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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1350997
審判番号 不服2018-1976  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2019-04-11 
事件の表示 特願2015-202206「流体殺菌装置および流体殺菌方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 74114〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)10月13日に出願された特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成28年10月12日付け:拒絶理由通知
平成28年11月21日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 4月19日付け:拒絶理由通知
平成29年 6月14日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年11月13日付け:拒絶査定
平成30年 2月13日 :審判請求

第2 本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年6月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項4に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「長手方向に延びる流路を構成する直管の第1端部であって前記直管の中心軸上に前記長手方向に流体を流入させる一つの流入口を設け、前記直管の前記第1端部とは反対側の第2端部に前記長手方向と交差する方向に流体を流出させる一つの流出口を設けることにより、前記直管の内部に前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の流速がその周囲の流速よりも大きい流速分布を有するような層流状態の流体の流れを作り、かつ、前記直管の中心軸上の前記第2端部に紫外光を照射する光源を配置することにより、前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い強度分布であって、前記流速分布に対応した強度分布となるように前記流路を層流状態で流れる流体に向けて前記長手方向に紫外光を照射することを特徴とする流体殺菌方法。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献3.国際公開第2014/115146号
引用文献1.特開2007-152155号公報
引用文献2.特開2009-506860号公報

第4 引用文献の記載

1.引用文献3の記載
引用文献3には、次の事項が記載されている。(当審仮訳をあわせて示す。)

(1)
「What is claimed is:
1. An ultraviolet (UV) liquid treatment apparatus comprising:
a conduit comprising an inlet to receive liquid to be treated and an outlet to discharge treated fluid, the conduit defining a plurality of liquid flow paths between the inlet and the outlet; and
an UV light emitting diode (LED) module array to illuminate the liquid, wherein the UV LED module array comprises a plurality of UV LED modules arranged on a curved surface of an array holder,
wherein the UV LED module array is configured to generate a customized spatial light flux distribution within the conduit that matches the liquid flow paths so as to obtain a desired UV dose distribution.
(【請求項1】
処理される液体を受ける入口及び処理された液体を排出する出口を含み、前記入口及び前記出口の間の複数の液体の流路を規定する水路と、
前記液体を照らすUV発光ダイオード(LED)モジュールアレイであって、アレイホルダの曲面の上に配置された複数のUV LEDモジュールを含むUV LEDモジュールアレイと、を含み、
前記UV LEDモジュールアレイは、望ましいUV線量分布を得るように、前記液体の流路に適した前記水路内でカスタマイズされた空間光束分布を生じるように構成されている、紫外線(UV)液体処理装置。)」

(2)
「 [042] Reference is now made to Figs. 4A and 4B, which illustrates another exemplary ultraviolet-based liquid treatment apparatus with an external LED array. An apparatus 150 may include a conduit having a first conduit section 152 and a second conduit section 153 first section 152 comprises the inlet and second section 153 comprises the outlet that are connected together by one or more tubes, for example, two tubes 155. Tubes 155 and sections 152 and 153 may comprise an optically transparent material. In some embodiments, sections 152 and/or 153 and/or tubes 155 may be at least partially coated with a reflective material, for example,tubes 155 and sections 152 and 153 may all be coated with the reflective material. At least one UV LED module array holder, such as holder 200, may be located externally to the liquid flow path of apparatus 150. For example, array holder 200 may be positioned at one end of section 152 adjacent to tube 155 externally to the liquid flow or at one end of section 153 adjacent tube 155 externally to the liquid flow. According to some embodiments, Apparatus 150 may comprise two array holders, each positioned adjacent one of section 152 and 153. Each of section 152 and 153 may include a transparent material.
(図4A及び4Bを参照すると、図4A及び4Bは、外部にLEDアレイを有する他の例示的な紫外線系の液体処理装置を表す。装置150は、第1の水路領域152及び第2の水路領域153を含んでよく、第1の領域152は、入口を有し、第2の領域153は出口を有し、これらは一以上の管、例えば2本の管155によって接続される。管155及び領域152、153は、光学的に透明な素材であってよい。いくつかの実施形態では、領域152、領域153、管155のいずれか又は一つは、少なくとも部分的に反射性の素材でコートされてよく、例えば、管155及び領域152、153は、全てが反射性の素材でコートされてよい。ホルダ200のような、少なくとも一つのUV LEDモジュールアレイホルダは、装置150の液体流路の外に配置されてよい。例えば、アレイホルダ200は、流路の外側で管155に隣接する領域152の一端に配置されるか、又は流路の外側で管155に隣接する領域153の一端に配置されてよい。いくつかの実施形態によれば、装置150は、二つのアレイホルダを有し、それぞれが、領域152及び領域153の一つに隣接して配置されている。領域152及び153のそれぞれは、透明な素材を含んでよい。)」

