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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05B |
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管理番号 | 1351467 |
異議申立番号 | 異議2019-700119 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-02-14 |
確定日 | 2019-05-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6374571号発明「加熱装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6374571号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6374571号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?7に係る特許についての出願は、2013年9月12日(優先権主張2012年9月25日、日本国)を国際出願日とする特願2014-538144号の一部を平成29年6月1日に新たな特許出願としたものであって、平成30年7月27日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年2月14日に特許異議申立人 高橋 陽子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?7の特許に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 加熱対象となる板材の表面に対向して配置され、供給された高周波電流が流れることにより前記板材を誘導加熱する第一のコイル部と第二のコイル部とを備え、 前記第一のコイル部は、前記板材の表面に接触あるいは近接して配置され、 前記第二のコイル部は、前記板材の表面に対して、当該板材の表面に対する前記第一のコイル部の距離よりも離れて配置されると共に、前記第一のコイル部から所定の距離だけ離れた当該第一のコイル部の周囲に配置され、さらに、前記第一のコイル部を挟むよう当該第一のコイル部の両側方に位置して配置され、 さらに、前記第二のコイル部は、当該第二のコイル部の前記板材の表面に対向する面が、当該板材の表面から前記第一のコイル部の前記板材の表面に対向する部位と当該板材の表面に対して最も離れた部位との中間点までの距離よりも、前記板材の表面から離れて位置するよう配置されており、 隣り合って配置される前記第一のコイル部と前記第二のコイル部とは、それぞれに反対方向に電流が流れるよう構成されている、 加熱装置。 【請求項2】 請求項1に記載の加熱装置であって、 前記第二のコイル部は、当該第二のコイル部の前記板材の表面に対向する面が、当該板材の表面から前記第一のコイル部の前記板材の表面に対する対向面とは反対側の面までの距離よりも、前記板材の表面から離れて位置するよう配置されている、 加熱装置。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の加熱装置であって、 前記板材の表面に対向して配置され、当該板材を冷却する冷却部を備え、 前記冷却部は、前記第一のコイル部の周囲に、少なくとも当該第一のコイル部を挟むよう当該第一のコイル部の両側方に位置して配置される、 加熱装置。 【請求項4】 請求項3に記載の加熱装置であって、 前記冷却部は、前記第二のコイル部から所定の距離だけ離れて、前記第一のコイル部側とは反対側の側方に位置し、前記第一のコイル部を挟むよう配置されている前記第二のコイル部をさらに挟むよう配置されている、 加熱装置。 【請求項5】 請求項3又は4に記載の加熱装置であって、 前記冷却部は、前記板材の表面に対して、少なくとも当該板材の表面に対する前記第一のコイル部の距離よりも離れて配置されており、前記板材の表面と対向する部位から当該板材の表面に向かって冷却物質を排出することにより当該板材を冷却するよう構成されている、 加熱装置。 【請求項6】 請求項3乃至5のいずれかに記載の加熱装置であって、 前記第一のコイル部と前記第二のコイル部と前記冷却部とは、それぞれ前記板材の表面に沿って延びる直線状に形成されると共に、それぞれがほぼ平行に配置される、 加熱装置。 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載の加熱装置であって、 前記第一のコイル部と前記第二のコイル部とは、加熱対象となる前記板材である裏面側の一部が溶接された鋼板の表面に対向して配置され、 前記第一のコイル部と前記第二のコイル部とにより前記鋼板を表面側から加熱して、溶接による前記鋼板の歪みを取り除くよう構成されている、 加熱装置。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1?10号証(以下、「甲1」?「甲10」ともいう。)