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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1350938
審判番号 不服2018-9125  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-03 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2016-198881号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月12日出願公開、特開2018-57693号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成28年10月7日の出願であって、平成29年8月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年3月27日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成29年10月26日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Fについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 所定の遊技条件にしたがって遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 遊技の進行に伴い、演出用の可動体の駆動を伴う第1の演出および第2の演出を含む、複数種類設けられた演出のうち、実行する演出を決定する演出決定手段と、
C 前記演出決定手段によって演出の実行が決定されると、所定の演出デバイスにおける該演出の実行制御を行う演出実行手段と、
D 前記所定の演出デバイスにおける前記第1の演出または前記第2の演出の実行制御中に、前記可動体を駆動させる役物制御手段と、
を備え、
E 前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、前記演出実行手段は、前記所定の演出デバイスにおける前記第1の演出および前記第2の演出の双方の実行制御を行い、前記役物制御手段は、該第1の演出に応じた前記可動体の駆動を制限し、該第2の演出に応じて該可動体を駆動させる
F ことを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 所定の遊技条件にしたがって遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 遊技の進行に伴い、演出用の可動体の駆動を伴う第1の演出および第2の演出を含む、複数種類設けられた演出のうち、実行する演出を決定する演出決定手段と、
C 前記演出決定手段によって演出の実行が決定されると、演出表示部における該演出の実行制御を行う演出実行手段と、
D 前記演出表示部における前記第1の演出または前記第2の演出の実行制御中に、前記可動体を駆動させる役物制御手段と、
を備え、
E 前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、前記演出実行手段は、前記演出表示部における前記第1の演出および前記第2の演出の双方をそのまま実行し、前記役物制御手段は、該第1の演出に応じた前記可動体の駆動を制限し、該第2の演出の進行に応じて該可動体を駆動させる
F ことを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「所定の演出デバイス」を「演出表示部」に下位概念化し、また、この「演出表示部」における「第1の演出」及び「第2の演出」に関して、「前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき」、補正前の同発明特定事項である「双方の実行制御を行」うものから「双方をそのまま実行」するものとして、「前記第1の演出および前記第2の演出の双方」の実行態様を具体的に限定し、さらに、「前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき」、補正前の同発明特定事項である「該第2の演出に応じて該可動体を駆動させる」ものから「該第2の演出の進行に応じて該可動体を駆動させる」ものとして、「該第2の演出」と「該可動体」の「駆動」との関係をさらに限定する補正を含むものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0432】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-97744号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0014】
以下、遊技機としてのパチンコ遊技機の一実施形態を説明する。
図1に示すように、パチンコ遊技機には、遊技盤YBが備えられている。パチンコ遊技機には、発射ハンドルHDが備えられており、発射ハンドルHDが回動動作されることにより、遊技盤YBへ遊技球が発射される。」

【0062】
次に、図14に基づき、パチンコ遊技機の制御構成について説明する。
パチンコ遊技機の機裏側には、主制御基板30が装着されている。主制御基板30は、パチンコ遊技機に関する各種処理を実行し、該処理結果に応じて遊技を制御するための各種の制御信号(制御コマンド)を出力する。また、機裏側には、演出制御基板31が装着されている。演出制御基板31は、主制御基板30が出力した制御信号(制御コマンド)に基づき、演出表示装置13の表示態様(図柄、背景、文字などの表示画像など)の決定に関する処理などを実行し、処理結果に応じて表示内容を制御する。また、主制御基板30には、遊技球(賞球など)の払出しを制御する払出制御基板32が接続されている。払出制御基板32には、遊技球を払出す払出装置33が接続されている。」