(3)
「 [043] Sections 152 and 153 may be similar (e.g., made from the same material and have the same dimensions) or may be different (e.g., made from different materials and/or having different dimensions). Liquid may enter apparatus 150 from an inlet in section 152 (see arrow) and may exit apparatus 150 from an outlet in section 153 (see arrows). The liquid may flow from section 152 to section 153 via tubes 155.
(領域152及び153は、似ていてよく(例えば、同じ素材で作成されており、同じ面積を有する)、又は異なって(例えば、異なる素材で作成され及び/又は異なる面積を有する)いてよい。液体は、領域152の入口から装置150へ入り(矢印参照)、そして領域153の出口から装置150を出てよい(矢印参照)。液体は、領域152から、管155を介して領域153へ流れる。)」

(4)
「[044] An exemplary UV module array holder is illustrated in Fig. 4C. Holder 200 may include UV module array 205 located on surface 235. Surface 235 may be any no-flat surface, for example, a curved surface. Each UV module may be located on surface 235 to generate a customized spatial light flux distribution within the conduit that produces a UV dose with a desired dose distribution function. Holder 200 may further include an optical window between array 205 and the liquid. Holder 200 may further include an entrance 255 for tube 155. In some embodiments, holder 200 may include two entrances 255 from two opposite sides of holder 200.
(図4Cには、例示的なUVモジュールアレイホルダが示されている。ホルダ200は、面235の上に位置するUVモジュールアレイ205を含む。面235は、平らでなくてもよく例えば、曲面であってよい。それぞれのUVモジュールアレイは、面235の上に配置されよく、カスタマイズされた空間の光束分布を水路内に生じるように配置されて、望ましい線量配分の機能のUV線量を生じさせる。ホルダ200は、さらにアレイ205と液体の間に光学的な窓を含んでよい。ホルダ200は、さらに管155への入口255を含んでよい。いくつかの実施形態では、ホルダ200は、ホルダ200の対向する両側面から2つの入口255を含んでよい。)」

(5)
「[049] Reference is now made to Figs. 5 A and 5B that presents an illustration of an exemplary UV liquid treatment apparatus 300, according to some embodiments of the invention. An apparatus 300 may include a conduit 310 for carrying liquid, a liquid inlet 320 to receive liquid to be treated and a liquid outlet 325 to discharge the treated liquid. Apparatus 300 may further include a UV LED module array holder or holding unit 400, one or more UV LED module arrays 405 having a plurality of UV LED modules arranged on one or more curved surfaces 435 of array holder 400.
(ここで、発明のいくつかの実施形態による、UV液体処理装置300の例示の説明を示す、図5A及び5Bを参照する。装置300は、液体を運ぶための水路310、処理される液体を受ける液体入口320、及び処理された液体を排出する液体出口325を含んでよい。装置300は、さらにUV LEDモジュールアレイホルダ又はホルダユニット400を含んでよく、一以上のUV LEDモジュールアレイ405は、アレイホルダ400の一以上の曲面435上に配置された複数のUV LEDモジュールを含む。)」

