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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1351296
審判番号 不服2018-10799  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2015-202443号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月20日出願公開、特開2017- 74141号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年10月13日の出願であって、平成29年9月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年5月8日付け(送達日:同年同月15日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年8月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年8月7日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成29年12月1日に提出された手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技を行うことが可能な遊技機であって、
表示を行う表示手段と、
複数態様の動作が可能な可動部材と、
前記表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に所定画像を表示する所定演出を実行可能な所定演出実行手段と
を備え、
前記所定演出実行手段は、前記可動部材の態様が変化するタイミングに合わせて、前記可動部材の動作の態様に応じて異なる態様の所定画像を表示する所定演出を実行可能であり、前記可動部材が動作しているかにかかわらず前記所定演出を実行する
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
表示を行う表示手段と、
複数態様の動作が可能な可動部材と、
前記表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に所定画像を表示する所定演出を実行可能な所定演出実行手段と、
を備え、
前記所定演出実行手段は、
前記可動部材の態様が変化するタイミングに合わせて、前記可動部材の動作の態様に応じて異なる態様の所定画像を表示する所定演出を実行可能であり、
前記可動部材が動作しているかにかかわらず前記所定演出を実行し、
前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり、
前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い
ことを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遊技を行うことが可能な遊技機」を「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」とする補正。
イ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「・・・所定演出実行手段とを備え、」を「・・・所定演出実行手段と、を備え、」とする補正。
ウ 本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「可動部材」に関して、「前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり、 前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い」とする補正。

2 本件補正の目的
(1)ア 上記1(2)アの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の【0064】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「遊技機」を単に「遊技を行うことが可能な」ものから「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な」であるものに限定するものである。
イ 上記1(2)イの補正は、読点を付すべき箇所に読点を挿入するものであり、誤記の訂正である。
ウ 上記1(2)ウの補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の【0270】、【0275】ないし【0277】、【0279】ないし【0282】、図31ないし33等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「可動部材」が「第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり、」「第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い」ものであることに限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものを含むとともに、全体として、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしHは、分説するため合議体が付した。

「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 表示を行う表示手段と、
D 複数態様の動作が可能な可動部材と、
E 前記表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に所定画像を表示する所定演出を実行可能な所定演出実行手段と、
を備え、
前記所定演出実行手段は、
E-1 前記可動部材の態様が変化するタイミングに合わせて、前記可動部材の動作の態様に応じて異なる態様の所定画像を表示する所定演出を実行可能であり、
E-3 前記可動部材が動作しているかにかかわらず前記所定演出を実行し、
F 前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり、
G 前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-139766号公報(平成23年7月21日出願公開、以下「引用例」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技用価値を用いて遊技を行うことが可能な遊技機に関する。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の可動部材及び装飾部材は、長さ寸法が決まっているので、右端部分側を中心とした回動により左端部分を上方位置と下方位置との間で移動させるには、右端部分を左方向に移動可能に支持する必要があるので構造が複雑化するばかりか、右端部分を固定的に支持した場合には、左端部分の通過位置が右端部分を中心とする円弧線上に制限されてしまい、設計の自由度が低減するという問題があった。
【0007】
また、可動部材及び装飾部材は回動するものの形態に変化が生じること等はないため、今ひとつ興趣を向上させることができないばかりか、可動部材と装飾部材とをそれぞれ別個の駆動手段により駆動させるため、製造コストが嵩むという問題を有していた。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、装飾可動物の可動に伴う演出効果を高めることができる遊技機を提供することを目的とする。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を図面に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0017】
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。
・・・略・・・
【0020】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9では、第1特別図柄または第2特別図柄の可変表示に同期した演出図柄(飾り図柄)の可変表示(変動)が行われる。よって、演出表示装置9は、識別情報としての演出図柄(飾り図柄)の可変表示を行う可変表示装置に相当する。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8a(図2参照)で第1特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8b(図2参照)で第2特別図柄の可変表示が実行されているときに、その可変表示に伴って演出表示装置で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。
・・・略・・・
【0026】
演出表示装置9は、図3に示すように、遊技盤6に形成された開口部6aに、表示部9aを前面側に臨ませるように配設されている。また、演出表示装置9の前面側には、表示部9aの前面側に上下方向に移動可能に配置される装飾可動物としての役物201(本実施例では短刀を模したフィギュア)を有する役物ユニット200が設けられており、例えば演出表示装置9による演出の実行に応じて役物201を上下駆動させることができるようになっている(図15参照)。尚、役物ユニット200の詳細については後述することとする。」

ウ 「【0034】
また、図1に示すように、可変入賞球装置15の下方には、特別可変入賞球装置20が設けられている。特別可変入賞球装置20は開閉板を備え、第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたとき、および第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに生起する特定遊技状態(大当り遊技状態)においてソレノイド21によって開閉板が開放状態に制御されることによって、入賞領域となる大入賞口が開放状態になる。大入賞口に入賞した遊技球はカウントスイッチ23で検出される。」

エ 「【0043】
遊技盤6の遊技領域7の左右周辺には、遊技中に点滅表示される装飾LED25が設けられ、下部には、入賞しなかった打球が取り込まれるアウト口26がある。また、遊技領域7の外側の左右上部には、所定の音声出力として効果音や音声を発声する2つのスピーカ27R,27Lが設けられている。遊技領域7の外周上部、外周左部および外周右部には、前面枠に設けられた天枠LED28a、左枠LED28bおよび右枠LED28cが設けられている。また、左枠LED28bの近傍には賞球残数があるときに点灯する賞球LED51が設けられ、右枠LED28cの近傍には補給球が切れたときに点灯する球切れLED52が設けられている。天枠LED28a、左枠LED28bおよび右枠LED28cおよび装飾用LED25は、パチンコ遊技機1に設けられている演出用の発光体の一例である。なお、上述した演出用(装飾用)の各種LEDの他にも演出のためのLEDやランプが設置されている。」

