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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1351049
審判番号 不服2017-10826  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-20 
確定日 2019-04-24 
事件の表示 特願2014-536371「音声特性を用いて上気道を特徴づけるシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月25日国際公開、WO2013/057637、平成26年12月 8日国内公表、特表2014-532448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年10月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月3日付けの拒絶理由が通知され、同年10月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年11月28日付けの最後の拒絶理由が通知され、平成29年1月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月14日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、そして、当審において平成30年4月27日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」)が通知され、これに対し、同年11月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成30年11月2日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
患者によって生成される話し言葉における音声の完全なユニットの形式である発声に基づいて前記患者の上気道の少なくとも1つの生体構造パラメータを特徴づけるシステムであって、
前記患者の顎及び歯の位置を固定するように構成される機械式カプラであって、前記患者が前記発声を生成し、前記生成された発声を有する音声信号を送信している間、前記患者の口に所定の直径をもたせる前記機械式カプラと、
前記機械式カプラからの前記音声信号を受信し、前記音声信号を記録するように構成された音記録ユニットと、
前記記録された前記音声信号を受信し、前記記録された前記音声信号と実行されるべき所定の発声とのマッチングに基づいて、前記生成された発声が正しいかどうかを決定し、前記生成された発声が正しいと決定したことに応じて、前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する、ように構成された処理手段と、
を有する、システム。」

第3 当審拒絶理由について
平成30年4月27日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
●理由1(明確性)について
・請求項1?13
(1)略
(2)請求項3及び12について
請求項3に「声の正当性をチェックする音声認識」と記載されているが、技術的に不明確である。この点、本願明細書には「例えば正しい発声が実行されたかどうかを決定する音声認識を用いて、記録された発声の正当性をチェックすることができる。」(【0053】)と記載されているが、「生成される声及び非声のスペクトル特性を分析することにより、患者の上気道の少なくとも1つの生体構造パラメータを特徴づける」うえで、「正しい発声」とは何か不明であり、本願明細書を参照しても不明確である。
請求項12にも同じ記載があり、同様に不明確である。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)の点で、上記指摘した請求項及びそれに従属する請求項の記載は不明確であることから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

●理由2(実施可能要件)について
・請求項1?13
上記理由1で説示したとおり、請求項1及び8の「非声」は不明確であるものの、以下のとおり、請求項1及び8並びにそれらに従属する請求項に係る発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものではない。
(1)本願明細書の【背景技術】に「Jungその他は、OSAの予測インジケータが、Kushidaインデックスの予測値において上気道に関連付けられる生体構造特徴であることを開示し、閉塞性睡眠時無呼吸の有無にかかわらず対象物における上気道の評価に関して音響咽頭測定(acoustic pharyngometry)を用いる(J Korean Med Sci、2004、19(5):p. 662-7)。Jungらは、音声、特に母音のスペクトル特性が、喉の生体構造寸法に依存することも開示する。後者の結果として、音声のスペクトル特性が、OSAに関するインジケータとして用いられることができる。このために、音響咽頭メータは、喉に音響信号を送信し、この信号の反射を処理することにより、上気道の幾何学的なパラメータを能動的に抽出するために用いられることができる。」(【0003】)と記載されており(なお、当審において上記論文を確認したが、「音声、特に母音のスペクトル特性が、喉の生体構造寸法に依存することも開示する」ことについての具体的な記載は確認することができなかった。)、また、原査定時に提示した引用文献3(米国特許出願公開第2011/0240015号明細書)の[0074]?[0083]等にも記載されているように、従来、以下の図3に示されるような、上気道の幾何学的生体構造は、上気道に音響信号を送信し、この信号の反射を処理することにより行われているものである。
【図3】


(2)一方、本願明細書の【0041】に「母音のこれらの上述した特性の全ては、例えば母音の生成を説明するために使用されるモデルを用いることにより、解析されることができる。上気道又は声道を説明するために用いられることができる1つの既知のモデルは、図1aに示される声道の近似された発語モデルである。上気道の基本セグメント(図1aにおいて1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)は、特定の長さ及び断面積の円筒状チューブにより表される。異なる断面積を持つ直列の円筒状管を通り音波が進行して、1つのセグメントから別のセグメントへと横断するとき、音波が部分的に反射される。図1bは、4つの無損失性円筒状音響管の連結を用いて、近似された発語モデルの概略的な説明を示す。」と記載されており、また、原査定時に提示した引用文献4(特開2010-238133号公報)の図6、「声道断面積関数の音声信号からの推定-内部損失及び声道壁インピーダンスの影響とその補正」日本音響学会誌56巻1号(2000)pp.21-31等に記載されているように、母音等の発声のスペクトル特性を解析する声道断面積関数により、声道の近似モデルを得ることも知られている。
【図1a】

