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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1351095
審判番号 不服2018-9722  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-13 
確定日 2019-04-25 
事件の表示 特願2015-207854号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月27日出願公開、特開2017- 77431号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月22日に特許出願したものであって、平成29年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年4月13日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対して同年7月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成30年7月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成29年11月6日付け手続補正)の
「【請求項1】
A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されるときに、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する選択手段と、
C 前記有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報を表示する特別表示手段と、
D 前記特別表示手段において行なわれる変動表示に対応した演出をする演出変動表示を実行可能な演出表示手段と、
E 前記特別表示手段で表示する情報を決定する表示情報決定手段とを備え、
C-1 前記特別表示手段は、前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報を表示することが可能であり、
E-1 前記表示情報決定手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データと、所定条件で変化可能な第2数値データとを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定し、
C-2 前記特別表示手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記表示情報決定手段により決定された前記有利状態種類情報を表示する、
遊技機。」
から、補正後(本件補正である平成30年7月13日付け手続補正)の
「【請求項1】
A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されるときに、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する選択手段と、
C 前記有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報を表示する特別表示手段と、
D 前記特別表示手段において行なわれる変動表示に対応した演出をする演出変動表示を実行可能な演出表示手段と、
E 前記特別表示手段で表示する情報を決定する表示情報決定手段とを備え、
C-1 前記特別表示手段は、前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報を表示することが可能であり、
E-1 前記表示情報決定手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データと、所定条件で変化可能な第2数値データとを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定し、
C-2 前記特別表示手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記表示情報決定手段により決定された前記有利状態種類情報を表示し、
F 前記第1数値データおよび前記第2数値データとしては、一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される単独の数値データが直接的に用いられ、
E-2 前記表示情報決定手段は、前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の前記特定演算の演算結果により、前記有利状態種類情報を決定する、
遊技機。」
へ補正された(記号は分説のため当審で付した。下線は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1における、以下の事項に関する補正、すなわち、
(1)補正前の請求項1の発明特定事項である「第1数値データおよび第2数値データ」を、願書に最初に添付された明細書(以下、「出願当初明細書」という)の【0090】の「大当り表示結果となると判定されたときは、大当り種別判定用の抽出値のデータに基づく大当り種別記憶領域に記憶された大当り種別特定データを読み出し(S101)、さらに、表示用乱数用の抽出値のデータ(D2)を保留記憶情報から読出す(S102)」、【0091】の「次に、「大当り種別特定データ(D1)+総大当り種別数(固定値「11」)×表示用乱数用の抽出値のデータ(D2)=特定演算値」という特定演算式として特定演算値を演出する特定演算を実行する(S103)」との記載に基づいて、「一の前記有利状態に制御する可変表示に関連して読み出される単独の数値データが直接的に用いられ」という事項を追加することにより限定する補正、
(2)補正前の請求項1の発明特定事項である「前記表示情報決定手段」を、出願当初明細書の【0075】の「遊技制御用マイクロコンピュータ560では、大当り遊技状態に制御することが決定されたときに、第1数値データとしての大当り種別特定データ値と第2数値データとしての表示用乱数用データ値とを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果に基づいて、第1特別図柄表示装置8aおよび第2特別図柄表示装置8bのそれぞれにおける特別図柄の変動表示結果の表示パターンを決定する。」、【0091】の「次に、「大当り種別特定データ(D1)+総大当り種別数(固定値「11」)×表示用乱数用の抽出値のデータ(D2)=特定演算値」という特定演算式として特定演算値を演出する特定演算を実行する(S103)。そして、S103により得られた演算結果データとしての特定演算値をRAM55に設けられた表示パターン選択データ記憶領域に記憶させる(S104)。次に、表示パターン選択データ記憶領域に記憶された演出結果データに基づき、前述の表示パターン選択テーブルを用いて表示パターンを選択決定し」という記載に基づいて、有利状態種類情報を決定するにあたって「前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の前記特定演算の演算結果により」有利状態種類情報を決定することを限定する補正、である。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3.独立特許要件
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由において引用された、特開2011-143031号公報(以下、「刊行物1」という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ。)

ア 「【0052】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、一定の規則性をもちながら、汎用性に富み、データ量が膨大になることなく、遊技者に特別図柄を覚えさせにくくさせることができるぱちんこ遊技機を提供することを目的とする。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0053】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用した。括弧内の参照符号は、本発明の理解を容易にするために実施形態との対応関係を示したものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。この発明にかかるぱちんこ遊技機(100)は、遊技盤(101)上に設けられ、点灯表示する複数のランプからなる特別図柄表示ランプ(以下「特図表示ランプ」という)(231、232)と、前記特図表示ランプ(231、232)の近傍に、前記特図表示ランプ(231、232)と同等の形状を有して設けられて点灯する擬似表示ランプ(233、234)と、前記特別図柄表示ランプ(231、232)および前記擬似表示ランプ(233、234)を制御して、当たり判定の判定結果を特別図柄として表示させる主制御部(201)と、を備え、前記主制御部は(201)、前記各特図表示ランプ(231、232)をそれぞれ所定間隔にて点滅させることにより変動表示させ、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて前記特図表示ランプ(231、232)を停止表示させる特別図柄制御手段(301)と、前記擬似表示ランプ(233、234)の点灯を制御する擬似ランプ制御手段(302)と、を有し、前記擬似ランプ制御手段(302)は、前記擬似表示ランプ(233、234)の点灯または非点灯を示す表示パターンを、乱数に対応させて予め設定する設定手段(404)と、遊技球が始動入賞した際に取得された乱数を入力する入力手段(401)と、前記入力手段(401)によって入力された乱数に基づいて、前記設定手段(404)に設定されている表示パターンの設定内容を用いて、前記擬似表示ランプ(233、234)を点灯させるか否かの表示パターンを決定する決定手段(402)と、前記特別図柄制御手段(301)によって制御される前記特図表示ランプ(231、232)の変動表示に合わせて、前記擬似表示ランプ(233、234)を点滅させて変動表示させるとともに、前記特図表示ランプ(231、232)の停止表示に合わせて、前記決定手段(402)によって決定された表示パターンにて前記擬似表示ランプ(233、234)を停止表示させる点灯制御手段(403)と、を具備することを特徴とする。
【0054】
上記発明において、前記入力手段(401)は、前記特別図柄制御手段(301)によって始動入賞時に取得される、特別図柄の表示パターンを特定するための乱数(以下「特図表示パターン特定乱数」という)を入力し、前記決定手段(402)は、前記入力手段(401)によって入力された前記特図表示パターン特定乱数に基づいて、前記設定手段(404)に設定されている表示パターンの設定内容を用いて、前記擬似表示ランプ(233、234)の表示パターンを決定することを特徴とする。」

