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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D |
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管理番号 | 1350934 |
審判番号 | 不服2018-5828 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-26 |
確定日 | 2019-04-18 |
事件の表示 | 特願2014- 32581「外設材の支持部材及び支持構造」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日出願公開、特開2015-158063〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年2月24日の出願であって、平成29年7月21日付け(発送日:同年8月1日)で拒絶理由通知がされ、平成29年9月14日付けで手続補正がされ、平成30年1月31日付け(発送日:同年2月6日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされたものである。 第2 平成30年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の結論] 平成30年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。 「下側取付部と、屋根面に沿う基材部と、上側取付部とからなり、屋根に外設材を取り付けるための支持部材であって、 前記下側取付部及び前記上側取付部は、前記屋根を構成する外装材の接続部に取り付けられる部位であり、 前記基材部は、屋根面に面で当接する基板部と、該基板部の一部を上方への隆起状として裏面側から取付ボルトを立設可能な支持面部を備えることを特徴とする外設材の支持部材。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、平成29年9月14日にされた手続補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「下側取付部と、屋根面に沿う基材部と、上側取付部とからなり、屋根に外設材を取り付けるための支持部材であって、 前記下側取付部及び前記上側取付部は、前記屋根を構成する外装材に取り付けられる部位であり、 前記基材部は、屋根面に面で当接する基板部と、該基板部の一部を上方への隆起状として裏面側から取付ボルトを立設可能な支持面部を備えることを特徴とする外設材の支持部材。」 2 補正の適否 請求項1に係る本件補正は、「前記下側取付部及び前記上側取付部」が取り付けられる「屋根を構成する外装材」の場所を「接続部」と限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、 当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、請求項1に係る本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1について (ア)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本願出願前に頒布された特開2009-57710号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は本審決で付した。以下同様。)。 a 「【0001】 本発明は、例えば太陽光発電用パネルや太陽熱利用温水器用パネル、テレビ受信用アンテナなど、屋根上に設置される設置物を取付け固定するために使用される取付け用金物に関するものである。」 b 「【0006】 本発明は、細帯状の金属板を折曲形成して製作されるもので、帯状金属板本体の中間部に設置物取付け用の凸部が形成され、該本体の長さ方向両端部には屋根材の両側端部に折曲形成された屋根材連結用の雄・雌嵌合部に外側からこれにならった形状として密に嵌合可能な嵌着部がそれぞれ折曲形成されてなる屋根上設置物の取付け用金物に関するものである。」 c 「【0010】 図1は、本発明に係る屋根上設置物の取付け用金物の一例を示す側面図であり、1は鉄板、亜鉛鉄板、アルミニウム、ステンレスや銅等の金属板製の横葺き用屋根材2の上下方向(屋根の流れ方向)の幅にほぼ等しい長さを有する細幅(例えば50?100mm)のステンレスやアルミニウム製等の金属板本体で、該金属板本体1の中間部には屋根上に設置される太陽光発電用パネル等の設置物の取付け台となる側面山型で上面が平坦な凸部3が上方へ向けて突出形成されている。 【0011】 上記凸部3は、図1では金属板本体1とは別体の同幅の金属板を凸型に折曲形成して、その下縁の水平部を金属板本体1中間部にスポット溶接やリベットのかしめにより固定されているが、図2に示すように、金属板本体1自体の中間部を折曲加工することにより形成してもよい。