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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1351342
審判番号 不服2017-17500  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-27 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2013-198555「炭化珪素半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 9日出願公開、特開2015- 65316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年9月25日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 1月13日付け 拒絶理由通知
平成29年 3月13日 意見書・手続補正
平成29年 8月24日付け 拒絶査定
平成29年11月27日 審判請求・手続補正
平成30年 9月 4日付け 拒絶理由通知
平成30年10月16日 意見書
平成30年11月30日付け 拒絶理由通知(以下,その理由を「当審拒絶理由」という。)
そして,当審拒絶理由を通知し,期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,請求人からは何らの応答もない。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,審判請求と同時に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項で特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
第1の主面と前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する炭化珪素基板を準備する工程と,
前記第1の主面へ不純物をドーピングすることにより,前記炭化珪素基板内にドーピング領域を形成する工程と,
前記第1の主面における前記ドーピング領域上に第1の保護膜を形成する工程と,
前記第1の保護膜が形成された状態でアニールを行なうことにより,前記ドーピング領域に含まれる前記不純物を活性化する工程と,を備え,
前記第1の保護膜を形成する工程は,金属元素の濃度が5μg/kg以下である前記第1の保護膜となるべき樹脂材料を前記第1の主面上に塗布する工程を含み,
前記金属元素は,ナトリウムであり,
前記樹脂材料は,フォトレジストである,炭化珪素半導体装置の製造方法。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は,本願の請求項1-3に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2009-004572号公報
引用文献2 林,”レジストおよびレジスト塗膜中の金属不純物分析(ICP-MS)”,The TRC News,東レリサーチセンター,No.115(May 2012),33-34頁
引用文献3 特開2009-065112号公報

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
当審拒絶理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は,炭化珪素(以下,SiCという)中に不純物をドーピングしたのち,活性化熱処理を行うことで不純物の活性化を行っているSiC半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SiCパワーデバイスでは,不純物層形成時に必要とされる活性化熱処理によってSiC表面からSi抜けが生じ,表面荒れが発生することが確認されている。このSi抜けが生じると,SiC基板表面にカーボンリッチな層が形成される。このカーボンリッチな層を除去しなければリーク電流が増大するなど,デバイス特性に不具合が発生する。このため,カーボンリッチ層を除去するために,犠牲酸化および犠牲酸化膜除去工程が追加されている。」
「【0035】
次に,図1に示す縦型パワーMOSFETの製造工程を,図2?図5を用いて説明する。
【0036】
〔図2(a)に示す工程〕
まず,n型4Hまたは6Hまたは3C-SiCからなる半導体基板,すなわちn^(+)型基板1を用意する。例えば,n^(+)型基板1として,厚さが400μm程度のものを用意する。そして,このn^(+)型基板1の主表面1aに厚さ5μmのn^(-)型エピ層2をエピタキシャル成長させる。この場合,n^(-)型エピ層2は下地の基板1と同様の結晶で得られ,n型4Hまたは6Hまたは3C-SiC層となる。
【0037】
〔図2(b),(c)に示す工程〕
n^(-)型エピ層2の上にLTO膜20を配置したのち,LTO膜20をパターニングすることで,p^(-)型ベース領域3の形成予定位置を露出させる。これをマスクとして,p型不純物であるB,Al,若しくはGeをイオン注入する。このときのイオン注入条件は,例えば,温度を700℃,ドーズ量を1×10^(16)cm^(-2)とする。これにより,p^(-)型ベース領域3が形成される。その後,LTO膜20を除去する。