ウ 「【0061】
(ぱちんこ遊技機の基本構成)
まず、本発明の実施の形態にかかるぱちんこ遊技機の基本構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるぱちんこ遊技機の一例を示す正面図である。図1に示すように、本実施の形態のぱちんこ遊技機100は、遊技盤101を備えている。遊技盤101の下部位置には、発射部(図2中符号292参照)が配置されている。
・・・
【0063】
遊技盤101の略中央部分には、画像表示部104が配置されている。画像表示部104としては液晶表示器(LCD:Liquid Crystal Display)などが用いられる。画像表示部104の下方には第1始動口105が、画像表示部104の右側には第2始動口106が配設されている。
・・・
【0067】
第2始動口106の下方には、大入賞口109が配設されている。この大入賞口109も第2始動口106と同様に、第2始動口106は右打ちされた遊技球が通過する遊技盤101上の領域内に配置されている。大入賞口109は、大当たり遊技状態となったときに開放され、遊技球の入賞により所定個数(たとえば15個)の賞球を払い出すための入賞口である。
・・・
【0070】
特図1は、遊技球が第1始動口105へ入賞することによりおこなう第1当たり判定の判定結果をあらわす図柄である。特図2は、遊技球が第2始動口106へ入賞することによりおこなう第2当たり判定の判定結果をあらわす図柄である。第1当たり判定および第2当たり判定は、ぱちんこ遊技機100の遊技状態を大当たり遊技状態とするか否かの判定である。」

エ 「【0078】
(ぱちんこ遊技機の制御部の内部構成)
次に、図2を用いて、ぱちんこ遊技機100の制御部の内部構成について説明する。図2は、実施の形態にかかるぱちんこ遊技機100の制御部の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、ぱちんこ遊技機100の制御部200は、遊技の進行を制御する主制御部201と、演出内容を制御する演出制御部202と、賞球の払い出しを制御する賞球制御部203とを備えている。以下にそれぞれの制御部の構成について詳細に説明する。」

オ 「【0091】
(2.演出制御部)
演出制御部202は、演出統括部202aと、画像・音声制御部202bと、ランプ制御部202cとによって構成され、ぱちんこ遊技機100の演出内容を制御する機能を有する。演出統括部202aは、主制御部201から受信した各種コマンドに基づいて演出制御部202全体を統括する。画像・音声制御部202bは、演出統括部202aからの指示内容に基づいて画像および音声の制御をおこなう。また、ランプ制御部202cは、枠部材115および遊技盤101などに設けられたランプの点灯を制御する。
【0092】
(2-1.演出統括部)
まず、演出統括部202aの構成について説明する。演出統括部202aは、CPU241と、ROM242と、RAM243と、リアルタイムクロック(以下「RTC」という)244と、不図示の入出力インターフェース(I/O)などを備えて構成される。
【0093】
CPU241は、予めROM242に記憶された各種プログラムに基づき、演出内容を決定する処理を実行する。ROM242には、CPU241が上記の処理を実行するために必要となる変動演出プログラムなどの各種プログラムなどが記憶されている。RAM243は、CPU241のワークエリアとして機能するとともに、演出内容を示すデータなどが記憶されている。
【0094】
変動演出プログラムは、第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて演出図柄を変動させるとともに、特別図柄の停止に対応させて演出図柄を停止させるプログラムである。
・・・
【0096】
(2-2.画像・音声制御部)
次に、画像・音声制御部202bの構成について説明する。画像・音声制御部202bは、CPU251と、ROM252と、RAM253と、不図示の入出力インターフェース(I/O)などを備えて構成される。
・・・
【0099】
たとえば、CPU251は、演出統括部202aから指示された指示内容に基づいて、背景画像表示処理、演出図柄変動/停止表示処理、キャラクタ画像表示処理、文字画像表示処理などの各種画像処理と音声処理とを実行する。このときには、CPU251は、処理に必要な画像データおよび音声データをROM252から読み出してRAM253に書き込む。
【0100】
RAM252に書き込まれた背景画像や演出図柄画像などの画像データは、画像・音声制御部202bに接続された画像表示部104に対して出力され、画像表示部104の表示画面上に表示される。また、RAM253に書き込まれた音声データは、画像・音声制御部202bに接続されたスピーカ254に対して出力され、音声データに基づく音声がスピーカ254から出力される。」

カ 「【0112】
(特別図柄等表示部の一例)
第1特図表示ランプ231および第2特図表示ランプ232は、それぞれ8個のランプからなる。第1特図表示ランプ231および第2特図表示ランプ232を構成する8個のランプは、直線状に、不等間隔に配置されている。第1特図表示ランプ231および第2特図表示ランプ232は、各ランプが点灯または消灯することによって、特別図柄の表示パターンを表示する。」

キ 「【0116】
(ぱちんこ遊技機の機能的構成)
次に、図4-1を用いて、本実施の形態にかかる主制御部201の機能的構成について説明する。図4-1は、本実施の形態にかかる主制御部201の機能的構成を示すブロック図である。図4-1において、ぱちんこ遊技機100の主制御部201は、特別図柄制御部301と、擬似ランプ制御部302と、入力部401と、決定部402と、点灯制御部403、設定部404とを備えている。
【0117】
特別図柄制御部301は、特図表示ランプ231,232をそれぞれ所定間隔にて点滅させることにより変動表示させ、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて特図表示ランプ231,232を停止表示させる。また、特別図柄制御部301は、特別図柄の変動時間を示す情報や表示パターンの情報を演出統括部202aへ送信する。演出統括部202aは、これらの情報をコマンドとして受信することにより、特図表示ランプ231,232の変動停止に合わせて演出図柄を変動停止させる。擬似ランプ制御部302は、擬似表示ランプ233,234の点灯を制御する。」

