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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1351338
審判番号 不服2017-14240  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-26 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2015-185185号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日出願公開、特開2017- 56098号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月18日の出願であって、平成28年11月24日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年1月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月19日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年5月24日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年6月29日付け(送達日:同年7月4日)で、同年5月24日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年9月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年6月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月8日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、当審において、同年11月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成31年1月16日に意見書及び手続補正書(以下、「本件補正」という。)が提出されたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成30年8月8日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Dについては発明を分説するため当審において付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 表示装置と、
B 遊技者によって直接操作されるものではなく、遊技者が関与せずに所定の動作を行うことが可能であり、当該所定の動作を行うことでその後遊技者に有利な状況となる蓋然性が高くなることを示す可動役物と、
C 前記表示装置に、筐体の全体画像を表示する演出態様を含む筐体表示演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 前記筐体表示演出は、筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示されるものであることを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 表示装置と、
B 遊技者によって直接操作されるものではなく、遊技者が関与せずに所定の動作を行うことが可能であり、当該所定の動作を行うことでその後遊技者に有利な状況となる蓋然性が高くなることを示す可動役物と、
C 前記表示装置に、筐体の全体画像を表示する演出態様を含む筐体表示演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 前記筐体表示演出は、筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示されるとともに、前記可動役物が前記所定の動作を行うことが遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされるものであることを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、
補正前の請求項1に記載された発明特定事項であるDの「筐体表示演出」について、
「D 筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示されるもの」から、
「D 筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示されるとともに、前記可動役物が前記所定の動作を行うことが遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされるもの」へと、「筐体の全体画像が表示された後」の「表示」内容を限定する補正を含むものである。
また、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0039】及び【図7】等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 引用文献1の記載
(ア) 当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-22295号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。

「【0014】
遊技盤110は、前面に、遊技球により遊技を行うための遊技領域111と、下方から発射された遊技球が上昇して遊技領域111の上部位置へ向かう通路を形成するレール部材112と、遊技領域111の右側に遊技球を案内する案内部材113とを備えている。
本実施の形態では、遊技者により視認され易い遊技領域111の位置に、演出のための各種の画像を表示する画像表示部114が配設されている。この画像表示部114は、液晶ディスプレイ等による表示画面を備え、遊技者によるゲームの進行に伴い、例えば、図柄抽選結果(図柄変動結果)を遊技者に報知するための装飾図柄を表示したり、キャラクタの登場やアイテムの出現による演出画像を表示したりする。
また、遊技盤110の前面に、各種の演出に用いられる可動役物115および盤ランプ116を備えている。可動役物115は、遊技盤110上で動作することにより各種の演出を行い、また、盤ランプ116は、発光することで各種の演出を行う。」

「【0027】
〔制御ユニットの構成〕
次に、パチンコ遊技機100での動作制御や信号処理を行う制御ユニットについて説明する。
図3は、制御ユニットの内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御ユニットは、メイン制御手段として、内部抽選および当選の判定等といった払い出す賞球数に関する各種制御を行う遊技制御部200を備えている。また、サブ制御手段として、演出を統括的に制御する演出制御部300と、画像および音響を用いた演出を制御する画像/音響制御部310と、各種のランプおよび可動役物115を用いた演出を制御するランプ制御部320と、払出球の払い出し制御を行う払出制御部400と、を備えている。」

