• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F25B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F25B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F25B
管理番号 1351446
異議申立番号 異議2018-700709  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-31 
確定日 2019-05-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6380927号発明「冷凍機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6380927号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6380927号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成26年4月25日に出願され、平成30年8月10日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年8月31日に特許異議申立人小野由紀(以下「申立人」という。)より、請求項1?6に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件の発明
特許第6380927号の請求項1?6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】
圧縮機および凝縮器を備え、前記圧縮機の上流側の冷媒配管および前記凝縮器の下流側の冷媒配管が冷却器に接続される冷凍機において、
凝縮器の下流側の冷媒配管から分岐して圧縮機の冷却用インジェクションポートに接続される分岐管と、
前記分岐管の中途部に配置され、前記凝縮器から流出する冷媒と前記分岐管を流れる冷媒とを熱交換させるエコノマイザと、
前記分岐管の前記エコノマイザの上流側と下流側とを接続するバイパス管と、を備え、
前記分岐管に流入する冷媒を前記エコノマイザに通す流路と、前記バイパス管に通す流路とを選択可能とし、
前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択することを特徴とする冷凍機。
【請求項2】
冷媒を前記エコノマイザに通す流路を開閉するエコノマイザ流路開閉弁と、前記バイパス管の流路を開閉するバイパス管流路開閉弁と、を備え、
前記エコノマイザ流路開閉弁および前記バイパス管流路開閉弁を開閉することで、流路を選択することを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
【請求項3】
前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザ流路開閉弁を開にするとともに前記バイパス管流路開閉弁を閉にし、
前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記エコノマイザ流路開閉弁を閉にするとともに前記バイパス管流路開閉弁を開にすることを特徴とする請求項2に記載の冷凍機。
【請求項4】
前記分岐管の中途部であって前記エコノマイザおよび前記バイパス管の上流側に冷媒を膨張させる膨張手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷凍機。
【請求項5】
前記膨張手段は膨張弁であり、前記エコノマイザに通す流路が選択されている場合には、前記バイパス管に通す流路が選択されている場合よりも、前記膨張弁の開度が大きく制御されることを特徴とする請求項4に記載の冷凍機。
【請求項6】
前記凝縮器と前記エコノマイザとの間に、冷媒を冷却する過冷却器が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷凍機。」

第3 申立理由の概要
申立人が主張する取消理由は、概略以下のとおりである。
1 本件発明は、「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択すること」(以下「発明特定事項F」という。)との事項を特定するものであるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、冷媒配管の断熱処理が施されているか否かを検出する手段について記載はなく、また検出する手段が出願時の技術常識でもないので、当業者は、どのような手段で冷凍機に断熱処理が施されているか否かを検出させれば良いかが理解できないため、本件発明を実施することができず、本件特許の発明の詳細な説明の記載が不備のため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
