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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09J
管理番号 1351219
審判番号 不服2018-9170  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-03 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2016-197363「接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、回路接続体、回路部材の接続方法、接着剤組成物の使用、フィルム状接着剤の使用及び接着シートの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月16日出願公開、特開2017- 52956、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)9月20日(優先権主張 2011年9月20日、日本国)を国際出願日とする特願2013-534742号(以下、「原出願」という。)の一部を平成28年10月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月17日付けで手続補正書が提出され、平成29年8月14日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月13日付けで意見書が提出され、平成30年3月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年8月7日付けで前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、本願の補正前の請求項1?26に係る発明は、以下の引用文献1又は5に記載された発明、及び、引用文献2?4に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献>
1.特開2009-170898号公報
2.特開2009-277682号公報
3.特開2011-159486号公報
4.特開2010-280896号公報
5.特開2009-108158号公報

第3 本願発明
本願請求項1?17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明17」という。)は、平成30年7月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される発明であり、請求項1?17には、次のように記載されている。
「【請求項1】
第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材との間に、接着剤組成物を介在させ硬化させることにより、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、回路部材の接続方法であって、
前記第一の回路基板及び前記第二の回路基板のうち、一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、
前記接着剤組成物が、ラジカル重合性化合物と、コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子と、を含有するものである、
回路部材の接続方法。
【請求項2】
加熱温度100℃以上200℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項1に記載の回路部材の接続方法。
【請求項3】
加熱温度100℃以上150℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項1に記載の回路部材の接続方法。
【請求項4】
前記シリコーン微粒子のコア層のガラス転移温度が、-130℃以上-20℃以下である、請求項1?3のいずれか一項に記載の回路部材の接続方法。
【請求項5】
前記接着剤組成物が導電粒子を更に含有する、請求項1?4のいずれか一項に記載の回路部材の接続方法。
【請求項6】
前記接着剤組成物がフィルム状である、請求項1?5のいずれか一項に記載の回路部材の接続方法。
【請求項7】
ラジカル重合性化合物と、コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子と、を含有する接着剤組成物の使用であって、
第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように接着するために用いられ、
前記第一の回路基板及び前記第二の回路基板のうち、一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板である、前記接着剤組成物の使用。
【請求項8】
加熱温度100℃以上200℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項7に記載の接着剤組成物の使用。
【請求項9】
加熱温度100℃以上150℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項7に記載の接着剤組成物の使用。
【請求項10】
前記シリコーン微粒子のコア層のガラス転移温度が、-130℃以上-20℃以下である、請求項7?9のいずれか一項に記載の接着剤組成物の使用。
【請求項11】
前記接着剤組成物が導電粒子を更に含有する、請求項7?10のいずれか一項に記載の接着剤組成物の使用。
【請求項12】
前記接着剤組成物がフィルム状である、請求項7?11のいずれか一項に記載の接着剤組成物の使用。
【請求項13】
基材と、
該基材上に形成された、ラジカル重合性化合物と、コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子と、を含有する接着剤層と、
を備える、接着シートの使用であって、
第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように接着するために用いられ、
前記第一の回路基板及び前記第二の回路基板のうち、一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板である、前記接着シートの使用。
【請求項14】
加熱温度100℃以上200℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項13に記載の接着シートの使用。
【請求項15】
加熱温度100℃以上150℃以下で前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、請求項13に記載の接着シートの使用。
【請求項16】
前記シリコーン微粒子のコア層のガラス転移温度が、-130℃以上-20℃以下である、請求項13?15のいずれか一項に記載の接着シートの使用。
【請求項17】
前記接着剤層が導電粒子を更に含有する、請求項13?16のいずれか一項に記載の接着シートの使用。」

第4 引用文献1、5の記載、及び、引用文献1、5に記載された発明(引用発明1、5)
1 引用文献1、5の記載(下線は当審が付与した。)
(1)引用文献1について
引用文献1には、「回路接続材料及び回路部材の接続構造」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料及びこれを用いた回路部材の接続構造に関する。」