(6)
「[056] Fig. 5B is an illustration of a computer simulation of liquid flow paths in apparatus 300, according to some embodiments of the present invention. The computer simulation was done using the Flo Works (Solifworks) CFD computational software. Liquid may enter apparatus 300 from inlet 320 and may exit the apparatus via outlet 325. The liquid flow in the vicinity of array carrier 410, with very little destruction. For example, the laminar flow illustrated at Fig. 5B, may be kept, although the liquid may interact with array carrier 410.
(図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による、装置300における液体の流路のコンピューターシミュレーションの図である。コンピューターシミュレーションは、Flo Works(Solifworks)CFDコンピュータソフトウェアを用いて行われた。液体は、入口320から装置300に入り、出口325を介して装置から出てよい。液体は、アレイキャリア410の近傍で破壊されることなく流れる。例えば、図5Bに示される層流の流れは、液体がアレイキャリア410と作用し合っても、維持される。)」

(7)


」(図4A)

(8)


」(図4C)

(9)


」(図4D)

(10)


」(図5B)


2.引用文献1の記載
引用文献1には、次の事項が記載されている。

(1)
「本発明は、浄水処理や下水処理・食品排水処理・薬品排水処理・遠洋船舶バラスト水処理等において、藻類・微生物・病原性原虫等を不活化もしくは無害化するために紫外線を被処理水に照射する紫外線照射水処理装置に係り、例えば、紫外線の照射効率の高い紫外線照射水処理装置に関する。」(【0001】)

(2)
「図1は本発明の第1の実施形態に係る紫外線照射水処理装置10の構成を示す側面図であり、図2は紫外線照射水処理装置10の平面図である。」(【0025】)

(3)
「なお、紫外線照度はランプからの距離に比例して被処理水中で減衰する。そのため、側面部21の内壁側を流れる被処理水は、最も近い紫外線ランプが発する紫外線に影響を受ける。また、遠くにある他の紫外線ランプから照射される紫外線は、大きく減衰するだけでなく、近くの紫外線ランプの陰になって遮られる場合がある。そのため、被処理水は、遠くの紫外線ランプから照射される紫外線の影響をほとんど受けない。すなわち、側面部21の内壁側より中心軸側の方が照度は高い。」(【0049】)

(4)


」(【図2】)


3.引用文献2の記載
引用文献2には、次の事項が記載されている。

(1)
「本発明の例示的な実施形態は、殺菌される流動媒体を運ぶ導管を備える装置である。この導管は、媒体を受け取る注入口と媒体を排出する排出口を備える。装置は、フロー・アダプタをさらに備え、このフロー・アダプタは、注入口において、注入口から排出口までの複数の所望の流路に沿って、媒体に懸濁された対象物の流速の所望の空間分布に基づいて、媒体の流れを調節させるように構成されている。前記装置は、少なくとも1つの照明源をさらに備える。この照明源は、カスタマイズされた空間光フラックス分布を有する光で導管を照射する。これは、少なくとも部分的に、所望の流速分布に基づいて行われる。」(【0005】)

(2)
「本発明の例示的な実施形態において、例えば、以下に説明するように、紫外線(UV:Ultra-Vilet)光を使用して、媒体に照射する、例えば、媒体を殺菌する及び/又は媒体内の粒子を酸化する。しかしながら、当業者は、本発明の他の実施形態において、他の適切なスペクトルの光も使用可能であることを理解する。」(【0039】)

(3)
「前述の本発明の例示的な実施形態によると、照明源(112)が生成する光フラックス・フィールドと、導管(106)内の媒体速度とがうまく組み合わせられることが望ましい。例えば、照射源(112)はうまく適用して、導管(106)内の高速区画と略一致する高いUVフラックス区画を生成することができる。例えば媒体の高速及び/又は低UVフラックスにより特徴付けられる低量トラックは避けられる。これは、例えば、狭い照射量分布関数をつくり出し、これにより、殺菌機(100)において、比較的高い効率性のレベルにおいて操作する及び/又は比較的高い殺傷率を得ることを意味する。」(【0125】)


第5 引用文献3に記載された発明の認定

(1)引用文献3の請求項1には、「処理される液体を受ける入口及び処理された液体を排出する出口を含み、前記入口及び前記出口の間の複数の液体の流路を規定する水路と、・・・UV LEDモジュールアレイと、を含み、前記UV LEDモジュールアレイは、望ましいUV線量分布を得るように、前記液体の流路に適した前記水路内でカスタマイズされた空間光束分布を生じるように構成されている、紫外線(UV)液体処理装置。)」が記載され、その具体例として、[042] ?[043]、図4Aには、「第1の水路領域152」、「ホルダ200」、「管155」を有することが記載されている。そして、図4Aからみて、「第1の水路領域152」は円筒状の直管の一種であること、「管155」は「第1の水路領域152」の長手方向と交差する方向に設けられていること、「ホルダ200」が「第1の水路領域152」の中心軸上の端部に設けられていることが見てとれる。

