• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16C
管理番号 1351321
審判番号 不服2017-12466  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2019-05-08 
事件の表示 特願2014-513989号「軸方向においてプロファイル化されるスライド面の表面幾何学的構成を備える平坦な軸受シェル」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月13日国際公開、WO2012/168096、平成26年 7月 7日国内公表、特表2014-516144号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2012年5月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月9日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成27年12月24日付け 拒絶理由通知
平成28年 3月30日 意見書の提出
同年 7月29日付け 拒絶理由通知
同年11月 4日 意見書及び手続補正書の提出
平成29年 4月20日付け 拒絶査定
同年 8月23日 審判請求書及び手続補正書の提出
平成30年 6月25日付け 拒絶理由通知
同年 9月20日 意見書及び手続補正書の提出

2.本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成30年9月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
平坦な軸受シェルであって、
当該平坦な軸受シェルのスライド面は、当該平坦な軸受シェルの頂端の領域において、少なくとも縁領域で軸方向において凸面状に湾曲させられ、
前記湾曲は、当該平坦な軸受シェルの頂端で最大であり、当該平坦な軸受シェルの円周方向において、2つの部分表面に向かって連続的に減少し、
少なくとも前記2つの部分表面で凸面状のプロファイルがもたらされないよう、前記湾曲は円周方向において連続的に先細くなって前記2つの部分表面で無くなることを特徴とする、
平坦な軸受シェル。」

3.拒絶の理由
平成30年6月25日付けの当審が通知した拒絶の理由のうちの理由1は、次のとおりである。

この出願の請求項1?12に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2002-266848号公報
引用文献2:特開平9-177758号公報
引用文献3:実願昭55-116786号(実開昭57-40715号)のマイクロフィルム
引用文献4:特開2007-155093号公報

4.引用文献
(1)引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 裏金上に軸受合金層を設け、その軸受合金層の表面側を円筒状の軸受面としたすべり軸受において、
前記軸受面の軸線方向両側に、それぞれ当該軸受面の両端間の途中から端に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面を、円周方向各部で長さが異なるように形成したことを特徴とするすべり軸受。
【請求項2】 前記傾斜面の軸線方向長さは、軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分の軸線方向両側が最も長く、そこから周方向に離れるに従って短くなっていることを特徴とする請求項1記載のすべり軸受。」

