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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1351050
審判番号 不服2017-16525  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-07 
確定日 2019-04-24 
事件の表示 特願2016-531563「高強度集束超音波施術装置及びその施術方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日国際公開、WO2015/141921、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-529974〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014(平成26)年11月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014(平成26)年3月18日、韓国(KR))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 1月30日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月28日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 7月 7日付け:拒絶査定
平成29年11月 7日 :審判請求書・手続補正書の提出

第2 平成29年11月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を明らかにするため当審で付与したものである。)

「【請求項1】
施術者の操作のための把持部;
前記把持部の前端に備えられ、施術の際、膣内部に挿入されるカートリッジ;
前記カートリッジに備えられ、高強度集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)を生成する単一の超音波治療部(ultrasound treatment transducer);
前記単一の超音波治療部を膣前後方向及び/又は回転方向に駆動させて膣内骨盤内筋膜に特定の方向に沿って離隔された複数のドット形態の熱的病変を形成する駆動機;及び
前記駆動機を制御する制御器を含み、
前記把持部の前端に前記カートリッジとの締結のためのガイド部が備えられ、
前記カートリッジに前記ガイド部と相応する形状の締結部が提供され、
前記ガイド部と前記締結部は、強制嵌め方式、ネジボルト方式、または回転可能な単純結合方式のいずれかにて、結合と分離、または回転が可能な、高強度集束超音波施術装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年4月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
施術者の操作のための把持部;
前記把持部の前端に備えられ、施術の際、膣内部に挿入されるカートリッジ;
前記カートリッジに備えられ、高強度集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)を生成する超音波治療部(ultrasound treatment transducer);
前記超音波治療部を駆動する駆動機;及び
前記駆動機を制御する制御器を含み、
前記把持部の前端に前記カートリッジとの締結のためのガイド部が備えられ、
前記カートリッジに前記ガイド部と相応する形状の締結部が提供され、
前記ガイド部と前記締結部は、強制嵌め方式、ネジボルト方式、または回転可能な単純結合方式のいずれかにて、結合と分離、または回転が可能な、高強度集束超音波施術装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「超音波治療部」及び「駆動機」について、上記のとおり限定を付加するものを含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2001-514921号公報(平成13年9月18日公表。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線部は、当審で付与したものである。)

