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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1351355 |
審判番号 | 不服2018-4751 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-06 |
確定日 | 2019-05-07 |
事件の表示 | 特願2015-55141「ストレッチャブルケーブルおよびストレッチャブル回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月6日出願公開、特開2016-178121〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月18日に出願したものであって、平成29年3月9日付けで手続補正がなされ、同年10月12日付け拒絶理由通知に対して同年12月14日付けで手続補正がなされが、平成30年1月5日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年4月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成30年4月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成30年4月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成30年4月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、 本件補正前に、 「【請求項1】 伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、導体径が5μm以上30μm以下であり、コイル外径が150μm以下であり、ピッチが10μm以上150μm以下であり、コイル長が1mm以下であるコイル形状の導電性フィラーを含む、ストレッチャブルケーブル。 【請求項2】 伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかであるデンドライト状の導電性フィラーを含む、ストレッチャブルケーブル。 【請求項3】 伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、導体径が5μm以上30μm以下であり、コイル外径が150μm以下であり、ピッチが10μm以上150μm以下であり、コイル長が1mm以下であるコイル形状の導電性フィラーと、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかであるデントライト状の導電性フィラーとを含む、ストレッチャブルケーブル。 【請求項4】 伸縮性を有するストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部の領域に貼着され、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の他方の表面に形成され、伸縮性を有するストレッチャブル配線とを含み、 前記ストレッチャブル配線は、請求項1?3のいずれか一つに記載の前記導電性組成物から構成されている、ストレッチャブル回路基板。 【請求項5】 前記非ストレッチャブル基板における前記ストレッチャブル基板が貼着されている表面とは反対側の表面に形成された導体層と、 前記ストレッチャブル基板および前記非ストレッチャブル基板を貫通し、前記ストレッチャブル配線と前記導体層とを接続する第1ビアとをさらに含む、請求項4に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項6】 前記導体層を覆う絶縁層と、 前記絶縁層の表面に設けられた電子部品と、 前記絶縁層を貫通し、前記導体層と前記電子部品とを電気的に接続する第2ビアとを含む、請求項5に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項7】 伸縮性を有するストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部に形成された、伸縮性を有するストレッチャブル配線と、 前記ストレッチャブル基板の前記一方の表面の一部の領域であって、前記ストレッチャブル配線の少なくとも一部を含む領域に貼着された、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板とを含み、 前記ストレッチャブル配線は、請求項1?3のいずれか一つに記載の前記導電性組成物から構成されている、ストレッチャブル回路基板。 【請求項8】 前記非ストレッチャブル基板における前記ストレッチャブル基板が貼着されている表面とは反対側の表面に形成された導体層と、 前記非ストレッチャブル基板を貫通し、前記ストレッチャブル配線と前記導体層とを接続する第1ビアとをさらに含む、請求項7に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項9】 前記導体層を覆う絶縁層と、 前記絶縁層の表面に設けられた電子部品と、 前記絶縁層を貫通し、前記導体層と前記電子部品とを電気的に接続する第2ビアとをさらに含む、請求項8に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項10】 前記非ストレッチャブル基板は、リジット基板またはフレキシブル基板である、請求項4?9のいずれか一項に記載のストレッチャブル回路基板。」 とあったところを、 本件補正により、 「【請求項1】 伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、デンドライト状の銅粉に銀がコーティングされた銀コート銅またはデンドライト状の銅粉に金がコーティングされた金コート銅からなり、かつ粒径が1μm以上20μm以下であるデンドライト状の導電性フィラーを含む、ストレッチャブルケーブル。 