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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1351361
審判番号 不服2018-9044  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-02 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2013-249990「食品包装容器および食品包装体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月11日出願公開、特開2015-107802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月3日に出願され、平成29年9月14日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日に意見書の提出とともに手続補正がされ、平成30年3月27日付けで拒絶査定がされ(発送日は、同年4月3日である。)、それに対して、同年7月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成30年7月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年7月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「食品を包装するのに用いられる食品包装用シートを袋状に成形した食品包装容器であって、
前記食品包装用シートは、樹脂材料で構成された基材層を有し、
前記基材層には、防カビ性を有する精油成分としてコリアンダー、シソ、バジル、レモンバームの抽出物よりなる群から選択される1種または2種以上が配合されており、
前記食品包装用シートには、開口部が少なくとも1個設けられており、
食品包装袋に対して1/2の容積の青果物を食品包装袋で包装した状態における、前記開口部の長さLと前記開口部の最大幅Wとの比L/Wが、0.2以上2500以下であることを特徴とする食品包装容器。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「食品を包装するのに用いられる食品包装用シートを袋状に成形した食品包装容器であって、
前記食品包装用シートは、樹脂材料で構成された基材層を有し、
前記基材層には、防カビ性を有する精油成分が配合されており、
前記食品包装用シートには、開口部が少なくとも1個設けられており、
食品包装袋に対して1/2の容積の青果物を食品包装袋で包装した状態における、前記開口部の長さLと前記開口部の最大幅Wとの比L/Wが、0.2以上2500以下であることを特徴とする食品包装容器。」
2 補正の適否
(1)本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「精油成分」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2)そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(3)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(4)引用文献の記載事項等
ア 引用文献1
(ア)原審の拒絶理由通知において引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2009/0232948号公報(平成21年9月17日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当審訳を併記する。
a「ABSTRACT
The present invention relates to a novel, active packaging that inhibits food pathogens either by means of the generation of an active atmosphere or by means of direct contact, which comprises a support made from paper, cardboard, cork, aluminum or wood and an active coating therefore. This coating consists of a formulation of paraffin and natural plant extracts.」
「要約
本発明は、アクティブな雰囲気の生成によって、または直接接触によって、食品の病原体を抑制する新規な、紙、ボール紙、コルク、アルミニウムまたは木材から作られた支持体及びアクティブなコーティングを含む、アクティブ包装に関するものである。このコーティングは、パラフィンおよび天然植物抽出物の組成物からなる。」
b DESCRIPTION OF THE INVENTION (発明の詳細な説明の項)
(b)段落[0015]
「Paraffin by itself is not only used as an anti-humidity barrier in food packaging, but also as a carrier of pathogen inhibitor agents to protect foods against deterioration by fungi, or bacteria.」
「パラフィンは、食品包装において、防湿バリアとしてだけでなく、真菌、または細菌によって食物を劣化に対して保護するための病原体阻害剤のキャリヤーとして使用される。」
(c)段落[0019]
「Paraffins are used to form a moisture-repellent barrier and protect foods against humidity. This moisture-repellent barrier is prepared by depositing a thin paraffin layer on the surface of the support material that is to be in contact with the food, taking advantage of their highly hydrophobic properties. In addition to their great versatility, ease of handling and low price, paraffins are not very reactive, for which reason they do not alter the foods' qualities. These compounds are specially indicated for the coating of paper in packagings and of cardboard or wood boxes designed for the transport of fruits, vegetables, meat, fish, dairy products and foods in general, whether moist, greasy or dry. They are also suitable for coating any other type of support that will be in contact with these types of foods.」
