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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
管理番号 1351416
異議申立番号 異議2018-700087  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-31 
確定日 2019-04-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6178027号発明「部分駆動型光源装置及びそれを用いた画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6178027号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。 特許第6178027号の請求項1、2、4?17に係る特許を維持する。 特許第6178027号の請求項3に係る特許についての特許異議申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6178027号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成29年7月21日に特許権の設定登録がされ、同年8月9日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年1月31日に特許異議申立人三嶋眞弘(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1?17に対し特許異議の申立てがされ、同年4月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月29日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月10日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年8月9日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年9月18日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年11月26日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年12月14日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、平成31年1月16日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年11月26日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?17について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
なお、平成30年6月29日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜と、
前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する拡散板と、
前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と、を有することを特徴とする部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜と、
前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する拡散板と、
前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と、を有し、
前記蛍光体シートと波長選択性反射膜とが隣接して配置される、
ことを特徴とする部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1?5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1?12のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「請求項1、2、4?12のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項1?7のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」とあるのを、
「請求項1、2、4?7のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17に
「請求項1?16のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。」とあるのを、
「請求項1、2、4?16のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。」に訂正する。

本件訂正は、一群の請求項〔1?17〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
ア 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「励起光源」、「蛍光体シート」及び「波長選択性反射膜」を備える「部分駆動型光源装置」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに特許請求の範囲及び図面を併せて「本件明細書等」という。)の「なお、第1実施形態における発光素子10(青色LED10Bの場合を含む)は、・・・第三の形態であるリモートフォスファー方式に用いるものである・・・。また、・・・図1に既述のように、励起光源をシャーシ内部に設置することが一般的である。」(【0041】、下線は当審で付した。以下同様。)、「(実験例1)<発明例1> 図7(A)、(B)に模式的に示すようなバックライトを作製した。具体的には以下のとおりである。シャーシ51の側壁をスペーサーとし」(【0063】)、「青色LED10Bの設置面に対し光学部材を平行に設置するため、シャーシ51の側壁をスペーサーとした。」(【0067】)、「前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが隣接して配置される、請求項1または2に記載の部分駆動型光源装置。」(【請求項3】)及び図1、7等の記載を根拠に、「部分駆動型光源装置」が「前記複数の発光素子を格納するシャーシと、を有し」て構成されること、「前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある」こと、及び「前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが隣接して配置される」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、上記「部分駆動型光源装置」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当するものではない。
また、訂正事項1は、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当しない。
また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3?8について
訂正事項3?8は、訂正事項2によって請求項3が削除されたことに伴い、訂正前の請求項5、6、8、13、16及び17における引用請求項において請求項3を引用しないようにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当しない。
また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、2、4?17に係る発明(以下「本件発明1、2、4?17」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4?17に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、請求項3は本件訂正により削除された。

「【請求項1】
複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜と、
前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する拡散板と、
前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と、を有し、
前記蛍光体シートと波長選択性反射膜とが隣接して配置される、
ことを特徴とする部分駆動型光源装置。
【請求項2】
前記拡散板が、前記波長選択性反射膜及び前記蛍光体シートの支持体の少なくとも一部を兼ねる、請求項1に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項4】
前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが一体化している、請求項1または2に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項5】
前記励起光源における前記複数の発光素子が格子状に配列する、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項6】
前記発光素子が青色LEDである、請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項7】
前記波長選択性反射膜は、前記青色LEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色から赤色にかけての波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項6に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項8】
前記発光素子がマゼンタLEDである、請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項9】
前記マゼンタLEDは、青色LEDと、該青色LEDのチップ上方面に配置された赤色蛍光体から構成される、請求項8に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項10】
前記赤色蛍光体はフッ化物赤色発光蛍光体である、請求項9に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項11】
前記フッ化物赤色発光蛍光体は、K_(2)SiF_(6)である、請求項10に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項12】
前記波長選択性反射膜は、前記マゼンタLEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色の波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項8?11のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項13】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、硫化物系蛍光体である、請求項1、2、4?12のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項14】
前記硫化物系蛍光体は、赤色硫化物蛍光体及び緑色硫化物蛍光体のうちの少なくともいずれかを含む、請求項13に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項15】
前記赤色硫化物蛍光体は、硫化カルシウム蛍光体であり、前記緑色硫化物蛍光体は、チオガレート蛍光体である、請求項14に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項16】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、イットリウムセリウムアルミニウムガーネット蛍光体である、請求項1、2、4?7のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項17】
請求項1、2、4?16のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?17に係る特許に対して平成30年9月18日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

本件特許の請求項1?17に係る発明は、その出願前(優先日前)日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
刊行物
甲第1号証:国際公開第2006/007109号
甲第2号証:特開2015-32373号公報
甲第3号証:特開2005-277127号公報
甲第4号証:特開2013-68728号公報
なお、甲第1?4号証は、特許異議申立人が提出した甲第1?4号証である。