2 本件発明は、物の発明、または方法の発明の何れとも認定することができないので、カテゴリーが不明確であり、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
3 本件発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び甲第2号証?甲第4号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


甲第1号証:特開平3-67958号公報
甲第2号証:特開2000-193328号公報
甲第3号証:特開2006-90563号公報
甲第4号証:特開2013-142487号公報
以下、甲第1号証?甲第4号証を、「甲1」?「甲4」という。

第4 刊行物の記載
1 甲1の記載事項及び甲1発明
(1) 甲1記載事項
甲1には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「(1)圧縮機(1)、凝縮器(2)、主減圧機構(3)及び蒸発器(4)を順次接続してなる主冷媒回路(7)と、該主冷媒回路(7)の凝縮器(2)と主減圧機構(3)との間の液管(5a)を圧縮機(1)の中間圧となる箇所に冷媒が上記主減圧機構(3)及び蒸発器(4)をバイパスして流通するよう接続する第1バイパス路(11)と、該第1バイパス路(11)を流れる冷媒を減圧する第1減圧機構と、該第1減圧機構による冷媒の減圧効果に基づき冷凍能力を増大させるエコノマイザとを備えた冷凍装置において、
上記主冷媒回路(7)の液冷媒を、上記第1バイパス路(11)のエコノマイザをバイパスして圧縮機(1)の中間圧となる箇所に流通させる第2バイパス路(14)と、該第2バイパス路(14)を流れる冷媒を減圧する第2減圧機構(16)と、主冷媒回路(7)の液管(5a)中の冷媒の一部を圧縮機(1)の中間圧となる箇所にバイパスさせる経路を第1バイパス路(11)のエコノマイザ側と第2バイパス路(14)側とに選択的に切換える切換手段(51)とを備えたことを特徴とする冷凍装置。
(2)圧縮機(1)はアンローダ機構(1a)により運転容量を調節されるものであり、
圧縮機(1)の最低容量時に容量を低減すべき指令信号が出力されたときに液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する切換制御手段(52A)を備えたことを特徴とする請求項(1)記載の冷凍装置。
(3)第1減圧機構は圧縮機(1)の吐出管(5b)に感温筒(17a)を有する自動膨張弁(17)であり、
圧縮機(1)の吐出管(5b)の温度を検出する吐出管温度検出手段(Th1)と、該吐出管温度検出手段(Th1)の出力を受け、吐出管温度が所定の設定値以上のときには液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する切換制御手段(52B)とを備えたことを特徴とする請求項(1)記載の冷凍装置。
(4)圧縮機(1)はアンローダ機構(1a)により運転容量を調節されるものであり、第1減圧機構は圧縮機(1)の吐出管(5b)に感温筒(17a)を有する自動膨張弁(17)であるとともに、
圧縮機(1)の容量変化時、容量を増大すべき指令信号が出力されたときには、液管(5a)中の冷媒の一部が一定時間第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する切換制御手段(52C)を備えたことを特徴とする請求項(1)記載の冷凍装置。
(5)エコノマイザは、主冷媒回路(7)の液管(5a)の一部で形成され、液冷媒が流通する内管(9)と、第1バイパス路(11)に介設されかつ上記内管(9)とは所定の密閉円筒状の外側空間(10a)を有するようにその外方に設けられた外管(10)とを有する二重管構造をなし、第1減圧機構で減圧されたガス冷媒が内管(9)中の液冷媒との熱交換可能に上記円筒状空間を流通するよう構成された中間冷却器(8)であることを特徴とする請求項(1),(2),(3)又は(4)記載の冷凍装置。」(「2.特許請求の範囲」)
「(発明が解決しようとする課題)
上記のようなエコノマイザにより、例えば第4図のモリエル線図に示すように、冷凍サイクルが同図実線のような冷凍サイクルになる結果、エンタルピ変化Δiがエコノマイザを使用しないときのΔi_(1)からΔi_(2)へと増大して、冷凍効果が増大するものである。
しかしながら、例えばアンローダ機構により圧縮機の運転容量を多段に調節するようにしたものの場合、制御対象(例えば液体冷却装置における液体温度等)の温度制御精度を向上させるべく、圧縮機の停止回数を減じる必要があるが、最低アンローダの容量値を低く設定して停止状態との間の容量変化幅を小さくしようとすると、冷媒循環量が低下するので、潤滑油の冷媒回路内への滞留により圧縮機の焼付き等が生じる虞れがある。