「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を車両用エンジンのコネクティングロッドに取り付けられるクランクピン用すべり軸受に適用した第1実施例につき図1?図5を参照しながら説明する。図4はコネクティングロッドの全体を示す。同図において、コネクティングロッド11は、ロッド本体12の幅広の一端部にキャップ13をボルト14によって固定して構成されている。このコネクティングロッド11において、ロッド本体12の一端部とキャップ13によって構成される大端部15およびロッド本体12の他端部である小端部16は軸受ハウジングとして機能し、それら大端部15および小端部16に形成された嵌合穴17および18内にはすべり軸受19および20が取り付けられている。
【0013】上記の両すべり軸受19、20のうち、大端部15のすべり軸受19はクランクシャフトのクランクピン21(図5参照)を受け、小端部16のすべり軸受20はピストンに組み込まれたピストンピン(図示せず)を受けるようになっている。本発明の適用対象である大端部15のすべり軸受19は、図1に示す半割軸受22、23を2個上下に突き合わせて構成された二分割形のものである。なお、小端部16のすべり軸受20は巻きブシュまたは合せ目のない円筒状のものである。
【0014】大端部15のすべり軸受19を構成する上下の半割軸受22、23は、鋼板製の裏金層24の表面にAl系或いはCu系などの軸受合金層25を装着して構成されている。なお、場合によっては、軸受合金層25の表面にオーバレイ層を被着することもある。このような半割軸受22、23において、軸受合金層25の内周面によって構成される軸受面の軸方向両側には、傾斜面26、27が形成されている。
【0015】これら傾斜面26、27の構成などは双方について同じであるから、以下では、上側に半割軸受22の傾斜面26について説明し、下側の半割軸受23の傾斜面27については説明を省略する。なお、上下の半割軸受22、23において、それぞれの最大油膜圧力が発生する部分は対称位置に存在している。
【0016】さて、半割軸受22の軸方向両側の傾斜面26は、軸受面の軸線方向途中から端に行くに従って径方向外側に向かって傾斜している。そして、この傾斜面26の軸線方向長さは、半割軸受22を展開して示す図2のように、円周方向各部で異なっている。この場合、大端部15の剛性は比較的低いものとし、傾斜面26の長さは最大油膜圧力を生ずる箇所の軸線方向両側、つまりの最大油膜圧力部分を通る軸線方向の線C上の部分が最も長く、線Cから周方向両側に離れるに従って次第に短くなるように設定されている。
【0017】以下に、この傾斜面26の開始位置の設定および傾斜面26の傾き具合の設定構成について説明する。まず、前述した図12は軸受合金および大端部(軸受ハウジング)の弾性変形を考慮した流体潤滑理論に基づいて計算した油膜厚さ分布を示したものであった。この油膜厚さ分布を生じさせる油膜圧力の分布を図3(a)に示した。この図3(a)によれば、すべり軸受の軸線方向中央部の油膜圧力が高いため、軸受合金25が厚さを薄くする方向に弾性変形したり、大端部15がすべり軸受22と共に変形し、軸受合金25の内周面である軸受面が凹状に変形する。
【0018】このような軸受面の変形によって軸線方向両端部分では、クランクピン21と軸受合金25との隙間が小さくなる。すると、両者が荷重変動などの原因で微小に直接接触し、これにより軸受合金25の端部が摩耗し、その際の発熱量が大きい場合には焼付きに至る。このような摩耗や焼付きを生じさせないような傾斜面26を得るために、理論計算により、軸受合金25の表面の変形状態を求めた。これを図3(b)に示す。そして、この変形形態から、軸受合金25の両端部分の肉厚を、表面側から減少させる加工を施して傾斜面26を形成する。
【0019】・・・(省略)・・・
【0020】また、傾斜面26を設ける円周方向の領域は、最大油膜圧力が作用する箇所を通る線Cを中心に半割軸受22の周長Lの1/2程度とする。そして、傾斜面26の軸線方向長さは、線C上を最も長く設定し、ここから周方向両側に向かって次第に短くなって傾斜面26の形成領域の端では0となるようにする。そして、線Cの両側傾斜面26の軸線方向長さは、半割軸受22の幅をBとした場合、大端部15の剛性が低いとき、B/4以下に設定する。このように線Cから離れるに従って傾斜面26の長さが短くなっても、これは、軸受合金25に作用する荷重が線Cから離れるに従って小さくなるので、何等支障はない。なお、傾斜面26の開始位置を結んでできる線は直線でも良いし、曲線でも良い。なお、傾斜面26はクランクピン21の撓みに対しても、片当たりを生じないように機能する。
【0021】このように本実施例によれば、軸受面の軸線方向両側に傾斜面26を設けたので、円筒状軸受面の変形によって変形クランクピン21がすべり軸受19の両端部に片当たりすること、ひいては早期摩耗や焼付きが生ずることを防止できる。しかも、傾斜面26は軸受面の変形度合いの少ない部分では、その長さが短いので、軸受面として有効に作用する面積を大きく確保でき、負荷能力の低減を抑えながら、早期摩耗や焼付きが生ずることを防止できるものである。

「【0024】なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。第1実施例において、傾斜面26、27の周方向の形成領域は図8に示す本発明の第3実施例のように半割軸受22、23の周方向全体に拡大しても良い。第2実施例において、傾斜面26、27の周方向の形成領域は図9に示す本発明の第4実施例のように半割軸受22、23の周方向全体に拡大しても良い。図9の場合、周方向両端での傾斜面26、27の軸線方向長さはB/4以下とする。」

以上の記載事項及び【図1】?【図5】、【図8】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「円筒状の軸受面を有したすべり軸受19を構成する上下の半割軸受22、23において、
半割軸受22、23の軸受面は、その軸線方向両側にそれぞれ当該軸受面の両端間の途中から端に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面26、27を形成し、
前記傾斜面26、27の軸線方向長さは、軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分を通る軸線方向の線C上の部分が最も長く、そこから周方向両側に離れるに従って次第に短くなって傾斜面26、27の形成領域の端では0となる、半割軸受22、23。」