「【0153】
〔デモンストレーション演出〕
次に、遊技のデモンストレーションのために行われる演出について説明する。
本実施の形態によるパチンコ遊技機100は、演出制御部300および画像/音響制御部310の制御により、画像表示部114に画像を表示させて演出を行う。また、演出制御部300およびランプ制御部320の制御により、可動役物115を動作させ、盤ランプ116や枠ランプ157を点灯させて演出を行う。さらに、これらの視覚的な演出に加え、演出制御部300および画像/音響制御部310の制御により、スピーカ156を介して楽曲、音声、効果音等を出力して音響による演出を行う。
【0154】
このような演出は、主に遊技の進行状況等に応じて、パチンコ遊技機100の遊技状態を報知あるいは示唆したり、遊技における興趣を高めたりするために行われる。一方、これとは別に、遊技の説明や紹介のための演出(以下、デモンストレーション演出と呼ぶ)を行うパチンコ遊技機100がある。このデモンストレーション演出は、遊技の進行とは別に、例えば上記の客待ち演出(図25参照)の一つとして行われる。
【0155】
本実施の形態のデモンストレーション演出としては、主に画像表示部114に表示する画像を用いて、遊技の進行に応じて行われる通常の演出を模した演出が行われる。具体的な態様として、画像表示部114に、遊技盤110の全体または一部を表す演出画像を表示し、この演出画像において上記の通常の演出を表す態様(第1演出態様)と、上記の通常の演出において表示される演出画像をそのまま画像表示部114に表示する態様(第2演出態様)とを考える。これらの演出態様について、さらに説明する。
【0156】
〔第1演出態様〕
図27は、第1演出態様における画像表示部114の表示画面を示す図である。
図27に示すように、第1演出態様では、画像表示部114の表示画面に遊技盤110の画像(以下、遊技盤画像と呼ぶ)を表示する。そして、画像表示部114に表示された遊技盤画像により、遊技中に行われる各種の演出を表示する。すなわち、通常遊技状態、確変遊技状態、時短遊技状態等の遊技状態に応じて行われる演出、入賞に伴う特別図柄の変動時に行われる演出、特別図柄の抽選結果に応じて行われる演出等を表現する画像が表示される。これらの演出は、主に、画像表示部114による画像表示、可動役物115の動作、盤ランプ116や枠ランプ157の点灯等を組み合わせて行われる。したがって、第1演出態様においては、画像表示部114に表示された遊技盤画像において、これらの演出が表現される。
【0157】
なお、図示の例では、遊技盤画像として、遊技盤110の全体が表示されているが、デモンストレーション演出において特に強調したい部分を拡大して表示しても良い。また、第1演出態様においては、可動役物115の動作や盤ランプ116の点灯等も画像表示部114に表示される演出画像により表現されるのであるが、この演出画像の表示に合わせて、遊技盤110に設けられた実際の可動役物115や盤ランプ116等を作動させても良い。」

(イ) 上記記載事項を総合すれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(a?dについては本件補正発明のA?Dに対応させて付与した。)。

「a 画像表示部114と(【0014】)、
b 遊技盤110の前面に備えられ(【0014】)、遊技状態を報知あるいは示唆したり、遊技における興趣を高めたりするために行われる演出において演出制御部300が動作させる可動役物115と(【0153】、【0154】)、
c デモンストレーション演出として、画像表示部114に、遊技盤110の全体または一部を表す演出画像を表示する演出を行い(【0155】)、この演出画像において可動役物115を動作する演出を行う演出制御部300と(【0153】、【0155】、【0157】)、
を備え、
d デモンストレーション演出において特に強調したい部分を拡大して表示しても良く、可動役物115の動作を画像表示部114に表示される演出画像により表現する(【0157】)パチンコ遊技機100(【0153】)。」

イ 引用文献2の記載
(ア) 当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-112322号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。

「【0071】
D.演出制御処理 :
本実施例の遊技機1では、上述したような主制御基板200のCPU201による処理に連動して、サブ制御基板220のCPU221が演出制御処理を行うことによって、各種ランプ類12、各種スピーカー14,114、演出表示装置10、回胴バックライト20L等を用いた各種の演出が実行される。各種の演出の実行は次のような構成によって実現される。」

「【0082】
続いて、操作対象フラグの設定状況に基づいて、今回のフリーズ期間における操作対象が演出系操作部であるか否かを判断する(S320)。その結果、今回のフリーズ期間における操作対象が演出系操作部でなければ、すなわち、「進行系操作部」または「進行系操作部および演出系操作部の両方」である場合は(S320:no)、スタートレバー36の操作を遊技者に促す操作催促演出(スタートレバー操作催促演出)を実行する(S322)。例えば、演出表示装置10の表示画面に遊技機1の全体像を表示した後、スタートレバー36をズームアップして表示する。これに対して、今回のフリーズ期間における操作対象が「演出系操作部」である場合は(S320:yes)、演出ボタン41の操作を遊技者に促す操作催促演出(演出ボタン操作催促演出)を実行する(S324)。例えば、演出表示装置10の表示画面の表示画面に遊技機1の全体像を表示した後、演出ボタン41をズームアップして表示する。」