「【0022】
本発明の2層構成の回路接続材料は、相対峙する回路電極間に介在され、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続する回路接続材料であって、導電粒子を分散した異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された構成を有する。」
「【0037】
また、本発明の回路接続材料は、(c)加熱若しくは光によって遊離ラジカルを発生する硬化剤(以下、「遊離ラジカル発生剤」ともいう。)、及び(d)ラジカル重合性物質からなる接着剤を異方導電接着剤層及び絶縁性接着剤層における接着剤成分として含有することも好ましい。
【0038】
(c)遊離ラジカル発生剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましい。この場合、(c)遊離ラジカル発生剤の配合量は、接着剤の固形分全体に対して、0.05?10重量%であると好ましく、0.1?5重量%であるとより好ましい。
【0039】
(c)遊離ラジカル発生剤は、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等から選定できる。回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドから選定されることが好ましく、高反応性が得られるパーオキシエステルから選定されることがより好ましい。」
「【0053】
また、更に、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を0.1?10重量%用いた場合、金属等の無機物表面での接着強度が向上するので好ましく、0.5?5重量%であるとより好ましい。リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2-ヒドロキシル(メタ)アクリレートの反応物として得られる。具体的には、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート、2-アクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート等があげられる。こららは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
また、本実施形態の回路接続材料はフィルム状で使用することが取り扱い性に優れることから好ましく、その場合フィルム形成性高分子を含有してもよい。フィルム形成性高分子としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンオキサイド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が用いられる。これらの中でも水酸基等の官能基を有する樹脂は接着性が向上することができるので、より好ましい。また、これらの高分子をラジカル重合性の官能基で変性したものも用いることができる。これら高分子の重量平均分子量は10000以上が好ましい。また、重量平均分子量が1000000以上になると混合性が低下するため、1000000未満であると好ましい。」
「【0062】
次に本発明に係る回路部材の接続構造の製造方法の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回路部材の接続構造の製造方法を模式的に示す工程断面図である。図1(a)は回路部材同士を接続する前の回路部材の断面図であり、図1(b)は回路部材同士を接続する際の回路部材の接続構造の断面図であり、図1(c)は回路部材同士を接続した回路部材の接続構造の断面図である。
【0063】
まず、図1(a)に示すように、LCDパネル3上に設けられた回路電極2の上に、回路接続材料をフィルム状に成形してなるフィルム状の回路接続材料1を載置する。
【0064】
次に、図1(b)に示すように、位置あわせをしながら回路電極6が設けられた回路基板5を回路電極2と回路電極6とが互いに対向するようにフィルム状の回路接続材料1の上に載置して、フィルム状の回路接続材料1を回路電極2と回路電極6との間に介在させる。なお、回路電極2及び6は奥行き方向に複数の電極が並んだ構造を有する(図示しない)。
【0065】
フィルム状の回路接続材料1はフィルム状であるため取扱いが容易である。このため、このフィルム状の回路接続材料1を回路電極2と回路電極6との間に容易に介在させることができ、LCDパネル3と回路基板5との接続作業を容易にすることができる。
【0066】
次に、加熱しながらLCDパネル3と回路基板5とを介して、フィルム状の回路接続材料1を図1(b)の矢印Aの方向に加圧して硬化処理を行う。これによって図1(c)に示すような回路部材同士を接続した回路部材の接続構造20が得られる。硬化処理の方法は、使用する接着剤組成物に応じて、加熱及び光照射の一方又は双方を採用することができる。」
「【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(d)ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート(製品名:UA-5500T、新中村化学工業社製)20重量部、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(製品名:M-215、東亞合成社製)15重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学社製)5重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(製品名:P-2M、共栄社化学社製)3重量部、(c)遊離ラジカル発生剤としてベンゾイルパーオキサイド(製品名:ナイパーBMT-K、日本油脂製)4重量部、ポリエステルウレタン樹脂(製品名:UR4800、東洋紡績社製)をトルエン/メチルエチルケトン=50/50の混合溶剤に溶解して得られた40重量%の溶液60重量部に混合し、攪拌しバインダ樹脂とした。更に、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設けた平均粒径4μmの導電粒子(10%圧縮弾性率(K値):410Kgf/mm^(2))をバインダ樹脂に対して3体積%配合分散させ、かつ平均粒径2μmのシリコーン微粒子(製品名:KMP-605、信越化学社製)をバインダ樹脂100重量部に対して20重量部分散させ、分散液を得た。この分散液を、厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが4.0μmの異方導電接着剤層A(幅15cm、長さ70m)を得た。
次いで、(d)ラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレート(製品名:UA-5500T、新中村化学工業社製)20重量部、ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(製品名:M-215、東亞合成社製)20重量部、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(製品名:DCP-A、共栄社化学社製)10重量部、2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(製品名:P-2M、共栄社化学社製)3重量部、(c)遊離ラジカル発生剤としてベンゾイルパーオキサイド(製品名:ナイパーBMT-K、日本油脂製)4重量部、ポリエステルウレタン樹脂(製品名:UR4125、東洋紡績社製)をトルエン/メチルエチルケトン=50/50の混合溶剤に溶解して得られた23重量%の溶液50重量部に混合し、攪拌しバインダ樹脂とした。このバインダ樹脂を、厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより、厚みが10μmの絶縁性接着剤層B(幅15cm、長さ70m)を得た。
