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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1351340
審判番号 不服2017-15780  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-25 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2012-110118号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日出願公開、特開2013-236686号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月11日の出願であって、平成28年3月22日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年5月30日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年11月29日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成29年2月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月18日付け(発送日:同年7月25日)で、同年2月6日になされた手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年9月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願請求項1に係る発明
平成30年11月30日付け手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。A?Jは分説のため当審にて付与した。)。

「A 第1始動条件が成立したことに基づいて、第1識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第1可変表示手段に第1表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第1状態に制御し、第2始動条件が成立したことに基づいて、第2識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第2可変表示手段に第2表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第2状態に制御する遊技機であって、
B 前記第1状態に制御するか否かを決定する第1決定手段と、
C 前記第2状態に制御するか否かを決定する第2決定手段と、
D 前記第1決定手段による決定結果に基づいて、前記第1識別情報の可変表示時間を特定可能な第1可変表示パターンを選択し、前記第2決定手段による決定結果に基づいて、前記第2識別情報の可変表示時間を特定可能な第2可変表示パターンを選択する可変表示パターン選択手段と、
E 前記第2識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第1可変表示パターンに基づいて前記第1識別情報の可変表示を実行し、前記第1識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第2可変表示パターンに基づいて前記第2識別情報の可変表示を実行する可変表示実行手段と、
F 少なくとも前記第1状態が終了した後に、通常状態と、前記通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とに制御可能な状態制御手段と、
を備え、
G 前記可変表示パターン選択手段は、前記第1決定手段によって前記第1識別情報の可変表示の表示結果が前記第1表示結果ではない表示結果に決定された場合、前記状態制御手段によって前記特別状態に制御されていることを条件に、前記第1識別情報の可変表示時間が所定時間以上となる複数の特別可変表示パターンのうちいずれかを選択する特別可変表示パターン選択手段を含み、
H 前記複数の特別可変表示パターンは、前記状態制御手段によって前記通常状態に制御されている場合には選択されず、
I 前記可変表示実行手段によって実行される前記複数の特別可変表示パターンの各々に対応する可変表示では、当該可変表示以外のときとは異なる背景画像を表示する演出が実行される、
J ことを特徴とする遊技機。」

第3 拒絶の理由
当審の平成30年9月28日付け拒絶の理由の概要は、本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2009-39239号公報
引用文献2:特開2009-125300号公報
引用文献3:特開2009-125429号公報

第4 引用文献に記載された事項
1 当審の平成30年9月28日付け拒絶の理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2009-39239号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(1) 「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2つの変動表示ゲームを並行して行うものにおいては、2つの変動表示ゲームの両方について、当たるか否かを遊技者が注視することになるが、単純に抽選確率等の各種条件が同じ2つの変動表示ゲームが並行して行われるだけでは、慣れてしまえば、各変動表示ゲームをそれぞれ単独で見た場合と遊技性がそれほど変化しておらず、遊技者が飽きてしまう可能性がある。
そこで、例えば、2つの変動表示ゲームがそれぞれ当たりとなった場合に、遊技者が獲得可能な遊技球の数に差を付けることが考えられる。
【0007】
ここで、変動表示ゲームを行うパチンコ遊技機においては、変動表示ゲームが当たりとなった後に再び変動表示ゲームを開始する際に、所定の図柄で変動表示ゲームが当たりとなった場合などに、変動表示ゲームの当たり確率を高くした所謂確変状態を発生させるようになっており、遊技者は、確変状態が発生して当り確率が高くなることで、比較的に短期間の間に再び当りを発生させられる状態となる。
この確変状態で、2つの変動表示ゲームのうちの当たりとなった場合に獲得可能な遊技球の数が少ない変動表示ゲームが当たり、獲得できた遊技球の数が少なく、かつ、その後確変状態とならなかった場合に、遊技者は期待を裏切られて落胆し、その遊技機での遊技を敬遠してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、2つの変動表示ゲームでそれぞれ当りとなった場合に獲得可能な遊技球数に差を設けても、確変などの遊技者に有利な状態では、当たりとなった場合の獲得可能な遊技球数が多い変動表示ゲームで当たりを発生させることが可能な遊技機、プログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。」

(2) 「【0009】
請求項1に記載の発明は、遊技球が発射される遊技盤と、
前記遊技盤上に設けられた第1始動入賞口および第2始動入賞口と、
第1始動入賞口に遊技球が入賞したことに基いて当たりおよびはずれを決める第1抽選を実行する第1抽選手段と、
第2始動入賞口に遊技球が入賞したことに基いて当たりおよびはずれを決める第2抽選を実行する第2抽選手段と、
第1抽選手段による第1抽選の実行に基いて計時開始される第1報知時間が終了する際に第1抽選の結果を報知し、当該結果を報知した際に次の第1抽選の実行に基く第1報知時間の計時を開始可能とする第1報知手段と、
第2抽選手段による第2抽選の実行に基いて計時開始される第2報知時間が終了する際に第2抽選の結果を報知し、当該結果を報知した際に次の第2抽選の実行に基く第1報知時間の計時を開始可能とする第2報知手段と、
第1報知手段で当たりとなる第1抽選の結果を報知した際に遊技者に通常の状態より多くの遊技球を獲得可能とする所定期間の第1有利状態を発生させ、第2報知手段で当たりとなる第2抽選の結果を報知した際に第1有利状態より多くの遊技球を獲得可能とする所定期間の第2有利状態を発生させる有利状態制御手段と、
前記第1報知時間および第2報知時間を決定する報知時間決定手段と、
所定の開始条件が成立している場合に、前記有利状態の終了時に通常の状態よりも単位時間内に前記第1抽選および第2抽選の結果が当たりとなる確率を高くした高確率状態を発生させ、前記有利状態の発生を含む所定の終了条件が成立した際に当該高確率状態を終了させる高確率状態制御手段と、
同時に第1報知手段および第2報知手段双方における報知時間の計時を許可し、かつ、第1報知時間および第2報知時間のうちの一方の報知時間の終了時に当たりとなる抽選結果が報知された際に他方の報知時間の計時を強制終了させる報知制御手段とを備えた遊技機において、
前記報知時間決定手段は、前記有利状態が終了するとともに前記高確率状態が発生して最初に計時開始される第1報知時間を、第2報知時間に第2抽選の前記高確率状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上とすることを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明においては、第1始動入賞口に遊技球が入賞して第1抽選が行われて当たりとなっても獲得可能な遊技球数が少なく、第2始動入賞口に遊技球が入賞して第2抽選で当たりとなると獲得可能な遊技球数が多くなる。
【0011】
したがって、遊技者は、第2抽選で当りとなることを望んでいる。
ここで、第1抽選および第2抽選で当りとなる確率が高い高確率状態となると、第1抽選の結果を報知するまでの時間である第1報知時間が、第2報知時間に第2抽選の前記高確率状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上とすることになる。
この場合に、第1報知時間は、遊技を連続して続けた場合の第2抽選で一回の当りが発生する平均時間より長い時間となり、第1報知時間が終了する前に第2抽選で当りが発生する確率が高くなる。
【0012】
一方、第1抽選では、第1報知時間が終了するまで、たとえ、当りとなっていても結果が報知されず、第1抽選に基く第1有利状態が発生することはない。
したがって、高確率状態となると、第2抽選で当りとなって、第1有利状態より獲得可能な遊技球数が多い第2有利状態が発生する可能性が高くなる。」