オ 「【0066】
また、演出制御用CPU(図示略)は、役物ユニット200に設けられた昇降モータ81、開閉モータ83及び昇降センサ82、開閉センサ84に接続されており、昇降モータ81を駆動する信号を出力するとともに、昇降センサ82から入力される検出信号を監視する。
・・・略・・・
【0070】
図4?図6に示すように、役物201は、本実施例では短刀を模したフィギュアからなり、所定長さに形成された正面視帯状の刀部210と、該刀部210の右側に設けられる柄部211と、刀部210を被覆するように配設される鞘部212と、から構成される。このように構成される役物201は、図4に示すように、凹部203の下辺部に沿って水平に配置される退避位置と、図5及び図6に示すように、凹部203の開口の対角線上に傾斜状に配置される前面位置との間で、右端部を中心に回動可能に設けられている。
【0071】
詳しくは、柄部211の右端部は凹部203の右下角部近傍に軸支され、昇降モータ81の駆動により前後方向を向く軸心周りに回動する。鞘部212は、左端部が凹部203の左辺部に沿って上下方向に移動可能に案内されているとともに、刀部210に対して長手方向に相対移動可能に設けられている。よって、役物201全体は長手手方向に伸縮可能に構成されている。また、鞘部212及び柄部211は上下に分割可能に構成され、長手方向に対して直交する幅方向に移動可能に設けられており、開閉モータ83の駆動により幅方向に移動することで、刀部210の前面及び柄部211の内部を開閉する。」

カ 「【0113】
図11及び図14(a)には、役物201が退避位置に位置している状態が示されている。この状態において、移動支持板280は、回動支持板250に対して縮小した位置に配置され、取付用ボス261a,261b(位置決め用ボス262a,262b)はスライド長孔281a,281bの左端部に配置される。また、各リンク片330a,330b、340a,340b、350a,350b、360a,360bの軸部材331a,331b、341a,341b、351a,351b、361a,361bは、各傾斜溝315?318における幅方向の中心位置側の直線部315b?318bに配置されており、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置している(図15(a)参照)。
【0114】
ここで、昇降モータ81が駆動して回動支持板250が回動軸225周りに回動すると、図12及び図14(b)に示すように、移動支持板280は、回動支持板250に対して長手方向(左側)に相対移動し、前面位置に到達したときに、取付用ボス261a,261b(位置決め用ボス262a,262b)はスライド長孔281a,281bの右端部に配置される。また、移動支持板280の移動に伴い、ガイドレール290a,290bも左側に移動する。これにより、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bがレンズカバー257に対して左側に移動し、レンズカバー257の前面における開閉領域Z3(図8参照)、つまり刀部210の基端部(装飾部)が露呈されるため、該開閉領域Z3の背面側に位置する役物用LED85を発光させることにより、開閉領域Z3が装飾される(図15(b)参照)。
【0115】
また、このとき各リンク片350a,350b、360a,360bは、ガイド凹部265,266に嵌合されて左右方向の移動が規制されているとともに、軸部材351a,351b、361a,361bが各傾斜溝317,318における幅方向の中心位置側の直線部317b,318bに配置されていることで、各リンク片350a,350b、360a,360bに対しガイドレール290a,290bのみが左側に相対的に水平移動する。よって、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、左側に移動することになる(図15(b)参照)。また、移動支持板280の移動に伴いスライド板310が移動することはない。
【0116】
そして、役物201が前面位置に位置したときに、開閉モータ83が駆動してピニオンギヤ253が回転すると、図13及び図15(c)に示すように、スライド板310が回動支持板250及び移動支持板280に対して長手方向右側に相対移動し、取付用ボス261a,261b(位置決め用ボス262a,262b)はスライド孔314a,314bの左端部に配置される。そしてこのスライド板310の移動に伴い、各傾斜溝315?318が右側に移動することで、ガイド凹部265?268に嵌合されて左右方向の移動が規制されている各リンク片330a,330b、340a,340b、350a,350b、360a,360bの軸部材331a,331b、341a,341b、351a,351b、361a,361bに、傾斜部315a?318aが接近してきて該傾斜部315a?318aにて軸部材331a,331b、341a,341b、351a,351b、361a,361bを幅方向に押し出すため、軸部材は反対側の直線部313b?318bに配置される。つまり、各リンク片330a,330b、340a,340b、350a,350b、360a,360bはガイド凹部265?268に嵌合されて左右方向の移動が規制されているため、スライド板310の移動により、軸部材331a,331b、341a,341b、351a,351b、361a,361bが傾斜部315a?318aにより幅方向に移動させられる。
【0117】
このように各軸部材331a,331b、341a,341b、351a,351b、361a,361bがスライド板310の幅方向の端部側にそれぞれ移動することで、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動する。よって、レンズカバー257の前面における幅方向の中央部、つまり刀部210及び柄部211の幅方向の中央部(役物用LED85に対応する位置)が長手方向にわたり帯状に露呈されるため、各役物用LED85を発光させることにより、刀部210及び柄部211が装飾される(図15(c)参照)。
・・・略・・・
【0124】
また、演出制御用マイクロコンピュータ(図示略)は、役物201の駆動制御を、例えば遊技状態が第1特別図柄表示器8aや第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示される確率が高くなる確率変動状態に移行した場合、可変入賞球装置15に遊技球が始動入賞しやすくなる高ベース状態に移行した場合、大当り遊技状態に移行した場合等の遊技状態の移行に応じて行ったり、演出表示装置9の表示部9aにて様々な演出(例えばリーチ演出等)が実行される場合や操作ボタン50による操作がなされた場合等の適宜タイミングで行ってもよい。
・・・略・・・
【0127】
また、演出制御用マイクロコンピュータ(図示略)は、例えば昇降モータ81や開閉モータ83を動作させる際に、昇降モータ81や開閉モータ83の動作量が所定の最大ステップ数を超えても昇降センサ82や開閉センサ84からの検出信号が入力されない場合には、所定のリトライ動作を行い、それでも昇降センサ82や開閉センサ84からの検出信号が入力されない場合には異常状態と判定するようになっている。
【0128】
このリトライ動作では、例えば昇降モータ81を退避動作方向に所定ステップ数、退避動作方向に突出動作方向よりも多い所定ステップ数作動させるようになっている。なお、異常状態と判定した場合、その旨を演出表示装置9による表示や、音やLED等により報知してもよいし、報知することなく、演出表示装置9により役物201と略同様の短刀が動作する動画像を表示して演出を行うようにしてもよい。
【0129】
以上説明してきたように、本発明の実施例としての役物ユニット200にあっては、昇降モータ81の駆動により、移動支持部としての移動支持部材230が下限位置から上限位置に移動するのに応じて、第1可動部としての回動支持板250が固定支持部としての回動軸225の軸心を中心に回動するとともに、第2可動部としての移動支持板280が回動支持板250に対して離れるように移動することにより、移動支持部材230の移動に応じて回動軸225の軸心をずらさなくても、移動支持部材230を回動軸225からの距離及び方向が異なる下限位置と上限位置との間で移動させることができる。よって、構造を複雑化することなく、役物201の可動形態を変化させることができるとともに、昇降モータ81とは別個の駆動手段を用いることなく、移動支持部材230の移動に応じて移動支持板280が回動支持板250に対し離れたり近づいたりすることで装飾部としての刀部210の開閉領域Z3が被覆部としての鞘部カバー390により開閉されることによって装飾態様に変化を持たせることができるため、興趣を向上させることができる。
【0130】
また、図15(b)(c)に示すように、役物201は、移動支持部材230が下限位置に位置したときに表示部9aから退避する退避位置に配置され、上限位置に位置したときに遊技者の視線が集まる表示部9aと重畳する前面位置に配置されることで、遊技者が役物201を注視しやすくなるため、装飾部の装飾効果が高まるとともに、遊技の興趣が向上する。さらに、移動支持部材230が上限位置に位置したときに、刀部210における装飾部としての開閉領域Z3が表示部9aの略中央位置に配置されることにより、装飾部の装飾効果が効果的に高まる。
【0131】
また、図15(b)(c)に示すように、このように役物201が前面位置に配置したときに、演出制御用マイクロコンピュータ(図示略)が役物201、特に装飾部を注視させるような背景画像を表示部9aに表示する制御を行うことで、役物201の装飾効果をより一層高めることができる。
【0132】
尚、本実施例では、表示手段の一例として画像を表示可能な液晶表示器からなる演出表示装置9が適用されていたが、遊技に関連する情報(例えば遊技に関連する演出画像や装飾図柄等)を表示可能な表示装置であれば、例えば複数のLEDをマトリックス状に配置した表示器やセグメント表示器等を適用してもよい。」

