアゾール」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の「(a)害虫防除成分としてメトフルトリン」と、引用発明の「害虫防除成分としてメトフルトリン・・及びテラレスリン・・」とは、(a)害虫防除成分としてメトフルトリンを含有している点で共通する。

(2)引用発明の「エタノール」は、害虫成分や他成分を溶解する有機溶剤であるから、本願発明の「(b)有機溶剤」に相当する。

(3)引用発明の「エアゾール原液」は、「害虫防除成分としてメトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%、並びに、他成分として界面活性剤0.3w/v%及び水20w/v%を、エタノールに溶解して」「調製し」たものであり、「害虫防除成分としてメトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%」並びに「エタノール」を含有しているものである。
そうすると、前記(1)及び(2)を踏まえると、本願発明の「(a)害虫防除成分としてメトフルトリン及び(b)有機溶剤を含有するエアゾール原液」と、引用発明の「害虫防除成分としてメトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%、並びに、他成分として界面活性剤0.3w/v%及び水20w/v%を、エタノールに溶解し」た「エアゾール原液」とは、(a)害虫防除成分としてメトフルトリン及び(b)有機溶剤を含有するエアゾール原液である点で共通する。

(4)引用発明の「メトフルトリン3.0w/v%」について、前記(3)を踏まえると、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が3.0w/v%といえる。
そうすると、本願発明の「前記エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が14.3?30.0w/v%であり」と、引用発明の「メトフルトリン3.0w/v%」とは、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が特定濃度(w/v%)である点で共通する。

(5)引用発明の「噴射剤として液化石油ガス及び窒素ガス」は、本願発明の「(c)噴射剤」に相当する。

(6)本願発明の「エアゾール原液/噴射剤比率が10?20/80?90(容量比)」と、引用発明の「エアゾール原液/噴射剤比率:30/70(容量比)」とは、エアゾール原液/噴射剤比率が特定容量比である点で共通する。

(7)引用発明の「定量噴霧用エアゾールバルブ付きエアゾール容器」は、本願発明の「定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器」に相当する。

(8)引用発明の「害虫防除用エアゾール」は、該「害虫」として「屋内で飛翔して人に被害や不快感を与える害虫、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類・・などの各種飛翔害虫・・」(1c【0019】)が含まれ、蚊類防除用エアゾールといえることから、本願発明の「蚊類防除用エアゾール」に相当する。

(9)本願発明の「当該エアゾールの噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径が10?80μmであ」るとは、エアゾールの噴霧粒子について、体積積算分布で90%の粒子径が10?80μmであるということである。
他方、引用発明の「10?50μmの噴霧粒子が全体の83%を占める」ことは、引用発明の害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の全体の83%の粒子径が10?50μmであるということである。
そうすると、本願発明の「当該エアゾールの噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径が10?80μmであ」ることと、引用発明の「10?50μmの噴霧粒子が全体の83%を占める」こととは、エアゾールの噴霧粒子の特定割合の粒子径が特定範囲の大きさである点で共通する。

したがって、両者は、
「(a)害虫防除成分としてメトフルトリン及び(b)有機溶剤を含有するエアゾール原液と、(c)噴射剤とを、エアゾール原液/噴射剤比率が特定比(容量比)となるように、定量噴霧用エアゾールバルブを備えたエアゾール容器に充填した蚊類防除用エアゾールであって、
前記エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が特定濃度(w/v%)であり、
当該エアゾールの噴霧粒子の特定割合の粒子径が特定範囲の大きさである、蚊類防除用エアゾール」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本願発明は、害虫防除成分としてメトフルトリンを含有するもので、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が14.3?30.0w/v%であるのに対し、引用発明は、害虫防除成分としてメトフルトリン及びテラレスリンを含有するもので、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が3.0w/v%である点

相違点2:エアゾール原液/噴射剤比率(容量比)が、本願発明では10?20/80?90であるのに対し、引用発明では30/70である点

相違点3:本願発明は、定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により5.7mg以上の害虫防除成分を噴出させ、屋内の25m^(3)の処理空間において前記1回の噴霧処理から20時間経過後の蚊類に対するKT_(50)値が18.7分以下となるようになしたものであるのに対し、引用発明は、定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により噴出させる害虫防除成分の量は明らかでなく、屋内の25m^(3)の処理空間において前記1回の噴霧処理から20時間経過後の蚊類に対するKT_(50)値も明らかでない点