2 当審の判断
2-1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
なお、日本語訳は、甲第1号証のパテントファミリー文献である特表2008-505441号公報(以下「公表公報」という。)を参考にして当審が作成した。
(1a)1頁7行?2頁2行
「 Background
White light sources that utilize light emitting diodes (LEDs) in their construction can have two basic configurations. In one, referred to herein as direct emissive LEDs,white light is generated by direct emission of different colored LEDs. Examples include a combination of a red LED, a green LED, and a blue LED, and a combination of a blue LED and a yellow LED. In another configuration, referred to herein as phosphor- converted LEDs (PCLEDs), a single LED generates light in a narrow range of wavelengths, which light impinges upon and excites a phosphor or other type of emissive material to produce light having different wavelengths than those generated by the LED. The phosphor can include a mixture or combination of distinct emissive materials, and the light emitted by the phosphor can include broad or narrow emission lines distributed over the visible wavelength range such that the emitted light appears substantially white to the unaided human eye.
・・・
Advantages of white light PCLEDs over direct emission white LEDs include better color stability as a function of device aging and temperature, and better batch-to-batch and device-to-device color uniformity/repeatability. However, PCLEDs can be less efficient than direct emission LEDs, due in part to inefficiencies in the process of light absorption and re-emission by the phosphor.」
「 背景技術
構造内で発光ダイオード(LED)を利用する白色光源は2つの基本的構成を有することができる。本明細書で直接発光LEDと称するその1つにおいて、白色光は異なる色のLEDの直接発光により生成される。一例には赤色LED、緑色LED、青色LEDの組合せ、青色LEDおよび黄色LEDの組合せがある。本明細書で蛍光体変換LED(PCLED)と称する他の構成において、単一のLEDは狭い波長範囲の光を発生し、その光は蛍光体または他のタイプの電子放出性物質に当たるとともに励起して、LEDにより生じたものとは異なる波長を有する光を生成する。蛍光体は異質の電子放出性物質の混合または組合せを含むことができるとともに、蛍光体により放出された光は、放出された光が人間の裸眼に対して実質的に白色に見えるように可視波長範囲にわたって分散された広いまたは狭い発光線を含むことができる。
・・・
直接発光白色LEDを超える白色光PCLEDの利点には、デバイス経年劣化および温度の関数としてのより良好な色安定性、より良好なバッチ毎およびデバイス毎の色均一性/再現性がある。しかしPCLEDは、一部には蛍光体による光吸収および再発光のプロセスにおける非効率性のため、直接発光LEDより効率が低い恐れがある。」(公表公報【0001】?【0004】)
(1b)2頁5?22行
「The present disclosure provides illumination systems that utilize emissive materials and interference reflectors for filtering components. In some embodiments, the interference reflectors of the present disclosure may include multilayer optical films including individual optical layers, at least some of which are birefringent, arranged into optical repeat units through the thickness of the film. Adjacent optical layers have refractive index relationships that maintain reflectivity and avoid leakage of p-polarized light at moderate to high incidence angles.
In one aspect, the present disclosure provides an illumination system, including a light source that emits light having a first optical characteristic, and a light guide having an output surface, where the light guide is configured to direct at least a portion of the light emitted by the light source through the output surface. The system further includes emissive material positioned to receive light from the output surface of the light guide, where the emissive material emits light having a second optical characteristic when illuminated with light having the first optical characteristic. The system further includes a first interference reflector positioned between the output surface of the light guide and the emissive material, where the first interference reflector substantially transmits light having the first optical characteristic and substantially reflects light having the second optical characteristic.」
「本開示は電子放出性物質と成分をフィルタリングする干渉反射体とを用いた照明システムを提供する。いくつかの実施形態において、本開示の干渉反射体は個別光学層を含む多層光学フィルムを含み、その少なくともいくつかが複屈折性を有し、フィルムの厚さを通して光中継ユニットに配列され得る。隣接の光学層は反射率を維持するとともに、中?高入射角におけるp偏光の漏れを防止する屈折率関係を有する。
一態様において本開示は、第1の光学特性を有する光を放出する光源と、出力面を有し、光源により放出された光の少なくとも一部分を出力面を介して向けるように構成された光導波路とを含む照明システムを提供する。システムは、光導波路の出力面からの光を受光するように配置され、第1の光学特性を有する光で照明されると第2の光学特性を有する光を放出する電子放出性物質をさらに含む。システムは、光導波路の出力面と電子放出性物質との間に配置され、第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射する第1の干渉反射体をさらに含む。」(公表公報【0005】?【0006】)
(1c)5頁26行?6頁15行
「The present disclosure provides illumination systems that include a light source, one or more light guides, emissive material, and one or more interference reflectors. In some embodiments, the illumination systems provide white light for various applications. As used herein, the term "white light" refers to light that stimulates red, green, and blue sensors in the human eye to yield an appearance that an ordinary observer would consider "white." Such light may be biased to the red (commonly referred to as warm white light) or to the blue (commonly referred to as cool white light). Further, such light can have a color rendering index of up to 100. In general, these illumination systems include a light source that emits light including a first optical characteristic. The systems of the present disclosure also include emissive material that emits light having a second optical characteristic when illuminated with light having the first optical characteristic. The first optical characteristic and second optical characteristic may be any suitable optical characteristic, e.g., wavelength, polarization, modulation, intensity, etc. For example, the first optical characteristic may include a first wavelength region, and the second optical characteristic may include a second wavelength region that is different than the first wavelength region. In one exemplary embodiment, the light source may emit light having a first optical characteristic, where the first optical characteristic includes a first wavelength region including UV light. In this illustrative embodiment, the UV light emitted by the light source illuminates emissive material, which cause such material to emit light having a second optical characteristic, where the second optical characteristic includes a second wavelength region including visible light.」
「本開示は光源と、1つまたは複数の光導波路と、電子放出性物質と、1つまたは複数の干渉反射体とを含む照明システムを提供する。いくつかの実施形態において照明システムは様々な用途用の白色光を提供する。本明細書で用いるように用語「白色」は人間の目の中の赤色、緑色および青色感覚器官を刺激して、一般的観察者が「白色」と考え得る様相を生じる光を指す。このような光は赤色に偏っている(一般に温白色光と称する)または青色に偏っている(一般に冷白色光と称する)場合がある。さらにこのような光は100までの演色評価数を有することができる。一般にこれらの照明システムは第1の光学特性を含む光を放出する光源を含む。本発明の開示のシステムは、第1の光学特性を含む光で照明されると第2の光学特性を含む光を放出する電子放出性物質も含む。第1の光学特性および第2の光学特性は任意の適当な光学特性、例えば波長、偏光、変調、強度等であり得る。例えば第1の光学特性は第1の波長域を含み得るとともに、第2の光学特性は第1の波長域とは異なる第2の波長域を含み得る。例示的一実施形態において光源は第1の光学特性を含む光を放出し、第1の光学特性はUV光を含む第1の波長域を含む。この例示的実施形態において光源により放出されたUV光は電子放出性物質を照明し、それによりこのような物質は第2の光学特性を含む光を放出し、第2の光学特性は可視光を含む第2の波長域を含む。」(公表公報【0011】)
(1d)16頁29行?17頁12行
「The emissive material 40 may be positioned in any suitable location between the first interference reflector 30 and the output surface 14 of the light guide 12. In some embodiments, the emissive material 40 may be positioned on the input surface 16 of the light guide 12. Alternatively, the emissive material 40 may be placed within the light guide 12. In other embodiments, the emissive material 40 may be dispersed within the light guide 12. In other embodiments, the emissive material 40 may be positioned on an output surface 32 of the first interference reflector 30. Any suitable technique may be used to position the emissive material 40 on the first interference reflector 30, e.g., those techniques described in co-owned and co-pending U.S. Patent Application Publication No. 2004-0116033 (Ouderkirk et al.). For example, the emissive material 40 can be disposed or coated on the first interference reflector 30. The emissive material 40 can be laminated, as a solid layer, adjacent the first interference reflector 30. In addition, the emissive material 40 and the first interference reflector 30 can be thermoformed sequentially or simultaneously. The emissive material 40 can be compressible, elastomeric, and can even be contained in a foamed structure.」
「電子放出性物質40を第1の干渉反射体30と光導波路12の出力面14との間の任意の適当な場所に配置し得る。いくつかの実施形態において電子放出性物質40を光導波路12の入力面16上に配置し得る。代替的には電子放出性物質40を光導波路12内に配置し得る。他の実施形態において電子放出性物質40を光導波路12内で分散し得る。他の実施形態において電子放出性物質40を第1の干渉反射体30の出力面32上に配置し得る。任意の適当な技術、例えば同一出願人所有且つ同時係属中の米国特許出願公開第2004/0116033号明細書(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に記載されたような技術を用いて、電子放出性物質40を第1の干渉反射体30上に配置し得る。例えば電子放出性物質40を第1の干渉反射体30上に配置または塗布することができる。電子放出性物質40を固体層として第1の干渉反射体30に隣接して積層することができる。加えて電子放出性物質40および第1の干渉反射体30を順次または同時に熱成形することができる。電子放出性物質40は圧縮性、弾性であり且つ発泡構造内に含有することさえ可能である。」(公表公報【0042】)
(1e)18頁1?13行
「In general, the light source 20 emits light having a first optical characteristic, at least a portion of which illuminates the first interference reflector 30. In turn, the first interference reflector 30 substantially transmits the light from the light source 20. At least a portion of the transmitted light illuminates the emissive material 40. The emissive material 40 emits light having a second optical characteristic when illuminated with light having the first optical characteristic. Generally, the emissive material 40 may emit light in any direction. In other words, some light may be emitted back toward the light source 20, and some light may be emitted toward the light guide 12. Light emitted by the emissive material 40 that illuminates the first interference reflector 30 is substantially reflected such that the light does not reach the light source 20 where it can be absorbed. The light guide 12 directs at least a portion of the light emitted by the emissive material 40 through the output surface 14 where it can then be directed to a desired location using any suitable technique.」
「一般に光源20は第1の光学特性を有する光を放出し、その光の少なくとも一部分が第1の干渉反射体30を照明する。そして第1の干渉反射体30は光源20からの光を実質的に透過する。透過光の少なくとも一部分は電子放出性物質40を照明する。電子放出性物質40は第1の光学特性を有する光で照明されると第2の光学特性を有する光を放出する。一般に電子放出性物質40は光を任意の方向に放出し得る。換言すればある光は光源20に向かって後方に放出され得るとともに、ある光は光導波路12に向かって放出され得る。電子放出性物質40により放出された第1の干渉反射体30を照明する光は実質的に反射されて、光が吸収され得る光源20に到達しないようになっている。光導波路12は電子放出性物質40によって放出された光の少なくとも一部分を出力面14を介して向け、そこで任意の適当な技術を用いて光を所望の場所に向けることができる。」(公表公報【0045】)
(1f)20頁15行?21頁9行
「The illumination systems of the present disclosure may include one or more optical elements. For example, FIG. 3 schematically illustrates an illumination system 200 that includes one or more optical elements 260. The system 200 further includes a light guide 212 having an output surface 214 and an input surface 216, and a light source 220. The system 200 also includes a first interference reflector 230 positioned between the light source 220 and the output surface 214 of the light guide 212, and emissive material 240 positioned between the first interference reflector 230 and the output surface 214 of the light guide 212. All of the design considerations and possibilities described herein with respect to the light guide 12, the light source 20, the first interference reflector 30, and the emissive material 40 of the embodiment illustrated in FIG. 1 apply equally to the light guide 212, the light source 220, the first interference reflector 230, and the emissive material 240 of the embodiment illustrated in FIG. 3. The system 200 may also include one or more additional interference reflectors (e.g., a LP interference reflector) as is further described herein.
The one or more optical elements 260 may be positioned between the emissive material 240 and the output surface 214 of the light guide 212, between the light source220 and the first interference reflector 230, between the first interference reflector 230 and the emissive material 240 and/or adjacent the output surface 214 of the light guide 212. The one or more optical elements 260 can include any suitable optical element or elements, e.g., optical coupling agents such as adhesives or index matching fluids or gels, optical brightness enhancing films such as BEF (available from 3M Company), and short- wavelength absorbing materials such as ultraviolet light absorbing dyes and pigments, reflective polarizing films such as DBEF (also available from 3M Company), diffusers, and combinations thereof. In some embodiments, the one or more optical elements 260 are configured to control the angle of light emitted by the emissive material 240 that is directed into the light guide 212. 」
「本開示の照明システムは1つまたは複数の光学素子を含み得る。例えば図3は1つまたは複数の光学素子260を含む照明システム200を概略的に図示する。システム200は出力面214と入力面216とを有する光導波路212と、光源220とをさらに含む。またシステム200は光源220と光導波路212の出力面214との間に配置された第1の干渉反射体230と、第1の干渉反射体230と光導波路212の出力面214との間に配置された電子放出性物質240とを含む。図1に図示された実施形態の光導波路12、光源20、第1の干渉反射体30、および電子放出性物質40に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図3に図示された実施形態の光導波路212、光源220、第1の干渉反射体230および電子放出性物質240に同等に適用される。このシステム200も、本明細書にさらに説明するように1つまたは複数の追加干渉反射体(例えばLP干渉反射体)を含み得る。
1つまたは複数の光学素子260を電子放出性物質240と光導波路212の出力面214との間、光源220と第1の干渉反射体230との間、第1の干渉反射体230と電子放出性物質240との間、および/または光導波路212の出力面214に隣接して配置し得る。1つまたは複数の光学素子260は任意の適当な光学素子、例えば接着剤もしくは屈折率一致流体またはジェルなどの光結合剤、BEF(スリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの光学輝度強化フィルム、および紫外光吸収染料および顔料などの短波長吸収物質、DBEF(同様にスリーエム・カンパニー(3M Company)から入手可能)などの反射型偏光フィルム、拡散板、およびこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において1つまたは複数の光学素子260は、光導波路212に向けられた電子放出性物質240による発光の角度を制御するように構成されている。」(公表公報【0050】?【0051】)
(1g)45頁13行?47頁29行
「As previously mentioned herein, any suitable technique may be used to couple light from the light source 1320 into the light guides 1312. For example, FlG. 15 schematically illustrates another embodiment of an illumination system 1400 that includes light guides1412 including optical fibers 1413. ・・・
Light source 1420 includes an array 1422 of LED dies 1424 that are positioned in optical alignment with an array of optical elements 1428, which can include passive optical elements, such as focusing lenses 1429 or optical concentrating elements, such as reflectors. The array of optical elements 1428 are in turn optically aligned to an array of optical fibers 1413.・・・ An aspect of the illustrated embodiment of FIG. 15 is the one- to-one correspondence between each light source 1412, a corresponding passive optical element of the array of optical elements 1428 (lens, focusing, concentrating, or reflective element), and a corresponding optical fiber 1413. When powered, each LED die 1424 acts as an individual light source that launches light into a corresponding fiber 1413.・・・
In some embodiments, the LED dies 1424 may be independently controllable such that one or more LEDs 1424 can be selectively activated. For example, the system 1400 may include a controller (not shown) that is in electrical communication with each LED 1424. The controller is operable to selectively activate one or more LEDs 1424. Any suitable controller or controllers may be used, e.g., those described in co-owned and copending U.S. Patent Application Publication No. 2004-0149998 (Henson et al.). Such controllable output of the LEDs 1424 may be used in various types of applications, e.g., steerable headlamps for motor vehicles, pixilated displays, projection systems, signs, etc. 」
「本明細書に前述したように、任意の適当な技術を用いて光源1320からの光を光導波路1312に結合し得る。例えば図15は光ファイバ1413を含む光導波路1412を含む照明システム1400の他の実施形態を概略的に図示する。・・・
光源1420は光学素子1428のアレイと光学的に位置合わせして配置されたLEDダイ1424のアレイ1422を含み、光学素子1428は焦点合わせレンズ1429などの受動光学素子または反射体などの光学集光素子を含み得る。また光学素子1428のアレイは光ファイバ1413のアレイと光学的に位置合わせされている。・・・ 図15の図示の実施形態の態様は各光源1412、光学素子(レンズ、焦点合わせ、集光または反射素子)のアレイ1428の対応する受動光学素子、および対応する光ファイバ1413との間で1対1対応である。通電されると各LEDダイ1424は対応するファイバ1413内に光を放つ個別光源として動作する。・・・
いくつかの実施形態においてLEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能であり得る。例えばシステム1400は各LED1424と電気通信しているコントローラ(図示せず)を含み得る。コントローラは1つまたは複数のLED1424を選択的に起動するように動作可能である。任意の適当なコントローラ、例えば同一出願人所有且つ同時係属中の米国特許出願公開第2004/0149998号明細書(ヘンソン(Henson)ら)に記載されているものを用い得る。このようなLED1424の制御可能出力を様々なタイプの用途、例えば自動車用可動ヘッドランプ、画素化ディスプレイ、投射システム、標識等で用い得る。」(公表公報【0113】?【0115】参照)
(1h)51頁1行?52頁1行
「What is claimed is:
1. An illumination system, comprising:
a light source that emits light comprising a first optical characteristic;
a light guide comprising an output surface, wherein the light guide is configured to direct at least a portion of the light emitted by the light source through the output surface;
emissive material positioned to receive light from the output surface of the light guide, wherein the emissive material emits light comprising a second optical characteristic when illuminated with light comprising the first optical characteristic; and
a first interference reflector positioned between the output surface of the light guide and the emissive material, wherein the first interference reflector substantially transmits light comprising the first optical characteristic and substantially reflects light comprising the second optical characteristic.
2. The system of claim 1, wherein the first optical characteristic comprises a first wavelength region and the second optical characteristic comprises a second wavelength region different than the first wavelength region.
・・・
8. The system of claim 1 , wherein the emissive material comprises phosphor material.」
「特許請求の範囲
1.第1の光学特性を含む光を放出する光源と、
出力面を含む光導波路であって、前記光源により放出された前記光の少なくとも一部分を前記出力面に対して向けるように構成された光導波路と、
前記光導波路の前記出力面からの光を受光するように配置されている電子放出性物質であって、前記第1の光学特性を含む光で照明されると第2の光学特性を含む光を放出する電子放出性物質と、
前記光導波路の前記出力面と前記電子放出性物質との間に配置されている第1の干渉反射体であって、前記第1の光学特性を含む光を実質的に透過するとともに前記第2の光学特性を含む光を実質的に反射する第1の干渉反射体と、を含む照明システム。
2.前記第1の光学特性が第1の波長域を含むとともに、前記第2の光学特性が前記第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む、請求項1に記載の照明システム。
・・・
8.前記電子放出性物質が蛍光体材料を含む、請求項1に記載の照明システム。」(公表公報【特許請求の範囲】の【請求項1】【請求項2】【請求項8】参照)
(1i)甲第1号証には、以下の図が示されている。