(3) 「【0024】
以下、図面を参照して、遊技機設置営業店等の場所に設置され、遊技媒体(例えば、遊技球やメダル等)の供給に基づいて遊技者に遊技を行わせる遊技機(例えば、弾球遊技機としてのパチンコ遊技機)の構成及び動作について説明する。」

(4) 「【0031】
また、可変表示装置3で行われる装飾図柄による第1特図ゲームが第1特図表示器4aで行われる特別図柄の第1特図ゲームに対応し、可変表示装置3で行われる装飾図柄による第2特図ゲームが第2特図表示器4bで行われる特別図柄の第2特図ゲームに対応する。
すなわち、第1特図ゲームは、可変表示装置3の装飾図柄の第1変動表示ゲームとして表示されるとともに第1特図表示器4aの特別図柄の第1変動表示ゲームとして表示され、それぞれの第1変動表示ゲームは、後述の主制御装置231で行われる1つの第1抽選の結果をそれぞれ報知する同じ結果となるゲームである。
【0032】
また、第2特図ゲームは、可変表示装置3の装飾図柄の第2変動表示ゲームとして表示されるとともに第2特図表示器4bの特別図柄の第2変動表示ゲームとして表示され、それぞれの第2変動表示ゲームは、後述の主制御装置231で行われる1つの第2抽選の結果をそれぞれ報知する同じ結果となるゲームである。
すなわち、第1特図ゲーム(第1抽選)および第2特図ゲーム(第2抽選)として主制御装置231で行われる当りおよびはずれの抽選の結果を報知する変動表示ゲームが遊技者を楽しませるための装飾図柄のゲームと、結果を報知するだけの特図のゲームとに分けて表示されている。

【0034】
可変表示装置3の直下には、第1始動入賞口51が設けられている。この第1始動入賞口51は、当りおよびはずれを決定する抽選を行う第1抽選手段として機能する主制御装置231に、遊技球が入賞することに基づいて第1特図ゲームの当りおよびはずれを決める第1抽選開始の契機(変動表示ゲーム開始の契機)を付与するものである。
また、第1始動入賞口51には、当該第1始動入賞口51への遊技球の入賞を検知する第1始動入賞球検知センサ52が備えられている。

【0036】
すなわち、普通変動入賞装置53は、遊技球が入賞てきない閉じた閉塞状態と、一対の可動片54,54に遊技球が案内されることで、上述の電チューを備えない第1始動入賞口51より遊技球が入賞し易い開いた開閉状態との間で変動するようになっている。
また、第2始動入賞口55は、後述のように第2特図ゲームの当りおよびはずれを決定する抽選を行う第2抽選手段として機能する主制御装置231に、遊技球が入賞することに基づいて第2特図ゲームの当りおよびはずれを決める第2抽選開始の契機(変動表示ゲーム開始の契機)を付与するものである。
また、第2始動入賞口55には、当該第2始動入賞口55への遊技球の入賞を検知する第2始動入賞球検知センサ56が備えられている。」

(5) 「【0061】
すなわち、第1特図ゲームは、前の第1特図ゲームが終了することにより開始され、第2特図ゲームは、前の第2特図ゲームが終了することにより開始される。従って、複数の第1特図ゲームが並行して行われることはなく、1つずつ行われ、複数の第2特図ゲームが並行して行われることはなく、1つずつ行われる。しかし、第1特図ゲームと第2特図ゲームとはそれぞれ個別に独立して制御されるので、第1特図ゲームと第2特図ゲームとは同時に並行して行うことが可能となっている。なお、この例において、第1特図ゲームの当りとなる抽選確率と第2特図ゲームの当りとなる抽選確率は、等しくされている。」

(6) 「【0064】
そして、上述のように、第1および第2始動入賞球検知センサ52,56から遊技球の検知信号が入力した場合に、上述の第1および第2特図ゲームの変動表示時間を決定するための抽選の判定用の乱数を取得する。なお、主制御装置231において、第1および第2変動表示時間は、基本変動パターンに含まれるデータであり、複数種の基本変動パターンから1つの基本変動パターンを選択することにより決定される。
すなわち、主制御装置231は、第1特図ゲームの変動表示時間としての第1報知時間と、第2特図ゲームの変動表示時間としての第2報知時間を決定する報知時間決定手段として機能する。
【0065】
また、主制御装置231は、第1特図ゲームの開始時および第2特図ゲームの開始時に、取得した乱数に基いて、開始される第1および第2特図ゲームの当りおよびはずれを決定するとともに、当りおよびはずれの抽選結果に対応して、抽選により第1および第2特図ゲームの抽選結果として表示される停止図柄を決定し、さらにこれらの結果に対応して抽選により上述の変動表示時間を含む基本変動パターンを決定する。
また、主制御装置231は、第1特図ゲームと、第2特図ゲームを並行して行うとともに、特別遊技状態において、上述のように第1特図ゲームおよび第2特図ゲームを開始させない。そして、第1特図ゲームおよび第2特図ゲームのうちの一方の特図ゲームの当りに基づいて特別遊技状態となる際に、他方の特図ゲームを当りおよびはずれに係り無く強制的にはずれとして終了させるようになっている。」

(7) 「【0067】
そして、主制御装置231は、第1特図ゲームおよび第2特図ゲームのいずれかの結果が当りとなった場合、すなわち、第1抽選および第2抽選のいずれかの結果が当りとなった場合に、上述の特別遊技状態(第1及び第2有利状態)を発生させる。すなわち、主制御装置231は、特別変動入賞装置8の可動扉81の駆動源(特別変動ソレノイド241)を制御して所定の条件に基づいて特別変動入賞装置8を閉じた閉塞状態から開放状態に変動させて前述の特別遊技状態(有利状態)を発生させるとともに終了させる制御を行う。すなわち、主制御装置231は、有利状態制御手段として機能する。
【0068】
なお、この例では、第1特図ゲームが当りとなって発生する特別遊技状態(第1有利状態)は、例えば、いわゆる突然確変(突確)や突然時短(突時)と称されるもので、例えば、2ラウンドの開放が行われるが、通常の15ラウンドの開放に比較して開放時間が短いもの、例えば、1秒となっている。従って、第1有利状態となっても遊技者は、僅かな量の遊技球(賞球)の払出しを受ける可能性があるだけで、大量の遊技球の獲得を望めないものとなっている。なお、各ラウンドの終了条件は、特別変動入賞装置8の開放開始から1秒の経過、もしくは特別変動入賞装置8への遊技球の10個の入賞となるが、開放時間が短く数個の遊技球の入賞しか望めない状態である。
【0069】
一方、第2特図ゲームが当りとなると、通常の15ラウンドの特別遊技状態(第2有利状態)が行われる。この際の各ラウンドの終了条件は、特別変動入賞装置8の開放開始から30秒弱の経過、もしくは特別変動入賞装置8への遊技球の10個の入賞となり、開放時間が長いので15ラウンドの各ラウンド毎に10個の遊技球が入賞する確率が極めて高い。したがって、15ラウンドの特別遊技状態中に遊技者は大量の遊技球を獲得することになる。なお、第2特図ゲームで当りの場合に全て15ラウンドの特別遊技状態とし、第1特図ゲームで当たりの場合に、15ラウンドの特別遊技状態と2ラウンドの特別遊技状態のいずれかが発生するものとしてもよい。
また、第1特図ゲームでの当りとして、15ラウンドより少ないラウンド数の特別遊技状態が発生するものとすれば、必ずしも2ラウンドの特別遊技状態でなくてもよい。この際に、第1特図ゲームの当たりで、15ラウンドの特別遊技状態と、それいより少ないラウンドの特別遊技状態のいずれかが発生するものとしてもよい。」

