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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1351322
審判番号 不服2017-15662  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-23 
確定日 2019-05-08 
事件の表示 特願2014-549595「一体化されたフィルタを有する呼吸測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/098731、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)12月21日(パリ条約による優先権主張 2011年12月27日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年11月7日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月11日付けで拒絶査定されたところ、同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、

「 【請求項1】
患者と換気装置又は呼吸器との間の空気通路内の呼吸流量又は呼吸気体の測定のためのシステムであって、当該システムは、
第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ、
前記第一の開口部から延びる、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
前記第二の開口部から延びる、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ、
前記第三の開口部及び前記第四の開口部から延びる、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタとの間の通路に沿って位置する複数の圧力感知管に接続するように構成された、第三のコネクタ及び第四のコネクタ、並びに、
前記アダプタの前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれた、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ、
を有する、システム。」
と補正された。

本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記ハウジング内に一体化された、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」について、「前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれた、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」と、すなわち、「フィルタ」が「フィルタハウジング内に置かれた」と「フィルタ」を一体化する形態を限定したものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

2 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2004-532077号公報(以下、「引用文献」という。)には、「携帯用圧力トランスデューサ、該携帯用圧力トランスデューサと共に利用するニューモタコ、および関連の方法」について図面とともに次の事項が記載されている。なお、以下の摘記において、(2)の引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

(1-ア)
「【0002】
本発明は一般に呼吸圧力や呼吸流量を測定する装置に関し、具体的には呼吸圧力トランスデューサに関する。特に、本発明は、個人の気道と連絡するよう構成された呼吸コンジットに隣接して配置される圧力トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0003】
集中治療の状況における麻酔適用中の呼吸流量測定、また訓練プログラムやその他の医療検査の前や過程中にアスリートやその他の個人の体調をモニタリングする際の呼吸流量測定は、心肺の機能および呼吸回路完全性の評価に有用な情報を提供する。上記状況の厳しい要求に答えようとする流量計を作成する為に多くの様々な技術が利用されてきた。
【0004】
様々な異なるタイプの圧力測定装置が既知であるが、従来、呼吸流量測定値を得るには差圧流量計が利用されてきた。気道内圧や流速や呼吸の体積などの呼吸力学のパラメータのモニタリングにより、放出された(即ち、吸い込まれた)体積および吐き出された体積を測定する為に圧力のモニタリングが典型的に実施されていると、臨床家は呼吸補助を要する患者への保健医療をより適切に提供できる。更に、圧力のモニタリングは、他の呼吸パラメータ、例えば酸素消費量、二酸化炭素除去量、また心拍出量や肺毛細管血流量さえも評価する呼吸ガス測定と共に利用される。
【0005】
差圧流量計はベルヌーイの法則に基づいて作動し、絞り全体に渡る圧力低下は容積測定の空気の流速に比例している。流量と流量への絞りまたは他の抵抗の全体に渡る圧力低下との関係は該抵抗の設計に依存する。一般に「ニューモタコ(pneumotach)」と呼ばれる差圧流量計の中には、流量と圧力差との間に線形の関係を作るよう流量絞りが設計されているものもある。
・・・
【0007】
作動流量計の臨床での日常的な利用は、1995年1月10日にKofoed他に発行された米国特許5,379,650号(以下「‘650特許」)に開示されたようなより頑強な設計の開発に伴い、ここ数年の間に著しく増加している。‘650特許に記載の作動流量計は、先行の差圧流量センサが利用された場合にかねてより直面していた問題の大部分を克服したもので、正反対向きの縦方向に伸びた支柱を含む管状ハウジングを有する。‘650特許に記載の流量センサの支柱には、縦方向に間隔を空けた圧力ポートを備える第1の内腔と第2の内腔とがあり、上記圧力ポートは、それぞれ軸方向に配置され支柱の各端に形成されたノッチに通じている。」

