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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E01F
管理番号 1350998
審判番号 不服2018-2257  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-19 
確定日 2019-04-12 
事件の表示 特願2013-131139「表層土の飛砂(土)および降雨時における表層土の流出の防止方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 4247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月21日の出願であって、平成29年5月12日付け(発送日:同年5月23日)で拒絶理由通知がされ、平成29年7月19日付けで意見書が提出され、同年11月14日付け(謄本送達日:同年11月21日)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月19日に拒絶査定不服審判の請求がされ、本件審判手続において、同年10月26日付け(発送日:同年11月6日)で当審より拒絶理由通知がされ、同年12月28日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年12月28日に提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表層土の地表面に、網目体の面部を地表面近傍に対向するようにして複数重ね合わせて被着張設することを特徴とする、飛砂(土)および降雨時における表層土の流出を防止する方法。」

第3 拒絶理由の概要
平成30年10月26日の当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特開平6-264415号公報
2.特開昭60-31413号公報(周知技術を示す文献)
3.実願平4-47811号(実開平5-96340号)のCD-ROM(周知技術を示す文献)
4.特開2003-4865号公報(当審において新たに引用された文献、周知技術を示す文献)

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開平6-264415号公報)について
(1)引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は本審決で付した。以下同様。)。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】空港、宅地造成地、埋立地、養浜等において盛土をしたり、山を削って新しい斜面地を造成したり、海岸に養浜を形成したりすることが頻繁に行われているがこれら表層度からの飛砂(土)が風下に被害もたらしたり、降雨時に濁水となって流出することが多い。本発明はこれらの現象を防止する方法である。」

イ 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は従来技術の問題点を解決すべく流体力学的、機械力学的に研究を重ねてここに完成するに至ったものである。すなわち、本発明は表層土表面上部に地表から間隔をおいて、網状抵抗体を設けることを特徴とする表層土の飛砂(土)及び降雨時における濁水の防止方法である。
【0005】次に本発明を図面を参照しながら説明するが本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。図1は側面図であり、埋立地等の平坦な盛土の表層土1に間隔保持材2として廃タイヤを設置し、これを固定材3としてロープで廃タイヤを互に固縛して地表から浮かないようにし、且つ間隔保持材2の上面に網状抵抗体4として金網を固定し、表層土面にほぼ平行に且つ一定の間隔を保つように設置するものである。図2は図1の平面図を示したものである。
【0006】次に本発明方法を模式的に説明する。図3において表層土1の上を風5が吹くとき、網状抵抗体4の多数の素線6の抵抗と渦発生により網状抵抗体4の下側の空気を流動させるエネルギーが大幅に減衰してしまうため表層土表面を流れる風の風速が極めて遅くなって、ここに停滞層7が生じ表層土に砂(土)を巻き上げて飛ばす飛砂の発生をおさえることが出来ることを示している。」

ウ 「【0009】本発明に使用する網状抵抗体4としては天然繊維、合成繊維、金属等からなる各種網類、パンチングメダル等種々のものが使用される。そしてこれらの例えば網目の目開きは5?20mmであることが好ましい。これらの網状抵抗体4は通常現場において、はじめに間隔保持体2を地表面に所望の位置に固定した後、その上面に網状抵抗体4を固定する方法が採用される。」

エ 「【0012】間隔保持材2は網状抵抗体4を地表面が10?15cm、好ましくは20?30cmの高さになるように設置することが好ましい。前記網状抵抗体4は、一般的に地表面とほぼ平行に展張すれば充分であるが、特殊な場合には波形あるいは山形に展張してもよい。」

オ 「【0017】埋立地盛土等に本発明を用いれば、風が吹いても網状抵抗体4と盛土表面1の間に停滞層7が生ずるもので砂(土)の飛砂が防止ができ、また降雨時に濁水として流出することを防止することができる。
【0018】また本発明によれば、網状抵抗体4と表層土1との間に間隔が設けられていることにより、長時間の使用においても網状抵抗体が砂(土)で埋没することもない。また、網状抵抗体4は、風通し、水通しが良く盛土まわりの自然環境をおよぼすことはない。また、従来工法に比べ高さが低く、強風に対しても平面的に張りめぐらされた固縛材により強固に固定されており倒壊等の心配もなく、景観上も突出部がなく問題がない。」

(2)引用文献1に記載された発明の認定
上記(1)により、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「埋立地盛土等の表層土面に、10?15cm、20?30cmの高さに、ほぼ平行に且つ一定の間隔を保つように網状抵抗体4を展張して設置し、網状抵抗体4は天然繊維、合成繊維、金属等からなる各種網類、パンチングメダル等種々のものである、表層土の飛砂(土)及び降雨時における濁水の流出を防止する方法」。

2 引用文献2(特開昭60-31413号公報)について
(1)引用文献2の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