ク 「【0152】
(タイマ割込処理)
次に、図5を用いて、主制御部201がおこなうタイマ割込処理について説明する。図5は、主制御部201がおこなうタイマ割込処理を示すフローチャートである。なお、タイマ割込処理は、電源供給期間中、所定期間(たとえば4ms)ごとに主制御部201が実行する主制御処理に割り込み動作する処理である。
【0153】
図5において、主制御部201のCPU211は、乱数更新処理をおこなう(ステップS501)。
・・・
【0156】
(始動口SW処理)
次に、図6を用いて、主制御部201がおこなう始動口SW処理について説明する。図6は、主制御部201がおこなう始動口SW処理を示すフローチャートである。なお、始動口SW処理は、図5のステップS502に示したスイッチ処理に含まれる処理内容である。
【0157】
図6において、主制御部201のCPU211は、第1始動口105の第1始動口SW221がONであるか否かを判定する(ステップS601)。第1始動口SW221がOFFである場合(ステップS601:No)、ステップS606に移行する。第1始動口SW221がONである場合(ステップS601:Yes)、第1始動口SW221の検知回数をカウントした第1始動口検知カウンタのカウント値U1が、「4」より小さいか否かを判定する(ステップS602)。
【0158】
カウント値U1が「4」である場合(ステップS602:No)、ステップS606に移行する。カウント値U1が「4」より小さい場合(ステップS602:Yes)、カウント値U1に「1」を加算する(ステップS603)。なお、カウント値U1は、RAM213に特1保留球数として記憶される。
【0159】
この後、乱数を取得するとともに、取得した乱数をRAM213に記憶する(ステップS604)。なお、乱数は、当たり乱数、大当たり図柄乱数、特図表示パターン特定乱数などである。当たり乱数は、大当たり、小当たり、ハズレ、のいずれかを決定するものであり、たとえば「0」?「299」の300個の乱数から1つの当たり乱数が無作為に取得される。
【0160】
大当たり図柄乱数は、大当たりの種類(通常大当たり、潜確大当たり、突確大当たり、確変大当たりなど)を決定するものであり、たとえば「0」?「199」の200個の乱数から1個の大当たり図柄乱数が無作為に取得される。特図表示パターン特定乱数は、特別図柄の表示パターンを特定するための乱数であり、たとえば「0」?「30」の31個の乱数から1個の特図表示パターン特定乱数が無作為に抽出される。上記のように取得された各乱数は、RAM213に記憶される。」

ケ 「【0164】
(特別図柄処理)
次に、図7を用いて、主制御部201が実行する特別図柄処理について説明する。図7は、主制御部201がおこなう特別図柄処理を示すフローチャートである。この特別図柄処理は、図5に示したステップS503の図柄処理に含まれる処理内容である。
・・・
【0168】
カウント値U1が1個以上ある場合(ステップS705:Yes)、カウント値U1を1個分減算したものを新たな保留球数とし(ステップS706)、ステップS707に移行する。ステップS707では、当たり判定処理をおこなう(ステップS707)。当たり判定処理は、遊技球が第1始動口105または第2始動口106に入賞した際に取得した当たり乱数が、予め設定される当たり乱数に一致するか否かを判定する処理であり、図8を用いて後述する。
【0169】
なお、ステップS703?ステップS706に示したように、第1始動口105に入賞した遊技球よりも、第2始動口106に入賞した遊技球が先に消化されるようになっている。この後、特図表示パターン選択処理をおこなう(ステップS708)。特図表示パターン選択処理は、第1特図表示ランプ231または第2特図表示ランプ232の表示パターンを選択する処理であり、詳細については図11を用いて後述する。
【0170】
この後、擬似表示パターン選択処理をおこなう(ステップS709)。擬似表示パターン選択処理は、第1擬似表示ランプ233または第2擬似表示ランプ234の表示パターンを選択する処理であり、詳細については図15を用いて後述する。この後、変動パターン選択処理をおこなう(ステップS710)。
【0171】
この変動パターン選択処理は、当たり判定処理の判定結果に応じて、特別図柄の変動パターンを選択する処理であり、詳細については図17を用いて後述する。そして、特別図柄の変動を開始するとともに(ステップS711)、変動開始コマンドをRAM213にセットする(ステップS712)。
【0172】
この後、特別図柄の変動時間が、変動パターン選択処理によって選択された変動時間が経過したか否かを判定する(ステップS713)。変動時間が経過していない場合には(ステップS713:No)、そのまま処理を終了する。変動時間経過した場合には(ステップS713:Yes)、特別図柄の変動を停止するとともに(ステップS714)、変動停止コマンドをセットする(ステップS715)。
・・・
【0174】
(当たり判定処理)
次に、図8を用いて、図7のステップS707に示した当たり判定処理について説明する。図8は、主制御部201がおこなう当たり判定処理を示すフローチャートである。
【0175】
図8において、主制御部201のCPU211は、始動口SW処理(図6参照)にて取得した当たり乱数が、予め設定される大当たり乱数に一致するか否かの当たり乱数判定処理をおこなう(ステップS801)。なお、当たり乱数判定処理では、図9を用いて後述する当たり乱数判定テーブルが用いられる。
【0176】
そして、当たり乱数判定処理の結果、大当たりであるか否かを判定する(ステップS802)。大当たりであると判定した場合(ステップS802:Yes)、入賞した始動口105,106に応じた大当たり図柄判定テーブルを用いて、大当たり図柄乱数判定処理をおこない(ステップS803)、処理を終了する。大当たり図柄乱数判定処理では、図10-1および図10-2を用いて後述する大当たり図柄判定テーブルを用いて、通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定する。」

コ 「【0193】
(特図表示パターン選択処理)
次に、図11を用いて、図7のステップS708に示した特図表示パターン選択処理について説明する。図11は、主制御部201がおこなう特図表示パターン選択処理を示すフローチャートである。
【0194】
図11において、主制御部201のCPU211は、当たりの種類を示す値を取得する(ステップS1101)。当たりの種類を示す値は、図9に示したコード901や、図10-1および図10-2に示したコード1003である。この後、表示パターン群を構成する表示パターンの所定数「31」を取得する(ステップS1102)。
【0195】
そして、ステップS1101にて取得した当たりの種類を示す値と、ステップS1102において取得した当たりの種類ごとの表示パターン数とを乗じることによって一の数値を算出する(ステップS1103)。たとえば、当たりの種類を示す値が2R突確大当たりBを示す「02」であるとすると、「02」を「2」として、「2×31」により=「62」を算出する。そして、図12を用いて後述する特図表示パターンテーブルを用いて、この算出した数値に相当する順序で記憶されている表示パターンを、基準パターンとして特定する(ステップS1104)。
【0196】
この後、始動口SW処理(図6のステップS604およびステップS609参照)にて取得した、「0?30」の中の1つである特図表示パターン特定乱数を参照し(ステップS1105)、基準パターンを起算点として、特図表示パターン特定乱数に相当する順序で記憶されている特図表示パターンを選択する(ステップS1106)。この後、選択した特図表示パターンをセットし(ステップS1107)、処理を終了する。
・・・
【0210】
(特図表示パターンを選択する際の具体的な手順)
次に、図14を用いて、特図表示パターンを選択する際の具体的な手順について説明する。図14は、特図表示パターンを選択する際の具体的な手順を示す説明図である。なお、ここで説明する内容は、図11の特図表示パターン選択処理にて説明した内容と同様の内容である。
【0211】
図14において、説明図1400は、順序1401と、特図表示パターン1402と、特図表示パターン特定乱数1403とからなる。順序1401は、記憶されている特図表示パターン1402の順番であり、説明の便宜上、記載しているが、データ量はない。順序1401は、具体的には、特図表示パターン1402に対応させて、「0?248」となっている。
【0212】
特図表示パターン1402は、図12の特図表示パターンテーブル1200に示したものと同等である。なお、図14において、特図表示パターン1402をあらわすLEDについては、点灯/消灯を図示していない。特図表示パターン特定乱数1403は、図13に示した、「0?30」の範囲の値であり、図11のステップS1105において参照される乱数である。
【0213】
当たり種類を示す値(図10-1および図10-2のコード1003)として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出する。そして、この「62」を順序1401とする特図表示パターン1213を特定する。
【0214】
この特定された特図表示パターン1213が、基準パターンである。そして、特図表示パターン特定乱数1403が「10」である場合、特図表示パターン1213を起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターン1402を選択する。このようにして、特図表示パターン1402が選択されるようになっている。」