(1-イ)
「【0020】
図1を参照すると、呼吸コンジット10が図示されている。呼吸コンジット10には呼吸回路があり、該呼吸回路には、気管内チューブや、鼻カニューレや、個人Iの気道Aと連絡するよう構成されたその他のコンジットがある。図示のように、呼吸コンジット10の1つの端12が気道Aと連絡した状態で配置され、呼吸コンジット10のもう一方の端14が、当該分野で既知の通り、大気や、個人Iにより吸入される気体源や、人工呼吸器に通じている。長さ方向に配置されて、呼吸コンジット10には少なくとも1つの気道アダプタ、この場合はニューモタコ20があり、ニューモタコ20は1つのタイプの圧力センサの構成要素である。更に図1に示されているのは、ニューモタコ20と連結され流量連絡した状態の携帯用圧力トランスデューサ50である。携帯用圧力トランスデューサ50は次に、当該分野で既知の通り、圧力または流量のモニタ100などのコンピュータと電気的に連絡する。
【0021】
ここで図2を参照すると、ニューモタコ20の様々な特徴が当該分野で既知の通りに、例えば、‘650特許に記載された作動流量センサに対応する特徴と同様に構成されている。とりわけ、ニューモタコ20には、一次コンジット22と2つの圧力ポート24と34があり、上記圧力ポートはアパーチャ23と33を通じて一次コンジット22と流量連絡した状態である。更に、ニューモタコ20には一次コンジット20(当審注:「一次コンジット20」は「一次コンジット22」の誤記と認める。)の経路に沿う呼吸の流量または他の気体や混合気体の一部を遮る障害物21があり、障害物21は、少なくとも部分的に圧力ポート24と圧力ポート34の間に配置され上記圧力ポートの気体流量に圧力差を生む。ニューモタコ20は、射出成形可能なプラスチックなどの廉価な容易に大量生産可能な材料で形成でき、そのためニューモタコ20は使い捨ての装置として販売できる。
【0022】
ニューモタコ20が‘650特許に記載のニューモタコと異なる点は、柔軟なコンジットすなわち圧力伝達管を延長する為に連結されるよう構成される代わりに、評価の為に呼吸サンプルを遠く離れて配置された圧力トランスデューサへと移すことであり、圧力ポート24と34は、相補的に構成された圧力トランスデューサ50(図4および図5)の対応するサンプルコンジット54と64(図4および図5)にそれぞれ直接連結されるよう構成される。
【0023】
一例として、各圧力ポート24と34には、その圧力ポート24と34の開口25と35を覆う密封要素30と40がある。本発明の範囲を限定するのではなく一例として、各密封要素30と40はラテックスやシリコーンなどの材料から形成された薄膜でもよく、上記密封要素は部材(例えば、針)により突き刺されかつ突き刺し部材の周りでおよそ150cmH2Oまでの圧力で密封を維持する。更に、各密封要素30と40の材料は該材料からの突き刺し部材の除去後の再密封を考案されていてもよい。
【0024】
密封要素30と40はニューモタコ20の各々の圧力ポート24と34内にフィルタ29と39を保持している場合もある。前述の突き刺し部材を有する相補的に構成された圧力または流量のトランスデューサ(例えば、図4および図5に示す携帯用圧力トランスデューサ50)がニューモタコ20に連結される際のフィルタの破壊(例えば、突き刺されたり、破かれたりなど)を避けられる程度に、フィルタ29と39は該フィルタ各々の圧力ポート24と34の内側に配置されていてよい。フィルタ29と39は、圧力または流量のトランスデューサのニューモタコ20との連結時の当該トランスデューサの汚染(例えば、微粒子や、水分や、微生物などによるもの)を阻止する。圧力または流量のトランスデューサの汚染を阻止することで、フィルタ29と39により、利用から次の利用までの間に当該トランスデューサの実質的な洗浄や滅菌を行う必要なく、圧力または流量のトランスデューサの再利用が容易になる。従って、ニューモタコ20に対し相補的な圧力または流量のトランスデューサは複数の患者に使用できる。フィルタ29と39は、圧力ポート24と34から相補的な圧力トランスデューサへの圧力波形の正確な伝達を容易にする任意の適切なフィルタ媒体を含みうる。フィルタ29と39に適切な媒体には、制限はなく、疎水性や抗菌性のフィルタ材料があり、例えば、当該分野で既知の通り、フェルトや微粒子の形状、または他の形状の一般に呼吸コンジットに利用される材料などである。圧力ポート24と34を通るサンプリングされた呼吸ガスの流量をフィルタ29と39が実質的に制限しないことが望ましい一方で、十分な差圧信号がニューモタコ20の圧力ポート24と34から相補的に構成された圧力または流量のトランスデューサへと連絡する限りは、気流への多少の抵抗が許容され得る。」