ア 「具体的には、フエンス面の充実率、つまり網目充実部のフエンス見付面積に占める割合がその大きな影響因子であり、傾向としてこの充実率が小さいと、フエンス風下側の渦形成抑制の効果は高まるものの、遮風効果が乏しくなり、逆に大きな充実率では、遮風効果そのものはよくなるが、渦形成が強くかつ大きくなり、結局フエンスの風下側直近の死水領域の風速低減比が低くなる。このような関係から、ネツトフエンスの場合でも、フエンス風下側に十分な風速低減域を確保することは困難なものである。
しかるに、このネツトフエンスにおいて、そのネツトを、いわゆる2重張り構造にし、この2重張りのネツトを、第3図に示す如く両ネツト(2)(2’)間で互いの網目が縦、横両方向に関し千鳥状となるように配置してやれば、すぐれた遮風効果と死水領域の渦抑制の効果を同時に確保することが可能となる。すなわち、この2重張りネツトフエンスにおいては、フエンス面の見かけの充実率、つまりフエンス見付面積と両ネツト(2)(2’)の網目充実部の投影面積の比がフエンス風下側の流れを左右する最も重要な因子となり、この見かけの充実率と遮風効果、過抑制効果との関係は傾向的には先に述べた1枚張りのネツトフエンスのときと類似する。すなわち、小さな充実率では遮風効果が劣り、これが大きくなると、フエンスの風下側直近の整流効果が下がつてくる。しかしながら、2重張りの場合には、1枚張りとは異なり、遮風効果を高く維持しながらすぐれた整流効果を確保する、つまり遮風、整流の両効果を高次元でバランスさせ得る見かけ充実率の領域が存在する。」(第2頁左上欄第12行-左下欄第3行)

(2)引用文献2に記載の技術事項
上記(1)により、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「ネツトを2重張り構造とすると、1枚張りとは異なり、フエンス面の充実率、つまり網目充実部のフエンス見付面積に占める割合が、遮風、整流の両効果を高次元でバランスさせ得る見かけ充実率の領域となること。」

3 引用文献3(実願平4-47811号(実開平5-96340号)のCD-ROM)について
(1)引用文献3の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】
従来の防風網は細目網を一重とした構造のものが使用されている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
従来品は強風によって破損し易く、防風効果を損なうものとなっている。又、網長が一体的に長いものであるため、取付け取外しに時間がかかると共に、枠体構造物の寸法の改定の際は既に取付けてある網地を再利用することは困難であった。
更に網地の一部破損に対しても、網地全体を一度枠体構造物から取外してからその部分を補修しなければならいないため、修繕に多くの時間がかかっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は上記課題を解決せんとするものであって、その特徴とするところは一辺が4mm以下で網糸直径が1mm以下の細目網と、一辺15mm以上で網糸直径が1mm以上の荒目網とを重ね合わせ、その端縁部分を織物へ樹脂被覆したテープで挟み込むようにしてミシン縫着すると共に、縦が凡そ1m?3m、横が凡そ4m?100mの網体を作成し、該網体のテープ箇所には適当間隔で鳩目金具を取付ける孔を作成すると共に、該鳩目金具孔に紐帯を通し、これにより網体を枠体構造物に固定又は網体相互を繋ぎ合わせるようになすことにある。
【0005】
【作用】
鳩目金具孔に紐帯を通して、枠体構造物に対し強固旦つ安全に取付けることが出来る。又、網体相互の繋ぎ合わせや取外しが簡便に行われる。尚、網体は風を受ける側に荒目網を向けて張り、風で飛ばされて来る小石や木片等の飛来物を荒目網で阻止し、細目網の直接の破損を防止するようになす。防風効果は細目網が受け持ち、風速を凡そ1/2以下に減速させるものとなす。」

イ 「【0010】
【考案の効果】
本考案は以上の如く構成せしめるものであって、風が運んで来る小石や木片等の飛来物は当初外方の荒目網2が阻止するのである。しかして、本考案になる細目網1では風洞実験通り、受ける風速を凡そ1/2以下に減速させる効果を奏するものである。」

(2)引用文献3に記載の技術事項
上記(1)により、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「細目網を一重とすると、強風によって破損し易いが、荒目網と細目網を重ね合わせると、荒目網が風が運んで来る小石や木片等の飛来物を阻止することにより、細目網の直接の破損を防止できること。」

