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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05B
管理番号 1351164
審判番号 不服2018-7197  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-28 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2015-189541「数値制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年4月6日出願公開、特開2017-68324、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月28日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年10月25日付け:拒絶理由通知
平成29年12月22日 :意見書の提出
平成30年 2月16日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 5月28日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年2月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?5に係る発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に示された一般的な技術水準及び引用文献3?4に示された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-295915号公報
2.特開2006-209483号公報(一般的な技術水準を示す文献)
3.特開2015-79342号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2014-115742号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1?5に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?5は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
数値制御装置と、工作機械の強電盤内に実装された複数台のI/Oユニットと、が接続された数値制御システムにおいて、
前記強電盤の外形および内部構造を示す形状情報と、少なくとも前記強電盤内のI/Oユニットの実装される位置および取り付けられる向きを示す実装情報と、を含む強電盤設計用のCADデータを記憶したCADデータ記憶手段と、
前記I/Oユニットの接続状況を記録するI/O割り付けデータを記憶したI/O割り付けデータ記憶手段と、
それぞれの前記I/Oユニットの前記I/O割り付けデータと前記実装情報との関連情報を記録する関連情報記憶手段と、
前記数値制御装置または前記I/Oユニットの不具合が発生した不具合発生部位を検出する故障検出手段と、
前記不具合発生部位に係る情報、前記I/O割り付けデータ、前記関連情報、および前記CADデータに基づいて、前記強電盤の形状イメージ上に不具合発生部位を表示する表示データを作成する表示手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御システム。
【請求項2】
前記複数台のI/Oユニットは前記数値制御装置とデイジーチェーン接続されており、前記I/O割り付けデータはI/Oの接続順番である、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御システム。
【請求項3】
前記故障検出手段は、少なくとも前記I/Oユニットの電源断を検出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御システム。
【請求項4】
前記故障検出手段は、少なくとも前記数値制御装置と前記I/Oユニット間、および前記I/Oユニット間のケーブル断線を検出する、
こと特徴とする請求項1?3のいずれか1つに記載の数値制御システム。
【請求項5】
前記実装情報には前記強電盤内に実装された複数台の前記I/Oユニット間のケーブルの配線経路の情報を含む、
ことを特徴とする請求項1?4のいずれか1つに記載の数値制御システム。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同)。

ア 段落【0009】
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された部品の交換または修理を通知または指示する機能を有する工作機械装置の数値制御装置は、工作機械装置の複数の部品および組体の三次元形状モデルにそれぞれ与えられた三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データをそれぞれ組体の単位で関連付けて記憶する記憶装置(40)と、それら前記部品または組体の三次元形状モデルを表示する表示装置(60)と、表示装置(60)に表示された部品の三次元形状モデルを移動操作する操作装置(31)と、操作装置(31)からの命令に従って属性のデータを組体の単位で解析して、解析されたデータに基づいて描画データを作成し、作成された描画データに基づいて表示装置(60)に組体の単位で部品を表示させる演算装置(70)と、を含む構成とする。」

イ 段落【0012】
「また、請求項3に記載された数値制御装置は、交換や修理が必要な部品および組体が検出信号に基づいて選択的に表示されるから、作業者の負担をより少なくすることができる。また、請求項4に記載された数値制御装置は、部品および組体ととともに異常のデータが同時に表示されるから、作業者は、組体および部品の構成と部品の消耗、汚れ、損傷など故障の原因とを視覚的にかつ具体的に理解することができる。」

ウ 段落【0013】
「【発明の実施の形態】図1は、本発明のコンピュータ機能付数値制御装置の実施の形態の一例を示しており、ワイヤカット放電加工装置に搭載された数値制御電源装置の立体構成図である。数値制御装置は、ワイヤカット放電加工装置の加工機本機に隣接される数値制御電源装置1の筐体の内部に配置される。数値制御電源装置1の筐体の空間内に図示しないフレームもしくはラックにボルト、ピン、ねじのような取付部材を用いて箱体やプリント基板で構成されるユニットが取り付けられる。取り付けられるユニットは、数値制御ユニット11、汎用制御ユニット12、加工用電源ユニット13、加工制御ユニット14、周辺機器制御ユニット15、表示ユニット16、操作パネルユニット17、ディスクドライブユニット18である。実際の構成では、各ユニットの部品がユニット単位で一体に設けられる必要はなく、同じユニットの部品であっても設計的に離れた位置に取り付けられることがある。なお、クーラユニットのような他のユニットは省略されている。」

