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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1351276
審判番号 不服2017-17981  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-04 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2017- 237「電子機器、プログラムおよび制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日出願公開、特開2018-109873〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成29年1月4日の出願であって、平成29年2月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年3月22日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成29年6月15日付けで拒絶理由が通知され、平成29年8月17日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成29年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、平成30年9月26日付けで当審より拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年11月29日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年11月29日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「近接センサと、
前記近接センサからの出力と、前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて、ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することによりジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定するコントローラと、
を備える電子機器。」

3 拒絶の理由
平成30年9月26日付けの当審が通知した拒絶理由の理由は、概略、次のとおりのものである。
本願の請求項1-6に係る発明は、本願の出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2010-503127号公報
引用文献2:特開2013-12021号公報
引用文献3:特開2012-155545号公報
引用文献4:特開2014-186401号公報
引用文献5:特開2003-173239号公報

4 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、図面(特に、図6I-図6J、図39C)とともに以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。
ア 段落【0004】-【0006】
「【0004】
プッシュボタン及び複雑なメニューシステムに関連した問題を回避するために、ポータブル電子装置は、タッチスクリーン上でユーザのジェスチャーを検出し、その検出されたジェスチャーを遂行されるべきコマンドへ変換するタッチスクリーンディスプレイを使用することができる。しかしながら、ユーザのジェスチャーは、不正確なことがあり、特定のジェスチャーが希望のコマンドにおおよそ対応するだけのことがある。又、タッチスクリーンディスプレイを伴う他の装置、例えば、タッチスクリーンディスプレイを伴うデスクトップコンピュータにも、不正確なジェスチャーを希望のコマンドへ変換する困難さがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、不正確なユーザジェスチャーを、使用、構成及び/又は適応し易い正確な意図されたコマンドへ変換するための、より透過的で且つ直感的なユーザインターフェイスを伴うタッチスクリーンディスプレイ電子装置が要望されている。このようなインターフェイスは、ポータブルマルチファンクション装置との有効性、効率及びユーザ満足度を高める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポータブル装置及びタッチスクリーン装置のためのユーザインターフェイスに関連した前記欠点及び他の問題は、ここに開示するマルチファンクション装置により軽減され又は排除される。ある実施形態では、装置はポータブルである。ある実施形態では、装置は、グラフィックユーザインターフェイス(GUI)を伴うタッチ感知ディスプレイ(「タッチスクリーン」としても知られている)と、1つ以上のプロセッサと、メモリと、多数のファンクションを遂行するためにメモリに記憶された1つ以上のモジュール、プログラム又はインストラクションセットとを有する。ある実施形態では、ユーザは、タッチ感知ディスプレイ上で主として指接触及びジェスチャーを通してGUIと対話する。ある実施形態では、ファンクションは、電話通話、ビデオ会議、e-メール、インスタントメッセージング、ブログ、デジタル写真、デジタルビデオ、ウェブブラウジング、デジタル音楽の再生、及び/又はデジタルビデオの再生を含んでもよい。これらのファンクションを遂行するためのインストラクションは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に含まれてもよいし、又は1つ以上のプロセッサで実行するように構成された他のコンピュータプログラム製品に含まれてもよい。」

イ 段落【0022】
「【0022】
ポータブルマルチファンクション装置、このような装置のためのユーザインターフェイス、及びこのような装置を使用するための関連プロセスの実施形態について説明する。ある実施形態では、装置は、PDA及び/又は音楽プレーヤファンクションのような他のファンクションも含む移動電話のようなポータブル通信装置である。」

ウ 段落【0030】
「【0030】
周辺インターフェイス118は、装置の入力及び出力周辺機器をCPU120及びメモリ102に結合する。1つ以上のプロセッサ120は、メモリ102に記憶された種々のソフトウェアプログラム及び/又はインストラクションセットを走らせ或いは実行して、装置100の種々のファンクションを遂行し、データを処理する。」

エ 段落【0037】
「【0037】
タッチスクリーン112は、LCD(液晶表示)技術又はLPD(発光ポリマー表示)技術を使用できるが、他の実施形態では他の表示技術が使用されてもよい。タッチスクリーン112及びディスプレイコントローラ156は、現在知られている又は今後開発される複数のタッチ感知技術のいずれかを使用して、接触及びその移動又は遮断を検出することができ、前記タッチ感知技術は、容量性、抵抗性、赤外線、及び表面音波技術、並びにタッチスクリーン112との1つ以上の接触点を決定するための他の接近センサアレー又は他の素子を含むが、これらに限定されない。」

オ 段落【0045】-【0047】
「【0045】
又、装置100は、1つ以上の接近センサ166を含むこともできる。図1A及び1Bは、周辺インターフェイス118に結合された接近センサ166を示している。或いは又、接近センサ166は、I/Oサブシステム106の入力コントローラ160に結合されてもよい。接近センサ166は、参考としてここに援用する次の米国特許出願に説明されたように動作することができる。即ち、“Proximity Detector In Handheld Devices”と題する米国特許出願第11/241,839号、“Proximity Detector In Handheld Devices”と題する米国特許出願第11/240,788号、“Using Ambient Light Sensor To Augment Proximity Sensor Output”と題する米国特許出願第11/620,702号、“Automated Response To And Sensing Of User Activity In Portable Devices”と題する米国特許出願第11/586,862号、及び“Methods And Systems For Automatic Configuration Of Peripherals”と題する米国特許出願第11/638,251号。ある実施形態では、接近センサは、マルチファンクション装置がユーザの耳の付近に配置されたときに(例えば、ユーザが電話コールをなすときに)タッチスクリーン112をターンオフし、ディスエイブルする。ある実施形態では、装置がロック状態にあるときに不必要なバッテリの消耗を防止するために、接近センサは、装置がユーザのポケット、ハンドバック、又は他の暗いエリアに入れられたときにスクリーンをオフに保持する。