「【0140】
以上により、演出制御用CPU31aが、演出制御手段となる。また、演出表示装置13が演出実行手段となる。
次に、第1保留記憶数及び第2保留記憶数の表示態様、及び普図保留記憶数の表示態様など、本実施形態の演出表示装置13における表示態様について詳しく説明する。
【0141】
図2に示すように、演出表示装置13の表示領域において上部には、第1の変動ゲームに係わる表示演出及び第2の変動ゲームに係わる表示演出が実行される配置される変動ゲーム表示領域100が配置されている。すなわち、変動ゲーム表示領域100では、複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム、及びそれに関連する表示演出が実行される。なお、第1の変動ゲームの実行中であれば、当該第1の変動ゲームに係わる特別飾り図柄変動ゲームが実行され、第2の変動ゲームの実行中であれば、当該第2の変動ゲームに係わる特別飾り図柄変動ゲームが実行される。
【0142】
また、図2に示すように、演出表示装置13の表示領域において右下方部には、普図ゲームに係わる表示演出が実行される普図ゲーム表示領域101が配置されている。すなわち、普図ゲーム表示領域101では、複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム、及びそれに関連する表示演出が実行される。」

「【0154】
次に、可動体演出の演出態様について説明する。本実施形態では、第1可動体演出?第3可動体演出までの3種類の可動体演出が実行可能に構成されている。
まず、第1可動体演出について説明する。第1可動体演出は、第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6に基づく第1の変動ゲーム(又は第2の変動ゲーム)中に、実行されるように構成されている。すなわち、演出制御用CPU31aは、第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6が指定された場合、変動ゲーム開始から所定のタイミングで第1可動体演出を実行させるようになっている。第1可動体演出では、第1可動体51及び第2可動体52にて実行されるようになっている。第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6に基づく第1の変動ゲーム(又は第2の変動ゲーム)で実行されるため、第1可動体演出は、大当り信頼度が高い演出となっている。」

「【0158】
次に、第3可動体演出について説明する。第3可動体演出は、第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3に基づく普図ゲーム中に、実行されるように構成されている。すなわち、演出制御用CPU31aは、第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3が指定された場合、普図ゲーム開始から所定のタイミングで第3可動体演出を実行させるようになっている。第3可動体演出では、第2可動体52だけで実行されるようになっている。」

「【0161】
具体的には、図4?図6に示すように、可動体演出中、動作中の第1可動体51及び第2可動体52の右側に、領域の大きさが変更された普図ゲーム表示領域101が配置されるようになっている。なお、移動させた普図ゲーム表示領域101を、可動体演出時用表示領域101aと示す場合がある。」

「【0177】
移動処理を終了すると、演出制御用CPU31aは、決定した移動態様に基づき、普図ゲーム表示領域101を移動させ、又は元の初期位置に戻すように制御する。
そして、本実施形態では、第1の変動ゲーム或いは第2の変動ゲームと、普図ゲームとが同時に実行可能に構成されている。このため、第1可動体演出と第2可動体演出が重複する場合や、第1可動体演出と第3可動体演出が重複する場合がある。この場合、いずれの可動体演出も第2可動体52を使用しているため、どのように第2可動体52を動作させるかが問題となる。以下、どのように動作させるかについて説明する。」

「【0179】
次に、第1可動体演出と、第3可動体演出が重複した場合、演出制御用CPU31aは、遊技方法の示唆を行う第3可動体演出を優先的に実行させる。例えば、第1可動体演出が、第3可動体演出よりも先に実行される場合であっても、第3可動体演出を優先的に実行させることとなる。この場合、図3に示すように、第3可動体演出が実行されていない期間においては、第1可動体51と第2可動体52が協働して1つのキャラクタ画像が表示される。そして、第3可動体演出が開始されると、図23に示すように、第2可動体52は、第3可動体演出を優先的に実行することとなる。この場合、第1可動体51は、継続して第1可動体演出を実行することとなる。
【0180】
また、第3可動体演出が、第1可動体演出よりも先に実行される場合でも、第3可動体演出を優先的に実行させる。この場合、図6に示すように、第3可動体演出が実行される。そして、第1可動体演出においては、第1可動体51のみが動作することとなるため、図23に示すように、第1可動体51は、第1可動体演出を実行し、第2可動体52は、第3可動体演出を実行することとなる。以上により、本実施形態の演出制御用CPU31aは、可動体制御手段となる。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?fについては本願補正発明のA?Fに対応させて付与した。)。