(2)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本開示は、面光源に好適な光源装置、および、その光源装置による照明光を用いて画像表示を行う表示装置に関する。
・・・
【0004】
上記したようなバックライトでは、面光源としての高いユニフォミティが求められている。例えば色むらや輝度むらの少ない均一な白色光が求められている。特許文献1では、発光素子からの光を蛍光体層の光出射面に対して垂直または略垂直方向から入射させる光線制御部を備え、蛍光体層の色度分布の視野角依存性を抑制することが提案されているが、さらに質の高い照明光が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、照明光の質を向上させることができるようにした光源装置、および表示装置を提供することにある。」
(2b)「【0010】
【図1】本開示の第1の実施の形態に係る光源装置の一構成例を示す断面図である。
・・・
【0012】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る光源装置の一構成例を示している。図2は、この光源装置における光源2の面内配置の一例を示している。図3は、光源2およびその周囲の一構成例を示している。図4は、この光源装置における波長変換シート3の一構成例を示している。この光源装置は、面光源として好適で、例えば直下方式のバックライトとして利用されるものである。
【0013】
この光源装置は、光源基板1と、複数の光源2と、波長変換部材としての波長変換シート3と、拡散部材4と、光学シート5と、反射部材としての反射シート6と、レジスト層7と、背面筐体(バックシャーシ)101と、中間筐体(ミドルシャーシ)102とを備えている。
【0014】
背面筐体101の底面には光源基板1が配置されている。背面筐体101は、周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ、周辺部の端部には中間筐体102が取り付けられている。背面筐体101の周辺部は、中間筐体102の取り付け部よりも内側部分に平坦部が形成され、その平坦部に拡散部材4の周辺部が支持されている。拡散部材4の光出射面(表面)側には波長変換シート3と、光学シート5とが配置されている。この光源装置を表示装置に適用する場合、光学シート5の光出射面(表面)側に表示パネルが配置されていてもよい。その場合、表示パネルの周辺部が中間筐体102に支持されてもよい。
【0015】
波長変換シート3は、複数の光源2に対向するように配置されている。拡散部材4は、波長変換シート3と複数の光源2との間に配置されている。拡散部材4は、入射した光の角度分布を均一化するためのものである。拡散部材4としては、1枚の拡散板または1枚の拡散シートであっても良いし、2枚以上の拡散板または2枚以上の拡散シートであっても良い。
【0016】
光学シート5は、波長変換シート3の光出射面(表面)側に配置されている。光学シート5は例えば、輝度を向上させるためのシートやフィルムで構成されている。光学シート5は、例えばプリズムシートを含んでいてもよい。光学シート5はまた、DBEF(Dual Brightness Enhancement Film)等の反射型偏光フィルムを含んでいてもよい。
【0017】
光源基板1には、1または2以上の光源2ごとに独立した発光制御が可能となるように、図示しない配線パターンが形成されている。これにより、複数の光源2の局所的な発光制御(ローカルディミング)が可能とされている。光源基板1としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やフッ素、PEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂製フィルムに配線パターンを印刷したものを用いることができる。その他、表面にポリイミドやエポキシ系などの絶縁性樹脂層が形成された、アルミニウム(Al)などのメタルベース基板の当該絶縁性樹脂層上に光反射性を有する材質の配線パターンを印刷したものを用いてもよい。また、FR4(ガラスエポキシ樹脂)やCEM3(ガラスコンポジット樹脂)などのガラス含有樹脂からなるフィルム基材上に光反射性を有する材質の配線パターンを印刷したものとしてもよい。光反射性を有する材質としては、例えばAl,銀(Ag)あるいはこれらの合金等が挙げられる。
・・・
【0022】
光源2は、図2に示したように、光源基板1上において2次元的に配置されている。光源2は、図3に示したように、発光素子21と、パッケージ22と、封止材23とを有している。パッケージ22は、凹形状の収容部を有し、その凹形状の収容部の底面に発光素子21が配置されている。凹形状の収容部には封止材23が充填されている。発光素子21は、例えば点光源であり、具体的にはLEDにより構成されている。パッケージ22は、図示しないリードフレーム等からなる外部電極を介して光源基板1に半田等により実装されている。パッケージ22における凹形状の収容部の表面は、発光素子21からの光に対して高い反射率を有していることが好ましい。凹形状の収容部の表面は例えば、高い反射率を有する材料として、Agを含んでいてもよい。封止材23は、例えばシリコーンやアクリルなどの透明樹脂で構成されている。
【0023】
波長変換シート3は、図4に示したように、波長変換物質31を含んでいる。波長変換物質31は、例えば、蛍光顔料や蛍光染料などの蛍光体(蛍光物質)、または量子ドットを含んでおり、光源2からの光によって励起され、蛍光発光等の原理により、光源2からの光を原波長とは異なる別波長の光に波長変換し、これを放出するものである。
【0024】
光源2は例えば青色光源(例えば、波長440nm?460nm)であり、波長変換物質31は光源2の青色光を吸収して、その一部を赤色光(例えば、波長620nm?750nm)、または緑色光(例えば、波長495nm?570nm)に変換する。この場合、光源2の光が波長変換物質31を通過することにより、赤色,緑色および青色の光が合成されて白色光が生成される。波長変換物質31はまた、青色光を吸収して、その一部を黄色光に変換するものであってもよい。この場合、光源2の光が波長変換物質31を通過することにより、黄色および青色の光が合成されて白色光が生成される。
・・・
【0027】
また、波長変換されなかった光LB2,LB3のうち一部は波長変換シート3から後方(基板1側)に向かう光(下向きの光LB1)となる。また、波長変換されなかった光LB2,LB3のうち前方に向かう光の一部はDBEF等の光学シート5による回帰光となって、下向きの光LB1となる。下向きの光LB1は、光源基板1の表面(主として反射シート6)で反射されて再び波長変換シート3に向かい、一部が波長変換される。同様に、波長変換された光LYのうち下向きの光LY1は、光源基板1の表面で反射されて前方に向かう光となる。このように下向きの光LB1,LY1は、光源基板1の表面で反射されて白色光を生成するためのリサイクル光となる。下向きの光LB1,LY1のリサイクルは例えば4,5回に亘って行われることもある。従って、光源装置から出射される白色光の最終的な輝度は、リサイクル光も含めたもので成り立っている。
・・・
【0029】
図6は、複数の光源2の配置間隔Dが適当な間隔で最適化されていると共に、複数の光源2と波長変換シート3との距離Hが適当な値に最適化されている場合を示している。この場合、波長変換シート3において、例えば光源2の直上の領域81では、光源2からの光の垂直成分L1と斜め成分L2とが均等に混じり合って白色光が生成される。拡散部材4を配置しない場合において、光源2からの光の垂直成分L1と斜め成分L2とが均等に混じり合う状態にするためには、複数の光源2の配置間隔Dをある程度、小さくする必要がある。また、複数の光源2と波長変換シート3との距離Hをある程度、長くする必要がある。
・・・
【0031】
波長変換シート3の入光側に拡散部材4を配置することによって、上記した色むらの発生を抑制することができる。例えば図10に示したように、拡散部材4に斜め成分L2が入射した場合、光が拡散されて、光の角度分布がある程度均一化される。これにより、斜め成分L2の割合が減り、色むらの発生が抑制される。
【0032】
[1.3 効果]
以上のように、本実施の形態によれば、波長変換シート3と複数の光源2との間に拡散部材4を備えるようにしたので、色むらの発生を抑制し、照明光の質を向上させることができる。
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。」
(2c)「【0053】
<2.第2の実施の形態>
[2.1 構成]
図19は、第2の実施の形態に係る光源装置の一構成例を示している。本実施の形態に係る光源装置は、波長変換シート3と拡散部材4との間に、プリズムシート8を追加配置したこと以外、図1の構成と略同様である。
・・・
【0055】
[2.2 作用および効果]
図21は、プリズムシート8の作用を示している。プリズムシート8は、例えば図21に示したように、斜め成分L2が入射した場合、その光の角度を垂直方向または略垂直方向に立ち上げて出射させる。これにより、以下で説明するような、局所的な発光制御(ローカルディミング)を行う場合の色むらの発生を抑制する。
・・・
【0057】
一方、ローカルディミングを行う場合、複数の光源2において不点灯や微点灯の部分が生じ、複数の光源2のそれぞれの発光分布に差が生じる。この場合、波長変換シート3に入射する複数の光源2からのそれぞれの光(例えば青色光)の光路ごとに、強度差ができ、不点灯部や微点灯部が通常の点灯部に比べて例えば黄色に色づく色むらが生じてしまう。また、ローカルディミングを行っている状態で通常の強度で発光している光源2の上方からは、波長変換シート3や光学シート5から後方(基板1側)に返ってくる光が反射シート6で拡散しながら反射して不点灯部分や微点灯部分の前方まで広がって再び波長変換シート3側に帰って来る。その帰って来た光は、再び波長変換シート3を通過して、例えば青色光の一部を使って(青光が減少して)緑色光や赤色光に変換される。このため、帰って来た光で作り出される波長変換シート3通過後の光は黄色味をおび、不点灯部や微点灯部の黄色い色づきをさらに強めてしまう。結果として、表示装置に適用した場合、ローカルディミングによる微点灯の輝度表示部分の画が黄色味を帯びて品位を損なってしまう。なお、液晶表示装置のバックライトとして使用する場合、黒表示の部分は液晶による画素開口が閉じているので面光源による黄色の色づきは見えない。本実施の形態によれば、プリズムシート8の作用により、上記したようなローカルディミング時の色むらの発生を抑制できる。
【0058】
<3.第3の実施の形態>
[3.1 構成および作用]
図22は、第3の実施の形態に係る光源装置の一構成例を示している。本実施の形態に係る光源装置は、光源基板1上にカットフィルタ9を追加配置したこと以外、図1の構成と略同様である。カットフィルタ9は、反射シート6の表面を覆うように配置されている。カットフィルタ9は、光源2が発する光(例えば青色光)を透過させると共に、波長変換シート3によって波長変換された光(例えば赤色光および緑色光、または黄色光)をカットする光フィルタである。カットフィルタ9は、波長変換シート3によって波長変換された光を完全にカットするものである必要はなく、そのフィルタ特性が、光源2が発する光に対する透過率に比べて、波長変換シート3によって波長変換された光に対する透過率の方が低くなる特性であればよい。
【0059】
図23は、カットフィルタ9の作用を示している。図5の構成の場合、光源2から発せられた光LBのうち光源基板1側に帰ってくる下向きの光LB1が反射シート6で反射されて再び波長変換シート3に向かう。波長変換された光LYのうち下向きの光LY1も同様に、反射シート6で反射されて再び波長変換シート3に向かう。一方、本実施の形態の構成では、図23に示したように、カットフィルタ9が配置されていることにより、波長変換された下向きの光LY1の反射が抑制される。波長変換されなかった下向きの光LB1は、カットフィルタ9を通過して反射シート6で反射されて再び波長変換シート3に向かう。
【0060】
上記第2の実施の形態で説明したように、ローカルディミングを行う場合、複数の光源2において不点灯や微点灯の部分が生じることにより、不点灯部や微点灯部が通常の点灯部に比べて例えば黄色に色づく色むらが生じてしまう。本実施の形態によれば、カットフィルタ9を配置することで、波長変換された下向きの光LY1(例えば黄色光)の反射が抑制されるので、リサイクル光として再利用される黄色光が減少する。これにより、黄色に色づく色むらの発生を抑制する。」
(2d)甲第2号証には、以下の図が示されている。
なお、図1中の「光源部材1」は、「光源基板1」の誤記と認める。