該凸部3の上底中央部には圧入ナット、かしめナットあるいはバーリング部へのネジ加工等の螺合部7が設けられ、パネル等の設置物にボルト固定できるようになっている。 【0012】 4は上下方向の一方端部を内側へ向けて略コ字形に折曲形成した屋根材2の雄側嵌合部2aにほぼならった形状に折曲形成されて該雄側嵌合部2aに外側から被覆するように密に嵌合可能な雄側嵌着部であり、5は屋根材2の他方端部をいったん上側に折り返してから更に反対側へ向けて折り返してなる雌側嵌合部2bにほぼならった形状に折曲形成されて外側から被覆するように密に嵌合可能な雌側嵌着部である。(図3参照)」 d 「【0015】 しかして、図3に示すような例えば断熱材として裏面に発泡ウレタン樹脂等を一体に発泡成型した裏打ち材10を備える横葺き用の金属製屋根材2を葺設して行く場合、図4に示すように、雄側嵌合部2aを軒側に向け、その反対端の雌側嵌合部2bに形成された折り返し部内に他の屋根材2の雄側嵌合部2aの折曲端部を引っ掛けるようにして嵌合連結し、その際、雌側嵌合部2bに延設された平坦部2cは屋根下地材9へビス止めするようにし、このようにして雄側嵌合部2aと雌側嵌合部2bとの嵌合連結を棟方向に向かって順次繰り返しながら屋根材2を葺設して行く。 【0016】 そこで、屋根上設置物取付け用の金属板本体1を所定の屋根材2に取り付ける場合には、屋根材2を上記のように嵌合連結しながら葺設して行く際に、所定個所の屋根材2の雄側嵌合部2aにその外側から金属板本体1の雄側嵌着部4を引っ掛けるようにして嵌合し、同時に金属板本体1の雌側嵌着部5は屋根材2の雌側嵌合部2bに形成された折り返し部に引っ掛けるようにして嵌合してから、該雌側嵌着部5に延設された延長部6を屋根下地材9に直接ビス11止め固定するのである(図4参照)。これにより、金属板本体1は屋根材2の所定個所に確実に固定される。 【0017】 そして、このようにして所定の屋根材2上に金属板本体1を取り付けたら、上側(棟側)に連結する別の屋根材2の雄側嵌合部2aを金属板本体1を取り付けた上記屋根材2の雌側嵌合部2bに上記と同様にして係合嵌合させるのであるが、金属板本体1を取り付けた部分の屋根材2の雌側嵌合部2bはこれにならって折曲形成されてその外側に嵌合した該金属板本体1の雌側嵌着部5と内外二重となっているので、この部分では上記した別の屋根材2の雄側嵌合部2aの折曲端部は金属板本体1の雌側嵌着部5の上方への折り返し部内に圧入するようにして嵌合させることとなり、このようにして複数の屋根材2上の任意個所に金属板本体1を複数設置して行くのである。(図4参照) 【0018】 これにより、屋根面上には金属板本体1の凸部3が複数突設されるので、該凸部3を利用して太陽光発電用パネル等の設置物を直接ボルト固定したり、設置物取付け用基台を差し渡し固定したりすることができるのである。」 e 「【図3】 」 図3から、以下の点が看取される。 「金属板本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間が、屋根面に沿っている点。」 (イ)上記(ア)により、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「屋根上に設置される設置物を取付け固定するために使用される取付け用金物であって、 帯状金属板本体1の中間部には、該本体1自体を折曲加工することにより、設置物取付け用の凸部3が形成され、凸部3の上底中央部には、圧入ナット、かしめナットあるいはバーリング部へのネジ加工等の螺合部7が設けられ、パネル等の設置物にボルト固定できるようになっており、 該本体1の長さ方向両端部には、屋根材2の軒側の雄側嵌合部2aにほぼならった形状に形成されて該雄側嵌合部2aに外側から被覆するように密に嵌合可能な雄側嵌着部4と、屋根材2の軒側と反対端の雌側嵌合部2bにほぼならった形状に形成されて該雌側嵌合部2b外側から被覆するように密に嵌合可能な雌側嵌着部5が設けられており、 該本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間は、屋根面に沿っており、 所定個所の屋根材2の雄側嵌合部2aにその外側から金属板本体1の雄側嵌着部4を引っ掛けるようにして嵌合し、同時に金属板本体1の雌側嵌着部5は屋根材2の雌側嵌合部2bに形成された折り返し部に引っ掛けるようにして嵌合し、上側(棟側)に連結する別の屋根材2の雄側嵌合部2aを金属板本体1を取り付けた屋根材2の雌側嵌合部2bに係合嵌合させる、取付け用金物。」 イ 引用文献3について (ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本願出願前に頒布された特開2013-83044号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「【0001】 本発明は、新設、既設を問わず建築物の屋根に施工される多種の縦葺き(縦張り)外装構造に適用でき、太陽電池システムや緑化構造等を取り付けることができ、作製コストも低く抑えることができる持出部材、及びそれを用いた外設部材の取付構造に関する。」 