(8) 「【0070】
また、主制御装置231は、特別遊技状態の終了後に所謂確変状態(高確率状態および開放アシスト状態)を発生させるか否かを決定する。この例において、パチンコ遊技機は、通常の確変機能を有するデジパチとなっている。そして、第1特図ゲームもしくは第2特図ゲームで当りとなって、特別遊技状態が発生した場合に、特別遊技状態後に確変とするか否かは、この特別遊技状態の発生の契機となった第1特図ゲームもしくは第2特図ゲームの終了時に第1特図表示器4aもしくは第2特図表示器4bに停止表示された特別図柄で決定される。
すなわち、特別図柄には、はずれの特別図柄と、当りの特別図柄とがあり、当りの特別図柄には、通常の特別図柄と、特別遊技状態後に確変となる確変の特別図柄とがあり、当りとなる特図ゲームにおいて、停止図柄として、確変の特別図柄が抽選で決定されると、確変が発生することになる。したがって、確変を発生させるか否かは、停止図柄を抽選で決定する主制御装置231で決められることになる。
したがって、主制御装置231は、確変状態(高確率状態および開放アシスト状態)の発生を制御する高確率状態制御手段および変動抽抽選手段として機能する。」

(9) 「【0078】
しかし、第1特図ゲームでは、通常の状態と、確変状態および時短状態とで、第1始動入賞口51への遊技球の単位時間あたりの入賞数に変化がないので、第1特図ゲームの開始回数は、確変状態において、通常の状態と大きく変わることはない。
また、時短状態は、上述のように特別遊技状態が終了した際に、確変状態とならない場合に発生し、特別遊技状態が終了した際から、たとえば、所定回数の第1特図ゲームと第2特図ゲームとを会わせた特図ゲームが行われた場合、例えば、100回の特図ゲームが行われた場合に終了する。
また、確変状態は、上述のように第1特図ゲームおよび第2特図ゲームのいずれかで確変を伴なう当りとなってその当りに対応する特別遊技状態が終了した際に開始され、第1特図ゲームもしくは第2特図ゲームで次の当りが発生して特別遊技状態が開始される際に終了する。」

(10) 「【0089】
そして、第1特図ゲームが当りとなると、上述のように2ラウンドの特別遊技状態となり、特別遊技状態中における遊技球の増加をほとんど見込めない状態となる。
そこで、本発明では、特別遊技状態が終了後に確変状態となる場合に、確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間(第1報知時間)を例えば2時間以上等の極めて長いものとしている。通常、確変状態では、30分以内ぐらいに特別遊技状態が発生する可能性が高いが、第1特図ゲームの変動表示時間が2時間以上であれば、その間に第2特図ゲームが当りとなる確率は極めて高く、第1特図ゲームが終了するまでに、第2特図ゲームが当りとならない可能性は極めて低いものとなっている。

【0095】
また、本発明では、時短状態中も第1特図ゲームの第1変動表示時間が通常より長くなるようになっている。この場合も、時短状態中に第1特図ゲームが当りとならずに第2特図ゲームを当りとするためのものである。
そして、この場合の特別遊技状態が終了して時短状態が開始される際に開始される第1特図ゲームの第1変動表示時間は、時短状態が開始されてから時短状態が終了するまでの推定時間とされる。」

(11) 「【0098】
ここで、主制御装置231で、第1および第2特図ゲームの第1及び第2変動表示時間を決定する際には、第1変動表示時間のデータを含む第1基本変動パターンを決定し、第2変動表示時間のデータを含む第2基本変動パターンを決定する。
この際には、第1始動入賞口51に遊技球が入賞した際に、この入賞に基いて実行される第1特図ゲーム(第1抽選)の第1変動表示時間(第1報知時間)のデータを含む第1基本変動パターンを抽選するための基本変動パターン抽選用乱数を取得する。
【0099】
同様に、第2始動入賞口55に遊技球が入賞した際に、この入賞に基いて実行される第2特図ゲーム(第2抽選)の第2変動表示時間(第2報知時間)のデータを含む第2基本変動パターンを抽選するための基本変動パターン抽選用乱数を取得する。
そして、前記入賞に基いて実行される第1特図ゲームを開始する際に、上述の第1基本変動パターン抽選用乱数と、主制御装置231のROM23b等の不揮発性メモリに記憶された第1基本変動パターン判定用データテーブルとを比較し、これに基いて第1変動表示時間を含む第1基本変動パターンを決定する。

【0101】
そして、第1および第2基本変動パターンテーブルは、第1および第2基本変動パターン抽選用乱数が取り得る範囲の全ての数値が判定値として登録され、かつ、各判定値に関連付けて基本変動パターンが登録されている。そして、前記乱数と同じ判定値に関連付けられた基本変動パターンが選択される。」

(12) 「【0104】
そして、確変状態用の第1基本変動パターンテーブルには、当り用でもはずれ用でも、上述ように第1変動表示時間が第2変動表示時間に第2特図ゲームの確変状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上となっている基本変動パターン、ここでは、それより長い数時間以上となっている基本変動パターンが登録されており、確変状態中に開始される第1特図ゲームの第1変動表示時間は、必ず第2特図ゲームの確変状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上で、例えば、数時間以上の時間となる。なお、例外があってもよく、極まれにそれより短い変動表示時間(例えば、通常の状態と同様の変動表示時間)が選択されるようになっていてもよい。
【0105】
また、時短状態用の第1基本変動パターンテーブルには、当り用でもはずれ用でも、第2特図ゲームの第2変動表示時間の平均に所定上限回数を乗算した時間以上としている。なお、時短状態の場合にも例外があってよく、極まれにそれより短い変動表示時間(例えば、通常の状態と同様の変動表示時間)が選択されるようになっていてもよい。」