相違点4:蚊類防除用エアゾールの噴霧粒子について、本願発明では、噴霧粒子の体積積算分布での90%粒子径が10?80μmであるのに対し、引用発明では、10?50μmの噴霧粒子が全体の83%を占める点

4 判断

(1)相違点について

ア 相違点1について

(ア)害虫防除成分の種類について
害虫防除成分の種類として、本願発明のエアゾール原液は、「メトフルトリン」「を含有する」ものであるのに対し、引用発明のエアゾール原液は、「メトフルトリン」「及びテラレスリン」を含有するという、メトフルトリン以外の害虫防除成分も含有しているものである。
この点、本願発明が「(a)害虫防除成分としてメトフルトリン及び(b)有機溶剤を含有するエアゾール原液」(審決注:下線は当審が付与。以下同様)として、エアゾール原液が(a)及び(b)以外の成分を含有することを許容するものと解されることに加え、本願明細書には「【0014】本発明では、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、メトフルトリンに加え、トランスフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン等の常温揮散性ピレスロイド化合物・・等を若干量配合してもよい」と記載されており、この記載によれば、メトフルトリンに加え、他の害虫防除成分を配合することを許容している。
そうすると、害虫防除成分の種類として、両者は、メトフルトリンを含有するものである点で相違がない。

(イ)エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量について
引用発明は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールであって、それを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除用エアゾールである(1b【0007】、【0009】)。
刊行物1には、「本発明の害虫防除方法は、害虫防除成分が高濃度の害虫防除用エアゾールを少量一定量噴霧するので、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量も、1.0?30w/v%程度と高濃度となる。・・なお、エアゾール原液中の害虫防除成分含有量が1.0w/v%未満であると所望の効果が得られないし、一方、30w/v%を超えるとエアゾール内容液の液性安定化の点で困難を伴う」(1c【0011】)と記載されており、引用発明のエアゾール原液における害虫防除成分含有量は、1.0?30w/v%程度の範囲とし得るといえる。
このエアゾール原液における害虫防除成分含有量の範囲のうち、害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするためには、刊行物1の前記記載から、1.0w/v%未満の低濃度では所望の効果が得難く、30w/v%を超える高濃度ではエアゾール内容液の液性安定化の点で困難を伴うことから、所望の効果を得るために、1.0?30w/v%の範囲において高濃度側にすることは許容されていると理解される。
それ故、エアゾール原液における害虫防除成分含有量をある程度高濃度にするよう、1.0?30w/v%程度の範囲内のうち、より高濃度側の20?30w/v%程度の範囲とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。
ここで、引用発明の害虫防除成分含有量を20?30w/v%に高めた場合のメトフルトリン含有量の範囲を算出すると、引用発明はエアゾール原液における害虫防除成分として、メトフルトリン3.0w/v%及びテラレスリン1.0w/v%を含有するもので、エアゾール原液における害虫防除成分中のメトフルトリンの含有割合は0.75[=3.0w/v%/(3.0w/v%+1.0w/v%)]であるから、含有量を高めた場合には、15w/v%(=20w/v%×0.75)?22.5w/v%(=30w/v%×0.75)程度の含有量であるといえる。
そうすると、引用発明において、害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするよう、エアゾール原液における害虫防除成分含有量をある程度高濃度にしようとして、引用発明のエアゾール原液におけるメトフルトリン含有量を、3.0w/v%に代えて、15?22.5w/v%程度とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
前記ア(イ)で述べたように、引用発明は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールであって、それを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除用エアゾールである(1b【0007】)。
そして、刊行物1には、「本発明で用いる害虫防除用エアゾールは、エアゾール原液/噴射剤比率が20?50/50?80(容量比)・・であることを必須とする。エアゾール原液/噴射剤比率が20/80より小さく噴射剤が多すぎると、噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足する」(1c【0012】下線は当審が付与。以下同様)、及び、「噴霧粒子の気中残存率と床面や壁への付着率を考慮して、エアゾール原液/噴射剤比率を20?50/50?80(容量比)とする」(1c【0016】)と記載されている。
これらの記載より、引用発明のエアゾール原液/噴射剤比率を、噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足することのないよう、20/80より小さくすることはしないとしても、該比率を20/80とすることは許容範囲内といえる。
そうすると、引用発明のエアゾール原液/噴射剤比率(容量比)を、30/70に代えて、該比率として許容範囲内である20/80とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
引用発明において、定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により噴出させるメトフルトリンの量を計算する。
引用発明における定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧量(mL)は、刊行物1の「【0018】本発明は・・害虫防除用エアゾールを、屋内で一定量、好ましくは一回当たり空中に向けて0.35?0.9mLで噴霧し」(1c)及び「【実施例2】【0023】・・閉めきった25m^(3)の部屋の中央で供試エアゾールを斜め上方に向けて0.6mL噴霧した」(1d)という記載より、0.6mLといえる。
それ故、引用発明における、定量噴霧用エアゾールバルブを通した1回の噴霧処理により噴出させるメトフルトリンの量(mg)は、原液/噴射剤比が30/70(表1(1d))、エアゾール原液中の害虫防除成分がメトフルトリン3.0w/v%(=3.0g/100mL)であることから、5.4mg(=0.6mL/1回噴霧量×30/(30+70)×3.0g/100ml)といえる。