を提出し、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2?6に記載された事項に基いて、請求項3及び4に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2?9に記載された事項に基いて、及び請求項5?7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2?10に記載された事項に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1?7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 <証拠方法> 甲第1号証:特開2004-27276号公報 甲第2号証:特公平8-26413号公報 甲第3号証:特開昭63-279592号公報 甲第4号証:特開2000-12205号公報 甲第5号証:特開昭54-143744号公報 甲第6号証:特開2004-34069号公報 甲第7号証:特開2001-6860号公報 甲第8号証:特開2003-113416号公報 甲第9号証:特開2004-211187号公報 甲第10号証:特開平6-330178号公報 第4 甲1?10の記載等 1 甲1について (1)甲1の記載 甲1には、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示す。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、船舶における船体溶接部等に生じる歪の除去に適用され、鋼材の表面と所定間隙を存して設置され高周波電流が通電される加熱コイルにより該鋼材に誘導電流による熱を発生せしめて鋼材の変形部近傍を加熱することにより歪を除去する歪除去装置の加熱装置に関する。 ・・・ 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 鋼板の表面と所定間隙を存して配置された加熱コイルに高周波電流を通電して該鋼板に誘導電流による熱を発生せしめる加熱装置を備えた高周波誘導加熱歪取り装置においては、加熱コイルによる加熱部位を歪の発生部に効率的に入熱して歪を確実に除去することが要求される。 このためには、高周波電流の電流値を適正値に制御するとともに加熱コイルと鋼板の表面との間隙を適正間隙に調整することは必須であるが、これに加えて加熱コイルの鋼板の加熱部に対する水平方向位置つまり鋼板の加熱部からの距離を該鋼板の板厚や走行台車の走行速度に応じて適正に調整することを要する。 【0006】 しかしながら、図4に示される高周波誘導加熱歪取り装置にあっては、フェライトコア018に加熱コイル013を該加熱コイル013の巻回下面側が鋼板20の表面と平行になるように巻回し、該加熱コイル013の巻回中心を隅肉溶接される垂直な鋼板の板厚中心に合わせて設定し溶接ビードに沿って移動させるようになっているため、該加熱コイル013の鋼板20の加熱部つまり溶接ビード部に対する水平方向位置は前記設定位置に一元的に決まってしまう。 【0007】 従って、かかる従来技術にあっては、鋼板20加熱部つまり溶接ビード部に対する加熱コイル013の水平方向位置を、鋼板の板厚や走行台車の走行速度つまり加熱コイル013の移動速度に応じて、随時最適な位置に調整するのは不可能となり、このため過大加熱によって加熱コイル013に焼損が発生し、あるいは加熱不足により目標とする溶接部の歪取りがなされない、 等の問題点を有している。 【0008】 本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、鋼材の板厚や加熱コイルの移動速度等に対応して加熱部に対する加熱コイルの水平方向位置を調整可能として、加熱コイルによる過大加熱や加熱不足及びこれらに伴う不具合の発生を回避し、加熱コイルによって加熱部に効率的に入熱し目標とする加熱部の歪取りを確実になし得る歪除去装置の加熱装置を提供することを目的とする。」 イ 「【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、電源からの高周波電流を増幅トランスにて増幅して鋼材の表面と所定間隙を存して配設された加熱コイルに通電し、前記鋼材に誘導電流による発熱を生起して該鋼材の変形部近傍を加熱することにより該変形部及びその近傍の歪を除去するように構成された歪除去装置の加熱装置において、前記加熱コイルは、所定の間隔で以って対をなして配置され所定角度にて屈曲された電導体からなる2個の棒状部と、該棒状部の端部を結合する電導体からなる接続部とにより一体形成された2股状体にて構成されてなることを特徴とする歪除去装置の加熱装置を提案する。 【0010】 また、請求項2記載の発明は、電源からの高周波電流を増幅トランスにて増幅して鋼材の表面と所定間隙を存して配設された加熱コイルに通電し、前記鋼材に誘導電流による発熱を生起して該鋼材の変形部近傍を加熱することにより該変形部及びその近傍の歪を除去するように構成された歪除去装置の加熱装置において、前記加熱コイルは、所定間隔で以って対をなして配置された電導体からなる2個の棒状部と、該棒状部の端部を結合する絶縁体からなる接続部と、該接続部に巻回されて前記2個の棒状部を電気的に接続するコイルとを組み合わせ、2股状体にて構成されてなることを特徴とする。 【0011】 かかる発明によれば、加熱コイルを、電導体からなり対をなす2個の棒状部を所定の間隔で以って配置し、請求項1のように該棒状部の端部を電導体からなる接続部により結合して一体形成された2股状体にて構成し、あるいは請求項2のように外周にコイルが巻回された絶縁体からなる接続部により結合した2股状体にて構成し、一方側の棒状部から接続部を経て他方側の棒状部へと通電するようにしたので、該接続部の長さを変えて棒状部間の間隔が異なるようにした複数種類の加熱コイルを簡単に製作することができ、かかる複数種類の加熱コイルを準備しておいて、鋼板溶接の場合には溶接部(加熱部)の鋼板板厚あるいは加熱コイルの移動速度つまり走行台車の走行速度に応じて、溶接部と加熱コイルとの水平方向の位置が最適になるような加熱コイルを選出して用い、溶接部及びその近傍の加熱を行うことができる。 