(13) 「【0114】
そして、この例では、上述の3項目により基本変動パターン判定データテーブルが第1データテーブルから第12データテーブルの12種類となる。
ここで、第1データテーブルから第12データテーブルは以下の内容となる。
すなわち、第1?第4データテーブルが通常の状態用で、第5?第8データテーブルが確変状態用で、第9?第12データテーブルが時短状態用となる。
【0115】
また、奇数の第1,3,5,7,9,11データテーブルが当たり用で、偶数の第2,4,6,8,10,12データテーブルがはずれ用となる。
また、第1?第4データテーブルのうちの第1,2データテーブルと、第5?第8データテーブルのうちの第5,6データテーブルと、第9?第12データテーブルのうちの第9,10データテーブルとが第1特図ゲーム用で、残りの第3,4データテーブルと、第7,8データテーブルと、第11,12データテーブルとが第2特図ゲーム用となる。
【0116】
そして、通常の状態用は、第1特図ゲーム用(第1,2データテーブル)と第2特図ゲーム用(第3,4テーブル)とで、データテーブルの内容は、同様のものとなっており、全く等しいものであってもよい。
そして、通常の状態では、当りの場合(第1,3データテーブル)に、長いリーチ用の変動表示時間が多く含まれ、はずれの場合(第2,4データテーブル)には、はずれの短い変動表示時間が多く含まれ、一部がリーチはずれとなる長い変動表示時間となっている。
【0117】
また、確変状態用で、かつ、第2特図ゲーム用(第7,8データテーブル)は、相対的に通常の状態の第2特図ゲーム用(第3,4データテーブル)を短くした状態となっているが、当りとはずれとの関係は同様となっており、当り用にはリーチ用の長い変動表示時間が多く、はずれ用にははずれの短い変動表示時間が多くなっている。なお、ここで、確変状態の第2特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数秒程度となる。
【0118】
そして、確変状態用で、かつ、第1特図ゲーム用(第5,6データテーブル)は、当りおよびはずれに拘らず、上述の例えば、数時間程度以上の変動表示時間が登録され、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となる。なお、第5,6データテーブルにおいては、全ての変動表示時間を例えば2時間等に統一してしまってもよく、この場合に基本変動パターン用乱数に関係なく、時短状態中の第1特図ゲームは、変動表示時間が2時間とされる。
【0119】
また、時短状態用で、かつ、第2特図ゲーム用(第11,12データテーブル)は、相対的に通常の状態の第2特図ゲーム用(第3,4データテーブル)を短くした状態となっているが、当りとはずれとの関係は同様となっており、当り用にはリーチ用の長い変動表示時間が多く、はずれの短い変動表示時間が多くなっている。なお、ここで、時短状態の第2特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数秒程度となる。
【0120】
そして、時短状態用で、かつ、第1特図ゲーム用(第9,10データテーブル)は、当りおよびはずれに拘らず、上述の例えば、10分程の変動表示時間が登録され、時短状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、12分程度となる。なお、第5,6データテーブルにおいては、全ての変動表示時間を例えば12分等に統一してしまってもよく、この場合に基本変動パターン用乱数に関係なく、時短状態中の第1特図ゲームは、変動表示時間が12分とされる。
【0121】
この変動表示時間決定処理では、まず、特図ゲーム開始のタイミングか否かが判定され(ステップS1)、特図ゲーム開始のタイミングでなければ処理を終了する。
特図ゲーム開始のタイミングの場合に次に、時短状態か否か判定される(ステップS2)。
時短状態でない場合には、確変状態か否かが判定される(ステップS3)。そして、時短状態でも確変状態でもない場合は通常の状態となる。そして、通常の状態の場合に、開始される特図ゲームが第1特図ゲームか第2特図ゲームかを判定する(ステップS4)。
【0122】
そして、第1特図ゲームが開始される場合には、開始される特図ゲームが当りか否かを判定する(ステップS5)。なお、特図ゲームが開始される際に、開始される特図ゲームの開始の契機となる始動入賞口への遊技球の入賞の際に取得された当り乱数と、当り判定データテーブルとが比較され、当り乱数と一致する当りの判定値が当り判定データテーブルに登録されていると当りとなる。
【0123】
そして、当りの場合には、上述の第1データテーブルを用い、開始される特図ゲームの開始の契機となる第1始動入賞口51への遊技球の入賞の際に取得された基本変動パターン判定用乱数に対応する変動表示時間を決定する(ステップS6)。
また、ステップS5ではずれの場合に、第1データテーブルに代えて第2データテーブルを用いる以外は上述の場合と同様にして、変動表示時間を決定する(ステップS7)。
また、ステップS4で第2特図ゲームとされた場合には、やはり当りか否かを判定する(ステップS8)。
【0124】
そして、当りの場合には第3データテーブルを用いて上述の場合と同様に変動表示時間を決定する(ステップS9)。
また、ステップS8ではずれの場合には、第4データテーブルを用いて上述の場合と同様に変動表示時間を決定する(ステップS10)。
また、ステップS3で確変状態と判定された場合には、同様に第1特図ゲームか否か判定し(ステップS11)、第1特図ゲームの場合は、当りか否かを判定する(ステップS12)。
【0125】
そして、当りの場合は、第5データテーブルを用いて変動表示時間を決定し(ステップS13)、はずれの場合は、第6データテーブルを用いて変動表示時間を決定する(ステップS14)。これにより、確変状態で第1特図ゲームの場合は、例えば、2時間の変動表示時間が決定される。
また、ステップS11で、第2特図ゲームの場合は、当りか否か判定し(ステップS15)、当りの場合は、第7データテーブルを用いて変動表示時間を決定し(ステップS16)、はずれの場合は、第8データテーブルを用いて変動表示時間を決定する(ステップS17)。
【0126】
また、ステップS2で時短状態と判定された場合には、同様に第1特図ゲームか否か判定し(ステップS18)、第1特図ゲームの場合は、当りか否かを判定する(ステップS19)。
【0127】
そして、当りの場合は、第9データテーブルを用いて変動表示時間を決定し(ステップS20)、はずれの場合は、第10データテーブルを用いて変動表示時間を決定する(ステップS21)。これにより、時短状態の場合には、当りでもはずれでも12分の変動表示時間が決定される。
また、ステップS18で、第2特図ゲームの場合は、当りか否か判定し(ステップS22)、当りの場合は、第11データテーブルを用いて変動表示時間を決定し(ステップS23)、はずれの場合は、第12データテーブルを用いて変動表示時間を決定する(ステップS24)。」

(14) 「【0134】
この場合には、時短状態が終了して通常の状態となることで、普通変動入賞装置53が開放する機会が減少し、第2特図ゲームが行われる機会も減少することになり、第2特図ゲームで当りとなる可能性が低く、第1特図ゲームで当るとともに、特別遊技状態後の確変状態や時短状態で第2特図ゲームの当りを引くことが望まれる状態となる。」


2 上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

(1) 【0064】に記載されるように、「第1および第2特図ゲームの変動表示時間」は、「基本変動パターンに含まれるデータであ」るから、「第1および第2特図ゲーム」は「変動表示時間を含む基本変動パターン」に基づいて行われるものであると認められる。
また、【0065】には、「主制御装置231は、第1特図ゲームと、第2特図ゲームを並行して行う」ことが記載されている。
したがって、引用文献1には、「主制御装置231は、第1特図ゲームと第2特図ゲームを、変動表示時間を含む基本変動パターンに基づいて行うこと」が記載されていると認められる。

(2) 【0064】の「第1および第2変動表示時間は、基本変動パターンに含まれるデータであり、複数種の基本変動パターンから1つの基本変動パターンを選択することにより決定される」との記載、【0099】の「第1基本変動パターン抽選用乱数と…第1基本変動パターン判定用データテーブルとを比較し、これに基いて第1変動表示時間を含む第1基本変動パターンを決定する」との記載、及び、【0101】の「第1および第2基本変動パターンテーブルは、第1および第2基本変動パターン抽選用乱数が取り得る範囲の全ての数値が判定値として登録され、かつ、各判定値に関連付けて基本変動パターンが登録されている。そして、前記乱数と同じ判定値に関連付けられた基本変動パターンが選択される。」との記載から、「第1基本変動パターン判定用データテーブル」には、「第1変動表示時間」を「データ」として含む「第1基本変動パターン」が「登録」されていると認められる(なお、【0099】の「第1基本変動パターン判定用データテーブル」と【0101】の「第1」「基本変動パターンテーブル」とが同一のテーブルであることは、両者が、いずれも「基本変動パターン抽選用乱数」を用いて「基本変動パターン」を決定するためのものであることから、自明なことである。)。