(2)また、[044]、図4Cからみて、「ホルダ200」の中央部に、「UVモジュールアレイ205」が設けられていることが分かり、かつ、[044]には、第1の水路領域152内に、望ましい線量配分の機能のUV線量を生じさせるものであることが記載されている。

(3)さらに、[049]、図4D、図5Bからみて、「第1の水路領域152」のうち、長手方向の中心軸上の一端から処理される液体を導入する一つの「入口」を有すること、液体を導入する入口を有する端部とは反対側の端部に「ホルダ200」を有すること、「第1の水路領域152」から2つの「管155」に液体が流出すること、さらには、「第1の水路領域152」における液体の流れは、「層流」として流れていることなどが見てとれる。

(4)してみると、引用文献3には、
「円筒状の直管で構成される第1の水路領域152の一端であって、第1の水路領域152の中心軸上に第1の水路領域に液体を流入させる一つの入口を有し、第1の水路領域152の入口とは反対側にあたる中心軸上の他端に、UVモジュールアレイ205を備えたホルダ200を設けるとともに、第1の水路領域152の長手方向と交差する方向に2つの管155を設け、第1の水路領域内を層流として流れる液体に望ましい線量配分の機能のUV線量を照射する液体殺菌方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


第6 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「円筒状の直管で構成される第1の水路領域152」、「入口」、「管155」、「UVモジュールアレイ205」、「UV」は、それぞれ本願発明の「長手方向に延びる流路を構成する直管」、「流入口」、「流出口」、「紫外光を照射する光源」、「紫外光」に相当する。さらに、引用発明における「第1の水路領域152の(入口を有する)一端」、「第1の水路領域152の入口とは反対側にあたる他端」は、それぞれ本願発明の「第1端部」、「第2端部」に相当するといえる。

(2)また、円筒状の管内の層流における流速分布は、管壁に近づくほど流速は小さくなり、管の中心でもっとも流速が大きくなることは、流体力学上よく知られている事項である(「ハーゲン・ポアズイユの流れ」ともいわれる)から、引用発明における、「円筒状の直管で構成される第1の水路領域152」内の「層流」もまた、本願発明の「直管の内部に長手方向と直交する流路の断面において中央付近の流速がその周囲の流速よりも大きい流速分布を有するような層流状態の流体の流れを作」るものといえる。

(3)してみると、本願発明と引用発明は、
「長手方向に延びる流路を構成する直管の第1端部であって前記直管の中心軸上に前記長手方向に流体を流入させる一つの流入口を設け、前記直管の前記第1端部とは反対側の第2端部に前記長手方向と交差する方向に流体を流出させる流出口を設けることにより、前記直管の内部に前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の流速がその周囲の流速よりも大きい流速分布を有するような層流状態の流体の流れを作り、かつ、前記直管の中心軸上の前記第2端部に紫外光を照射する光源を配置することにより、前記流路を層流状態で流れる流体に向けて前記長手方向に紫外光を照射する流体殺菌方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
・本願発明は、流出口が一つであるのに対し、引用発明は、流出口に相当する「管155」が2つである点(以下、「相違点1」という。)

・本願発明は、「前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い強度分布であって、前記流速分布に対応した強度分布となるように」紫外光を照射するのに対して、引用発明では強度分布が不明である点(以下、「相違点2」という。)

