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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1351234
審判番号 不服2018-4359  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-02 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2017-74283号「散布トレイ、三流体熱交換器、及び湿式調湿装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-179317号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月4日の出願であって、平成29年6月20日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月25日に意見書が提出され、平成29年10月3日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月25日に意見書が提出されたが、平成30年1月4日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成30年4月2日に拒絶査定不服審判が請求され、平成30年12月10日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年2月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年1月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1、2、5及び6に係る発明は、以下の引用例AないしDに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
A.特許第6046294号公報
B.特開平9-318108号公報
C.実願昭60-111310号(実開昭62-20615号)のマイクロフィルム
D.特開2009-279554号公報

第3 当審拒絶理由の概要
[理由1]本件出願の請求項1、2、5及び6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用例一覧>
1.特許第6046294号公報(拒絶査定時の引用例A)
2.実願昭60-111310号(実開昭62-20615号)のマイクロフィルム (拒絶査定時の引用例C)
3.特開2009-279554号公報(拒絶査定時の引用例D)

[理由2]本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

図1及び明細書の段落【0026】ないし【0035】に記載の実施例によると、液体が三流体熱交換器110の上部にある分配管105から下部に向かって滴下される一方、三流体熱交換器110の下方側部に位置する吸気口102から供給された空気は上方へと向かい、上部の排気口103から排出される構造となっている。
しかし、空気は三流体熱交換器110において充填材107、伝熱管106、散布トレイ108の孔12、不織布11の組合せたものを3組通過することになり、通流抵抗がきわめて大きいと考えられるので、空気の大部分が散布トレイ108の外周より外側にバイパスする蓋然性が高い。
そうすると、図1に記載された三流体熱交換器110により、どのように熱源流体と液体と空気の三流体の間で熱交換を行うことができるのか不明である。
(参考までに、引用例1の図12の実施例において、処理対象空気の流れは、プレート21の平面方向と処理対象空気の流れる方向が一致していることから、プレート21に遮られることはない。)

よって、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項5及び6に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成31年2月7日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
気液接触手段の下方であって散布対象の上方に設けられ、底面に複数の孔が形成されて、前記複数の孔から前記散布対象に液体を供給する散布トレイであって、
前記底面の上に、毛細管作用によって前記底面方向に前記液体を拡散させる拡散部材を有し、
前記複数の孔は、前記底面の上で、前記拡散部材によって連通している、散布トレイ。
【請求項2】
前記拡散部材は、多層構造であり、最下層より上層に最も目の細かいフィルタ構造を有する層を有する、請求項1に記載の散布トレイ。
【請求項3】
前記拡散部材は、多層構造であり、最下層の前記孔に対応する位置に孔が形成されている、請求項1に記載の散布トレイ。
【請求項4】
前記拡散部材には孔が形成され、
前記底面に形成された孔は、前記拡散部材の孔に重なる部分と前記拡散部材に重なる部分とを有する、請求項1に記載の散布トレイ。
【請求項5】
内部に熱源流体を流通させる、前記散布対象としての伝熱部材と、
気液接触手段と、
請求項1ないし4のいずれかに記載の散布トレイと、
を備え、前記伝熱部材の外側に空気が供給されて、前記熱源流体と前記液体と前記空気の三流体の間で熱交換を行う三流体熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の三流体熱交換器を備えた湿式調湿装置。」

第5 引用例、引用発明等
1 引用例1
(1)引用例1の記載(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)
1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸湿性液体と処理対象空気とを接触させることで前記処理対象空気の調湿を行う処理機であって、
前記吸湿性液体と前記処理対象空気と熱源流体とが熱交換を行う三流体熱交換器と、
前記吸湿性液体を前記三流体熱交換器の上部に供給する供給手段と、
前記処理対象空気を取り込んで前記三流体熱交換器の内部を通過させて調湿対象空間に排出する空気流動手段と、
を備え、
前記三流体熱交換器は、親水性を有する気液接触手段と前記熱源流体によって冷却又は加熱される溶液加熱冷却手段とが上下方向に交互に配置された構成を有し、
前記吸湿性液体は、前記三流体熱交換器を下方に向かって自然流下する過程で、前記気液接触手段と前記溶液加熱冷却手段とを交互に流れ、前記気液接触手段にて前記処理対象空気と気液接触し、前記溶液加熱冷却手段にて前記熱源流体によって冷却又は加熱され、
前記気液接触手段の左右に側板が設けられていることを特徴とする処理機。」