・・・(中略)・・・

【0047】
ある実施形態では、メモリ102に記憶されるソフトウェアコンポーネントは、オペレーティングシステム126と、通信モジュール(又はインストラクションのセット)128と、接触/運動モジュール(又はインストラクションのセット)130と、グラフィックモジュール(又はインストラクションのセット)132と、テキスト入力モジュール(又はインストラクションのセット)134と、グローバルポジショニングシステム(GPS)モジュール(又はインストラクションのセット)135と、アプリケーション(又はインストラクションのセット)136と、を含むことができる。」

カ 段落【0054】-【0055】
「【0054】
アプリケーション136は、次のモジュール(又はインストラクションのセット)或いはそのサブセット又はスーパーセットを含むことができる。
●連絡先モジュール137(時々アドレス帳又は連絡先リストとも称される)、
●電話モジュール138、
●ビデオ会議モジュール139、
●e-メールクライアントモジュール、
●インスタントメッセージング(IM)モジュール141、
●ブログモジュール142、
●静止映像及び/又はビデオ映像のためのカメラモジュール143、
●映像管理モジュール144、
●ビデオプレーヤモジュール145、
●音楽プレーヤモジュール146、
●ブラウザモジュール147、
●カレンダーモジュール148、
●天気ウィジェット149-1、株ウィジェット149-2、計算器ウィジェット149-3、アラームクロックウィジェット149-4、辞書ウィジェット149-5、及びユーザにより得られる他のウィジェット、並びにユーザ生成ウィジェット149-6を含むことのできるウィジェットモジュール149、
●ユーザ生成ウィジェット149-6を形成するためのウィジェットクリエータモジュール150、
●サーチモジュール151、
●ビデオプレーヤモジュール145及び音楽プレーヤモジュール146を合併するビデオ及び音楽プレーヤモジュール152、
●ノートモジュール153、及び/又は
●マップモジュール154、及び/又は
●オンラインビデオモジュール155。
【0055】
メモリ102に記憶できる他のアプリケーション136は、例えば、他のワード処理アプリケーション、JAVAイネーブルアプリケーション、暗号化、デジタル権利の管理、音声認識、及び音声複製を含む。」

キ 段落【0060】
「【0060】
RF回路108、タッチスクリーン112、ディスプレイコントローラ156、連絡先モジュール130、グラフィックモジュール132、及びテキスト入力モジュール134に関連して、インスタントメッセージングモジュール141は、インスタントメッセージに対応するキャラクタのシーケンスを入力し、既に入力されたキャラクタを変更し、各インスタントメッセージを送信し(例えば、電話ベースのインスタントメッセージについてはショートメッセージサービス(SMS)又はマルチメディアメッセージサービス(MMS)プロトコルを使用し、或いはインターネットベースのインスタントメッセージについてはXMPP、SIMPLE又はIMPSを使用して)、インスタントメッセージを受信し、そして受信したインスタントメッセージを見るために使用することができる。ある実施形態では、送信及び/又は受信されるインスタントメッセージは、MMS及び/又はエンハンストメッセージングサービス(EMS)でサポートされるグラフィック、写真、オーディオファイル、ビデオファイル及び/又は他のアタッチメントを含むことができる。ここで使用する「インスタントメッセージング」という語は、電話ベースのメッセージ(例えば、SMS又はMMSを使用して送信されるメッセージ)、及びインターネットベースのメッセージ(例えば、XMPP、SIMPLE、又はIMPSを使用して送信されるメッセージ)の両方を指す。インスタントメッセージングモジュール141を使用するユーザインターフェイス及び関連プロセスの実施形態は、以下で詳細に説明する。」

ク 段落【0066】
「【0066】
RF回路108、タッチスクリーン112、ディスプレイシステムコントローラ156、連絡先モジュール130、グラフィックモジュール132、及びテキスト入力モジュール134に関連して、ブラウザモジュール147は、ウェブページ又はその一部分、並びにウェブページにリンクされたアタッチメント及び他のファイルをサーチし、リンクし、受信し、及び表示することを含めて、インターネットをブラウズするために使用することができる。ブラウザモジュール147を使用するユーザインターフェイス及び関連プロセスの実施形態は、以下で詳細に説明する。」

ケ 段落【0097】
「【0097】
図6A-6Kは、ある実施形態に基づきインスタントメッセージのテキストを入力するためのユーザインターフェイスを例示する図である。」

コ 段落【0114】-【0126】
「【0114】
ある実施形態では、ユーザインターフェイス600H及び600Iは、次のエレメント或いはそのサブセット又はそのスーパーセットを含む。
●上述した402、404、406、612、614、616、618、620、628、632、634、及び636、
●入力されているワードに隣接する示唆されたワード644、
●キーボード616のスペースバーにおける示唆されたワード、及び/又は
●挿入マーカー656(例えば、カーソル、挿入バー、挿入点、又はポインタ)。