【0012】 従ってかかる発明によれば、従来技術のように、加熱コイルの鋼材加熱部に対する水平方向位置が一元的に決まってしまうことなく、該加熱コイルの水平方向位置を鋼材の板厚や加熱コイルの移動速度等に対応して自由に調整することが可能となる。 これにより、加熱コイルの鋼材加熱部に対する水平方向位置の不適正に伴う加熱コイルによる過大加熱や加熱不足及びこれらによる不具合の発生を回避することができ、加熱コイルによって加熱部に効率的に入熱し目標とする加熱部の歪取りを確実になすことができる。」 ウ 「【0016】 図1(A)は本発明の第1実施例に係る加熱コイルの外環斜視図、(B)加熱コイル使用時を示す(A)におけるZ-Z断面図である。図2は本発明の第2実施例に係る加熱コイルの外環斜視図である。図3は本発明に係る加熱装置を備えた鋼材の高周波誘導加熱歪取り装置の側面構成図である。 【0017】 本発明に係る加熱装置を備えた鋼材の高周波誘導加熱歪取り装置を示す図3おいて、20は溶接が施された鋼板、11は該鋼板20上を溶接ビードに沿って走行可能にされた走行台車である。 16は該走行台車11の外郭を構成する台車本体で、内部に電源17が装着されている。15は該台車本体16の前後下部に回転自在に4個取り付けられた車輪である。車輪15は、磁力により常時前記鋼板20の表面に接触しながら転動して該走行台車11を走行せしめるマグネット機構にて構成されている。 【0018】 1は前記台車本体16内に該台車本体16とは独立して上下動可能に設けられた内部支持部材である。該内部支持部材1は、上部に水平に設けられた水平部材3の前後端部から垂直下方に伸びる垂直部材3aとを結合した側面形状が略門形状に形成され、前後の垂直部材7の下部には前記鋼板20の表面を転動可能なガイドローラ4が回転自在に取り付けられている。 2は前記台車本体16の上部内面と前記内部支持部材1の水平部材3の上面との間に介装された皿ばねあるいはコイルばねからなるばねで、該台車本体16の上部内面により、前記ばね2の背部を前記内部支持部材1側に押圧している。前記内部支持部材1の高さは、前記ばね2の押圧作用により一定値Hに保持されている。 また、該内部支持部材1の前後端部はスラスト面14にて前記台車本体16の前後内面と当接されており、該内部支持部材1は前記車輪15の回転による台車本体16の前後移動に従い、前記ガイドローラ4を介して鋼板20の表面を前後移動可能となっている。 【0019】 前記内部支持部材1の水平部材3下部には前記電源17から導線6を介して供給される電流を増幅する増幅トランス12が固着され、さらに該増幅トランス12の下部には該増幅トランス12にて増幅された大電流が導線6を介して通電される加熱コイル13がコイル支持部材5を介して固着されている。 さらに、該加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間は、該加熱コイル13に高周波電流を通電して該鋼板20に誘導電流に伴う発熱を生起させるための間隙Cが形成されている。 【0020】 本発明は図3に示される鋼材の高周波誘導加熱歪取り装置における加熱装置10を構成する加熱コイル13の改良に係るものである。 加熱コイル13の第1実施例を示す図1(A)(B)において、該加熱コイル13は、所定の間隔Bで以って対をなして配置された2個の棒状部13f、13fと該棒状部13fの端部を結合する接続部13eとにより一体の2股状体にて構成され、銅材等の軟質である程度の可撓性を有する電導体からなる。 【0021】 2股状体からなる該加熱コイル13は長手方向適所において所定角度(90°が好ましい)にて上方に屈曲され、図3に示すように、上端部側を前記内部支持部材1の垂直部材7に固定され、接続部13e寄りの上面を前記コイル支持部材5に固定されている。 また、前記加熱コイル13は、前記棒状部13f、13fの内部及び接続部13eの内部を連通して冷却水通路13aが形成された中空体体に構成されている。 【0022】 かかる加熱コイル13において、前記棒状部13f、13fの間隔Bは、図1(B)に示すように、該加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間隙Cを勘案するとともに、鋼板20に隅肉溶接される垂直な鋼板20の板厚tに応じて、溶接部20cに対する加熱コイル13の水平方向位置が過大加熱あるいは加熱不足を起こさない最適位置になるように設定する。 具体的には、前記最適位置近傍であって前記間隔Bが異なる加熱コイル13を数種類準備しておき、前記鋼板20の板厚tに応じあるいは前記加熱コイルの移動速度に応じて間隔Bが最適の加熱コイル13を選出して組み込む。 【0023】 かかる構成からなる高周波誘導加熱歪取り装置による溶接歪除去作業時において、前記電源17から供給される電流は導線6を介して前記増幅トランス12に供給され、該増幅トランス12において大電流値の高周波電流に増幅されて導線6を介して前記加熱コイル13に通電される。そして、該加熱コイル13に流れる高周波電流により該加熱コイル13に間隙Cを存して近接された鋼板20に誘導電流(渦電流)が発生し、該誘導電流に伴うジュール熱により鋼板20の溶接部近傍を加熱して該部の歪を除去する。 