b 「【0021】 (A)脚部 本発明の持出部材の脚部は、持出部材を屋根に取り付けるための部位であって、概略的には屋根面の山状部分を構成する二つの傾斜面に沿わせる二つの傾斜面状に形成される。なお、後述する図示実施例のように山状部分の頂部が台状である場合などは、厳密には傾斜面と頂部の一部に沿わせる略く字状に形成されることもある。 この脚部には、前述のように固定具が挿通する孔と、該孔の上方及び側方からの流水を防ぐ堰状部とを設けてなる。」 c 「【0024】 (B)取付部 本発明の持出部材の取付部は、山状部分の頂部に外設部材又は外設部材を支持する支持材を取り付ける部位であって、後述する図示実施例では下方が開放する矩形状の枠体に形成したが、特に限定するものではない。なお、この取付部の開放部分である下端が、前記脚部の基端であり、屋根面に突状部が形成される場合には、該突状部にこの収容部を被せるように配設してもよい。 この取付部は、裏面側に連結用のボルトの頭部又はナットを収容する収納部であってもよく、この場合、その上面には通孔が形成される。」 d 「【0027】 このような脚部と取付部とからなる本発明の持出部材には、取付部の頂部に外設部材を直接的に取り付けてもよいし、支持材を介して間接的に取り付けてもよい。 特に取付部が前述のように裏面側に連結用のボルトの頭部又はナットを収容する収納部である場合には、該連結用のボルト又はナットを用いて容易に取り付け固定することができる。例えばボルトの上端に押さえ材等を配してナットで締め付け固定して外設部材や支持材を取り付けることができる。 に支持金具を固定してもよい。」 e 「【0033】 また、この持出部材1における取付部12は、略中央に位置する横片状の上面部と左右の略垂直面状の縦片部とからなり、その内部空間には、六角ボルトである連結ボルト2の頭部21が収容されている。」 f 「【0039】 このような構成を有する太陽電池モジュール6の取付構造は、前記持出部材1の取付部12の上面に太陽電池モジュール6を取り付けた構成であり、山状部分51と谷状部分52とが連続する屋根面5に対し、太陽電池モジュール6を簡易な構造にて取り付けることができる。 しかも取付部12の上面には連結ボルト2が起立状に取り付けられているので、該連結ボルト2に押さえ材7を挿通させ、連結ボルト2の上端からナット2Nを嵌め付け、締め付けることにより、流れ方向に隣接する太陽電池モジュール6,6の側縁を押さえ材7の押さえ部71,71にて押さえ込むように固定することができる。」 (イ)引用文献3に記載の技術事項 上記(ア)により、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「建築物の屋根の外設部材の取付構造において、屋根の山状部分に外設部材を取り付けるための持出部材1における取付部12を設け、取付部12の裏面側に連結ボルト2の頭部21を収容し、取付部12の上面に連結ボルト2を起立状に取り付け、押さえ材7を挿通させて連結ボルト2の上端からナット2Nを嵌め付け、締め付けること。」 ウ 引用文献4について (ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用され、本願出願前に頒布された特開2012-177291号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「【0001】 この発明は、例えば、瓦葺きの屋根上に太陽電池モジュールのような機器を搭載する場合に用いる屋根上搭載機器の支持装置に関する。」 b 「【0031】 次に、この発明の屋根上搭載機器の支持装置1は、図示のように、屋根下地構造の垂木5に重なるように配置したベースプレート6上に固定する支持ブロック7と、この支持ブロック7の上に重ねるカバー部材8と、前記カバー部材8上に載置する接合部材9と、接合部材9に固定する接続金具10と、前記支持ブロック7をベースプレート6に固定する下部固定用ねじ11と、カバー部材8と接合部材9を支持ブロック7に固定する上部固定用ねじ12とで構成されている。」 c 「【0036】 上記接合部材9は、図2と図5のように、カバー部材8の上に重ねる矩形状ベース板15の上面に、所定の間隔を設けて平行する一対の凸条16、16を設け、両凸条16、16間に上記接続金具10との係合溝17を形成した構造になっている。」 d 「【0039】 上記接続金具10は、接合部材9の係合溝17における溝部17aに挿入する係合部10aと、この係合部10aに起立するよう設けた螺軸10bとで形成され、前記係合溝17に対して係合部10aを引掛けることにより、上面の開口17bから螺軸10bが突出するように取付けられ、係合溝17の長さ方向に沿って位置調整可能になる。」 e 「【0046】 図5のように、上記接合部材9の係合溝17に接続金具10の下端係合部10aを挿入し、この接続金具10を係合溝17の長さ方向にスライドさせて所定の位置まで移動させた後、接続金具10の上に起立する螺軸10bを、屋根上搭載機器である太陽光モジュールのような機器の架台構成する横桟19に設けられた取付け挿通孔20に挿入させ、螺軸10bにナット21を締め込むことで、支持装置1に機器の架台を固定する。」 