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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1351277
審判番号 不服2017-18052  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-05 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2015-208838「シールドフィルム、シールドプリント配線板、及び、シールドフィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 36044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年10月12日(優先権主張 2011年11月24日)を国際出願日として出願した特願2013-545845号の一部を平成27年10月23日に新たな出願としたものであって、平成28年9月30日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成29年2月3日付けで手続補正がなされたが、同年8月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月5日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされた。
その後、当審の平成30年12月7日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成31年2月12日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成31年2月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
グランド用配線パターンを含んでいるプリント回路が形成されたベース部材と、当該プリント回路を覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有したプリント配線板と、
前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、
を有することを特徴とするシールドプリント配線板であって、
前記プリント回路は10MHz?10GHzの周波数の信号を伝送する信号伝送系を有し、
前記シールドフィルムは、層厚が2μm?5μmの圧延銅箔により形成された銀または金から構成される金属層と、厚み方向に電気的な導電状態が確保された異方導電性を有する異方導電性接着剤層とを積層状態で備えることを特徴とするシールドプリント配線板。」

なお、下線を付した「圧延銅箔により形成された銀または金から構成される金属層」なる記載について、「銀または金から構成される」という記載部分は誤記(錯誤により加入されたもの)であり、正しくは「圧延銅箔により形成された金属層」であると認められる(この点については、平成31年2月26日に請求人側にも確認済みである。)。

3.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開2007-294918号公報(以下、「引用例」という。)には、「シールドフィルム及びシールドプリント配線板」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した)。
(1)「【請求項1】
絶縁層と耐熱性の高い難燃性樹脂を含有するシールド層とを有することを特徴とするシールドフィルム。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項3】
前記シールド層が、前記絶縁層の少なくとも片面に形成された1層以上の金属層と、1層以上の異方導電性接着剤層とを有することを特徴とする請求項1に記載のシールドフィルム。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1項に記載のシールドフィルムを、1層以上のプリント回路を含む基体の少なくとも片面上に有することを特徴とするシールドプリント配線板。」

(2)「【0001】
本発明は、コンピュータ、携帯電話、通信機器、ビデオカメラなどの装置内等に使用されているプリント配線板に用いることが可能なシールドフィルム、及び、このシールドフィルムを用いたシールドプリント配線板に関するものである。」

(3)「【0010】
本発明のシールドフィルムの前記シールド層においては、前記絶縁層の少なくとも片面に形成された1層以上の金属層と、1層以上の異方導電性接着剤層とを有することが好ましい。上記構成によれば、プリント回路に本発明のシールドフィルムを貼り合せた際、異方導電性接着剤層がグランド回路のパターンと本発明のシールドフィルムにおける金属層とを導電接続させるので、電磁波シールド性を発揮できる。」

(4)「【0018】
金属層3を形成する金属材料としては、銅、アルミ、銀、金などを挙げることができる。金属材料は、求められるシールド特性に応じて適宜選択すればよい。金属層3の形成方法としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキなどがあるが、量産性を考慮すれば真空蒸着が望ましく、安価で安定して金属薄膜を得ることができる。また、金属層3は、金属薄膜に限られず、金属箔を用いてもよい。金属層3の厚さは、一般に0.01?10μmとするのが好ましい。0.01μmを下回るとシールド効果が不十分となり、逆に10μmを超えると可撓性が悪くなる。特に可撓性が必要な場合には2μm以下が好ましく、特にシールド効果が必要な場合には10μm以下が好ましい。」

(5)「【0028】
なお、本発明のシールドフィルムは、FPC、COF(チップオンフレックス)、RF(リジットフレックスプリント板)、多層フレキシブル基板、リジット基板などに利用できるが、必ずしもこれらに限られない。なお、FPCに貼付した場合の構造としては、例えば、図2に示すようなシールドプリント配線板10となる。ここで、5はベースフィルム、6はプリント回路、7は絶縁フィルム、8は基体フィルムである。
【0029】
プリント回路6の表面は、信号回路6aとグランド回路6bとからなり、グランド回路6bの少なくとも一部(非絶縁部)6cを除いて、絶縁フィルム7によって被覆されている。絶縁フィルム7は、内部にシールドフィルム1の接着剤層4の一部が流れ込んでいる絶縁除去部7aを有している。これにより、グランド回路6bと金属層3とは電気的に接続される。」