「【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、一般に、医療デバイス、方法、およびシステムに関する。より詳細には、本発明は、組織を選択的に加熱しそして収縮させる技術、特に尿失禁およびヘルニアの非侵襲性処置のための技術、および美容外科手術のための技術などを提供する。」
「【0012】
(発明の要旨)
本発明は、膠原化組織を収縮させるため、特に、非侵襲性の様式で尿失禁を治療するための、デバイス、方法およびシステムを提供する。従来技術とは対照的に、本発明は、バルーンまたは他の材料の移植に依存せず、また、縫合、切断、または、身体の天然の支持組織に対する他の直接的な外科手術的改変にも依存しない。代わりに、本発明は、患者自身の支持組織へのエネルギーに関する。このエネルギーは、筋膜および他の膠原化組織を加熱して、隣接する組織を実質的に壊死させることなく、それらを攣縮させる。」
「【0050】
残余の記載事項は一般に、女性患者の腹圧性尿失禁の処置のための装置および方法に関するが、本発明は、組織の攣縮のため、組織および腫瘍の融除のため等、患者の身体の組織に治療加熱エネルギーを選択的に方向付けるための、多くの他の適用を見出しているものと、理解される。」
「【0086】
骨盤内筋膜を選択的に収縮させるシステムが、図5に例示される。システム40は、膣プローブ42および膀胱プローブ44を含む。膣プローブ42は、近位端46および遠位端48を有する。電極12(セグメント12a、12b、12c、および、12dを含む)は、プローブの遠位端付近に搭載される。」
「【0116】
図13をここで参照すると、マイクロ波プローブ94は、マイクロ波加熱エネルギー98を、膣壁VWを通して骨盤内筋膜EF上に方向付ける、マイクロ波アンテナ96を含む。」
「【0118】
図13に例示されるものに概略的に類似するプローブで使用され得るエネルギーの代替の形態は、超音波加熱である。冷却された超音波プローブは、膣に隣接する骨盤内筋膜の加熱処理を提供するために採用されるが、好ましくは、その一方で、超音波を反射する材料を利用して、隣接組織を保護する。好適な保護材料としては、CO2または液体/フォームエマルジョン材料が挙げられる。高強度超音波は、プローブから或る距離で組織を加熱可能であり、また、特定の治療場所における最も強力な過熱処理を適用するために集束され得る。」
「【0120】
図13Aに概略的に例示されるように、長手のプローブハウジング302を有する集束型超音波プローブ300は、超音波変換装置308の軸方向並進304および回転306を順応させるように、うまく適合される。変換装置308の焦点距離を選択的に変化させることにより、任意の構造を治療するために、変換装置は、必要に応じて環状配列の形態を呈し得る。」
「【0121】
一定焦点距離の変換装置を利用することが、可能であり得る。かかる固定式変換装置は、所望の治療に適する深さで集束するように適合されるのが、好ましい。或る実施態様では、筋膜層に関してこのような一定の焦点距離の変換装置を並進させて、異なる深さにて組織を治療することが可能なことがある。」
「【0122】
図13Bおよび図13Cに例示されるように、環状配列は、焦点310で超音波エネルギーを集束させるのに、特にうまく適合される。位相制御部314を利用して、環状配列308の個々の環状素子312a、312b・・・に供給される電流を変化させることにより、環状配列の焦点距離は、310’まで増大可能であり、または310”まで減少可能である。」
「【0123】
超音波発生構造は、本明細書中では変換装置と一般に称されるが、超音波エネルギーを検知しない超音波発信機が採用されてもよい。それにもかかわらず、これは、単一変換装置構造を利用して、組織の画像化と加熱との両方を行うのに、有利となり得る。変換装置は、衝撃波を利用して、または、より長い負荷周期が望ましい連続信号を用いて励起され得る。画像化と加熱を交互に行うことにより、組織の厚さ、または、超音波発現の変化がモニターされ得、組織がその治療をいつ完了するかを決定する。」
「【0136】
市販の超音波画像化膣プローブを超音波動力治療装置と組み合わせることが望ましい場合は、2つの変換装置を、単一の内部変換装置走査アセンブリ上で互いに隣接する位置に設置することが、好ましいのが一般的である。これは、画像化超音波変換装置および治療用超音波変換装置を一緒に回転および並進させる動作を促進し、治療されるべき構造が交互に視覚化され、かつ、加熱され得るようにする。理想としては、これら交互の視覚化/治療サイクルは、その一方または他方が実質的に継続的に実施されているように、調整される。」
「【図5】
本発明の原理に従って骨盤内筋膜を選択的に収縮することによって女性の尿失禁を治療するためのシステムの斜視図である。」
「【図13】
冷却された膣プローブからマイクロ波または超音波エネルギーを伝達することによって骨盤内筋膜を選択的に収縮するための方法を概略的に例示する。」

また、引用文献1には、次の技術的事項が開示されているものと認められる。
a 図5には、膣プローブ42は、プローブ本体の近位端に施術者による操作のための操作部を有し、プローブ本体の遠位端に加熱エネルギーを発生させる電極12を内蔵する点が開示されているといえる。
b 図13には、加熱エネルギーの発生手段(マイクロ波アンテナ96)を含むプローブ本体の遠位部分が膣内に挿入される点が開示されているといえる。