「パラフィンは、防湿バリアを形成し食物を湿度から保護するために使用される。この湿分反発性バリヤーは、食品と接触するようにされた支持体材料の表面上に薄いパラフィン層を堆積させ、それらの高疎水性の特性を利用することにより調製される。それらの大きい融通性、取り扱いの容易さおよび低価格に加えて、パラフィン類は非常に高い反応性を有するというわけではなく、この理由のため、それらは食物の性質を変化させない。これらの化合物は、一般に果物、野菜、肉、魚、乳製品および食品(これらが、乾燥していることも、油じみていることも、湿っていることもある。)の輸送用に設計された梱包紙、ボール紙又は木材のコーティング用に用いられる。これらはまた、これらの種類の食品と接触することになる他のタイプの支持体をコーティングするのに適している。」
(d)段落[0042]
「The main components of essential oils are aliphatic and aromatic hydrocarbons, alcohols, aldehydes, esters and ketones. From the standpoint of active paraffin, the most important, albeit minority, components are the biological derivatives of mevalonic acid, classified as terpenes. Terpene derivatives (C10 monoterpenes and C15 sesquiterpenes) may be the main agents responsible for the anti-microbial properties of essential oils.」
「精油の主要成分は脂肪族および芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、エステル類及びケトン類である。活性のパラフィン、最も重要ではあるが、希少な成分は、メバロン酸の生物学的誘導体であり、テルペン類として分類されている。テルペン誘導体(C10モノテルペン、C15セスキテルペン)は、精油の抗微生物特性の原因となる主な薬剤であってもよい。」
(e)段落[0043]
「As active agents, extracts of natural cinnamon, clove, oregano or thyme essences have been used. In the assays performed with active paraffin, the best results were obtained with essential oils of natural cinnamon (Cinnamon=Cinnamon zeylanicum CAS No.: 80591-6), called Cinnamon I, and additived cinnamon, which is referred to herein as Cinnamon II. The essential oil of Cinnamon II is a derivative of the essential oil of cinnamon fortified with the cinnamaldehyde terpene derivative, which is presumed to be one of the main agents responsible for the anti-microbial action of cinnamon essence, and with other components that act as fixation agents for volatile compounds. In addition to those mentioned, other components of the essential oils of cinnamon are, for example, alpha-pinene, estragol or beta-caryophyllene.」
「アクティブ成分として、シナモン、クローブ、オレガノ又はタイムエッセンスの抽出物が使用されてきた。パラフィンを用いて実施したアッセイにおいて最高の結果は、シナモンIと呼ばれる天然シナモンの精油(Cinnamon=シナモンセイロンCAS No.80591-6)、及び、シナモンIIと呼ばれる添加されたシナモンの精油を使用して得られた。シナモンIIの精油とは、桂皮アルデヒド、テルペン誘導体で強化されたシナモンの精油の誘導体であり、シナモンエッセンスの抗微生物作用に加えて、揮発性化合物のための固定剤として作用する他の成分により抗微生物作用が向上すると推定される。前述のものに加えて、シナモンの精油の他の成分は、例えば、α-ピネン、エストラゴール又はベータ-カリオフィレンである。」
(f)段落[0045]
「In the examples of this invention, it has been shown that active paraffin using the formulation called Cinnamon (II) has a clear anti-microbial and antifungal effect, with total inhibition in mildews and yeasts at a concentration equal to or greater than 2% by weight of essence formulated with respect to paraffin.」
「本発明の例では、シナモン(II)と称される製剤を用いた活性のパラフィンは、明確な抗微生物及び抗真菌効果を有することが示され、パラフィンに対する処方の2重量%に等しいか又はより大きい濃度で、カビおよび酵母を全て阻害した。」
(g)段落[0056]
「The support of the active packaging disclosed in this invention may be, without it being limited thereto, paper, cardboard, wood, cork or aluminum, and the active coating is added to the support in a preferred amount of between 0.5 and 30 g/m^(2), more preferably, between 1 and 15 g/m^(2).」
「本発明で開示された活性包装の支持体は、これに限定されないが、紙、ボール紙、木材、コルク、またはアルミニウムであってよく、活性コーティングを支持体に添加する量は好ましくは、0.5?30g/m^(2)の間、より好ましくは、1?15g/m^(2)の間である。」
c Example6(実施例6)の項、段落[0119]?[0121]
「Results of the Assay of the Active Packaging for the Preservation of Strawberries
In this example, different varieties of strawberries were used as the perishable foods.
The time results of the strawberries in contact with a control packaging with paraffined paper WITHOUT incorporated essence were compared to those using paraffined paper with cinnamon II essence incorporated at 4% by weight.