サ 図14には以下の記載がある。




シ イの【0053】には「ぱちんこ遊技機・・・100・・・は、遊技盤・・・101・・・上に設けられ、点灯表示する複数のランプからなる特別図柄表示ランプ(以下「特図表示ランプ」という)・・・231、232・・・と、・・・前記特別図柄表示ランプ・・・を制御して、当たり判定の判定結果を特別図柄として表示させる主制御部・・・201・・・と、を備え、前記主制御部は・・・前記特別図柄表示ランプを制御して、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて前記特図表示ランプ・・・を停止表示させる特別図柄制御手段・・・301・・・を有し、」という記載、ウの【0063】には「遊技盤101の略中央部分には、画像表示部104が配置され」という記載、エの【0078】には「ぱちんこ遊技機100・・・は、遊技の進行を制御する主制御部201と、演出内容を制御する演出制御部202・・・とを備え」という記載、オの【0091】?【0094】には「演出制御部202は、演出統括部202aと、画像・音声制御部202bと、ランプ制御部202cとによって構成され、・・・演出統括部202aは、CPU241と、ROM242と、RAM243・・・などを備え・・・CPU241は、予めROM242に記憶された各種プログラムに基づき、演出内容を決定する処理を実行・・・ROM242には、CPU241が上記の処理を実行するために必要となる変動演出プログラムなどの各種プログラムなどが記憶され・・・変動演出プログラムは、第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて演出図柄を変動させるとともに、特別図柄の停止に対応させて演出図柄を停止させるプログラムであ」という記載、および【0096】?【0100】には「画像・音声制御部202bは、CPU251と、ROM252と、RAM253・・・などを備え・・・CPU251は、演出統括部202aから指示された指示内容に基づいて、・・・演出図柄変動/停止表示処理・・・を実行・・・このときには、CPU251は、処理に必要な画像データ・・・をROM252から読み出してRAM・・・に書き込・・・ RAM・・・に書き込まれた・・・演出図柄画像などの画像データは、画像・音声制御部202bに接続された画像表示部104に対して出力され、画像表示部104の表示画面上に表示される」という記載がある。
そうすると、刊行物1には「遊技盤101上に設けられ、点灯表示する複数のランプからなる特別図柄表示ランプ(以下「特図表示ランプ」という)231、232と、前記特別図柄表示ランプを制御して、当たり判定の判定結果を特別図柄として表示させる主制御部201」であって、「遊技の進行を制御する主制御部201と、」「演出内容を制御する演出制御部202とを備え」、「前記主制御部は、前記特図表示ランプを変動表示させ、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて前記特図表示ランプを停止表示させる特別図柄制御手段301を有し、」「遊技盤101の略中央部分には、画像表示部104が配置され」「演出制御部202は、演出統括部202aと、画像・音声制御部202bと、ランプ制御部202cとによって構成され、演出統括部202aは、CPU241と、ROM242と、RAM243などを備え」「CPU241は、予めROM242に記憶された各種プログラムに基づき、演出内容を決定する処理を実行」し、「ROM242には、CPU241が上記の処理を実行するために必要となる変動演出プログラムなどの各種プログラムなどが記憶され」「変動演出プログラムは、第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて演出図柄を変動させるとともに、特別図柄の停止に対応させて演出図柄を停止させるプログラムであ」り、「画像・音声制御部202bは、CPU251と、ROM252と、RAM253などを備え」、「CPU251は、演出統括部202aから指示された指示内容に基づいて、演出図柄変動/停止表示処理を実行」し、「このときには、CPU251は、処理に必要な画像データをROM252から読み出してRAMに書き込」み、「RAMに書き込まれた演出図柄画像の画像データは、画像・音声制御部202bに接続された画像表示部104に対して出力され、画像表示部104の表示画面上に表示される」「ぱちんこ遊技機100」が記載されているといえる。

ス クの【0152】?【0160】には、「主制御部201がおこなうタイマ割込処理・・・タイマ割込処理は、電源供給期間中、所定期間(たとえば4ms)ごとに主制御部201が実行する主制御処理に割り込み動作する処理である・・・主制御部201のCPU211は、乱数更新処理をおこなう・・・主制御部201が行う始動口SW処理・・・主制御部201のCPU211は、・・・この後、乱数を取得するとともに、取得した乱数をRAM213に記憶する・・・乱数は、・・・特図表示パターン特定乱数などであ・・・特図表示パターン特定乱数は、特別図柄の表示パターンを特定するための乱数であり、たとえば「0」?「30」の31個の乱数から1個の特図表示パターン特定乱数が無作為に抽出され・・・」という記載がある。
そうすると、刊行物1には、「主制御部201がおこなう、電源供給期間中、所定期間(例えば4ms)ごとに主制御部201が実行する主制御処理に割り込み動作する処理であるタイマ割込で、主制御部201のCPU211は、乱数更新処理をおこなう」ものであり、「主制御部201が行う始動口SW処理」では、「主制御部201のCPU211は、」「この後、乱数を取得するとともに、取得した乱数をRAM213に記憶する」ものであり、「乱数は、特図表示パターン特定乱数などであ」り、「特図表示パターン特定乱数は、特別図柄の表示パターンを特定するための乱数であり、たとえば「0」?「30」の31個の乱数から1個の特図表示パターン特定乱数が無作為に抽出され」ることについて記載されているといえる。

