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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1351293
審判番号 不服2018-9515  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-10 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2014-121447号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月 7日出願公開、特開2016- 1086号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月12日に出願された特願2014-121447号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年1月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年3月26日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年4月 5日付け:拒絶査定
平成30年7月10日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成30年7月10日の手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、そのうちの特許請求の範囲の請求項1についての補正は、補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、蒸発器を含む冷凍サイクルを備え、機械室と前記機械室に隣接する断熱壁から成る収納部を有する冷蔵庫であって、
前記圧縮機と前記凝縮器は、前記機械室に配置され、
前記圧縮機は、ロータリ圧縮機であり、前記ロータリ圧縮機の寸法は、凝縮器の寸法よりも小さく、
前記圧縮機の横にはアキュムレータが配置され、前記アキュムレータは、前記機械室の底板の端部のコーナ部分に配置され、
前記機械室には、前記圧縮機と前記凝縮器を冷却するファンが配置され、前記アキュムレータは、前記圧縮機に対して前記ファンが発生する冷却風の風下側に配置されていることを特徴とする冷蔵庫。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、蒸発器を含む冷凍サイクルを備え、機械室と前記機械室に隣接する断熱壁から成る収納部を有する冷蔵庫であって、
前記圧縮機は、ロータリ圧縮機であり、前記ロータリ圧縮機は、アキュムレータを備え、
前記機械室には、前記圧縮機と前記凝縮器とが横方向に配置されるとともに、前記凝縮器を冷却するファンが前記凝縮器の奥行方向に配置され、
前記アキュムレータは、前記機械室内に、前記圧縮機を挟んで、前記凝縮器と前記ファンとは反対側の横方向の位置に配置されていることを特徴とする冷蔵庫。」

2 補正の適否
(1) 請求項1について
請求項1についての補正は、上記のとおり、ロータリ圧縮機と凝縮器との寸法関係、及び、アキュムレータの配置について、補正前の請求項1が「前記ロータリ圧縮機の寸法は、凝縮器の寸法よりも小さ」いと特定し、「前記圧縮機の横にはアキュムレータが配置され、前記アキュムレータは、前記機械室の底板の端部のコーナ部分に配置され」ると特定し、さらに、「前記アキュムレータは、前記圧縮機に対して前記ファンが発生する冷却風の風下側に配置されていること」と特定していたものを、各特定事項を削除するとともに、「前記ロータリ圧縮機は、アキュムレータを備え、」、「前記機械室には、前記圧縮機と前記凝縮器とが横方向に配置されるとともに、」、「前記アキュムレータは、前記機械室内に、前記圧縮機を挟んで、前記凝縮器と前記ファンとは反対側の横方向の位置に配置されていること」と特定する補正を含むものである。
そうすると、上記補正は、補正前には、「ロータリ圧縮機の寸法は、凝縮器の寸法よりも小さ」いと特定していた事項が削除されることにより、ロータリ圧縮機の寸法が、凝縮器の寸法よりも大きいものが含まれることになり、「アキュムレータは、前記機械室の底板の端部のコーナ部分に配置され」ると特定していた事項が削除されることにより、アキュムレータが機械室の底板の端部のコーナ部分以外の部分に配置されることが含まれることになり、さらに、「前記アキュムレータは、前記圧縮機に対して前記ファンが発生する冷却風の風下側に配置されている」と特定していた事項が削除されることにより、アキュムレータが圧縮機に対して風上側に配置されることが含まれることになるから、上記補正は、補正前の請求項1を実質的に拡張又は変更したものとなっており、このような補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれにも該当しない。