6 days after the beginning of the assay, it was observed that the strawberries in the packaging with 4% cinnamon II do not exhibit appreciable alterations even in the initial stage, as shown by the absence of juice exudation. On the other hand, the control packaging shows, together with exudation, proliferation of mildew.」
「イチゴの保存用のアクティブ包装のアッセイの結果。
この実施例では、生鮮食品として異なる品種のイチゴを使用した。
パラフィン紙に精油が含まれないコントロールの包装と、シナモンII精油4重量%で含まれたパラフィン紙を用いたものと比較した。
アッセイの開始後6日目に、4%のシナモンIIで包装したイチゴは、認識できる変化を示さす、初期段階と同様であることが観察されたが、果汁の染み出しも無かった。一方、コントロールの包装はカビの増殖、染み出しが両方観察された。」
d 段落[0012]
「FIG. 7 . Image showing partial results of the assay of the anti-microbial paraffin packaging with strawberries. The image shows the strawberries 6 days after the beginning of the assay. The left of the image shows the packaging with 4% cinnamon II, the centre shows the control packaging, that is, in the paraffined paper WITHOUT cinnamon II essence, and the right of the image shows the packaging with 2% cinnamon II. Alterations (appearance of mildews, contraction of the fruit piece or exudation of juices) are observed in the strawberries on the control packaging and those on the packaging with 2% cinnamon II. In the packaging with 4% active principle (cinnamon II), one can observe the absence of juice exudation, which is characteristic of the rotting of strawberries, the absence of contraction in the fruit piece and non-proliferation of mildews.」
「図7はイチゴで抗菌パラフィン包装の分析の部分的結果を示す画像である。画像は、イチゴアッセイの開始の6日後を示している。画像の左側は4%のシナモンIIを有する包装を示し、中央の画像はコントロールの包装(精油なしのパラフィン紙)を示し、画像の右側は2%のシナモンIIを有する包装を示す。変化(かびの出現、果実片の収縮または果汁の染み出し)が観察されたのは、コントロールの包装と2%のシナモンIIを有する包装であった。4%有効成分(シナモンII)の包装では、腐敗を示す果汁の染み出しは観察されず、果物片における収縮やカビの増殖も観察されなかった。」
e Figure 7(第7図)



(イ)以上から、引用文献1の特に実施例6から、「シナモンIIが4重量%含まれたパラフィンによって、1?15g/m^(2)の量でコーティングされた紙を用いたイチゴ用の包装容器。」の発明(以下「引用発明」という。)が把握できる。
イ 引用文献2
(ア)原審の拒絶理由通知において引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平4-325069号公報(平成4年11月13日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
a「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、包装フィルム,食品の鮮度保持用包装材料及び鮮度保持方法に関し、詳しくはヒノキチオール等を含有する合成樹脂フィルムの外層側に、少なくとも一層のバリア層を有する包装フィルム、及びこれを用いた食品の鮮度保持用包装材料並びに鮮度保持方法に関するものであり、種々の食品の包装等に広く利用できる。」