キ 「【図15】



ク 上記カの【0114】、【0115】、【0117】、【0130】及び【0131】の記載、上記キの役物201の外観図を示す図15(b)及び(c)の記載からみて、役物201が前面位置に配置したときにおいて、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bが左側に移動したときに、刀部210の基端部(装飾部)が露呈される開閉領域Z3を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような背景画像(以下「第1の背景画像」)と、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動し、刀部210及び柄部211の幅方向の中央部が長手方向にわたり帯状に露呈されたときに、露呈された箇所を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような背景画像(以下「第2の背景画像」という。)とは、異なる態様の画像であることが看取できる。

ケ 上記アないしクからみて、引用例には、次の発明が記載されている。なお、aないしhについては本願補正発明のAないしHに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 第1特別図柄表示器8aに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたとき、および第2特別図柄表示器8bに特定表示結果(大当り図柄)が導出表示されたときに特定遊技状態(大当り遊技状態)が生起するパチンコ遊技機1(【0017】、【0034】)であって、
b 液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9(【0020】)と、
d 回動可能又は長手方向に伸縮可能である役物201(【0070】、【0071】)と、
e 役物201、特に装飾部としての開閉領域Z3を注視させるような背景画像を演出表示装置9の表示部9aに表示する制御を行う演出制御用マイクロコンピュータ(【0124】、【0131】、上記ク)と、
が設けられ、
前記演出制御用マイクロコンピュータは、
e-1、f 役物201が前面位置に配置したときにおいて、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bが左側に移動したときに、刀部210の基端部(装飾部)が露呈される開閉領域Z3を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような第1の背景画像と、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動し、刀部210及び柄部211の幅方向の中央部が長手方向にわたり帯状に露呈されたときに、露呈された箇所を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような該第1の背景画像と異なる態様である第2の背景画像を表示するように制御し(【0124】、【0131】、上記ク)、
e-3 昇降モータ81、開閉モータ83及び昇降センサ82、開閉センサ84が設けられた役物ユニット200において、昇降モータ81や開閉モータ83の動作量が所定の最大ステップ数を超えても昇降センサ82や開閉センサ84からの検出信号が入力されない場合には、所定のリトライ動作を行い、それでも昇降センサ82や開閉センサ84からの検出信号が入力されない場合には、異常状態と判定し、演出表示装置9により役物201と略同様の短刀が動作する動画像を表示して演出を行う(【0066】、【0127】、【0128】)、
h パチンコ遊技機1(【0017】)。」(以下「引用発明」という。)