(イ)上記記載事項及び開示事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、医療デバイス(【0002】)において、加熱エネルギーを膣壁を通して骨盤内筋膜上に方向付け(【0116】)、筋膜等を加熱して攣縮させるものである(【0012】)。
b 膣プローブは、施術者による操作のための操作部を有し、当該操作部の遠位側にプローブ本体を有し、当該プローブ本体は遠位端に加熱エネルギーの発生手段を内蔵し、当該プローブ本体の当該発生手段を含む遠位部分が膣内に挿入された状態で施術する(図5及び図13の開示事項)ものである。そして、膣プローブは、加熱エネルギーとして高強度の集束型超音波を利用することができ(【0118】)、集束型超音波発生手段として超音波変換装置を備えるものである(【0120】)。
c 集束型超音波発生手段は、一定焦点距離(固定式)の変換装置を利用することもできる(【0121】)し、異なる深さにて組織を治療できるよう焦点距離を増大または減少の調整ができる変換装置を利用することもできるものである(【0121】)。
d また、当該超音波変換装置は、軸方向並進304および回転306を順応するよう構成されている(【0120】)ことから、当該プローブが、超音波変換装置を軸方向並進及び回転させるための駆動手段並びにその制御手段を有することは明らかである。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「施術者による操作のための操作部、
前記操作部の遠位側にあり、膣内に挿入されるプローブ本体、
前記プローブ本体に内蔵され、高強度の集束超音波を発生する超音波変換装置、
前記超音波変換装置を軸方向並進及び回転を順応させ、骨盤内筋膜を加熱して攣縮させる駆動手段、及び
前記駆動手段を制御する制御手段を有する、
高強度の集束型超音波を利用した医療デバイス。」

イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平7-227394号公報(平成7年8月29日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線部は、当審で付与したものである。)
「【0008】本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、光学的観察を行いながらプローブを体腔内の目的部位に挿入して、上部消化管、下部消化管、胸腔、腹腔や脳室などの体腔内に挿入して、深部臓器の病変組織等を超音波による焼灼治療を行うことができる超音波プローブを有する超音波診断治療システムを提供することにある。」
「【0013】上記超音波プローブ2Aは体腔内に挿入できるように細い管(つまり細管)状になった挿入部7と、この挿入部7の後端に形成され、術者が把持し、挿入とか湾曲操作を行う太幅の操作部8と、この操作部8から延出されたユニバーサルケーブル9Aを有し、ユニバーサルケーブル9Aの端部の光源コネクタ10を光源装置3に着脱自在で接続することができる。」
「【0015】上記挿入部7は硬質の先端部14と、湾曲自在の湾曲部15と、可撓性の可撓部16とが挿入部7の先端側から挿入部7の軸方向に順次形成されている。また、図4に示すようにこの先端部14には、超音波治療手段17と、超音波観測手段18と、処置機能ガイド部としての鉗子出口13と、光学的観察手段19とが先端側から挿入部7の軸方向に順次配置されていることが特徴となっている。」
「【0042】上記超音波治療手段17を構成する治療用超音波振動子20は、高強度の治療用の集束された超音波ビーム(つまり集束超音波ビーム)を放射するものであり、単一の超音波振動子でも良いし、複数の超音波振動子で構成されていても良い。」
「【0196】この実施例では超音波プローブ256は図37に示すように超音波治療手段240が超音波プローブ本体241に着脱自在の構造になっており、装着した状態では例えば基本的に第1実施例と同様の構成になる。」
「【0197】図37(a)に示すように超音波治療手段240は、焦点距離がそれぞれLa,Lb,Lc(La>Lb>Lc)の治療用超音波振動子242a,242b,242cが収納されたものが用意され、超音波プローブ本体241にそれぞれ着脱自在に接続することができる。そして、図37(b)では例えば焦点距離がLbの治療用超音波振動子242bを内蔵した超音波治療手段240を接続した状態を示す。」
「【0198】各超音波治療手段240は基端にコネクタ243を具備している。コネクタ243には、治療用超音波振動子242i(i=a,b,c)を駆動する信号を伝達するための端子244及び気密を保持するためのOリング245が設けられている。」
「【0199】一方、超音波プローブ本体241の先端にはコネクタ受け246となる開口が設けられ、このコネクタ受け246に隣接する後方に超音波観測手段247を構成する例えばコンベックスアレイ型振動子247aが形成された先端部224が設けてある。この超音波観測手段247の後方に湾曲部225が形成され、この後方に硬質の挿入管部226が形成されている。」