4 引用文献4(特開2003-4865号公報)について
(1)引用文献4の記載事項
当審の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 「【0022】また、支持プレート13には複数の連結部材32により降雪板22の外周辺にこれを囲うように防風囲い33が配設されている。この防風囲い33は、降雪位置P_(1) にある降雪板22を中心とした円筒形状をなしており、二重のナイロン製ネット34,35が支持枠36に挾持されて構成されている。そして、本出願人が各種のシミュレーションや実験を行った結果、この防風囲い33は、降雪板22上に適正に降雪があるようにその周辺の風速を2m/s未満に低減することが必要であると共に、内部での渦流や乱流の発生を防止するために一部の風が通過できるように多数の開口部が必要であることが判明し、その結果、ナイロン製ネット34,35により防風囲い33を構成することが望ましいと考えた。」

イ 「【0026】そこで、ネットの目の細かさに応じた風速低減効果を実験し、図4にグラフとして示した。この実験にて、Aは外側に4_(mm)メッシュのネットを内側に2_(mm)メッシュのネットを重ねて構成した防風囲い、Bは外側に1_(mm)メッシュのネットで構成した防風囲い、Cは2_(mm)メッシュのネットで構成した防風囲い、Dは4_(mm)メッシュのネットで構成した防風囲いである。この図4のグラフからわかるように、全ての防風囲いで、ネット外部の風速が大きくなるに伴ってネット内部に位置する降雪板上の風速も大きくなっている。しかし、Bでは風速を低減しすぎて渦流や乱流の発生を招く虞があり、Cではネット外部の風速が3m/sを越えると、また、Dではネット外部の風速が2m/sを越えると、降雪板上の風速が2m/sを越えてしまう。一方、Aではネット外部の風速が5m/sを越えるまで降雪板上の風速が2m/sを越えることはない。」

(2)引用文献4に記載の技術事項
上記(1)により、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「二重のネット34,35は、一枚のネットよりも多数の開口部が得られるため、防風囲い33を構成するのに望ましいこと。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)引用発明1の「表層土面」は本願発明の「表層土の地表面」に相当する。

(2)本願発明の「網目体」について、発明の詳細な説明【0009】段落には、「天然繊維、合成繊維、金属等からなる網類、パンチングメタル等の有穴状のシート状のもの」と記載されているから、引用発明1の「天然繊維、合成繊維、金属等からなる各種網類、パンチングメダル等種々のもの」からなる「網状抵抗体4」は、本願発明の「網目体」と具体的なものが同じである。
してみると、引用発明1の「網状抵抗体4」は、本願発明の「網目体」に相当する。

(3)引用発明1において、「網状抵抗体4」を「表層土面に」「ほぼ平行に」取り付けた状態においては、「網状抵抗体4」の面部は、表層土面に対向しているのは明らかである。
また、本願発明の「地表面近傍」は、発明の詳細な説明【0013】段落を参酌すると、「網3の上面に間隔保持材5を用いて20cmの間隔Hをあけて網3と同一の網3'を張設する。さらに、網3''を網3'の上面に接するように張設する。」と記載されていることから、 地表面からほぼ20cmの高さも「地表面近傍」と解されるので、引用発明1の「10?15cm、20?30cmの高さ」は、本願発明の「地表面近傍」といえる。
このことは、引用発明1において、「埋立地盛土」の一般的なスケールを考慮すれば、「10?15cm、20?30cmの高さ」は、表層土面の近傍と解することができることからもいえる。
さらに、本願発明の「被着」の意味について、本願の図面等を参酌して、「被着」は、「被せるように取り付ける」ことと解されるから、引用発明1の「表層土面に」、「ほぼ平行に」設置することは、本願発明の「地表面」に、「被着」することに相当する。
また、本願発明の「張設」と引用発明1の「展張して設置」は、用語が異なるものの同じことを指すのは明らかである。
以上を勘案すれば、引用発明1の「埋立地盛土等の表層土面に、10?15cm、20?30cmの高さに、ほぼ平行に且つ一定の間隔を保つように網状抵抗体4を展張して設置」することは、本願発明の「表層土の地表面に、網目体の面部を地表面近傍に対向するようにして」、「被着張設する」ことに相当する。

(4)引用発明1の「濁水」は、降雨による水と表層土が混じり合ったものであることは明らかであるから、引用発明1の「表層土の飛砂(土)及び降雨時における濁水の流出を防止する方法」は、本願発明の「飛砂(土)および降雨時における表層土の流出を防止する方法」に相当する。

(5)以上(1)ないし(4)から、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「表層土の地表面に、網目体の面部を地表面近傍に対向するようにして被着張設する、飛砂(土)および降雨時における表層土の流出を防止する方法。」

(相違点)
「網目体」が、本願発明では、「複数重ね合わせて」被着張設されているのに対し、引用発明1ではそのような構成が特定されていない点。

2 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明1において、網状抵抗体4が設置される場所の気候状況や網状抵抗体4の材質や目開きの大きさなどによっては、飛砂の防止をさらに改善する必要性が生じうることは、当業者であれば当然認識できることである。
また、引用文献2ないし4に記載の技術事項のように、網目体(網やネット等)を複数重ねることは本願出願前から周知であって、様々な点において、網目体(網やネット等)を一枚とするより、複数重ねた方がよいことは、一般的に知られていることである。