(3)周知例
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-97704号公報(以下「周知例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に関し、特に、第1表示手段と第2表示手段とを備えた遊技機に関する。」
(イ)「【0223】
図17は、演出表示装置9と可動表示装置96とにおける相対位置の位置関係および画像表示例を示す正面図である。図17(a)には、非動作モード時における可動表示装置96が遊技領域7の内部に収納された状態と、当該状態での演出表示装置9の表示例とが示されている。図17(b)には、動作モード時における可動表示装置96が遊技領域7の外部に出現して演出表示装置9の前に重なった動作時の状態と、当該状態での表示例とが示されている。図17(c)には、動作モード時における可動表示装置96が遊技領域7の外部に出現して演出表示装置9の前に重なった動作時における演出表示装置9側の表示例(可動表示装置96は図示省略)が示されている。
・・・略・・・
【0243】
図17(c)に示すように、可動表示装置96の動作モードで、可動表示装置96が演出表示装置9の前に重なる重複位置関係となる出現位置に出現している状態において、演出表示装置9では、可動表示装置96で表示される対応表示領域960および対応表示画像61bのような特定画像と同様の画像を、当該重複位置で特別画像として表示させる制御が行なわれる。具体的に、このような状態において、演出表示装置9の表示領域のうち、可動表示装置96が重なる表示領域には、可動表示装置96の対応表示領域960と同様の対応表示領域96aが設けられて表示され、変動表示に応じて合算保留記憶表示部18cで表示される保留記憶画像(保留記憶情報)が対応表示領域96aの中へ移動(シフト)して、対応表示画像61cとして表示されるというような、変動表示に対応した表示演出が実行される。
【0244】
このような可動表示装置96で実行される画像表示と同様の画像表示を演出表示装置9において実行する制御は、可動表示装置96が故障等の動作の不具合により演出表示装置9の前に可動表示装置96が重なる重複位置関係とならない異常状態となっているか否かに関わらず、可動表示装置96の動作モードにおいて常に実行される。
【0245】
可動表示装置96の動作モードにおいて、可動表示装置96側で実行される対応表示演出と同様の対応表示演出が演出表示装置9の側で実行されることにより、可動表示装置96における故障等の動作の不具合により、演出表示装置9の前に可動表示装置96が重なる重複位置関係とならない異常状態が生じたときでも、パチンコ遊技機1においては、これら2つの表示装置を用いた対応表示演出と同様の対応表示演出を行なうことができる。」

イ 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-64819号公報(以下「周知例2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1?図41を参照し、第1実施形態として、本発明をパチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)10に適用した場合の一実施形態について説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態におけるパチンコ機10の正面図であり、図2及び図3はパチンコ機10の遊技盤13の正面図であり、図4はパチンコ機10の背面図である。なお、図2は、パチンコ機10の可変表示装置ユニット80に設けた第1役物87が第3図柄表示装置81の表示面の上側の一部を覆うようにして下降した状態を示し、図3は、パチンコ機10の可変表示装置80に設けた第2役物88が第3図柄表示装置81の表示面の下側の一部を覆うようにして上昇した状態を示している。」
(イ)「【0263】
ここで、図11(a)を参照して、第1役物87が動作中に第3図柄表示装置81に表示される画像を説明する。図11(a)は、第1役物87が動作中に第3図柄表示装置81に表示される画像を示す図である。
【0264】
表示制御装置114では、第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドを音声ランプ制御装置113に対して出力した場合、その第1役物87の動作を遊技者に対して効果的に目立たせるために、センターフレーム86から下降した第1役物87の周辺を光らせた画像81aを第3図柄表示装置81に表示させる。
【0265】
音声ランプ制御装置113では、第2役物88の動作中に第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドを受信した場合、上述した通り、動作干渉判定処理によって、第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドの動作を非実行としたが、ノイズ等の影響やプラグラム上の誤り等によって誤って受信されたのが、先に送受信された第2役物88の動作開始を指示する役物動作開始コマンドであることもあり得る。つまり、この場合、第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドが、表示制御装置114から音声ランプ制御装置113に対して正規に出力されたものであることも十分にあり得る。
【0266】
ところが、音声ランプ制御装置113の動作干渉処理によって、第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドが無視され、第1役物87が非動作とされた場合、この第1役物87の動作開始を指示する役物動作開始コマンドが正規のコマンドであれば、第1役物87が下降しないにもかかわらず、本来下降されるはずの第1役物87の周辺を光らせた画像81aだけが第3図柄表示装置81に表示されることとなる。よって、第3図柄表示装置81を注視しながら遊技を行っている遊技者に対して、意味のない画像を見せることになり、遊技に対する興趣を削ぐ結果となるおそれがあった。
【0267】
これに対し、表示制御装置113は、役物動作非実行コマンドを受信すると、その役物動作非実行コマンドにより示された可動役物と動作態様とに従って、実際には非実行とされた可動役物が非実行とされた動作態様で動作する画像を、元々表示される画像にかぶせる形で第3図柄表示装置81に表示させる。この例を図11(b)に示す。図11(b)は、音声ランプ制御装置113から表示制御装置114に対して、第1役物87が非実行とされたことを示す役物動作非実行コマンドが送信された場合に、第3図柄表示装置81に表示される画像を示す図である。
【0268】
図11(b)で示した例では、音声ランプ制御装置113から表示制御装置114に対して、第1役物87が非実行とされたことを示す役物動作非実行コマンドが送信されると、表示制御装置114は、その役物動作非実行コマンドにより示される第1役物87が、その役物動作非実行コマンドにより示される動作態様で動作する画像81bを、その第1役物87の周辺を光らせた画像81aにかぶせた形で表示する。これにより、第1役物87が実際に動作されなくても、第3図柄表示装置81を注視しながら遊技を行っている遊技者に対して、第1役物87がセンターフレーム86から下降して、その周辺を光らせながら、回転動作する画像を見せることができる。よって、遊技に対する興趣を高める演出を行うことができる。」