(イ) 上記記載事項から、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる(c、dは本件補正発明のC、Dに対応させて付与した。)。

「c、d 演出表示装置10の表示画面に遊技機1の全体像を表示した後、スタートレバー36をズームアップして表示する遊技機1。」

ウ 引用文献3の記載
(ア) 新たに引用する本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-131409号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。

「【0017】
以下、本発明の一実施の形態であるパチンコ機1について、図面を参照して説明する。まず、パチンコ機1の機械的構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、パチンコ機1の正面図であり、図2は、遊技盤2の正面図である。

【0019】
また、図2に示すように、遊技盤2の前面にはガイドレール3で囲まれた略円形の遊技領域4が設けられている。この遊技領域4の略中央には、LCDにより構成された表示画面38、キャラクタ21を動作させることで第四普通当たり判定の結果を示す役物演出を行う役物装置20、各種ランプ、LED等を備えた図柄表示装置8が配設されている。そして、図柄表示装置8の下方には第一始動ゲート11が、その右斜め下方には第四始動ゲート12が設けられている。また、第四始動ゲート12の下方には第三普通電動役物18が、その右斜め上方には第二普通電動役物17が、さらにその右斜め上方には第一普通電動役物16が設けられており、第一普通電動役物16の上方には第四普通電動役物19が配設されている。また、第三普通電動役物18の左方には、4つの普通入賞口14が設けられている。」

「【0024】
次に、役物装置20について説明する。図2に示すように、図柄表示装置8の右側には役物装置20が上下方向に亘って配設されており、この役物装置20は、主にキャラクタ21と、当選表示ランプ25とにより構成されている。キャラクタ21は上下方向に移動可能に配設されており、移動範囲の上端である当選位置、及び移動範囲の下端である落選位置のいずれかにモータ31(図3参照)によって移動することで、第四普通当たり判定の結果が「当たり」であるか否かを遊技者に報知する。また、キャラクタ21には、手足をかたどる可動部28が可動可能に支持されており、当選位置又は落選位置へ至るまでのキャラクタ21及び可動部28の動作を様々に変化させることができる。さらに、当たり遊技中には通常とは異なる動作をキャラクタ21に行わせることができる。従って、当たり遊技中には、第一普通当たり判定の結果や当たり遊技の進行状況等を表示画面38で表示させつつ、第四普通当たり判定の結果を役物装置20によって遊技者に報知することができ、さらに役物装置20の動作によって遊技者を楽しませることができる。」

「【0120】
すると、図15乃至図17に示すように、動作説明表示領域75には動作説明画像が順に表示される。まず、図15に示すように、第四始動ゲート12への遊技球の通過を契機として役物装置20が動作することを示す動作開始契機説明画像が表示される。これにより、遊技者は、遊技球が第四始動ゲート12を通過することを期待しながら当たり遊技を楽しむことができる。次いで、図16に示すように、当選位置説明画像が表示される。この当選位置説明画像は、キャラクタ21(コイン君)が当選位置である最上部へ移動することで、第四普通当たりが表示されることを示す画像である。次いで、図17に示すように、当選表示ランプ説明画像が表示される。この当選表示ランプ説明画像は、当選表示ランプ25が点灯することで第四普通当たりが表示されることを示す画像である。これにより、遊技内容を熟知していない遊技者であっても、役物装置20がどのような動作をすると当たり遊技が連続して行われるのかを容易に理解することができる。」

「【0131】
本実施の形態では、役物装置20の動作を当たり遊技中であるか否かに応じて変化させることで、第一普通当たり判定の結果や当たり遊技中の演出を表示画面38に表示しつつ、第四普通当たり判定の結果を多様な役物演出で遊技者に通知することができる。そして、この役物演出の内容、すなわち、当たり遊技中に第四普通当たりと判定された場合には、キャラクタ21が当選位置である最上部に到達し、当選表示ランプ25が点灯する旨を動作説明表示領域75に表示させることができる。従って、遊技者は、役物装置20がどのような動作を行うことで当たり遊技が連続するのかを、動作説明画像によって容易に把握することができる。さらに、第一普通電動役物16へ遊技球が入賞せずに当たり遊技が終了する場合には、無駄な説明画像の表示が行われることがないため、遊技者を混乱又は落胆させることを防ぐことができる。また、動作説明画像の表示前には祝福画像や右打ち通知画像等、他の様々な画像を表示することができるため、表示画面38を用いて遊技者を楽しませつつ、遊技内容を遊技者に把握させることができる。」