(1-ウ)
図1


(1-エ)
図2


(1-オ)
図1より、呼吸コンジット10の途中にニューモタコ20が設けられていることが見てとれる。
図2より、ニューモタコ20の圧力ポート24及び圧力ポート34は、一次コンジット22の中央部にある。
上記(1-ア)の「【0007】作動流量計の臨床での日常的な利用は、1995年1月10日にKofoed他に発行された米国特許5,379,650号(以下「‘650特許」)に開示されたようなより頑強な設計の開発に伴い、ここ数年の間に著しく増加している。」との記載と上記(1-イ)の「【0021】ここで図2を参照すると、ニューモタコ20の様々な特徴が当該分野で既知の通りに、例えば、‘650特許に記載された作動流量センサに対応する特徴と同様に構成されている。とりわけ、ニューモタコ20には一次コンジット20(当審注:「一次コンジット20」は「一次コンジット22」の誤記と認める。)の経路に沿う呼吸の流量または他の気体や混合気体の一部を遮る障害物21があり、障害物21は、少なくとも部分的に圧力ポート24と圧力ポート34の間に配置され上記圧力ポートの気体流量に圧力差を生む。」との記載から、米国特許5,379,650号明細書の記載(特にFig.7とFig.8、下記(4)参照)を参酌すると、図2のニューモタコ20は、一次コンジット22内部の中央部に柱状の障害物21が設けられているものと認められる。そして、当該障害物21には、一次コンジット22内部に露出する表面にアパーチャ23と33があり、一次コンジット22の表面には、アパーチャ23と33にそれぞれ連通する2つの開口が形成されていることが見てとれる。そして、圧力ポート24及び圧力ポート34それぞれが、一次コンジット22の表面の各開口から一次コンジット22に直交する方向に延びていること、並びに、圧力ポート24及び圧力ポート34が、一次コンジット22の中央部にその経路に沿う方向に並設されていることが見てとれる。
さらに、図1、2より、呼吸コンジット10の途中にニューモタコ20の一次コンジット22が設けられていることが見てとれる。
加えて、上記(1-イ)の「【0020】図1を参照すると、・・・呼吸コンジット10の1つの端12が気道Aと連絡した状態で配置され、呼吸コンジット10のもう一方の端14が、・・・人工呼吸器に通じている。」との記載を参酌すると、引用発明のニューモタコ20の一次コンジット22は、個人の気道Aと連絡する側の端部及び人工呼吸器に通じる側の端部が、それぞれ、呼吸コンジット10との接続部となっていることは明らかである。

(2)引用発明について
上記(1-ア)?(1-オ)の記載を踏まえれば、上記引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。
「a)1つの端12が個人の気道Aと連絡した状態で配置され、もう一方の端14が人工呼吸器に通じている呼吸コンジット10の途中にニューモタコ20が設けられている呼吸流量を測定する装置であって、
b)ニューモタコ20には、一次コンジット22と2つの圧力ポート24と34があり、
一次コンジット22内部の中央部に設けられている柱状の障害物21には、一次コンジット22内部に露出する表面にアパーチャ23と33があり、
一次コンジット22の表面には、アパーチャ23と33にそれぞれ連通する2つの開口が形成されており、
圧力ポート24及び圧力ポート34それぞれが、一次コンジット22の表面の各開口から一次コンジット22に直交する方向に延びており、それにより、各圧力ポート24と34はアパーチャ23と33を通じて一次コンジット22と流量連絡した状態であり、
圧力ポート24及び圧力ポート34が、一次コンジット22の中央部にその経路に沿う方向に並設されており、
一次コンジット22の、個人の気道Aと連絡する側の端部及び人工呼吸器に通じる側の端部は、それぞれ、呼吸コンジット10との接続部となっており、
更に、障害物21は、一次コンジット22の経路に沿う呼吸の流量または他の気体や混合気体の一部を遮るものであり、少なくとも部分的に圧力ポート24と圧力ポート34の間に配置され圧力ポートの気体流量に圧力差を生み、
ニューモタコ20は使い捨ての装置として販売できるもので、
c)各圧力ポート24と34には、その圧力ポート24と34の開口25と35を覆う密封要素30と40があり、
圧力ポート24と34内にフィルタ29と39を保持している装置であって、
圧力ポート24と34は、相補的に構成された圧力トランスデューサ50の対応するサンプルコンジット54と64にそれぞれ直接連結されるよう構成され、
突き刺し部材を有する相補的に構成された圧力トランスデューサ50がニューモタコ20に連結される際のフィルタの破壊(例えば、突き刺されたり、破かれたりなど)を避けられる程度に、フィルタ29と39は該フィルタ各々の圧力ポート24と34の内側に配置され、フィルタ29と39は、圧力トランスデューサ50のニューモタコ20との連結時の当該トランスデューサ50の汚染(例えば、微粒子や、水分や、微生物などによるもの)を阻止する、抗菌性のフィルタ材料であり、トランスデューサの実質的な滅菌を行う必要をなくし、
d)ニューモタコ20と連結され流量連絡した状態の圧力トランスデューサ50が、流量のモニタ100と電気的に連絡する、
e)呼吸流量を測定する装置。」(以下、「引用発明」という。)