・上記引用例に記載の「シールドフィルム及びシールドプリント配線板」のうちの「シールドプリント配線板」は、上記(1)、(3)、(5)の記載事項、及び図2によれば、金属層3と異方導電性の接着剤層4とを積層状態で有するシールドフィルム1が、プリント回路6を含む基体フィルム8(プリント配線板)の片面上に貼付されてなるものである。
・上記(2)の記載事項によれば、シールドフィルム1は、携帯電話などの装置内に使用されているプリント配線板に用いることが可能なものである。
・上記(4)の記載事項によれば、金属層3は、銅などの金属材料から形成され、その厚さは0.01?10μmであり、金属箔を用いてもよいものである。
・上記(5)の記載事項、及び図2によれば、プリント回路6は、信号回路6aとグランド回路6bとからなり、プリント回路6を含む基体フィルム8は、プリント回路6が形成されたベースフィルム5と、グランド回路6bの少なくとも一部6cを除いてプリント回路6の表面を被覆してベースフィルム5上に設けられた絶縁フィルム7とを有するものである。
・上記(3)の記載事項、図2によれば、異方導電性の接着剤層4は、プリント回路6を含む基体フィルム8に貼り合わせた際、グランド回路6bのパターンと金属層3とを導通接続させるものである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「信号回路とグランド回路とからなるプリント回路を含む基体フィルムの片面側に、シールドフィルムが貼付されてなるシールドプリント配線板であって、
前記プリント回路を含む基体フィルムは、前記プリント回路が形成されたベースフィルムと、前記グランド回路の少なくとも一部を除いて前記プリント回路の表面を被覆して前記ベースフィルム上に設けられた絶縁フィルムとを有し、携帯電話などの装置内に使用されるものであり、
前記シールドフィルムは、厚さが0.01?10μmの銅からなる金属層と、前記プリント回路を含む基体フィルムに当該シールドフィルムを貼り合わせた際、前記グランド回路のパターンと前記金属層とを導電接続させる異方導電性の接着剤層とを積層状態で備え、
前記金属層として、金属箔を用いてなるシールドプリント配線板。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明における「信号回路とグランド回路とからなるプリント回路を含む基体フィルムの片面側に、シールドフィルムが貼付されてなるシールドプリント配線板であって、前記プリント回路を含む基体フィルムは、前記プリント回路が形成されたベースフィルムと、前記グランド回路の少なくとも一部を除いて前記プリント回路の表面を被覆して前記ベースフィルム上に設けられた絶縁フィルムとを有し、携帯電話などの装置内に使用されるものであり」によれば、
(a)引用発明における「グランド回路」、当該グランド回路を含む「プリント回路」、そのプリント回路が形成された「ベースフィルム」、プリント回路の表面を被覆してベースフィルム上に設けられた「絶縁フィルム」、「プリント回路を含む基体フィルム」が、それぞれ本願発明でいう「グランド用配線パターン」、「プリント回路」、「ベース部材」、「絶縁フィルム」、「プリント配線板」に相当し、
(b)引用発明における、プリント回路を含む基体フィルムの片面側に貼付されてなる「シールドフィルム」が、本願発明でいう「シールドフィルム」に相当する。
(c)そして、引用発明における「シールドプリント配線板」は、本願発明でいう「シールドプリント配線板」に相当するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「グランド用配線パターンを含んでいるプリント回路が形成されたベース部材と、当該プリント回路を覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有したプリント配線板と、前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、を有することを特徴とするシールドプリント配線板」である点で一致する。

(2)引用発明における「前記プリント回路を含む基体フィルムは、・・・・携帯電話などの装置内に使用されるものであり」によれば、
引用発明における「プリント回路を含む基体フィルム」にあっても、携帯電話などの装置内に使用されるものであることから、そのプリント回路(プリント回路が含む信号回路)は当然、所定の周波数の信号を伝送する信号伝送系を有するものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記プリント回路は所定の周波数の信号を伝送する信号伝送系を有」するものである点で共通するといえる。
ただし、所定の周波数について、本願発明では、「10MHz?10GHz」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点で一応相違している。