「【図2】



「【図16】



「【図17】



(イ) 引用文献3の【図16】には、【0120】に記載されるように当選位置説明画像が図示されており、動作説明表示領域75には、パチンコ機1の役物装置20(【図2】において、表示画面38の右側に配置された装置)の部分が表示されるとともに、「コイン君が頂上まで登って!」との文字が表示されることが図示されていると認められる。
また、【図17】には、【0120】に記載されるように当選表示ランプ説明画像が図示されており、動作説明表示領域75には、前記役物装置20の部分が表示され、コイン君が当選位置である最上部に表示されるとともに、「大当りだー!!」との文字を表示されることが図示されていると認められる。

(ウ) 上記(ア)の記載事項及び(イ)の認定事項を総合すれば、引用文献3には以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる(dは本件補正発明のDに対応させて付与した。)。

「d 当たり遊技中に第四普通当たりと判定された場合には、キャラクタ21が当選位置である最上部に到達し、当選表示ランプ25が点灯する旨を動作説明表示領域75に表示させ、役物装置20がどのような動作を行うことで当たり遊技が連続するのかを、動作説明画像によって遊技者が容易に把握することができる(【0131】)ようにしたパチンコ機1(【0017】)であって、当選位置説明画像における動作説明表示領域75には、パチンコ機1の役物装置20の部分が表示されるとともに、「コイン君が頂上まで登って!」との文字が表示され、当選表示ランプ説明画像における動作説明表示領域75には、前記役物装置20の部分が表示され、コイン君が当選位置である最上部に表示されるとともに、「大当りだー!!」との文字が表示される((イ)の認定事項)パチンコ機1。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。なお、見出し(a)?(d)は、本件補正発明のA?Dに対応させている。

(a)引用発明1の「画像表示部114」は、本件補正発明の「表示装置」に相当する。

(b)引用発明1の「遊技状態を報知あるいは示唆したり、遊技における興趣を高めたりするために行われる演出において演出制御部300が動作させる可動役物115」は、「演出制御部300が動作させる」ものであるから、本件補正発明の「遊技者によって直接操作されるものではなく、遊技者が関与せずに所定の動作を行うことが可能であ」る「可動役物」に相当する。
また、可動役物を用いた演出において、演出が行われた場合に大当たりの蓋然性が高くなるようにすることは技術常識であるから(例えば、当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-22514号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「【0060】…予告抽選値が240?255の場合は「可動役物予告」が選択される。…予告演出が画面に表示されれば大当たりの蓋然性は比較的高く、大当たりが発生することを示唆することができる。したがって、予告演出が表示されると、遊技者は大当たりに対する期待を抱くこととなる。」等の記載がある。)、引用発明1の「遊技状態を報知あるいは示唆したり、遊技における興趣を高めたりするために行われる演出において演出制御部300が動作させる可動役物115」は、本件補正発明の「当該所定の動作を行うことでその後遊技者に有利な状況となる蓋然性が高くなることを示す可動役物」に相当する。

(c) (a)に記載のとおり、引用発明1の「画像表示部114」は、本件補正発明の「表示装置」に相当する。
また、本件補正発明の構成Dに記載されるように「ズームアップ」により「可動役物の画像」が「表示される」ことから、構成Cの「筐体の全体画像」が「可動役物を含む画像」であることは自明であるから、引用発明1の「遊技盤110の全体または一部を表す演出画像を表示する演出」であって「可動役物115を動作する演出」である「デモンストレーション演出」「を行う」ことと、本件補正発明の「筐体の全体画像を表示する演出態様を含む筐体表示演出を実行する」ことは、「可動役物を含む画像を表示する演出態様を含む表示演出を実行する」点で共通する。
また、引用発明1の「演出制御部300」は、本件補正発明の「演出実行手段」に相当する。
したがって、引用発明1の「デモンストレーション演出として、画像表示部114に、遊技盤110の全体または一部を表す演出画像を表示する演出を行い、この演出画像において可動役物115を動作する演出を表す演出制御部300」と、本件補正発明の「前記表示装置に、筐体の全体画像を表示する演出態様を含む筐体表示演出を実行する演出実行手段」とは、「前記表示装置に、可動役物を含む画像を表示する演出態様を含む表示演出を実行する演出実行手段」の点で共通する。