(3)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2008-543447号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「テスト回路を備えた圧力検出装置」について図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア)
「【0001】
発明の分野
本発明は、睡眠診断期間中に呼吸気波および気流情報を測定し、従来の睡眠ポリグラフ装置に入力するために得られた呼吸気波および気流呼吸情報を処理する圧力検出装置に関する。使用を容易にするため、本圧力検出装置は、使用前に圧力検出装置の回路をテストすることができる内蔵テスト回路を備えている。」

(3-イ)
「【0012】
一般に、湿気あるいは他の粒子状物質が鼻カニューレ60の開口部のうちのいずれかから流れたり運ばれたりして圧力検出装置2に入るのを防ぐために、共通の柔軟な導管つまりチューブ80沿いのどこか、あるいは共通の柔軟な導管つまりチューブ80と圧力検出装置2との接続部分に、フィルタ84が設けられる。好ましくは、フィルタ84は、鼻カニューレ60の共通の柔軟な導管つまりチューブ80と圧力検出装置2の流入口6との接続を可能にする接続部材82と一体となっているか、もしくはフィルタ84は、共通の柔軟な導管つまりチューブ80の接続部材と圧力検出装置2の流入口6との連結を可能にする、別体の交換可能な部品63(図2Bおよび3B参照)である。すなわち、別体の交換可能なフィルタ部品63は、一端に圧力検出装置2の流入口6と接続するための雌型ルアコネクタ81を有し、他端に鼻カニューレ60の共通の柔軟な導管つまりチューブ80の雌型ルアコネクタ82と接続するための雄型ルアコネクタ90を有している。別体の交換可能なフィルタ部品63は繰り返し使用することが可能であり、つまり、別体の交換可能なフィルタ部品63は、内部のフィルタ84が十分に汚れた場合に交換されるだけである。」

(4)本願の優先権主張日前に頒布され、引用文献で引用された刊行物である米国特許5,379,650号明細書には、次の図面が記載されている。
(4-ア)


(4-イ)



3 対比・判断
(1)対比
補正発明は、以下のとおり当審にて、分説しA)?G)の見出しを付けた。
「A) 患者と換気装置又は呼吸器との間の空気通路内の呼吸流量又は呼吸気体の測定のためのシステムであって、当該システムは、
B) 第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ、
C) 前記第一の開口部から延びる、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
D) 前記第二の開口部から延びる、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ、
E) 前記第三の開口部及び前記第四の開口部から延びる、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタとの間の通路に沿って位置する複数の圧力感知管に接続するように構成された、第三のコネクタ及び第四のコネクタ、並びに、
F) 前記アダプタの前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれた、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ、
G) を有する、システム。」

補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「a)1つの端12が個人の気道Aと連絡した状態で配置され、もう一方の端14が人工呼吸器に通じている呼吸コンジット10の途中にニューモタコ20が設けられている呼吸流量を測定する装置」は、個人の気道Aからの呼吸の流量を測定する装置であるから、補正発明の「A) 患者と換気装置又は呼吸器との間の空気通路内の呼吸流量又は呼吸気体の測定のためのシステム」及び「G) システム。」に相当する。