(2)引用文献2の記載
引用文献2には、図面(【図】?【図3】参照)とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 軸受内面の両端部に、軸受端面において上記内面から一定深さ削り込み、同削り込み部から上記内面に滑らかに接続される曲面状のクラウニング面を有する逃げ部を形成したことを特徴とする平軸受。」

「【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決するもので、その要旨とする第1の手段は軸受内面の両端部に、軸受端面において上記内面から一定深さ削り込み、同削り込み部から上記内面に滑らかに接続される曲面状のクラウニング面を有する逃げ部を形成したことを特徴とする平軸受にある。
【0009】上記手段によれば、クランク軸等の回転軸が爆発圧力等の軸荷重によって撓み変形して軸受内において傾斜するが、軸受の端部にはクラウニング面を有する逃げ部が形成されているため、軸受内面は回転軸の変形に沿った軸受面となり、従来のもののような軸受端部における局部的な強い当たりの発生が阻止され、上記軸荷重による軸受荷重が軸受面に均等に分布し、軸受圧力が低減される。」

「【0010】尚、上記第1の手段において、削り込み深さ(C)=0.005mm?0.050mm、クラウニング面の曲率半径(R)=3000mm?50000mmが好適である。」

「【0018】図1は図8?図9に示される主軸受装置から主軸受1を抜き出して図示したもので、同主軸受1以外の構成は図8?図9と同様である。図1において、上メタル1aと下メタル1bとより成る2つ割りの主軸受1は、外径Do,内径Diの円筒状に加工されるとともに、その内面(直径Di)1eに、幅方向の両端面1dから所定の長さe1 で、かつ内面1eからの両端面1dにおける削り込み深さCで以って曲率半径Rの曲面からなるクラウニング面20が形成される。」

(3)引用文献3の記載
引用文献3には、図面(第3図及び第4図参照)とともに次の事項が記載されている。

「第3図は本考案軸受の一実施例を示し、11は支承すべき軸、12は軸11に嵌合されたブツシユ、13はブツシユ12を嵌挿させてこれを保持するハウジングである。前記ブツシユ12は、その内周面にて軸11の軸受面を形成している。またブツシユ12は、その外径が同一径になつており、かつ内径が両端側から中央に向つて次第に径が小さくなつている。即ち、ブツシユ12の軸受面は軸11のたわみに対応し、かつたわんだ軸11に接触する面に形成されている。」(明細書5頁5?14行)

「しかるに本考案による軸受においては、軸11に負荷Fが加わつて軸11がたわんだ場合第4図に示す状態となる。即ち、たわんだ軸11がブツシユ12の軸受面の全面に接触するので、その面圧は小さくなり、従来技術の如きブツシユの両端で片当りして、かじり、焼付きを起すといった問題が生じない。」(明細書6頁2?8行)

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。

後者の「円筒状の軸受面を有したすべり軸受を構成する上下の半割軸受22、23」は、技術上の意味合いからみて、前者の「平坦な軸受シェル」に相当し、後者のすべり軸受を構成する「半割軸受22、23の軸受面」は、前者の「平坦な軸受シェルのスライド面」に相当する。

後者の「軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分を通る軸線方向の線C」は、引用文献1の【図1】?【図4】に記載されているすべり軸受の構造等と、その技術上の意味合いからみて、前者の「平坦な軸受シェルの頂端」に相当する。

前者の平坦な軸受シェルのスライド面が「少なくとも縁領域で軸方向において凸面状に湾曲させられ」ることは、本願の明細書(翻訳文)の段落【0029】及び【図6】の記載からみて、軸受シェルのスライド面が軸線方向の縁領域で湾曲して端部に向かって拡径する面を形成していることを意味していると認められる。
そうすると、後者の「径方向外側に傾斜する傾斜面26、27」は、前者の「凸面上に湾曲させられ」た部分と、「端部に向かって拡径している面」である限りにおいて一致する。
そして、後者の「その軸線方向両側にそれぞれ軸受面の両端間の途中から端に向かって径方向外側に傾斜する傾斜面26、27を形成」することは、傾斜面26、27が「軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分を通る軸線方向の線C上の部分」においても形成されていることは明らかなので、前者の「平坦な軸受シェルの頂端の領域において、少なくとも縁領域で軸方向において凸面状に湾曲させられ」ることと、「頂端の領域において、少なくとも縁領域で軸方向において端部に向かって拡径している面を形成し」ている限りにおいて一致する。