1b)「【0009】
充填材の内部では、吸湿性液体は、充填材を構成する板の表面形状に沿って重力によって流下するほか、毛細管現象(表面張力)によって充填材の表面全体に均等に拡がっていくので、単位体積当たりの気液接触面積(比表面積)を大きくしても表面濡れが確保できている。充填材としては、特許文献3の空気冷却方法に示されている斜交ハニカムのように、多くの材料が存在する。」

1c)「【0046】
(処理機10)
図2は、処理機10を、伝熱管16の長手方向と直交する断面で見た図である。以下、図1と図2を合わせて、処理機10の構成を説明する。処理機10は、吸気口12と排気口13とを有する筐体11を備えている。排気口13は、排気用のファン14を有しており、筐体11内の空気を強制的に排気するとともに、吸気口12を通じて除湿対象空間からの戻り空気あるいは外気などの処理対象空気を筐体11内に取り込む。排気口13はダクト等を通じて除湿対象空間と接続されており、除湿された空気は排気口13から除湿対象空間に排出される。
【0047】
筐体11内には、分配器15、溶液加熱冷却手段を構成する伝熱管16、気液接触手段を構成する複数の充填材17、最下段充填材18、溶液槽19、及び左右の側板26を有する。分配器15と伝熱管16と複数の充填材17と左右の側板26は、三流体熱交換器20としてユニット化されている。分配器15は、三流体熱交換器20の上方に配置された、概略トレイ状の部材であり、吸湿性液体を下方に滴下する複数の分配口が下面に形成されている。分配口は、左右の側版26の間で、分配器15の下段の伝熱管16に沿って形成されている。」

1d)「【0062】
図3は、充填材17の斜視図である。充填材17は、単位体積当たりの表面積を多くするため多数のフィンから構成される。各フィンは、波形の凹凸形状に加工されている。隣り合うフィン同士は、波の方向が互いに一定の角度で交差する向きに貼り合わされており、すなわち、隣り合うフィン同士は山と谷が互いに点接触するように配置されおり、この接触点で互いに接着されている。このような構成により、充填材17は、内部が多孔質とされて、単位体積当たりの表面積が広く確保されるとともに、空気の流動性も確保されている。
【0063】
充填材17は、親水性のあるセルロース系素材の他、ガラス繊維、セラミック繊維などのシートを接着して作成でき、あるいは結合剤などでセルロース、ガラス繊維、セラミック繊維などを一体化して作成できる。」、





1e)「【0073】
充填材17と伝熱管16とは互いに上下方向に接触している。すなわち、充填材17の下面と伝熱管16の上面とは接触しており、伝熱管16の下面と充填材17の上面とは接触している。この結果、各段の充填材17の下面(最下部)まで流れた吸湿性液体は、表面張力によって伝熱管16に流れ込み、伝熱管16の表面を経由して下段の充填材17に供給される。伝熱管16からその下の充填材17に供給された吸湿性液体は、充填材17内で表面張力によって充填材17のほぼ全表面に広がりつつ、重力によって充填材17内を下方に流れる。」、






1f)「【0074】
三流体熱交換器20に供給される吸湿性液体の流量が多すぎると、充填材17の下面から漏れた吸湿性液体が伝熱管16を経由せずにバイパスしてその下段の充填材17に直接滴下されることもあり得るが(バイパス現象)、本実施の形態の除湿装置100では、後述するように、三流体熱交換器20に供給する吸湿性液体の流量を多くする必要はなく、比較的少量の吸湿性液体が供給されるので、充填材17を下方に流れた吸湿性液体は表面張力によってその大部分がその下段の伝熱管16に集められて、伝熱管16の表面を下方に流れてその下段の充填材17に供給される。上記のようなバイパス現象をより確実に防止するために、以下のような構成が採用されてもよい。」

1g)「【0082】
図12の例では、充填材17とその下段の伝熱管16との間に、プレート21が追加されている。プレート21には、伝熱管16に対応する位置に複数の孔211が形成されている。この構成により、バイパス現象を確実に防いで、充填材17の下面に至った吸湿性液体を確実に伝熱管16の供給できる。この例では、プレート21の平面方向と処理対象空気の流れる方向とが一致しているため、処理対象空気はプレート21によって遮られることなく、充填材17内を水平方向に流れていく。この複数の孔211を有するプレート21は、充填材17を流下した吸湿性液体を伝熱管16に導く案内手段に相当する。なお、図12の例において、図10に示すように、充填材17の下面をテーパ形状とし、プレート21をそのように形成した充填材17の下面に沿うように形成してもよい。」、