(d) 引用発明1の「デモンストレーション演出」と本件補正発明の「前記筐体表示演出」とは、「表示演出」の点で共通する。
また、引用発明1の「特に強調したい部分を拡大して表示」することと、本件補正発明の「筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示される」こととは、「所定の部分の画像が拡大されて表示される」点で共通する。
また、引用発明1の「パチンコ遊技機100」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明1の「デモンストレーション演出において特に強調したい部分を拡大して表示しても良く、可動役物115の動作を画像表示部114に表示される演出画像により表現するパチンコ遊技機100」と、本件補正発明の「前記筐体表示演出は、筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示されるとともに、前記可動役物が前記所定の動作を行うことが遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされるものであることを特徴とする遊技機」は、「前記表示演出において、所定の部位の画像が拡大されて表示されるものである遊技機」の点で共通する。

そうすると、両者は、
「A 表示装置と、
B 遊技者によって直接操作されるものではなく、遊技者が関与せずに所定の動作を行うことが可能であり、当該所定の動作を行うことでその後遊技者に有利な状況となる蓋然性が高くなることを示す可動役物と、
C 前記表示装置に、可動役物を含む画像を表示する演出態様を含む表示演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 前記表示演出は、所定の部位の画像が拡大されて表示されるものである遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。

相違点1(構成C、D):
「前記表示装置に」おいて「演出実行手段」が実行する「演出」について、本件補正発明では、「筐体の全体画像を表示する演出態様を含む筐体表示演出」であり、「筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示される」との特定があるのに対して、引用発明1では、そのような特定はない点。

相違点2(構成D):
「前記表示装置に」おいて「演出実行手段」が実行する「演出」について、本件補正発明では、「前記可動役物が前記所定の動作を行うことが遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされるものである」との特定があるのに対して、引用発明1では、そのような特定はない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