ウ 原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-202639号公報(以下「周知例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機等の遊技機に関するものである。」
(イ)「【0020】
また、図4、図7及び図8に示すように、裏側装飾部材47は、開口部111の右下角部の外側に、透明な合成樹脂製でほぼ左手の握り拳に形成された可動物112が、後述のようにステッピングモータで構成される可動物用モータ69を介してこの開口部111の対角線上に沿って液晶表示器52の前面部に進退可能に設けられている(図9参照)。尚、図6に示すように、この可動物用モータ69は、可動物112の背面側に配設されている。
また、開口部111の右下角部の外側には、原点位置に位置する可動物112の下側に回路基板113が設けられている。この回路基板113には、フルカラーの発光ダイオードで構成される8個の各可動物LED68が、開口部111の対角線上に沿って2列に4個ずつ配設されている。これにより、各可動物LED68が所定の色に発光した場合には、可動物112は、その色で発光することとなる。尚、可動物LED68は、回路基板113に4個ずつ2列で8個配設したが、もっと多く配設するようにしてもよい。」
(ウ)「【0130】
その後、図34(E1)に示すように、3列の各第1・第2・第3図柄の変動表示を開始してから時間T4秒経過した場合には、サブ統合制御基板280のCPU281は、駆動回路72を介して各可動物LED68を所定の色(例えば、赤色や青色である。)に点灯駆動して、透明な合成樹脂製でほぼ左手の握り拳に形成された可動物112を所定の色に発光させる。
また、可動物112を作動させる駆動機構が故障していない場合には、CPU281は、駆動回路70を介して可動物用モータ69を所定ステップ数正回転駆動して、該可動物112の先端部分が、液晶表示器52に表示される右列の仮停止図柄「6」に重なる位置まで移動させる。また、演出表示基板260のCPU261は、所定の色に発光した可動物112を表す映像可動物121を、遊技者側から見て移動する可動物112に重なるように液晶表示器52に表示する。そして、この映像可動物121の先端部分が、液晶表示器52に表示される右列の仮停止図柄「6」に重なる位置まで移動表示された場合には、該仮停止図柄「6」がパンチを受けて破壊される状態を表示する。
これにより、透明な可動物112の各可動物LED68から離れて発光しなくなった部分が、液晶表示器52に表示される映像可動物121に重なって移動するため、透明な可動物112は全体として、所定の色に発光した状態で、該可動物112の先端部分が、液晶表示器52に表示される右列の仮停止図柄「6」に重なる位置まで移動して、仮停止図柄「6」を破壊するように見せることが可能となる。
【0131】
一方、図34(E2)に示すように、可動物112を作動させる駆動機構が故障した場合には、可動物112は、原点位置で所定の色に発光する。また、演出表示基板260のCPU261は、所定の色に発光した可動物112を表す映像可動物121を、可動物112が動く予定だった移動経路上に重なるように液晶表示器52に表示する。そして、この映像可動物121の先端部分が、液晶表示器52に表示される右列の仮停止図柄「6」に重なる位置まで移動表示された場合には、該仮停止図柄「6」がパンチを受けて破壊される状態を表示する。
これにより、可動物112を作動させる駆動機構が故障した場合でも、映像可動物121が仮停止図柄「6」をパンチで破壊するように見せることが可能となる。」

エ 上記アないしウからみて、
「パチンコ遊技機において、可動部材が動作しているかどうかにかかわらず、表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に該可動部材に関連した画像を表示すること。」は本願出願前に周知(以下「周知技術1」という。)であると認められる。

オ 本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2003-102963号公報(以下「周知例4」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、識別情報の可変表示を行って表示結果を導出する可変表示装置を備え、前記表示結果が予め定めた特定表示態様となったことを条件として所定の遊技価値を付与可能となる遊技機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、可変表示装置を備えた遊技機としての例である弾球遊技機は、可変表示装置で図柄(識別情報)を可変表示(これを変動ともいう)し、その表示結果が予め定めた大当り図柄(特定表示態様)となったことを条件に、特定遊技状態を発生(所定の遊技価値を付与)するようになっていた。また、このような弾球遊技機には、可変表示装置の外周部分を装飾する装飾部材に可動演出装置を設け、該可動演出装置の動作を可変表示装置におけるリーチ表示態様の予告動作として行うものが提案されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の可動演出装置は、その動作態様が一様に設定され、予告動作を行うか否かの単純なものであった。本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、可動演出手段(可動演出装置)の動作態様と動作タイミングとを複数種類設定すると共にその種類に応じて期待度を異ならせることで、予告の多様化を招来することができる遊技機を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の発明においては、識別情報の可変表示を行って表示結果を導出する可変表示装置を備え、前記表示結果が予め定めた特定表示態様となったことを条件として所定の遊技価値を付与可能となる遊技機において、遊技者が動作を視認可能な箇所に設けられ、遊技の演出に用いられる可動演出手段を備え、前記可動演出手段は、前記可変表示装置の表示態様が所定の表示態様となることを予告報知する予告報知動作を実行可能であり、前記予告報知動作は、前記識別情報の可変表示の実行タイミングに対して複数の動作タイミングのうちより選択した動作タイミングから動作を開始することが可能であると共に、動作が異なる複数種類が設けられ、前記予告報知動作は、前記可変表示装置の表示態様が前記所定の表示態様となる場合と前記可変表示装置の表示態様が前記所定の表示態様とならない場合のいずれの場合にも実行され得ると共に、前記予告報知動作が実行された後に前記可変表示装置の表示態様が前記所定の表示態様となる期待度を、前記動作タイミングに対応して複数設定し、また前記期待度を前記予告報知動作の種類に対応して複数設定したことを特徴とする。このように構成することにより、可動演出手段の動作態様の種類及び動作タイミングに応じて期待度を異ならせることができるので、可動演出手段による予告を多様化することができ、ひいては遊技の興趣向上を招来することができる。
・・・略・・・
【0014】また、請求項11の発明においては、前記複数の動作タイミングにおいては、前記可変表示装置の表示態様が前記所定の表示態様が導出され得るタイミングに近づくにつれて、前記可変表示装置の表示態様が前記所定の表示態様となる期待度を高くしたことを特徴とする。このように構成することにより、直前まで遊技者に期待感を持続させることができる。」
(イ)「【0075】また、上記した実施形態(第一実施形態)では、基本動作(予告態様1)に対する発展型として発展動作(予告態様2)を1種類設定しているが、発展動作を複数種類設定することで、発展の内容をより多彩に設定してもよい。例えば、図21の第四実施形態に示す動作態様を別の種類の発展動作(予告態様2’)として追加設定するようにしてもよい。予告態様2’では、先ず、図21(A)に示すような各ソレノイド21a,37a,38aの駆動停止による可動部材21,37,38の停止状態(可動部材21は下あご部分21bを閉じた状態)から、ソレノイド21aに図21(D)の駆動信号が送信されると共に、各ソレノイド37a,38aに図21(E)の駆動信号が送信される。ソレノイド21aに送信される駆動信号は、最初は予告態様2と同様に所定のインターバルを置いた後に300msのON信号を2回繰り返し、次いで所定のインターバルを置いて300msのON信号を3回繰り返す信号であり、次いで所定のインターバル(予告態様2と同一のインターバル)を置いた後に予告態様2よりもON時間が短いON信号を出力するものである。一方、各ソレノイド37a,38aに送信される駆動信号は、予告態様2と同一の信号である。
【0076】これにより、図21(B)に示すように、怪獣の顔を模した可動部材21は、下あご部分21bを上下方向に動かす動作(怪獣が口を開け閉めして、あたかも吼えるような動作)を行い、人形形状の可動部材37,38は、小刻みな左右方向への揺れ動作とゆっくりした左右方向への揺れ動作との組合せを継続的に行う。そして、可動部材21,37,38の動きが一旦停止した後、図21(C)に示すように、可動部材21のみが下あご部分21bを一定時間(予告態様2よりも短い時間)下方向に動かす動作(怪獣が口を大きく開けかけて閉めるような動作)を行う。即ち、第四実施形態では、発展動作において基本動作の後に付帯する動作態様を異ならせることで、予告態様2とは違う予告態様2’を追加設定して複数種類の発展動作を設けている。なお、基本動作の後に付帯する動作態様を同一にする一方で付帯するタイミングを異ならせることで別の種類の発展動作を設定してもよい。このように構成した場合には、いつ発展動作に発展するかの楽しみを遊技者に与えることができる。また、このような複数種類の発展動作を設定した構成において、その種類毎で予告の信頼度を異ならせるようにしてもよい。例えば、怪獣(可動部材21)が口を大きく開けかけて閉める動作を行う予告態様2’の信頼度を、怪獣が口を大きく開ける動作を行う予告態様2の信頼度に比べて低く設定してもよい。このように構成することで、複数種類の発展動作毎で遊技者の期待感を異ならせることができる。さらには、可動部材21の動作に合わせて多色LEDからなる役物飾りランプ33a,33bを点灯させるようにしてもよい。例えば、怪獣が口を大きく開ける動作を行ったときに口の中に配置された役物飾りランプ33a,33bを点灯するようにしてもよい。この場合、役物飾りランプ33a,33bの点灯態様を複数種類設定し、複数種類の点灯態様毎で大当りへの信頼度を異ならせるようにしてもよい。こうすることで、可動部材に対する遊技者の注目をより一層高めることができる。」