1h)「【0098】
充填材17を下から支持する(充填材17が乗せられる)蓋部材1632には、充填材17の外側で、充填材17を支持する平面部から上に向けて屈曲する返し部が形成されている。この返し部によって、充填材17を流下してまだ蓋部材1632の孔からトレイ部材1631内に滴下されずに蓋部材1632の上に滞留する吸湿性液体が、充填材17の外側から三流体熱交換器20外に流れ落ちるのを防いでいる。この返し部は、充填材17の端部に対応する部分に形成されるのではなく、充填材17の端部から若干外側にまで平面部が延長して形成される。三流体熱交換器20には、図16の左右方向に処理対象空気が流通するが、このように返し部を充填材17の端部から離して形成することにより、充填材の側面(図16の左右の側面)から充填材17の内部に流入し、反対側の側面から流出する処理対象空気の風路を返し部が妨げることなく、三流体熱交換器20内において処理対象空気と調湿性液体との気液接触が十分に行われる。なお、図14の構成においても同様に、充填材17を下から支持するプレート24の紙面垂直方向の端部には、充填材17の外側で上に向けて屈曲する返し部が形成されており、充填材17を流下して孔241を流下する前の吸湿性液体がプレート24上に溜まり、図14の紙面垂直方向から漏れ出ないように構成されている。」

(2)引用発明
上記(1)及び図12の記載からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「充填材17の下方であって伝熱管16の上方に設けられ、平面に複数の孔211が形成されて、前記複数の孔211から前記伝熱管16に吸湿性液体を供給するプレート21であって、前記平面の上に、充填材17を有するプレート21。」

2 引用例2
引用例2の記載「液体流入側の組織層を形成している熱接着性複合繊維含有紡績糸の打込み密度は,液体流出側の組織層よりも緻密である」(明細書第4ページ第12ないし14行)及び図面の記載から、引用例2には、「液体流入側の組織層の密度を液体流出側の組織層の密度よりも緻密とした濾過布」が記載(以下、「引用例2記載事項」という。)されている。

3 引用例3
引用例3の記載「積層フィルタ10は、流体吸入の上流側が密(つまり繊維密度が高い)で、下流側(フィルタ取り付け部側)が疎(つまり繊維密度が低い)な層構造を持つフィルタであること」(段落【0013】)及び図3(b)の記載から、引用例3には、「流体吸入の上流側が密(つまり繊維密度が高い)で、下流側(フィルタ取り付け部側)が疎(つまり繊維密度が低い)な層構造を持つフィルタ」が記載(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されている。

4 原査定における引用例B
引用例B公報には、その段落【0009】及び【0010】及び段落【0017】ないし【0019】並びに図1及び図2の記載から、「給水パイプ7に給水された水がトレー1内に設けられた水分湿潤繊維6内に流出し、水分湿潤繊維6が均等に湿潤され、トレー1の底部の長手方向に設けた長穴5内に水分湿潤ネット9を張設した水分湿潤エレメント10に水分が供給される通風気化式加湿器」が記載されている。

第6 理由1(進歩性)について
1 本願発明1について
引用発明における「伝熱管16」は、その機能、構成及び技術的意義から本願発明1における「散布対象」に相当し、以下同様に、「孔211」は「孔」に、「吸湿性液体」は「液体」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明における「充填材17」は、引用例1の段落【0047】における「気液接触手段を構成する複数の充填材17」(上記第5 1.(1)1c))の記載からみて、本願発明1における「気液接触手段」に相当する。
さらに、引用発明における「プレート21」と、本願発明1における「散布トレイ」とは、「散布部材」という限りにおいて一致し、引用発明における「平面」と、本願発明1における「底面」とは、「散布部材における面」という限りにおいて一致する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「気液接触手段の下方であって散布対象の上方に設けられ、散布部材における面に複数の孔が形成されて、複数の孔から散布対象に液体を供給する散布部材。」

[相違点1]
「散布部材」及び「散布部材における面」に関して、本願発明1においては、「散布トレイ」であって「底面」を有するものであるのに対して、引用発明においては、「プレート21」であって「平面」を有する点。