(3)引用発明における「前記シールドフィルムは、厚さが0.01?10μmの銅からなる金属層と、前記プリント回路を含む基体フィルムに当該シールドフィルムを貼り合わせた際、前記グランド回路のパターンと前記金属層とを導電接続させる異方導電性の接着剤層とを積層状態で備え、
前記金属層として、金属箔を用いてなる・・」によれば、
(a)引用発明における、シールドフィルムが備える「金属層」は、本願発明でいう「金属層」に相当し、
また、引用発明の「金属層」は、銅からなり、金属箔を用いてなるものであることから、本願発明の「金属層」とは、「銅箔」により形成されたものである点で共通する。
さらに、引用発明の「金属層」は、その厚さについても、0.01?10μmであり、本願発明で特定する「2μm?5μm」の範囲(条件)と重複する。
(b)引用発明における、シールドフィルムが備える「異方導電性の接着剤層」は、本願発明でいう「異方導電性接着剤層」に相当し、
引用発明の「異方導電性の接着剤層」にあっても、プリント回路を含む基体フィルムにシールドフィルムを貼り合わせた際、グランド回路のパターンと金属層とを導電接続させるものであることから、当然、その厚み方向に電気的な導通状態が確保されてなるものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記シールドフィルムは、層厚が2μm?5μmの銅箔により形成された金属層と、厚み方向に電気的な導電状態が確保された異方導電性を有する異方導電性接着剤層とを積層状態で備える」ものである点で共通する。
ただし、銅箔により形成された金属層について、本願発明では、「圧延」銅箔である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。

よって、本願発明と引用発明とは、
「グランド用配線パターンを含んでいるプリント回路が形成されたベース部材と、当該プリント回路を覆って当該ベース部材上に設けられた絶縁フィルムと、を有したプリント配線板と、
前記プリント配線板上に設けられたシールドフィルムと、
を有することを特徴とするシールドプリント配線板であって、
前記プリント回路は所定の周波数の信号を伝送する信号伝送系を有し、
前記シールドフィルムは、層厚が2μm?5μmの銅箔により形成された金属層と、厚み方向に電気的な導電状態が確保された異方導電性を有する異方導電性接着剤層とを積層状態で備えることを特徴とするシールドプリント配線板。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
銅箔により形成された金属層について、本願発明では、「圧延」銅箔である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点2]
プリント回路が伝送する信号の所定周波数について、本願発明では、「10MHz?10GHz」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2004-268319号公報(段落【0058】を参照)、特開2007-287544号公報(段落【0053】を参照)、特開2008-120081号公報(段落【0023】を参照)に記載のように、銅箔として「圧延」銅箔は周知のものであり、引用発明においても、金属層を形成する銅からなる金属箔として、「圧延」銅箔を用いることは当業者であれば適宜なし得ることである。

[相違点2]について
引用発明における「シールドフィルム」は、携帯電話などの装置内に使用されるプリント回路を含む基体フィルム(すなわち、プリント配線板)に用いられるものであるところ、例えば当審の拒絶の理由に引用された特開2002-111233号公報の段落【0013】に記載のように、携帯電話内のプリント配線板では通常、数十MHzからGHz帯の周波数の信号を伝送するものであることからすると、当該相違点2は、実質的な相違点とはならないか、たとえ実質的な相違点にあたるとしても、携帯電話内に使用されるプリント回路を含む基体フィルム(プリント配線板)におけるプリント回路で伝送される信号の周波数として、本願発明で特定する「10MHz?10GHz」の範囲を満たすものとすることは当業者であればごく普通になし得ることである。

よって、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は平成31年2月12日提出の意見書において、「引用文献1の段落[0018]や[0033]の記載からも明らかな通り、シールド性を担保する目的であれば金属層の厚みは0.1μm程度で十分であり、可撓性の観点からも2μmを超える厚みの金属層を用いる動機付けがあるとは言えません。」と主張している。
しかしながら、引用発明における「金属層」は、厚さが0.01?10μmとされるものであるところ、蒸着などで形成される金属薄膜ではなく、金属箔(銅箔)が用いられることから、上記厚さの範囲における比較的厚めの値となるはずである〔上記相違点1で検討したように、圧延銅箔を用いた場合、その厚さとして例えば上記特開2004-268319号公報(段落【0058】を参照)では4μm、特開2007-287544号公報(段落【0053】を参照)では5μmの例が記載されている。〕。そして、引用例(上記引用文献1)の段落【0018】には「特に可撓性が必要な場合には2μm以下が好ましく」と記載されているものの、あくまでも「特に可撓性が必要な場合」のことであり、これに対して、引用発明は必ずしも「特に可撓性が必要」とされるものではないといえ、特に可撓性が必要とされないような場合には2μmを超えて良いことは明らかである。また、同段落には「特にシールド効果が必要な場合には10μm以下が好ましい」とも記載されており、かかる記載からしてもシールド効果を重視して2μmを超えるような厚みの金属層を用いることの動機付けは十分にあるということができる。
よって、請求人の上記主張は採用することはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-05 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2015-208838(P2015-208838)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
鈴木 圭一郎
発明の名称 シールドフィルム、シールドプリント配線板、及び、シールドフィルムの製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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