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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1351286
審判番号 不服2018-5002  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-12 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2014-67001「液状物封入包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月2日出願公開、特開2015-189479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月27日に特許出願され、平成30年1月4日付けで拒絶査定され(謄本発送は、同月16日)、同年4月12日に審判請求と同時に手続補正がされ、同年11月27日付けで当審から拒絶理由が通知され、平成31年2月1日に意見書の提出とともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成31年2月1日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりの発明(以下「本願発明」という。)である。
「【請求項1】
即席めん等の加工食品に添付される液状物封入包装体であって、当該液状物封入包装体が、シート状の軟包材を素材とし、当該シートを折り返し及びシールすることにより略偏平状の袋体を形成し、当該袋体に液状物を充填後にシールして製造する、液状物が封入された三方シールタイプの食品の液状物封入包装体であって、該包装体の外表面において、所定の方向に視認できる折目線(当該折目線に沿って内部を区画するものを除く)を設け、
液状物の押し出し時においては、当該液状物封入包装体の一端を開封後に、開封した後の包装体を前記折目線に沿って折り曲げ、次に、当該折目線に従って折り曲げた包装体に対して、開封時の開口部とは逆端部から指で押圧して液状物を開口部に向かって押し出すようにして開口部より液状物を搾り出すようにしたことを特徴とする食品の液状物封入包装体。」

第3 当審からの拒絶理由
当審が通知した平成30年11月27日付けの拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
「本件出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記A?Cの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