「a パチンコ遊技機に関する各種処理を実行し、該処理結果に応じて遊技を制御するための各種の制御信号(制御コマンド)を出力する主制御基板30と(【0062】)、
b、c、d 第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6が指定された場合、変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させるとともに、変動ゲーム開始から所定のタイミングで第1可動体51及び第2可動体52にて実行される第1可動体演出を実行させ、または、第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3が指定された場合、普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させるとともに、普図ゲーム開始から所定のタイミングで第2可動体52だけで実行される第3可動体演出を実行させる演出制御用CPU31aと(【0140】?【0142】、【0154】、【0158】、【0161】)、
を備え、
e 変動ゲームと、普図ゲームとが同時に実行され、第1可動体演出と、第3可動体演出が重複した場合、前記演出制御用CPU31aは、遊技方法の示唆を行う第3可動体演出を優先的に実行させ、例えば、第1可動体51は第1可動体演出を実行し、第2可動体52は、第3可動体演出を実行する(【0177】、【0179】、【0180】)
f パチンコ遊技機(【0014】)。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(f)は、本願補正発明のA?Fに対応させている。

(a)引用発明の「a パチンコ遊技機に関する各種処理を実行し、該処理結果に応じて遊技を制御するための各種の制御信号(制御コマンド)を出力する主制御基板30」は、本願補正発明の「A 所定の遊技条件にしたがって遊技の進行を制御する遊技制御手段」に相当する。

(b)引用発明のb、c、dの「第1可動体51」及び/または「第2可動体52」は、本願補正発明のBの「可動体」に相当し、引用発明のb、c、dの「第1可動体演出」及び「第3可動体演出」は、それぞれ、本願補正発明のBの「第1の演出」及び「第2の演出」に相当する。
そして、引用発明の「第1可動体演出」は「第1可動体51及び第2可動体52にて実行される」ものであり、「第2可動体演出」は「第2可動体52だけで実行される」ものであるから、いずれの演出も可動体の駆動を伴うものであるといえる。
また、引用発明の「演出用制御CPU31a」が、「第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6が指定された」後、「第1可動体演出を実行させ」る前に、第1可動体演出を実行させることを決定すること、及び、「第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3が指定された」後、「第3可動体演出を実行させる」前に、第3可動体演出を実行させることを決定することは明らかである。
したがって、引用発明の「b、c、d 第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6が指定された場合」、「変動ゲーム開始から所定のタイミングで第1可動体51及び第2可動体52にて実行される第1可動体演出を実行させ、または、第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3が指定された場合」、「普図ゲーム開始から所定のタイミングで第2可動体52だけで実行される第3可動体演出を実行させる演出制御用CPU31a」は、本願補正発明の「B 遊技の進行に伴い、演出用の可動体の駆動を伴う第1の演出および第2の演出を含む、複数種類設けられた演出のうち、実行する演出を決定する演出決定手段」に相当する。

(c)引用発明のb、c、dの「演出表示装置13」は、本願補正発明のCの「演出表示部」に相当し、引用発明のb、c、dの「変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」及び「普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」は、本願補正発明のCの「演出表示部における該演出」に相当する。
また、上記(b)の検討を踏まえれば、引用発明の「演出用制御CPU31a」が、b、c、dの「変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させる」前に、第1可動体演出を実行させることを決定すること 及び、b、c、dの「普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させる」前に、第3可動体演出を実行することを決定することは明らかである。
したがって、引用発明の「b、c、d 第3大当り変動パターンTP3又は第3はずれリーチ変動パターンTP6が指定された場合、変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させ」、「または、第1当り普図パターンFP1?第3当り普図パターンFP3が指定された場合、普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させる」「演出制御用CPU31a」は、本願補正発明の「C 前記演出決定手段によって演出の実行が決定されると、演出表示部における該演出の実行制御を行う演出実行手段」に相当する。

