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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12M |
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管理番号 | 1350995 |
審判番号 | 不服2018-160 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-05 |
確定日 | 2019-04-16 |
事件の表示 | 特願2016- 54350「細胞培養装置および細胞培養方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月12日出願公開、特開2016-144464〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月11日に国際出願した特願2013-509561号(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2010年5月11日、英国)の一部を平成28年3月17日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成29年2月14日付け:拒絶理由通知 平成29年5月15日:意見書、手続補正書の提出 平成29年8月22日付け:拒絶査定 平成30年1月5日:審判請求書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1?10に係る発明は、平成30年1月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲1?10に記載された事項によって特定され、そのうち請求項3に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項3】 N個の担体(7)の積層体からなる細胞(C)を培養するバイオリアクター(1)であって、担体N-1が細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域を有し、この担体N-1の前記領域を介して前記担体N-1から担体N上の細胞成長領域を観察できることを特徴とするバイオリアクター(1)。」(以下「本願発明」という。) 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?3、7?12に係る発明は、本願の原出願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献1.国際公開第88/00235号 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1の記載 引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (以下、原文が英文のため、当審による翻訳文で示す。) (1)「細胞培養装置の好適な実施形態は、図1に示されており、基部(15)と、壁(16, 17)と、基部(15)と一体構造に統合されたマイクロ構成の実施形態(20)を含む。…(中略)… マイクロ構成の実施形態(20)は、図1および図2に示されている装置において、各々の面(22)に存在する複数の細孔を有し、ロッド(21)によって間隔を保つ、多平面多区画実施形態(20)として設計されている。本実施形態の中央の空間(23)はマイクロ構造を有さず、装置の基部(1)上で増殖する細胞の頂部壁(18)からの視覚的な顕微鏡および顕微鏡検査を可能にしている。多平面実施形態(20)は、上記実施形態の表面が中心に向かってバルコニーを各レベルで生成するように、異なる長さ(24, 25, 26)で終結するよう設計され、それにより露出したバルコニー(24, 25, 26)の各々の上で成長する細胞の頂部壁(18)からの顕微鏡検査を可能にする。」 (第16ページ下から7行目?第17ページ13行目) (2)「 」(図1、2) 2 引用発明 上記1(2)の図1より、平面が9層積層された構造が認められる。 してみると、引用文献1には以下の発明が記載されているといえる。 「中央の空間(23)を有する9層からなる多平面を有し、各平面の表面が中心に向かってバルコニーを各レベルで生成するように、異なる長さ(24, 25, 26)で終結するよう設計され、それにより露出したバルコニー(24, 25, 26)の各々の上で成長する細胞の頂部壁(18)からの顕微鏡検査を可能にした、細胞培養装置。」(以下、引用発明という。) 第5 対比 ・判断 1 対比 本願発明と引用発明を対比する。 本願発明の「N個の担体(7)の積層体からなる細胞(C)を培養するバイオリアクター(1)」は、引用発明の「9層からなる多平面を有し、…細胞培養装置」に相当する。 また、引用発明の「各平面の表面が中心に向かってバルコニーを各レベルで生成するように、異なる長さ(24, 25, 26)で終結するよう設計され、露出したバルコニー(24, 25, 26)の各々の上で成長する細胞の頂部壁(18)からの顕微鏡検査を可能にした」ものとは、本願発明の担体N-1に相当する8層目の平面から、その中央の空間(23)を介して本願発明の担体Nに相当する9層目の平面のバルコニー上の細胞の顕微鏡検査を可能にしたものといえる。