セ ウの【0067】、【0070】には、「大当たり遊技状態となったときに・・・遊技球の入賞により所定個数(たとえば15個)の賞球を払い出す」、「遊技球が第1始動口・・・へ入賞することによりおこなう第1当たり判定・・・第2始動口・・・へ入賞することによりおこなう第2当たり判定・・・第1当たり判定および第2当たり判定は、ぱちんこ遊技機100の遊技状態を大当たり遊技状態とするか否かの判定である」という記載がある。
そうすると、刊行物1には「遊技球が第1始動口へ入賞することによりおこなう第1当たり判定と第2始動口へ入賞することによりおこなう第2当たり判定であって、第1当たり判定および第2当たり判定は、ぱちんこ遊技機100の遊技状態を大当たり遊技状態とするか否かの判定であ」り、「大当たり遊技状態となったときに遊技球の入賞により所定個数(たとえば15個)の賞球を払い出す」ことが記載されているといえる。
また、ケの【0164】?【0176】には、「主制御部201がおこなう特別図柄処理・・・当たり判定処理をおこなう・・・この後、特図表示パターン選択処理をおこなう・・・この後、変動パターン選択処理をおこなう・・・この変動パターン選択処理は、当たり判定処理の判定結果に応じて、特別図柄の変動パターンを選択する処理であり、・・・特別図柄の変動を開始・・・変動時間経過した場合には・・・特別図柄の変動を終了する・・・主制御部201がおこなう当たり判定処理・・・主制御部201のCPU211は、始動口SW処理・・・にて取得した当たり乱数が、予め設定されている大当たり乱数に一致するか否かの当たり乱数判定処理をおこな・・・大当たりであるか否かを判定・・・大当たりであると判定した場合、・・・大当たり図柄乱数判定処理をおこない・・・通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定する」という記載がある。
そうすると、刊行物1には、「主制御部201がおこなう特別図柄処理」では「当たり判定処理をおこなう」ものであり、「この後、特図表示パターン選択処理をおこなう」ものであり、「この後、変動パターン選択処理をおこなう」ものであって、「この変動パターン選択処理は、当たり判定処理の判定結果に応じて、特別図柄の変動パターンを選択する処理であり」、「特別図柄の変動を開始」し、「変動時間経過した場合には特別図柄の変動を終了する」ものであって、「主制御部201がおこなう当たり判定処理」では「主制御部201のCPU211は、始動口SW処理にて習得した当たり乱数が、予め設定されている大当たり乱数に一致するか否かの当たり乱数判定処理をおこな」い、「大当たりであるか否かを判定」し、「大当たりであると判定した場合、大当たり図柄乱数判定処理をおこない通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定する」ことが記載されているといえる。

ソ コの【0193】?【0214】には、「主制御部201がおこなう特図表示パターン選択処理・・・主制御部201のCPU211は、当たりの種類を示す値を取得・・・表示パターン群を構成する表示パターンの所定数「31」を取得・・・取得した当たりの種類を示す値と、・・・取得した当たりの種類ごとの表示パターン数とを乗じることによって一の数値を算出・・・特図表示パターンテーブルを用いて、この算出した数値に相当する順序で記憶されている表示パターンを、基準パターンとして特定・・・「0?30」の中の1つである特図表示パターン特定乱数を参照し・・・、基準パターンを起算点として、特図表示パターン特定乱数に相当する順序で記憶されている特図表示パターンを選択・・・選択した特図表示パターンをセット・・・当たり種類を示す値・・・として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出・・・この「62」を順序・・・とする特図表示パターン1213を特定・・・特図表示パターン特定乱数・・・が「10」である場合、特図表示パターン1213・・・を起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターン・・・を選択」という記載がある。
そうすると、刊行物1には、「主制御部201がおこなう特図表示パターン選択処理」では、「主制御部201のCPU211は、当たりの種類を示す値を取得」し、「表示パターン群を構成する表示パターンの所定数「31」を取得」し、「取得した当たりの種類を示す値と、取得した当たりの種類ごとの表示パターン数とを乗じることによって一の数値を算出」し、「特図表示パターンテーブルを用いて、この算出した数値に相当する順序で記憶されている表示パターンを、基準パターンとして特定」し、「「0?30」の中の1つである特図表示パターン特定乱数を参照し、基準パターンを起算点として、特図表示パターン特定乱数に相当する順序で記憶されている特図表示パターンを選択し、選択した特図表示パターンをセットするものであり、当たり種類を示す値として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターン1213を特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターン1213を起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターンを選択」することが記載されているといえる。
さらに、サの図14から明らかなように、「62」を順序とする特図表示パターン1213を起算点として11番目に記憶されている特図表示パターンとは、特図表示パターン1213を1番目とした場合の11番目に記憶されている特図表示パターンであるが、この特図表示パターンは順序「72」を有する特図表示パターン1404である。

上記の記載事項ア?サおよび認定事項シ?ソから、刊行物1には、
「遊技盤101上に設けられ、点灯表示する複数のランプからなる特別図柄表示ランプ(以下「特図表示ランプ」という)231、232と、前記特別図柄表示ランプを制御して、当たり判定の判定結果を特別図柄として表示させる主制御部201であって、遊技の進行を制御する主制御部201と、
演出内容を制御する演出制御部202とを備え、
前記主制御部は前記特図表示ランプを変動表示させ、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて前記特図表示ランプを停止表示させる特別図柄制御手段301を有し、
遊技盤101の略中央部分には、画像表示部104が配置され、
演出制御部202は、演出統括部202aと、画像・音声制御部202bと、ランプ制御部202cとによって構成され、
演出統括部202aは、CPU241と、ROM242と、RAM243などを備え、CPU241は、予めROM242に記憶された各種プログラムに基づき、演出内容を決定する処理を実行し、ROM242には、CPU241が上記の処理を実行するために必要となる変動演出プログラムなどの各種プログラムなどが記憶され、変動演出プログラムは、第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて演出図柄を変動させるとともに、特別図柄の停止に対応させて演出図柄を停止させるプログラムであり、
画像・音声制御部202bは、CPU251と、ROM252と、RAM253などを備え、CPU251は、演出統括部202aから指示された指示内容に基づいて、演出図柄変動/停止表示処理を実行し、このときには、CPU251は、処理に必要な画像データをROM252から読み出してRAMに書き込み、RAMに書き込まれた演出図柄画像の画像データは、画像・音声制御部202bに接続された画像表示部104に対して出力され、画像表示部104の表示画面上に表示される、
ぱちんこ遊技機100(認定事項シ)であって、
主制御部201がおこなう、電源供給期間中、所定期間(例えば4ms)ごとに主制御部201が実行する主制御処理に割り込み動作する処理であるタイマ割込で、主制御部201のCPU211は、乱数更新処理をおこなうものであり、
主制御部201が行う始動口SW処理では、主制御部201のCPU211は、この後、乱数を取得するとともに、取得した乱数をRAM213に記憶するものであり、乱数は、特図表示パターン特定乱数などであり、特図表示パターン特定乱数は、特別図柄の表示パターンを特定するための乱数であり、たとえば「0」?「30」の31個の乱数から1個の特図表示パターン特定乱数が無作為に抽出され、(認定事項ス)
主制御部201がおこなう特別図柄処理では当たり判定処理をおこなうものであり、この後、特図表示パターン選択処理をおこなうものであり、この後、変動パターン選択処理をおこなうものであって、この変動パターン選択処理は、当たり判定処理の判定結果に応じて、特別図柄の変動パターンを選択する処理であり、特別図柄の変動を開始し、変動時間経過した場合には特別図柄の変動を終了するものであって、遊技球が第1始動口へ入賞することによりおこなう第1当たり判定と第2始動口へ入賞することによりおこなう第2当たり判定であって、第1当たり判定および第2当たり判定は、ぱちんこ遊技機100の遊技状態を大当たり遊技状態とするか否かの判定であり、大当たり遊技状態となったときに遊技球の入賞により所定個数(たとえば15個)の賞球を払い出すものであり、
主制御部201がおこなう当たり判定処理では主制御部201のCPU211は、始動口SW処理にて取得した当たり乱数が、予め設定されている大当たり乱数に一致するか否かの当たり乱数判定処理をおこない、大当たりであるか否かを判定し、大当たりであると判定した場合、大当たり図柄乱数判定処理をおこない通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定するものであり、(認定事項セ)
主制御部201がおこなう特図表示パターン選択処理では、主制御部201のCPU211は、当たりの種類を示す値を取得し、表示パターン群を構成する表示パターンの所定数「31」を取得し、取得した当たりの種類を示す値と、取得した当たりの種類ごとの表示パターン数とを乗じることによって一の数値を算出し、特図表示パターンテーブルを用いて、この算出した数値に相当する順序で記憶されている表示パターンを、基準パターンとして特定し、「0?30」の中の1つである特図表示パターン特定乱数を参照し、基準パターンを起算点として、特図表示パターン特定乱数に相当する順序で記憶されている特図表示パターンを選択し、選択した特図表示パターンをセットするものであり、当たり種類を示す値として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターン1213を特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターン1213を起算点として、11番目に記憶されている、順序「72」の特図表示パターン1404を選択する、(認定事項ソ)
ぱちんこ遊技機100。」