また、請求人は、補正の根拠について、「補正後の本願(新)請求項1は、平成30年 3月26日付けでした手続補正書で補正した現(旧)請求項1を、出願当初の明細書の段落[0065]?[0069]の記載や図12などに基づいて更に補正したものであって、各引用文献1-10に記載の発明との差異がより明瞭になるようにしたものです。
各引用文献1-10に記載の発明との差異がより明瞭になるようにした補正として、各機器の位置関係がより明確に特定されるような補正を行いました。」(平成30年7月30日付け審判請求書「3.本願発明の説明(b)補正の根拠の明示」参照。)と主張している。
しかしながら、「各引用文献1-10に記載の発明との差異がより明瞭になるようにした補正としたもの」であったとしても、本件補正は、上記のとおり補正前の請求項1を実質的に拡張又は変更したものを含むものとなるから、係る請求人の主張は採用できない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年3月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(第2[理由]1 補正の内容の概要 (補正前の請求項1)参照。)。

2 原査定の理由
拒絶査定における拒絶理由(平成30年4月5日付けの「理由3」)の概要は、以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物である引用例に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1 :引用例等 1-8
・請求項2 :引用例等 1-8
・請求項3-9 :引用例等 1-9
・請求項10 :引用例等 1-10
<引用例等一覧>
1.特開平7-218094号公報
2.特表2008-525720号公報
3.特開平11-325699号公報
4.特開2005-164222号公報
5.特開2006-105572号公報
6.特開2011-85380号公報
7.特開2003-222458号公報
8.実願昭56-45986号(実開昭57-157883号)のマイクロフィルム
9.特開2001-248950号公報
10.特開2010-43750号公報

3 引用例の記載事項及び記載された発明
(1) 引用例1
原査定における平成30年1月19日付け拒絶理由通知書にて引用された特開平7-218094号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様である。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 本体下部の機械室内に長筒型回転式コンプレッサーと、密着巻きコイル状コンデンサーと、前記長筒型回転式コンプレッサー及び密着巻きコイル状コンデンサーを冷却するファンとを設け、前記長筒型回転式コンプレッサーと前記ファンとの間に前記密着巻きコイル状コンデンサーを、その中心軸が前記長筒型回転式コンプレッサー及びファンの中心軸と一直線となるように設置したことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】 密着巻きコイル状コンデンサーは、その内径が長筒型回転式コンプレッサーの外径より大きくしたことを特徴とする請求項1記載の冷蔵庫。」
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のような構成では、ファンにより吸入される外気は、一旦コンデンサと熱交換されるので、特に高外気温時には長筒型回転式コンプレッサーへは熱気が送風されることになる。その結果、長筒型回転式コンプレッサーは冷却不足となり、長筒型回転式コンプレッサー内のオイルの劣化、冷媒の分解及びモーター巻線の焼損といった冷蔵庫としては致命的な故障が発生したり、また長筒型回転式コンプレッサーの冷却を確保するためには、ファンの回転数を上げる必要があり、ファン騒音が増加するといった課題を有していた。」
「【0011】