(3) 【0114】に「基本変動パターン判定データテーブルが第1データテーブルから第12データテーブルの12種類となる」と記載されているように、「第6データテーブル」は、「基本変動パターン判定データテーブル」(つまり、「基本変動パターンテーブル」)であるから、上記(2)より、「第6データテーブル」には、「第1変動表示時間」を「データ」として含む「第1基本変動パターン」が「登録」されていると認められる。
したがって、【0125】には、「第6データテーブルを用いて変動表示時間を決定する」と記載されているが、当該「変動表示時間」の「決定」の際には、「第6データテーブル」を用いて、「変動表示時間」を「データ」として含む「基本変動パターン」も決定しているものと認められる。
これらのことと、【0115】、【0124】の記載から、「基本変動パターンテーブル」である「第6データテーブル」は、「はずれの場合」に「確変状態」で開始される「第1特図ゲーム」の「変動表示時間」及び「基本変動パターン」を「決定」する際に用いられるものと認められる。
同様に、【0114】、上記(2)、【0127】、【0115】、【0126】の記載から、「基本変動パターンテーブル」である「第10データテーブル」は、「はずれの場合」に「時短状態」で開始される「第1特図ゲーム」の「変動表示時間」及び「基本変動パターン」を「決定」する際に用いられるものと認められる。

(4) 【0118】に記載されるように、「第6データテーブル」は、「数時間程度以上の変動表示時間が登録され、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となる」ものであるが、「平均」との用語は一般に複数の値が存在することを前提とする用語であること、また、同段落の「第」「6データテーブルにおいては、全ての変動表示時間を例えば2時間等に統一してしまってもよく」との記載は、「第6データテーブル」に登録される「変動表示時間」は「統一」しない場合があることを意味する記載であることを考慮すれば、引用文献1において、「第6データテーブル」に「数時間程度以上の変動表示時間が複数登録されること」は、記載されているに等しい事項であると認められる。さらに、上記(2)も考慮すれば、「第6データテーブル」に「数時間程度以上の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録されること」も、記載されているに等しい事項であると認められる。
同様に、【0120】、上記(2)の記載から、「第10データテーブル」に「10分程の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録されていること」も、記載されているに等しい事項であると認められる(なお、【0120】には、「第5,6データテーブル」と記載されているが、この記載の前に「第9,10データテーブル」について説明されていることから、この記載が「第9,10データテーブル」の誤記であることは自明である。)。

(5) 【0104】の「なお、例外があってもよく、極まれにそれより短い変動表示時間(例えば、通常の状態と同様の変動表示時間)が選択されるようになっていてもよい。」との記載から、「例外」を設けない場合には、「確変状態用の第1基本変動パターンテーブル」においては、「通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっている」と認められ、当該事項は、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められる。
同様に、【0105】の「なお、時短状態の場合にも例外があってよく、極まれにそれより短い変動表示時間(例えば、通常の状態と同様の変動表示時間)が選択されるようになっていてもよい。」との記載から、「例外」を設けない場合には、「時短状態用の第1基本変動パターンテーブル」においては、「通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっている」と認められ、当該事項は、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められる。

(6) 上記1の記載事項、及び、上記2(1)?(5)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?jは、本願発明の記号A?Jに対応させて付した。( )内は引用文献1の対応箇所を示している。)。

「a?c 第1始動入賞口51に遊技球が入賞することに基づいて第1特図ゲームの当りおよびはずれを決める第1抽選を行い(【0034】)、第1特図ゲームを、可変表示装置3の装飾図柄の第1変動表示ゲームとして表示し、第1抽選の結果を報知し(【0031】)、第2始動入賞口55に遊技球が入賞することに基づいて第2特図ゲームの当りおよびはずれを決める第2抽選を行い(【0036】)、第2特図ゲームを、可変表示装置3の装飾図柄の第2変動表示ゲームとして表示し、第2抽選の結果を報知し(【0033】)、第1特図ゲームおよび第2特図ゲームのいずれかの結果が当りとなった場合、特別遊技状態(第1特図ゲームが当りとなって発生する第1有利状態及び第2特図ゲームが当りとなると行われる第2有利状態であって第1有利状態より多くの遊技球を獲得可能とする第2有利状態)を発生させる(【0009】、【0067】?【0069】)主制御装置231を備えた、パチンコ遊技機であって(【0024】)、
d 主制御装置231は、当りおよびはずれの抽選結果に対応して、抽選により第1および第2特図ゲームの抽選結果として表示される停止図柄を決定し、さらにこれらの結果に対応して抽選により変動表示時間を含む基本変動パターンを決定し(【0065】)、
e 主制御装置231は、第1特図ゲームと第2特図ゲームを、変動表示時間を含む基本変動パターンに基づいて行い(上記2(1))、第1特図ゲームと第2特図ゲームとはそれぞれ個別に独立して制御されるので、第1特図ゲームと第2特図ゲームとは同時に並行して行うことが可能となっており(【0061】)、
f 主制御装置231は、特別遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態および開放アシスト状態)を発生させるか否かを決定し(【0070】)、確変状態とならない場合に時短状態が発生し、特別遊技状態が終了した際から、たとえば、所定回数の第1特図ゲームと第2特図ゲームとを会わせた特図ゲームが行われた場合、例えば、100回の特図ゲームが行われた場合に終了し(【0078】)、時短状態が終了して通常の状態となり(【0134】)、
g 主制御装置231は、第1および第2特図ゲームの第1及び第2変動表示時間を決定するものであり(【0098】)、特別遊技状態が終了後に確変状態となる場合に、確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間を例えば2時間以上等の極めて長いものとし(【0089】)、時短状態中も第1特図ゲームの第1変動表示時間が通常より長くなるようにしており(【0095】)、はずれの場合に確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する際に用いられる基本変動パターンテーブルである第6データテーブルは、数時間程度以上の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され(上記2(3)、(4))、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となるものであり(【0118】)、はずれの場合に時短状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する際に用いられる基本変動パターンテーブルである第10データテーブルは、10分程の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され(上記2(3)、(4))、時短状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、12分程度であり(【0120】)、はずれの場合に通常状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間を決定するための第2データテーブルは、はずれの短い変動表示時間が多く含まれ、一部がリーチはずれとなる長い変動表示時間となっており(【0115】、【0116】、【0121】?【0123】)、
h 確変状態用の第1基本変動パターンテーブルには、当り用でもはずれ用でも、第1変動表示時間が第2変動表示時間に第2特図ゲームの確変状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上となっている基本変動パターン、ここでは、それより長い数時間以上となっている基本変動パターンが登録されており、通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっており(【0104】、上記2(5))、時短状態用の第1基本変動パターンテーブルには、当り用でもはずれ用でも、第2特図ゲームの第2変動表示時間の平均に所定上限回数を乗算した時間以上としており、通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっている(【0105】、上記2(5))、
j パチンコ遊技機。」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Jと引用発明の構成a?jについて、それぞれ(a)?(j)の見出しを付して行った。)。