【0024】 かかる実施例によれば、前記加熱コイル13を、対をなす2個の電導体からなる棒状部13f、13fを所定の間隔Bで以って配置し、該棒状部13f、13fの端部を電導体からなる接続部13eにより結合して一体形成された2股状体にて構成し、一方側の棒状部13fから接続部13eを経て他方側の棒状部13fへと通電するようにしたので、前記のように、該接続部13eの長さを変えて前記棒状部13f間の間隔Bが異なるようにした複数種類の加熱コイル13を簡単に製作することができ、かかる複数種類の加熱コイル13を準備しておいて、鋼板20の溶接部20cの鋼板板厚tあるいは加熱コイル13の移動速度つまり前記走行台車11の走行速度に応じて、溶接部20cと加熱コイル13との水平方向位置が最適になるような加熱コイル13を選出して用い、該溶接部20c及びその近傍の加熱を行うことができる。」 エ 「【0029】 【発明の効果】 以上記載の如く本発明によれば、加熱コイルを、電導体からなり所定の間隔で以って配置された2個の棒状部の端部を接続部により結合して2股状体にて構成し、一方側の棒状部から接続部を経て他方側の棒状部へと通電するようにしたので、該接続部の長さを変えて棒状部間の間隔が異なるようにした複数種類の加熱コイルを簡単に製作することができ、かかる複数種類の加熱コイルを準備しておいて、鋼板溶接の場合には溶接部の鋼板板厚あるいは加熱コイルの移動速度つまり走行台車の走行速度に応じて、溶接部と加熱コイルとの水平方向の位置が最適になるような加熱コイルを選出して用い、溶接部及びその近傍の加熱を行うことができる。 【0030】 従って、該加熱コイルの水平方向位置を鋼材の板厚や加熱コイルの移動速度等に対応して自由に調整することが可能となり、これにより、加熱コイルの鋼材加熱部に対する水平方向位置の不適正に伴う加熱コイルによる過大加熱や加熱不足及びこれらによる不具合の発生を回避することができ、加熱コイルによって加熱部に効率的に入熱し目標とする加熱部の歪取りを確実になすことができる。」 オ 「 」 (2)上記(1)から分かること ア 上記(1)ア?オによれば、甲1には、歪除去装置の加熱装置が記載されていることが分かる。 イ 上記(1)ウ及びオ(特に、段落【0019】?【0025】並びに図1(A)(B)及び図3)によれば、歪除去装置の加熱装置において、鋼板20の表面に対向して加熱コイル13が配置され、前記加熱コイル13は、高周波電流が通電されることにより前記鋼板20を誘導加熱する、所定の間隔Bで以て対をなして配置された2個の棒状部13f、13fと前記棒状部13fの端部を結合する接続部13eとにより一体の2股状体にて構成され、前記加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間は、前記鋼板20に誘導電流に伴う発熱を生起させるための間隙Cを存して近接されていることが分かる。 ウ 上記(1)ウ及びオ(特に、段落【0019】、【0020】及び【0024】並びに図1(A))によれば、加熱コイル13の隣合って配置される一方の棒状部13fと他方の棒状部13fとは、それぞれに反対方向に電流が流れるように構成されていることが分かる。 (3)上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「溶接部20c及びその近傍の加熱が行われる鋼板20の表面に対向して加熱コイル13が配置され、前記加熱コイル13は、高周波電流が通電されることにより前記鋼板20を誘導加熱する、所定の間隔Bで以て対をなして配置された2個の棒状部13f、13fと前記棒状部13fの端部を結合する接続部13eとにより一体の2股状体にて構成され、 前記加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間は、前記鋼板20に誘導電流に伴う発熱を生起させるための間隙Cを存して近接され、 前記加熱コイル13の隣合って配置される一方の前記棒状部13fと他方の前記棒状部13fとは、それぞれに反対方向に電流が流れるように構成されている、 歪除去装置の加熱装置。」 2 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 ア 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、配管の溶接継手部における残留応力改善のための高周波誘導加熱方法とその装置に関する。 〔従来の技術〕 BWRプラントにおける原子炉一次系を構成する機器および配管は従来からオーステナイト系ステンレス鋼が使用され、溶接部における材料の鋭敏化,高引張応力,環境条件の3因子の重畳により応力腐食割れが発生し、プラント稼動率の低下を招いた事例がある。応力腐食割れは上述の3因子のうちいずれか一因子を改善することで防止できるが、材料の取替えは工程,費用の面で採用に難点がある。 これらの解決策として使用されたのが高周波誘導加熱残留応力改善法(IHSIと称する)である。これは溶接部近傍の配管の内面に生じた引張応力を解消したり圧縮側に移行させるために、管内面を液体により冷却し乍ら溶接部近傍のみをその外側から適宜加熱手段で局部的に加熱し、その加熱された部分における配管の肉厚の内で応力改善に必要な温度差を付与することにより、加熱部に降伏点以上の熱応力を発生させた後、その部分を配管内に液体を流した状態で常温に冷却して、配管の内外面での温度差をなくすように行われるものである。 すなわち、配管を第11図に示されているような形状をした誘導加熱コイルで加熱する。なお同図記載の誘導加熱コイル1において2はターン、3は冷却用中空パイプ、4はコイル段落し部、5はコイル接合部である。配管の内面と外面とにはコイル1による加熱で温度差が生じるので、内外面には夫々引張,圧縮の降伏力が生じる。