b「【0002】
・・・
又、微生物の増殖を抑え、且つ安全な物質を適当な物品例えば種々の包装材料や貼着剤に吸着させ、これを食品表面に接触させるか、或はそのような包装材料で食品を被覆または包装する方法が提案され、前記物質としてヒノキチオール、ヒノキチオールの塩及びそれらの包接化合物が良好な結果をもたらすことが開示されている(例えば特開昭61-108359号公報)。」
c「【0011】
ヒノキチオール、その塩及びそれらを含むサイクロデキストリン包接化合物は、微生物の発生及び増殖を抑制するため、これらを含有する合成樹脂フィルムは食品の鮮度保持に有効である。なお、このフィルムの鮮度保持作用機構については、未だ、完全には解明されていないが、その一因として、内層側フィルムの特性によって数時間のオーダーから120日以上にわたる期間での徐放効果が挙げられる。・・・本発明においてはヒノキチオール類がフィルム内に均一に分散されているため、使用目的によって樹脂または樹脂組成を変えることにより徐放制御が可能である。・・・」
d「【0012】
本発明の包装フィルムは、包装内部に効率良くかつ制御された状態でヒノキチオール等を揮散させることが可能であり、この効果によって呼吸状態の制御が鮮度保持の本質的な要因とならない、例えば加工食品の様な食品の鮮度保持に有効に作用する。したがって、本発明は、さらに上記のような包装フィルムからなる鮮度保持用包装材料を提供するものである。」
e「【0013】
本発明の包装材料は、様々な形態で食品に適用する事ができ、その使用形態には特に限定はない。例えばシート状、袋状として、またダンボール箱の内張りなどとして使用することができる。例えば、袋状で使用する場合には、チューブ状のフィルムの底部をシールしたり、シート状フィルムを三方シールしたりした袋に食品を詰めたり、或は背シール及び底シールをした袋に食品を入れて、入口をシールすることにより食品の鮮度を長期間保持することができる。ここで「シール」とは、ヒートシール(例えば、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどを包含した広義のヒートシールをいう)、接着(フィルム以外の成分を用いて接着する方法で粘着、ホットメルトなどを包含した広義の接着をいう)、テープによる粘着、ゴムでとめる等の方法などをいい、要はフィルムを空気のもれが少ない状態叉は空気のもれが全くない状態に接合することができれば、いかなる方法によってもよい。」
f「【0015】
・・・
実施例1
内層側樹脂としてヒノキチオールを0.54重量パーセントを含有する直鎖状低密度ポリエチレンL-LDPE(密度0.924g/cm^(3)、MFR=0.8 )を、口径45mmA押出機を用いて押出温度 190℃、中間層樹脂として接着性樹脂(無水マレイン酸変性L-LDPE)を、口径45mmB押出機を用いて押出温度185℃、外層樹脂としてナイロン樹脂(東レ製アミラン CM1021-XFS)を口径45mmC押出機を用いて押出温度 240℃、ダイス温度 250℃の3種3層水冷多層インフレーション成形法により、引き取り速度18m/minの条件で折り幅230 mm合計厚み60μm (層構成は内層20μm /中間層20μm /外層20μm )、の水冷インフレーション多層フィルムを成膜した。ヒノキチオール含有量は上記フィルム10センチ平方メートルを採取して50℃クロロホルム30分間還流にて抽出し、紫外吸収法にて測定したところ98mg/平方メートルであった。上記フィルムの一方をヒートシールした後、340mmの長さに切断し袋内に1.5リットル空気を封入した。ヒノキチオールの揮散速度およびその量を測定した。測定条件は温度23℃,湿度60%とした。その結果、30分後にはフィルム袋中にヒノキチオールガス 0.74ppmの揮散が認められた。また、上記フィルムのバリア性は酸素透過性が72ml/m^(2)・24hr・atm・23℃であった。
次に、上記フィルムの一方をヒートシールした後、200mmの長さに切断し、蒸しかまぼこ25gを入れて密封シールし、含気包装した。15℃で保存テストを行った。その結果、8日を経過しても、カビの発生、腐敗、褐変はいずれもなく、表面の萎縮もなくみずみずしく、外観良好であり商品価値は十分だった。8日後の一般細菌数は低温菌の場合(21℃培養)220,000 個/gで、耐熱性菌(35℃培養)では290,000 個/gであった。」
(イ)以上から、引用文献2には、「微生物の増殖を抑え、且つ安全な物質であるヒノキチオールとポリエチレンとを混合し、その混合物を押出成形したフィルムを用いた食品用包装容器」の発明が記載されている。
ウ 引用文献3