(a) 引用発明の構成a?cにおいて、「第1始動入賞口51に遊技球が入賞すること」、「可変表示装置3の装飾図柄の第1変動表示ゲームとして表示」すること、及び、「第1抽選の結果を報知」することは、それぞれ、本願発明の構成Aにおいて、「第1始動条件が成立したこと」、「第1識別情報の可変表示を行」うこと、及び、「表示結果を導出表示する」ことに相当するから、引用発明の構成a?cの「第1始動入賞口51に遊技球が入賞することに基づいて」行われる「第1抽選の結果を報知」する「第1可変表示ゲーム」を「表示」する「可変表示装置3」は、本願発明の構成Aの「第1始動条件が成立したことに基づいて、第1識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第1可変表示手段」に相当する。
また、引用発明の構成a?cにおいて、「当り」の「第1抽選の結果を報知」することは、本願発明の構成Aにおいて、「第1表示結果が導出表示され」ることに相当し、引用発明の構成a?cの「特別遊技状態」である「第1有利状態」は、本願発明の構成Aの「遊技者にとって有利な第1状態」に相当するから、引用発明の構成a?cにおいて、「第1特図ゲーム」「の結果が当りとなった場合、特別遊技状態(第1特図ゲームが当りとなって発生する第1有利状態及び第2特図ゲームが当りとなって発生する第2有利状態)を発生させる」ことは、本願発明の構成Aにおいて、「第1表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第1状態に制御」することに相当する。
一方、引用発明の構成a?cにおいて、「第2始動入賞口55に遊技球が入賞すること」、「可変表示装置3の装飾図柄の第2変動表示ゲームとして表示」すること、及び、「第2抽選の結果を報知」することは、それぞれ、本願発明の構成Aにおいて、「第2始動条件が成立したこと」、「第2識別情報の可変表示を行」うこと、及び、「表示結果を導出表示する」ことに相当するから、引用発明の構成a?cの「第2始動入賞口55に遊技球が入賞することに基づいて」行われる「第2抽選の結果を報知」する「第2可変表示ゲーム」を「表示」する「可変表示装置3」は、本願発明の構成Aの「第2始動条件が成立したことに基づいて、第2識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第2可変表示手段」に相当する。
また、引用発明の構成a?cにおいて、「当り」の「第2抽選の結果を報知」することは、本願発明の構成Aにおいて、「第2表示結果が導出表示され」ることに相当し、引用発明の構成a?cの「特別遊技状態」である「第2有利状態」は、本願発明の構成Aの「遊技者にとって有利な第2状態」に相当するから、引用発明の構成a?cにおいて、「第2特図ゲーム」「の結果が当りとなった場合、特別遊技状態(第1特図ゲームが当りとなって発生する第1有利状態及び第2特図ゲームが当りとなって発生する第2有利状態)を発生させる」ことは、本願発明の構成Aにおいて、「第2表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第2状態に制御」することに相当する。
そして、引用発明の構成a?cの「パチンコ遊技機」は、本願発明の構成Aの「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成a?cは、本願発明の構成Aに相当する。

(b) 引用発明の構成a?cの「第1特図ゲーム」「の結果が当りとなった場合、特別遊技状態(第1特図ゲームが当りとなって発生する第1有利状態及び第2特図ゲームが当りとなって発生する第2有利状態)を発生させる」「主制御装置231」は、本願発明の構成Bの「前記第1状態に制御するか否かを決定する第1決定手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成a?cは、本願発明の構成Bに相当する。

(c) 引用発明の構成a?cの「第2特図ゲーム」「の結果が当りとなった場合、特別遊技状態(第1特図ゲームが当りとなって発生する第1有利状態及び第2特図ゲームが当りとなって発生する第2有利状態)を発生させる」「主制御装置231」は、本願発明の構成Cの「前記第2状態に制御するか否かを決定する第2決定手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成a?cは、本願発明の構成Cに相当する。

(d) 引用発明の構成dの「当りおよびはずれの抽選結果」は、本願発明の構成Dの「第1決定手段による決定結果」に相当し、引用発明の構成dの「変動表示時間を含む基本変動パターン」は、本願発明の構成Dの「第1識別情報の可変表示時間を特定可能な第1可変表示パターン」に相当する。したがって、引用発明の構成dの「当りおよびはずれの抽選結果に対応して、抽選により第1および第2特図ゲームの抽選結果として表示される停止図柄を決定し、さらにこれらの結果に対応して抽選により変動表示時間を含む基本変動パターンを決定」する「主制御装置231」は、本願発明の構成Dの「前記第1決定手段による決定結果に基づいて、前記第1識別情報の可変表示時間を特定可能な第1可変表示パターンを選択」する「可変表示パターン選択手段」に相当する。
一方、引用発明の構成dの「当りおよびはずれの抽選結果」は、本願発明の構成Dの「第2決定手段による決定結果」に相当し、引用発明の構成dの「変動表示時間を含む基本変動パターン」は、本願発明の構成Dの「第2識別情報の可変表示時間を特定可能な第2可変表示パターン」に相当する。したがって、引用発明の構成dの「当りおよびはずれの抽選結果に対応して、抽選により第1および第2特図ゲームの抽選結果として表示される停止図柄を決定し、さらにこれらの結果に対応して抽選により変動表示時間を含む基本変動パターンを決定」する「主制御装置231」は、本願発明の構成Dの「前記第2決定手段による決定結果に基づいて、前記第2識別情報の可変表示時間を特定可能な第2可変表示パターンを選択する可変表示パターン選択手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(e) 上記(d)に記載したとおり、引用発明の「変動表示時間を含む基本変動パターン」は、本願発明の「第1可変表示パターン」と「第2可変表示パターン」に相当するから、引用発明の構成eにおいて、「第1特図ゲームと第2特図ゲームを、変動表示時間を含む基本変動パターンに基づいて行」うことは、本願発明の構成Eにおいて、「前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第1可変表示パターンに基づいて前記第1識別情報の可変表示を実行」すること、及び、「前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第2可変表示パターンに基づいて前記第2識別情報の可変表示を実行する」ことに相当する。
また、引用発明の構成eにおいて、「第1特図ゲームと第2特図ゲームとはそれぞれ個別に独立して制御されるので、第1特図ゲームと第2特図ゲームとは同時に並行して行うことが可能となって」いることは、本願発明の構成Eにおいて、「前記第2識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず」、「前記第1識別情報の可変表示を実行し、前記第1識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず」、「前記第2識別情報の可変表示を実行する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成eの「第1特図ゲームと第2特図ゲームを変動表示時間を含む基本変動パターンに基づいて行い、第1特図ゲームと第2特図ゲームとはそれぞれ個別に独立して制御されるので、第1特図ゲームと第2特図ゲームとは同時に並行して行うことが可能とな」るようにする「主制御装置231」は、本願発明の構成Eの「前記第2識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第1可変表示パターンに基づいて前記第1識別情報の可変表示を実行し、前記第1識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第2可変表示パターンに基づいて前記第2識別情報の可変表示を実行する可変表示実行手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成eは、本願発明の構成Eに相当する。