という発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されていると認める。

(2)本件補正発明と刊行物1発明との対比及び判断

本件補正発明と刊行物1発明とを対比する。(記号は本件補正発明の発明特定事項に対応させて付した。)

(A) 刊行物1発明における「ぱちんこ遊技機100」は、「特図表示ランプを変動表示させ」るものであり、「主制御部201がおこなう当たり判定処理では、主制御部201のCPU211は、始動口SW処理にて取得した当たり乱数が、予め設定されている大当たり乱数に一致するか否かの当たり乱数判定処理をおこない、大当たりであるか否かを判定し、大当たりであると判定した場合」、「大当たり遊技状態とな」り、「遊技球の入賞により所定個数の賞球を払い出す」ことから、「大当たりであると判定した場合」「遊技球の入賞により所定個数の賞球を払い出す」「大当たり遊技状態とな」るが、遊技球の入賞により賞球を払い出す状態は遊技者にとって有利な状態であるといえるから、本件補正発明同様に「変動表示を行ない」、「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」な「遊技機」であるといえる。

(B) 刊行物1発明では「主制御部201がおこなう当たり判定処理では」「大当たりであると判定した場合、大当たり図柄乱数判定処理をおこない通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定する」ことから、本件補正発明同様に「有利状態に制御される時に、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する」ものであり、刊行物1発明の「大当たり図柄乱数判定処理」を行う「主制御部201」は本件補正発明の「前記有利状態に制御されるときに、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する選択手段」に相当する。

(C)、(C-1) 刊行物1発明における「特図表示ランプ231、232」について、「前記特図表示ランプを変動表示させ、当たりの判定結果に応じた表示パターンにて前記特図表示ランプを停止表示させる特別図柄制御手段301」は、「大当たりであると判定した場合」には、「通常大当たり、突確大当たり、潜確大当たり、確変大当たりなどの、大当たりの種類を判定」し、それに応じた表示パターンにて特図表示ランプを停止表示させるものであることから、該「表示パターン」を表示する「特図表示ランプ231、232」は「有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報」である。また、該特図表示ランプにおいて停止表示される「表示パターン」は、「当たり判定処理をおこなうものであり、この後、特図表示パターン選択処理をおこなう」「特別図柄処理」をおこなう「主制御部201」により判定された「大当たりの種類」に応じた「表示結果を特定可能な」「情報」といえるが、この「情報」が本件補正発明における「前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報」に相当する。
そうすると、刊行物1発明における「特図表示ランプ231,232」は本件補正発明における「有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報を表示する特別表示手段」であって、「前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報を表示することが可能である」「特別表示手段」に相当する。
(E)、(C-2) また、刊行物1発明における「当たり判定処理をおこな」い、「その後特図表示パターン選択処理をおこなう」「主制御部201」は、本件補正発明における「特別表示手段で表示する情報を決定する表示情報決定手段」に相当し、刊行物1発明における「特図表示ランプ231、232」は、本件補正発明における「前記有利状態に制御されるときに前記表示情報決定手段により決定された前記有利状態種類情報を表示する」「特別表示手段」に相当する。

(D) 刊行物1発明における「演出統括部202aは、CPU241と、ROM242と、RAM243などを備え、」「CPU241は、予めROM242に記憶された各種プログラムに基づき、演出内容を決定する処理を実行し、」「ROM242には、CPU241が上記の処理を実行するために必要となる変動演出プログラムなどの各種プログラムなどが記憶され、変動演出プログラムは、第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて演出図柄を変動させるとともに、特別図柄の停止に対応させて演出図柄を停止させる」ものであり、「画像・音声制御部202bは、CPU251と、ROM252と、RAM253などを備え、CPU251は、演出統括部202aから指示された指示内容に基づいて、演出図柄変動/停止表示処理を実行し、このときには、CPU251は、処理に必要な画像データをROM252から読み出してRAMに書き込み、RAMに書き込まれた演出図柄画像の画像データは、画像・音声制御部202bに接続された画像表示部104に対して出力され、画像表示部104の表示画面上に表示される」ことから、「画像表示部104」は「第1特図表示ランプ231や第2特図表示ランプ232に表示される特別図柄の変動に対応させて」「演出図柄画像の画像データ」を表示するものということができ、本件補正発明の「前記特別表示手段において行なわれる変動表示に対応した演出をする演出変動表示を実行可能な演出表示手段」に相当する。