[相違点2]
本願発明1においては、「散布トレイ」が、「底面の上に、毛細管作用によって底面方向に液体を拡散させる拡散部材を有」するものであって、「(散布トレイの底面に形成された)複数の孔は、底面の上で、拡散部材によって連通している」のに対して、引用発明においては、「プレート21」が複数の孔を有するものの、平面の上に拡散部材を有しない点。

事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
引用例1の段落【0009】、【0063】、及び【0073】(上記第5 1.(1)1b)、1d)及び1e))の記載からみて、充填材17(本願発明1の「気液接触手段」に相当。)は、内部の表面張力によって、吸湿性液体をほぼ全表面に拡げるものである。
そして、引用例1の図2に示されたもの、すなわち、充填材17の下面と散布対象である伝熱管16とを上下方向に接触させるものは、引用例1の段落【0074】(上記第5 1.(1)1f))に記載されているとおり比較的少量の吸湿性液体を供給して、充填材17を下方に流れた吸湿性液体は、表面張力によってその大部分がその下段の伝熱管16に集められてバイパス現象を防止するものである。
これに対して、引用例1の図12に示されたものは、充填材17と散布対象である伝熱管16との間にプレート21が存在しており、バイパス現象の問題が生じるものではなく、充填材17がプレート21に接触する旨の記載もないから、引用発明の充填材17が、プレート21の平面の上における拡散部材であるとはいえない。
さらに、引用例2記載事項は、「液体流入側の組織層の密度を液体流出側の組織層の密度よりも緻密とした濾過布」であり、引用例3記載事項は、「流体吸入の上流側が密(つまり繊維密度が高い)で、下流側(フィルタ取り付け部側)が疎(つまり繊維密度が低い)な層構造を持つフィルタ」であって、上記引用例2記載事項及び引用例3記載事項は、いずれも、「毛細管作用によって(散布トレイの)底面方向に液体を拡散させ」、「(散布トレイの底面に形成された)複数の孔」を、「底面の上で」、「連通」する「拡散部材」についての開示や示唆をするものではない。
そうすると、引用発明、上記引用例2記載事項及び引用例3記載事項における開示や示唆により、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用例2記載事項及び引用例3記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

2 本願発明2、5及び6について
本願の特許請求の範囲における請求項2、5及び6の記載は、請求項の記載を他の記載に置き換えることなく直接又は間接的に引用してされたものであるから、本願発明2、5及び6は本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2、5及び6は、本願発明1と同様の理由により引用発明、引用例2記載事項及び引用例3記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

第7 理由2(記載不備)について
図1及び本願明細書の段落【0026】ないし【0035】に記載の実施例によると、吸湿性液体が伝熱管106の外側に接触することで伝熱管106を介して冷媒によって冷却されたのちに下方に向かって自然流下し、充填材107で拡散した吸湿性液体が空気と気液接触し、さらにその下方の伝熱管106にて吸湿性液体が冷媒によって冷却されることを繰り返して、三流体(吸湿性液体、空気、冷媒)の間での熱交換を行うものである。
そして、充填材107、不織布11を有する散布トレイ108、及び伝熱管106の大きさや間隔を適宜調整することで通流抵抗を小さくすることにより空気の大部分が散布トレイ108の外周より外側にバイパスすることを防止できることは、当業者であれば技術常識に基いて当然理解することである。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願請求項5及び6に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

第8 原査定についての判断
原査定は、上記第2に示したとおり、「本願請求項1、2、5及び6に係る発明は、以下の引用例AないしDに基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
そして、平成31年2月7日提出の手続補正書による補正により、補正後の本願請求項1、2、5及び6に係る発明(本願発明1、2、5及び6)は、「拡散部材」とともに「気液接触手段」という技術的事項を有するものとなったが、原査定における引用例A(当審拒絶理由における引用例1)、引用例B、引用例C(同引用例2)、及び引用例D(同引用例3)には、「拡散部材」とともに「気液接触手段」を別個有することについて記載されておらず、周知技術であるとも認められないので、本願発明1、2、5及び6は当業者であっても原査定における引用例AないしDに基いて容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審が通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2017-74283(P2017-74283)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
P 1 8・ 536- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼藤 啓町田 豊隆金丸 治之  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 窪田 治彦
松下 聡
発明の名称 散布トレイ、三流体熱交換器、及び湿式調湿装置  
代理人 鈴木 守  
代理人 加藤 真司  

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