前者の「湾曲は、平坦な軸受シェルの頂端で最大であり、当該平坦な軸受シェルの円周方向において、2つの部分表面に向かって連続的に減少し、少なくとも2つの部分表面で凸面状のプロファイルがもたらされないよう、湾曲は円周方向において連続的に先細くなって2つの部分表面で無くなる」ことについて、湾曲が減少するとは、本願の明細書(翻訳文)の段落【0029】及び【図6】の記載を参酌すると、湾曲している部分の軸方向長さが頂端から2つの部分表面に向かって減少していることを意味していると認められる。
そうすると、後者の「傾斜面26、27の軸線方向長さは、軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分を通る軸線方向の線C上の部分が最も長く、そこから周方向両側に離れるに従って次第に短くなって傾斜面26、27の形成領域の端では0となる」ことは、傾斜面26、27の軸方向長さが線Cで最大であり、半割軸受22、23の周方向の端部に向かって連続的に減少し、周方向の端部で傾斜面26、27がなくなっていることにほかならないので、前者の「湾曲は、平坦な軸受シェルの頂端で最大であり、当該平坦な軸受シェルの円周方向において、2つの部分表面に向かって連続的に減少し、少なくとも2つの部分表面で凸面状のプロファイルがもたらされないよう、湾曲は円周方向において連続的に先細くなって2つの部分表面で無くなる」ことと、「端部に向かって拡径している面は、平坦な軸受シェルの頂端で最大であり、当該平坦な軸受シェルの円周方向において、2つの部分表面に向かって連続的に減少し、少なくとも2つの部分表面で端部に向かって拡径しているプロファイルがもたらされないよう、端部に向かって拡径している部分は円周方向において連続的に先細くなって無くなる」限りにおいて一致する。

そうすると、両者は、
「平坦な軸受シェルであって、
当該平坦な軸受シェルのスライド面は、当該平坦な軸受シェルの頂端の領域において、少なくとも縁領域で軸方向において端部に向かって拡径している面を形成し、
前記端部に向かって拡径している面は、当該平坦な軸受シェルの頂端で最大であり、当該平坦な軸受シェルの円周方向において、2つの部分表面に向かって連続的に減少し、
少なくとも前記2つの部分表面で端部に向かって拡径しているプロファイルがもたらされないよう、端部に向かって拡径している部分は円周方向において連続的に先細くなって無くなる、平坦な軸受シェル。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
「端部に向かって拡径している面」に関して、本願発明は「凸面状に湾曲させられ」ているものであるのに対して、引用発明は「傾斜面26、27」である点。
〔相違点2〕
本願発明は「湾曲は円周方向において連続的に先細くなって2つの部分表面で無くなる」ものであるのに対して、引用発明は「傾斜面26、27の軸線方向長さは、軸受面のうち油膜圧力が最大となる部分を通る軸線方向の線C上の部分が最も長く、そこから周方向両側に離れるに従って次第に短くなって傾斜面26、27の形成領域の端では0となる」点。