・・・(中略)・・・

【0118】
ある実施形態では、挿入マーカー656又はその付近での指接触648-1は、挿入点拡大子650及び拡張挿入マーカー657-1の表示を開始する。ある実施形態では、指接触がタッチスクリーン上で移動されると(例えば、位置648-2へ)、拡張挿入マーカーが対応的に移動する(例えば、657-2へ)と共に、挿入点拡大子650も対応的に移動する。従って、挿入点拡大子650は、タッチスクリーン上の指入力を使用して、カーソル又は他の挿入マーカーを位置付けるための効率的な仕方を与える。ある実施形態では、拡大子650は、目に見える状態に留まり、タッチスクリーンとの連続的な接触が維持される限り、位置付けし直すことができる(例えば、648-1から648-2へ、更に、648-3へ)。

・・・(中略)・・・

【0126】
ある実施形態では、指接触の検出された移動は、タッチスクリーンディスプレイ上の水平成分と、タッチスクリーンディスプレイ上の垂直成分とを有する。ある実施形態では、指接触の検出された移動に基づいて拡張挿入マーカー657を移動することは、指接触が接触を遮断せずにテキストエントリーエリアの外部へ移動する場合、指接触の移動の水平成分に基づいて拡張挿入マーカー及びグラフィックの拡張部分を移動することを含む。例えば、図6I(当審注:「図6J」の誤記と認める。)において、指接触が648-2(テキストエントリーエリア612の内部)から648-3(キーボードエリア内)へ移動する場合は、拡張挿入点657及びグラフィックの拡張部分650が、648-2から648-3への移動の水平成分(図示せず)に基づいてテキストエントリーエリアの下部に沿って水平に移動し得る。」

サ 段落【0370】
「【0370】
ブラウザ
図39A-39Mは、ある実施形態に基づくブラウザのためのユーザインターフェイスを例示する図である。」

シ 段落【0377】-【0380】
「【0377】
ある実施形態では、ユーザによる実質的に垂直方向上方(又は下方)のスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページ(又は一般的に他の電子的ドキュメント)は、垂直方向に一次元的に上方(又は下方)にスクロールすることができる。例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内であるユーザによる上方スワイプジェスチャー3937に応答して、ウェブページは、垂直方向に一次元的に上方にスクロールすることができる。
【0378】
逆に、ある実施形態では、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページは、二次元的にスクロールすることができる(即ち、垂直及び水平の両方向に同時移動)。例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないユーザによる上方スワイプジェスチャー3939(図39C)に応答して、ウェブページは、スワイプ3939の方向に沿って二次元的にスクロールすることができる。
【0379】
ある実施形態では、ユーザによる複数タッチ3941及び3943の回転ジェスチャー(図39C)に応答して、ウェブページは、複数タッチ3941及び3943の回転ジェスチャーにおける回転の量が90°とは実質的に異なる場合でも、風景ビューに対して厳密に90°回転することができる(UI3900D、図39D)。同様に、ユーザによる複数タッチ3945及び3947の回転ジェスチャー(UI3900D、図39C)に応答して、ウェブページは、複数タッチ3945及び3947の回転ジェスチャーにおける回転の量が90°とは実質的に異なる場合でも、肖像ビューに対して厳密に90°回転することができる。
【0380】
従って、ユーザによる不正確なジェスチャーに応答して、グラフィックの正確な移動が生じる。装置は、ユーザによる入力が不正確でもユーザが希望するように振る舞う。又、ユーザがウェブブラウジングのためにどちらのビューを好むか選択できるように、肖像ビューを有するUI3900Cについて述べたジェスチャーを、風景ビューを伴うUI(例えば、UI3900D、図39D)にも適用できることに注意されたい。」