(E-1) 刊行物1発明における「当たり判定処理で」「大当たりであると判定した」場合の「特別図柄処理」における「特図表示パターン選択処理」において、当たり種類を示す値として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターンを特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターンを起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターンを選択するところ、この特図表示パターン選択処理において用いられる、「当たりの種類を示す値」は本件補正発明の「有利状態の種類を特定可能な第1数値データ」に相当し、「特図表示パターン特定乱数」は所定期間毎のタイマ割込で更新される乱数の1つであるから、本件補正発明の「所定条件で変化可能な第2数値データ」に相当する。
また、刊行物1発明において、当たり種類を示す「02」とパターン群を構成する所定数31とによって「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターン1213を起算点として、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、11番目に記憶されている、順序「72」の特図表示パターン1404を選択するという処理を行う「主制御部201」は、本件補正発明における「有利状態に制御されるときに、前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データと、所定条件で変化可能な第2数値データとを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定」する処理を行う「表示情報決定手段」に相当する。
(E-2’) さらに、刊行物1発明における上記処理を行う「主制御部」と、本件補正発明における上記(E-1)の「決定」する処理を行う「表示情報決定手段」は、「前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた前記特定演算の演算結果により、有利状態種類情報を決定する」ものである点で共通している。

(F’) 刊行物1発明において「当たり判定処理で」「大当たりであると判定した」場合の「特別図柄処理」における「特図表示パターン選択処理」において取得される、「当たり種類を示す値」と「特図表示パターン特定乱数」は、いずれも「主制御部201がおこなう特別図柄処理」における「特図表示パターン選択処理」において取得されるものであり、該「特別図柄処理」ではその後「特別図柄の変動を開始」し、「変動時間経過した場合には」「特別図柄の変動を停止する」ことから、本件補正発明の「第1数値データ」と「第2数値データ」とは、「一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される数値データ」として用いられている点で共通している。

以上のことから、本件補正発明と刊行物1発明は

「A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されるときに、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する選択手段と、
C 前記有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報を表示する特別表示手段と、
D 前記特別表示手段において行なわれる変動表示に対応した演出をする演出変動表示を実行可能な演出表示手段と、
E 前記特別表示手段で表示する情報を決定する表示情報決定手段とを備え、
C-1 前記特別表示手段は、前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報を表示することが可能であり、
E-1 前記表示情報決定手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データと、所定条件で変化可能な第2数値データとを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定し、
C-2 前記特別表示手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記表示情報決定手段により決定された前記有利状態種類情報を表示し、
F’ 前記第1数値データおよび前記第2数値データとしては、一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される数値データが用いられ、
E-2’ 前記表示情報決定手段は、前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた前記特定演算の演算結果により、前記有利状態種類情報を決定する、
遊技機。」

の点で一致する。

一方、両者は以下の点で一応相違する。

(相違点1) 「前記第1数値データおよび前記第2数値データとしては、一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される数値データが用いられ」ることについて、本件補正発明における「可変表示に関連して読み出される数値データ」である「第1数値データおよび第2数値データ」は、「単独の」「直接的に用いられる数値データ」であるのに対して、刊行物1発明における「当たりの種類を示す値」と「特図表示パターン特定乱数」は、「単独の」「直接的に用いられる数値データ」であるかどうかは明らかではない点。

(相違点2) 「前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた前記特定演算の演算結果により、前記有利状態種類情報を決定する」「表示情報決定手段」について、本件補正発明は「1回の前記特定演算の演算結果」により「有利状態種類情報を決定する」のに対して、刊行物1発明は当たりの種類を示す値と特図表示パターン特定乱数を用いた1回の特定演算の演算結果により特図表示パターン1404を選択するのかどうか明らかではない点。

まず、相違点1について検討する。
刊行物1発明の「当たりの種類を示す値」と「特図表示パターン特定乱数」について、「当たりの種類を示す値」は始動口SW処理にて取得された当たり乱数が予め設定されている大当たり乱数に一致するか否かの当たり判定処理において大当たりであると判定した場合の大当たりの種類によって決まる値であり、特図表示パターン選択処理によって取得されるものである一方、「特図表示パターン特定乱数」は大当たり乱数同様に始動口SW処理にて取得されるものの、大当たり乱数とは別の乱数であり、さらに、「当たりの種類を示す値」と「特図表示パターン特定乱数」はどちらか一つに対応して定まるというような従属する関係があるデータではなく、両者は無関係に取得されるデータであることは明らかであり、この点で本件補正発明の第1数値データおよび第2数値データと同じく「単独で取得される」ものといえる。
また、刊行物1発明の「当たり種類を示す値として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターンを特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターン1213を起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターンを選択する」処理は、順序「62」の特図表示パターンを1番目として、11番目に記憶されている特図表示パターン1404を選択するものであるが、該11番目に記憶されている特図表示パターン1404とは図14における順序「72」の特図表示パターンである。
とすると、刊行物1発明の上記処理において、「当たりの種類を示す値(2)×パターン群を構成する所定数(31)+特図表示パターン(10)」という処理をおこなって得られる「72」という値を得ているが、これは本件補正発明同様に「第1数値データおよび第2数値データ」が「直接的に用いられ」ているといえる。
そうすると、相違点1は実質的なものではない。

次に、相違点2について検討する
本件補正発明における「第1数値データおよび第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算」とは、本願明細書【0091】の「「大当り種別特定データ(D1)+総大当り種別数(固定値「11」)×表示用乱数用の抽出値のデータ(D2)=特定演算値」という特定演算式として特定演算値を演出する特定演算を実行する」という記載の特定演算式に限定されることなく、「第1数値データと第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の演算」であればよい。
また、刊行物1発明の「当たり種類を示す値として、「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターンを特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターン1213を起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターンを選択する」処理は、上記検討したとおり、「当たりの種類を示す値(2)×パターン群を構成する所定数(31)+特図表示パターン(10)」という処理、すなわち1回の演算、をおこなって得られる「72」という順序が付された特図表示パターンを選択する処理であるともいえ、これは本件補正発明の「第1数値データと第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定する」ことに含まれるものである。
そうすると、相違点2も実質的なものではない。
また、仮にこの処理を1回の演算で行うことは明記されておらず、上記相違点2が実質的な相違点であるとしても、「当たりの種類を示す値×パターン群を構成する所定数+特図表示パターン」のような積和演算を1回の演算で行うこと自体は周知の演算方法にすぎず、そのような周知の演算方法として構成することによる効果も予測可能な程度のものにすぎないものであり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内にすぎない。

(3)小括
以上のとおり、本件補正発明は、刊行物1発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)審判請求人の主張について
審判請求人は平成30年7月13日付け審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」の「(ii) 本願発明と引用文献との相違点」において、以下のとおり主張している。