以上のとおり、甲第2号証には、面光源に好適な光源装置に関する技術について開示されているところ(摘示(2a)【0001】)、かかる光源装置の実施形態として、
光源装置は、光源基板1と、複数の光源2と、波長変換部材としての波長変換シート3と、拡散部材4と、光学シート5と、反射部材としての反射シート6と、レジスト層7と、背面筐体101と、中間筐体102とを備えること(摘示(2b)【0013】)、
前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され、背面筐体101は、周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ、周辺部の端部には中間筐体102が取り付けられ、背面筐体101の周辺部は、中間筐体102の取り付け部よりも内側部分に平坦部が形成され、その平坦部に拡散部材4の周辺部が支持され、拡散部材4の光出射面側には波長変換シート3と、光学シート5とが配置されていること(摘示(2b)【0014】)、
前記光源基板1には、1または2以上の光源2ごとに独立した発光制御が可能となるように、配線パターンが形成され、これにより、複数の光源2の局所的な発光制御が可能とされていること(摘示(2b)【0017】)、
前記光源2は、光源基板1上において2次元的に配置され、発光素子21と、パッケージ22と、封止材23とを有しており、発光素子21は、LEDにより構成されていること(摘示(2b)【0022】)、
前記波長変換シート3は、複数の光源2に対向するように配置されていること(摘示(2b)【0015】)、
前記波長変換シート3は、波長変換物質31を含み、該波長変換物質31は、蛍光体を含んでおり、光源2からの光によって励起され、光源2からの光を原波長とは異なる別波長の光に波長変換し、これを放出するものであること(摘示(2b)【0023】)、
前記拡散部材4は、波長変換シート3と複数の光源2との間に配置され、入射した光の角度分布を均一化するためのものであって、1枚の拡散板からなること(摘示(2b)【0015】)、
前記光学シート5は、波長変換シート3の光出射面側に配置され、輝度を向上させるためのシートやフィルムで構成されること(摘示(2b)【0016】)、が記載されている。
また、図1(摘示(2d))より、光学シート5は、2層からなり群をなすこと、及び、背面筐体101の底面は、波長変換シート3と平行に配置されていることが看取できる。