(イ)上記記載事項から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 超音波プローブを患者の体腔内に挿入して病変組織を焼灼治療する超音波診断治療システム(【0008】)において、超音波プローブは、体腔内に挿入する挿入部の後端に、術者が把持して挿入を行う操作部と有し(【0013】)、当該挿入部の先端部には超音波治療手段が配置された(【0015】)ものであることから、当該超音波治療手段も体内に挿入されるものであることは明らかである。
b 超音波治療手段としてそれぞれ異なる焦点距離を有する治療用超音波振動子を収納したものが複数用意され(【0197】)、当該超音波プローブは当該超音波治療手段が超音波プローブ本体から着脱自在の接続構造となっており(【0196】)、この接続構造は、各超音波治療手段240の基端のコネクタ243(【0198】)と、超音波プローブ本体241の先端のコネクタ受け246となる開口(【0199】)で構成されるものである。
c 超音波治療手段17を構成する治療用超音波振動子20は、高強度の治療用の集束された超音波ビーム(つまり集束超音波ビーム)を放射するものであり、単一の超音波振動子でも良いし、複数の超音波振動子で構成されていても良い(【0042】)ものである。

ウ 引用文献3
(ア)新たに引用する本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2011-522625号公報(平成23年8月4日公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線部は、当審で付与したものである。)
「【0001】
本発明の実施形態は、一般に、超音波処置及びイメージングデバイスに関し、より詳細には、美容処置とイメージングのための超音波エネルギの放射及び受容を操作可能なトランスデューサプローブを有する超音波デバイスに関する。」
「【0055】
図15は筋肉の深さに対応する、ある深さ278の一実施形態を示している。種々の実施形態において、深さ278は、どのような組織、組織層、皮膚、真皮、脂肪、SMAS、筋肉、または他の組織に対応することができる。いくつかの実施形態において、異なるタイプの組織は、相乗効果のある効果を提供するように処置され、これによって臨床的結果を最適化することができる。他の実施形態においては、エミッタ・レシーバ・モジュールが表面501の下方、約3.0mmの深さ278における処置のためのオフセット距離270を有する。種々の実施形態において、このオフセット距離278は、表面の下方の所望の深さ278に対してエネルギを放射するように、変化してもよい。種々の実施形態において、処置モードでは、トランスデューサ280からの音響エネルギの爆発が、各熱損傷550の直線状シーケンスを生成することができる。一実施形態において、各熱損傷550は分離している。一実施形態において、各熱損傷550は重なっている。種々の実施形態において、トランスデューサ280は、おおよそ1?100mmの間の深さでイメージングできる。一実施形態において、トランスデューサのイメージング深さは、約20mmとすることができる。一実施形態において、トランスデューサ280は、約0?25mmの間の深さを処置することができる。一実施形態において、トランスデューサの処置深さは、4.5mmとすることができる。」
「【0115】
SMAS層507及び同様の筋膜の処置に関し、結合組織が、約60℃又はこれより高い温度への熱処置により、恒久的に引き締めされる。切除において、コラーゲン繊維は、その長さの約30%だけ即座に収縮する。収縮した繊維は、組織の引き締めを生じさせることができ、収縮は、コラーゲン組織の主要な方向に沿って生じる。体全体で、コラーゲン繊維は、慢性的緊張(張力)のラインに沿う結合繊維に沈着する。年老いた顔では、SMAS507領域のコラーゲン繊維は、重力方向の張力のラインに沿って、主に方向付けされる。このような繊維の収縮により、老化によるたるみや緩みを補正するのに望ましい方向において、SMAS507の引き締めが行われる。この処置は、SMAS507及び同様のぶら下がっている結合組織の特定の領域の切除を含む。」
「【0119】
図16を参照して、放射されたエネルギが損傷550を生成した後、組織10の一部の治癒及び/又は引き締めが始まる。一実施形態において、空孔または損傷550は、組織の部分の顔面筋層509から消える。例えば、顔面筋層509には、損傷を縮ませるために損傷の周囲での動き560がある。結果として、体は、吸収により本質的に損傷550を消滅させ、組織の成長が促される。この動き560は、損傷550が位置する部分の上方で、SMAS507のような上方の層に動き570を与える。これは、次々に、表面501を引き締めるために表面501において動き580を生じさせる。」
また、【図15】及び【図16】には、熱損傷550が直線上に離隔されたドット形態となっている点が開示されているといえる。