得られた接着剤層A、Bを接着剤が向き合う方向に重ね合わせ、ラミネーター(Dupont社製RISTON、モデル;HRL、ロール圧力はバネ加重のみ、ロール温度40℃、速度50cm/分)を用いてラミネートした後に、異方導電接着剤層A側のPETを剥離し、厚み14μmの異方導電接着剤(幅15cm、長さ60m)を得た。得られた異方導電接着剤を1.5mm幅に裁断し、内径40mm、外径48mmのプラスチック製リールの側面(厚み1.7mm)に接着フィルム面を内側にして50m巻きつけ、テープ状の回路接続材料を得た。」
「【0075】
【表1】


「【0077】
(評価用接続体の作製)
接続抵抗及び接着力の測定には、次のようにして得られた接続体を用いた。
実施例、比較例で得られた回路接続材料(幅1.5mm、長さ3cm)の接着剤面を、70℃、1MPaで2秒間加熱加圧して厚み0.7mmのITOコートガラス基板(15Ω□)上に転写し、PETフィルムを剥離した。次いで、ピッチ50μm、厚み8μmのすずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)を転写した接着剤上に置き、24℃、0.5MPaで1秒間加圧して仮固定した。このFPCが回路接続材料によって仮固定されたガラス基板を本圧着装置に設置し、200μm厚みのシリコーンゴムをクッション材とし、フレキシブル配線板側から、ヒートツールによって170℃、3MPaで6秒間加熱加圧して幅1.5mmにわたり接続し、評価用の接続体(回路部材の接続構造)を得た。」

(2)引用文献5について
引用文献5には、「異方導電性フィルム」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、回路等を設けた配線板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための異方導電性フィルムに関する。」
「【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、異方導電性フィルムを介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を維持するとともに、絶縁抵抗の低下を防止し、電極のファインピッチ化に対応できる異方導電性フィルムを提供することを目的とする。」
「【0019】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る異方導電性フィルムにより、フレキシブルプリント配線板を実装したリジッド基板を示す断面図である。本実施形態の異方導電性フィルムを用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱可塑性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する。」
「【0020】
より具体的には、図1に示すように、ガラス基板やガラスエポキシ基板等のリジッド基板1上に、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルム30と、当該樹脂フィルム30に含有される導電性粒子6を有する異方導電性フィルム2を載置し、当該異方導電性フィルム2を所定の温度に加熱した状態で、リジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、異方導電性フィルム2をリジッド基板1上に仮接着する。次いで、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、リジッド基板1の表面に形成された配線電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5との位置合わせをしながら、フレキシブルプリント配線板3を異方導電性フィルム2上に載置することにより、リジッド基板1とフレキシブルプリント配線板3との間に異方導電性フィルム2を介在させる。次いで、異方導電性フィルム2が所定の温度になるように、適切な温度に加熱された圧着部材であるプレスヘッド(不図示)を、フレキシブルプリント配線板3の上方に設置し、当該プレスヘッドをリジッド基板1の方向に移動させて、異方導電性フィルム2を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、当該異方導電性フィルム2をリジッド基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、異方導電性フィルム2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、異方導電性フィルム2は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該異方導電性フィルム2は、上述の温度にて加熱をすると、樹脂フィルム30を構成する熱硬化性樹脂が流動して、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した異方導電性フィルム2の硬化時間が経過すると、異方導電性フィルム2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、異方導電性フィルム2を介して、配線電極4と金属電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3をリジッド基板1上に実装する。」
「【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0051】
(実施例1)
(接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの平均が3μm、短径Rの平均が0.3μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂としては、2種類のビスフェノールA型の固形エポキシ樹脂〔(1)ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256、および(2)エピコート1007〕、および(3)ナフタレン型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロンHP4032D〕を使用した。また、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、(4)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕を使用し、絶縁性の樹脂粒子としては、(5)アクリル樹脂により形成された樹脂層により被覆されたアクリル樹脂〔ガンツ化成(株)製、商品名スタフィロイドAC-3355〕を使用し、これら(1)?(5)を重量比で(1)40/(2)40/(3)20/(4)35/(5)5の割合で配合した。なお、絶縁性の樹脂粒子として、樹脂粒子の長径と樹脂層の厚みの合計が0.5μmのものを使用した。
【0052】