【作用】本発明は上記した構成によって、長筒型回転式コンプレッサーには密着巻きコイル状コンデンサーの内側を通過する外気がファンにより直接送風されるので、長筒型回転式コンプレッサーの冷却が悪化することはなくなる。」
「【0014】図1は本発明の第1の実施例の冷蔵庫の機械室部の透視図、図2は同実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図である。長筒型回転式コンプレッサー1とファン3との間には、銅管等の熱伝導率の大きい材料にて成形された密着巻きコイル状コンデンサー9が、その中心軸が長筒型回転式コンプレッサー1及びファン3の中心軸と一直線になるように設置されている。
【0015】以上のような構成において、ファン3により外気は吸入口7を通って吸引され仕切り板4を通過して密着巻きコイル状コンデンサー9及び長筒型回転式コンプレッサー1側へと送風される。この際、送風された外気の一部は密着巻きコイル状コンデンサー9を冷却するとともに、一部は密着巻きコイル状コンデンサー9の内側を通過して長筒型回転式コンプレッサー1へと流れていくため、長筒型回転式コンプレッサー1には密着巻きコイル状コンデンサー9と熱交換していない低温の外気が直接送風されることになり、長筒型回転式コンプレッサー1の冷却が確保される。
【0016】図3は本発明の第2の実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図を示すものであり、前述の第1の実施例と異なる点は、密着巻きコイル状コンデンサー10の内径(φD1)が長筒型回転式コンプレッサー1の外径(φD2)より大きい点である。この構成において、密着巻きコイル状コンデンサー10の内径(φD1)は長筒型回転式コンプレッサー1の外径(φD2)より大きいので、長筒型回転式コンプレッサー1には密着巻きコイル状コンデンサー10と熱交換していない低温の外気がより多量に送風されることになり、長筒型回転式コンプレッサー1の冷却が促進される。」
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の冷蔵庫の機械室部透視図
【図2】同実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図
【図3】本発明の第2の実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図
【図4】本発明の第3の実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図
【図5】本発明の第4の実施例の冷蔵庫の機械室部の水平断面図
【図6】従来の冷蔵庫の機械室部の透視図
【図7】従来の冷蔵庫の機械室部の縦断面図
【符号の説明】」
「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


したがって、上記記載事項及び上記各図の記載事項を総合し、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「本体下部の機械室内に長筒型回転式コンプレッサーと、密着巻きコイル状コンデンサーと、前記長筒型回転式コンプレッサー及び密着巻きコイル状コンデンサーを冷却するファンとを設け、前記長筒型回転式コンプレッサーと前記ファンとの間に前記密着巻きコイル状コンデンサーを、その中心軸が前記長筒型回転式コンプレッサー及びファンの中心軸と一直線となるように設置し、前記密着巻きコイル状コンデンサーは、その内径が前記長筒型回転式コンプレッサーの外径より大きくした、冷蔵庫。」
(2) 引用例2
原査定における平成30年1月19日付け拒絶理由通知書にて引用された特表2008-525720号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0004】
現在冷却システムで利用できる圧縮機には、いくつかのタイプがある。家庭用の冷蔵庫および冷暖房装置には、一般にローリングピストン式圧縮機が使用されている。ローリングピストン式圧縮機は、固定された(または静止した)ベーン式回転型圧縮機とも呼ばれる。このような圧縮機では、羽根(ベーン)がローターとともに回転する代わりに、圧縮機の静止部分に収容されたスロット内で往復動する。偏心軸に取り付けられた圧縮機のシリンダ部分は、シリンダの壁面を転がるように見えるため、ローリングピストンと呼ばれている。サイクル中で吸入が行われる間、冷媒ガスは、吸入ポートから圧縮チャンバーへ吸入され、ガス体積が増加する。この吸入工程中、ピストンおよび羽根の反対側では体積が減少して圧縮ストロークが起こる。このため、ローラーの偏心運動によりガスは圧縮される。吐出流は吐出バルブにより制御される。」