よって、上記各記載事項を関連図面と技術常識に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「不正確なユーザジェスチャーを、使用、構成及び/又は適応し易い正確な意図されたコマンドへ変換するための、タッチスクリーンディスプレイ電子装置であって、
装置は、タッチ感知ディスプレイ(「タッチスクリーン」)と、1つ以上のプロセッサと、メモリと、多数のファンクションを遂行するためにメモリに記憶された1つ以上のモジュール、プログラム又はインストラクションセットとを有し、
ファンクションは、インスタントメッセージング、ウェブブラウジングを含み、
装置は、PDA及び/又は音楽プレーヤファンクションのような他のファンクションも含む移動電話のようなポータブル通信装置であり、
1つ以上のプロセッサ120は、メモリ102に記憶された種々のソフトウェアプログラム及び/又はインストラクションセットを走らせ或いは実行して、装置100の種々のファンクションを遂行し、データを処理し、
タッチスクリーン112及びディスプレイコントローラ156は、現在知られている又は今後開発される複数のタッチ感知技術のいずれかを使用して、接触及びその移動又は遮断を検出することができ、前記タッチ感知技術は、容量性、抵抗性、赤外線、及び表面音波技術、並びにタッチスクリーン112との1つ以上の接触点を決定するための他の接近センサアレー又は他の素子を含み、
メモリ102に記憶されるソフトウェアコンポーネントは、オペレーティングシステム126と、アプリケーション(又はインストラクションのセット)136と、を含み、
アプリケーション136は、
●インスタントメッセージング(IM)モジュール141、
●ブラウザモジュール147、
を含み、
インスタントメッセージングモジュール141は、インスタントメッセージに対応するキャラクタのシーケンスを入力し、既に入力されたキャラクタを変更し、各インスタントメッセージを送信し、インスタントメッセージを受信し、そして受信したインスタントメッセージを見るために使用され、
ブラウザモジュール147は、ウェブページ又はその一部分、並びにウェブページにリンクされたアタッチメント及び他のファイルをサーチし、リンクし、受信し、及び表示することを含めて、インターネットをブラウズするために使用され、
インスタントメッセージのテキストを入力するためのユーザインターフェイスにおいて、
挿入マーカー656(例えば、カーソル、挿入バー、挿入点、又はポインタ)又はその付近での指接触648-1は、挿入点拡大子650及び拡張挿入マーカー657-1の表示を開始させ、指接触がタッチスクリーン上で移動されると(例えば、位置648-2へ)、拡張挿入マーカーが対応的に移動する(例えば、657-2へ)と共に、挿入点拡大子650も対応的に移動し、
指接触の検出された移動は、タッチスクリーンディスプレイ上の水平成分と、タッチスクリーンディスプレイ上の垂直成分とを有し、指接触の検出された移動に基づいて拡張挿入マーカー657を移動することは、指接触が接触を遮断せずにテキストエントリーエリアの外部へ移動する場合、指接触の移動の水平成分に基づいて拡張挿入マーカー及びグラフィックの拡張部分を移動することを含み、例えば、指接触が648-2(テキストエントリーエリア612の内部)から648-3(キーボードエリア内)へ移動する場合は、拡張挿入点657及びグラフィックの拡張部分650が、648-2から648-3への移動の水平成分に基づいてテキストエントリーエリアの下部に沿って水平に移動し、
ブラウザのためのユーザインターフェイスにおいて、
ユーザによる実質的に垂直方向上方(又は下方)のスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページ(又は一般的に他の電子的ドキュメント)は、垂直方向に一次元的に上方(又は下方)にスクロールすることができ、例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内であるユーザによる上方スワイプジェスチャー3937に応答して、ウェブページは、垂直方向に一次元的に上方にスクロールすることができ、
逆に、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページは、二次元的にスクロールすることができ(即ち、垂直及び水平の両方向に同時移動)、例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないユーザによる上方スワイプジェスチャー3939に応答して、ウェブページは、スワイプ3939の方向に沿って二次元的にスクロールすることができ、
従って、ユーザによる不正確なジェスチャーに応答して、グラフィックの正確な移動が生じ、装置は、ユーザによる入力が不正確でもユーザが希望するように振る舞う、
装置。」

(2) 引用文献2
引用文献2には、図面(特に、図5A-図5C)とともに、以下の記載がある。
ア 段落【0023】
「【0023】
タッチパネル101bは、パネル面に対する指Pの接触状態を検出する。なお、他の実施形態では、接触状態に代えてまたは接触状態に加えて、指Pの近接状態を検出してもよい。タッチパネル101bは、タッチパネル101bに指Pが接触した時点で接触信号を制御部103に供給し、タッチパネル101bから指Pが離れた時点で解除信号を制御部103に供給する。」

イ 段落【0026】
「【0026】
判定部103aは、ユーザによるタッチパネル101b上での指Pの操作に基づいて、当該操作が右手、左手、又は両手を用いた操作のいずれであるかを判定する。処理変更部103bは、判定部103aによる判定結果に基づいて、、ユーザーインターフェースを変更する。表示処理部103cは、表示パネル101aにおける表示のための処理を行う。より具体的には、処理変更部103bは、ユーザによる操作が右手、左手、又は両手を用いた操作のいずれであるかに応じて、操作の判定領域、無効領域を変更し、指に対するカーソルの中心位置を変更する。また、処理変更部103bは、ユーザによる操作が右手、左手、又は両手を用いた操作のいずれであるかに応じて、ユーザのジェスチャーに基づく情報処理装置100の動きを検出するアルゴリズムを変更する。」

ウ 段落【0046】-【0050】
「【0046】
図5A?図5Cは、操作状態に応じたGUIの構成の変更例を示す模式図である。ここで、図5Aは左手操作時のUIの例であり、図5Bは両手操作時のUIの例であり、図5Cは右手操作時のUIの例である。
【0047】
図5A?図5Cに示すように、左手操作、両手操作、右手操作のそれぞれに応じて、フリック上下左右判定のための領域と、遊び領域(無効領域)とが変更される。図5A?図5Cにおいて、「上」、「下」、「右」、「左」のそれぞれで示される領域は、上方向への操作、下方向への操作、右方向への操作、左方向への操作、をそれぞれ検出する領域を示している。例えば、図5Bにおいて、指とタッチパネル101bの接触が、「下」の領域から「上」の領域へ移動した場合、下から上へのフリック操作が行われたことが検知される。
【0048】
両手により操作している場合、フリックは比較的正確に直線で行われるため、図5Bに示すように、上下左右の判定領域の境界は直線とし、遊び領域は少なく、または無しとする。ボタン押下の判定領域も表示されているボタンのサイズとほぼ同じ領域とする。
【0049】
片手により操作している場合、図5A又は図5Cに示すように、上下左右の判定領域の境界を曲線とし、遊びの領域を大きくする。遊びの領域で操作がされた場合、操作方向を一意に特定できないので、操作の受付は行われない。これにより、操作方向を一意に特定できない曖昧な移動操作が行われた場合でも、操作方向の誤判定を確実に抑止できる。また、例えば、右手の親指でタッチパネル101b上の操作が行われた場合、親指の付け根の位置(C1)を中心として親指の先端が円弧を描くように操作されることが多い。この場合、図5Bの両手向けUIでは、C1を中心として円弧Eに沿った操作が行われると、ユーザーは下から上へのフリック操作を意図しているにも関わらず、円弧Eに沿って「下」、「左」、「上」、「右」の各領域を通るようにタッチパネル101bが操作されるため、誤操作が生じてしまう。
【0050】
このため、図5Cのように右手向けUIを変更することによって、ユーザーの操作(円弧E)は、「下」、「上」の2つの領域を通るようにタッチパネル101bが操作されるため、ユーザーが意図する下から上へのフリック操作を確実に検出することができる。従って、誤操作が行われることを確実に抑えることができる。」