【0038】
〔図3(a)に示す工程〕
LTO膜20をHF処理にて除去した後,p^(-)型ベース領域3の表面にレジスト21を形成する。このとき,スピンコートまたは噴霧方式塗布により,レジスト21を形成すると,レジスト21の膜厚が均一となるため好ましい。
【0039】
レジスト21としては,有機物を蒸発させたときに残りの材料が炭化される有機系溶剤を用いることができ,ポジ系の有機系溶剤,例えば,i線フォトリソグラフィ用レジスト,Deep-UVリソグラフィ用レジスト,ArFリソグラフィ用レジストまたは電子線リソグラフィ用レジストを用いることができる。
【0040】
そして,図6に示す熱処理プロファイルに基づいて,レジスト21に含まれる有機物を蒸発させ,レジスト21を炭化させてカーボン層を形成すると共に,p^(-)型ベース領域3内に含まれた不純物を活性化させる。
【0041】
具体的には,まず,熱処理を行う装置内の雰囲気圧力を減圧雰囲気,例えば1×10^(-4)Pa以下の真空状態としたのち,装置内にAr(アルゴン)を導入することでAr雰囲気とする。続いて,80℃/min以下の昇温速度で200℃以上かつ850℃以下の温度まで加熱する。例えば80℃/minの昇温速度で10分間昇温させることで800℃まで昇温する。そして,この温度を例えば10分間保持する。
【0042】
この昇温プロファイルは,レジスト21を炭化させるためのプロファイルであり,不純物を活性化させるための加熱と比べて,熱処理温度が低く,かつ,昇温速度が遅くなっている。熱処理温度を200℃以上かつ850℃以下としているのは,不純物の活性化前に確実にレジスト21を炭化させるためであり,昇温速度を80℃/min以下としたのは,あまり速く昇温するとレジスト21に含まれる有機物が急激に沸騰してしまい,その沸騰により発生する気泡によってレジスト21が破れてしまう可能性があるためである。
【0043】
また,熱処理温度を850℃以下で一定時間保持しているため,レジスト21内の有機物をより確実に蒸発させることができ,レジスト21を炭化させたカーボン層を確実に形成することができる。そして,装置内をAr雰囲気としているため,装置内の残留酸素を少なくすることが可能となり,残留酸素によってカーボン層を形成している途中にレジスト21が燃えてしまうことを防止できる。
【0044】
さらに,レジスト21を炭化させることでカーボン層を形成しているため,p^(-)型ベース領域3の表面全域が覆われるようにカーボン層を形成することができる。
【0045】
そして,カーボン層が形成されてからは昇温速度を速くしても差し支えないため,160℃/min以上の昇温速度となるように昇温速度を速くし,不純物を活性化させるための熱処理温度まで早く加熱する。例えば,800℃から160℃/minで5分間昇温させることで1600℃まで加熱する。これにより,p^(-)型ベース領域3内に含まれた不純物を活性化させられる。
【0046】
このとき,カーボン層によってp^(-)型ベース領域3を覆った状態としているため,これらの表面からのSi抜けを防止することが可能となり,カーボンリッチ層が形成されることを防止することができる。
【0047】
なお,カーボン層は,下地(p^(-)型ベース領域3)となるSiCと密着性も良好であるため,下地から剥がれてしまうことはなく,確実に下地を覆った状態で不純物活性化のための熱処理工程を行うことが可能となる。」
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「SiC半導体装置の製造方法であって,SiCからなる半導体基板を用意し,この半導体基板の主表面にエピタキシャル成長させSiC層とし,SiC層に不純物をイオン注入し,これによりベース領域が形成され,ベース領域の表面にスピンコートによりレジストを形成し,熱処理してベース領域内に含まれた不純物を活性化させる。」
2 引用文献2の記載
(1)引用文献2
当審拒絶理由で引用された引用文献2には,図面とともに次の記載がある。
「レジスト塗膜中の金属不純物は,レジスト塗膜剥離後の異物の形成などを引き起こし,デバイスの不良原因となる。」(33頁左欄6-8行)
「異なる3種類のレジストA,B,Cおよびそれらを300mm Siウェハ上に成膜したレジスト塗膜中の金属不純物分析結果を図3及び表1に示した。Na,K,Feについては,レジスト中濃度に比べて塗膜中濃度が1桁以上高くなっている資料もあり,成膜時に混入したことが推測される結果となった。」(33頁右欄10-15行)
(2)引用技術2
引用文献2の表1には資料AレジストのNa濃度が1.2ng/g,資料BレジストのNa濃度が1.0ng/g,資料CレジストのNa濃度が1.4ng/gであることが記載されていると認められるから,前記(1)と総合して,引用文献2には次の発明(以下,「引用技術2」という。)が記載されていると認められる。
「ナトリウムの濃度が1.2ng/g,1.0ng/g又は1.4ng/gであるレジスト。」