イ 引用発明の「b)」「一次コンジット22」は、「一次コンジット22の中央部に設けられている柱状の障害物21」を含めて、ハウジングといえる。

また、引用発明の「b)ニューモタコ20」の「一次コンジット22の、個人の気道Aと連絡する側の端部及び人工呼吸器に通じる側の端部は、それぞれ、呼吸コンジット10との接続部となって」いるから、引用発明の「ニューモタコ20」の「一次コンジット22」の両端は開口部でもあるといえる。
したがって、引用発明の「ニューモタコ20」の「一次コンジット22」は「個人の気道Aと連絡する側の端部及び人工呼吸器に通じる側の端部」にそれぞれ開口部を備えているといえる。
そうすると、引用発明の「個人の気道Aと連絡する側の端部及び人工呼吸器に通じる側の端部」が「それぞれ備えている」といえる「開口部」は、それぞれ、補正発明の「第二の開口部」及び「第一の開口部」に相当する。

さらに、引用発明の「b)ニューモタコ20」の「圧力ポート24及び圧力ポート34それぞれ」に対応する「一次コンジット22の表面に」「形成されて」いる「2つの開口」は、それぞれ、補正発明の「第三の開口部」及び「第四の開口部」に相当する。

したがって、引用発明の「b)」「ニューモタコ20」と、
補正発明の「B) 第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ」とは、
「第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ」で一致する。

ウ さらに、引用発明の「b)」「一次コンジット22」の「人工呼吸器に通じる側の端部」及び「個人の気道Aと連絡する側の端部」の「接続部」と、
補正発明の「C) 前記第一の開口部から延びる、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
D) 前記第二の開口部から延びる、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ」とは、
「前記第一の開口部を、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
前記第二の開口部を、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ」で共通する。

エ 引用発明の「b) ニューモタコ20には、一次コンジット22と2つの圧力ポート24と34があり」、「圧力ポート24及び圧力ポート34が、一次コンジット22の中央部にその経路に沿う方向に並設されており」、「圧力ポート24及び圧力ポート34それぞれが、一次コンジット22の表面の各開口から一次コンジット22に直交する方向に延びており」、「各圧力ポート24と34はアパーチャ23と33を通じて一次コンジット22と流量連絡した状態であり」、「c)」「圧力ポート24と34は、相補的に構成された圧力トランスデューサ50の対応するサンプルコンジット54と64にそれぞれ直接連結されるよう構成され」ている「2つの圧力ポート24と34」は、上記イを踏まえれば、補正発明の「E) 前記第三の開口部及び前記第四の開口部から延びる、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタとの間の通路に沿って位置する複数の圧力感知管に接続するように構成された、第三のコネクタ及び第四のコネクタ」に相当する。

オ 引用発明の「c)」「当該トランスデューサ50の汚染(例えば、微粒子や、水分や、微生物などによるもの)」の微粒子や、水分や、微生物などは、「個人の気道A」からの物質であることは明らかであり、個人からの微生物が個人からの感染の原因となることは明らかであるから、補正発明の「患者由来の感染性物質」に相当する。
そうすると、引用発明の「c)」「圧力ポート24と34内に」「保持している」「圧力トランスデューサ50のニューモタコ20との連結時の当該トランスデューサ50の汚染(例えば、微粒子や、水分や、微生物などによるもの)を阻止する、抗菌性のフィルタ材料であり、トランスデューサの実質的な滅菌を行う必要をなく」す「フィルタ29と39」と、
補正発明の「F) 前記アダプタの前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれた、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」とは、
「前記アダプタに配置された、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」で共通する。

カ そうすると、両者は、

(一致点)
「患者と換気装置又は呼吸器との間の空気通路内の呼吸流量又は呼吸気体の測定のためのシステムであって、当該システムは、
第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ、
前記第一の開口部を、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
前記第二の開口部を、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ、
前記第三の開口部及び前記第四の開口部から延びる、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタとの間の通路に沿って位置する複数の圧力感知管に接続するように構成された、第三のコネクタ及び第四のコネクタ、並びに、
前記アダプタに配置された、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ、
を有する、システム。」

で一致し、以下の各点で相違する。

(相違点1)
ハウジングと「第一のコネクタ」及び「第二のコネクタ」について、補正発明は、ハウジングの「第一の開口部」及び「第二の開口部」から「第一のコネクタ」及び「第二のコネクタ」が、それぞれ延びているのに対して、引用発明は、「一次コンジット22」の両端部が、それぞれ開口部となり「個人の気道A」に通じている接続部及び「人工呼吸器」に通じている接続部となっている点。