(3) 引用文献3
引用文献3には、図面とともに、段落【0003】に、以下の記載がある。
「【0003】
このようなタッチパネルによって、利用者の指示を容易に入力することができ、極めて有効であるが、ほとんどのタッチパネルにおいては原則として利用者の指や指示部材をタッチパネルに接触し、また押圧力を付与するものが多い。そのため、特に指でタッチする場合には指の汚れがディスプレイに付着し、画面が次第に汚れてくることもある。そのため、タッチパネルの操作を行わずに、タッチパネルに手や指等が接近したことを検出することが望まれることが多い。そのような場合、タッチパネルの表面に物体が近付いたことを検出する近接センサを用いている。」

(4) 引用文献4
引用文献4には、図面とともに、段落【0002】に、以下の記載がある。
「【0002】
近年、普及が拡大しているスマートフォン、タブレット端末、電子ブックリーダー等の情報表示装置には、近接センサや高感度のタッチパネルなどにより、情報表示装置の表示画面に指や手(掌)などの操作体を接触させることなく近接させた状態で操作(近接操作)可能なものも出てきている。このような近接操作に関する技術として、特許文献1には、手の操作点のXYZ座標を測定し手の傾きを検出することでページ送り操作の順方向・逆方向の判定を行う技術が開示されている。また、例えば、特許文献2には、ページ送り操作時の手の近接面積の変化を検知し、変化に応じて画面表示を切り替える技術が開示されている。また、例えば、特許文献3には、表示画面から指が離れた時の速度を検出して近接フリック操作を判定してスクロールを行う技術が開示されている。なお、本明細書では、スクロール(画像移動)にページ送りを含むものとする。」

(5) 引用文献5
引用文献5には、図面(特に、図4-図7)とともに、段落【0032】-【0045】に、以下の記載がある。
「【0032】図4は、本発明の第2実施形態に係る携帯電話機で採用する操作方向判断のための領域分割の態様を示す図である。図4は4方向操作の例であるが、この実施形態では、4分割した4つの領域18、19、20、21の夫々の境界部分に非認識領域22を設けたことを特徴とする。4つの非認識領域22の幅は、同じ幅とする。図4は4方向操作の場合であるが、8方向操作や2方向操作の領域分割でも、操作方向判断のための各領域の境界部分に非認識領域を設ける。
【0033】この図4の例では、操作手段11の操作方向が領域18に入っている場合には上方向Aと認識し、領域19に入っている場合には右方向Cと認識し、領域20に入っている場合は下方向Dと認識し、領域21に入っている場合には左方向Eと認識する。
【0034】しかし、操作手段11の操作方向が非認識領域22に入っている場合には、カーソル移動や画面スクロールは実行しない。このように操作方向を認識する領域の境界に非認識領域22を設けることで、操作者の曖昧な操作によって思わぬ方向にカーソルが移動したり画面がスクロールされてしまうのを防止することが可能となる。
【0035】図5は、本発明の第3実施形態に係る携帯電話機で採用する操作方向判断のための領域分割の態様を示す図である。2方向操作、4方向操作、8方向操作のいずれかを表示情報に従って選択することは第1実施形態、第2実施形態と同様であるが、本実施形態では、操作方向を判断する領域を不均等分割していることを特徴とする。
【0036】図5に示す領域分割の態様は8方向分割の例であるが、本実施形態では、上下左右の判断領域は狭い領域(上下左右方向の線A、C、D、Eを中心に40度の範囲)とし、斜めの領域は広い領域(斜めの線B、Fを中心に50度の範囲)としている。即ち、この実施形態では、上下左右方向の指示操作は正確性が高く、斜め方向の指示操作は曖昧であることが多いことに鑑み、斜め方向の操作判断領域を広くしていることを特徴とする。
【0037】このように、操作方向判断のための領域分割を不均等とすることで、操作者の感覚上、斜め方向のように厳密な方向指示がしづらい方向の判断領域を広くとることができ、カーソル移動やスクロール動作を確実にできるようになる。
【0038】図6、図7は、本発明の第4実施形態に係る携帯電話機で採用する操作方向判断のための領域分割の態様を示す図である。本実施形態も第1実施形態と同様に、2方向操作、4方向操作、8方向操作のいずれかを表示情報に従って装置側が自動選択することができるものであるが、そのうち、図6、図7は、4方向操作の領域分割例を示すものである。
【0039】この実施形態に係る携帯電話機は、右利き用設定と、左利き用設定のいずれかを選択可能となっており、右利き用設定がされると図6の領域分割の決定が図3の操作方向分割手段14で為され、左利き用設定がされると図7の領域分割の決定が操作方向分割手段14で為される。
【0040】右利きの操作者が図1に示す携帯電話機1を右手で持って全方向操作部3を操作する場合には、右手の親指で操作することになる。この場合、操作者の右手親指は、携帯電話機1の垂直線Aの方向よりも、図6に示す様に略11時の方向すなわち垂直線Aに対して反時計方向Kに所要角度傾くのが自然である。
【0041】そこで、図6の例では、4方向操作の操作方向判断領域を、図2(b)に比べて反時計方向Kに所要角度だけ回転させて設ける様にする。同様に、8方向操作や2方向操作の操作方向判断領域も、反時計方向Kに所要角度だけ回転させて設ける。図6の例では、垂直線Aを反時計方向Kに所要角度だけ回転させた線A1を中心として90度の範囲を「上方向」と判断する領域としている。
【0042】逆に、左利きの操作者が図1に示す携帯電話機1を左手で持って全方向操作部3を操作する場合には、左手の親指で操作することになる。この場合、操作者の左手親指は、携帯電話機1の垂直線Aの方向よりも、図7に示す様に略1時の方向すなわち垂直線Aに対して時計方向Hに所要角度傾くのが自然である。
【0043】そこで、図7の例では、4方向操作の操作方向判断領域を、図2(b)に比べて時計方向Hに所要角度だけ回転させて設ける様にする。同様に、8方向操作や2方向操作の操作方向判断領域も、時計方向Hに所要角度だけ回転させて設ける。図7の例では、垂直線Aを時計方向Hに所要角度だけ回転させた線A2を中心として90度の範囲を「上方向」と判断する領域としている。
【0044】このように、ユーザの利き手に応じて操作方向判断領域を設定することで、ユーザにとって操作し易い携帯電話機を提供可能となる。
【0045】尚、上述した実施形態として、操作方向判断領域を均等分割した実施形態、非認識領域を設けた実施形態、不均等分割した実施形態、利き手に対応して領域分割した実施形態について説明したが、これらの実施形態を複合して適用することも可能であることはいうまでもない。即ち、図6,図7の実施形態に非認識領域を設け、且つ不均等分割する実施形態とすることも可能である。」