(相違点1について)
引用発明2の「演出表示装置10」及び「遊技機1の全体像」は、本件補正発明の「表示装置」及び「筐体の全体画像」に相当する。また、引用発明2の「演出表示装置10の表示画面に遊技機1の全体像を表示した後、スタートレバー36をズームアップして表示する」ことと、本件補正発明の「筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示される」こととは、「筐体の全体画像が表示された後、所定の部位の画像がズームアップされて表示される」点で共通する。
ところで、本願出願前に、遊技機での遊び方を説明する際の画像において、操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示することは周知である(以下、「周知技術」という。例えば、当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-255031号公報(以下、「引用文献5」という。)の【0020】の「画像データは、遊技機において本来表示したい箇所(例えば操作部など)を徐々に拡大表示(ズームイン)するデータであることが好ましい。このようにすれば、拡大表示される前の状態で、表示したい箇所の大まかな位置を把握することができる。しかも、拡大表示により、表示したい箇所の位置、色、形状を詳細に把握することができる。」との記載、同文献の【0095】の「例えば、図柄表示装置18に遊技盤13の右上部が表示されるようになっていてもよい。このようにした場合、図柄表示装置18の報知により、遊技者に対して右打ち(遊技盤13の右上部を狙って遊技球を発射すること)を促すことができる。また、図柄表示装置18に操作ハンドル20の位置を表示させ、操作ハンドル20を目一杯回転させた画像を示した場合であっても、図柄表示装置18の報知により、遊技者に対して右打ちを促すことができる。」との記載、当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-122344号公報(以下、「引用文献6」という。)の【0023】の「動画像70はパチンコ台を実写した動画像であり、遊び方や攻略法の説明のためにパチンコ台細部のズームアップ等が行われ」との記載を参照。)。そして、このような技術により、遊技者が上記「遊技機の一部」の位置を把握できるとの効果を奏することが自明である。
引用発明1において、「デモンストレーション演出」の「演出画像」に表示する「可動役物115」を「特に強調したい部分」として「拡大して表示」することは、当業者が適宜なし得た選択事項であるが、該「可動役物115」の位置を遊技者に把握させるため、上記周知技術にならい「可動役物115」をズームアップして表示することとし、その際、引用発明2に基づき、「パチンコ遊技機100」の「全体像を表示した後」、「可動役物115」を「ズームアップして表示する」ことは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、引用発明1は「可動役物115の動作を」「表現する」ものであるから、「ズームアップ」する画像を「可動役物115」が動作した後の画像とすることは、当業者が当然になし得たことである。
よって、引用発明1において、引用発明2及び周知技術に基づき上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2について)
引用発明3の「キャラクタ21が当選位置である最上部に到達」することは、本件補正発明の「前記可動役物が前記所定の動作を行うこと」に相当する。そして、引用発明3の「「コイン君が頂上まで登って!」との文字が表示され」ることや「「大当りだー!!」との文字が表示される」ことは、本件補正発明において、「遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされる」ことに相当する。
そして、引用発明1と引用発明3とは、可動役物を用いる点で共通しており、引用発明1において、「可動役物115」を「特に強調したい部分」として「拡大して表示」するにあたり、引用発明3を適用し、「可動役物115」がどのような動作を行うことで当たり遊技となるかを遊技者が容易に把握できるようにするため、「可動役物115」の動作に加え、「大当りだー!!」等の文字をあわせて表示するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、引用発明1において、引用発明3に基づき上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(効果について)
本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(まとめ)
したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用発明2、引用発明3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(請求人の主張について)
ア 請求人は、平成31年1月16日の意見書において、
「本願発明の筐体表示演出は、「筐体の全体画像が表示された後、前記所定の動作を行った後の前記可動役物の画像がズームアップされて表示される」(以下、表示Aとする)とともに、「前記可動役物が前記所定の動作を行うことが遊技者にとって好ましい状況であることを認識させるような表示がなされる」(以下、表示Bとする)ことを特定する。つまり、表示Aにより可動役物の動作態様が遊技者に示されるだけでなく、表示Bにより表示Aにより示された可動役物の動作が遊技者にとって好ましい状況であることを遊技者に認識させることを特定する。
今般提示された引用文献1?5のいずれにも、上記表示Bがなされることは開示されていない。確かに、引用文献2には、可動役物が動作したときには大当たりの蓋然性が高くなる構成が開示されているとは認められるが、大当たりの蓋然性が高くなることを実際に表示するといったことが開示されているとは認められない。
したがって、引用文献1?5に記載される事項を自在に組み合わせることが容易であると仮定しても、それによって得られるものが本願発明の発明特定事項の全てを充足するものとはならない。」
との主張をする。
しかしながら、「(相違点2について)」で検討したように、上記表示Bは、引用発明3に基づき当業者が容易に想到し得るものであるから、請求人の主張は採用できない。

イ 請求人は、同意見書において、
「ここで、引用文献5に記載されるのは、「遊技機」ではなく、「遊技ガイドシステム」にかかる発明であると認められるところ、周知技術の認定に際し、当該「遊技ガイドシステム」が「遊技機」と同じ技術分野に属するものと認められるかどうかが問題となる。
「遊技ガイドシステム」は、文字通り、遊技機の遊び方を説明するためのものであり、「遊技機」そのものではない。つまり、「遊技ガイドシステム」に接している人は、「遊技機」そのもの(実物)に接しているとは限られないのであるから、遊び方を説明するに際し、対象の遊技機を表した画像を表示することは至極当然なこと(「遊技機」そのものに接していない人に対し、対象の遊技機を画像として示した上で説明することは当然に想定されること)といえる。
すなわち、ある「遊技機」において当該遊技機自体の画像を表示すること(実物に接している人に対して敢えて当該実物を示す画像を示すこと)と、「遊技ガイドシステム」において説明対象の遊技機の画像を表示することは、技術を着想するに至る前提が全く異なるものであるから、当該画像の表示に関し「遊技ガイドシステム」として記載される技術が本願発明と同じ技術分野に属すると認定するのは妥当性を欠くものであるというべきである。
このように、引用文献5は、本願発明(遊技機)の技術分野における周知技術を示すものとしての適格性を有しているものとはいえない。よって、引用文献4および引用文献5に基づく周知技術の認定を前提とした進歩性否定の論理構成は成立しない。」
との主張をするので、以下、検討する。
引用文献5(本審決においては引用文献6)に記載されるような「遊技ガイドシステム」は、「遊技機」そのものであるとはいえないないものの、「遊技機」に特化した「ガイドシステム」である以上、「遊技機」に関する技術分野に属するといえる。請求人が主張するとおり、「遊技機自体の画像を表示する」(または「説明対象の遊技機の画像を表示する」)という技術を着想するに至る前提が同じか否か、という特定の観点からみた場合に、「遊技ガイドシステム」と「遊技機」とで異なるところがあるとしても、そのことが、両者が「遊技機」に関する技術分野に属するものであるということを否定する根拠になると言うことはできない。したがって、「遊技ガイドシステム」も「遊技機」も、「遊技機」に関する技術分野に属するものであり、「遊技機での遊び方を説明する際の画像において、操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示すること」との技術をこのような技術分野における周知技術として認定することに誤りがあると言うことはできない。
よって、請求人の主張は採用できない。