(ア)原審の拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2010-100306号公報(平成22年5月6日出願公開。以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a「【0028】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のバナナの包装体の1実施形態を示す正面図、図2は図1のA-A線断面図で、図中6は袋体である。
【0029】
袋体6は、図6、図7に示すように、プラスチックフィルムの真空成形ロールを用いた成形により多数のキャップを形成した凹凸状キャップフィルム(凹凸シート)8と、もう1枚の平坦状プラスチックフィルム(平坦シート)をバックフィルム9とから構成される2層構造の気泡シート7により成形した。」
b「【0030】
キャップフィルム8は多数の円柱状突起部であるキャップ11がエンボス加工されており、気泡シート7では、バックフィルム9がキャップフィルム8のキャップ11の底部に貼り合わされ、キャップ11内に気体が密閉された多数の気泡部12が形成されている。
【0031】
キャップフィルム8およびバックフィルム9は、一例として、ポリオレフィン系樹脂が使用される。原材料であるポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂であれば特に限定はなく、オレフィン成分を50モル%以上含有する樹脂であり、例えば分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、プロピレン-エチレン-ブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる、好ましくは分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂である。これらのポリオレフィン系樹脂は、一種単独又は二種以上の混合物としても使用される。」
c「【0034】
袋体6は、底部をバナナの湾曲に見合うように湾曲底14にした袋体であり、パンチ穴による通気孔15を被包装体であるバナナの長さに対応して適宜間隔で並べた。図示の例では4列、計17個を設けている。」
d「【0045】
他の実施形態として、気泡シート7に抗菌性を与えることも可能である。気泡シート7の表面に抗菌性の薬剤を塗布することも可能であるが、塗布された薬剤が揮発したり、他物との接触で剥落したりして、抗菌性能が意外に早く失われるおそれがあるので、抗菌剤を混練したプラスチックフィルムで気泡シート7を製造するようにした。
【0046】
気泡シート7を構成する上記のプラスチックフィルム、キャップフィルム8、バックフィルム9、ライナーフィルム13の少なくとも1枚に、銀系抗菌剤を添加した。気泡シート7の素材とするプラスチックは、常用の気泡シートの素材と同様に、ポリオレフィンとくにポリエチレンでよい。
【0047】
プラスチックに添加する銀系の抗菌剤の代表である銀-リン酸ジルコニウム抗菌剤は、白色の粉末として提供される抗菌剤であって、平均粒子径にして2?3μm、所望であれば1.5μm以下の微細粒子が入手できる。 そのため、少量で有効であることとあいまって、有効量をプラスチックに混合しても、その加工性に実質上の影響を与えないで済み、既知の技術に従ってフィルムの製造や、その熱融着を行なうことができる。もちろん、プラスチックに色や匂いを与えることもない。
【0048】
銀系抗菌剤の使用量は、選択した抗菌剤の種類と要求される抗菌性程度によっても異なるが、銀-リン酸ジルコニウム抗菌剤の場合、プラスチックフィルムに対して、0.02?0.5重量%の範囲から選ぶ。
【0049】
プラスチックへの抗菌剤の添加には、いわゆるマスターバッチを使用する。代表的には重量で約10%の銀系抗菌剤を含有するペレットをあらかじめ用意し、これを気泡シート製造のプラスチック材料に必要量混合したものを、気泡シート製造装置に供給する。」
e 【図1】



(イ)記載事項3-1
上記から、引用文献3から、「パンチ穴による通気孔15を設けたバナナ用包装体」という事項が読み取れる。
(ウ)記載事項3-2
上記(ア)dから、「抗菌剤を混合したプラスチックフィルムで製造したシートを用いて成形したバナナ用包装体」という事項が読み取れる。
エ 本願出願前の技術常識の存在を示す文献
(ア)引用文献4
本願出願前の技術常識の存在を示す文献として当審が引用する、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2002-97302号公報(平成14年4月2日出願公開。以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
段落【0011】
「本発明には、上記薬剤以外に、所望される水性ゲルの用途目的に従い、香料、防黴剤、抗菌剤、酸化防止剤、色素、殺虫剤、殺ダニ剤、防虫剤、昆虫成長阻害剤、忌避剤、消臭剤等の各種添加剤及び薬剤を含有することができる。以下、代表的な例を挙げる。