したがって、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「光源装置であって、
前記光源装置は、光源基板1と、複数の光源2と、波長変換部材としての波長変換シート3と、拡散部材4と、光学シート5と、反射部材としての反射シート6と、レジスト層7と、背面筐体101と、中間筐体102とを備え、
前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され、背面筐体101は、周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ、周辺部の端部には中間筐体102が取り付けられ、背面筐体101の周辺部は、中間筐体102の取り付け部よりも内側部分に平坦部が形成され、その平坦部に拡散部材4の周辺部が支持され、拡散部材4の光出射面側には波長変換シート3と、光学シート5とが配置され、
前記光源基板1には、1または2以上の光源2ごとに独立した発光制御が可能となるように、配線パターンが形成され、これにより、複数の光源2の局所的な発光制御が可能とされ、
前記光源2は、光源基板1上において2次元的に配置され、発光素子21と、パッケージ22と、封止材23とを有しており、発光素子21は、LEDにより構成され、
前記波長変換シート3は、複数の光源2に対向するように配置され、
前記波長変換シート3は、波長変換物質31を含み、該波長変換物質31は、蛍光体を含んでおり、光源2からの光によって励起され、光源2からの光を原波長とは異なる別波長の光に波長変換し、これを放出するものであり、
前記拡散部材4は、波長変換シート3と複数の光源2との間に配置され、入射した光の角度分布を均一化するためのものであって、1枚の拡散板からなり、
前記光学シート5は、波長変換シート3の光出射面側に配置され、輝度を向上させるためのシートやフィルムで構成され、2層からなり群をなし、
前記背面筐体101の底面は、波長変換シート3と平行に配置されている、光源装置。」

(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の記載がある。
(3a)「【0001】
本発明は、発光ダイオード(以下、LED)に関する。より詳しくは、短波長の光を発するLEDチップと、その発光を吸収し、吸収した波長より長波長の蛍光を発する蛍光体とを組み合わせた、白色又は中間色を発する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色LEDにYAG:Ce等黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている(特許第2927279号)。従来、LEDは単色で発光するものであり、白色又は中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかったが、蛍光体との組合せによりこのような煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得られるようになったためである。」
(3b)「【0017】
図1は、本発明による発光デバイスの構成例の一つを示したものである。図1は、励起光源として青色LEDチップ(3)を用い、ここから発する青色光を吸収し緑色光を発する蛍光体(7)と、青色光を吸収し赤色光を発する蛍光体(6)とを用いた場合である。
・・・
【0030】
なお、励起光源周辺に赤色蛍光体(6)を予め配置し、その後、緑色蛍光体(7)を含む層を配置した透明シートをキャビティー開口部に接着しても同様の効果が得られる(図4)。
・・・
【0034】
ガラスエポキシ基板と高反射率樹脂とで形成されたキャビティー部に、バインダー樹脂であるエポキシ樹脂にチオガレート系緑色蛍光体(中位径:17μm)と、硫化カルシウム系赤色蛍光体(中位径:21μm)とを混合したものを樹脂表面がキャビティ開口部と水平となるまで充填した。その後、30分放置して蛍光体粒子を沈降させた後、硬化させた(実施例1)。」
(3c)甲第3号証には、以下の図が示されている。


(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の記載がある。
(4a)「【0007】
本発明は、波長変換部材を用いた光源を高輝度化し得る波長変換部材及びそれに用いる発光体封入用毛細管を提供することを主な目的とする。
(4b)「【0026】
なお、無機蛍光体は、光源から出射させようとする光の波長や、発光体から出射される励起光の波長などに応じて適宜選択することができる。無機蛍光体は、例えば、酸化物無機蛍光体、窒化物無機蛍光体、酸窒化物無機蛍光体、硫化物無機蛍光体、酸硫化物無機蛍光体、希土類硫化物無機蛍光体、アルミン酸塩化物無機蛍光体、ハロリン酸塩化物無機蛍光体、及び量子ドットから選ばれた1種以上からなるものとすることができる。
・・・
【0029】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると緑色の可視光(波長が500nm?540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、・・・SrGa_(2)S_(4):Eu^(2+)・・・などが挙げられる。
・・・
【0031】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると黄色の可視光(波長が540nm?595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、Y_(3)(Al,Gd)_(5)O_(12):Ce^(2+)・・・が挙げられる。
・・・
【0033】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると赤色の可視光(波長が600nm?700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、・・・K_(2)SiF_(6):Mn^(4+)・・・、CaS:Eu^(2+)・・・などが挙げられる。」