ウ 請求人は、同意見書において、
「審査において、『本願出願前に、遊技機での遊び方を説明する際の画像において、操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示することは周知である』(下線部は出願人が付した)とし、引用文献4、5の参照箇所を示している。
上記の通り、『操作部に拘わらず』としているが、引用文献4に「操作部」以外の箇所がズームアップされるといったことが具体的に開示されているわけではない。
引用文献4の段落0020には「例えば操作部など」「例えば、表示したい箇所が上球皿の上面にある操作部である場合」と記載されており、ズームインされる箇所として操作部を強調していることが認められる。「例えば」という文言に基づき、操作部以外の他の部分がズームインされることも「示唆」されているとして今般のような判断がなされたのかもしれないが、操作部以外の具体的箇所が明記されているわけではないため、『操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示すること』が「周知である」とする根拠とはなり得ないものであるといえる(このような判断がなされるのであれば、具体的な事項を開示しない刊行物等ほど、いわゆる後願排除効が高いこととなり不合理である)。
また、引用文献4の段落0095に記載される点は、いわゆる右打ち操作を遊技者に促すための表示であって、まさに「操作」そのものである。
つまり、引用文献4は、『操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示すること』が周知であるとする根拠とはなり得ないものである。よって、引用文献4および引用文献5に基づく周知技術の認定を前提とした進歩性否定の論理構成は成立しない。」
との主張をするので、以下、検討する。
引用文献4(本審決においては引用文献5)の【0095】には、「例えば、図柄表示装置18に遊技盤13の右上部が表示されるようになっていてもよい。このようにした場合、図柄表示装置18の報知により、遊技者に対して右打ち(遊技盤13の右上部を狙って遊技球を発射すること)を促すことができる。」と記載されているから、「ズームインされる箇所」として「遊技盤13の右上部」が例示されているといえ、これは「操作部」ではないし、「狙」う箇所なのだから「「操作」そのもの」でもない。したがって、引用文献4には、「操作部」以外の箇所がズームアップされることが具体的に開示されていると言える。また、引用文献5(本審決においては引用文献6)において、「ズームアップ」する箇所として「操作部」との特定はない。以上のことから、引用文献4、5を例示しつつ、「操作部に拘わらず遊技機の一部をズームアップして表示すること」との周知技術を認定することに誤りがあるとは言えない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年8月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 当審による拒絶の理由
当審による平成30年11月15日付けの最後の拒絶の理由は、以下のとおりである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

特開2013-22295号公報(引用文献1)
特開2010-22514号公報(引用文献4)
特開2015-112322号公報(引用文献2)
特開2006-255031号公報(引用文献5)
特開平9-122344号公報(引用文献6)

3 引用文献
当審による最後の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2での検討から明らかなとおり、本件補正発明の構成Dの「筐体表示演出」について、「筐体の全体画像が表示された後」の「表示」内容を限定する記載の一部を省いたものであり、その他の構成A?Cに関しては共通する。そうすると、前記第2[理由]2(3)で検討したのと同様に、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は前記相違点1のみで相違する。そして、前記第2[理由]2(4)の「(相違点1について)」に記載したとおり、引用発明1において、引用発明2及び周知技術に基づき、前記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-27 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-18 
出願番号 特願2015-185185(P2015-185185)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤澤 和浩大浜 康夫目黒 光司  
特許庁審判長 安久 司郎
特許庁審判官 荒井 誠
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  
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