香料としては、・・・
抗菌剤としては、・・・等の有機系抗菌剤;シソ油(ペリラアルデヒド、リモネン)カシア油(シンナムアルデヒド)、クローブ油(オイゲノール)、シトロネラ油(ゲラニオール、シトロネラール)、ゲラニウム油(ゲラニオール、シトロネラール)、レモン油(リモネン)、レモングラス油(シトラール)、ネロリ油(リナロール)、シダーウッド油(ツヨプセン、セドロール、セドレン)、シダーリーフ油(ツジョン)、ヒバ油(ツヨプセン)、ヒノキ材油(δ-カジネン、α-カジノール、α-ピネン)、ヒノキリーフ油(ボルネオール、β-エレモール、サビネン、リモネン)、シナモン油(シンナムアルデヒド、オイゲノール)、アニス油(アネトール、アニスアルデヒド)、ガーリック油(ジアリルジスルフィド、アリルジスルフィド)、ヒノキ油、ユーカリオイル、柑橘種子抽出物、ショウガ抽出物(ジンゲオール、ショウガオール)、茶抽出物(カテキン)、孟宗竹抽出物、リゾチーム、プロポリス、カラシ・ワサビ抽出物、ヒノキチオール、ヨモギエキス、ティーツリーオイル、甘草抽出物、リモネン、オレガノ油、アリルカラシ油、ペパーミント油、樟脳油、テレピン油、スターアニス油等の植物抽出精油又は天然物由来抗菌剤(主成分)等が挙げられる。ここでいう抗菌剤とは、広義に、防菌防黴剤を意味するものであり、上記例に限定されるものではない。」
(イ)引用文献5
本願出願前の技術常識の存在を示す文献として当審が引用する、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2008-154729号公報(平成20年7月10日出願公開。以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
a「【請求項4】
上記殺菌フィルタ(40)は、金属イオンとして銀,銅,亜鉛のうちの1種又は2種以上を有する第1フィルタ(41)と、カテキン,ヒノキチオール,キトサン,プロポリス,プロタミン,リゾチーム,甘草,ヨモギエキス,シソ等の抗菌性を有する天然物の抗菌エキスを添着した第2フィルタ(42)とを、備えている請求項1,2又は3記載の保健用殺菌空気清浄機。」
b「【0027】
さらに、本発明の殺菌空気清浄機は、被清浄空気の流れ方向における主装置35の下流側に設けられる機能付加部材(清浄化アップ兼心身健康増進部材)36として、金属イオンと天然の抗菌剤とを別個に分けて添着した殺菌フィルタ40を備えている。殺菌フィルタ40は、適当な濾材、例えば、ゼオライト,アパタイト,石膏ボード,セルロースや珪素等の加工品に殺菌剤を常法に従って添着する事によって形成されたものであり、主装置35の殺菌空間部3をくぐり逃れた病原体を捕捉し、撲滅・殺傷せしめる。具体的には、殺菌フィルタ40は、金属イオンとして銀,銅,亜鉛のうちの1種又は2種以上を有する第1フィルタ41と、カテキン,ヒノキチオール,キトサン,プロポリス,プロタミン,リゾチーム,甘草,ヨモギエキス,シソ等の抗菌性を有する天然物の抗菌エキスを添着した第2フィルタ42とを、備えている。」
c「【0028】
第1フィルタ41に添着される抗菌剤としての金属イオンに、上述のように、銀,銅,亜鉛等が推奨される理由は、これらは比較的安全性が高く、しかも、微生物のDNAと反応し、組織にダメージを与えるオリゴジミナール反応を起こすことである。それ故、細菌が生存する為に重要な酵素や蛋白質に異変を起こし、また、細胞膜も破壊する。また、第2フィルタに添着される天然物として、上述のように、カテキン,ヒノキチオール,キトサン,プロポリス,プロタミン,ポリリジン,リゾチーム,甘草等が推奨される。各フィルタ41,42はジグザグ状に折り畳んで使用すればより効果的に作用する。さらに、鋭意検討の結果、上記の金属のうちの1?3種を担持した第1フィルタ41と天然物を添着せしめた第2フィルタ42とをセットにしたフィルタ40が病原体の殺傷と不活性化に多大に寄与し得る事が明らかになった。
その1例として、例えばゼオライトに銀イオンを担持した第1フィルタ41と、HEPAフィルタにカテキンとリゾチームを添着コーティングした第2フィルタ42とを積層して一体化した殺菌フィルタ40がある。なお、図示省略するが、殺菌フィルタ40は、2種のフィルタ41,42を一体化して形成したものであってもよい。
上記殺菌フィルタ40として利用し得る代表的な天然物の一覧表を表1に示し、それ等と金属イオンとを組み合わせることによる相乗作用の概念表を表2に示す。」
d「【0029】【表1】


e「【0030】【表2】


(ウ)引用文献4、5に記載された技術的事項から、シソ由来の成分は高い抗微生物効果、抗かび効果を有するという技術常識が存在したと言える。
(5)対比及び判断
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本件補正発明と引用発明とは、「食品を包装するのに用いられる食品包装用シートを袋状に成形した食品包装容器」である点で一致する。