すなわち、本願発明の「前記担体N-1から担体N上の細胞成長領域を観察できる」は、引用発明の「各平面の表面が中心に向かってバルコニーを各レベルで生成するように、異なる長さ(24, 25, 26)で終結するよう設計され、露出したバルコニー(24, 25, 26)の各々の上で成長する細胞の頂部壁(18)からの顕微鏡検査を可能にした」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は、 「N個の担体(7)の積層体からなる細胞(C)を培養するバイオリアクター(1)であって、担体N-1から担体N上の細胞成長領域を観察できることを特徴とするバイオリアクター(1)。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点)本願発明が、担体N-1が有する「細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域」を介して担体N上の細胞成長領域を観察できるものであるのに対して、引用発明は、「中央の空間」を介するものである点。 2 判断 上記相違点について検討する。 本願明細書には、以下の記載がなされている。(下線は当審で付記した。) (1)「【0083】 本発明のさらに別な態様は、バイオリアクター内で細胞を培養する担体に関する。この担体の表面は、細胞が付着する領域と細胞付着を阻止する領域を有する。細胞付着を阻止する表面は、一つの透明材料に対応させるか、あるいは疎水性化しておけばよい。 【0084】 細胞を培養するバイオリアクターは、第1担体および第2担体を有することができ、それぞれは流体培地を導入する少なくとも一つの入り口を有する。第1担体は細胞が付着する第1部分を有し、そして第2担体は細胞の付着を阻止する第2部分を有する。第2担体の第2部分から、従って、第1および第2担体がアライメントしたときに、第1担体の第1部分を見ることができる。 【0085】 第1部分および第2部分は、担体上の表面からなるのが好ましいが、開口を形成してもよい。第2部分は、第2担体と第1担体との間に光学的に透明な材料を有することができる。担体を受け取る単独のハウジングを設けてもよく、あるいは担体を積層可能なトレーまたはキューブで構成してもよい。」 (2)「図26に、担体7a?7nが整合した開口を備えているため、所定の担体上の細胞を観察できる一つの実施態様を示す。具体的には、バイオリアクター1の入り口21および出口22が、複数の担体を積層状態で有するハウジング内に位置する。第1担体7aについては、少なくとも一つの開放スペース2を設け、(少なくとも一部が透明な)ハウジングの第1側12を介して次の隣接担体7b上の成長領域Acgを直接観察できるように配列する。同様に、第1担体7aおよび第2担体7bについても、開放スペース2を整合配列して、次の隣接担体7cに至る実質的に連続的な光学経路を作る。このパターンを必要な回数、あるいは所望回数繰り返すと、外部の有利な点から、所定の担体上の成長領域を観察することができる。」(【0126】) (3) 「 」(図26 矢印Aは当審で参考のために追記した。) 上記(1)に、第2担体の第2部分から第1担体の第1部分を見ることができる旨、及び、第2担体の細胞の付着を阻止する第2部分は開口を形成してもよい旨記載されていることから、本願発明における「細胞の付着を阻止する…」とは、疎水性化等の、担体の細胞付着性を喪失させる処理がなされたもののみならず、開口を形成することで細胞の付着対象部位を欠損させたものも含むものと認められる。 また、上記(3)の図26において担体7bを担体N、担体7aを担体N-1に対応させると、これはハウジングの第1側12から担体N-1の領域2を介して担体N上の成長領域Acgを直接観察できるようにしたものであり(矢印Aが観察線を示す)、当該図26は本願発明の実施態様に該当すると認められる。ここで、「細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域」に相当する部分が開放スペースとなっていることからも、本願発明の当該領域が開口を含むものであることが理解できる。 そうすると、引用発明の「中央の空間」は、本願発明の「細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域」に相当するから、上記相違点は実際には相違点とはならない。 したがって、本願発明と引用発明との間に相違点はなく、両者は同一の発明である。 3 請求人の主張について 請求人は、平成30年1月5日提出の審判請求書の(3.2.3.4)において、「前述第(3.2.1.4)項の陳述と同様に、請求項3の構成要件(オ3)は、担体の存在しない引用文献1と異なり、(オ3)「担体N-1が・・・領域を有し・・・」として担体N-1の存在を特定しています。 したがって、引用文献1と請求項3に係る発明は構造が異なります。」と主張し、また、審判請求書の上記(3.2.1.4)においては、「本願は空間を設けるものではなく「担体が・・・部分を有する」ものです。」と主張している。 しかしながら、本願発明の「細胞付着を阻止する少なくとも一つの領域」が開口を含むものと認められることは上記のとおりであり、上記主張は明細書の記載に基づかない主張であるから、採用することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-10-29 |
結審通知日 | 2018-11-06 |
審決日 | 2018-11-22 |
出願番号 | 特願2016-54350(P2016-54350) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C12M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野村 英雄 |
特許庁審判長 |
中島 庸子 |
特許庁審判官 |
松浦 安紀子 小暮 道明 |
発明の名称 | 細胞培養装置および細胞培養方法 |
代理人 | 飯田 伸行 |