「【0034】
本発明の小型ローリングピストン式回転型圧縮機は、最先端の回転型圧縮機より著しく小型で軽量でありながら、それに匹敵する効率または性能を提供する。本発明の小型ローリングピストン式回転型圧縮機は、最大約2.5インチ、好ましくは約1.5インチ?約2.5インチの直径を有し、最大約3.5インチ、好ましくは約1.5インチ?約3.0インチ、より好ましくは約2.0インチ?約2.8インチの軸長さを有し、最大約3.0cc/回転(cc/rev)、好ましくは約0.90cc/rev?約3.0cc/rev、より好ましくは約1.2cc/rev?約3.0cc/revの排気量を有し、最大約1.7ポンド、好ましくは約0.8ポンド?約1.5ポンド、より好ましくは約1.0ポンド?約1.4ポンドの重量を有する。本発明の一実施形態では、前記小型ローリングピストン式回転型圧縮機は、約2.2インチの直径を有し、約3.0インチの軸長さを有し、約1.2ポンドの重量を有する。」
(3) 引用例7
原査定における平成30年1月19日付け拒絶理由通知書にて引用された特開2003-222458号公報(以下「引用例7」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0017】冷凍室用蒸発器19には、冷凍室用蒸発器19に冷媒を供給する側にはキャピラリーチューブ35が接続され、また、冷凍室用蒸発器19内の冷媒を流出する側にアキュームレータ36が接続されており、これらのキャピラリーチューブ35、アキュームレータ36は、それぞれ機械室内の圧縮器26Aに接続されている。
【0018】冷凍室用蒸発器19は、冷媒配管27に熱交換用フィン28が配管の長さ方向に所定の間隔をおいて多数配置されている。キャピラリーチューブ35に接続された冷媒配管27A側(冷媒流入側冷媒配管)の熱交換用フィン28は、フィンピッチが大きい第1熱交換用フィン28Aが取り付けられ、その配管の管径は大径に形成されている。アキュームレータ36に接続された冷媒配管27G側(冷媒出口側冷媒配管)の熱交換用フィン28は、フィンピッチが第1熱交換用フィン28Aと第2熱交換用フィン28Bとからなるピッチが小さいフィンとからなっており、その配管の管径は、小径に形成されている。すなわち、冷媒出口側冷媒配管の管径は、冷媒流入側冷媒配管の管径よりも小さくされている。
【0019】このように管径を小さくすると、一般的に管径が太い場合に比べ、熱交換効率がアップすることが良く知られている。(なお、管径をあまりにも小さくすると圧損が大きくなり過ぎて効果が無くなることも良く知られている。)
【0020】この圧縮機26Aで圧縮された冷媒は、図示しないコンデンサーで冷却され、キャピラリーチューブ35を介して、蒸発器19内の冷媒配管27に流入されるようになっている。図4に示すように、冷媒配管27は、前方側では,水平方向に延設された後、上方から下方に湾曲(湾曲27A)して、水平方向に延設された後、再び上方から下方に湾曲(湾曲27B)して、水平方向に延設されている。その後、最下方の冷媒配管27は、図5に示すように、前方側から後方側に湾曲(湾曲27C)されて水平方向に延設された後、下方から上方に湾曲して、水平方向に延設された後、再び下方から上方に湾曲(湾曲27D)して、水平方向に延設されている。
【0021】また、同様にして、冷媒配管27は、後方側では,前方側から後方側に湾曲した後、水平方向に延設された後、上方から下方に湾曲(湾曲27E)して、水平方向に延設された後、再び上方から下方に湾曲して、水平方向に延設されている。その後、最下方の冷媒配管27は、後方側に湾曲(湾曲27F)されて水平方向に延設された後、下方から上方に湾曲して、水平方向に延設された後、再び下方から上方に湾曲(湾曲27G)して、水平方向に延設されてアキュームレータ36に接続されている。
【0022】この冷凍用蒸発器19では、冷媒配管27に対してピッチの大きい第1熱交換用フィン28Aが取り付けられ、湾曲27E、27F、27Gを有する側の冷媒配管27(後方側)には、第1熱交換用フィン28Aと第2熱交換用フィン28B(図中、破線で示す)によってピッチが小さくされており、後方側の冷媒配管27における熱交換用フィン28のピッチは前方側の冷媒配管27における熱交換用フィン28のピッチの約1/2となっている。
【0023】また、次に機械室内の冷凍サイクルの冷媒回路を構成する圧縮器26Aが運転されると、送風器20、25が作動し、圧縮器26Aから吐出された冷媒は、キャピラリーチューブ35を介して、蒸発器19内の冷媒配管27に流入される。