また、特に、上記エコノマイザにおける減圧弁として吐出管に感温筒を有する自動膨張弁を使用すると、例えばアンローダ付き圧縮機で起動又はロードアップする場合、吐出圧力の上昇はすぐに検出されるが吐出ガス温度の上昇はすぐには感温筒で検出されないので、一時的に自動膨張弁の開度が閉じる方向に作動し、吐出ガス温度が過上昇して潤滑油が劣化する等、信頼性を損ねる虞れがある。
さらに、通常運転時においても、冷房負荷等の条件が変動した場合、上記のようにエコノマイザを設けたことによりその変化に対する系全体の応答が遅くなるので、吐出管温度の上昇に迅速に対応できず、信頼性を損ねる虞れがあった。
本発明は上記のような諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒回路全体の機能を害することなくエコノマイザの機能のみを停止させる手段を講ずることにより、信頼性の向上を図ることにある。」(2ページ左下欄14行?3ページ左上欄8行)
「(実施例)
以下、本発明の実施例について、第2図?第9図に基づき説明する。
第2図は本発明の実施例を示し、(1)は圧縮機、(1a)はサクション・ベーン制御により圧縮機(1)の運転容量を100,70,40,20及び0%に変化させるアンローダ機構、(2)は凝縮器、(3)は主減圧機構としての外部均圧式の蒸発器用自動膨張弁、(4)は制御対象を冷却するための蒸発器、(3a)は蒸発器(4)の出口側に配置された上記自動膨張弁(3)の感温筒であって、上記各機器(1)?(4)は冷媒配管(5)により冷媒の循環可能に接続され、凝縮器(2)で得た冷熱を蒸発器(4)側の制御対象に移動させるようにした主冷媒回路(7)が構成されている。
ここで、上記冷媒回路(7)の液管(5a)には、冷凍能力を効率的に増大させるエコノマイザとしての中間冷却器(8)が設けられていて、該中間冷却器(8)は、上記主冷媒回路(7)の液管(5a)の一部をなしその内側空間(9a)を液冷媒が流通する内管(9)と、該内管(9)との間に密閉環状の外側空間(10a)を挟んで設けられた外管(10)とからなる二重管構造をしている。そして、上記中間冷却器(8)の外側空間(10a)を介して、液管(5a)と上記圧縮機(1)の中間圧となる箇所との間には、主冷媒回路(7)中の液冷媒の一部を上記自動膨張弁(3)及び凝縮器(4)をバイパスして圧縮機(1)に戻すようにした第1バイパス路(11)が設けられていて、該第1バイパス路(11)の中間冷却器(8)と液管(5a)との間に、第1バイパス路(11)の冷媒の流れを開閉制御する第1開閉弁(12)と、第1バイパス路(11)を流れる冷媒を減圧する減圧機構としての第1キャピラリチューブ(13)とが液管(5a)側から順に介設されている。すなわち、主冷媒回路(7)の液管(5a)を流れる液冷媒の一部を第1キャピラリチューブ(13)で蒸発させて圧縮機(1)の中間圧となる箇所にバイパスさせるとともに、中間冷却器(8)において、その蒸発による冷熱で内管(9)中を流れる液冷媒を過冷却するようにしている。
さらに、本発明の特徴として、上記第1バイパス路(11)において、冷媒を第1バイパス路(11)の中間冷却器(8)をバイパスして圧縮機(1)の中間圧となる箇所に流通させるための第2バイパス路(14)が設けられていて、該第2バイパス路(14)には、第2バイパス路(14)を開閉する第2開閉弁(15)と、冷媒を減圧する第2減圧機構としての第2キャピラリチューブ(16)とが順に介設されている。すなわち、上記第1,第2開閉弁(12),(15)の開閉を交互に切換えることにより、上記第1バイパス路(11)を流れる冷媒の流れを第1バイパス路(11)の中間冷却器(8)側と第2バイパス路(14)側とに選択切換える切換手段(51)が構成されている。
そして、冷凍装置の運転時における第1,第2開閉弁(12),(15)の開閉制御について、第3図のフローチャートに基づき説明するに、ステップS_(1)で中間冷却器(8)を使用する通常運転を行いながら、ステップS_(2)で圧縮機(1)の運転容量Uが最低アンローダ値U_(min)か否かを判別し、最低アンローダ値U_(min)であれば、さらにステップS_(3)で圧縮機(1)の容量Uのダウン信号(以下、Uダウン信号とする)が入力されているか否かを判別して、Uダウン信号が入力されていれば、圧縮機(1)を停止させることなく冷凍能力を減少させる必要があると判断し、ステップS_(4)で上記第1開閉弁(12)を閉じ第2開閉弁(15)を開いて、液冷媒の一部を第2バイパス路(14)側にバイパスさせる。そして、ステップS_(5)でUダウン信号が解除されるのを待って、上記ステップS_(1)の通常運転に戻る。一方、上記ステップS_(2)の判別で圧縮機(1)の運転容量Uが最低アンローダ値U_(min)でない場合、又はステップS_(3)の判別でUダウン信号が出力されていない場合には、ステップS_(1)に戻って通常運転を行う。