エ 段落【0027】
「CADで作成された三次元形状モデルに与えられた属性データは、少なくとも、寸法、材質、名称、部品番号、定義を含む。定義データは、単位形状要素、境界、領域、座標のようなモデルを定義するために必要なデータを全て含む。本発明では、特にことわりがない限り、属性データは、三次元形状モデルに与えられた上記のデータを示す。」

オ 段落【0030】
「記憶装置40は、入出力装置20を通して汎用制御ユニット22の外から得られるデータと、後述する演算装置70の演算によって得られるデータを記憶し、数値制御電源装置2の電源が落とされた後でも記憶内容を保持する手段である。記憶装置40は、少なくとも、工作機械装置の複数の部品および組体の三次元形状モデルにそれぞれ与えられたCADにおける属性データをそれぞれ組体の単位で関連付けて記憶する。記憶装置40は、多数の部品および組体の三次元形状モデルに与えられた属性データ以外に数値制御電源装置2の他の機能を動作させるために必要なデータが記憶されるので、比較的記憶容量が大きいハードディスクドライブ(HDD,Hard Disc Drive)と専用のインターフェース(E-IDE,SCSI,USB)を含んだ構成が採用されている。また、HDDは衝撃や振動にそれほど強くないため、いくつかのフラッシュメモリ(EAROM,Electrically Alterable Read Only Memory)を使用することができる。」

カ 段落【0032】
「表示装置60は、少なくとも、図1に示される汎用制御ユニット12のグラフィック専用のバス(AGP,Accelerated Graphics Port Bus)と、グラフィック専用のバススロットと、そのバススロットに取り付けられたグラフィックスボード(ビデオカード)と、表示ユニット16に設けられているLCDを含んで構成されている。表示装置60は、部品または組体の三次元形状モデルを表示することができる。グラフィックボードは、専用のLSIと画像処理に適するVRAM(Video RAM)のようなDRAM(Dynamic RAM)を搭載し、描画のための表示データ、例えば、部品の三次元形状の描画データを表示可能にLCDに転送するもので、三次元形状モデルを動的に表示する本発明の数値制御装置に適している。」

キ 段落【0044】
「部品管理手段74は、検出信号処理手段741、表示命令手段742、データ送信手段743を含んでなる。検出信号処理手段741は、加工機本機または数値制御電源装置1に適宜設けられた検出装置から周辺機器を含む加工機本機または数値制御電源装置の異常に関する検出データを得て、検出データを解析し、異常の発生場所と異常の種類を特定する。表示命令手段742は、検出信号処理手段741からの要求または操作装置21から入力される要求に基づいて、描画データ作成手段714を通して表示装置60にコメントを表示させ、またはデータ解析手段722を通して特定の組体と部品の三次元形状モデルに与えられた属性データを解析させる。データ送信手段743は、作業者が操作装置21を通して交換部品の発注またはサービスの依頼を要求したときに、表示装置60に表示されている特定の部品または組体の三次元形状モデルに与えられた属性データを通信制御手段715に与えて、通信装置30を通して離れた位置にあるコンピュータに転送する。」

ク 段落【0045】
「図3乃至図6は、実施の形態の数値制御電源装置におけるデータの表示および複数の部品の表示の例を示している。図3はワイヤカット放電加工装置の下側ガイド装置のファイル形式のデータが表示されている状態を、図4はワイヤカット放電加工装置の加工機本機の画像が表示されている状態を、図5および図6は下側ガイド装置の三次元形状モデルが表示されている状態を示している。図4は通電体が消耗して寿命に達していることを作業者に知らせるために下側ガイド装置の位置が表示されているとき、図5は複数の部品で構成された下側ガイド装置の全体が表示されているとき、図6は表示装置のディスプレイ上で通電体を下側ガイド装置から抜き出す操作をしているときを示す。以下、図3乃至図6を参照して、本発明の数値制御装置の動作を説明する。」