f 「【図3】 」 「ボルト」とは、「金属丸棒の一端にねじを切り、普通は他端に直径より大きな四角・六角などの頭をつけたもの。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]であると一般的には解されるから、図3の「接続金具10」の形状からみて、「接続金具10」は「ボルト」であり、「係合部10a」は「頭部」である。 してみると、図3から、以下のことが看取できる。 「接続金具10を、頭部10aを有するボルトとしたこと。」 (イ)引用文献4に記載の技術事項 上記(ア)により、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「屋根上搭載機器の支持装置において、接続金具10との係合溝17を形成した接合部材9を屋根下地構造に載置し、ボルトである接続金具10の頭部10aを、接合部材9の係合溝17に挿入し、頭部10aに起立するよう設けた螺軸10bを、上面の開口17bから突出するように取付け、屋根上搭載機器の架台を構成する横桟19に設けられた取付け挿通孔20に挿入させ、螺軸10bにナット21を締め込むこと。」 (3)引用発明1との対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「屋根上に設置される設置物を取付け固定するために使用される取付け用金物」は、本件補正発明の「屋根に外設材を取り付けるための支持部材」に相当する。 (イ)引用発明1の「軒側の雄側嵌合部2a」に「嵌合可能な雄側嵌着部4」は、屋根材2の下側(軒側)に設けられるものであるから、本件補正発明の「下側取付部」に相当する。 同様に、引用発明1の、「軒側と反対端の雌側嵌合部2b」に「嵌合可能な雌側嵌着部5」は、屋根材2の上側(軒側と反対側)に設けられるものであるから、本件補正発明の「上側取付部」に相当する。 また、引用発明1において、「上側(棟側)に連結する別の屋根材2の雄側嵌合部2a」と、「金属板本体1を取り付けた屋根材2の雌側嵌合部2b」は、互いに「係合嵌合」するものであり、接続していると解されるから、引用発明1の「屋根材2の雄側嵌合部2a」と「屋根材2の雌側嵌合部2b」は、本件補正発明の「屋根を構成する外装材の接続部」に相当する。 そして、引用発明1の、「雄側嵌着部4」と「雌側嵌着部5」は、「屋根材2の雄側嵌合部2a」と「屋根材2の雌側嵌合部2b」にそれぞれ嵌合されるものであるから、本件補正発明のように、「屋根を構成する外装材の接続部に取り付けられる部位」であるといえる。 (ウ)引用発明1の「本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間」は、本件補正発明の「基材部」に相当する。 (エ)引用発明1において、「雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間は、屋根面に沿って」いること、「雄側嵌着部4」が、「屋根材2」の「雄側嵌合部2aにほぼならった形状」で「雄側嵌合部2a」に密に嵌合されること、「雌側嵌着部5」が、「屋根材2」の「雌側嵌合部2bにほぼならった形状」で「雌側嵌合部2b」に密に嵌合される点が特定されていることから、「凸部3」以外の「本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間」は、屋根面に面で当接していると解するのが自然である。 してみると、引用発明1における「凸部3」以外の「本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間」は、本件補正発明の「屋根面に面で当接する基板部」に相当する。 (オ)引用発明1において、「本体1自体を折曲加工」されて「中間部」に形成された「凸部3」は、「本体1の雄側嵌着部4と雌側嵌着部5間」において隆起状に形成されたものであるから、「本体1自体を折曲加工することにより」、「凸部3が形成され」ることは、本件補正発明の「基板部の一部を上方への隆起状とし」たことに相当する。 また、本件補正発明において、「裏面側」が、図2(d)より、「外設材が設けられる面と反対側」と解釈すると、引用発明1では、「凸部3」の「上底中央部」、すなわち、「凸部3」の上面部の裏側に「圧入ナット、かしめナットあるいはバーリング部へのネジ加工等の螺合部7」が設けられていることから、該「凸部3」の上面部は、「螺合部7」と螺合する取付ボルトを支持していると認められる。 すなわち、引用発明1の「凸部3」の上面部と本件補正発明の「支持面部」は、「基板部の一部を上方への隆起状とし」、「取付ボルト」を支持している「面部」である点で共通する。 (カ)以上(ア)ないし(オ)から、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「下側取付部と、屋根面に沿う基材部と、上側取付部とからなり、屋根に外設材を取り付けるための支持部材であって、 前記下側取付部及び前記上側取付部は、前記屋根を構成する外装材の接続部に取り付けられる部位であり、 前記基材部は、屋根面に面で当接する基板部と、基板部の一部を上方への隆起状とした取付ボルトの支持面部を備える外設材の支持部材。」 (相違点) 「支持面部」が、本件補正発明では、「裏面側から取付ボルトを立設可能」であるのに対し、引用発明1では、「上底中央部」(裏面側)に、取付ボルトを設けるための「圧入ナット、かしめナットあるいはバーリング部へのネジ加工等の螺合部7」が設けられており、「裏面側から取付ボルトを立設可能」には構成されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 相違点に係る本件補正発明の、「支持面部」が、「裏面側から取付ボルトを立設可能」であることは、本件補正発明の明細書を参酌すると、【0032】段落には、「この取付ボルト8bの頭部は隆起状の支持面部32の裏面側に収納され、支持面部32に形成した角孔321から突出(起立)させ」と記載されており、また、【0038】段落には、「前記支持面部32の裏面側から取付ボルト8bを貫通させて突出させ、該取付ボルト8bに前記受け金具8Dの底面の孔を挿通させ、上方から締付ナット8cにて締め付け、この支持面部32に受け金具8Dを一体的に固定することができる。この状態を図2(a)に示している。なお、隆起状の支持面部32を設けることで、図2(d)に示すようにこの支持面部32の裏面側に取付ボルト8bの頭部を収納することもでき、締着作業を上下方向(鉛直方向)で行うことができ、作業も容易に行うことができる。」と記載されていることから、具体的には、「取付ボルト8bの頭部を隆起状の支持面部32の裏面側に収納して、裏面側から取付ボルト8bを貫通させて突出させ、受け金具8Dの底面の孔を挿通させて上方から締付ナット8cにて締め付ける」構成であると解釈できる。 そして、引用文献3や引用文献4に記載の技術事項(上記(2)イ、ウ参照。)のように、外設材(外設部材、屋根上搭載機器)の支持部材において、接続部材(持出部材1、接合部材9)の裏面側に、ボルトの頭部を収容できる収納部(取付部12、係合溝17)を設け、ボルト(連結ボルト2、接続金具10)の軸部を突出させて設置物(押さえ材7、横桟19)を挿通し上方からナット(ナット2N、ナット21)を締め付けることにより、外設材を取り付けることは、本願出願前において周知の事項であり、また、引用発明1において、「凸部3」の上底中央部に、ナットを設けるか、取付ボルトの頭部を収納するかは、例えば、引用文献3の【0027】段落に、「裏面側に連結用のボルトの頭部又はナットを収容する収納部」と選択的に記載されていることからもわかるように、当業者が適宜選択し得る事項である。 よって、引用発明1において、「凸部3」の上底中央部に収納するものを、ナットとするか取付ボルトの頭部とするかを適宜選択して、上記周知技術(引用文献3及び4に記載の技術事項)を適用し、上底中央部に、取付ボルトを設けるための「圧入ナット、かしめナットあるいはバーリング部へのネジ加工等の螺合部7」を設ける構成に代えて、取付ボルトの頭部を収納して軸部を突出させてパネル等の設置物を挿通して上方からナットを締め付けるようにし、「凸部3」の上面部を、「裏面側から取付ボルトを立設可能」な「支持面部」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 なお、引用発明1の「凸部3」の上底中央部の裏面に取付ボルトの頭部を当接させ、ボルトの上端からナットを「凸部3」の上面部に当接する方向に締め付けることにより、取付ボルトが「立設」されることは明らかである。 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1及び周知技術(引用文献3及び4に記載の技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)請求人の主張について 請求人は、審判請求書(第4頁第2行?第5頁第1行)において、 「前記「外装材の接続部」は、軒棟方向に隣り合う外装材同士の連結部分を指すので、この「外装材の接続部に取り付けられる」という表記は、支持部材の配設に先立って「接続部」が形成されていること、即ち少なくとも外装材同士の連結部分が形成された後に支持部材を配設することも特定されています。 ・・・ したがって、本件発明1の支持部材は、その下側取付部及び上側取付部が、屋根(屋根面)の二つの接続部に対して取り付けられ、「基板部」も含めて安定に取り付けられるばかりでなく、新設屋根の施工中でも、既存屋根への所謂“後付け”にて施工することもできます。 それに対し、前記原審引用例1の取付け用金物は、その明細書の段落[0010]?[0016]中に説明されるように当段の外装材を下地や野地板に固定した後(或いは同時に)、凸部3を備える取付け用金物1の水上側を下地、野地材に固定し、その後、上段の外装材を敷設(施工)するものです。