上記フローにおいて、ステップS_(4)により、圧縮機(1)の最低容量による運転時、容量低減信号が出力されたときには、液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう上記切換手段(51)を制御する切換制御手段(52A)が構成されている。
したがって、請求項(1)の発明では、液冷媒の一部を第1キャピラリチューブ(第1減圧機構)(13)で減圧させて第1バイパス路(11)側にバイパスさせ、エコノマイザ(上記実施例では、中間冷却器(8))で主冷媒回路(7)の液冷媒を過冷却するように構成するとともに、第1バイパス路(11)のエコノマイザをバイパスして冷媒を圧縮機(1)の中間圧となる箇所にバイパスさせる第2バイパス路(14)を設けて、切換手段(51)により、冷媒の流れを第1バイパス路(11)のエコノマイザ側と第2バイパス路(14)側とに選択的に切換えるようにしたので、必要に応じて冷凍能力の低減が可能となる。
すなわち、上記第2図中に示す各点A?Gにおける冷媒状態の変化を第4図のモリエル線図に示すように、エコノマイザを使用するモードでは、図中実線で示すごとく、冷凍サイクルは主冷媒回路(7)でA-B-C-D-E-Aと変化するサイクルと、第1バイパス路(11)で(A-B-)F-G-Aと変化するサイクルとになる。つまり、第1バイパス路(11)でF-Gに変化するエンタルピ分だけ主冷媒回路(7)でB-Cまで冷媒が過冷却されることにより、冷凍効果が増大する結果、冷凍能力が増大するのである。
一方、圧縮機(1)にバイパスさせる冷媒の流れを第2バイパス路(14)側に切換えてエコノマイザを使用しないモードでは、図中破線で示すごとく、冷凍サイクルは主冷媒回路(7)でA-B-d-e-Aと変化するサイクルと、第2バイパス路(14)側で(A-B-)g-Aと変化するサイクルとになる。
以上により、エコノマイザを使用した冷凍サイクルにおけるエンタルピ差Δi_(2)(図中のD-E間に相当)に対してエコノマイザを使用しない冷凍サイクルにおけるエンタルピ差Δi_(1)(図中のd-e間に相当)が過冷却分(B-C間に相当)だけ小さくなり、冷凍効果が低減することが分かる。すなわち、圧縮機(1)の容量を変えることなくつまり冷媒循環量を低減することなく、冷凍能力を低減することができ、能力調節範囲の拡大を図ることができる。」(4ページ左下欄11行?6ページ左上欄17行)
(2) 甲1発明
上記(1)の甲1記載事項及び図面を総合して、上記請求項1で特定する「主冷媒回路(7)の液管(5a)中の冷媒の一部を圧縮機(1)の中間圧となる箇所にバイパスさせる経路を第1バイパス路(11)のエコノマイザ側と第2バイパス路(14)側とに選択的に切換える切換手段(51)」の「切換え」について特定する上記請求項2に着目すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。

「圧縮機(1)、凝縮器(2)、主減圧機構(3)及び蒸発器(4)を順次接続してなる主冷媒回路(7)と、該主冷媒回路(7)の凝縮器(2)と主減圧機構(3)との間の液管(5a)を圧縮機(1)の中間圧となる箇所に冷媒が上記主減圧機構(3)及び蒸発器(4)をバイパスして流通するよう接続する第1バイパス路(11)と、該第1バイパス路(11)を流れる冷媒を減圧する第1減圧機構と、該第1減圧機構による冷媒の減圧効果に基づき冷凍能力を増大させるエコノマイザとを備えた冷凍装置において、
上記主冷媒回路(7)の液冷媒を、上記第1バイパス路(11)のエコノマイザをバイパスして圧縮機(1)の中間圧となる箇所に流通させる第2バイパス路(14)と、該第2バイパス路(14)を流れる冷媒を減圧する第2減圧機構(16)と、主冷媒回路(7)の液管(5a)中の冷媒の一部を圧縮機(1)の中間圧となる箇所にバイパスさせる経路を第1バイパス路(11)のエコノマイザ側と第2バイパス路(14)側とに選択的に切換える切換手段(51)とを備え、
圧縮機(1)はアンローダ機構(1a)により運転容量を調節されるものであり、
圧縮機(1)の最低容量時に容量を低減すべき指令信号が出力されたときに液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する切換制御手段(52A)を備えた冷凍装置。」