【図1b】


(3)これに対し、本願請求項1に係る発明は「生成される声及び非声のスペクトル特性を分析することにより」「患者の上気道の少なくとも1つの生体構造パラメータ」を「決定」「処理」するものであるが、声のスペクトル特性を分析することより、声道断面積関数により声道の近似モデルを得ることは、上記(2)のとおり本出願前知られていたものといえるが、上記(1)で指摘したように従来、音響反射技術により得られていた上記図3さらには、以下の図4bのような喉のジオメトリを、声のスペクトル特性を分析することにより得られることが、当業者において広く知られていたものとはいえない。
【図4b】


(4)そして、上記図3のような上気道のジオメトリを得るために、本願明細書には「発声のスペクトル特性が、分析されることができる。これは、上気道の生体構造パラメータ、例えば声帯及び口の間の喉の寸法の決定をもたらす。本発明の一実施形態において、得られた寸法は、OSAに関するインジケータとして使用されることができる。他の実施形態において、この寸法は、予測出力がすでに確立された他の測定に、例えば図3に示されるような音響咽頭測定の測定データにリンクされることができる。Jungらから取られた図3は、音響咽頭測定の代表的な出力を示し、これは、Y軸にパラメータ領域を持ち、X軸にパラメータ距離を持つ。(矢印及び厚いラインにより強調されるように)グラフ上で5つのパラメータが識別されることができる。それは、(1)口咽頭接合領域(OPJ)、(2)最大咽頭領域(Apmax)、(3)声門域(GL)、(4)OPJからGLまでの平均咽頭領域(Apmean)(5)OPJとGLとの間の曲線下の積分面積としての咽頭ボリューム(Vp)である。すべてのパラメータは、例えば本発明の実施形態による処理手段により算出されることができる。」(【0053】)と記載されており、発声のスペクトル特性を処理することにより、図3のようなパラメータを算出されるとされているが、この記載だけからは、具体的にどのような処理をすれば図3のようなものが得られるのか不明である。
さらに、図4bについて、本願明細書には「代替的に、この値は、スピーチ特徴に基づき検出器の微分に関して特異的に実行される試みにおいて、OSAの存在にリンクされることもできる。唇から声門への断面寸法を得る別の方法は、例えば線形予測分析(LPC)によるスピーチ符号化を適用することにより行われる。LPCは、人間の声道をモデル化するために実行されることができる。この方法は、図4a及び図4bに示されるように、より効率的な堆積及びより短い処理時間の観点から、呼吸薬供給を最適化するため、瞬間的な喉ジオメトリのリアルタイム推定を得るのに使用されることもできる。」(【0054】)と記載されているが、この記載をみても、発声のスペクトル特性に具体的にどのような処理をして、上記図4bのものが得られるのか不明である。

(5)してみれば、発明の詳細な説明を参照しても、図3又は図4bのような生体構造パラメータが得られるとはいえないのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
なお、発明の詳細な説明には、「音声、特に母音のスペクトル特性が、喉の生体構造寸法に依存することは、上記から明らかである。発声のスペクトル成形に貢献するすべての調音器官は、例えば、Proceedings of AVIOS '95、the 14th Annual International Voice Technologies Applications Conference of the American Voice I/O Society、San Jose September 11 -14 1995、AVIOS:San Jose、pp. 27-44におけるD. Hillらにより開示される方法を適用することにより、リアルタイムに描写及び視覚化されることができる。」(【0043】)、「処理手段は、OSA診断にとって重要な特徴を抽出及び分析することができる。使用されることができる方法の例は、Robbらによる「Vocal tract resonance characteristics of adults with obstructive sleep apnoea」、Acta Otolaryngology、1997、117(5):p. 760-3において開示される。」(【0053】)とも記載されており、これらの文献をみれば当業者なら実施できるということであるのならば、それらの文献及びその翻訳を添付して、意見書で具体的に説明されたい。