【請求項2】 伸縮性を有するストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部の領域に貼着され、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の他方の表面に形成され、伸縮性を有するストレッチャブル配線とを含み、 前記ストレッチャブル配線は、請求項1に記載の導電性組成物から構成されている、ストレッチャブル回路基板。 【請求項3】 前記非ストレッチャブル基板における前記ストレッチャブル基板が貼着されている表面とは反対側の表面に形成された導体層と、 前記ストレッチャブル基板および前記非ストレッチャブル基板を貫通し、前記ストレッチャブル配線と前記導体層とを接続する第1ビアとをさらに含む、請求項2に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項4】 前記導体層を覆う絶縁層と、 前記絶縁層の表面に設けられた電子部品と、 前記絶縁層を貫通し、前記導体層と前記電子部品とを電気的に接続する第2ビアとをさらに含む、請求項3に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項5】 伸縮性を有するストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部に形成された、伸縮性を有するストレッチャブル配線と、 前記ストレッチャブル基板の前記一方の表面の一部の領域であって、前記ストレッチャブル配線の一部を含む領域に貼着された、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板とを含み、 前記ストレッチャブル配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかであるデンドライト状の導電性フィラーを含み、 前記ストレッチャブル配線は、前記ストレッチャブル基板の表面の法線方向から見た平面視において、前記非ストレッチャブル基板から外方に張り出している部分を有している、ストレッチャブル回路基板。 【請求項6】 前記非ストレッチャブル基板における前記ストレッチャブル基板が貼着されている表面とは反対側の表面に形成された導体層と、 前記非ストレッチャブル基板を貫通し、前記ストレッチャブル配線と前記導体層とを接続する第1ビアとをさらに含む、請求項5に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項7】 前記導体層を覆う絶縁層と、 前記絶縁層の表面に設けられた電子部品と、 前記絶縁層を貫通し、前記導体層と前記電子部品とを電気的に接続する第2ビアとをさらに含む、請求項6に記載のストレッチャブル回路基板。 【請求項8】 前記非ストレッチャブル基板は、リジット基板またはフレキシブル基板である、請求項2?7のいずれか一項に記載のストレッチャブル回路基板。」 とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。 上記の補正は、 ・本件補正前の請求項1および請求項3を削除し、 ・導電性フィラーについて「デンドライト状の銅粉に銀がコーティングされた銀コート銅またはデンドライト状の銅粉に金がコーティングされた金コート銅」に限定し(本件補正の請求項1)、 ・ストレッチャブル配線の領域について「少なくとも一部」を「一部」と限定し、また、導電性フィラーについて「粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかであるデンドライト状の導電性フィラーを含み」と限定し、そして、ストレッチャブル配線について「前記ストレッチャブル基板の表面の法線方向から見た平面視において、前記非ストレッチャブル基板から外方に張り出している部分を有している」と限定し(本件補正の請求項5)、 ・請求項の削除に伴い、項番を整理(本件補正の請求項2ないし4、6ないし8) したものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、特許請求の範囲の減縮を目的とする本件補正の請求項5に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。 2.引用文献 (1)特開2012-33674号公報 原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-33674号公報(以下「引用文献1」という。)には、「柔軟配線体」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 ア.「【0013】 <柔軟配線体> 本発明の柔軟配線体は、エラストマー製の基材と、該基材に配置されエラストマーおよび金属フィラーを含む配線と、を備える。」 イ.「【0016】 基材に必要な伸縮性を考慮すると、エラストマーのヤング率は、0.1MPa以上30MPa以下であることが望ましい。また、引張り試験(JIS K6251)における切断時伸びは、100%以上であることが望ましい。」 ウ.「【0018】 配線のエラストマーも、基材のエラストマーと同様に、硫黄、硫黄化合物、有機過酸化物のいずれも含まないものであればよい。配線のエラストマーは、基材のエラストマーと同じでもよく、異なっていてもよい。・・・(中略)・・・ 【0020】 エラストマーに充填される金属フィラーの材質は、特に限定されない。導電性が高い金属として、例えば、銀、銅、ニッケル、金、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等が挙げられる。なかでも銀、銅、ニッケルは、電気抵抗が小さく、金やパラジウム等と比較して安価なため好適である。」 