2 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記インバータ冷凍装置のように圧縮機を可変制御するためのインバータ基板を製造するためには、多大なコストがかかる。特にコンビニエンスストアの冷蔵用冷凍機のように圧縮機の容量が大きいものは、インバータ装置の製造コストが大きい。また、インバータはエネルギーロスが発生し、入力エネルギーが増えるといった問題点がある。また、従来のエコノマイザーユニット搭載冷凍機では、エコノマイザー側の低圧を検知して圧縮機8を間欠制御するため、凝縮器を出た液冷媒の過冷却をとりすぎ、入力エネルギが増えるという問題点がある。また、メイン側の負荷変動に応じた、エコノマイザーユニット内の圧縮機制御の追従性が良くない。さらに、従来のエコノマイザーユニット搭載冷凍機では、エコノマイザー側の圧縮機8の起動発停回数が多いため、エネルギーロスも多くなる。また、エコノマイザーユニット搭載の冷凍機では、凝縮器2を出た液冷媒は過冷却されているため外気温度より約10?20℃ほど低くなる。従って、この液冷媒はショーケース、冷蔵庫の膨張弁に流入するまでの間に、外気と熱交換しやすく、エコノマイザーユニットを搭載しない冷凍装置に比べて過冷却の効果が失われやすい。従って、冷凍機と室内側を連結している配管の断熱材を厚く巻く必要がある。さらに、従来の冷凍装置でショ-ケ-スが増加するような負荷が増加する場合は、冷凍装置の能力アップのために冷媒流量が増加し、熱源機側ユニットと負荷側ユニットとを接続する配管も配管径の大きなものに交換する必要があった。そのため費用の増加が大きかった。」
「【0033】次に動作を説明する。第1の圧縮機1を吐出した高圧のガス冷媒は第1の凝縮器2で外気との熱交換により凝縮・液化して高温高圧の液冷媒となる。液冷媒は液配管18を通じて負荷側ユニット16へと送られる。負荷側ユニット16に送られた液冷媒はショーケース、冷蔵庫内のエコノマイザ-内の熱交換装置11で過冷却され、第1の膨張弁3で膨張し、第1の蒸発器4で蒸発し、ショ-ケ-ス、冷蔵庫内の被冷却物を冷却する。ショ-ケ-ス、冷蔵庫が複数ある場合は、熱交換装置11で過冷却された冷媒が並列の分岐管により流される。従来のエコノマイザ-搭載冷凍機では、室外に設置されたエコノマイザ-で第1の凝縮器2を出た液冷媒を過冷却する。通常のコンビニエンスストア、小型店舗の場合、室外に設置したエコノマイザ-を設置した熱源機側ユニットと室内に設置したショーケースは30m程度の液配管、低圧配管によって接続されているため、室外で過冷却をとった液冷媒が室内のショーケースまで移送される際、外気との熱交換をおこし、過冷却の効果が減るため、これを防ぐために室外と室内のユニットをつなぐ液配管に断熱材を厚く巻く必要がある。しかし、この実施の形態による冷凍装置では、過冷却をとるエコノマイザ-が室内側の負荷側ユニット16であるショ-ケ-スなどの内部に設置されているため、液冷媒の過冷却は室内側で行われる。このように、過冷却を室内側で行うことによって、過冷却をとった液冷媒と外気との熱交換を防ぐことができる。従って、エコノマイザ-をショーケース、冷蔵庫16内に配置することによって、液配管18の冷媒温度はエコノマイザ-を搭載しない冷凍機と変わらないため、液配管18にまく断熱材の量をエコノマイザーユニットを搭載しない冷凍機並みに抑えることができる。」

3 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の冷凍装置の一実施形態を示す系統構成図である。本実施形態の冷凍装置は、図1に示すように、本体1とクーラ3を冷媒管路で連結して構成されている。本体1は、圧縮機5、凝縮器7、受液器9、熱交換器11および過冷却器13を備えている。クーラ3は膨張弁15および蒸発器17を備えている。」
「【0013】
次に、本実施形態の特徴部および過冷却手段について説明する。過冷却器13は冷媒管路21に設けられ、熱交換器11は受液器9から過冷却器13に至る冷媒管路21に設けられている。熱交換器11は、凝縮器7を通流する空気の流路に配置されている。熱交換器11から過冷却器13に至る冷媒管路21から分岐管27が分岐し、電磁弁29および減圧手段であるキャピラリ31を介して過冷却器13の流路25の一端に連結されている。キャピラリ31は流路25内の圧力が所定の値になるように調整されている。流路25の他端は圧縮機5の中間圧力部に連結されている。ここで、中間圧力部とは、例えば、ロータリー式の圧縮機における圧縮途中の圧力室や、複数の圧縮機を直列に配置してなる多段式の圧縮機における中間圧力ポートをいう。また、分岐管27から分岐管33が分岐して設けられ、電磁弁35および減圧手段である電子式膨張弁37を介して圧縮機5の中間圧力部に連結されている。すなわち、分岐管33は過冷却器13をバイパスして圧縮機5の中間圧力部に液冷媒を供給するものである。また、電子式膨張弁37は、圧縮機5の温度が設定温度になるように開度が制御される。
【0014】
このように構成した冷凍装置の動作について説明する。まず、冷凍装置の運転が開始されると、圧縮機5はガス冷媒を圧縮して凝縮器7に吐出する。凝縮器7に流入したガス冷媒は、凝縮器7を通流する空気により冷却されて凝縮し液化する。凝縮器7で液化された冷媒は、冷媒管路19を介して受液器9に流入する。受液器9に流入した冷媒は、容器内で気相と液相に分離される。受液器9内の液冷媒は、飽和温度に近いため過冷却度が少ない。したがって、冷媒配管における圧力損失や外熱などにより液冷媒が再蒸発するフラッシュ現象が発生しやすい状態になっている。この液冷媒は、受液器9内の液相部から冷媒管路21を介して抜き出され、熱交換器11で空気により過冷却され、安定した状態になる。