この時点で加熱を停止すれば配管内部の冷却水により配管は冷却され、外面には引張,内面には圧縮の残留応力が発生し応力が改善される。 このようなIHSIによる内面応力改善個所はすべてコイル1の幅内にあり、また鋭敏化の点より550℃以下の均一な加熱が条件になっている。この点横軸に配管の測定位置をとり、縦軸に加熱温度をとって測定位置による加熱温度が配管と対比して示されている第12図に示されているように、配管6の長手方向に複数個のターン7?11を有する加熱コイル1で加熱すると、配管6の外表面温度曲線13のようにコイル1の中央部である第3ターン9が最も加熱温度が高く、コイル1の端部になるに従って加熱温度は低くなるが、配管6の溶接継手部12は550℃近傍の望ましい温度で加熱されている。 ・・・ 〔発明が解決しようとする課題〕 上記従来技術は、溶接中心間距離 ・・・ 以内の近接する複数の溶接継手を有する配管で各溶接継手を単独で加熱することは、他の溶接継手部に対し加熱時の熱による応力への影響があり、各継手単独加熱実施は困難であった。また、それら複数の溶接継手部を従来の技術で同時加熱するのは困難であった。それは加熱時の温度分布は上述のように配管軸方向に対してコイル中心が最高加熱温度となり、コイル端に向うにつれて温度が低下するため、複数の溶接継手部を同時に加熱することは各溶接継手部の位置が最高加熱温度位置から離れることとなり、外表面加熱温度が低いので配管外表面と内表面との温度差が小さく、十分な応力改善が困難となるからである。・・・ 本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、T継手を含む近接する複数の溶接継手部を同時に加熱してその残留応力を同時に充分改善することを可能とした高周波誘導加熱方法とその装置を提供することを目的とする。」(2頁左欄25行?3頁左欄13行) イ 「〔課題を解決するための手段〕 本発明は、上記目的を達成するために、基本的には次のように構成する。 すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼製の配管上の近接した母管溶接継手部及び枝管溶接継手部(T継手)を、配管の外周に軸方向に配列して嵌装された複数個のターンより成る誘導加熱コイルで同時に加熱し、配管内に冷却水を通して、加熱された部分における配管の肉厚内に応力改善に必要な温度差を付与する高周波誘導加熱方法において、 前記母管溶接継手部の位置で母管側の配管に嵌装されるターンのターン内周・配管外周間のコイルクリアランスを、該ターンよりも元来,加熱温度が高くなる位置にあるターン(ここで、元来,加熱温度が高くなる位置にあるターンとは、全てのターンのコイルクリアランスを均一化した場合に、ターン全体の加熱温度分布のうち温度が高くなる位置にあるターンである)のコイルクリアランスよりも小さくし、 一方、前記枝管溶接継手部の近辺で母管側の配管に嵌装されるターンについては、同一ターンの周方向の範囲内で母管側の配管に対するコイルクリアランスを局部的に狭まらせて、そのコイルクリアランスの狭まった部分を母管側の配管の外表面のうち枝管が位置する側の面に対向させて、前記応力改善のための高周波誘導加熱を行なうことを特徴とする。 〔作用〕 上記構成によれば、ターンにより同時に高周波誘導加熱される配管領域の加熱温度分布のうち複数溶接継手部(母管溶接継手部,枝管溶接継手部)及びその近辺を最高加熱温度或いは最高加熱温度に近い特性にすることができる。 すなわち、母管側配管に嵌装されるターンのうち母管溶接継手部の位置で嵌装されるターンのコイルクリアランスが、該ターンよりも元来,加熱温度が高くなる位置にあるターンのコイルクリアランスよりも小さくしてあるので、この母管溶接継手部及びその近辺の配管の誘導加熱温度がターン全体の加熱温度分布のうち最高加熱温度位置に設定することができる(換言すれば、元来,加熱温度が高くなる位置にある他のターンよりも相対的に加熱温度を高くすることができる)。」(3頁左欄14行?同頁右欄4行) ウ 「これらのターン14のうち、母管溶接継手部12aの位置で母管側の配管6aに嵌装されるターン14aのターン内周・配管外周間のコイルクリアランス15を、該ターン14aよりも元来,加熱温度が高くなる位置にあるターン14c,14dのコイルクリアランスよりも小さくしてある。」(3頁右欄下から9行?同欄下から5行) エ 「以上の実施例についてその特性を検討した結果が第8図から第10図に示されている。第8図は横軸に測定位置をとり、縦軸に加熱温度をとって測定位置による加熱温度の変化特性が配管と対比して示されている。同図から明らかなように、母管溶接継手12a,T継手12bおよびこれらの間の熱影響部とも加熱温度400℃以上550℃以下が確保される。」(4頁右欄下から10行?同欄下から4行) オ 「 」 (2)甲2技術 上記(1)によれば、甲2には、次の事項(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認める。 「オーステナイト系ステンレス鋼製の配管上の近接した母管溶接継手部及び枝管溶接継手部(T継手)を、配管の外周に軸方向に配列して嵌装された複数個のターンより成る誘導加熱コイルで同時に加熱し、配管内に冷却水を通して、加熱された部分における配管の肉厚内に応力改善に必要な温度差を付与する残留応力改善のための高周波誘導加熱装置において、母管側配管に嵌装されるターンのうち母管溶接継手部の位置で嵌装されるターンのコイルクリアランスが、該ターンよりも元来,加熱温度が高くなる位置にあるターンのコイルクリアランスよりも小さくし、母管溶接継手部及びその近辺の配管の誘導加熱温度がターン全体の加熱温度分布のうち最高加熱温度位置に設定するようにした技術。」 