(f) 引用発明の構成fの「特別遊技状態」は、本願発明の構成Fの「第1状態」に相当し、引用発明の構成fの「通常の状態」は、本願発明の構成Fの「通常状態」に相当し、引用発明の構成fの「確変状態(高確率状態および開放アシスト状態)」及び「普図抽選における普図ゲームの変動表示時間が短縮される時短状態」は、本願発明の構成Fの「通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態」に相当する。
したがって、引用発明の構成fの「特別遊技状態の終了後に確変状態(高確率状態および開放アシスト状態)を発生させるか否かを決定し、確変状態とならない場合に普図抽選における普図ゲームの変動表示時間が短縮される時短状態が発生し、特別遊技状態が終了した際から、たとえば、所定回数の第1特図ゲームと第2特図ゲームとを会わせた特図ゲームが行われた場合、例えば、100回の特図ゲームが行われた場合に終了し、時短状態が終了して通常の状態とな」るようにする「主制御装置231」と、本願発明の構成Fの「少なくとも前記第1状態が終了した後に、通常状態と、前記通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とに制御可能な状態制御手段」とは、「通常状態と、前記通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とに制御可能であって、少なくとも前記第1状態が終了した後に、前記特別状態に制御可能な状態制御手段」の点で共通する。

(g) 引用発明の構成gの「はずれの場合」は、本願発明の構成Gの「前記第1決定手段によって前記第1識別情報の可変表示の表示結果が前記第1表示結果ではない表示結果に決定された場合」に相当し、引用発明の構成gの「確変状態」及び「時短状態」は、本願発明の構成Gの「特別状態」に相当する。
また、引用発明の構成gの「基本変動パターン」は本願発明の構成Gの「特別可変表示パターン」に相当するから、引用発明の構成gにおいて、「数時間程度以上の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となる」「基本変動パターンテーブルである第6データテーブル」により「第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する」こと、及び、「10分程の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され、時短状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、12分程度であ」る「基本変動パターンテーブルである第10データテーブル」により「第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する」ことは、本願発明の構成Gにおいて、「前記第1識別情報の可変表示時間が所定時間以上となる複数の特別可変表示パターンのうちいずれかを選択する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成gにおいて、「主制御装置231は、第1および第2特図ゲームの第1及び第2変動表示時間を決定するものであり」、「はずれの場合に確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する際に用いられる基本変動パターンテーブルである第6データテーブルは、数時間程度以上の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となるものであり、はずれの場合に時短状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターンを決定する際に用いられる基本変動パターンテーブルである第10データテーブルは、10分程の変動表示時間をデータとして含む基本変動パターンが複数登録され、時短状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、12分程度であ」ることは、本願発明の構成Gにおいて、「前記可変表示パターン選択手段は、前記第1決定手段によって前記第1識別情報の可変表示の表示結果が前記第1表示結果ではない表示結果に決定された場合、前記状態制御手段によって前記特別状態に制御されていることを条件に、前記第1識別情報の可変表示時間が所定時間以上となる複数の特別可変表示パターンのうちいずれかを選択する特別可変表示パターン選択手段を含」むことに相当する。
よって、引用発明の構成gは、本願発明の構成Gに相当する。

(h) 上記(g)より、引用発明の構成hにおいて、「確変状態用の第1基本変動パターンテーブル」が、「数時間以上となっている基本変動パターンが登録されて」おり、「通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっており」、「時短状態用の第1基本変動パターンテーブル」が、「通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっている」ことと、本願発明の構成Hにおいて、「前記複数の特別可変表示パターンは、前記状態制御手段によって前記通常状態に制御されている場合には選択され」ないこととは、「前記複数の特別可変表示パターンは、前記状態制御手段によって通常状態に制御されている場合には選択され」ない点で共通する。

(j) 引用発明の構成jは、本願発明の構成Jに相当する。

上記(a)?(j)の検討により、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「A 第1始動条件が成立したことに基づいて、第1識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第1可変表示手段に第1表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第1状態に制御し、第2始動条件が成立したことに基づいて、第2識別情報の可変表示を行い表示結果を導出表示する第2可変表示手段に第2表示結果が導出表示されたときに遊技者にとって有利な第2状態に制御する遊技機であって、
B 前記第1状態に制御するか否かを決定する第1決定手段と、
C 前記第2状態に制御するか否かを決定する第2決定手段と、
D 前記第1決定手段による決定結果に基づいて、前記第1識別情報の可変表示時間を特定可能な第1可変表示パターンを選択し、前記第2決定手段による決定結果に基づいて、前記第2識別情報の可変表示時間を特定可能な第2可変表示パターンを選択する可変表示パターン選択手段と、
E 前記第2識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第1可変表示パターンに基づいて前記第1識別情報の可変表示を実行し、前記第1識別情報の可変表示が実行中であるか否かにかかわらず、前記可変表示パターン選択手段によって選択された前記第2可変表示パターンに基づいて前記第2識別情報の可変表示を実行する可変表示実行手段と、
F 通常状態と、前記通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とに制御可能であって、少なくとも前記第1状態が終了した後に、前記特別状態に制御可能な状態制御手段と、
を備え、
G 前記可変表示パターン選択手段は、前記第1決定手段によって前記第1識別情報の可変表示の表示結果が前記第1表示結果ではない表示結果に決定された場合、前記状態制御手段によって前記特別状態に制御されていることを条件に、前記第1識別情報の可変表示時間が所定時間以上となる複数の特別可変表示パターンのうちいずれかを選択する特別可変表示パターン選択手段を含み、
H 前記複数の特別可変表示パターンは、前記状態制御手段によって通常状態に制御されている場合には選択されない、
J 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成F、H)
本願発明は、「少なくとも前記第1状態が終了した後に、通常状態と、前記通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とに制御可能な状態制御手段」(構成F)を備えるのに対して、引用発明は、「特別遊技状態が終了した」後、「時短状態」を介して「通常状態」となるものであり、「主制御装置231」が「特別遊技状態が終了した」後に「通常の状態」とすることが可能か否かは不明であるため、上記構成Fを備えておらず、また、本願発明では、「前記複数の特別可変表示パターンは、前記状態制御手段によって前記通常状態に制御されている場合には選択され」ない(構成H、ここで「前記通常状態」は、「第1状態が終了した後」の「通常状態」を意味するものと認められる。)のに対して、引用発明では、「通常の状態」は、「特別遊技状態が終了した」後、「時短状態」を介して生じる状態であり、「特別遊技状態が終了した」後の状態ではないため、上記構成Hを備えていない点。

[相違点2](構成I)
本願発明は、「前記可変表示実行手段によって実行される前記複数の特別可変表示パターンの各々に対応する可変表示では、当該可変表示以外のときとは異なる背景画像を表示する演出が実行される」との構成を備えるのに対して、
引用発明は、上記構成を備えていない点。