カ 本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2003-126444号公報(以下「周知例5」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機、コイン遊技機、スロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは、識別情報の可変表示を行なって表示結果を導出表示する可変表示装置と、遊技者に動作が視認可能な箇所に設けられ遊技の演出に用いられる可動演出手段とを含む複数種類の演出用電気部品を用いて遊技演出を行なうことが可能であり、前記可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となったことを条件として特定の遊技状態に制御可能となる遊技機に関する。」
(イ)「【0107】なお、予告態様4としては、特別可変表示部9の更新開始に関連するタイミングで予告態様の動作が開始する例を示したが、その代わりに、予告態様4として、特別可変表示部9において大当りの表示結果が導出表示されるタイミングに関連するタイミングで予告報知のための動作(センター可動部材10、サイド可動部材18を用いた動作)を行なうようにしてもよい。この場合の大当りの表示結果が導出表示されるタイミングに関連するタイミングとしては、表示結果が導出表示される直前を含み、表示結果の導出表示タイミングと関連性があると認識されるタイミングであればよい。このような予告報知を行なう場合には、特別変表示部9の表示結果が大当りとなるタイミングに近づくにつれて、特別変表示部9の表示態様が予告報知通り(大当り)となる期待度(信頼度)が高くなるように複数の予告態様の設定を行なう。
・・・略・・・
【0111】なお、予告態様2については、基本動作として、更新表示が行なわれるに際して前述した予告態様1と同様の態様でサイド可動部材18およびセンター可動部材10が動作されることを示した。この場合の同様の態様としては、予告態様1の場合と同一の信号パターンを用いた可動部材の動作態様が図5に示されているが、これに限らず、遊技者にとって可動部材が見かけ上同じ動作をしているように視認可能なものであれば予告態様1の場合と多少異なる信号パターンを用いた動作態様であってもよい。
【0112】なお、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれるセンター可動部材10の動作は、リーチ状態の発生を報知する文字の表示の直前、表示と同時、表示の直後のうちのどのタイミングであってもよい。つまり、そのような動作は、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれる(表示と関連付けられる)動作となればよい。
【0113】また、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれる可動部材の動作としては、センター可動部材10の動作にサイド可動部材18の動作を加えてもよい。
【0114】また、前述したような「リーチ」という文字を表示する場合には、そのような文字の表示だけでなく、キャラクタ等のその他の画像を特別可変表示部9に表示するようにしてもよい。そのようにすれば、演出をより多様化できる。
【0115】また、以上に示した予告態様2に加えて、基本動作から発展する発展動作について、発展タイミングを予告態様2よりも所定時間遅らせた別の予告態様を設けてもよい。そのようにすれば、予告態様2での発展タイミングが経過して発展動作が行なわれなかったと遊技者が一旦認識した後に、さらに発展動作が行なわれる場合も生じるので、遊技者の期待感をより一層増大させることが可能となる。」