【0024】冷媒配管27では、冷凍室吸込口7Bから流入する戻り冷気は、冷媒配管27及び熱交換用フィン28によって冷却され、冷媒配管27内の冷媒は、アキュームレータ36を経て圧縮器26Aに戻される。また、蒸発器24で得られる冷気は、送風機25を介して開口部15から矢印Xで示すように野菜室4側に流入した後、冷却室23に導入されて冷却される。」(4) 引用例8
原査定における平成30年1月19日付け拒絶理由通知書にて引用された実願昭56-45986号(実開昭57-157883号)のマイクロフィルム(以下「引用例8」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「本考案はワイン等のアルコール飲料を貯冷する飲料冷却器に関する。
此種飲料冷却器は一台で二種類以上の飲料を同時に貯冷できるように独立した複数の冷却容器を内蔵しており、しかもこれら冷却容器は個々に温度制御ができるよう冷媒流路の途中か分岐した分岐流路中の別個の冷却コイルによって冷却させている。このように分岐流路を設けて複数の冷却容器を個々に温度制御ができるように冷却する場合、上記した分岐流路の合流部分と圧縮機との間の戻り冷媒流路中に液貯管を介装する必要が生じるが、この液貯管は表面温度が-1?-7℃程度の低温となるために結露しやすいという問題がある。」(明細書1ページ下から4行?2ページ9行)
「(11)は前記機械室(A)の側壁下部に形設した空気取入口、(12)は機械室(A)の上壁となる外装体(1)の上面部(1a)に形設した空気吹出口、(13)は前記空気取入口(11)に近接して機械室(A)の台枠(5)上に装着した圧縮器、(14)は前記空気吹出口(12)に近接して水平に取り寸けた凝縮器、(15)は凝縮器(12)(当審注:「凝縮器(12)は、「凝縮器(14)」の誤記と認める。)の上方に装備した送風機で、空気取入口(11)から機械室(A)内に吸引した室内空気を空気吹出口(12)より強制的に排出させたものである。又、(16)は前記圧縮器(13)の直上で且つ凝縮器(14)の下方に位置せしめて機械室(A)内に配置した液貯管で、第2図で示すように銅パイプの両端を絞つて入口(16’)と出口(16”)が形成され、入口(16’)側が低く出口(16”)が高くなるように傾斜させており、しかもその外周面は熱透過率が30?60%である部材(17)で被覆してあり、該部材(17)は肉厚が5?7mmの発泡ポリエチレンを採用している。」(明細書2ページ末行?3ページ下から6行)
「又第3図は冷媒回路図であり、図中(18)(18’)は冷媒流路、(19)はドライヤー、(20)(21)はドライヤー(19)の出口側で分岐した第1及び第2の冷媒分岐流路で、第1の分岐流路(20)中には第1電磁弁(22)、第1キヤピラリチユーブ(23)及び第1の冷却容器(2)に巻装した第1冷却コイル(24)が順次設けられ、更に第2の分岐流路(21)中には第2電磁弁(25)、第2キヤピラリチユーブ(26)及び第2の冷却容器(3)に巻装した第2冷却コイル(27)が順次設けてある。そして前記せる液貯管(16)は各分岐流路(20)(21)の合流部(P)と圧縮器(13)との間の冷媒流路(18)中に介装してある。」(明細書3ページ下から5行?4ページ6行)
「今、第2の冷却容器(3)内の飲料量が少なくてサーモスタット(7)が働らき第2電磁弁(25)が閉成されたとすると、ドライヤー(19)からの液化冷媒は全て第1の分岐流路(20)側に入り、第1冷却コイル(24)内で蒸発して第1冷却容器(2)の冷却を継続するが、第1冷却コイル(24)だけでは封入冷媒が余剰状態となるために気液混合の冷媒を液貯管(16)で分離し、ガス状の冷媒だけを圧縮器(13)に戻すようにしている。従つて液貯管(16)は液化されたままの冷媒が貯められて内部で冷媒が蒸発する為、その表面は約-1?-7℃の低温となる。
一方、機械室(A)内では送風機(15)の回転によって取入口(11)から流入した空気が約60℃?70℃表面温度なる圧縮器(13)と接触し、この圧縮器(13)との接触による温度上昇にて空気の相対湿度が低され、その空気は凝縮器(14)と接触してこれを冷却した後に吹出口(12)により外部へ排出される。従つて、前記圧縮機(13)と凝縮器(14)との間位置した液貯管(16)の周囲では相対湿度の低下した空気が上昇する為、液貯管(16)表面での結露を減少でき、又液貯管(16)を部材(17)で被覆することにより結露を確実に防止できるが、液貯管(16)内の気液分離を促進させるためには部材(17)の熱透率(当審注:「熱透率」は、「熱透過率」の誤記と認める。)が30?60%程度であるのか望ましい。」(明細書4ページ13行?5ページ下から5行)