(イ)上記記載事項及び開示事項から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 人体組織の一部を引き締める(攣縮する)ため(【0115】、【0119】)の超音波デバイス(【0001】)において、筋膜等を熱処置する際に、熱損傷を直線上にかつそれぞれの熱損傷を分離して生成する(【0055】)、すなわち、熱損傷が直線上に離隔されたドット形態となっている点が記載されているといえる。

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「施術者による操作のための操作部」は、その機能及び作用を踏まえると、本件補正発明の「施術者の操作のための把持部」に相当し、以下同様に、「遠位側にあり」は「前端に備えられ」に、「膣内に挿入」は「施術の際、膣内部に挿入」に、「高強度の集束超音波」は「高強度集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)」に、「発生」は「生成」に、「超音波変換装置」は「超音波治療部(ultrasound treatment transducer)」に、「軸方向並進及び回転を順応させ」は「膣前後方向及び/又は回転方向に駆動させ」に、「駆動手段」は「駆動機」に、「制御手段」は「制御器」に、「有する」は「含み」に、「高強度の集束型超音波を利用した医療デバイス」は「高強度集束超音波施術装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「プローブ本体」と本件補正発明の「カートリッジ」とは、膣内部に挿入されるプローブである点で共通する。
さらに、引用発明の「骨盤内筋膜を加熱して攣縮させる」と本件補正発明の「膣内骨盤内筋膜に特定の方向に沿って離隔された複数のドット形態の熱的病変を形成する」とは「膣内骨盤内筋膜に熱的病変を形成する」点で共通する。

してみれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「施術者の操作のための把持部;
前記把持部の前端に備えられ、施術の際、膣内部に挿入されるプローブ;
前記プローブに備えられ、高強度集束超音波(High Intensity Focused Ultrasound:HIFU)を生成する超音波治療部(ultrasound treatment transducer);
前記超音波治療部を膣前後方向及び/又は回転方向に駆動させて膣内骨盤内筋膜に熱的病変を形成する駆動機;及び
前記駆動機を制御する制御器を含み、
高強度集束超音波施術装置。」

(相違点1)
「プローブ」について、本件補正発明においては、「前記把持部の前端に備えられ」た「カートリッジ」であり、「前記把持部の前端に前記カートリッジとの締結のためのガイド部が備えられ、前記カートリッジに前記ガイド部と相応する形状の締結部が提供され、前記ガイド部と前記締結部は、強制嵌め方式、ネジボルト方式、または回転可能な単純結合方式のいずれかにて、結合と分離、または回転が可能」であるのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点2)
「超音波治療部」について、本件補正発明においては、「単一」であるのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点3)
「膣内骨盤内筋膜に熱的病変を形成する」について、その形成された熱的病変の形態が、本件補正発明においては、「特定の方向に沿って離隔された複数のドット形態」であるのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