キ 本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2003-135731号公報(以下「周知例6」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機、コイン遊技機、スロットマシンなどで代表される遊技機に関する。詳しくは、複数種類の演出用電気部品を用いて遊技演出を行なうことが可能である遊技機に関する。」
(イ)「【0099】なお、予告態様4としては、特別可変表示部9の更新開始に関連するタイミングで予告態様の動作が開始する例を示したが、その代わりに、予告態様4として、特別可変表示部9において大当りの表示結果が導出表示されるタイミングに関連するタイミングで予告報知のための動作(センター可動部材10、サイド可動部材18を用いた動作)を行なうようにしてもよい。この場合の大当りの表示結果が導出表示されるタイミングに関連するタイミングとしては、表示結果が導出表示される直前を含み、表示結果の導出表示タイミングと関連性があると認識されるタイミングであればよい。このような予告報知を行なう場合には、特別変表示部9の表示結果が大当りとなるタイミングに近づくにつれて、特別変表示部9の表示態様が予告報知通り(大当り)となる期待度(信頼度)が高くなるように複数の予告態様の設定を行なう。
・・・略・・・
【0104】なお、予告態様2については、基本動作として、更新表示が行なわれるに際して前述した予告態様1と同様の態様でサイド可動部材18およびセンター可動部材10が動作されることを示した。この場合の同様の態様としては、予告態様1の場合と同一の信号パターンを用いた可動部材の動作態様が図5に示されているが、これに限らず、遊技者にとって可動部材が見かけ上同じ動作をしているように視認可能なものであれば予告態様1の場合と多少異なる信号パターンを用いた動作態様であってもよい。
【0105】なお、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれるセンター可動部材10の動作は、リーチ状態の発生を報知する文字の表示の直前、表示と同時、表示の直後のうちのどのタイミングであってもよい。つまり、そのような動作は、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれる(表示と関連付けられる)動作となればよい。
【0106】また、リーチ状態の発生を報知する文字の表示に合わせて行なわれる可動部材の動作としては、センター可動部材10の動作にサイド可動部材18の動作を加えてもよい。
【0107】また、前述したような「リーチ」という文字を表示する場合には、そのような文字の表示だけでなく、キャラクタ等のその他の画像を特別可変表示部9に表示するようにしてもよい。そのようにすれば、演出をより多様化できる。
【0108】また、以上に示した予告態様2に加えて、基本動作から発展する発展動作について、発展タイミングを予告態様2よりも所定時間遅らせた別の予告態様を設けてもよい。そのようにすれば、予告態様2での発展タイミングが経過して発展動作が行なわれなかったと遊技者が一旦認識した後に、さらに発展動作が行なわれる場合も生じるので、遊技者の期待感をより一層増大させることが可能となる。」

ク 本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-139569号公報(以下「周知例7」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、所定数を上限に始動記憶を記憶可能な遊技機に関する。」
(イ)「【0223】
〔先読み演出〕
ところで、上限を超えて始動記憶が発生した場合に、記憶されている始動記憶に関する先読み予告表示を行う遊技機が知られている・・・。しかしながら、始動記憶に関連した演出における遊技の興趣をさらに高める余地があった。
【0224】
そこで、図29を参照して、遊技の興趣を高めることが可能な先読み演出について説明する。図29は、本実施形態の先読み演出について説明する図である。
・・・略・・・
【0234】
また、図29(E)に示すように、予め変動時間に対して可動役物270の可動を許可する許可ポイントA?Cが設定されているので、可動役物270は、変動時間が許可ポイントA?Cとなったときに可動して表示画面31の前方に出現することになる。
【0235】
なお、可動役物270の出現回数が3回に満たない場合は、許可ポイントA?Cの何れかのポイントで可動役物270は可動する。このとき、選択される許可ポイントが変動開始から時間が経過しているほど、変動結果の期待度が高くなるように設定してもよい。」

ケ 上記オないしクからみて、
「遊技機において、可動部材は、第1のタイミングにおいて動作する場合と、前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングにおいて動作を行う場合とがあり、前記可動部材が第1のタイミングで動作する場合よりも、前記可動部材が第2のタイミングで動作する場合の方が、大当りの期待度が高いこと。」は本願出願前に周知(以下「周知技術2」という。)である。

(4)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(h)は、本願補正発明のAないしHに対応させている。

(a)(h)引用発明の「特定遊技状態(大当り遊技状態)」及び「パチンコ遊技機1」は、それぞれ本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態」及び「遊技機」に相当する。引用発明のパチンコ機1において、特定遊技状態(大当り遊技状態)が生起することは、特定遊技状態(有利状態)に制御可能であることといえるから、引用発明の特定事項aは、本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「b 液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9」は、本願補正発明の「B 表示を行う表示手段」に相当する。

(d)引用発明の「d 回動可能又は長手方向に伸縮可能である役物201」は、本願補正発明の「D 複数態様の動作が可能な可動部材」に相当する。

(e)引用発明の「背景画像」は、役物201(可動部材)、特に装飾部としての開閉領域Z3を注視させるように、演出表示装置9(表示手段)の表示部9aに表示されるところ、注視させるために役物201に対応した領域に表示されるものといえるから、本願補正発明の「所定画像」に相当するものといえる。また、引用発明の「演出制御用マイクロコンピュータ」は、背景画像(所定画像)を表示する制御を行い、背景演出を表示する演出を実行しているともいえるから、本願補正発明の「所定演出実行手段」に相当する。そうすると、引用発明の特定事項eは、本願補正発明の「E 前記表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に所定画像を表示する所定演出を実行可能な所定演出実行手段」を備えるといえる。

(e-1)引用発明において、前記演出制御用マイクロコンピュータ(所定演出実行手段)は、役物201が前面位置に配置したときにおいて、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bが左側に移動したときに、刀部210の基端部(装飾部)が露呈される開閉領域Z3を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような第1の背景画像と、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動し、刀部210及び柄部211の幅方向の中央部が長手方向にわたり帯状に露呈されたときに、露呈された箇所を注視させるように表示部9aに表示されたイフェクト画像のような第2の背景画像を表示するものであるところ、役物201(可動部材)の鞘部及び柄部の動作するタイミングに合わせ、且つ、役物201(可動部材)の鞘部及び柄部の動作の態様に応じて、相互に異なる第1の背景画像(所定画像)と第2の背景画像を表示するものである。してみると、引用発明の特定事項e-1、fは、本願補正発明の「E-1 前記可動部材の態様が変化するタイミングに合わせて、前記可動部材の動作の態様に応じて異なる態様の所定画像を表示する所定演出を実行可能である」との構成を備えるといえる。