「又空気取入口近かくに圧縮器を空気吹出口近かくに凝縮器を配置したので、圧縮器を温度の低い空気流に接触させることができ、良好な冷却が行なえて圧縮器を保護できる。更に液貯管を、圧縮器と凝縮器との間に位置して機械室内に配置したので、液貯管の周囲では圧縮器との熱交換によつて相対湿度の低下した空気が上昇するので、液貯管での結露を減少できると共に、圧縮器の熱によつて液貯管内の冷媒の蒸発を促進できる等の種々の効果を奏する。」(明細書6ページ2?12行)
以上の記載事項及び図面を総合して、引用例8には、以下の事項(以下「引用例8記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「圧縮器に戻す冷媒をガス状の冷媒だけとするために設ける液貯管について、液貯管の周囲では圧縮器との熱交換によって温度が上昇し、相対湿度の低下した空気により、液貯管での結露を減少できると共に、圧縮器の熱によつて液貯管内の冷媒の蒸発を促進すること。」

4 対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「機械室」、「冷蔵庫」、「長筒型回転式コンプレッサー」、「ファン」及び「密着巻きコイル状コンデンサー」は、それぞれ前者の「機械室」、「冷蔵庫」、「圧縮機」、「ファン」及び「凝縮器」に相当する。
引用発明の「冷蔵庫」は、「長筒型回転式コンプレッサー」と「密着巻きコイル状コンデンサー」に加え、蒸発器を含む冷凍サイクルを備えることは明らかであるので、本願発明の「圧縮機、凝縮器、蒸発器を含む冷凍サイクルを備え」るものに相当する。
引用発明の「冷蔵庫」は、引用例1・図1の機械室部透視図における各装置の配置関係及び冷蔵庫における収納部が断熱壁を備えたものからなるという技術常識からして、機械室と機械室に隣接する断熱壁から成る収納部を有していると認められ、本願発明の「機械室と前記機械室に隣接する断熱壁から成る収納部を有する冷蔵庫」に相当する。
引用発明の「本体下部の機械室内に長筒型回転式コンプレッサーと、密着巻きコイル状コンデンサーと、前記長筒型回転式コンプレッサー及び密着巻きコイル状コンデンサーを冷却するファンとを設け」る態様は、各装置が機械室内に設けられていることから、本願発明の「前記圧縮機と前記凝縮器は、前記機械室に配置され」る態様及び「前記機械室には、前記圧縮機と前記凝縮器を冷却するファンが配置され」る態様に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「圧縮機、凝縮器、蒸発器を含む冷凍サイクルを備え、機械室と前記機械室に隣接する断熱壁から成る収納部を有する冷蔵庫であって、
前記圧縮機と前記凝縮器は、前記機械室に配置され、
前記機械室には、前記圧縮機と前記凝縮器を冷却するファンが配置される、冷蔵庫。」
<相違点1>
圧縮機について、本願発明は、「ロータリ圧縮機であり、前記ロータリ圧縮機の寸法は、凝縮器の寸法よりも小さく」されているのに対して、引用発明は、「長筒型回転式コンプレッサー」とされて、「前記密着巻きコイル状コンデンサーは、その内径が前記長筒型回転式コンプレッサーの外径より大きくした」とされている点。
<相違点2>
アキュムレータについて、本願発明は、「前記圧縮機の横にはアキュムレータが配置され、前記アキュムレータは、前記機械室の底板の端部のコーナ部分に配置され」るとともに、「前記アキュムレータは、前記圧縮機に対して前記ファンが発生する冷却風の風下側に配置されている」と特定されているのに対して、引用発明は、アキュムレータの有無及びその配置位置について特定していない点。
(2) 判断
ア 相違点1について
冷蔵庫に用いる圧縮機として、どのような形式のものを採用するかは、冷蔵庫における圧縮機の設置スペース、冷蔵庫の使用環境、コスト等に応じて当業者が適宜選択し得ることであり、ロータリ圧縮機は本願出願前周知の技術であるから(例えば、上記引用例2記載事項参照。)、引用発明において、相違点1に係る本願発明の特定事項であるロータリ圧縮機を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用発明の「長筒型回転式コンプレッサー」の寸法と、「密着巻きコイル状コンデンサー」の寸法との関係について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明が「前記ロータリ圧縮機の寸法は、凝縮器の寸法よりも小さ」いことについて、以下の事項が記載されている。