(4)判断
ア 上記相違点1について検討する。
上記2(2)ア(イ)cによれば、引用発明の「超音波変換装置」は、異なる深さにて組織を治療できるよう焦点距離を増大または減少の調整ができるものである。ここで、上記2(2)イ(イ)bによれば、引用文献2に記載された超音波プローブは、異なる深さの治療ができるよう、異なる焦点距離を有する超音波治療手段が複数用意され、超音波発生手段の基端のコネクタと超音波プローブ本体の先端のコネクタ受けを設けることで、当該超音波治療手段を超音波プローブ本体から着脱自在(結合と分離が可能)としたものである。
してみれば、引用発明と引用文献2に記載の技術とは、体腔内に挿入して使用する超音波プローブである点で同じ技術の分野に属し、治療部の深度を調整するという共通の課題を有するといえることから、引用発明の「超音波変換装置」を引用文献2に記載の技術のように着脱自在な接続構造(コネクタとコネクタ受け)とすることは、同一技術分野に属する技術の単なる置換に過ぎないので、当業者にとって何ら困難性はない。なお、引用発明の「超音波変換装置」は「プローブ本体」に内蔵されていることを踏まえると、超音波変換装置を着脱自在とするか又はプローブ本体そのものを着脱自在とするかは、取り扱い上の利便性やコスト等を踏まえつつ必要に応じて選択できる単なる設計事項に過ぎない。また、着脱自在な構造として嵌合やねじ込みなどの技術は周知慣用の技術である(必要とあらば、特開2004-154256号公報の段落【0010】ないし【0036】等を参照のこと)。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「超音波変換装置」についてさらに具体的に検討するに、上記2(2)ア(ア)の【0136】によれば、引用文献1には、「超音波画像化膣プローブを超音波動力治療装置と組み合わせることが望ましい場合は、2つの変換装置を、単一の内部変換装置走査アセンブリ上で互いに隣接する位置に設置する」と記載されていることから、引用発明の「超音波変換装置」は、2つの変換装置を備えるとはいえ、単一の超音波治療手段を構成しているものといえる。
してみれば、引用発明の「超音波変換装置」は、本件補正発明の「単一の超音波治療部」に相当するといえる。そうすると、上記相違点2は実質的な相違点であるとはいえないことになる。
また、仮に、引用発明の超音波変換装置が2つの変換装置からなるものであるとしても、上記2(2)イ(イ)cによれば、引用文献2には、超音波治療手段を構成する治療用超音波振動子は単一でも複数でも構わないことが記載されており、これを踏まえれば、引用発明の超音波変換装置を単一にするか複数にするかは、必要に応じて定めることのできる単なる設計事項に過ぎないといえる。

ウ 上記相違点3について検討する。
上記2(2)ウ(イ)aによれば、引用文献3に記載の技術は、人体組織の一部を引き締める(攣縮する)ため、超音波デバイスによって筋膜等を熱処置する際に、熱損傷が直線上に離隔されたドット形態となるよう生成するものである。
してみれば、引用発明と引用文献3に記載の技術は、人体の処置するために超音波エネルギーを利用する点で同じ技術の分野に属し、人体組織の一部を引き締める(攣縮する)という技術的課題が共通するものであることから、引用発明において、引用文献3に記載の技術を適用し、上記相違点3に係る本件補正発明のように構成することは、当業者にとって何ら困難性はない。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載の技術、引用文献3に記載の技術及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術、引用文献3に記載の技術及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年11月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年4月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2001-514921号公報
引用文献2:特開平7-227394号公報
引用文献3:特開2004-154256号公報(周知の技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「超音波治療部」について、「単一の」という限定事項を削除し、さらに「駆動機」について、「膣前後方向及び/又は回転方向に駆動させて膣内骨盤内筋膜に特定の方向に沿って離隔された複数のドット形態の熱的病変を形成する」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-21 
結審通知日 2018-11-27 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2016-531563(P2016-531563)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61N)
P 1 8・ 121- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 芦原 康裕
船越 亮
発明の名称 高強度集束超音波施術装置及びその施術方法  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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