ケ 段落【0047】
「図3に示される加工機本機または図1に示される数値制御電源装置1に設けられた図示しないいくつかの検出装置からの検出信号は、図1に示される数値制御ユニット11によりデータ化され検出信号処理手段741に入力される。または、検出装置からの検出信号は、汎用制御ユニット12の特定のバススロットまたはピンジャックを通して検出信号処理手段741に入力される。検出信号処理手段741に入力される検出信号は、検出信号処理手段741によって出力元が判別され、加工機本機または数値制御電源装置の場所、特定の組体、異常の種類と原因が識別されてデータ化される。検出装置は、具体的には、例えば、フィルタの圧力を検出する装置、加工液の液面を検出する装置、放電加工回路の通電状態を検出する装置である。」

コ 段落【0048】
「検出信号処理手段741は、所定の演算プロセスに従って、検出データを解読し、少なくとも、異常が発生している加工機本機または数値制御電源装置の場所、特定の組体、異常の種類と原因を含むインフォメーションデータを作成し、記憶装置30および記憶装置40に記憶させる。また、検出信号処理手段741は、作成されたインフォメーションデータに基づいて記憶装置30から所定のコメントデータを読み出し、描画データ作成手段714を通して表示装置60に異常の発生を示すコメントを表示する。」

サ 段落【0049】
「作業者が表示装置60のディスプレイに表示されているコメントを確認し、図3に示されるような表示装置60のディスプレイに表示されている「装置」のボタンを操作装置21のタッチパネルで操作すると、加工機本機または数値制御電源装置の筐体の内部の写真画像が表示される。例えば、下側ガイド装置の通電体の消耗が判別されたときは、表示命令手段742は、操作装置21からの命令に従って、記憶装置40に記憶されている検出信号処理手段741で得られたインフォメーションデータを得て、記憶装置40に予め記憶されている加工機本機の写真の画像データとマークのデータとを関連付けて描画データ作成手段714に与える。描画データ作成手段714は、与えられたデータから描画データを作成し、表示装置60に出力する。その結果、例えば図4に示されるように、ディスプレイ上に加工機本機全体の写真画像が表示される。」

シ 段落【0057】
「【発明の効果】以上に説明されるように、本発明の数値制御装置は、設計者がCADで作成した部品および組体の三次元形状モデルに与えられた属性データを使用できるので、新たに表示のための部品および組体のデータを作成する必要がない。そして、属性データを組体の単位で関連付けて記憶させておき、異常の発生に関係がある特定の組体および部品の属性データを解析して描画データに変換し部品の単位で操作可能にディスプレイに表示することができるので、ユーザの作業者やメーカのサービス担当者は、異常が発生した場所、特定の組体の構造、部品の取付状態と取外し方法を視覚的に容易に認知することができる。その結果、製造業者の負担を大きくすることなく、工作機械装置の作業性と数値制御装置の操作性が向上させることができる効果を奏する。」

ス 図4

セ 図5

(2)上記(1)での記載から,引用文献1には,次の技術的事項が開示されていると認められる。

ア 上記(1)ア及びウから、数値制御装置と、工作機械装置の複数の部品及び組体と、が接続された数値制御電源装置が開示されていると認められる。

イ 上記(1)ア、エ及びオから、組体及び部品の三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データには、寸法、名称、部品番号、単位形状要素、境界、領域、座標が含まれ、当該属性データが記憶手段40に記憶されることが開示されている。また、図4には、工作機械装置の外形及び内部構造を示す形状が示されている(上記(1)サ及びス参照)ことから、上記システムに当該形状情報を含むことは自明である。