第5 対比及び判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「SiCからなる半導体基板を用意し,この半導体基板の主表面にエピタキシャル成長させSiC層とし」は,「半導体基板の主表面」の「SiC層」が「半導体基板」と一体となって「炭化珪素基板」ということができ,これが「第1の主面と前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する」ことは自明であるから,本願発明の「第1の主面と前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する炭化珪素基板を準備する工程」に相当する。
イ 引用発明の「SiC層に不純物をイオン注入し,これによりベース領域が形成され」は,その「ベース領域」が不純物のイオン注入により形成されるから「ドーピング領域」ということができ,前記アを考慮すると,本願発明の「前記第1の主面へ不純物をドーピングすることにより,前記炭化珪素基板内にドーピング領域を形成する工程」に相当する。
ウ 引用発明の「ベース領域の表面にスピンコートによりレジストを形成し」は,その「レジスト」がカーボン層となって表面からのSi抜けを防止する(前記第4の1(1)【0040】及び【0046】)から「保護膜」ということができ,かつその「レジスト」は「有機物を蒸発させたときに残りの材料が炭化される有機系溶剤」で「フォトリソグラフィ用レジスト」である(前記第4の1(1)【0039】)から,本願発明の「前記第1の主面における前記ドーピング領域上に第1の保護膜を形成する工程」「前記第1の保護膜を形成する工程は」「前記第1の保護膜となるべき樹脂材料を前記第1の主面上に塗布する工程」を含み「前記樹脂材料は,フォトレジストである」に相当する。
エ 引用発明の「熱処理してベース領域内に含まれた不純物を活性化させる」は,本願発明の「前記第1の保護膜が形成された状態でアニールを行なうことにより,前記ドーピング領域に含まれる前記不純物を活性化する工程」に相当する。
オ 引用発明の「SiC半導体装置の製造方法」は,本願発明の「炭化珪素半導体装置の製造方法」に相当する。
カ すると,本願発明と引用発明とは,下記キの点で一致し,下記クの点で相違する。
キ 一致点
「第1の主面と前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面とを有する炭化珪素基板を準備する工程と,
前記第1の主面へ不純物をドーピングすることにより,前記炭化珪素基板内にドーピング領域を形成する工程と,
前記第1の主面における前記ドーピング領域上に第1の保護膜を形成する工程と,
前記第1の保護膜が形成された状態でアニールを行なうことにより,前記ドーピング領域に含まれる前記不純物を活性化する工程と,を備え,
前記第1の保護膜を形成する工程は,前記第1の保護膜となるべき樹脂材料を前記第1の主面上に塗布する工程を含み,
前記樹脂材料は,フォトレジストである,炭化珪素半導体装置の製造方法。」
ク 相違点
本願発明では「金属元素の濃度が5μg/kg以下である前記第1の保護膜となるべき樹脂材料」「前記金属元素は,ナトリウムであ」るのに対し,引用発明では「レジスト」のナトリウム濃度が不明である点。
(2)相違点についての判断
引用技術2にはナトリウムの濃度が5ng/g以下であるレジストが開示されており,「レジスト塗膜中の金属不純物は,デバイスの不良原因となる」(引用文献2の33頁左欄6-8行)のであるから,わざわざナトリウム濃度が高いレジストを選択する理由は無く,引用発明の「レジスト」として,引用技術2のレジストを採用することは,当業者が容易になしうることである。
なお,本願発明の効果は,「閾値電圧が安定した炭化珪素半導体装置を提供することができる」(本願明細書段落0009)というもので,それ以上に閾値電圧の安定性が数量的に開示されているわけではないから,上記効果は定性的なものにすぎず,一般的に「レジスト塗膜中の金属不純物は,デバイスの不良原因となる」ことが知られているから,引用発明の「半導体装置」においてそのレジスト中の金属不純物であるナトリウムが少なければ,デバイスの性能である閾値電圧の安定性も多かれ少なかれ改善することは,当業者が予測できることである。
(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

第6 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明については,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-27 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-20 
出願番号 特願2013-198555(P2013-198555)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 清  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 深沢 正志
河合 俊英
発明の名称 炭化珪素半導体装置の製造方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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