これらのエポキシ樹脂、マイクロカプセル型潜在性硬化剤、および絶縁性の樹脂粒子を、2-エトキシエチルアセタートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が50重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.1体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、Ni粉末の長径の方向がエポキシ樹脂を主成分とする樹脂フィルムの厚み方向に配向されるように、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させて、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ35μmの異方導電性フィルムを作成した。」
「【0056】
(実施例2)
絶縁性の樹脂粒子として、シリコーン樹脂により形成された樹脂層により被覆されたシリコーン樹脂〔信越化学工業(株)製、商品名KMP605〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性フィルムを作製し、フレキシブルプリント配線板とリジッド基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同1条件により、接続信頼性評価、絶縁性評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。なお、絶縁性の樹脂粒子として、樹脂粒子の長径と樹脂層の厚みの合計が2μmのものを使用した。」

2 引用文献1、5に記載された発明(引用発明1、5)の認定
(1)引用文献1に記載された発明(引用発明1)
ア 引用文献1の【0022】の記載から、引用文献1には、導電粒子を分散した異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された構成を有する2層構成の回路接続材料を、相対峙する回路電極間に介在させて、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続することが記載されているといえる。
イ 同【0070】及び【0075】の【表1】の記載から、実施例1に用いられた異方導電性接着剤層Aは、
「ポリエステルウレタン樹脂(UR4800。当審注:商品名、以下同じ。)
ラジカル重合性物質としてのウレタンアクリレート(UA-5500T)
ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(M-215)、
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(DCP-A)、
2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(P-2M)、
シリコーン微粒子(KMP-605)、
遊離ラジカル発生剤としてのベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT-K)、及び、
導電微粒子」を含有するものであることが分かる。
ウ 同【0070】には、上記異方導電性接着剤層Aと絶縁性接着剤層Bとを重ね合わせて、テープ状の回路接続材料を得ることが記載され、同【0077】の「評価用接続体の作製」では、該回路接続材料を用いて、ITOコートガラス基板と、すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)とを加熱加圧して、評価用の接続体(回路部材の接続構造)を得ることが記載されている。
エ 上記回路接続材料は、同【0037】の「(c)加熱若しくは光によって遊離ラジカルを発生する硬化剤(以下、「遊離ラジカル発生剤」ともいう。)」という記載からみて、加熱加圧によって硬化して、ITOコートガラス基板と、フレキシブル回路板(FPC)とを、接続するものといえる。
しかも、上記「ITOコートガラス基板」は、上記ウのとおり、最終的に、「すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)」と接続されるのであるから、上記アに照らすと、当該「ITOコートガラス基板」及び「すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)」はいずれも、回路電極を備えるものということができる。
オ 上記ア?エから、引用文献1には、
「導電粒子を分散した異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された構成を有する2層構成の回路接続材料を、相対峙する回路電極間に介在させ、相対向する回路電極を加圧し、回路接続材料を硬化させて、加圧方向の電極間を電気的に接続する方法において、
相対向する回路電極の一方は、ITOコートガラス基板に設けられ、もう一方は、すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)に設けられたものであり、
回路接続材料は、異方導電性接着剤層Aと絶縁性接着剤層Bとを重ね合わせたものであり、
異方導電性接着剤層Aは、
ポリエステルウレタン樹脂(UR4800)
ラジカル重合性物質としてのウレタンアクリレート(UA-5500T
)
ビス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(M-215)、
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(DCP-A)、
2-メタクリロイロキシエチルアッシドフォスヘート(P-2M)、
シリコーン微粒子(KMP-605)、
遊離ラジカル発生剤としてのベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBM
T-K)、及び、
導電微粒子を含む、
ITOコートガラス基板に設けられた回路の回路電極と、すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)に設けられた回路の回路電極とを電気的に接続する方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用文献5に記載された発明(引用発明5)
引用文献5の【0019】には、「熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する」方法が記載され(当審注:同【0019】には、「熱可塑性樹脂を硬化させ」と記載されているが、樹脂が硬化する点及び同【0020】の「樹脂フィルム30を構成する熱硬化性樹脂が流動して、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。」という記載からみて、「熱可塑性樹脂」は「熱硬化性樹脂」の誤記と認める。)、同【0056】の実施例2には、これを具現した「導電性粒子と、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としてマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤と、絶縁性の樹脂粒子としてシリコーン樹脂により形成された樹脂層により被覆されたシリコーン樹脂〔KMP605〕とを用いる」異方導電性フィルムが記載されている。
そうすると、引用文献5には、
「熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する方法において、