ウ 上記(1)イ、キ、ケ及びコから、加工機本機または数値制御電源装置、組体及び部品の異常が発生した場所、構成を検出する検出装置が開示されている。

エ 上記(1)カ、コ、サ及びシから、異常が発生した場所に係る情報及び三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データに基づいて、工作機械装置の画像データ上に異常が発生した場所を表示する描画データを作成する描画データ作成手段714が開示されている。

(3)上記(2)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「数値制御装置と、工作機械装置の複数の部品及び組体と、が接続された数値制御電源装置において、
前記工作機械装置の外形及び内部構造を示す形状情報と、工作機械装置内の組体及び部品の寸法、単位形状要素、境界、領域、座標を含む三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データを記憶した記憶手段40と、
加工機本機または数値制御電源装置、組体及び部品の異常が発生した場所、構成を検出する検出装置と、
上記異常が発生した場所に係る情報、および三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データに基づいて、工作機械装置の画像データ上に異常が発生した場所を表示する描画データを作成する描画データ作成手段714と描画データを表示する表示装置と、
を備えた数値制御電源装置」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由において一般的な技術水準を示す文献として引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 段落【0002】
「周知のように、工作機械の盤内には、リレー、ファンモータ、バッテリ等、様々な要素(「部品」と呼ばれることもある)が実装されている。工作機械の盤内で故障が発生した場合、その故障個所(部品)の速やかな特定には要素に関連するアラーム情報を集中管理できることが望ましい。しかし、実際の盤内では要素のアラーム情報を集中管理するといった考えはなく、要素のアラーム情報は盤内に分散されているのが実情で、諸要素のアラーム情報を集中管理する発明を開示した公知文献は見当らない。従来より、要素のアラーム情報を個別に得るという手法は知られているが、もしもそれを拡張して多くの要素のアラーム情報等の集中管理を実現しようとすると、それら要素のすべてを有線で結合しなくてはならなくなり、盤内配線が煩雑になることやコスト高の問題で実現が難しかった。」

イ 段落【0008】
「図1は本発明の実施形態について説明する図で、工作機械の制御盤内の要部構成が記されている。工作機械は切削、穿孔等任意の加工を行うもので良い。制御盤全体は符号1で示されており、同制御盤1には数値制御装置2とともに強電盤10が組み込まれ、両者は周知の態様で電気的に接続されている。強電盤10内には、故障検出アラーム信号を出力するリレー、低電圧アラーム信号を出力するバッテリ、回転停止又は回転数低下アラーム信号と回転数を示すステータス信号を出力するファンモータ、及び、周囲の温度を計測し、計測結果を表わすステータス信号を出力する温度計が分散して実装されている。なお、温度計はセンサ要素の一例であり、温度計に加えて、あるいは、温度計に代えて、他のセンサ要素、例えば振動センサ、煙センサ等が配置される場合もある。」

ウ 段落【0010】
「上記した各要素、即ち、リレー、バッテリ、ファンモータ、及び、温度計にはそれぞれ無線タグが装備されている。無線タグ自体はメモリ機能、無線信号発信機能等を備えた周知のデバイスであり、各無線タグは、当該無線タグに対応する要素(リレー、バッテリ、ファンモータあるいは温度計)が出力するアラーム信号及び/またはステータス信号を一旦記憶するとともに、記憶内容を所定周期で無線信号に変換して発信する。

エ 段落【0011】
「発信された無線信号は、数値制御装置2に接続された受信デバイスで受信され、数値制御装置2に取り込まれる。数値制御装置2は、通常の制御(加工プログラムに基づく工作機械の各軸制御等)に加えて、諸要素のアラーム情報やステータス情報を集中管理する機能を有している。即ち、受信デバイスを介して数値制御装置2内に取り込まれた各要素のアラーム信号やステータス信号は、ソフトウェア処理により逐次内部メモリに記憶され、また、その全部あるいは一部が、付設された表示部(例えば液晶表示パネル)3上に表示される。」