(2)判断
上記各相違点について以下検討する。
ア 相違点1について
引用文献1には、上記4.(1)のイにて摘記したとおり、「傾斜面26」(上側の半割軸受22の軸線方向両側に設けられている傾斜面)に関して、次の記載がある。
「このような摩耗や焼付きを生じさせないような傾斜面26を得るために、理論計算により、軸受合金25の表面の変形状態を求めた。これを図3(b)に示す。そして、この変形形態から、軸受合金25の両端部分の肉厚を、表面側から減少させる加工を施して傾斜面26を形成する。」(段落【0018】)
そして、当該「図3(b)」には、「軸線方向長さ」を横軸にして、軸線方向両側において下に凸状を呈した曲線が描かれている。
そうすると、「傾斜面26」を「凸面状に湾曲させられ」ているものとすることの、少なくとも示唆が、当該引用文献1にはあるといえる。そして、当該引用文献1には、「これら傾斜面26、27の構成などは双方について同じであるから、以下では、上側に半割軸受22の傾斜面26について説明し、下側の半割軸受23の傾斜面27については説明を省略する。」(段落【0015】)と記されているから、「凸面状に湾曲させられ」ているものとすることの、少なくとも示唆がある点は、「傾斜面27」についても同様である。
よって、引用文献1におけるこれらの記載に照らせば、当該引用文献1には、引用発明において、「端部に向かって拡径している面」を「凸面状に湾曲させられ」ているものとすることが、少なくとも示唆されているというべきである。
仮にそうでないとしても、軸受の端部に形成するクラウニング面を凸面状に湾曲した面とすることは、引用文献2及び3の各々に記載されており(上記4.(2)及び(3)参照)、当該事項を引用発明の傾斜面26、27に適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
イ 相違点2について
引用文献1には、上記4.(1)のウにて摘記したとおり、「傾斜面26、27」(それぞれ上側及び下側の半割軸受22及び23の軸線方向両側に設けられている傾斜面)に関して、次の記載がある。
「第1実施例において、傾斜面26、27の周方向の形成領域は図8に示す本発明の第3実施例のように半割軸受22、23の周方向全体に拡大しても良い。」(段落【0024】)
当該「第1実施例」は、引用発明に対応する実施例である。そして、その引用発明において、「傾斜面26、27の軸線方向長さ」が線C上の部分から周方向両側に離れるに従って次第に短くなり「傾斜面26、27の形成領域の端では0となる」ことは、前説示のとおりである。
そうすると、引用発明において、「傾斜面26、27の軸線方向長さ」を「傾斜面26、27の形成領域の端では0となる」ようにしつつ「傾斜面26、27の周方向の形成領域」を「半割軸受22、23の周方向全体に拡大」し、もって当該形成領域が「半割軸受22、23」の周方向端部で「傾斜面26、27の軸線方向長さ」が0となって終了するようにすることは、当該引用文献1に示唆されている。このことは、【図8】の記載とも整合する。
よって、引用文献1におけるこれらの記載に照らせば、当該引用文献1には、引用発明において、傾斜面26、27の軸線方向長さが円周方向において連続的に先細くなって半割軸受22、23の周方向端部で0となるようにすることが、示唆されている。
そして、引用発明における半割軸受22、23の周方向端部は、本願発明における「2つの部分表面」に相当するから、引用発明をもとに、上記の示唆に従い、相違点2に係る本願発明の構成、すなわち「湾曲は円周方向において連続的に先細くなって2つの部分表面で無くなる」構成を想到することは、当業者であれば容易になし得たことである。

本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。

よって、本願発明は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)審判請求人の主張について
本願発明の相違点2に係る構成に関して、請求人は平成30年9月20日の意見書において、
「4.理由1(進歩性)・・・(2)引用文献1は、少なくとも、『前記湾曲は円周方向において連続的に先細くなって前記2つの部分表面で無くなる』という請求項1に係る発明の特徴的な構成を何ら開示も示唆もしていません。・・・(4)しかしながら、引用文献1の段落0020中の『・・・(省略)・・・』という記載及び図2の例示から明らかなように、引用文献1において、周方向における湾曲は、半割軸受22の円周方向において連続的に先細くなって2つの部分表面で無くなっていません。」
と主張している。
しかしながら、引用文献1の段落【0024】及び【図8】(平成30年6月25日(起案日)付けの拒絶理由通知書においても引用)の記載に照らせば、傾斜面26、27の軸線方向長さが円周方向において連続的に先細くなって半割軸受22、23の周方向端部で0となるようにすることが示唆されていることは、上記(2)にて説示したとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明並びに引用文献2及び3に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-28 
結審通知日 2018-12-04 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2014-513989(P2014-513989)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久島 弘太郎佐々木 訓岩谷 一臣  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 平田 信勝
尾崎 和寛
発明の名称 軸方向においてプロファイル化されるスライド面の表面幾何学的構成を備える平坦な軸受シェル  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