2-2 対比・判断
(1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「LEDにより構成され」る「発光素子21」は、本件発明1の「発光素子」に相当する。
本件明細書の「バックライトの点灯領域を分割制御する技術、いわゆる部分駆動・・・技術が実用化されてきた。」(【0004】)との記載によれば、「部分駆動」とは、バックライトの点灯領域を分割制御する技術と理解することができる。
ここで、甲2発明の「光源装置」は、例えば直下方式のバックライトとして利用されるものであり(摘示(2b)【0012】)、また、甲2発明の「複数の光源2」は、「1または2以上の光源2ごとに独立した発光制御が可能」であって、「複数の光源2の局所的な発光制御が可能」であるから、その点灯領域は分割制御が可能であって、いわゆる部分駆動が可能な構成ということができる。さらに、甲2発明において、「光源2からの光」は、「波長変換物質31を含」む「波長変換シート3」により、「励起され、光源2からの光を原波長とは異なる別波長の光に波長変換」され「放出」されることになるから、上記「複数の光源2」は、励起光源ということもできる。
したがって、甲2発明の「複数の光源2」は、本件発明1の「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源」に相当するものといえる。
(イ)甲2発明の「光源2からの光」の「原波長」は、本件発明1の「励起光源からの入射光の波長領域」に相当する。
甲2発明の「波長変換シート3」から「放出」される「原波長とは異なる別波長の光」は、本件発明1の「前記入射光とは異なる波長領域の出射光」に相当する。
そして、甲2発明の「波長変換部材としての波長変換シート3」は、「複数の光源2に対向するように配置され」、光源2と離隔して配置されていることが明らかであって、さらに、「波長変換物質31を含み、該波長変換物質31は、蛍光体を含んでおり、光源2からの光によって励起され、光源2からの光を原波長とは異なる別波長の光に波長変換し、これを放出するものであ」るから、上記(ア)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シート」に相当するものといえる。
(ウ)甲2発明の「背面筐体101」は、「周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ」、「前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され」るものである。
ここで、上記「周辺部」の「周辺」とは、字義的に「あるものをとりまく、まわりの部分。中心から離れたところ。周囲。」(広辞苑第6版)を意味するから、甲2発明の「背面筐体101の底面」に「配置され」た「光源基板1」は、「背面筐体101」の「上側に折り曲げられた形状とされ」る「周辺部」によって、取り囲まれた状態で配設される、言い換えれば、背面筐体101によって格納された状態で配設される、と理解することができる。
また、甲2発明は、「光源基板1上に」、「光源2」が「2次元的に配置され」るものであって、上記「光源2」は、「発光素子21」を「有して」構成されるものであるから、上記「背面筐体101」は、複数の発光素子21を格納する、ということもできる。
してみると、甲2発明の「背面筐体101」は、上記(ア)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記複数の発光素子を格納するシャーシ」に相当するものといえる。
(エ)甲2発明は、「前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され、背面筐体101は、周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ」、「前記光源2は、光源基板1上において2次元的に配置され、発光素子21と、パッケージ22と、封止材23とを有しており、発光素子21は、LEDにより構成され」るものであるところ、かかる構成は、上記(ア)及び(ウ)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され」という構成に相当するものといえる。
(オ)甲2発明は、「前記光源2は、光源基板1上において2次元的に配置され、発光素子21と、パッケージ22と、封止材23とを有しており、発光素子21は、LEDにより構成され」、「前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され」るものであるから、複数の発光素子21が背面筐体101の底面に配列されることは明らかであり、さらに、上記「前記背面筐体101の底面」が、面をなすことも明らかである。
してみると、甲2発明の「前記背面筐体101の底面は、波長変換シート3と平行に配置されている」という構成は、上記(ア)?(ウ)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており」という構成に相当するものといえる。
(カ)甲2発明は、「前記背面筐体101の底面には光源基板1が配置され、背面筐体101は、周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ」、「背面筐体101の周辺部」は、「平坦部が形成され、その平坦部に拡散部材4の周辺部が支持され、拡散部材4の光出射面(表面)側には波長変換シート3と、光学シート5とが配置され」るものであるところ、甲第2号証には、「ローカルディミングを行っている状態で通常の強度で発光している光源2の上方からは、波長変換シート3・・・から後方(基板1側)に返ってくる光が反射シート6で拡散しながら反射して不点灯部分や微点灯部分の前方まで広がって再び波長変換シート3側に帰って来る。」(摘示(2c)【0057】)と記載されているから、甲2発明の「周辺部が上側に折り曲げられた形状とされ」た「背面筐体101」に、波長変換シート3から後方(基板1側)に返ってくる光が進入する空間が存在することは技術的に明らかであり、さらに、上記後方に返ってくる光が波長変換シート3からの出射光のうちの背面筐体101側に向かう後方回帰光をなすことも明らかである。
また、甲2発明は、「前記光源基板1には、1または2以上の光源2ごとに独立した発光制御が可能となるように、配線パターンが形成され、これにより、複数の光源2の局所的な発光制御が可能とされ」るものであるから、上記空間は、「独立した発光制御が可能となる」「光源2」と、「波長変換シート3」との間の「背面筐体101」内に存在することも明らかである。
してみると、甲2発明における上記空間を有する「背面筐体101」の構成は、上記(ア)?(ウ)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある」という構成に相当するものといえる。
(キ)甲2発明の「入射した光の角度分布を均一化するためのものであって、1枚の拡散板からな」る「拡散部材4」は、本件発明1の「拡散板」に相当する。
(ク)甲2発明の「光学シート5」は、「波長変換シート3の光出射面側に配置され」るものであり、上記光出射面側とは、図1(摘示(2d))に照らして、波長変換シート3の上方ということができ、さらに、上記「光学シート5」は、「輝度を向上させるためのシートやフィルムで構成され、2層からなり群をなす」ものであるから、光学フィルム群ということもできる。
してみると、甲2発明の「光学シート5」は、本件発明1の「前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群」に相当するものといえる。
(ケ)甲2発明の「光源装置」は、上記(ア)で述べたとおり、部分駆動が可能な構成ということができるから、本件発明1の「部分駆動型光源装置」に相当するものといえる。