第6 当審における判断
1 相違点1について
本願出願日前において、遊技機の技術分野において、大当り遊技終了後に、確変状態と通常状態とに移行するように制御することが広く行われている(以下、「周知技術1」という。例えば、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2011-250955号公報には、「ラウンド数が異なる大当り遊技状態としては、15ラウンドの大当り遊技状態と2ラウンドの大当り遊技状態との複数種類の大当りが設けられている。」(【0036】)、「15R通常大当りは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態に移行する制御が行なわれず、時短状態(電チューサポート制御状態を含む)に移行する制御が行なわれ…。15R通常大当りは、大当り遊技状態の終了後に、時短状態(電チューサポート制御状態を含む)に移行する制御が行なわれないものであってもよい。」(【0047】。ここで、「時短状態(電チューサポート制御状態を含む)に移行」されない場合の遊技状態は、通常状態であると認められる。)、「15R確変大当りは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態に移行する制御および時短状態(電チューサポート制御状態を含む)に移行する制御が行なわれ」(【0048】)、「2R第1確変大当りおよび2R第2確変大当りは、大当り遊技状態の終了後に、確変状態に移行する制御および時短状態(電チューサポート制御状態を含む)に移行する制御が行なわれ」(【0049】)との記載がある。また、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2007-185218号公報には、「導出表示された特別図柄が特定の表示態様(例えば、“F”、“A”、“H”のいずれかが導出表示される態様、所謂「大当り表示態様」)になったことに基づいて、遊技状態を遊技者に有利な大当り遊技状態(特定遊技状態)に移行することとなる。」(【0033】)、「導出表示された特別図柄が、特定の表示態様のうちの特別の表示態様(例えば、“F”、“A”が導出表示される態様、所謂「特別大当り表示態様」)になったことに基づいて、遊技状態を遊技者に有利な大当り遊技状態に移行し、その大当り遊技状態が終了した場合に、確変状態に移行することとなる。一方、導出表示された特別図柄が、特定の表示態様のうち、特別の表示態様ではない非特別の表示態様(例えば、“H”が導出表示される態様、所謂「通常大当り表示態様」)になったことに基づいて、遊技状態を遊技者に有利な大当り遊技状態に移行し、その大当り遊技状態が終了した場合に、遊技者に相対的に有利な時短状態に移行することとなる。」(【0034】)、「例えば、通常大当りとなった場合に、時短状態に移行させなくてもよい。」(【0038】。ここで、「時短状態に移行さ」れない場合の遊技状態は、通常状態であると認められる。)等の記載がある。)。
引用発明と周知技術1とは、確変状態や通常状態といった複数の遊技状態を設けた遊技機という点で共通するものである。
以上のことから、引用発明における「特別遊技状態」の「終了」後の遊技状態に、周知技術1を適用し、「特別遊技状態が終了」した後に「確変状態」または「時短状態」となるようにすることに代え、「確変状態」または「通常の状態」となるようにすることとし、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
本願出願日前において、変動表示時間を長くする場合に、遊技者の期待度を高めるため、それ以外のときとは異なる背景画像を表示する演出を行うことが周知である(以下、「周知技術2」という。例えば、当審の平成30年9月28日付け拒絶の理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2009-125300号公報の【0123】、【図22】には、変動表示時間を長くする海ロングリーチ、山ロングリーチ、空ロングリーチの場合に、背景画像をこれらのリーチの場合とは異なる画像である特定のモチーフに基づく演出画像とすることが記載されていると認められる。また、当審の平成30年9月28日付け拒絶の理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された特開2009-125429号公報の【0036】、【0047】、【0087】、【図5】?【図8】には、背景画像演出データエリア143に繰返し演出画像、期待度演出画像、スーパーリーチ演出画像を記憶し、長時間変動であるスーパーリーチの際に、上記演出画像を表示することが記載されている。そして、引用文献3の【図14】?【図16】に記載されるフローチャート等から、上記演出画像がスーパーリーチのときのみ表示されることは明らかである。)。
引用発明と周知技術2とは、遊技機という同一の技術分野に属する。また、引用文献1の「遊技者は、第2抽選で当りとなることを望んでいる。ここで、第1抽選および第2抽選で当りとなる確率が高い高確率状態となると、第1抽選の結果を報知するまでの時間である第1報知時間が、第2報知時間に第2抽選の前記高確率状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上とすることになる。この場合に、…第1報知時間が終了する前に第2抽選で当りが発生する確率が高くなる。」(【0011】)、「高確率状態となると、第2抽選で当りとなって、第1有利状態より獲得可能な遊技球数が多い第2有利状態が発生する可能性が高くなる。」(【0012】)等の記載から、引用発明において、「はずれの場合に確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターン」を「第6データテーブル」により「決定」することにより、「変動表示時間を例えば2時間以上等の極めて長いものとし」(構成g)た場合(つまり、「第1抽選の結果を報知するまでの時間である第1報知時間が、第2報知時間に第2抽選の前記高確率状態における当り確率の逆数を乗算した時間以上となる場合」(【0011】))は、遊技者が望む第2抽選で当りが発生する確率、つまり、第1有利状態より獲得可能な遊技球数が多い第2有利状態が発生する可能性が高くなる状態であるから、有利な遊技状態に対する遊技者の期待度が高くなる状態であるといえるから、引用発明において、上記のとおり「変動表示時間を例えば2時間以上等の極めて長いものとし」た場合と周知技術2において変動表示を長くする場合とは、いずれも、有利な遊技状態に対する遊技者の期待度が高くなる状態という点で共通している。
以上のことから、引用発明に周知技術2を適用し、「はずれの場合に確変状態で開始される第1特図ゲームの変動表示時間及び基本変動パターン」を「第6データテーブル」により「決定」することにより、「変動表示時間を例えば2時間以上等の極めて長いものとし」た場合、それ以外のときとは異なる背景画像を表示する演出を行うようにすることにより、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術2に基づき当業者が容易に想到し得たものである。

3 請求人の主張について
(ア) 請求人は、平成30年11月30日付け意見書において、
「引用文献1には、はずれの場合に確変状態で開始される第1特図ゲームの変動時間を決定するための第6テーブルは、数時間程度以上の変動表示時間が登録され、確変状態の第1特図ゲームの変動表示時間の平均は、例えば、数時間以上となる、といった「平均」や「数時間程度以上」という漠然とした用語による開示(時短状態における開示も同様。)があるだけであり、本願発明のように、複数の特別可変表示パターンは、通常状態では選択されず、特別状態における専用の可変表示パターンであることについての開示はありません。また、引用文献2、3に、特徴Aについての開示がないことは明らかです。」
と主張する。
しかしながら、「第4 2(5)」において検討したとおり、「確変状態用の第1基本変動パターンテーブル」においては、「通常の状態と同様の変動表示時間は選択されないようになっている」ことが、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められるから、「複数の特別可変表示パターンは、通常状態では選択されず、特別状態における専用の可変表示パターンであること」も、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められる。よって、請求人の主張は採用できない。

(イ) 請求人は、同意見書において、
「本願発明は、特徴Aにより、例えば、確変状態や時短状態に制御されていることを条件に選択される、非リーチ(ロング)や非リーチ(超ロング)といった長時間のはずれ変動のパターンが複数種類あるため、一方の特図の可変表示結果が導出されず他方の可変表示結果が複数回導出可能となる期間が複数あることとなり、ゲーム性が向上し、遊技興趣が向上する、という引用文献1?3に記載の発明や技術に比して有利な効果を奏します。」
と主張する。
しかしながら、「第4 2(4)」において検討したとおり、「第6データテーブル」に「数時間程度以上の変動表示時間が複数登録されること」が、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認められるから、「確変状態や時短状態に制御されていることを条件に選択される」、「長時間のはずれ変動のパターンが複数種類ある」ことも、引用文献1に記載されているに等しい事項であると認めらる。よって、請求人が主張する効果は、引用発明自体が奏するものであり、格別顕著なものとは言えない。

4 小括
上記「3 請求人の主張について(イ)」において検討したとおり、本願発明により奏される効果は、引用発明自体が奏するものであり、格別顕著なものとは言えない。
そうすると、上記「1 相違点1について」及び「2 相違点2について」において検討したとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-25 
結審通知日 2019-02-26 
審決日 2019-03-14 
出願番号 特願2012-110118(P2012-110118)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴岡 直樹  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 荒井 誠
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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