【0015】
熱交換器11で過冷却された冷媒は、後述するように過冷却器13において液冷媒を蒸発させて得た蒸発潜熱により過冷却される。過冷却器13で過冷却された冷媒は膨張弁15で減圧されて蒸発器17に流入する。蒸発器17に流入した液冷媒は蒸発して冷却対象を冷却する。蒸発器17において蒸発した冷媒は冷媒管路22を介して圧縮機5に戻される。
【0016】
一方、熱交換器11で過冷却された冷媒の一部は、分岐管27に流入し電磁弁29を通流してキャピラリ31で減圧されて過冷却器13の流路25に流入する。流路25に流入した冷媒は、流路25内で蒸発し冷媒管路21内の冷媒を過冷却し、流路25から排出された冷媒は、圧縮機5の中間圧力部に注入される。このいわゆる中間圧インジェクションにより圧縮機5が冷却されることになる。
【0017】
また、分岐管27に流入した冷媒の一部は、分岐管27から分岐した分岐管33を介して分流し、電磁弁35および電子式膨張弁37で減圧されて圧縮機5の中間圧力部に注入される。このとき、電子式膨張弁37は圧縮機5の温度に応じて開度が調整され、圧縮機5の温度が適正に保たれている。さらに、電磁弁29、35は、例えば、圧縮機5の吐出ガス温度、吐出ガス過熱度、周囲温度、液冷媒配管温度などが所定値以下になった時に閉じられるように制御されている。これによれば、圧縮機5に過大な量の冷媒が流入することを防止し、例えば、圧縮機5の温度が下がり過ぎて鉱油の粘度が上がるなどの不具合を回避できる。さらに、過冷却器13を介して圧縮機5に冷媒を注入する経路と過冷却器13を介さずに圧縮機5に冷媒を注入する経路とが並列に独立しているので、過冷却器13に供給する液冷媒の量に関係なく圧縮機5に注入する冷媒量を調整できる。」

4 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が図面とともに記載されている。
「【0017】
本実施例では、前記凝縮器3の下流側に、凝縮器3からの冷媒を収容する受液器4が設置され、更にこの受液器4の下流側には、該受液器4から出た液冷媒を空気と熱交換させて過冷却する空気過冷却熱交換器5が配置されている。これにより、蒸発器8までの管路内の気泡の発生(いわゆるフラッシングの発生)を好適に防止することができる。その結果、後述する過冷却熱交換器6に導入される冷媒流量の変動を抑制でき、冷凍能力を調整させることができる。前記凝縮器3及び空気過冷却熱交換器5は、本実施例ではクロスフィン型熱交換器で構成され、これらには冷却ファン60により屋外空気が通風される。」
「【0037】
前記コントローラ16は、前記吸入圧力センサ14で検知した吸入圧力値に応じて(換言すれば、冷凍装置の負荷変動に応じて)、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度を制御するように構成されている。液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度を制御して、液冷媒冷却回路41を流れる冷媒を減圧しつつその冷媒量を変化させることにより、前記冷凍機ユニットIIの冷凍能力を変化させることができる。
【0038】
即ち、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度が大きくなるように制御すれば、該液冷媒冷却回路41を流れる冷媒量を増大することができ、主回路(第1流路61側)を流れる液冷媒の過冷却量を増大して冷凍能力を増大することができる。逆に、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度が小さくなるように制御すれば、該液冷媒冷却回路41を流れる冷媒量が低減し、主回路を流れる液冷媒の過冷却量が小さくなるから冷凍能力を低下させることができる。
【0039】
このように液冷媒冷却回路41を動作させることにより、図2のモリエル線図の点線62に示すように、液冷媒の過冷却度を増加させて冷凍能力を増大できると共に、圧縮機1の中間圧部に低温の冷媒が注入されるので、圧縮機1から吐出される吐出冷媒ガスの温度を低くすることもできる。
【0040】
即ち、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の制御により、低圧機器IIIへ供給される液冷媒の過冷却度を変化させることができ、それによって低圧機器III側への冷媒循環量を変化させること無く冷凍能力を制御できると共に、低圧機器IIIの冷却負荷が小さい場合でも、前記圧縮機1への油戻り量が低減するのも防止することができる。