以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、
「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
拡散板と、
前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と、を有する部分駆動型光源装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、「前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜」を有するものであって、かかる「波長選択性反射膜」の配設に関連し、拡散板は「前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する」ものであり、また、「前記蛍光体シートと波長選択性反射膜とが隣接して配置される」ものであるのに対し、甲2発明は、波長選択性反射膜を有するものではなく、拡散板は「波長変換シート3と複数の光源2との間に配置され」るものである点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
(ア)甲2発明の技術課題等
a 甲2発明は、「面光源に好適な光源装置」に関するものであって(摘示(2a)【0001】)、「照明光の質を向上させ」ること、より具体的には、「色むらや輝度むらの少ない均一な白色光」を得ることを技術課題とするものである(摘示(2a)【0004】?【0005】)。
b また、甲第2号証には、「波長変換された光LYのうち下向きの光LY1は、光源基板1の表面で反射されて前方に向かう光となる。このように下向きの光LB1,LY1は、光源基板1の表面で反射されて白色光を生成するためのリサイクル光となる。・・・従って、光源装置から出射される白色光の最終的な輝度は、リサイクル光も含めたもので成り立っている。」(摘示(2b)【0027】)と記載されているから、甲2発明は、波長変換シート3で波長変換された下向きの光LY1をリサイクル光として利用し、そのようなリサイクル光をも含めて光源装置の輝度設計がなされることが明らかである。
c さらに、甲第2号証には、「また、ローカルディミングを行っている状態で通常の強度で発光している光源2の上方からは、波長変換シート3や光学シート5から後方(基板1側)に返ってくる光が反射シート6で拡散しながら反射して不点灯部分や微点灯部分の前方まで広がって再び波長変換シート3側に帰って来る。その帰って来た光は、再び波長変換シート3を通過して、例えば青色光の一部を使って(青光が減少して)緑色光や赤色光に変換される。このため、帰って来た光で作り出される波長変換シート3通過後の光は黄色味をおび、不点灯部や微点灯部の黄色い色づきをさらに強めてしまう。結果として、表示装置に適用した場合、ローカルディミングによる微点灯の輝度表示部分の画が黄色味を帯びて品位を損なってしまう。」(摘示(2c)【0057】)と記載されているから、甲2発明は、ローカルディミング時において、波長変換シート3から後方(基板1側)に返ってくる光が反射シート6で拡散しながら反射して不点灯部分や微点灯部分の前方まで広がって再び波長変換シート3側に帰って来ることで、不点灯部や微点灯部の黄色い色づきをさらに強めてしまい、その結果、輝度表示部分の画が黄色味を帯びて品位を損なってしまう、との技術課題が内在していることも明らかである。
(イ)検討
以上を踏まえて検討する。
a 甲第2号証には、甲2発明に内在する上記技術課題(上記(ア)c)を、例えば、「波長変換シート3と拡散部材4との間に、プリズムシート8を追加配置」すること(摘示(2c)【0053】)、あるいは、「光源基板1上にカットフィルタ9を追加配置」すること(摘示(2c)【0058】)、で解決することが記載されている。
しかし、上記「プリズムシート8」は、波長変換シート3に入射する斜め成分L2の入射光を、垂直方向または略垂直方向に立ち上げて出射させることで色むらの発生を抑制するものであり(摘示(2c)【0055】)、また、上記「カットフィルタ9」は、波長変換された下向きの光LY1の反射を抑制することで色むらの発生を抑制するというものであり(摘示(2c)【0059】?【0060】)、いずれの技術も、励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、蛍光体シートからの出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜を用いるものではない。
したがって、甲2発明に、上記「プリズムシート8」や「カットフィルタ9」を採用しても、上記相違点1に係る本件発明1に至るものではい。
b ここで、甲第1号証には、「照明システム」を構成するに際し、蛍光体による光吸収および再発光のプロセスにおける非効率性のため、直接発光LEDより効率が低いという問題を(摘示(1a))、第1の光学特性を有する光を実質的に透過するとともに第2の光学特性を有する光を実質的に反射する「干渉反射体」を追加配置することにより解決すること(摘示(1b))、より具体的には、「照明システム」を、「光源と、1つまたは複数の光導波路と、電子放出性物質と、1つまたは複数の干渉反射体とを含む」ものとして構成すること(摘示(1c))、「電子放出性物質40を第1の干渉反射体30と光導波路12の出力面14との間の任意の適当な場所に配置し得る」こと(摘示(1d))、「電子放出性物質40により放出された第1の干渉反射体30を照明する光は実質的に反射されて、光が吸収され得る光源20に到達しないようになっている。光導波路12は電子放出性物質40によって放出された光の少なくとも一部分を出力面14を介して向け、そこで任意の適当な技術を用いて光を所望の場所に向けることができる」こと(摘示(1e))、「1つまたは複数の光学素子260を電子放出性物質240と光導波路212の出力面214との間、光源220と第1の干渉反射体230との間、第1の干渉反射体230と電子放出性物質240との間、および/または光導波路212の出力面214に隣接して配置し得る」こと(摘示(1f))、及び、「照明システム」を「・・・光源と、・・・光導波路と、・・・電子放出性物質と、・・・第1の干渉反射体と、を含む」ものとして構成すること(摘示(1h))、が記載されているが、上記「干渉反射体」は、あくまでも、照明システムの発光効率を企図して配置されるものであって、ローカルディミング時の色付きの課題を解決するために配置されたものではない。
c また、甲第1号証に記載された「照明システム」は、上記bのとおり、「光源」、「電子放出性物質」及び「干渉反射体」に加え、「光導波路」をも用いて構成されるものであり、それら各構成要素が相互に技術的関連性をもった一体不可分な技術として認識されるべきであるから、「光導波路」の存在しない甲2発明に、甲第1号証に記載された「干渉反射体」を追加配置すべき合理性もない。
したがって、甲2発明において、なお内在する技術課題(上記(ア)c)を解決するために、甲第1号証に記載された技術を適用する動機付けが存在する、とまでいうことはできない。
d ところで特許異議申立人は、平成31年1月16日付けの意見書で、「甲第2号証の[0002]には、『バックライトの方式には、直下方式とエッジライト方式とがある。』と開示されている。その上で、[0012]には、『この光源装置は、面光源として好適で、例えば直下方式のバックライトとして利用されるものである。』と開示されている。これらの開示から明らかであるように、甲2発明は、光源装置の一例として直下方式のバックライトが使用可能であることを開示しているのであり、甲2発明においてエッジライト方式の光源装置を採用してはいけない(または、採用できない)と解釈する余地はない。むしろ、上記甲第2号証の[0002]および[0012]に接した当業者であれば、甲2発明において、光源装置を『直下方式のバックライト』と置換可能であることを疑義なく理解することができる。また、このような理解によれば、当業者は、甲1発明および甲2発明において、上記光源装置には、動機付けを判断する要素である『(4)作用、機能の共通性』が存在すると認められる。」(3頁16行?4頁3行)と主張する。
しかし、上記bで述べたとおり、甲第1号証に記載された「干渉反射体」は、そもそもローカルディミング時の色付きの課題を解決するために配置されたものではないから、甲2発明において、なお内在するローカルディミング時の色付きの課題(上記(ア)c)を解決するために、甲第1号証に記載された技術を適用する動機付けが存在するものということはできないし、さらに、上記cで述べたとおり、甲第1号証に記載された「照明システム」は、「光源」、「電子放出性物質」、「干渉反射体」及び「光導波路」が相互に技術的関連性をもった一体不可分な技術として認識されるべきであって、「光導波路」の存在しない甲2発明に、甲第1号証に記載された「干渉反射体」を追加配置すべき合理性もないから、「動機付けを判断する要素である『(4)作用、機能の共通性』が存在すると認められる」ということもできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
e よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成が当業者にとって容易想到であるということはできない。
なお、甲第3号証(摘示(3a)?(3c))及び甲第4号証(摘示(4a)、(4b))は、本件発明8?16に関する周知技術を例示するものであり、上記相違点1に係る本件発明1の構成に関する技術を開示するものではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明、甲第1号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)本件発明2、4?17について
本件発明2、4?17は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 本件取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項1、3?7、17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。したがって、上記請求項1、3?7、17に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。
(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
請求項1、3?7、17に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、請求項8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証)に基いて、請求項10?16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3、4号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、上記請求項1?17に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

2 検討
(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1-1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記「第4 2 2-1(1)」のとおり記載されており、その特許請求の範囲の請求項1、2、8の記載(摘示(1h))及び図15(摘示(1i))に示される照明システムの実施形態(摘示(1g))によれば、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「第1の光学特性を含む光を放出する光源1420と、
出力面を含む光導波路1412であって、前記光源1420により放出された前記光の少なくとも一部分を前記出力面に対して向けるように構成された光導波路1412と、
前記光導波路1412の前記出力面からの光を受光するように配置されている電子放出性物質1440であって、前記第1の光学特性を含む光で照明されると第2の光学特性を含む光を放出する電子放出性物質1440と、
前記光導波路1412の前記出力面と前記電子放出性物質1440との間に配置されている第1の干渉反射体1430であって、前記第1の光学特性を含む光を実質的に透過するとともに前記第2の光学特性を含む光を実質的に反射する第1の干渉反射体1430と、
を含む照明システム1400であって、
前記第1の光学特性が第1の波長域を含むとともに、前記第2の光学特性が前記第1の波長域とは異なる第2の波長域を含み、
前記電子放出性物質1440が蛍光体材料を含み、
前記光源1420は光学素子1428のアレイと光学的に位置合わせして配置されたLEDダイ1424のアレイ1422を含み、光学素子1428は焦点合わせレンズ1429などの受動光学素子または反射体などの光学集光素子を含み、
前記LEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である、照明システム。」

(1-2)対比・判断
(1-2-1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)
a 甲1発明の「複数のLED1424」は、本件発明1の「複数の発光素子」に相当する。
b 本件明細書の「バックライトの点灯領域を分割制御する技術、いわゆる部分駆動・・・技術が実用化されてきた。」(段落【0004】)との記載によれば、「部分駆動」とは、バックライトの点灯領域を分割制御する技術と理解することができる。
ここで、甲1発明の「光源1420」は、「LEDダイ1424のアレイ1422を含み」、「前記LEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」から、その点灯領域は分割制御が可能であって、いわゆる部分駆動が可能な構成ということができる。
さらに、甲1発明において、「光源1420」からの「第1の光学特性を含む光」は、「蛍光体材料を含」む「電子放出性物質1440」により、「第2の光学特性を含む光」として「放出」されることになるから、上記「光源1420」は、励起光源ということもできる。
してみると、甲1発明の「光源1420」は、本件発明1の「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源」に相当するものといえる。
(イ)
a 甲1発明の「光源1420」は、「第1の光学特性を含む光を放出する」ものであるから、かかる「第1の光学特性を含む光」の「第1の波長域」は、本件発明1の「励起光源からの入射光の波長領域」に相当する。
b 甲1発明の「前記第1の波長域とは異なる第2の波長域を含」む「第2の光学特性を含む光」は、本件発明1の「前記入射光とは異なる波長領域の出射光」に相当する。
c そして、甲1発明の「電子放出性物質1440」は、「前記光導波路1412の前記出力面からの光を受光するように配置され」、光源1420と離隔して配置されていることが明らかであって、さらに、「蛍光体材料を含み」、「前記第1の光学特性を含む光で照明されると第2の光学特性を含む光を放出する」ものであるから、上記(ア)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シート」とは、「前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体構造」の限度で共通するものといえる。
(ウ)
甲1発明の「第1の干渉反射体1430」は、「前記光導波路1412の前記出力面と前記電子放出性物質1440との間に配置され」るものであるから、光源1420及び電子放出性物質1440との間に配置されていることも明らかである。さらに、上記「第1の干渉反射体1430」は、「前記第1の光学特性を含む光を実質的に透過するとともに前記第2の光学特性を含む光を実質的に反射する」ものであるから、上記(ア)(イ)の相当関係をも踏まえると、本件発明1の「前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜」とは、「前記励起光源及び前記蛍光体構造との間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体構造からの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射構造」の限度で共通するものといえる。
(エ)
甲1発明の「照明システム」は、上記(ア)bで述べたとおり、部分駆動が可能な構成ということができるから、本件発明1の「部分駆動型光源装置」に相当するものといえる。