(イ)相違点1
本件補正発明は「樹脂材料で構成された基材層」を有し、基材層に精油成分を配合するのに対して、引用発明においては、基材層が紙であり、精油成分を配合したパラフィンがコーティングされている点で相違する。
(ウ)相違点2
本件補正発明は「防カビ性を有する精油成分としてコリアンダー、シソ、バジル、レモンバームの抽出物よりなる群から選択される1種または2種以上が配合」されているのに対して、引用発明は、「シナモンII」が配合されている点。
(エ)相違点3
本件補正発明は「食品包装用シートには、開口部が少なくとも1個設けられており、食品包装袋に対して1/2の容積の青果物を食品包装袋で包装した状態における、前記開口部の長さLと前記開口部の最大幅Wとの比L/Wが、0.2以上2500以下である」のに対して、引用発明においては開口部を有するか否か明らかでない点。
イ 相違点1についての検討
前記(4)イ(ア)fに摘記した引用文献2の抗菌作用を有するヒノキチオール(ヒノキの精油成分)を配合した直鎖状低密度ポリエチレンは、その厚みから基材層であるといえる。また、前記(4)ウ(ウ)における記載事項3-2からも、基材層に抗菌成分を配合することは、本願出願前周知の事項といえる。そして、紙にパラフィンをコーティングした紙も、樹脂材料で構成されたフィルムも包装用の材料として、本願出願前周知のものであって、これらを置き換えることに当業者の創意工夫が必要ということはできないから、相違点1に係る本件補正発明の構成は、引用文献2に記載された事項並びに周知の事項から当業者が容易に想到し得ることである。
ウ 相違点2についての検討
前記(4)エに摘記したように、シソ精油には、ペリルアルデヒドやリモネンが含まれ、微生物に対して効果があることは、本願出願前技術常識であったといえる。引用発明における「シナモンII」に代えて、植物由来として共通し、同様の効果を発揮するものとして知られているシソの抽出物を用いることには、上記技術常識から、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 相違点3についての検討
前記(4)ウ(ア)cに摘記したパンチ穴は、円形であるから、内容物を入れない状態においては、「開口部の長さLと前記開口部の最大幅Wとの比L/W」は、1である。そして、「食品包装袋に対して1/2の容積の青果物を食品包装袋で包装した状態」においては、袋の変形によって、L/Wは多少変化する可能性はあるが、「0.2以上2500以下」の範囲内にあることは十分推認できる。そうすると、引用発明に対して、果実用包装体という点で軌を一にする上記(4)ウ(イ)における記載事項3-1を適用することにより、相違点3に係る本件補正発明の構成は、当業者が容易に想到し得ることである。
オ 本件補正発明による作用効果について
本件補正発明の奏する作用効果は、当業者が予測し得る範囲を超えたものということはできない。特に、本願明細書の段落【0138】【表1】において、実施例1Aと実施例15A(コリアンダー)、実施例2Aと実施例16A(シソ)、実施例4Aと実施例21A(バジル)、実施例4Aと実施例20A(レモンバーム)それぞれの、同段落【0145】【表2】における防カビ性を対比しても、ほぼ変化がないから、精油成分を配合することと、特定形状の開口部を設けることに相乗効果があるということはできない。
カ よって、本件補正発明は、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び周知技術及び引用文献4、5により示される技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明並びに引用文献2に記載された事項及び引用文献3に示された周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された前記引用文献1及び2の記載事項並びに周知の事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、精油成分に係る具体的な限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)?(5)に記載したとおり、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-27 
結審通知日 2019-03-05 
審決日 2019-03-18 
出願番号 特願2013-249990(P2013-249990)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 竹下 晋司
門前 浩一
発明の名称 食品包装容器および食品包装体  
代理人 増田 達哉  
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