そして、引用発明1において、当業者が、飛砂の防止をさらに改善しようとする場合に、上記周知技術に基づいて、網状抵抗体4を複数重ねることを試みて、本願発明の相違点に係る構成を得ることは、容易になし得ることである。
また、引用発明1において、上記周知技術を適用したとしても、引用文献1の【0017】及び【0018】段落(上記第4の1(1)オ)に記載された、引用発明1の目的の支障となることが発生するとも認められない。

3 請求人の主張について
請求人は、平成30年12月28日付け意見書の6.において、
「本願発明および引用文献1の発明(以下本願発明等と称します)と、引用文献2?4の発明との技術的課題はまったく別異のものであります。すなわち、本願発明等は地表面の飛砂(土)を防止するのに対し、引用文献2?4の発明は、網目体で囲繞した空間の風力を弱めることを目的とするものであります。而して引用文献2?4の発明は、その効果を網目体の網目を通過させて得ようとするものであります。一方本願発明等は網目体の網目に風を通過させるものではなく、網目体の面部に沿って風を通過させ、地表面の飛砂(土)の予防を行うものであり、両者の技術的課題も技術的手段もまったく異なるのであります。
そして本願発明と引用文献1の発明と対比した場合、前述したように、本願発明の方が格段に卓越した効果が得られるのであります。
さらに付言するに本願発明によれば網目体の面部に風を通すことから全方向からの風の向きでも網目を構成していることから渦流が生起し飛砂(土)の防止を行うことが可能でありますが、引用文献2?4の発明にあっては、1枚の網目体で得られる効果は網目が風に対向する時しか効果が得られず、従って網目体に沿って吹く風にはまったく効果がないのであります。」と主張するので検討する。
請求人の主張する、「網目体の面部に風を通すことから全方向からの風の向きでも網目を構成していることから渦流が生起し飛砂(土)の防止を行うことが可能であ」るとの本願発明の技術的効果は、「網目体の面部に風を通す」ことによるものであって、引用発明1も有しているものであり(【0006】段落を参照。)、本願発明特有のものではない。そして、上記2で述べたように、網目体を複数重ねることは本願出願前から周知であり、網目体を1枚とするか複数枚重ねとするかは、当業者が適宜選択し得る程度のことであって、枚数を多くすることにより、何らかの物理的な効果があることも自明であるから、網目体を複数重ねることは、当業者が容易に着想し得ることである。

また、請求人の意見書の3.における
「引用文献1に記載の発明にあっては網状抵抗体を設置した当初においては、設置した箇所の飛砂(土)や濁水の流出を防止することができるのでありますが、長期間設置していると網状抵抗体の設置箇所以外から飛来する砂(土)によって網状抵抗体が埋没してしまい、その機能を失ってしまうのであります。
一方本願発明にあっては、網目体を複数重ね合わせることによって、他の場所から飛来する砂(土)の蓄積を防止すると共に、網目体を設置した箇所の飛砂(土)を防止することができるのであります。また網目体を複数重ね合わせることによって、重ね合わせた網目体が、降雨時に表層土上を流れる雨水の抵抗体となり、その流速を弱めることができるのであります。」との主張について検討する。
引用文献1の【0018】段落には、「長時間の使用においても網状抵抗体が砂(土)で埋没することもない。」と記載されていることから、「引用文献1に記載の発明にあっては・・・長時間設置していると・・・その機能を失ってしまう」との主張は採用できない。
また、長時間の使用において網目体が埋没するか否かは、地表面からの設置高さや網目の大きさ等、様々な要素が関係するものと認められることから、本願発明が、引用発明1よりもより長時間埋没しないとも認められない。
さらに、請求人が「他の場所から飛来する砂(土)の蓄積を防止すると共に、網目体を設置した箇所の飛砂(土)を防止することができる」と主張する本願発明の技術的効果は、「表層土の地表面に、網目体の面部を地表面近傍に対向するようにして被着張設」したことによるものであって、当該構成を備える引用発明1も有するものであり、本願発明特有のものではない。
そして、本願発明において、網目体を重ねることで、引用発明1に比べてより一層「他の場所から飛来する砂(土)の蓄積を防止する」ことができたとしても、網目体を重ねることによって網目が小さくなれば物体を通しにくくなるのは一般的に知られていることであるから、上記事項は、当業者であれば当然予測し得る効果でしかない。

よって、請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2ないし4に記載された技術事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-31 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-19 
出願番号 特願2013-131139(P2013-131139)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 光宏  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 富士 春奈
井上 博之
発明の名称 表層土の飛砂(土)および降雨時における表層土の流出の防止方法  

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