3 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、次の記載がある。 ア 「A.産業上の利用分野 本発明は誘導加熱装置に係り、特に板材の板幅方向の誘導加熱に用いる誘導子を備えた誘導加熱装置に関する。」(1頁右欄2?5行) イ 「本発明は上記問題点に鑑み創出されたもので、被加熱材が非磁性体やキユーリ点以上の加熱温度範囲の磁性体から成る板材であつても板材のエツジ部と中央部との板幅方向の均熱化を図る誘導子を備えた誘導加熱装置の提供を目的とする。 E.問題点を解決するための手段 このために本発明が用いる具体的手段は、被加熱材たる板材の幅方向に導体から成る矩形状の誘導子を配設しこの誘導子に交流電力を供給して被加熱材を加熱する誘導加熱装置において、前記誘導子を側路導体と端路導体とで矩形状に形成し、その端路導体の中央部に前記側路導体と平行な中心導体を設けて該中心導体に前記両側路導体の電流を合流して流し、前記被加熱材の板材に幅方向の中心電流とこれを分流および合流して循環する誘起電流を発生させて被加熱材を加熱するようにしたものである。 F.作用 上記の具体的手段により、誘導子に交流電力を供給すると、被加熱材の板材には、その幅方向に中心電流が誘起され、その誘起電流は一方のエツジ部で両側に分流して他方のエツジ部側に流れ、この他方のエツジ部でまた合流する循環電流が流れる。この循環電流により板材の板幅方向に中央部分とエツジ部との均熱化が図られる。」(3頁左上欄4行?同頁右上欄13行) ウ 「なお、誘導子1は、第1図(c)に示すように、側路導体1bを2ブロツクにした場合について説明したが第4図(b)のように一体に構成しても、また(a)のように端導体1d部分で2分割しても同様の作用効果が得られる。 次に板材5が静止して板巾方向に筋状に誘導加熱する場合の実施例の作用について説明する。 今、中周波又は高周波の誘導加熱用電源4から電力を誘導子1に供給すると、この電力は、誘導子1のリード部1c,lcに入力され、第1図(a)の矢印で示すように電流Iが誘導子1の導体を流れる。即ち平行した側路導体1bを分流して流れ、それが端絡導体1dを介して中心導体1aに集電されて流れる。そしてこの電流Iによつて誘起された磁束により板材5には、第2図(a)に示すように電流iが誘起される。この誘起電流iは第2図(a)に示すように流路ア,ウとエツジ部のイによつて循環流路を形成して流れる。アを流れる中心電流は両側に分流して、イとウの部分では1/2の電流が流れる。このためアの部分を流れる電流iによる板材5の中央部の加熱と比較して、ウの部分の加熱は(1/2)^(2)であるから1/4と少なくなる。1方イの部分を流れる電流もi/2であるがエツジ先端部に集中して流れるためその加熱は、中央部の加熱とほぼ同程度となり、昇温のバランスが得られる。 上記の誘導加熱を行つた時の板材5の加熱状態を示したものが第2図(b)であり、斜線で示した部分がほぼ同程度に昇温加熱されていることを示している。即ち第5図(a)に示した従来の場合には第6図(a)にて説明したようにイを流れる誘起電流iがエツジ部に集中して流れるためエツジのオーバーヒートが生じるのに対して、本実施例の場合にはアを流れる誘起電流iに対してイを流れる電流はi/2であるのでエツジ部に集中して流れてもオーバーヒートに到らず中央部とエツジ部の温度上昇は同程度となる。そして被加熱材が非磁性材または非磁性領域となつた場合にもほぼ同じ結果となつた。」(3頁右下欄6行?4頁右上欄14行) エ 「 」 (2)甲3に記載された事項 上記(1)によれば、甲3には、第4図(b)の例に着目すると、次の事項が記載されていると認める。 「加熱対象となる板材5の表面に対向して配置され、供給された高周波の誘導加熱用電源4からの電流Iが流れることにより前記板材5を誘導加熱する中心導体1aと側路導体1b、1bとからなる誘導子1を備えた誘導加熱装置において、 前記中心導体1aは、前記板材5の表面に近接して配置され、 前記側路導体1b、1bは、前記中心導体1aから所定の距離だけ離れた当該中心導体1aの周囲に配置され、さらに、前記中心導体1aを挟むよう当該中心導体1aの両側方に位置して配置され、 隣り合って配置される前記中心導体1aと前記側路導体1b、1bとは、それぞれに反対方向に電流が流れるよう構成されたこと。」 4 甲4について (1)甲4の記載 甲4には、次の記載がある。 ア 「【0013】図1は、一実施形態の誘導加熱コイルを示す正面図であり、図2は、図1の誘導加熱コイルの側面図である。また、誘導加熱コイルに示された矢印は、電流の流れの一例を表わす。 【0014】誘導加熱コイル10は、矢印A方向(本発明にいう所定方向の一例である)に延びる第1導体部12を有している。この第1導体部12は、リード14を介して高周波電源(図示せず)に接続されている。第1導体部12の後端12aからは、矢印A方向に交差する方向であって、図1の右斜め下方に向かって第2導体部16が延びている。第2導体部16の後端16aからは、矢印A方向とは反対方向であって第1導体部12の後端12aから離れる方向に第3導体部18が延びている。第3導体部18の後端18aからは略直角に折れ曲がって、第2導体部16の先端16bから離れる方向に第4導体部20が延びている。 【0015】第4導体部20の後端20aからは第3導体部18に並行に第5導体部22が延びており、この第5導体部22の長さは第3導体部18の長さとほぼ同じである。第5導体部22の後端22aからは略直角に折れ曲がって第2導体部16の後端16aから離れる方向に第6導体部24が延びている。