以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体構造と、
前記励起光源及び前記蛍光体構造との間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体構造からの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射構造と、を有する部分駆動型光源装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「蛍光体構造」について、本件発明1は「蛍光体シート」であるのに対し、甲1発明は「電子放出性物質1440」である点。
<相違点B>
本件発明1は、「前記複数の発光素子を格納するシャーシ」「を有し」、「前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある」ものであるのに対し、甲1発明は、そのようなシャーシを具備するものではない点。
<相違点C>
「波長選択性反射構造」について、本件発明1は「波長選択性反射膜」であるのに対し、甲1発明は「第1の干渉反射体1430」である点。
<相違点D>
本件発明1は、「前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する拡散板と、前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と」を有するものであるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

イ 判断
上記アで述べたとおり、本件発明1と甲1発明とは、上記相違点A?Dで相違するものであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である、ということはできない。

(1-2-2)本件発明4?7、17に対して
本件発明4?7、17は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明4?7、17は、甲第1号証に記載された発明である、ということはできない。

(1-3)小括
以上のとおり、本件発明1、4?7、17は、甲第1号証に記載された発明である、ということはできないから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当しない。
したがって、申立理由1によっては、本件請求項1、4?7、17に係る特許を取り消すことはできない。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項)について
(2-1)本件発明1について
ア 甲1発明は、上記「(1)(1-1)」で述べたとおりであり、また、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、上記「(1)(1-2)(1-2-1)ア」で述べたとおりであるので、以下、上記相違点の容易想到性について以下検討する。

イ 検討
事案に鑑み、上記相違点Bについて検討する。
(ア)甲1発明は、「第1の光学特性を含む光を放出する光源1420と、出力面を含む光導波路1412であって、前記光源1420により放出された前記光の少なくとも一部分を前記出力面に対して向けるように構成された光導波路1412と」を有するものであって、「前記光源1420は光学素子1428のアレイと光学的に位置合わせして配置されたLEDダイ1424のアレイ1422を含み、光学素子1428は焦点合わせレンズ1429などの受動光学素子または反射体などの光学集光素子を含み、前記LEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」ものとして構成されるものである。
さらに、甲第1号証には、「図15は光ファイバ1413を含む光導波路1412を含む照明システム1400の他の実施形態を概略的に図示する。・・・また光学素子1428のアレイは光ファイバ1413のアレイと光学的に位置合わせされている。・・・図15の図示の実施形態の態様は各光源1412、光学素子(レンズ、焦点合わせ、集光または反射素子)のアレイ1428の対応する受動光学素子、および対応する光ファイバ1413との間で1対1対応である。通電されると各LEDダイ1424は対応するファイバ1413内に光を放つ個別光源として動作する。」(摘示(1g))と記載されているから、甲1発明の「複数のLED1424」のそれぞれは、1対1対応の関係にて「光導波路1412」を構成する各光ファイバ1413と位置合わせされることも明らかである。
したがって、甲1発明において、「光源1420」と「光導波路1412」とは、それら構成要素が技術的に密接に関連付けられて配設されたものというべきであるから、そのような配設構造のものにおいて、上記相違点Bに係る「シャーシ」を配する余地はない。要するに、甲1発明は、「1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」ことを前提として、「光導波路1412」を用いて「前記光源1420により放出された前記光の少なくとも一部分を前記出力面に対して向けるように構成」し、「前記光導波路1412の前記出力面からの光を受光するように」「電子放出性物質1440」を「配置」しているのであるから、「電子放出性物質1440」からの後方回帰光を進入させるような空間を有する構成とすべきものではなく、むしろそのような空間を設けることには阻害要因があるというべきである。
(イ)ところで特許異議申立人は、平成30年8月9日付けの意見書で、上記相違点Bにかかる本件発明1の構成に関し、甲第1号証の図15は、甲1発明の一態様に過ぎず、図15は光源1320と光導波路1312との結合を説明する「任意の適当な技術」の一例に過ぎないものであり、また、甲第1号証には、図1に光源20、干渉反射体30、電子放出性物質40がこの順に、かつ、それぞれ空間を設けて配置されていることが開示され、同様の構成は図2?4、14にも開示されているから、甲1発明においても後方回帰光が進入する空間は存在し、複数の発光素子を部分的に駆動するときの、暗部となるべき部分への色つきは発生しないとは言えない、旨主張する(4頁13行?5頁8行)。
しかし、甲第1号証の図1?4、14に記載された構造は、甲1発明のように「1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」ことを前提とした構成のものではないから、そもそも、複数の発光素子を部分的に駆動するときの暗部となるべき部分への色つき発生は存在しない。これについて補足すれば、図1?4に記載された構造は、光源、干渉反射体、電子放出性物質がこの順に配置されているものの、上記電子放放出性物質から出力された光は、入力面と出力面とを有する光導波路にて導出されるものであるから、甲1発明のように、「1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」ことが予定される構成のものではない。
また、甲第1号証には、図14に記載された構造が、甲1発明のように「1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能である」ものとして構成されることは記載されていないし、仮にそのように構成しても、図14に示される光源1320から発せられた光は、複数の光ファイバ1313を含む光導波路1312にて導出されるものであって、その配設態様は甲1発明と変わるものではないから、上記(ア)で述べたとおり、上記相違点Bに係る「シャーシ」を配する余地はなく、むしろ阻害要因があるというべきである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明と上記相違点A?Dにおいて相違するものであるところ、少なくとも相違点Bに係る本件発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点A、C及びDを検討するまでもなく、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2-2)本件発明2、4?17について
本件発明2、4?17は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定して発明を特定したものであるから、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件請求項1、2、4?17に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項1、2、4?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜と、
前記励起光源及び前記波長選択性反射膜の間に位置する拡散板と、
前記蛍光体シートの上方に設けられた光学フィルム群と、を有し、
前記蛍光体シートと波長選択性反射膜とが隣接して配置される、
ことを特徴とする部分駆動型光源装置。
【請求項2】
前記拡散板が、前記波長選択性反射膜及び前記蛍光体シートの支持体の少なくとも一部を兼ねる、請求項1に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが一体化している、請求項1または2に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項5】
前記励起光源における前記複数の発光素子が格子状に配列する、請求項1、2又は4のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項6】
前記発光素子が青色LEDである、請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項7】
前記波長選択性反射膜は、前記青色LEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色から赤色にかけての波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項6に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項8】
前記発光素子がマゼンタLEDである、請求項1、2、4又は5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項9】
前記マゼンタLEDは、青色LEDと、該青色LEDのチップ上方面に配置された赤色蛍光体から構成される、請求項8に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項10】
前記赤色蛍光体はフッ化物赤色発光蛍光体である、請求項9に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項11】
前記フッ化物赤色発光蛍光体は、K_(2)SiF_(6)である、請求項10に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項12】
前記波長選択性反射膜は、前記マゼンタLEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色の波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項8?11のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項13】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、硫化物系蛍光体である、請求項1、2、4?12のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項14】
前記硫化物系蛍光体は、赤色硫化物蛍光体及び緑色硫化物蛍光体のうちの少なくともいずれかを含む、請求項13に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項15】
前記赤色硫化物蛍光体は、硫化カルシウム蛍光体であり、前記緑色硫化物蛍光体は、チオガレート蛍光体である、請求項14に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項16】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、イットリウムセリウムアルミニウムガーネット蛍光体である、請求項1、2、4?7のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項17】
請求項1、2、4?16のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-22 
出願番号 特願2017-21584(P2017-21584)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F21S)
P 1 651・ 113- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
仁木 学
登録日 2017-07-21 
登録番号 特許第6178027号(P6178027)
権利者 デクセリアルズ株式会社
発明の名称 部分駆動型光源装置及びそれを用いた画像表示装置  
代理人 柿沼 公二  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 柿沼 公二  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 杉村 憲司  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 福井 敏夫  
代理人 福井 敏夫  

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