(6)まとめ
上記(1)?(5)で指摘した事項は請求項8に係る発明についてもいえることである。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び8並びにそれらに従属する請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断
(1)当審拒絶理由の理由1の(2)について
ア 上記第3で記載した当審拒絶理由の理由1の(2)で指摘した、本件補正前の請求項3に記載されていた「声の正当性をチェックする音声認識」については、本件補正により本願発明の発明特定事項として「前記記録された前記音声信号と実行されるべき所定の発声とのマッチングに基づいて、前記生成された発声が正しいかどうかを決定し、前記生成された発声が正しいと決定したことに応じて」(下線は当審において付与した。)と補正されたが、「発声が正しい」とは、どのような「発声」が「正しい」のか本願発明に特定されていないことから、依然として不明確である。

イ 本願明細書の記載
上記アで記載したとおり、本願発明は「発声が正しい」ことについて特定されておらず不明確であることから、本願明細書を参照するに、この点について本願明細書には以下のとおり記載されている。
「次のステップにおいて、処理手段5は、例えば正しい発声が実行されたかどうかを決定する音声認識を用いて、記録された発声の正当性をチェックすることができる。従来技術において知られる複数の音声認識モデルが、後者を可能にするために用いられることができる。例えば、環境から独立した認識に関してベクトルテイラー級数法を適用することにより、又は、パラレルモデルコンビネーション(PMC)方式又はヒドンマルコフモデルを使用することにより、行われる。発声が正しくない場合、システムは患者にそれを繰り返すよう依頼することができる。次のステップにおいて、システムは、すべての事前に規定された発声が患者により正しく行われるまで、前のステップを繰り返すことができる。」(【0053】)

ウ 本願明細書を踏まえた判断
上記明細書には、音声認識モデルについての方法が記載されているものの、これらの方法は声をコンピュータに認識させるための方法、すなわち、声の音波である音声信号を文字(文字コード)に変換する方法を示しているにすぎず、本願発明の「前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する」うえで、いかなる「発声が正しい」のか記載されていない。
してみれば、上記第3で記載した当審拒絶理由の理由1の(2)で、「正しい発声」とは何か不明であり、本願明細書を参照しても不明確であると指摘したことについては、「発声が正しい」と本件補正で補正されたが、どのような「発声」が「正しい」のか、本願明細書の記載を踏まえても依然として不明確である。

エ 請求人の主張
請求人は、平成30年11月2日に提出された意見書(以下「意見書」という。)で、
「そこで、本意見書と同時提出の手続補正書により、本願明細書の段落0040乃至段落0053などの記載に基づき、本願の各請求項について、記載をより明りょうにする補正を行ないました。当該補正により、本願は、少なくとも上記理由1をもはや有さないものと確信致します。」と主張するのみで、本願発明の「前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する」うえで、いかなる「発声が正しい」のかについて何ら説明がなされていない(なお、請求人にはさらなる説明の意思がないことを確認した(初回応対平成30年11月14日の「応対記録」参照)。)。

オ 小括
よって、当審拒絶理由の理由1の(2)で指摘した事項は、本件補正及び意見書の主張を参照しても解消されておらず、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)当審拒絶理由の理由2について
ア 本件補正により、請求項1に係る発明は、上記第2で記載した本願発明のとおりに補正され、特に、上記第3で記載した当審拒絶理由の理由2の指摘に関する事項としては、本件補正前の「患者の上気道の少なくとも1つの生体構造パラメータ」について、「前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する」ことが発明特定事項として特定されたので、その発明特定事項の実施可能要件について検討する。

イ 本願明細書の記載
本願明細書の記載として、ここでは、上記第3で摘記している箇所以外の記載を摘記することとする。なお、下線は当審において付与した。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、音声特性を用いて上気道を特徴づけるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、患者が、呼吸することができない程度まで(無呼吸)、又は少ない肺活量を持つ程度まで(呼吸低下)、上気道が夜に何度も妨害される疾患である。OSAの診断は、一晩の測定の間、患者を監視することにより、睡眠研究室においてなされることができる。無呼吸及び呼吸低下の総数が特定の限界を上回る場合、OSA診断が割り当てられる。」