A.特開2008-247420号公報
B.特開2005-126080号公報
C.実願昭62-176576号(実開平1-82172号)のマイクロフィルム」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献Aの記載事項
引用文献Aには、次の記載がある。
(1)特許請求の範囲
ア 【請求項1】
「少なくとも基材と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体により形成され、流動物が封入される収納部と、該収納部の周縁を閉鎖するシール部とを有する流動物包装体であって、
前記シール部には、前記収納部を略線対称に分割する対称軸を挟んで同一方向に突出する2本以上の注出通路と、該注出通路を介して前記収納部と外部とを連通させる開封手段とが形成されており、前記対称軸を折り線として前記収納部を二つ折りにした状態で外部から押圧することにより封入された流動物を外部に取り出し可能としたことを特徴とする流動物包装体。」
イ 【請求項6】
「前記収納部又は前記シール部には、前記対称軸に重なるように折り曲げ指示線が表示されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の流動物包装体。」
(2)段落【0002】
「液状、或いはゲル状の製剤や食品等の流動物を包装フィルムで密封する場合の包装形態としては、内面側に熱可塑性樹脂が積層された樹脂フィルムを用い、4辺または3辺をシールして形成されたフィルム袋に内容物を充填した後、充填口をシールする包装形態が用いられる。これらの包装形態では、フィルム端縁のシール部に形成された開封用の切り込み(ノッチ)の両側を把持してフィルムを引き裂くことで、流動物を取り出すようになっている。」
(3)【発明の効果】
ア 段落【0016】
「本発明の第1の構成によれば、収納部を二つ折りにした状態で外部から収納部を押圧することにより圧力を流動物に効率良く伝達できるため、注出通路を介して収納部内の流動物を片手で残らず注ぎ出すことができ、押圧力を調整するだけで流動物の注出量も簡単に調整できる。さらに、包装体を再び平坦に伸ばすことにより、残りの流動物の漏出も抑制可能となる。」
イ 段落【0021】
「また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の流動物包装体において、収納部又はシール部に対称軸に重なる折り曲げ指示線を表示することにより、ユーザが包装体を対称に二つ折りする際の指標となり、使用性が向上する。」
(4)【発明を実施するための最良の形態】
ア 段落【0025】
「以下、図面を参照しながら本発明の流動物包装体について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る流動物包装体の概略平面図である。なお、本発明の包装体1は、図1のように流動物を個装する包装体1が1ピース毎に切り離されていても良いし、複数のピースが例えばミシン目を介して連なっている構成であっても良い。」
イ 段落【0026】
「図1に示す包装体1は、流動物を収納する収納部2と、収納部2の四辺を密封するシール部3とから成る平面視矩形状をなしている。シール部3の一辺(図1の右側)は、他の三辺よりも幅広に形成されており、収納部2を線対称に二分割する対称軸Oを挟んで突出する注出通路5a、5bが収納部2と連通するように設けられている。注出通路5a、5bが設けられたシール部3の一端には開封用ノッチ7が形成され、開封用ノッチ7からシール部3の他端に亘って開封用ミシン目9が注出通路5a、5bを横切るように形成されている。・・・」
ウ 段落【0028】
「次に、本実施形態の包装体1の開封及び内容物の注出方法について説明する。図1に示した開封用ノッチ7から開封用ミシン目9に沿ってシール部3を引き裂くと、シール部3の先端が切り取られて図2のように注出通路5a、5bが外部と連通する。この状態では内部に封入された流動物により収納部2が水平に広げられ、2枚の積層体13a、13bは均等に引っ張られるため注出通路5a、5bは閉鎖状態となり、流動物はごく僅かしか漏出しない。」
エ 段落【0029】
「次に、図1の状態から対称軸Oを山折り線として折り曲げ、包装体1を二つ折りにする。図3(a)、(b)は、本実施形態の包装体を二つ折りにした状態を示す平面図及び右側面図であり、図4は、図3(b)の折り曲げ部付近の拡大図である。包装体1を二つ折りにすると、図4に示すように折り曲げ部の外側の積層体13bは引っ張られるが、内側の積層体13a圧縮されて撓みを生じる。そのため、注出通路5a、5bはトンネル状となり、流動物の通過できる通路を形成する。」
オ 段落【0030】
「また、包装体1を二つ折りにすると、図3(b)のように収納部2は第1収納部2aと第2収納部2bに分離される。この状態で外部から指で収納部2を押圧すると、封入された流動物の逃げ場がなくなるため指で押さえた圧力が内部の流動物に効率良く伝わり、第1収納部2a内の流動物は注出通路5aから、第2収納部2b内の流動物は注出通路5bから外部に流出する。」
カ 段落【0031】
「これにより、収納部2内の流動物を片手で残らず注ぎ出すことができ、押圧力を調整するだけで流動物の注出量も簡単に調整可能となる。・・・」
キ 段落【0062】
「なお、包装体1を二つ折りにする場合、第1収納部2a及び第2収納部2b(図3(b)参照)内のいずれにも流動物が残留しないようにするためには、2箇所の注出通路5a、5bがそれぞれ第1収納部2a及び第2収納部2bに連通するように、即ち対称軸Oを折り線として注出通路5a、5bの間を折り曲げる必要がある。」
ク 段落【0063】
「そこで、図5に示すように、収納部2及びシール部3を横断するように対称軸Oに重なる折り曲げ指示線15を印刷しておけば、ユーザが包装体1を二つ折りにする際の指標となり、使用性が向上する。また、折り曲げ指示線15に代えて押し罫を設けても良い。」
ケ 段落【0081】
「さらに、一枚の積層体のみで包装体1を製造することも可能である。即ち、積層体13aを折り曲げて二方シール型、三方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)等のヒートシール形態により収納部2とシール部3とを形成すれば良い。」
コ 段落【0082】
「こうして得られた本発明の包装体1は、液体或いはゲル状の医薬品、しょうゆやソース、マヨネーズ等の食品等の包装材として、易開封性、内容物の注出性、製造性等の優れた特性を有することから、使用性及びコスト等を著しく改良した流動物包装体を提供できるものである。」
(5)【実施例1】
ア 段落【0086】
「(1)基材10として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの積層フィルムを使用し、この基材10の二軸延伸ナイロンフィルム側の表面に、熱可塑性樹脂層11として溶融押し出し法により厚さ40μmの溶融ポリエチレン樹脂層を積層して積層体13a、13bを製造した。」
イ 段落【0087】
「(2)次に、上記(1)で製造した2枚の積層体13a、13bを使用し、両方の熱可塑性樹脂層11を内面になるようにして対向させ、外周端部をヒートシールして一端に開口部を有する三方シール型の分包袋を製造した。三方のシール部3のうち、長手方向の一辺のシール幅は7mm、他の二辺のシール幅は2mmとし、幅7mmのシール部3の中央には開封後に注出通路5a、5bとなる幅2mmの未シール部を2箇所に形成した。ヒートシール条件は、シール温度250℃、シール時間0.8秒とした。」
ウ 段落【0088】
「(3)上記で製造した三方シール型の分包袋内に開口部から5mLの流動物を充填し、開口部をシール幅2mmでヒートシールして内寸70mm×35mmの収納部2を形成した後、所定箇所に開封用ノッチ7及び開封用ミシン目9を入れて図1に示すような第1実施形態の包装体1を製造した。」
エ 段落【0089】
「上記で製造した本発明の包装体1は、開封用ノッチ7を把持してシール部3を破断した後、二つ折りにして外部から収納部2を押圧することにより、注出通路5a、5bから流動物を適量ずつ簡単に取り出すことができた。また、適量使用後は包装体1を平坦に伸ばすことにより、流動物の漏出も見られなかった。」
(6)【産業上の利用可能性】
ア 段落【0093】
「本発明は、少なくとも基材と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体により形成され、流動物が封入される収納部と、該収納部の周縁を閉鎖するシール部とを有する流動物包装体であって、シール部には、収納部を略線対称に分割する対称軸を挟んで同一方向に突出する2本以上の注出通路と、該注出通路を介して収納部と外部とを連通させる開封手段とが形成されており、対称軸を折り線として収納部を二つ折りにした状態で外部から押圧することにより封入された流動物を外部に取り出し可能としたものである。」
イ 段落【0094】
「これにより、収納部を二つ折りにして外部から押圧するだけで流動物を片手で残らず注ぎ出すことができ、押圧力を調整するだけで流動物の注出量も簡単に調整可能な使用性に優れた流動物包装体を提供することができる。さらに、一度に全量を使用しない場合は包装体を平坦に伸ばすだけで残りの流動物の漏出も抑制可能となる。」
(7)【図面の簡単な説明】、段落【0097】
「【図1】は、本発明の第1実施形態に係る流動物包装体の概略平面図である。
・・・
【図3】は、第1実施形態の流動物包装体を二つ折りにした状態を示す平面図(図3(a))及び右側面図(図3(b))である。
【図4】は、図3(b)の折り曲げ部付近の拡大図である。
【図5】は、第1実施形態の流動物包装体に折り曲げ指示線を表示した例を示す平面図である。
・・・」
(8)図面
ア 【図1】