(6) 周知文献1
新たに引用する特開2011-138410号公報(以下、「周知文献1」という。平成29年2月14日付け拒絶理由通知で提示された「先行技術文献」の一つである。)には、図面(特に図7A-図7B)とともに、段落【0051】-【0055】に、以下の記載がある。
「【0051】
図7A、7Bに示すように、コマンダ100は、操作方向の判定結果に応じて、上・下・左・右方向を各々に割当てられた4の領域Aa1?Aa4またはAb1?Ab4からなる判定領域JaまたはJbを設定する(S107、S109)。なお、判定領域JaまたはJbの設定は、操作方向の判定処理(S121)以前であれば他のタイミングで行われてもよい。
【0052】
ここで、片手操作時には、図7Aに示すように、片手操作時のポインタPの移動軌跡に近似して予め求められ、検出された移動始点M0を交点として設定された2以上の曲線La1、La2を用いて、判定領域Jaが設定される(S107)。
【0053】
判定領域Jaは、例えば、移動始点M0を交点とし、円弧を表す2の曲線La1、La2を用いて設定される。なお、判定領域Jaは、例えば、y=x0.5、y=(-x+1)0.5等の2の曲線等、片手操作時の指の移動軌跡を近似可能な曲線を用いて設定されてもよい。また、判定領域Jaは、3または4の曲線を用いて表される4の領域として設定されてもよい。
【0054】
一方、両手操作時には、図7Bに示すように、両手操作時のポインタPの移動軌跡に基づきポインタPの移動始点M0を交点として設定された2の直線Lb1、Lb2を用いて、判定領域Jbが設定される(S109)。
【0055】
判定領域Jbは、例えば、移動始点M0を交点として互いに直交し、ディスプレイ101に対して±45°の傾きを有する2の直線Lb1、Lb2を用いて設定される。なお、判定領域Jbは、互いに直交しないが交差する2の直線を用いて設定されてもよい。また、判定領域Jbは、ディスプレイ101に対して±45°以外の傾きを有する2の直線を用いて設定されてもよい。また、判定領域Jbは、3または4の直線を用いて表される4の領域として設定されてもよい。」

5 対比
本願発明と引用発明とを対比すると以下のことがいえる。

(なお、請求項1の記載では、「実行される機能」に応じてジェスチャの方向を決定している一方、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
「【0055】
電子機器1の状態は、ディスプレイ14に表示される画面の向きに限られない。電子機器1の状態は、例えば電子機器1において実行されている機能に応じて決定されてもよい。
【0056】
例えば、近接センサ18がジェスチャを検出したときに実行されている機能が、ディスプレイ14に表示された情報の閲覧であり、……
【0057】
また、例えば、近接センサ18がジェスチャを検出したときに実行されている機能が、電話の着信であり、……
【0058】
また、例えば、近接センサ18がジェスチャを検出したときに実行されている機能が、所定のアプリケーションの使用であるとする。……」
これらの記載から、発明の詳細な説明では、一貫して、(将来において実行が予定されるという意味での)「実行される機能」ではなく、(ジェスチャを検出したときに)「実行されている機能」に応じて、ジェスチャの方向を決定することが記載されている。
このため、請求項1に記載の「実行される機能」とは、発明の詳細な説明を参照すれば、少なくとも、(ジェスチャを検出したときに)「実行されている機能」を含む意味であるものと解して、以下では対比を行う。)