(イ)「【0005】
更に、残念なことに、従来技術において共通する、OSAに関するこれらの診断ツールは、睡眠研究室において用いられる。これは、高価で、時間を消費し、患者にとって不快である。更に、OSAをスクリーニングするのに現在使用される方法は、非常に長く、多くの労働を必要とする。
【0006】
従って、短く簡単な態様でOSAを日中に検査し、スクリーニングするための、改良された時間のかからない検査に関する必要性が、なお存在している。
【0007】
本発明の目的は、音声特性を用いて上気道を特徴づけるシステム及び方法を提供することである。」

(ウ)「【0023】
本発明の教示は、上気道を特徴づける正確で信頼性が高い測定を実行する際にユーザを誘導する、改良型の方法及びシステムの設計を可能にする。」

(エ)「【0025】
【図1a】声道の近似された発語モデルの概略図である。
【図1b】4つの無損失性円筒状音響管の連結を用いて近似された発語モデルの概略 図である。
【図2】本発明の実施形態によるシステムの概略図である。
【図3】音響咽頭測定の代表的な出力を示す図である。
【図4a】本発明の実施形態によるシステムを用いる、発された音に基づく、上気道路のリアルタイム推定を示す図である。
【図4b】本発明の実施形態によるシステムを用いる、発された音に基づく、上気道路のリアルタイム推定を示す図である。」

ウ 判断
上記アで記載したように、「患者の上気道の少なくとも1つの生体構造パラメータ」について、「患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積」と補正されたが、「近似された発語モデル」とは特定されておらず、上記摘記イ(ア)?(ウ)を踏まえるに、「患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積」はOSAを診断できる正確で信頼性が高いものでなければならないことから、「患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積」とは、上記第3で摘記した【図1a】及び【図1b】のような「近似された発語モデル」(このような近似された発語モデルを声のスペクトルから構成することは、上記第3で記載した当審拒絶理由の理由2の(2)で指摘したとおりすでに公知の技術であり、新規・進歩性はないものである)と解するよりも、OSAを診断できる正確で信頼性が高い【図3】及び【図4b】で示されるような上気道のジオメトリであると解するのが相当である。
してみれば、上記第3で記載した当審拒絶理由の理由2の(4)で指摘したように、「発声のスペクトル特性を」どのように「抽出及び分析することによって」、OSAを診断できる正確で信頼性が高い【図3】及び【図4b】で示されるような上気道のジオメトリが得られのか、依然として不明である。
よって、本件補正後の「前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する」という発明特定事項について、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

エ 請求人の主張
請求人は、意見書で、
「上記補正後の本願の請求項1に係る発明は、『前記記録された前記音声信号から前記生成された発声のスペクトル特性を抽出及び分析することによって、前記音声信号に基づき、前記患者の唇からの距離における上気道の横断面の面積を決定する』ことを規定しております。係る発明は、本願明細書の段落0040乃至段落0053など(特に、段落0041及び段落0053)において、いわゆる当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているものと思料致します。従いまして、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではないと確信しております。」と主張するのみであり、上記当審拒絶理由の理由2の(5)で本願明細書に記載されている文献をみれば実施できるということであれば、その文献及びその翻訳を提示したうえでの説明を求めたが、請求人は、提出、説明を行わなかった(なお、請求人にはさらなる説明の意思がないことを確認した(上記「応対記録」参照。)。
上記第3で記載した当審拒絶理由の理由2で記載したとおり、当審拒絶理由の理由2はすでに請求人の上記指摘箇所を参照してもなお不明であることを説示したものであり、請求人の主張は上記指摘箇所を説明するものとなっていないことから、請求人の主張によって当審拒絶理由の理由2が解消されることはない。

オ 小括
よって、当審拒絶理由の理由2で指摘した事項は、本件補正及び意見書の主張を参照しても解消されておらず、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
以上のことから、本願発明は不明確であり、そして、発明の詳細な説明は当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-26 
結審通知日 2018-11-27 
審決日 2018-12-11 
出願番号 特願2014-536371(P2014-536371)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61B)
P 1 8・ 536- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 洋平田中 洋行  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 音声特性を用いて上気道を特徴づけるシステム及び方法  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 浅村 敬一  
代理人 五十嵐 貴裕  

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