「【0033】
図5の例では、縮機(コンプレッサ)40の寸法は、凝縮器(コンデンサ)42の寸法よりも小さい。例えば、圧縮機40の寸法L4、L5、L6の内の寸法L4、L6が、凝縮器の寸法L1、L2、L3に比べて、小さくなっている。
【0034】
なお、圧縮機40の寸法が凝縮器42の寸法よりも小さいとは、圧縮機40の3辺の寸法L4、L5、L6の内の少なくとも1つが、凝縮器の寸法L1、L2、L3よりも小さい場合を含んでいる。」
そうすると、引用発明の「前記密着巻きコイル状コンデンサーは、その内径が前記長筒型回転式コンプレッサーの外径より大きくした」こと及びΦD2(長筒型回転式コンプレッサーの外径)、ΦD1(密着巻きコイル状コンデンサー内径)を図示する引用例1の図3及び図4からみて、「長筒型回転式コンプレッサーの外径」は、「密着巻きコイル状コンデンサー」の両側における寸法(外径)及び「密着巻きコイル状コンデンサー」の長さのいずれよりも小さいものが看取できることから、引用発明の「前記長筒型回転式コンプレッサー」は、「前記密着巻きコイル状コンデンサー」の寸法より小さくされているといえる。また、仮にそうでないとしても、「前記長筒型回転式コンプレッサー」の寸法を、「前記密着巻きコイル状コンデンサー」の寸法より小さいものを採用することも、冷蔵庫における圧縮器の設置スペース、冷蔵庫の使用環境、コスト等に応じて当業者が適宜選択し得ることである。
そうすると、引用発明において、相違点1に係る本願発明の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2について
一般に、圧縮機を備える冷凍サイクルが、圧縮機への液バックを防止する等のために、アキュムレータを配置することは本願出願前周知の技術であり(例えば、上記引用例7及び8参照。)、引用発明も、長筒型回転式コンプレッサー(圧縮機)を備えるものであるから、アキュムレータを当然に配置しているものであるか、仮にそうでないとしても、引用発明において、アキュムレータを配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、アキュムレータの具体的な配置場所について、引用発明が、「長筒型回転式コンプレッサーには密着巻きコイル状コンデンサーの内側を通過する外気がファンにより直接送風される」(【0011】)ことを意図したものであるから、長筒型回転式コンプレッサーの風上となる上流に他の装置をできるだけ設けないようにすること、及び引用例1におけるファン(3)、密着巻きコイル状コンデンサー(10)、長筒型回転式コンプレッサー(1)、及び排気口(8)の配置関係(引用例1の図3、図4参照。)、並びに引用例8の液貯管の機能についての上記引用例8記載事項を勘案すると、引用発明において、アキュムレータを長筒型回転式コンプレッサー(圧縮機)の風下であって、配置スペースを考慮した機械室のコーナー部とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
そうすると、引用発明において、引用例8記載事項、本願出願前周知の技術を勘案し、相違点2に係る本願発明の特定事項となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 効果について
発明の効果に関して、上記相違点1及び2を併せてみても、当業者が予測し得た範囲のものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例8記載事項、本願出願前周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-11 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2014-121447(P2014-121447)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 裕介  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 莊司 英史
山崎 勝司
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 三好 秀和  

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