(相違点2)
フィルタについて、補正発明は、「前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれ」ているのに対して、引用発明は、「圧力ポート24と34の内側に配置され」ている点。

(2)判断
ア 相違点1についての検討
呼吸流量を測定する装置において、相対する、第1の開口部と第二の開口部から「第一のコネクタ」及び「第二のコネクタ」がそれぞれ延びる構造は、周知(例えば特開昭53-16658号公報の特に図1、特開昭58-183143号公報の図1参照。)技術である。
そうすると、呼吸流量を測定する装置の形状として、引用発明のものを採用するか、上記周知技術を採用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計事項にすぎない。

イ 相違点2についての検討
フィルタをどこにどのように配置するかは、フィルタの種類や使い方等を考慮して適宜設定されるものであって、フィルタをフィルタハウジング内に置き、そのフィルタハウジングをハウジングに取り付けることにより、フィルタをハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれたフィルタとすることは周知技術である。
そうすると、引用発明のフィルタに上記周知技術を適用し、フィルタをフィルタハウジングに置き、そのフィルタハウジングを圧力ポート24と34に対応する柱状の障害物21にあるアパーチャ23と33に取り付け、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

ウ そして、補正発明の作用効果は、引用文献1の記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

エ したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?15に係る発明は、平成29年2月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「 【請求項1】
患者と換気装置又は呼吸器との間の空気通路内の呼吸流量又は呼吸気体の測定のためのシステムであって、当該システムは、
第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部及び第四の開口部を含むハウジングを有する、アダプタ、
前記第一の開口部から延びる、前記換気装置又は呼吸器に通じる第一のホースに接続するように構成された、第一のコネクタ、
前記第二の開口部から延びる、前記患者に通じる第二のホースに接続するように構成された、第二のコネクタ、
前記第三の開口部及び前記第四の開口部から延びる、前記第一のコネクタと前記第二のコネクタとの間の通路に沿って位置する複数の圧力感知管に接続するように構成された、第三のコネクタ及び第四のコネクタ、並びに、
前記アダプタの前記ハウジング内に一体化された、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ、
を有する、システム。」(以下、「本願発明」という。)

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、請求項1に対する拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張日前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、本願の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2004-532077号公報
引用文献3:特表2008-543447号公報

3 引用刊行物及びその記載事項
本願の優先権主張日前に頒布された引用文献1、3の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由] 2」に記載したとおりである。

4 当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は、補正発明の「前記ハウジング内に一体化されたフィルタハウジング内に置かれた、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」について、「前記ハウジング内に一体化された、患者由来の感染性物質が前記圧力感知管を汚染することを防止するように構成された、フィルタ」と、「フィルタ」が「フィルタハウジング内に置かれた」「フィルタ」であるとの限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2[理由] 3」において検討したとおりの(一致点)と(相違点1)を備え、さらに以下の(相違点3)を備えている。

(相違点3)
フィルタについて、本願発明は、「前記ハウジング内に一体化され」ているのに対して、引用発明は、「圧力ポート24と34の内側に配置され」ている点。

(2)判断
ア 相違点1についての検討
上記「第2[理由] 3 (2)判断 ア 相違点1についての検討」に記載のとおりである。

イ 相違点3についての検討
フィルタをどこにどのように配置するかは、フィルタの種類や使い方等を考慮して適宜設定されるものであって、フィルタを取り付ける対象と一体化する構成は引用文献3に記載されている。
そうすると、引用発明のフィルタに上記引用文献3に記載されたフィルタを取り付ける対象と一体化する構成を適用し、フィルタを圧力ポート24と34に対応する柱状の障害物21にあるアパーチャ23と33に取り付け、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

ウ そして、本願発明の作用効果は、引用文献1及び3の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

エ したがって、本願発明は、引用発明及び引用発明3に記載の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-29 
結審通知日 2018-12-04 
審決日 2018-12-19 
出願番号 特願2014-549595(P2014-549595)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 信田 昌男
渡戸 正義
発明の名称 一体化されたフィルタを有する呼吸測定装置  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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