イ 【図3】



ウ 【図4】



エ 【図5】



2 引用文献Bの記載事項
引用文献Bには、次の記載がある。
(1)段落【0001】
「本発明は、ゼリー状(粘稠体状)の内容物が空気等の気体とともに封入される包装容器、包装容器の製造装置および包装方法に関する。」
(2)段落【0008】
「・・・図1は、本発明の包装容器の第1例を示す図である。
この包装容器1は、1枚の包装フィルムを中央で2枚に折り返して筒状にし、折返し部2dと対向する側縁2cと、長手方向の両端縁2a,2bとを熱シールし、細長い矩形状に成形したスティック状の三方シール袋である。この包装容器1には、一方の端縁2aの側1aには、ゼリー状の内容物5が封入され、他方の端縁2bの側1bには、空気や窒素ガスなどの気体6が封入されている。つまりこの包装容器1は、内容物5が封入される内容物封入部1aと、気体6が封入される気体封入部1bとを有する。」
(3)【図1】



3 引用文献Cの記載事項
引用文献Cには、次の記載がある。
(1)明細書2頁2?7行
「[産業上の利用分野]
本考案は、主として醤油、ソース、ドレッシング、ジヤム、マヨネーズ、練りからし、練りわさびその他の各種の液状や流動性のある練状調味料等の流動物を収容する密封包装袋に関するものである。」
(2)明細書2頁8?15行
「[従来の技術とその問題点]
従来より、例えば学校給食で、またファーストフード店で、あるいは各種弁当その他において、ソースやマヨネーズ等の流動性の各種調味量を添付するための包装体として、合成樹脂フィルムを基材とする包装袋に前記調味料等の一回の使用量分を封入しておくことが行なわれている。」
(3)明細書10頁下2行?11頁3行
「また内容物が少なくなれば、袋体(A)を第4図のように中央のシール部(8a)の線上で二つ折にして、指先で挟んでしごくようにすれば、内容物をほぼ完全に絞り出すことができ、しかも指先を汚すこともない。」
(4)明細書11頁8?13行
「第6図および第7図の第2の実施例においては、上記同様のシート材(2)を樹脂コーティング層(7)が外表面になるように二つ折にして表裏体(1a)(1b)とし、この折曲縁部(11)以外の三方の周辺部を上記同様に熱シールした三方シール形態の袋の場合を示している。」
(5)第4図