即ち当段の外装材と併せて取付け用金物1の取り付けを行わないと、その上段の外装材の施工が行えないことはその図4に示されるとおりです。そのため、この原審引用例1における取付け用金物1の取り付けは、全体の施工手順に影響を与える(施工手順を制限する)ものであって、当然のことながら、外装材の連結(接続)が終わったところへの取付け用金物1の取り付けは不可能です。既存屋根への取り付けも到底不可能です。」と主張するので検討する。 たしかに、本願明細書の【0027】-【0047】段落には、「上側取取付部」、「下側取付部」は、水下側の「外装材6」と水上側の「外装材6」を互いに接続させて「接続部」を形成した上で、該「接続部」に取り付けたことが記載されている。 しかしながら、本件補正発明では、「前記下側取付部及び前記上側取付部は、前記屋根を構成する外装材の接続部に取り付けられる」としか特定されておらず、外装材がいつ接続されるのかは特定されていないから、請求人が主張するように、「支持部材の配設に先立って「接続部」が形成されている」ことが特定されているとは認められない。 そして、本件補正発明によれば、支持部材を取り付けた最終形態で、「外装材の接続部」となり得るもの、すなわち、引用発明1の「雄側嵌合部2a」及び「雌側嵌合部2b」は、「外装材の接続部」であると解することができるから、上記(3)(イ)で述べたように、この点において、本件補正発明と引用発明1との間に相違点は生じない。 また、請求人は、審判請求書(第6頁第1行?同頁第10行)において、 「しかしながら、「取付ボルトを立設可能な支持面部」は、“取付ボルトの頭部を収納でき且つ立設させることができる支持面部”と解釈するのが通常と考えられますので、裏面側に取付ボルトの頭部の収容空間が薄肉に形成されることも容易に推察されます。逆に空間が厚肉すぎると、取付ボルトを立設できないことも容易に推察されます。また、本願の図面には、薄肉の収容空間が明記(図示)されています。 したがって、「取付ボルトを立設可能な支持面部」という記載は、裏面側に取付ボルトの頭部の収容空間が薄肉に形成されることを特定していなかったとしても、極めて容易に推察され、少なくとも原審引用例1,2における高さが大きい凸部との相違については、容認されるべきかと考えます。」と主張するので検討する。 本件補正発明は、「基材部は、屋根面に面で当接する基板部と、該基板部の一部を上方への隆起状として裏面側から取付ボルトを立設可能な支持面部を備える」と特定されているが、隆起状を「薄肉に」形成することは特定されていない。また、本件補正発明の「裏面側から取付ボルトを立設可能」であることが、隆起状を「薄肉に」形成することを意味することは、本願の明細書には何ら記載されていない。 したがって、引用発明1の「凸部3」と、本件補正発明の「支持面部」とで、高さが異なることは相違点にはならない。 よって、請求人の主張は採用できない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成30年4月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年9月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1及び2に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3及び4に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2009-57710号公報 引用文献3:特開2013-83044号公報 引用文献4:特開2012-177291号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3ないし4、及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記下側取付部及び前記上側取付部」が取り付けられる「屋根を構成する外装材」の場所が、「接続部」であるとの限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び周知技術(引用文献3及び引用文献4に記載の技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で、引用発明1及び周知技術(引用文献3及び引用文献4に記載の技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-02-14 |
結審通知日 | 2019-02-19 |
審決日 | 2019-03-04 |
出願番号 | 特願2014-32581(P2014-32581) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E04D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坪内 優佳 |
特許庁審判長 |
小野 忠悦 |
特許庁審判官 |
富士 春奈 住田 秀弘 |
発明の名称 | 外設材の支持部材及び支持構造 |
代理人 | 福田 伸一 |