(f)引用発明は、役物201が前面位置に配置したときにおいて、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bが左側に移動する第1動作を行った後、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動し、刀部210及び柄部211の幅方向の中央部が長手方向にわたり帯状に露呈される第2動作を行うものである。そうすると、引用発明の特定事項e-1、fと、本願補正発明の「F 前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり」とは、「F’ 前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う」点で一致する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 表示を行う表示手段と、
D 複数態様の動作が可能な可動部材と、
E 前記表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に所定画像を表示する所定演出を実行可能な所定演出実行手段と、
を備え、
前記所定演出実行手段は、
E-1 前記可動部材の態様が変化するタイミングに合わせて、前記可動部材の動作の態様に応じて異なる態様の所定画像を表示する所定演出を実行可能である、
F’ 前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う、
H 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項E-3)
所定演出に関し、
本願補正発明では、「前記可動部材が動作しているかにかかわらず前記所定演出を実行」するものであるに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点2(特定事項F、G)
可動部材に関し、
本願補正発明では、「前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり」、「前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(5)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)引用発明は、役物201が異常状態と判定された場合でも、演出表示装置9により役物201と略同様の短刀が動作する動画像を表示して演出を行うものである。そうすると、引用発明における役物201の異常状態において、装飾部として開閉領域Z3を注視させる背景画像についても、短刀の画像とともに表示することは引用例に明示的記載がなくとも自明であり、役物201(可動部材)が動作するか否かにかかわらず、背景画像(所定画像)を表示する演出(所定演出)を実行するといえるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
(イ)仮に相違点1が実質的な相違点であるとしても、上記(3)エで、周知技術1として示したように、パチンコ遊技機において、可動部材が動作しているかどうかにかかわらず、表示手段の表示領域における前記可動部材に対応した領域に該可動部材に関連した画像を表示することは周知であり、当該周知技術1を考慮すれば、引用発明において、役物201が動作しない異常状態かどうかにかかわらず、背景画像(所定画像)を表示するようになすこと、すなわち、上記相違点1に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。

イ 相違点2について検討する。
(ア)上記(3)ケで、周知技術2として示したように、遊技機において、可動部材は、第1のタイミングにおいて動作する場合と、前記第1のタイミングよりも後の第2のタイミングにおいて動作を行う場合とがあり、前記可動部材が第1のタイミングで動作する場合よりも、前記可動部材が第2のタイミングで動作する場合の方が、大当りの期待度を高くする構成は周知である。
(イ)引用発明と周知技術2とは、所定のタイミングで可動部材を動作させる遊技機という点で技術分野が共通するものであるから、当業者であれば引用発明とともに周知技術2も心得ているものである。そうすると、周知技術2を引用発明に適用することは当業者が適宜なし得たことである。
そして、引用発明の構成を具体的に検討すると、引用発明は、役物201が前面位置に配置したときにおいて、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が当接する閉鎖位置に位置したまま、上鞘部カバー390a及び下鞘部カバー390bが左側に移動する第1動作を行った後、上柄部カバー380aと下柄部カバー380b及び上鞘部カバー390aと下鞘部カバー390bは、互いの対向端辺同士が離間する開放位置に移動し、刀部210及び柄部211の幅方向の中央部が長手方向にわたり帯状に露呈される第2動作を行うものである。要するに、引用発明は、可動部材が、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行うものである。
(ウ)そうしてみると、周知技術2を心得た当業者であれば、引用発明において、第2動作を行うタイミングを1つのタイミングだけでなく、複数のタイミングのうちいずれかのタイミングで実施しようと試みるものである。このように第2動作を複数のタイミングでいずれかで実施する場合に、基本的なタイミングで実施する基本動作パターンに加え、該基本的なタイミングより後の特定タイミングで第2動作を実施する別の動作パターンを設けるとともに、該別の動作パターンが実施された場合に大当りの期待度を高くなるようにすることは周知技術2に基づけば当業者にとって格別困難なことではない。
(エ)以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得たことである。
(オ)なお、周知例4ないし6(上記(3)オないしキ)に記載されているように、可動演出装置の動作に関し、基本動作(第1動作)の後に付帯する発展動作(第2動作)のタイミングを複数設け、そのタイミング毎に予告の信頼度を異ならせることも周知であるといえ、当該周知の事項に基づいても当業者は本願補正発明に容易に想到するものである。

ウ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術1及び2の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

エ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書の【請求の理由】4(2)において、以下のとおり概略主張している。
「いずれの引用文献にも、本願請求項1に係る発明の下記の構成が記載されていない。
「前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり、前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い」 」

(イ)上記イで説示したとおり、周知例4ないし7に記載されているような周知技術に基づけば、引用発明において、審判請求人が主張する上記の構成となすことは当業者が容易になし得たものであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

(6)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年12月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、この出願の平成29年12月1日に提出された手続補正書により補正された請求項1に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


引用文献1.特開2011-139766号公報
引用文献2.特開2015-97704号公報
引用文献3.特開2014-64819号公報
引用文献4.特開2007-202639号公報

本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

3 引用例
(1)引用例(引用文献1)及び周知例1ないし3(引用文献2ないし4)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)及び(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2〔理由〕1(1))は、本願補正発明(上記第2〔理由〕3(1))から、実質的に、「F 前記可動部材は、第1動作を行った後の所定タイミングにおいて第2動作を行う第1パターンで動作する場合と、前記第1動作を行った後の前記所定タイミングよりも後の特定タイミングにおいて前記第2動作を行う第2パターンで動作する場合と、があり」、「G 前記可動部材が第1パターンで動作する場合よりも、前記可動部材が第2パターンで動作する場合の方が、前記有利状態に制御される期待度が高い」(上記相違点2)に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記相違点1で相違するから、本願発明も上記(5)アで示した理由と同様の理由により、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術1に基いて、容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術1に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-26 
出願番号 特願2015-202443(P2015-202443)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 赤穂 州一郎
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 平野 昌邦  
代理人 佐伯 義文  
代理人 松沼 泰史  

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