ア 「引用文献1には、1回目の演算として、大当り種別に対応する数値と、0?31の中から抽選される特図パターン特定乱数とを用いた演算を実行した後、2回目の演算として、1回目の演算にさらに加算演算をする演算を実行することが記載されています。
そして、特に、2回目の演算においては、演算結果を特図表示パターンの基準パターンとし、さらに、基準パターンの数値にさらに加算演算をして、その演算結果に対応する表示パターンを特図表示パターンとして決定する演算が実行されます。
このような引用文献1の演算について、審査官殿は、次のように指摘されています。
「引用文献1(特に、段落[0137]-[0142]参照)では、たとえば、乱数取得部416によって取得された特図表示パターン特定乱数が「3」である場合、当該乱数に応じた順序は「4」となり、表示パターン(「有利状態種類情報」に相当)を選択する際に、「所定数×当たりの種別を示す値(「前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データ」に相当)+4(「所定条件で変化可能な第2数値データ」に相当)との演算を行っており、当該演算は、第1数値データと第2数値データを含んで構成される演算である」。
このように、引用文献1に記載された演算につきましては、第1数値データに相当する値が乱数取得部416によって取得された特図表示パターン特定乱数(基準パターンの数値)であり、第2数値データに相当する値が当該乱数に応じた順序に相当する値を加算した値であると認定されています。したがいまして、引用文献1の場合の第2数値データは、第1数値データに対応して定まるというような、第1数値データに従属する関係があるデータであって、第1数値データと無関係に単独で取得される独立的なデータではありません。
これに対し、本願請求項1においては、今回の補正により、第1数値データおよび第2数値データが、前記(I)の構成のように、「一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される単独の数値データが直接的に用いられ」ることが明確化されました。
したがいまして、本願請求項1においては、特定演算に用いられる第1数値データおよび第2数値データが「一の有利状態に制御される可変表示に関連して読出され直接的に用いられる単独の数値データ」であり、引用文献1の演算で用いられる2つの数値データのような従属性がある数値データとは異なる点で、特定演算に用いられる数値データに関する引用文献1との構成の差異が明確となりました。」

イ 「さらに、本願請求項1においては、今回の補正により、表示情報決定手段が、前記(J)の「前記表示情報決定手段は、前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の前記特定演算の演算結果により、前記有利状態種類情報を決定する」という構成をさらに限定したことで、第1数値データおよび第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算を行なうことが明確化されました。これにより、特定演算に用いる数値データの内容および特定演算を行なう回数に関して、本願請求項1の構成と引用文献1の構成との差異がより一層明確化されました。」

ウ 「このような本願請求項1における前記(I),(J)の構成は、引用文献1において、開示も示唆もされていません。
そして、本願請求項1に記載の発明では、第1数値データおよび第2数値データとして、一の有利状態に制御される可変表示に関連して読出される単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算を用いて有利状態種類情報を決定することにより、有利状態種類情報を決定するための処理速度の高速化、および、演算処理負担の軽減が実現できるという、引用文献1の構成からは得られない、特有の効果を得ることが可能となります。」

そこで、上記主張について検討する。

アについて、刊行物1発明の「当たりの種別を示す値」「特図表示パターン」を本件補正発明の「第1数値データ」「第2数値データ」に相当するものであるが、上記(2)において検討したとおり、「特図表示パターン特定乱数」は、「当たりの種別を示す値」に対応して定まるというような、「第1数値データに従属する関係があるデータ」ではなく、「第1数値データと無関係に単独で取得される独立的なデータ」である。
また、同じく上記(2)において検討したとおり、刊行物1発明における「当たりの種別を示す値」と「特図表示パターン特定乱数」を用いた特図表示パターン選択処理において、本件補正発明の「単独の数値データが直接的に用いられ」るという発明特定事項に相当する構成を具備するものである。

イについて、同じく上記(2)において検討したとおり、刊行物1発明の「「02(2R突確大当たりB)」を取得した場合、この値と、パターン群を構成する所定数「31」とによって、「2×31」より「62」という数値を算出し、この「62」を順序とする特図表示パターンを特定し、特図表示パターン特定乱数が「10」である場合、特図表示パターンを起算点として、11番目に記憶されている特図表示パターンを選択する」処理は、「当たりの種類を示す値(2)×パターン群を構成する所定数(31)+特図表示パターン(10)」という処理をおこなって得られる「72」という順序が付された特図表示パターンを選択するものであり、本件補正発明の「第1数値データと第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定する」ことに含まれるものであるか、仮に1回の特定演算の演算結果によることが明らかではないとしても、「当たりの種類を示す値×パターン群を構成する所定数+特図表示パターン」のような積和演算を1回の演算で行うこと自体は周知の演算方法であり、その効果も予測可能な程度のものにすぎないものであって、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内にすぎない。

ウについて、ア、イのとおり、「本願請求項1における前記(I),(J)の構成」すなわち本件補正発明の「F」「E-2」の発明特定事項は刊行物1発明においても具備されているか、または刊行物1発明から当業者が容易になし得たものであり、本件補正発明同様に「第1数値データおよび第2数値データとして、一の有利状態に制御される可変表示に関連して読出される単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の特定演算を用いて有利状態種類情報を決定することにより、有利状態種類情報を決定するための処理速度の高速化、および、演算処理負担の軽減が実現できる」ことは明らかである。

以上のとおり、審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-2に係る発明は、平成29年11月6日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 変動表示を行ない、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 前記有利状態に制御されるときに、複数種類の前記有利状態のうちからいずれかを選択する選択手段と、
C 前記有利状態に制御されるときに、変動表示をした後に表示結果を特定可能な特別表示結果情報を表示する特別表示手段と、
D 前記特別表示手段において行なわれる変動表示に対応した演出をする演出変動表示を実行可能な演出表示手段と、
E 前記特別表示手段で表示する情報を決定する表示情報決定手段とを備え、
C-1 前記特別表示手段は、前記選択手段により選択された前記有利状態の種類を特定可能な有利状態種類情報を表示することが可能であり、
E-1 前記表示情報決定手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記有利状態の種類を特定可能な第1数値データと、所定条件で変化可能な第2数値データとを用いた特定演算を実行し、当該特定演算の演算結果により前記有利状態種類情報を決定し、
C-2 前記特別表示手段は、前記有利状態に制御されるときに、前記表示情報決定手段により決定された前記有利状態種類情報を表示する、
遊技機。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願請求項1に係る発明は、引用文献1である特開2011-143031号公報(刊行物1)に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、または、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.刊行物1の記載及び刊行物1発明
刊行物1に記載されている、刊行物1発明の認定は上記「第2 平成30年4月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2.に記載した補正事項である、発明特定事項Fの「前記第1数値データおよび前記第2数値データとしては、一の前記有利状態に制御される可変表示に関連して読出される単独の数値データが直接的に用いられ」という事項、および発明特定事項E-2の「前記表示情報決定手段は、前記第1数値データおよび前記第2数値データによる単独の数値データ同士の数値データを用いた1回の前記特定演算の演算結果により、前記有利状態種類情報を決定する」という事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3.に記載したとおり、刊行物1発明と同一の発明であるか、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、刊行物1発明と同一の発明であるか、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願請求項2について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2019-02-21 
結審通知日 2019-02-26 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2015-207854(P2015-207854)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 美佐  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 田付 徳雄
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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