この第6導体部24の後端24aからは第5導体部22に並行に第7導体部26が延びており、この第7導体部26の長さは第5導体部22の長さとほぼ同じである。第7導体部26の後端26aからは略直角に折れ曲がって、第4導体部20の後端20aに近付く方向に第8導体部28が延びており、この第8導体部28の長さは、第4導体部20の長さとほぼ同じである。 【0016】第8導体部28の後端28aからは、第5導体部22に近接してこの第5導体部22に並行に第9導体部30が延びており、この第9導体部30の長さは第5導体部22とほぼ同じである。第9導体部30の後端30aから略直交して第1導体部12の後端12aに近付く方向に第10導体部32が延びている。この第10導体部32の後端32aからは第1導体部12に並行に第11導体部34が延びている。第11導体部34はリード36を介して高周波電源(図示せず)に接続されている。 【0017】上述した誘導加熱コイル10を使って被加熱物40の平面部分42を誘導加熱する際には、第5導体部22と第9導体部30を平面部分42に対向させる。この状態で誘導加熱コイル10に高周波電力を投入すると、第5導体部22と第9導体部30には同時に同じ方向に電流が流れて交番磁束が発生する。この交番磁束によって平面部分42には渦電流が誘導されて平面部分42が加熱されることとなる。 【0018】ところで、従来のように平面部分42の幅とほぼ同じ幅の導体部を有する誘導加熱コイルを用いた場合は、上述したように、導体部の幅方向両端部における電流密度が幅方向中央部における電流密度よりも低くなって、平面部分42の幅方向両端部が十分に加熱されないことがある。しかし、誘導加熱コイル10では、図1に示すように第5導体部22及び第9導体部30それぞれの幅は、平面部分42の面積(幅)よりも狭い。従って、第5導体部22及び第9導体部30では、それらの幅方向両端部でも幅方向中央部でも電流密度は均一となる。また、第5導体部22及び第9導体部30では、同時に同一方向に電流が流れるので、これらの電流によって発生した交番磁束が互いに打ち消し合うことはない。この結果、平面部分42を均一に加熱できる。」 イ 「 」 (2)甲4に記載された事項 上記(1)によれば、甲4には、次の事項が記載されていると認める。 「被加熱物40の平面部分42の表面に対して、誘導加熱コイル10の第5導体部22及び第9導体部30を近接して配置すること。」 5 甲5について (1)甲5の記載 甲5には、次の記載がある。 ア 「電流の集中は、部分12(乃至13)と部品1(乃至2)との間隔を第9図の如く増すことによつて少なくできるが、その様に間隔を大きくすることは部品1および2とループ3との間の結合を少なくし、そのため部品1と2の中に必要とする大きさの電流を誘導することが一層困難となる。」(14頁左上欄19行?同頁右上欄5行) イ 「〔主要部分の符号の説明〕 金属部品 …1,2 金属部品の部分 …14,15 誘導コイル …3 閉路 …4,5,6,7,8,9,10,11 コイルの離間した両部分 …12,13」 ウ 「 」 (2)甲5に記載された事項 上記(1)によれば、甲5には、次の事項が記載されていると認める。 「部品1とループ(誘導コイル)3の部分12との間隔が増すほど部品1に誘導される電流の集中を少なくできること。」 6 甲6について (1)甲6の記載 甲6には、次の記載がある。 ア 「【0057】 即ち、図12(a)に示すように、複数のトランスバース型誘導加熱装置20を幅方向に並べて昇降機33により各々の昇降を行うことによって各々のギャップ距離を制御することにより、幅方向の加熱昇温量を制御することができる。」 イ 「【0064】 【発明の効果】 本発明の熱間圧延方法によれば、仕上圧延前の幅方向温度分布が不均一の粗バーの幅方向温度分布を均一化することができ、仕上圧延によって幅方向の機械的性質等の材質特性のばらつきのない熱間圧延鋼板を得ることができるという顕著な効果が生じる。また、本発明の熱間圧延装置によれば、トランスバース型誘導加熱装置を用いて仕上圧延前の粗バーの幅方向左右非対称の温度分布を解消できると共に、中央低温部及び両端低温部を選択的に加熱昇温することができるので、幅方向温度分布を均一化することができるという顕著な効果を生ずる。」 ウ 「 」 (2)甲6に記載された事項 上記(1)によれば、甲6には、次の事項が記載されていると認める。 「複数のトランスバース型誘導加熱装置20を粗バー4の幅方向に並べて、複数のトランスバース型誘導加熱装置20と粗バー4との各々のギャップ距離を制御することにより、粗バー4の幅方向の温度分布を均一にすること。」 7 甲7について (1)甲7の記載 甲7には、次の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、誘導加熱装置に関し、特に、所定の流れ方向に送られるストリップ(薄板)を誘導加熱により連続して加熱する誘導加熱装置に関する。」 イ 「【0024】図示のVFX(登録商標)型誘導加熱装置は、主コイル1と主鉄芯2とから成る主インダクタの他に、冷却手段として働くエアブローノズル3を備え、エアブローノズル3をストリップ9の左右、表裏に、計4本設置している。 【0025】主鉄芯2は、図1及び図2に示されるように、板幅方向にいくつかの磁極セグメントに分割されており、VFX(登録商標)型誘導加熱装置は、磁極セグメントを個別にストリップ9の垂直方向に移動させるための駆動機構4を有している。 【0026】前述したように、ストリップ9の出側温度分布は、ストリップ9のエッジ部が他の部分に比べてより加熱されたような分布をもつ。