エ.「【0022】 金属フィラーの形状は、特に限定されない。球状、フレーク状(薄片状)、針状等、適宜選択すればよい。例えば、アスペクト比(短辺に対する長辺の比)の比較的大きなフィラーを用いると、フィラー同士の接触面積が大きくなる。このため、少量で高い導電性が実現できる。加えて、伸縮時の導電性変化を小さくすることができる。このような理由から、金属フィラーを、アスペクト比が5以上のフィラーを含んで構成することが望ましい。」 【0023】 金属フィラーの粒子径は、形状に応じて適宜選択すればよい。例えば、フレーク状のフィラーの場合には、平均粒子径が1μm以上15μm以下であることが望ましい。平均粒子径が1μm未満の場合には、隣接するフィラー同士の接触面積は小さい。このため、伸長時にフィラー同士の接触状態が変化すると、導電性変化が鋭敏になり、電気抵抗が増加しやすい。反対に15μmより大きくなると、配線の柔軟性が低下する。本明細書では、金属フィラーの平均粒子径として、日機装(株)製「マイクロトラック粒度分布測定装置UPA-EX150型」により測定された値を採用する。 【0024】 金属フィラーの充填量は、配線の導電性と柔軟性とを両立できるように、金属フィラーの種類、形状、粒子径に応じて決定すればよい。また、配線に必要な伸縮性を考慮すると、配線のヤング率は、1MPa以上300MPa以下であることが望ましい。また、引張り試験(同上)における切断時伸びは、5%以上、さらには20%以上であることが望ましい。」 ・上記アによれば、柔軟配線体は、エストラマー製の基材と、該基材に配置されエラストマーおよび金属フィラーを含む配線とを備えるものである。 ・上記イによれば、エストラマー製の基材は、伸縮性を有するものである。 ・上記ウによれば、配線のエストラマーも、基材のエストラマーと同じものでよいから、伸縮性を有するものである。また、配線のエストラマーに充填される金属フィラーの材質は、導電性の銀、銅である。 ・上記エによれば、金属フィラーの粒子径は、1μm以上15μm以下である。 上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「伸縮性を有するエストラマー製の基材と、 該基材に配置され、伸縮性を有するエラストマーに金属フィラーを充填してなる配線とを備え、 金属フィラーの材質は導電性の銀、銅であり、粒子径は1μm以上15μm以下である、 柔軟配線体。」 (2)国際公開第2006/112383号 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/112383号(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。 「[0029] 図2Aに示すように、異方導電性樹脂層6は樹脂バインダ4中に樹状晶の導電体粒子5を分散させた構成からなる。なお、導電体粒子5は、図2Bまたは図2Cに示すように、その表面に導電性で、かつ屈曲性を有する突起部を複数形成した構成を有している。図2Bは、核51の表面に樹枝状の突起部52を形成したものである。また、図2Cは、核53の表面に針状の突起部54を形成したものである。また、図2Cは、核53の表面に針状の突起部54を形成したものである。その形状は、例えば海中に生息するウニに似ている。しかしながら、これは形状を例示しただけであり、このような形状に限定されることはなく、核51の表面に樹脂状の突起部52を形成した構造であればよい。これらの導電体粒子5は、多数の突起部52、54を有し、かつこれらの突起部52、54がそれぞれの核51、53に比べて大きく突出していることが特徴である。このような導電体粒子5を用いると、上記したように第1の間隔91、第2の間隔92および第3の間隔93がそれぞれ異なっても、この突起部52、54が電極端子81、82、83および接続端子3に確実に接触して、接続抵抗が小さく、かつ安定な電気的導通を得ることができる。なお、間隔が小さい場合には、突起部52、54は変形して、その一部が電極端子81、82、83および接続端子3に食い込むようになる。このように食い込みが生じると、電気的な接続だけでなく、機械的な接続も行われることになり、より安定した接続を行うことができる。」 「[0035] 樹状晶の導電体粒子5としては、銀粒子やニッケル粒子を核としてその表面に樹状晶を成長させたもの、またメッキ法により突起部を形成したものが用いられる。また、核5a、5cとして、高分子やセラミックの粒子の表面に導電性の突起部を形成したものを用いてもよい。」 「[0037] 導電体粒子5の平均粒径は、特に限定するものではないが、1?20μmの範囲が好ましい。1μm未満では、導電体粒子5同士の凝集力が大きくなるため、樹脂バインダ4中での均一な分散が困難となることがある。一方、20μmを超えると,数10μm程度の狭ピッチの接続端子の場合に短絡を引き起こす可能性が大きくなるためである。しかし、接続端子のピッチが大きい場合には、20μm以上のものを用いてもよい。なお、導電体粒子5を樹脂バインダ4に配合する割合は、樹脂バインダ4を100としたとき、導電体粒子5を5?50の範囲とすることが望ましい。」 上記[0029]、[0035]、[0037]によれば、引用文献2には、「樹脂バインダ中に分散させる導電体粒子として樹枝状(デンドライト状)の銀粒子を用い、その平均粒径を1?20μmの範囲とする」技術事項が記載されている。 3.対比 そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「伸縮性を有するエストラマー製の基材」は、配線が形成される基板であるから、本願補正発明の「伸縮性を有するストレッチャブル基板」に相当する。 (2)引用発明1の「該基材に配置され、伸縮性を有するエラストマーに金属フィラーを充填してなる配線」は、引用文献1の図1を参照すると、伸縮性のある配線が基材の一部に配置されていると認められるから、本願補正発明の「前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部に形成された、伸縮性を有するストレッチャブル配線」および「前記ストレッチャブル配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており」に相当する。 (3)本願補正発明は「前記ストレッチャブル基板の前記一方の表面の一部の領域であって、前記ストレッチャブル配線の一部を含む領域に貼着された、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板とを含」む「ストレッチャブル回路基板」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 (4)引用発明1の「金属フィラーの材質は導電性の銀、銅であり、粒子径は1μm以上15μm以下である」ことは、本願補正発明の「前記導電性フィラーは、粒径が1μm20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかである」ことに含まれるものである。 但し、導電性フィラーの形状として、本願補正発明は「デンドライト状」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 (5)本願補正発明は「前記ストレッチャブル配線は、前記ストレッチャブル基板の表面の法線方向から見た平面視において、前記非ストレッチャブル基板から外方に張り出している部分を有している」ものであるに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 そうすると、本願補正発明と引用発明1とは、 「伸縮性を有するストレッチャブル基板と、 前記ストレッチャブル基板の一方の表面の一部に形成された、伸縮性を有するストレッチャブル配線とを含み、 前記ストレッチャブル配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかである導電性フィラーを含」む点で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明は「前記ストレッチャブル基板の前記一方の表面の一部の領域であって、前記ストレッチャブル配線の一部を含む領域に貼着された、伸縮性を有さない非ストレッチャブル基板とを含」む「ストレッチャブル回路基板」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 <相違点2> 導電性フィラーの形状として、本願補正発明は「デンドライト状」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 <相違点3> 本願補正発明は「前記ストレッチャブル配線は、前記ストレッチャブル基板の表面の法線方向から見た平面視において、前記非ストレッチャブル基板から外方に張り出している部分を有している」のに対し、引用発明1にはその旨の特定がされていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)<相違点1>および<相違点3>について 基板の一部の領域に別部材(素子や他基板)を貼着することは普通に行われているところ、基板と異なる材質等の別部材を貼着することは、例えば原査定の拒絶に引用された特開2005-217030号公報(フレキシブル部52にリジット部51を接合する点。段落【0057】ないし【0059】、図11を参照。以下「周知例1」という。)、特開2012-33597号公報(柔軟で伸縮可能な第一配線体10に既存の第二配線体20を接続する点。段落【0047】ないし【0062】、【0111】、図2等を参照。)に記載されているように、周知の技術事項である。 そうすると、引用発明1の伸縮性を有する基材に別部材を貼着することは適宜なし得るところ、周知の技術事項のように基板と異なる材質等の別部材(非ストレッチャブルなもの)を貼着して相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 そして、基板に別部材を貼着する場合は、基板の全領域に貼着するのではなく、基板の一部の領域に貼着するのが普通であるから、当然に別部材を貼着した領域外にも基板は存在することになり、相違点3は自明な事項といえる。 この点について、請求人は、審判請求書にて「引用文献5の図11には、審査官が主張されているように、フレキシブルな配線板(フレキシブル部52)の配線(フレキシブル部52に層77を介して形成された下側の銅配線部62)が形成されている側の面に、導体層(上側の銅配線部62)を備えるリジット基板(エポキシガラス繊維樹脂基板61)を積層し、配線板(フレキシブル部52)の配線(下側の銅配線部62)とリジット基板(エポキシガラス繊維樹脂基板61)の導体層(上側の銅配線部62)とをビア79を介して接続する構造が開示されている。しかしながら、フレキシブルな配線板(フレキシブル部52)の配線(下側の銅配線部62)は、平面視においてリジット基板(エポキシガラス繊維樹脂基板61)から外方に張り出している部分を有していない。したがって、引用文献5のフレキシブル部52を引用文献1の柔軟配線体1の基材10に置き換え、かつ引用文献5のフレキシブル部52の配線(下側の銅配線部62)を引用文献1の柔軟配線体1の配線基材11に置き換えることがたとえ容易であるとしても、請求項5に係る発明の前記特徴的構成Bを得ることはできない。」旨を主張している。なお、引用文献5とは上記の周知例1であり、特徴的構成Bとは相違点3に係る構成である。 しかしながら、請求人の主張している「フレキシブルな配線板の配線(フレキシブル部52に層77を介して形成された下側の銅配線部62)」は、周知例1の段落【0058】を参照すると、リジット部51の構成と明記されているので、この主張は失当である。図11を参照すると、リジット部51からはみ出したフレキシブル部52が認められる。