(4)上記相違点について検討する。

ア.先ず、相違点1について検討する。
引用発明では、流出口に相当する「管155」が2つではあるが、流出口に相当する部分の数をいくつにするかは、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎず、本願発明は、管155(流出口)の数を単に一つにしたにすぎない。また、引用文献3全体を通じてみても、引用発明における「管155」を1つにすることを阻害する要因もない。
さらに、本願明細書全体を通じてみても、流出口の数が一つであることによる格別の効果を見出すこともできない。
よって、引用発明において、「第1の水路領域152」からの液体の流出経路の数を適宜調整し、本願発明の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ.次に、相違点2について検討する。
引用発明においても、第1の水路領域152の入口とは反対側にあたる中心軸上の他端に設けられた「ホルダ200」の中央部に、「UVモジュールアレイ205」を有している。「UVモジュールアレイ205」から照射されるUV光は、照射距離が長くなるにつれて強度が低減するものであるから、「ホルダ200」の中央部に設けられた「UVモジュールアレイ205」からのUV照射強度は、自ずと、「第1の水路領域152」の断面(管断面)中心部の照射強度が高くなり、周縁部の照射強度が低くなるものといえる。してみれば、「第1の水路領域152」を流れる層流の流速分布と対応することとなるから、結局のところ、当該「相違点2」は、記載の有無の違いにすぎないものであり、実質的な相違点とはならない。
また、仮にそうではないとしても、紫外線を被処理水に照射する紫外線照射水処理装置に関し、容器の内壁側より中心軸側の方が照度が高い紫外線ランプを用いて処理することにより、紫外線の照射効率を高いものとすることは、引用文献1の【0001】、【0025】、【0049】、図2に示されるように公知であるから、引用発明において、紫外線の照射効率の高い紫外線ランプとして、引用文献1に記載の紫外線ランプを採用し、「前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い強度分布であって、前記流速分布に対応した強度分布となるように」紫外光を照射するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。あるいは、殺菌される流動媒体の流速分布に合うように照明源(UV源)が生成する光フラックス・フィールドを組み合わせること(層流を対象とするならば、当然中心部のフィールド強度が高くなる)は、引用文献2の【0005】、【0039】、【0125】に記載されているように、公知の手法にすぎないから、引用発明を実施するにあたり、引用文献2記載の技術事項を考慮し、流速分布にあわせるように紫外光の強度を調整し、「前記長手方向と直交する前記流路の断面において中央付近の紫外光強度がその周囲の紫外光強度よりも高い強度分布であって、前記流速分布に対応した強度分布となるように」紫外光を照射するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるともいえる。

そして、本願発明について明細書全体を通じてもみても、その効果は格別顕著なものとはいえない。

(5)したがって、本願発明は、引用文献3に記載された発明及び引用文献1,2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)請求人の主張について
請求人は審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」の項において、概略、次の2点を主張している。

主張点a.L字状流路の流入路、光源、流出路の関係が逆になる(流体の向きが逆になる)と、殺菌効果が異なる(実験成績証明書を添付)ものであり、これらの点について、引用文献3には開示がないとする点。

主張点b.引用文献3の[045]の記載から見れば、分岐部の前後で流速が遅くなることが記載されており、分岐部における流入方向を何れにした方が好ましいか開示も示唆もないとする点。

上記主張点について順次検討する。

まず、主張点a.についてであるが、出願当初の明細書及び図面全体を通じてみても、L字状流路において、流体の向きの違いによる効果発現の違いについては何ら触れられていない。つまり、当該主張は明細書の記載に基づくものではないため、出願人が提示する実験成績証明書の結果も含め、当該主張を採用することはできない。
また、引用発明は流体の向きが逆になるものではないから、仮に主張のとおりであったとしても、本願発明が引用発明に比して顕著な効果を奏することにはならない。

次に、主張点b.についてであるが、引用発明は、引用文献3の図4aで示されるところの、第1の水路領域152及び管155までの間の流体殺菌方法との間で検討を行ったもの、つまり、請求人が主張するところの、引用文献3の図4aで示されるところの分岐部の後の部分における流体殺菌方法との間で検討を行ったものではない。よって、この点についても請求人の主張を採用することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献3に記載された発明及び1,2に記載された技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-24 
結審通知日 2019-01-29 
審決日 2019-02-22 
出願番号 特願2015-202206(P2015-202206)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮部 裕一  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
発明の名称 流体殺菌装置および流体殺菌方法  
代理人 森下 賢樹  
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