(1) 引用発明の「タッチスクリーン112」は、「タッチスクリーン112及びディスプレイコントローラ156は、現在知られている又は今後開発される複数のタッチ感知技術のいずれかを使用して、接触及びその移動又は遮断を検出することができ、前記タッチ感知技術は、容量性、抵抗性、赤外線、及び表面音波技術、並びにタッチスクリーン112との1つ以上の接触点を決定するための他の接近センサアレー又は他の素子を含」むから、本願発明の「近接センサ」と、少なくとも「センサ」である点で共通するといえる。

(2) 引用発明の「1つ以上のプロセッサ120」は、本願発明の「コントローラ」に相当する。
引用発明の「1つ以上のプロセッサ120」は、
「メモリ102に記憶された種々のソフトウェアプログラム及び/又はインストラクションセットを走らせ或いは実行して、装置100の種々のファンクションを遂行し、データを処理し」、
「メモリ102に記憶されるソフトウェアコンポーネントは、オペレーティングシステム126と、アプリケーション(又はインストラクションのセット)136と、を含み、
アプリケーション136は、
●インスタントメッセージング(IM)モジュール141、
●ブラウザモジュール147、
を含み、
インスタントメッセージングモジュール141は、インスタントメッセージに対応するキャラクタのシーケンスを入力し、既に入力されたキャラクタを変更し、各インスタントメッセージを送信し、インスタントメッセージを受信し、そして受信したインスタントメッセージを見るために使用され、
ブラウザモジュール147は、ウェブページ又はその一部分、並びにウェブページにリンクされたアタッチメント及び他のファイルをサーチし、リンクし、受信し、及び表示することを含めて、インターネットをブラウズするために使用され」るものであるから、引用発明において、「インスタントメッセージのテキストを入力するためのユーザインタフェース」と「ブラウザのためのユーザインターフェイス」のユーザインタフェースを提供する主体は、「1つ以上のプロセッサ120」であるといえる。
引用発明の「タッチスクリーン112」によって「(指)接触及びその移動又は遮断を検出する」場合、検出された情報が、「タッチスクリーン112」から「出力」されていることは明らかであって、本願発明の「前記近接センサからの出力」と、「前記センサからの出力」である点で共通するといえる。
引用発明の「インスタントメッセージ」と「ブラウザ」は、本願発明の「前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能」と、「前記センサが前記出力を行ったときに実行される機能」である点で共通するといえる。
引用発明は、要するに、「インスタントメッセージ」のテキスト入力をしているときは、「指接触648-1」を契機として、「挿入点拡大子650及び拡張挿入マーカー657-1の表示を開始させ」、さらに、「指接触が接触を遮断せずにテキストエントリーエリアの外部へ移動する場合、指接触の移動の水平成分に基づいて拡張挿入マーカー及びグラフィックの拡張部分を移動する」一方、「ブラウザ」の表示をしているときは、「完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内であるユーザによる上方スワイプジェスチャー3937に応答して、ウェブページは、垂直方向に一次元的に上方にスクロールする」ものであるから、「タッチスクリーン112」により検出された「(指)接触及びその移動又は遮断」と、「インスタントメッセージ」又は「ブラウザ」のどちらを実行しているかに応じて、動作している点で、本願発明が「前記近接センサからの出力と、前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて」動作することと、「前記センサからの出力と、前記センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて」動作する点で共通するといえる。
また、引用発明は、要するに、「タッチスクリーン112」により検出された「(指)接触及びその移動又は遮断」と、「インスタントメッセージ」又は「ブラウザ」のどちらを実行しているかに応じて、「インスタントメッセージ」を実行している場合には、「拡張挿入マーカー」等を、「指接触が648-2(テキストエントリーエリア612の内部)から648-3(キーボードエリア内)へ移動する場合は」、「(指接触の)移動の水平成分に基づいて」、「テキストエントリーエリアの下部に沿って水平に移動」させて、「水平」方向のジェスチャを優先する一方、「ブラウザ」を実行している場合には、ウェブページを「完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内であるユーザによる上方スワイプジェスチャー3937に応答して、ウェブページは、垂直方向に一次元的に上方(又は下方)にスクロールする」ことで、「垂直」方向のジェスチャを優先している点で、本願発明が「ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することによりジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定する」ことと、「ジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定する」点で共通するといえる。
以上のことから、引用発明の「1つ以上のプロセッサ120」が、
「インスタントメッセージのテキストを入力するためのユーザインターフェイスにおいて、
挿入マーカー656(例えば、カーソル、挿入バー、挿入点、又はポインタ)又はその付近での指接触648-1は、挿入点拡大子650及び拡張挿入マーカー657-1の表示を開始させ、指接触がタッチスクリーン上で移動されると(例えば、位置648-2へ)、拡張挿入マーカーが対応的に移動する(例えば、657-2へ)と共に、挿入点拡大子650も対応的に移動し、
指接触の検出された移動は、タッチスクリーンディスプレイ上の水平成分と、タッチスクリーンディスプレイ上の垂直成分とを有し、指接触の検出された移動に基づいて拡張挿入マーカー657を移動することは、指接触が接触を遮断せずにテキストエントリーエリアの外部へ移動する場合、指接触の移動の水平成分に基づいて拡張挿入マーカー及びグラフィックの拡張部分を移動することを含み、例えば、指接触が648-2(テキストエントリーエリア612の内部)から648-3(キーボードエリア内)へ移動する場合は、拡張挿入点657及びグラフィックの拡張部分650が、648-2から648-3への移動の水平成分に基づいてテキストエントリーエリアの下部に沿って水平に移動し、
ブラウザのためのユーザインターフェイスにおいて、
ユーザによる実質的に垂直方向上方(又は下方)のスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページ(又は一般的に他の電子的ドキュメント)は、垂直方向に一次元的に上方(又は下方)にスクロールすることができ、例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内であるユーザによる上方スワイプジェスチャー3937に応答して、ウェブページは、垂直方向に一次元的に上方にスクロールすることができ、
逆に、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないスワイプジェスチャーに応答して、ウェブページは、二次元的にスクロールすることができ(即ち、垂直及び水平の両方向に同時移動)、例えば、完全な垂直の所定角度(例えば、27°)以内にないユーザによる上方スワイプジェスチャー3939に応答して、ウェブページは、スワイプ3939の方向に沿って二次元的にスクロールすることができ、
従って、ユーザによる不正確なジェスチャーに応答して、グラフィックの正確な移動が生じ、装置は、ユーザによる入力が不正確でもユーザが希望するように振る舞う」という動作をすることは、本願発明の「前記近接センサからの出力と、前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて、ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することによりジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定するコントローラ」と、「前記センサからの出力と、前記センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて、ジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定するコントローラ」である点で共通するといえる。