異方導電性フィルムは、導電性粒子と、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、マイクロカプセル型潜在性硬化剤としてマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤と、絶縁性の樹脂粒子としてシリコーン樹脂により形成された樹脂層により被覆されたシリコーン樹脂〔KMP605〕とを用いる、
フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する方法。」(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)「ITO」は、透明電極として用いられる「酸化インジウムスズ」を表す語であるから、引用発明1の該「ITOコートガラス基板に設けられた回路の回路電極」は、本願発明1の「第一の回路電極」に相当し、引用発明1の「ITOコートガラス基板」の「ガラス基板」自体は、本願発明1の「第一の回路基板」に相当する。
そして、引用発明1の該「回路電極」が形成された「ITOコートガラス基板」は全体として、本願発明1の「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材」に相当する。
(イ)引用発明1の「すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)に設けられた回路の回路電極」及び「フレキシブル回路板(FPC)」は、本願発明1の「第二の回路電極」及び「第二の回路基板」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明1の当該「回路電極」が形成された「フレキシブル回路板(FPC)」は全体として、本願発明1の「第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材」に相当する。
(ウ)引用発明1の「ITOコートガラス基板に設けられた回路の回路電極と、すずめっき銅回路を600本有するフレキシブル回路板(FPC)に設けられた回路の回路電極とを電気的に接続する方法」は、本願発明1の「回路部材の接続方法」に相当する。
(エ)引用発明1の「回路接続材料」は、本願発明1の「接着剤組成物」に相当し、上記(ア)?(ウ)より、引用発明1の「導電粒子を分散した異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された構成を有する2層構成の回路接続材料を、相対峙する回路電極間に介在させ、相対向する回路電極を加圧し、回路接続材料を硬化させて、加圧方向の電極間を電気的に接続する方法」は、「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材との間に、接着剤組成物を介在させ硬化させることにより、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、回路部材の接続方法」に相当する。
(オ)引用発明1の「ラジカル重合性物質としてのウレタンアクリレート(UA-5500T)」は、本願発明1の「ラジカル重合性化合物」に相当する。
(カ)引用発明1の「シリコーン微粒子(KMP-605)」は、本願発明1の「コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子」に相当することは明らかである(必要であれば、特開2003-55565号公報の【0012】の「本発明に用いる(C)成分のシリコーン粒子としては、MSP-1500、MSP-3000(日興リカ社製、商品名)等が挙げられ、また、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーン樹脂で被覆した粒子としては、KMP-600、KMP-603、KMP-604、KMP-605、KMP-594、KMP-597(信越化学社製、商品名)等が挙げられる。」という記載を参照。)。
(キ)そうすると、本願発明1と引用発明1とは、
「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材との間に、接着剤組成物を介在させ硬化させることにより、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、回路部材の接続方法であって、
前記接着剤組成物が、ラジカル重合性化合物と、コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子と、を含有するものである、
回路部材の接続方法。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
「第一の回路基板及び第二の回路基板」について、本願発明1は、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であ」るのに対し、引用発明1は、「ガラス基板」及び「フレキシブル回路板(FPC)」である点。
イ 相違点についての検討
相違点1について検討する。
引用発明1の「ガラス基板」と、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板」とは、弾性率や平坦度、光透過率が大きく異なるところ、甲1を仔細にみても、引用発明1の「ガラス基板」に替えて、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板」を採用する動機付けは見当たらない。
さらに、引用発明1の「フレキシブル回路板(FPC)」の材質としては、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマー」以外にも、多数の選択肢が想定されるところ(たとえば、特開平1-30291号公報の2頁左上欄18?19行には、フレキシブル回路板として、「ポリエーテルサルフォン」を用いることが記載されている。)、甲1には、その中から、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種」を採用する動機付けは見当たらない。
また、引用文献2?5には、PET等の基板を使用した低温圧着についての記載は認められるものの、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であ」ることについては、記載も示唆も見当たらない。
なお、前置報告書において新たに引用された特開2006-152233号公報、国際公開第2008/156175号及び特開2004-356111号公報(以下、「前置引用文献6?8」という。)に、フレキシブル基板同士を接続すること、及び、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であ」ることが記載されているとしても、引用発明1の「ITOコートガラス基板」及び「フレキシブル回路板(FPC)」の材質として、上記の材質を選択する動機付けは見出すことができない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることで、本願明細書【0173】に記載された「低温の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができ、長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度や接続抵抗)を維持可能である」接続方法となる、という、引用発明1からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2)引用発明5との対比・判断