なお、フレキシブルな配線板の配線は、周知例1の段落【0059】に記載されているとおり「銅配線部73」である。 よって、請求人の主張は採用できない。 (2)<相違点2>について 引用文献2には、樹脂バインダ中に分散させる導電体粒子として樹枝状(デンドライト状)の銀粒子を用い、その平均粒径を1?20μmの範囲とする技術事項が記載されている。 そうすると、引用文献1(引用発明1)の金属フィラーの形状は上記「第2[理由]2.(1)エ」によれば、適宜選択すれば良いのだから、引用発明1の金属フィラーとして引用文献2に記載された技術事項を採用して相違点2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。 なお、本願補正発明は、金属フィラーとして銅や銀を選択すれば足りるところ、デンドライト状の「銀コート銅」を用いることも、例えば特開2012-211256号公報(段落【0075】【0076】を参照。)、国際公開第2014/021037号(段落[0016]を参照。)に記載されているように、周知の技術事項であることを付記しておく。 したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項および周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1ないし2、および周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正の請求項5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成30年4月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成29年12月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項2に係る発明は次のとおりである(以下、「本願発明」という)。 「【請求項2】 伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかであるデンドライト状の導電性フィラーを含む、ストレッチャブルケーブル。」 2.引用文献1(引用発明1) 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、上記「第2[理由]2.(1)アないしエ」に記載したとおりであり、引用発明1は以下のとおりである。 「伸縮性を有するエストラマー製の基材と、 該基材に配置され、伸縮性を有するエラストマーに金属フィラーを充填してなる配線とを備え、 金属フィラーの材質は導電性の銀、銅であり、粒子径は1μm以上15μm以下である、 柔軟配線体。」 3.対比 そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。 (1)引用発明1の「伸縮性を有するエストラマー製の基材」は、シート状であるといえるから、本願発明の「伸縮性を有するシート状の基材」に相当する。 (2)引用発明1の「該基材に配置され、伸縮性を有するエラストマーに金属フィラーを充填してなる配線」は、引用文献1の図1を参照すると、伸縮性のある配線が基材の一部に配置されていると認められるから、本願発明の「前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成」に相当する。 (3)引用発明1の「金属フィラーの材質は導電性の銀、銅であり、粒子径は1μm以上15μm以下である」ことは、本願発明の「前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかである」ことに含まれるものである。 但し、導電性フィラーの形状として、本願発明は「デンドライト状」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 (5)引用発明1の「柔軟配線体」は、伸縮性を有する基材、エストラマーと導電性フィラーとからなる伸張性を有する配線を備えているので、本願発明の「ストレッチャブルケーブル」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、 「伸縮性を有するシート状の基材と、 前記基材の一方の表面に形成され、伸縮性を有する配線とを含み、 前記配線は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されており、 前記導電性フィラーは、粒径が1μm以上20μm以下であり、材質が銅、銀、銀コート銅および金コート銅のうちのいずれかである導電性フィラーを含む、ストレッチャブルケーブル。」 で一致し、 以下の点で相違する。 <相違点4> 導電性フィラーの形状として、本願発明は「デンドライト状」であるのに対し、引用発明1にはその旨の特定はされていない。 4.判断 上記<相違点4>は、「第2[理由]4.」で<相違点2>として検討したように、当業者が容易になし得た事項である。 したがって、本願発明は、引用発明1、および引用文献2に記載された技術事項から当業者が容易になし得たものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1および2から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-02-18 |
結審通知日 | 2019-02-21 |
審決日 | 2019-03-05 |
出願番号 | 特願2015-55141(P2015-55141) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 大介 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
東 昌秋 酒井 朋広 |
発明の名称 | ストレッチャブルケーブルおよびストレッチャブル回路基板 |
代理人 | 特許業務法人あい特許事務所 |