【0041】
次に、液インジェクション回路42の基本的な動作について、図1に基づき説明する。本実施例では、吐出ガス温度センサ15を備えており、吐出ガス温度センサ15の検出温度値に基づいて、前記コントローラ16は液インジェクション回路42に設けられている減圧手段(電子膨張弁を用いている場合には流量制御手段にもなる)9を制御する。前記減圧手段9を開くと、空気過冷却熱交換器5からの主回路を流れる液冷媒の一部は、前記液インジェクション回路42に分流される。この分流されて液インジェクション回路42を流れる液冷媒は、前記減圧手段9で減圧された後、前記圧縮機1の中間圧力部に設けられているインジェクションポートに注入される。
【0042】
前記減圧手段9は、前記吐出ガス温度センサ15での検出温度値が、設定温度以上となった場合に前記コントローラ16により開かれるように制御され、前記検出温度値が設定温度より低下した場合には閉じるように制御される。このように液インジェクション回路42を動作させることにより、圧縮機1を冷却してその温度上昇を防止できるから、信頼性の向上を図ることができる。」

第5 判断
1 理由1(特許法第36条第4項第1号)及び理由2(特許法第36条第6項第2号)について
(1) 本件発明1は、「前記分岐管に流入する冷媒を前記エコノマイザに通す流路と、前記バイパス管に通す流路とを選択可能と」することについて、「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択する」と特定するものである。 そして、当該記載に基づくと、本件発明1の冷凍機において流路を選択する場合には、「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択する」の「物」として、本件発明1は、明確に理解できるから、本件発明1に係る特許請求の範囲の記載が不明確であるとするところはない。また、本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接に引用して、さらに特定するものであり、本件発明1と同様に、本件発明2?6に係る特許請求の範囲の記載が不明確であるとすることはできない。
また、本件発明1が「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択する」ことに関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
「本実施の形態では、バイパス管流路開閉弁37及びエコノマイザ流路開閉弁36の開閉状態を切り替えることで、分岐管30に流入する冷媒を、エコノマイザ18に流す流路とバイパス管31に流す流路とのいずれかに流すように選択可能である。」 (【0019】)
「『バイパス状態』及び『エコノマイザ使用状態』の切り替えは、例えば、冷凍機12の設置時に作業者によって手動で行われるが、この切り替えは、前記制御部が制御する電磁弁によって行われても良い。」(【0021】)
「また、冷凍機12は、冷媒をエコノマイザ18に通す流路を開閉するエコノマイザ流路開閉弁36と、バイパス管31の流路を開閉するバイパス管流路開閉弁37と、を備え、エコノマイザ流路開閉弁36およびバイパス管流路開閉弁37を開閉することで、流路を選択する。このため、エコノマイザ流路開閉弁36及びバイパス管流路開閉弁37を開閉するだけで、エコノマイザ18に通す流路とバイパス管31に通す流路とを簡単に選択できる。」(【0029】)
そうすると、上記発明の詳細な説明の記載された事項を踏まえると、当業者は、バイパス管流路開閉弁37及びエコノマイザ流路開閉弁36の開閉状態を切り替えることで、分岐管30に流入する冷媒を、エコノマイザ18に流す流路とバイパス管31に流す流路とのいずれかに流すように選択可能であって(【0019】)、当該「バイパス状態」及び「エコノマイザ使用状態」の切り替えは、冷凍機12の設置時に作業者によって手動で行われるが、この切り替えは、制御部が制御する電磁弁によって行うこともできるものと(【0021】)、当業者は理解することができる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとすることはできない。
この点は、本件発明1を直接又は間接に引用して、さらに特定するものである請求項2?6についても同様である。
(2) 小括
以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、上記理由(1)の点で、特許法第36条第6項第2号及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではないので、取り消すべきものであるとすることはできない。