そして、刊行物1には、害虫防除用エアゾールの好ましい1回当たりの噴霧量(mL)として「0.35?0.9mL」と記載されている(1c【0018】)。この記載に基づいて、引用発明における噴霧量を上記害虫防除用エアゾールの好ましい1回当たりの噴霧量(mL)の範囲とした場合の1回の噴霧処理により噴霧されるメトフルトリンの量(mg)を試算すると、3.15mg(=0.35mL/1回噴霧量×30/(30+70)×3.0g/100ml)?8.1mg(=0.9mL/1回噴霧量×30/(30+70)×3.0g/100ml)の範囲となる。
そうすると、この場合のメトフルトリンの量3.15?8.1mgのうち5.7?8.1mgは、相違点3に係る5.7mg以上の範囲に含まれており、さらに、刊行物1には、1回当たりの噴霧量(mL)を増減できることも記載されていることから、1回当たりの噴霧量(mL)を増やし、そこに含まれるメトフルトリンの量を5.7?8.1mgとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、その場合の20時間経過後の蚊類に対するKT_(50)値を確認し、該KT_(50)値を発明特定事項とすることにも格別の困難性はない。

エ 相違点4について

(ア)引用発明の「10?50μmの噴霧粒子が全体の83%を占める」ということは、引用発明の害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の全体の83%の粒子径が10?50μmであるということだから、全体の90%の粒子径は10?80μmの範囲にある蓋然性が高いと認められる。
そうすると、当該エアゾールの噴霧粒子に関し、特定割合の粒子径が特定範囲の大きさである点として、両者は、実質的に相違がない蓋然性が高いといえる。

(イ)仮に、両者に実質的な相違があるとしても、刊行物1には、害虫防除用エアゾールの噴霧粒子の粒子径及び存在割合について、実施の態様として「噴霧粒子の粒子径分布において、10?50μmの噴霧粒子が全体の60%以上を占め・・」(1c【0016】)と記載されている。
さらに、刊行物1には、引用発明と同じく、刊行物1の請求項1に記載の害虫防除方法(1a請求項1)で用いる害虫防除用エアゾールの実施例として、刊行物1の【表1】(1d【0024】)に、「本発明3」として、害虫防除成分がメトフルトリン類似化合物のプロフルトリンではあるものの、該害虫防除成分と有機溶剤(エタノール)を含有するエアゾール原液における該害虫防除成分含有量が6.2w/v%、噴射剤がLPS(液化石油ガス)、エアゾール原液/噴射剤比率が20/80(容量比)及び10?50μmの噴霧粒子径が90%の害虫エアゾールが記載され、その害虫防除効果は引用発明と同等[【表2】(1d【0025】、【0026】)]であることが記載されている。
これらの記載より、引用発明の噴霧粒子の粒子径及び存在割合について、噴霧粒子の全体の90%の粒子径が10?50μmとすることは、当業者が容易に行うことである。

そうすると、引用発明の噴霧粒子の粒子径及び存在割合について、噴霧粒子の全体の90%の粒子径が10?50μmであるものを当業者が容易に行い得るものである以上、結果として、噴霧粒子の全体の90%の粒子径が10?80μmとなるから、相違点4についても、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願明細書の段落【0010】の記載及び実施例(【0022】?【0030】)の記載からみて、定量噴霧機能を備えたエアゾールを用い、一定量を室内空間に噴霧処理することによって、蚊類に対して20時間以上にわたり防除効果が持続可能な蚊類防除用エアゾールを提供できることと認められる。
しかしながら、引用発明は、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除用エアゾールであり(1b【0007】、【0009】)、前記(1)で述べたように、引用発明において、屋内で一定量噴霧処理する処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするよう、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量をある程度高濃度にし[前記(1)ア(イ)]、エアゾール原液/噴射剤比率を噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足することのない許容範囲内の比率にし[前記(1)イ]、かつ、1回当たりの噴霧量(mL)を増やせば[前記(1)ウ]、処理空間がより長時間にわたって飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気となることは、当業者が予測し得る効果である。本願発明は、蚊類に対して20時間以上にわたり防除効果が持続可能なことを確認にしたにすぎず、当業者が予測し得ない顕著な効果とまではいえない。