(d)引用発明のb、c、dの「変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」及び「普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」は、それぞれ、本願補正発明のDの「前記演出表示部における」「前記第1の演出」及び「前記第2の演出」に相当する。
したがって、引用発明のb、c、dの「変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させるとともに、変動ゲーム開始から所定のタイミングで第1可動体51及び第2可動体52にて実行される第1可動体演出を実行させ、または」、「普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出を実行させるとともに、普図ゲーム開始から所定のタイミングで第2可動体52だけで実行される第3可動体演出を実行させる演出制御用CPU31a」は、本願補正発明の「D 前記演出表示部における前記第1の演出または前記第2の演出の実行制御中に、前記可動体を駆動させる役物制御手段」に相当する。

(e)引用発明において、eの「第1可動体演出と、第3可動体演出が重複した場合、前記演出制御用CPU31aは、遊技方法の示唆を行う第3可動体演出を優先的に実行させ、例えば、第1可動体51は第1可動体演出を実行し、第2可動体52は、第3可動体演出を実行する」ことは、b、c、dの「第1可動体演出」が「第1可動体51及び第2可動体52にて実行され」、「第3可動体演出」が「第2可動体52だけで実行される」ことからすれば、「演出制御用CPU31a」は、「第1可動体演出」に応じた「第2可動体52」の駆動を制限し、「第3可動体演出」の進行に応じて「第2可動体52」を駆動させるものといえる。
したがって、引用発明の「e 変動ゲームと、普図ゲームとが同時に実行され、第1可動体演出と、第3可動体演出が重複した場合、前記演出制御用CPU31aは、遊技方法の示唆を行う第3可動体演出を優先的に実行させ、例えば、第1可動体51は第1可動体演出を実行し、第2可動体52は、第3可動体演出を実行する」ことと、本願補正発明の「E 前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、前記演出実行手段は、前記演出表示部における前記第1の演出および前記第2の演出の双方をそのまま実行し、前記役物制御手段は、該第1の演出に応じた前記可動体の駆動を制限し、該第2の演出の進行に応じて該可動体を駆動させる」こととは、「E’前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、前記役物制御手段は、該第1の演出に応じた前記可動体の駆動を制限し、該第2の演出の進行に応じて該可動体を駆動させる」点で共通する。

(f)引用発明の「パチンコ遊技機」は、本願補正発明のFの「遊技機」に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明とは、
「A 所定の遊技条件にしたがって遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
B 遊技の進行に伴い、演出用の可動体の駆動を伴う第1の演出および第2の演出を含む、複数種類設けられた演出のうち、実行する演出を決定する演出決定手段と、
C 前記演出決定手段によって演出の実行が決定されると、演出表示部における該演出の実行制御を行う演出実行手段と、
D 前記演出表示部における前記第1の演出または前記第2の演出の実行制御中に、前記可動体を駆動させる役物制御手段と、
を備え、
E’前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、前記役物制御手段は、該第1の演出に応じた前記可動体の駆動を制限し、該第2の演出の進行に応じて該可動体を駆動させる
F 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
「E’前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき」、本願発明では「前記演出実行手段は、前記演出表示部における前記第1の演出および前記第2の演出の双方をそのまま実行」するのに対し、引用発明ではそのようにするか否か明らかでない点。