2 理由3(特許法第29条第2項)について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両発明は、「圧縮機および凝縮器を備え、前記圧縮機の上流側の冷媒配管および前記凝縮器の下流側の冷媒配管が冷却器に接続される冷凍機において、
凝縮器の下流側の冷媒配管から分岐して圧縮機の冷却用インジェクションポートに接続される分岐管と、
前記分岐管の中途部に配置され、前記凝縮器から流出する冷媒と前記分岐管を流れる冷媒とを熱交換させるエコノマイザと、
前記分岐管の前記エコノマイザの上流側と下流側とを接続するバイパス管と、を備え、
前記分岐管に流入する冷媒を前記エコノマイザに通す流路と、前記バイパス管に通す流路とを選択可能とする、
冷凍機。」の点で一致するものの、上記選択可能とすることについて、本件発明1が、「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択する」ものであるのに対し、甲1発明は、「圧縮機(1)はアンローダ機構(1a)により運転容量を調節されるものであり、
圧縮機(1)の最低容量時に容量を低減すべき指令信号が出力されたときに液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する切換制御手段(52A)を備えた」ものである点で相違する(以下「相違点」という。)。
そこで、相違点について検討する。
上記相違点に係る本件発明1の特定事項は、甲1?4に記載されていない。そして、甲1発明は、上記相違点で述べた、「圧縮機(1)はアンローダ機構(1a)により運転容量を調節されるものであり、圧縮機(1)の最低容量時に容量を低減すべき指令信号が出力されたときに液管(5a)中の冷媒の一部が第2バイパス路(14)側に流れるよう切換手段(51)を制御する」ものであるから、この条件とは別の条件として「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択すること」とする動機付けが存在するとはいえない。
また、甲2の「エコノマイザーユニット搭載の冷凍機では、凝縮器2を出た液冷媒は過冷却されているため外気温度より約10?20℃ほど低くなる。従って、この液冷媒はショーケース、冷蔵庫の膨張弁に流入するまでの間に、外気と熱交換しやすく、エコノマイザーユニットを搭載しない冷凍装置に比べて過冷却の効果が失われやすい。従って、冷凍機と室内側を連結している配管の断熱材を厚く巻く必要がある。」及び「エコノマイザ-をショーケース、冷蔵庫16内に配置することによって、液配管18の冷媒温度はエコノマイザ-を搭載しない冷凍機と変わらないため、液配管18にまく断熱材の量をエコノマイザーユニットを搭載しない冷凍機並みに抑えることができる。」(上記第4の2参照。)との記載事項を参酌しても、「冷凍機と室内側を連結している配管の断熱材を厚く巻く」及び「エコノマイザ-をショーケース、冷蔵庫16内に配置する」との事項が認められるに過ぎず、上記動機付けが存在するとはいえないとした判断に影響するものではない。
また、甲3及び甲4には、本件発明1の「前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されている場合は、前記エコノマイザに通す流路を選択し、前記冷却器の冷媒配管に断熱処理が施されていない場合は、前記バイパス管に通す流路を選択する」ことに係る記載事項は認められない。
よって、相違点に係る本件発明の特定事項は、甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
(2) 本件発明2?6について
本件発明2?6は、本件発明1を直接又は間接に引用して、さらに限定するものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2?6は、上記甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとすることができたものではない。
(3) 以上のとおり、本件発明1?6は、甲1発明及び甲2?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-25 
出願番号 特願2014-91892(P2014-91892)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (F25B)
P 1 651・ 121- Y (F25B)
P 1 651・ 537- Y (F25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 山崎 勝司
槙原 進
登録日 2018-08-10 
登録番号 特許第6380927号(P6380927)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 冷凍機  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