ア 対比
(ア)引用発明5の「フレキシブルプリント配線板」及び「リジッド基板」に、配線等によって回路が設けられていることは明らかであるから、引用発明5の「フレキシブルプリント配線板」の「板」自体及び「リジッド基板」の「基板」自体は、本願発明1の「第一の回路基板」及び「第二の回路基板」にそれぞれ相当する。
また、引用発明5の「フレキシブルプリント配線板の金属電極」及び「リジッド基板の配線電極」は全体として、本願発明1の「第一の回路電極」及び「第二の回路電極」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明5の当該電極を備えた「フレキシブルプリント配線板」及び「リジッド基板」は全体として、本願発明1の「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材」及び「第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明5の「熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルム」は、本願発明1の「接着剤組成物」に相当する。
(ウ)引用発明5の「熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂フィルムと、樹脂フィルムに含有された導電性粒子を有する異方導電性フィルムを介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板の金属電極をリジッド基板の配線電極に接続する方法」は、本願発明1の「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材との間に、接着剤組成物を介在させ硬化させることにより、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、回路部材の接続方法」に相当する。
(エ)引用発明5の「絶縁性の樹脂粒子としてシリコーン樹脂により形成された樹脂層により被覆されたシリコーン樹脂〔KMP605〕」は、上記(1)ア(カ)で述べたように、本願発明1の「コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子」に相当することは明らかである。
(オ)そうすると、本願発明1と引用発明5とは、
「第一の回路基板上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材との間に、接着剤組成物を介在させ硬化させることにより、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続するように前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接着する、回路部材の接続方法であって、
前記接着剤組成物が、コア層と前記コア層を被覆するように設けられたシェル層とを有するコアシェル型シリコーン微粒子と、を含有するものである、
回路部材の接続方法。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点2)
「第一の回路基板及び第二の回路基板」について、本願発明1は、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であ」るのに対し、引用発明5は、「ガラス基板」及び「フレキシブル回路板(FPC)」である点。
(相違点3)
接着剤組成物について、本願発明1は、「ラジカル重合性化合物」を含むのに対し、引用発明5の「異方導電性フィルム」に、「ラジカル重合性化合物」が含まれるかどうか不明な点。
イ 相違点についての検討
相違点2について検討する。
引用発明5の「フレキシブルプリント配線板」及び「リジッド基板」の材質として、上記(1)イで述べたように、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマー」以外にも、多数の選択肢があるところ、「フレキシブルプリント配線板」及び「リジッド基板」の材質として、「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種」を採用する動機付けは見当たらない。
また、上述したように、引用文献1?4及び前置引用文献6?8には、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であ」ることについては、記載も示唆も見当たらない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を備えることで、本願明細書【0173】に記載された「低温の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができ、長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度や接続抵抗)を維持可能である」接続方法となる、という、引用発明5からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明5に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

2 本願発明2?17について
本願発明2?6は、本願発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1又は5及び引用文献2?4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
本願発明7、13についても、本願発明1と同様に、「一方の回路基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板であり、もう一方の回路基板が、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート及びシクロオレフィンポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む基板である」という発明特定事項を有しており、引用発明1又は5及び引用文献2?4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
本願発明8?12、14?17は、本願発明7又は13を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本願発明1と同様に、引用発明1又は5及び引用文献2?4の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?17は、引用発明1又は5及び引用文献2?4の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2016-197363(P2016-197363)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 天野 宏樹
川端 修
発明の名称 接着剤組成物、フィルム状接着剤、接着シート、回路接続体、回路部材の接続方法、接着剤組成物の使用、フィルム状接着剤の使用及び接着シートの使用  
代理人 吉住 和之  
代理人 阿部 寛  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 平野 裕之  

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