イ 判断
(相違点について)
引用文献には、第1可動体演出と第3可動体演出が重複して同時に実行される場合と単独で実行される場合とで、特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出と普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出がそれぞれ同じ態様であるか否か明示的な記載はないが、第1可動体演出を示す図4、第3可動体演出を示す図6及び第1可動体演出と第3可動体演出とが重複した場合の演出を示す図23において、普図ゲーム表示領域101が可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aについては、いずれも同様に図示されていること、また、第1可動体演出と第3可動体演出が重複して同時に実行される場合と単独で実行される場合とで、特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出と普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出をそれぞれ同じ態様としたとしても何ら支障が生じないことが明らかなことを勘案すれば、引用発明において、第1可動体演出と第3可動体演出が重複して同時に実行させる場合の双方の表示演出の態様を、単独で実行される場合の各表示演出の態様と同じものにして、「そのまま実行」することにより、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
ア 引用文献(特開2015-97744号公報)には、第1可動体演出(引用文献の図4)と、第3可動体演出(引用文献の図6)が重複した場合、第3可動体演出を優先的に実行させる点が開示されており、例えば、引用文献の段落【0179】には、第1可動体演出が、第3可動体演出よりも先に実行される場合について、第3可動体演出が実行されていない期間においては、第2可動体52は、第1可動体51と協働して1つのキャラクタ画像を表示(引用文献の図4)し、第3可動体演出が開始されると、第2可動体52は、第3可動体演出を優先的に実行する(引用文献の図23)点が開示されており、
イ ここで、本願補正発明では、第1の演出(擬似演出)および第2の演出(保留変化演出)の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、演出表示部における第1の演出および第2の演出の双方をそのまま実行する点を限定しており、これにより、例えば、擬似演出の実行期間と保留変化演出の実行期間とが重複するときに、演出表示部200aにおいて擬似演出と保留変化演出の双方をそのまま実行するので、演出自体を不実行とする場合に比べて、遊技者に与える誤解を低減することができるという特有の作用効果が実現されるのに対し、
ウ 引用文献では、第1可動体演出と第3可動体演出が重複した場合、第2可動体52にはキャラクタ画像の一部ではなく、「右打ち」という文字と矢印を表示する、すなわち、引用文献では、第1可動体演出と第3可動体演出が重複した場合、第2可動体52と第1可動体51とが協働して1つのキャラクタ画像を表示することが制限されることとなり、引用文献は、本願補正発明における第1の演出および第2の演出の双方をそのまま実行するという構成とは、むしろ反対の教示をするものであるから、引用文献に比して本願補正発明が新規性を有することは明白であり、また、引用文献および周知の技術を組み合わせたとしても本願補正発明に容易に想到することができないことは明らかである旨主張する。

しかしながら、請求人が上記イで提示する本願補正発明の「演出表示部における前記第1の演出および前記第2の演出」に対応するのは、上記(3)(d)で検討したとおり、引用発明の「変動ゲーム表示領域100で複数種類の特別飾り図柄を3列で変動表示させる特別飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」および「普図ゲーム表示領域101または可動体演出中に移動される可動体演出時用表示領域101aで複数種類の普通飾り図柄を3列で変動表示させる普通飾り図柄変動ゲーム及びそれに関連する表示演出」であり、請求人が上記アで提示する「第2可動体52と第1可動体51とが協働して」「表示する」「1つのキャラクタ画像」、及び、「第2可動体52」に「表示する」「キャラクタ画像の一部」や、「「右打ち」という文字と矢印」ではない。
また、第1の演出および第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき、演出表示部における第1の演出および第2の演出の双方をそのまま実行する点については、上記(3)イ(相違点について)で検討したとおり当業者が容易になし得たものである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年10月26日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由は、

(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用例に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、

特開2015-97744号公報(引用文献)

というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、「所定の演出デバイス」、「前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき」の「演出表示部」における「第1の演出」及び「第2の演出」、及び、「前記第1の演出の実行期間と、前記第2の演出の実行期間との少なくとも一部が重複するとき」「該第2の演出に応じて該可動体を駆動させる」ことのそれぞれに係る限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2[理由]2(3)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-18 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-06 
出願番号 特願2016-198881(P2016-198881)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 濱野 隆
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人青海特許事務所  

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