オ 段落【0013】
「また、数値制御装置2には、ブザー(またはスピーカ)4が付設されており、アラーム信号を受けた時には警報音(ブザー音)によりアラーム発生を報知する。図示されている表示例の状態では、当然、警報音(ブザー音)が鳴り響き、作業者は遠くにいてもアラーム発生を知ることができる。表示部3上のアラーム情報の表示についても、赤色表示、点滅表示等を行うことができる。」

カ 段落【0014】
「このようにして、作業者はアラーム発生をブザー音(あるいは画面の点滅表示等の視認)で知ることになるが、その際、画面に表示された内容からアラーム要因を判断し、所要の装置をとることができる。上記の表示例のケースであれば、バッテリ1で低電圧アラームが発生していることを知り、機械の電源オフ、バッテリ1の交換等の処置をとる。」

キ 段落【0015】
「リレー、ファンモータについてもアラーム発生時には同様にブザー(またはスピーカ)4が鳴り、アラーム要因が表示部3に表示される。」

ク 図1


(2)上記(1)ア?エから、引用文献2には次の技術的事項(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)が開示されていると認められる。

「工作機械の強電盤内に配置されたリレー、ファンモータ、バッテリ、温度計等の要素(部品)からアラーム信号を受けた場合にアラーム発生を報知すること。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明との対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「工作機械装置」、「数値制御電源装置」、「寸法、単位形状要素、境界、領域、座標」、「三次元モデル設計支援システム(CAD,Computer Aided Design System)における属性データ」、「記憶手段40」、「異常が発生した場所」、「検出装置」、「上記異常が発生した場所に係る情報」、「画像データ」、「描画データ」、「描画データ作成手段714」及び「表示装置」は、それぞれ、本願発明1における「工作機械」、「数値制御システム」、「実装される位置および取り付けられる向きを示す実装情報」、「設計用のCADデータ」及び「CADデータ」、「CADデータ記憶手段」、「不具合が発生した不具合発生部位」及び「不具合発生部位」、「故障検出手段」、「前記不具合発生部位に係る情報」、「形状イメージ」、「表示データ」、「表示手段」に相当する。

イ 引用発明における「画像データ上に異常が発生した場所を表示する描画データを作成する描画データ作成手段714と描画データを表示する表示装置」は、描画データを作成して表示するという一連の手段を有しているから、上記アの相当関係を踏まえ、「形状イメージ上に不具合発生部位を表示する表示データを作成する表示手段」に相当すると認められる。

ウ 引用発明の「工作機械装置の複数の部品及び組体」と、本願発明1の「工作機械の強電盤内に実装された複数台のI/Oユニット」とは、「工作機械の複数の組体」という点で共通する。

エ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「数値制御装置と、工作機械の複数の組体と、が接続された数値制御システムにおいて、
形状情報と、前記工作機械内の組体の実装される位置および取り付けられる向きを示す実装情報と、を含むCADデータを記憶したCADデータ記憶手段と、
組体の不具合発生部位を検出する故障検出手段と、
前記不具合発生部位に係る情報、および前記CADデータに基づいて、形状イメージ上に不具合発生部位を表示する表示データを作成する表示手段と、
を備えた数値制御システム」

(相違点1)
本願発明1の数値制御システムには、工作機械の強電盤内に実装された複数台のI/Oユニットが接続され、強電盤の形状イメージ上に不具合発生部位を表示する表示データを作成する表示手段を備えているのに対して、引用発明では、工作機械装置(「工作機械」に相当)の画像データ(「形状イメージ」に相当)上に複数の部品及び組体の異常が発生した場所(「不具合発生部位」に相当)を表示させる点。

(相違点2)
本願発明1の数値制御システムは、I/Oユニットの接続状況を記録するI/O割り付けデータを記憶したI/O割り付けデータ記憶手段と、それぞれの前記I/Oユニットの前記I/O割り付けデータと前記実装情報との関連情報を記録する関連情報記憶手段とを備えるのに対して、引用発明では、I/Oユニットの接続状況を記録するI/O割り付けデータやI/O割り付けデータと前記実装情報との関連情報を有しない点。