(3) 引用発明の「不正確なユーザジェスチャーを、使用、構成及び/又は適応し易い正確な意図されたコマンドへ変換するための、タッチスクリーンディスプレイ電子装置であって」、「装置は、PDA及び/又は音楽プレーヤファンクションのような他のファンクションも含む移動電話のようなポータブル通信装置であ」るものは、本願発明の「電子機器」に相当する。

よって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。

<一致点>
「センサと、
前記センサからの出力と、前記センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて、ジェスチャの方向として優先的に判定される優先判定方向を決定し、前記優先判定方向に基づいて、前記ジェスチャの方向を決定するコントローラと、
を備える電子機器。」

[相違点1]
「センサ」として、本願発明では、「近接センサ」を採用しており、「前記近接センサからの出力と、前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて」優先判定方向を決定してジェスチャの方向を決定するのに対して、引用発明では、「タッチスクリーン112」は、「タッチ感知技術」として「タッチスクリーン112との1つ以上の接触点を決定するための他の接近センサアレー又は他の素子を含」むものであるが、「近接センサ」を採用することが明確には特定されていない点。

[相違点2]
本願発明では「ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することにより」、優先判定方向を決定し、ジェスチャの方向を決定するのに対して、引用発明では「ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することにより」、優先判定方向を決定し、ジェスチャの方向を決定することは特定されていない点。

6 判断
[相違点1]について
引用発明の「タッチスクリーン112」は、「タッチ感知技術」として、「タッチスクリーン112との1つ以上の接触点を決定するための他の接近センサアレー又は他の素子を含」むものである。
一般に、タッチパネル等に対するユーザの操作を検出する際、画面の汚れ防止等を考慮して、センサとして「近接センサ」を用いることは、周知技術である(例えば、引用文献2(上記4(2)ア)、引用文献3(上記4(3))、引用文献4(上記4(4))の記載を参照)。
よって、引用発明の「タッチスクリーン112」に対するユーザの操作を検出する際、画面の汚れ防止等を考慮して、「近接センサ」を用いる周知技術を採用することによって、「近接センサ」を備え、「前記近接センサからの出力と、前記近接センサが前記出力を行ったときに実行される機能とに応じて」、優先判定方向を決定し、ジェスチャの方向を決定する、上記[相違点1]に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得ることである。

[相違点2]について
一般に、ユーザの操作の方向や大きさを判定する際、所定の「判定領域」を利用して判定を行うとともに、必要に応じて所定の「判定領域」の割り当てを変更することは、周知・慣用技術である(例えば、引用文献2(図5A-図5C、上記4(2)イ、ウ)、引用文献5(図4-図7、上記4(5))、周知文献1(図7A-図7B、上記4(6))を参照。)。
よって、引用発明において、ジェスチャの方向を決定する際、所定の「判定領域」を利用して判定を行うとともに、必要に応じて所定の「判定領域」の割り当てを変更する周知・慣用技術を採用することによって、「ジェスチャの方向を決定するために用いられる判定領域の割り当てを変更することにより」、優先判定方向を決定し、ジェスチャの方向を決定する、上記[相違点2]に係る構成とすることは、当業者が容易に推考し得ることである。

さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知・慣用技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。

7 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知・慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-08 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2017-237(P2017-237)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊池 伸郎岩橋 龍太郎松田 岳士  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
発明の名称 電子機器、プログラムおよび制御方法  
代理人 太田 昌宏  
代理人 杉村 憲司  

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