(3)請求人の主張について
請求人は、平成30年10月30日付け意見書の「3.3 本願発明と引用発明1との対比」において、以下のア及びイを主張している。
ア エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量が、本願発明では14.3?30.0w/v%であるのに対し、引用発明では3.0w/v%である点で相違し、この相違点により、本願発明では蚊類に対する高い防除効果を噴霧処理から20時間にわたり持続させることが可能となること。
イ 刊行物1は、飛翔害虫だけではなく匍匐害虫も防除することを課題としており、噴霧粒子の一部を露出部に付着させるようになしたのは、匍匐害虫の防除のためであり、噴霧粒子の壁面付着量を20%以上にしていること、そして、刊行物1は、飛翔しながらも壁等に係留する習性のある蚊類では壁面に付着した微量の薬剤粒子に接触することで十分な防除効果が発揮されるという知見の開示がなく、噴霧粒子の壁面付着量が大きい刊行物1の記載からは、飛翔害虫に対する防除効果の持続性を改善するために、引用発明1においてメトフルトリン含有量を増大させるという動機付けは生じ得ないこと、そのため、引用発明1から、前記の相違点に、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

以下検討する。
アの主張について
当該相違点である相違点1の容易想到性については、前記(1)アで述べたとおりである。
審判請求人は、この相違点により、本願発明では蚊類に対する高い防除効果を噴霧処理から20時間にわたり持続させることが可能となると主張している。
しかし、本願明細書の【表1】及び【表2】に示されている実施例4は、エアゾール原液/噴射剤比率(35/55)が本願発明の範囲外であるから、本願発明の実施例である実施例3と直接比較できないが、メトフルトリン含有量だけをみれば、実施例4はエアゾール原液における含有量(6.2w/v%)が実施例5の含有量(30.0w/v%)よりかなり少なく、本願発明の範囲外であるにもかかわらず、20時間後の蚊成虫防除効果(KT_(50)値:分)については、実施例4の効果(11.8分)は実施例5の効果(18.7分)より高いことが示されている。
このように、単に、エアゾール原液における害虫防除成分のメトフルトリン含有量が本願発明の範囲内であれば、高い防除効果を噴霧処理から20時間にわたり持続させることが可能となるとは、一概にはいえない。
そして、この効果は、前記(2)で述べたように、引用発明において、屋内で一定量噴霧処理する処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするよう、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量をある程度高濃度にし[前記(1)ア(イ)]、エアゾール原液/噴射剤比率を噴霧粒子が必要以上に微細となり床や壁への付着量が不足することのない許容範囲内の比率にし[前記(1)イ]、かつ、1回当たりの噴霧量(mL)を増やす[前記(1)ウ]ことにより、当業者が予測することができるものである。
したがって、エアゾール原液におけるメトフルトリン含有量の相違によって、本願発明では蚊類に対する高い防除効果を噴霧処理から20時間にわたり持続させることが可能となるとは一概にはいえず、上記請求人の主張は採用できない。

イの主張について
刊行物1に、飛翔しながらも壁等に係留する習性のある蚊類では壁面に付着した微量の薬剤粒子に接触することで十分な防除効果が発揮されるという知見の直接の開示がないとしても、前記(1)ア(イ)で述べたように、刊行物1には、常温揮散性ピレスロイド化合物を含む特定の害虫防除用エアゾールを屋内で一定量噴霧処理し、その処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とする害虫防除用エアゾールを提供することを課題することが記載されているから(1b【0007】)、処理空間を長時間にわたり飛翔害虫及び匍匐害虫のいずれも防除可能な雰囲気とするという動機付けはあるといえる。
そして、動機付けが認められる以上、相違点1については、前記(1)ア(イ)で述べたとおりであるから、前記請求人の主張は採用できない。

以上のとおり、前記請求人の主張はいずれも採用することはできない。

5 小括
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明すなわち請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-13 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-04 
出願番号 特願2014-4475(P2014-4475)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 冨永 保
齊藤 真由美
発明の名称 蚊類防除用エアゾール、及びこれを用いた蚊類の防除方法  
代理人 沖中 仁  
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