(2)相違点についての判断
(上記相違点1について)
強電盤における異常を報知することが公知であり(上記「第4」2(2)参照)、強電盤にI/Oユニットを設けることは自明であるから、引用発明の工作機械装置(「工作機械」に相当)の画像データ(「形状イメージ」に相当)上における複数の部品及び組体の異常が発生した場所(「不具合発生部位」に相当)を表示させる構成を、工作機械の強電盤に実装された複数台のI/Oユニットに用いることにより、工作機械の強電盤の形状イメージ上に強電盤内の複数のI/Oユニットの不具合発生部位を表示させ、上記相違点1に係る構成とすることに格別の困難性は認められない。

(上記相違点2について)
本願発明1の関連情報は、数値制御装置においてデータ交換する際に使用されるI/Oユニットの識別子(段落【0017】)と、CADデータ上の実装位置におけるI/Oユニットの識別子との関係を表すものである(段落【0018】)ところ、CADによる設計の際には、I/Oユニットについて、数値制御装置で使用する際の識別子までは把握できないから、CADデータを作成した時点で関連情報は存在せず、強電盤にI/Oユニットを実装する際に、数値制御装置で使用するI/Oユニットそれぞれの識別子と実装位置に基づいて、関連情報の登録が行われるものと解される。
そして、どのI/Oユニットに不具合が生じたかは、数値制御装置がその識別子に基づいて検出する(段落【0018】)から、当該識別子だけでは、CADデータ上の実装位置を特定することができず、関連情報を参照して、CADデータ上の識別子を認識することによりCADデータ上の実装位置を特定することができる。
引用発明は、CADにおける属性データに基づいて、異常が生じた部品や組体の場所を表示するものであるが、本願発明において、引用発明のように異常が生じたI/Oユニットの場所を表示するためには、CADデータの他に、数値制御装置におけるI/Oユニットの識別子の情報や関連情報が必要となるところ、原査定において引用された引用文献1ないし4には、I/Oユニットの識別子の情報や関連情報が示されていない。
したがって、上記相違点2に係る構成は、引用発明及び引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

以上から、引用文献1に接した当業者が、引用発明を引用文献2記載の技術的事項に用い、上記相違点1に係る構成を採用したとしても、上記相違点2に係る構成とすることの動機付けを認めることはできない。

なお、以上の点に関連して、平成30年5月28日に提出された審判請求書の第16頁において、請求人は「(d)本願発明1の効果」として、「本願発明1は上記発明特定事項を備えることにより、機械が設置された顧客側で強電盤内におけるI/Oユニットの配置や、ケーブルの接続関係などが変更された場合であっても、I/O割付データ記憶手段及び関連情報記憶手段に記憶されている情報を更新するだけで、正しく強電盤内の状態を表示することができるようになり、この強電盤内の状態表示を参照することで、I/Oユニットに関連する故障が発生した際に、作業者は回路図や実装図を参照することなく故障箇所をより明確に把握することができるようになり、また、故障発生時のアラーム表示画面を作成にCADデータを流用できるため、機械毎のアラーム表示画面の作成を容易に行うことができる」と主張している。

また、原査定の拒絶の理由において、下位の請求項の「数値制御装置や工作機械において、デイジーチェーン接続が利用されていること、断線を検知する必要があること」に関する周知技術を示す文献として引用された引用文献3及び引用文献4にも、工作機械の強電盤の形状イメージ上に強電盤内の複数の要素の不具合発生部位を表示させるため、I/O割り付けデータやI/O割り付けデータと前記実装情報との関連情報を具備することは何ら開示されていない。

したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1を引用するものであり、本願発明1の「前記I/Oユニットの接続状況を記録するI/O割り付けデータを記憶したI/O割り付けデータ記憶手段と、それぞれの前記I/Oユニットの前記I/O割り付けデータと前記実装情報との関連情報を記録する関連情報記憶手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項等に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-08 
出願番号 特願2015-189541(P2015-189541)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永冨 宏之  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 齋藤 健児
青木 良憲
発明の名称 数値制御システム  
代理人 あいわ特許業務法人  

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