(6)第6図




第5 対比・判断
1 引用発明の認定
引用文献Aの請求項1、請求項6及び段落【0029】【0063】から、次の発明(以下「引用発明」という。)が認定できる。
「基材と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体により形成され、流動物が封入される収納部と、該収納部の周縁を閉鎖するシール部とを有する流動物包装体であって、
前記シール部には、前記収納部を略線対称に分割する対称軸を挟んで同一方向に突出する2本以上の注出通路と、該注出通路を介して前記収納部と外部とを連通させる開封手段とが形成されており、前記対称軸に折り曲げ指示線を印刷することにより表示し、
開封手段を開封することにより、前記注出通路を外部連通させ、前記対称軸を折り線として前記収納部を二つ折りにした状態で外部から押圧することにより封入された流動物を外部に取り出し可能としたことを特徴とする流動物包装体。」
2 対比・検討
(1)対比
ア 引用発明の「基材と最内層である熱可塑性樹脂層とを含む積層体」、「流動物包装体」は、本願発明の「シート状の軟包材」、「液状物封入包装体」に相当する。
イ 引用発明における「前記収納部を略線対称に分割する」「対称軸に折り曲げ指示線を印刷することにより表示」することは、引用文献Aの【図6】の記載から、対称軸で内部が区画されているとはいえず、また、通常印刷は外表面に行われるから、本願発明における「該包装体の外表面において、所定の方向に視認できる折目線(当該折目線に沿って内部を区画するものを除く)を設け」ることに相当する。
ウ 引用発明における「注出通路」は、本願発明における「開封時の開口部」に相当する。
エ 引用発明においても、流動物が封入されてから周縁部を閉鎖するシール部を設けることは明らかであるから、「当該袋体に液状物を充填後にシールして製造」しているものといえる。
(2)一致点・相違点
ア 一致点
そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
「液状物封入包装体であって、当該液状物封入包装体が、シート状の軟包材を素材とし、袋体を形成し、当該袋体に液状物を充填後にシールして製造する、液状物が封入された液状物封入包装体であって、該包装体の外表面において、所定の方向に視認できる折目線(当該折目線に沿って内部を区画するものを除く)を設け、
液状物の押し出し時においては、当該液状物封入包装体の一端を開封後に、開封した後の包装体を前記折目線に沿って折り曲げ、開口部より液状物を出すようにしたことを特徴とする液状物封入包装体。」
イ 相違点
本願発明と引用発明とは次の点で一応相違する。
(ア)相違点1
本願発明においては、「シートを折り返し及びシールすることにより略偏平状の袋体を形成し、当該袋体に液状物を充填後にシールして製造する、液状物が封入された三方シールタイプ」の包装体であるのに対して、引用発明においては、充填の詳細が明らかでない点。
(イ)相違点2
封入されているのが、本願発明においては「即席めん等の加工食品に添付される」「食品」であるのに対し、引用発明においては「流動物」である点。
(ウ)相違点3
封入されたものを出すときに、本願発明においては、「当該折目線に従って折り曲げた包装体に対して、開封時の開口部とは逆端部から指で押圧して液状物を開口部に向かって押し出すようにして開口部より液状物を搾り出すようにした」のに対して、引用発明では「外部から押圧することにより封入された流動物を外部に取り出し可能」である点。
(3)相違点についての判断
ア 相違点1について
第4、1(5)イ、ウで摘記したように、引用文献Aの段落【0087】、【0088】には、第4、1(8)アに摘記した引用文献Aの図1に示す流動物包装体の製造方法として、三方シールした後、流動物を充填後、開口部をシールしたと記載されているから、四角形の四辺ともシールしていることから、本願発明における「シートを折り返し及びシールする」点及び「三方シールタイプ」のものとは相違する。
しかしながら、三方シールタイプとするために折り返し及びシールすることは、前記第4、1(4)ケで摘記したように引用文献Aの段落【0081】に示唆があり、また、前記第4、2(2)?(3)に摘記したように引用文献Bにも記載され、前記第4、3(4)及び(6)に摘記したように引用文献Cにも記載のように流動体の包装手段として周知の事項であるところ、上記相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明においても容易に採用できるといえる。
イ 相違点2について
第4、1(4)コで摘記した引用文献Aの段落【0082】に記載されているように、引用発明の流動物として「しょうゆやソース、マヨネーズ等の食品等の包装材」を選択することが示唆されている。また、第4、3(2)に摘記したように引用文献Cには、「各種弁当・・・において、流動性の各種調味量を添付するための包装体」と記載されており、各種弁当は「加工食品」に該当するから、引用発明を「加工食品に添付される」「食品」のための包装体とすることには、動機付けがあり、具体的に加工食品として広く知られている即席めん等の加工食品に添付することについても格段の困難性や阻害要因はないから、上記相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、当業者が容易になし得ることである。
ウ 相違点3について
(ア)相違点3に係る本願発明の構成は、「当該折目線に従って折り曲げた包装体に対して、開封時の開口部とは逆端部から指で押圧して液状物を開口部に向かって押し出すようにして開口部より液状物を搾り出すようにした」というものであるが、この構成は包装体の使用方法を説明しているに過ぎず、当該液状物封入包装体という物の発明の形状・構造に対して、何ら特定する事項とはなっていない。したがって、相違点3は、実質的な相違点とはいえない。
(イ)仮に物の発明に対して何らかの特定になっていたとしても、第4、3(3)及び(5)に記載されているように、「二つ折にして、指先で挟んでしごくようにすれば、内容物をほぼ完全に絞り出すことができ」とあることから、相違点3に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 本願発明の効果について
(ア)本願明細書の段落【0028】?【0030】には、<試験例1>が記載され、段落【0030】には、【表1】とともに、「5人のパネラーによる試験の結果、いずれのパネラーにおいても搾り出し後の液状物の残存量は、折目線を付した液体スープパックの方が少なかった。折目線を付した場合に液状物の搾り出しが良好に行われていることを示す結果である。」とされている。」と記載されている。
(イ)しかしながら、この試験例1に用いられたのは、本願明細書の段落【0028】「図8(a)に示すような液状物封入包装体(液体スープパック)を準備した。・・・」と記載されているように以下のようなものである。
(ウ)本願【図8】



(エ)表1によると、上記図8のように折目線5-4?5-6を表示した実施例に比べて、折目線を表示しなかった比較例においては、残存量が多くなっているようであるが、本願発明は、上記図8の例のように、折目線が3本存在する発明に限られず、折目線が1本の場合も含んでいる。折目線が1本の場合に予測できない効果を生じているということはできない。
(オ)また、他に上記相違点1?3に係る本願発明の構成により、格別の効果を奏すると認めることはできない。
3 請求人の主張について
(1)流出経路について
ア 請求人は、平成31年2月1日付けの意見書において「本願発明は、即席めん等の加工食品において添付される液状包装物すなわち、シート状
の軟包材を三方シールにした液状物封入体を意図しております。そして、このような液状物封入包装体において、該包装体の外表面において、折目線を
設けております。刊行物A(刊行物Aの図1、5a)に記載するように何ら、予め液状物の抽出(排出)のための特別な経路を設けたものではありません。」と主張する。
しかしながら、本願発明は、「三方シール」と特定されているのみであり、そのシールの一部に強弱を設けることにより、刊行物Aのように注出経路を設ける態様を排除するものではない。この主張は、請求項1の記載に基づかないものであり、採用できない。
(2)用途限定について
ア 請求人は、「また、従来までこのような即席めん等の加工食品に添付する液体スープパック(液状物封入包装体)において、表面に折り目線を設けたタイプはいまだありませんでした。」と主張する。
イ この主張は、本願発明と引用発明との相違点を強調するとともに、本願発明においては、液体スープを即席めん等に投入するためのものであり、引用発明のように投入量を調整可能とする必要がないと主張していると解される。
ウ しかしながら、特許請求の範囲には、「即席めん等の加工食品に添付される液状物封入包装体」との特定は、即席めん以外の加工食品に添付されるものも含みうるところ、引用文献Cの弁当用の調味料を入れる包装体も包含するものである。また、前記第4、1(6)イに摘記したように、引用文献Aには、「収納部を二つ折りにして外部から押圧するだけで流動物を片手で残らず注ぎ出すことができ」と記載されているように、一度に残らず注ぎ出すことも記載されているから、請求人の主張は、引用文献Aの記載に基づかないものといえる。
(3)絞り出し方法
ア 請求人は、「開封時の開口部とは逆端部から指で押圧して液状物を開口部に向かって押し出すようにして開口部より液状物を搾り出すようにしますと、効率的に内容物を押し出す(搾り出す)ことができることを見出したものです。このように内容物の押し出し方法(搾り出し方法)も見出すことで、本発明を完成するに至ったのであります。」と主張する。
イ しかしながら、本願発明は「物の発明」であって、請求人が主張するような「方法の発明」ではなく、また、請求項の記載において開封時の開口部と折目を設ける位置との関係や包装体の形状の特定もされていないから、請求人の主張は、請求項1の記載に基づかないものである。さらに、そのような絞り出し方法は、引用例Cに記載されているように周知の手段であり、指先のふくらんだ領域に合わせて折り畳んで搾り出すことは、証拠を示すまでもなく日常生活で行われていることである。したがって、請求人の主張は採用できない。
4 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献A?Cに記載された事項に基いて本願出願前に当業者が容易に発明をすることができた発明といえるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明である。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-05 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2014-67001(P2014-67001)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 門前 浩一
横溝 顕範
発明の名称 液状物封入包装体  

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