エアブローノズル3は、このエッジ部を強制的に冷却して、ストリップ9の出側温度分布を均一にする。 【0027】以上、本発明を好ましい実施の形態によって説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定せず、本発明の要旨を脱逸しない範囲で種々の変形・変更が可能なのはいうまでもない。・・・更に、加熱過多の部分を冷却する手段も、エアブローノズル9に限定せず、それ以外の種々の冷却手段を使用しても良いのは勿論である。」 ウ 「 」 (2)甲7に記載された事項 上記(1)によれば、甲7には、次の事項が記載されていると認める。 「所定の流れ方向に送られるストリップ(薄板)を誘導加熱により連続して加熱する誘導加熱装置において、ストリップ9の長手方向に延びるエアブローノズル3等の冷却手段をストリップ9の左右、表裏に設置し、ストリップ9のエッジ部を強制的に冷却して、ストリップ9の出側温度分布を均一にすること。」 8 甲8について (1)甲8の記載 甲8には、次の記載がある。 ア 「【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の一実施形態について具体的に説明する。 【第1実施形態】図1は本発明第1実施形態の鋼板の高周波焼入装置の構成を示す図である。図1において、被加熱鋼板(以下ワークという)Wの表面(図の上面)側に高周波加熱コイル1と冷却液噴射手段2が設けられ、冷却液噴射手段2の対象位置の裏面(図の下面)に冷却液噴射手段3が設けられている。本実施形態では高周波加熱コイル1と冷却液噴射手段2が固定され、ワークWが矢印方向に移動してワークWと高周波加熱コイル1及び冷却液噴射手段2が相対的に移動するようになっている。 【0017】高周波加熱コイル1はコイル面がワーク平面に平行して置かれ、ワーク平面を加熱する。冷却液噴射手段2は中空箱形をなし、導入管2bから中空部に導入される冷却液がノズル2aからワークWの表面に噴射される。冷却液噴射手段3は冷却液噴射手段2と対象の形状をなし、ワークWの裏面の対称位置に配設されている。 【0018】ワークWを高周波加熱コイル1により加熱しながら矢印方向に移動すると、加熱面が冷却液噴射手段2により噴射される冷却液により急冷されて焼入れされる。ワークWの表裏面は同時に均等に冷却されるとともに、冷却液噴射によりスケールが除去される。導入管2bに導入される冷却液は0.3MPa以上の圧力で噴射され、本実施形態では0.5MPaとした。この噴射圧力は高いほどスケール除去の効果が大きいが実用上0.3MPa以上あれば良いことが判った。」 イ 「【0021】 【第2実施形態】次に本発明の第2実施形態について説明する。図2は本発明第2実施形態の鋼板の高周波焼入装置の構成を示す図、図3は鋼板の焼入部分を示す図である。本発明第2実施形態は、図3に示すワークWの2条の焼入部分W1、W1のみを高周波焼入れする装置に関するものであるが、もとより1か所の部分焼入あるいは3か所以上の部分焼入をする場合も同様である。 【0022】図2において、図示しない押圧手段によりワークWの表裏面は表面押え板4及び裏面押え板5により押圧されて保持される。表裏の押え板4、5は同形の厚板状で、貫通した窓部4a,5a(5aは図示しない)が設けられている。表面押え板4の窓部4aの内側に前記第1実施形態で示したと同様の高周波加熱コイル1と冷却液噴射手段2が配設されている。また裏面押え板5の窓部5aの内側に裏面の冷却液噴射手段3が配設されている(図示しない)。本実施形態では高周波加熱コイル1と冷却液噴射手段2が固定され、ワークWが押え板4、5により保持されて矢印方向に移動する。 【0023】押え板4、5の窓部4a,5aの大きさは、前記高周波加熱コイル1と冷却液噴射手段2がワークWと相対的に移動して図3の2条の焼入部が焼入れできる寸法にされている。 【0024】ワーク1を移動しながら高周波加熱冷却して図3の2条の焼入部を部分焼入れする。この際に、ワークWは押え板4、5の縁部4b,5bにより押圧されながら焼入れされるので焼入歪みが防止される。焼入れが終了すると、表裏の押え板を引き離してワークWを取り出す。」 ウ 「 」 (2)甲8に記載された事項 上記(1)によれば、甲8には、次の事項が記載されていると認める。 「鋼板の高周波焼入装置において、被加熱鋼板Wの表面(上面)側に高周波加熱コイル1と高周波加熱コイル1の辺に沿った直線状の冷却液噴射手段2が被加熱鋼板Wの移動方向に並んで設けられ、冷却液噴射手段2の対象位置の裏面(下面)に冷却液噴射手段3が設けられて、被加熱鋼板Wを高周波加熱コイル1により加熱しながら矢印方向に移動すると、加熱面が冷却液噴射手段2により噴射される冷却液により急冷されて焼入れすること。」 9 甲9について (1)甲9の記載 甲9には、次の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、配管系の熱処理方法および熱処理装置に係り、特に原子力発電プラントに用いられる配管に好適な配管系の熱処理方法および熱処理装置に関する。」 イ 「【0048】 本発明のさらに他の実施例を図14を用いて説明する。本実施例は、突合せ溶接部位の管内表面の周方向の引張残留応力を低減させるのに有効な方法である。水噴射用のノズル221と水回収機構222から構成される2組の急冷機構を溶接部2を挟む領域に設置する。また、配管201の溶接部位2の外面には、配管の溶接部位2の外面を加熱するための加熱コイル211を設けている。このような配置で、冷却機構と加熱コイル211を溶接部の周囲に設置した後に、冷却機構の水回収機構を作動させ、次に水噴射用のノズルから冷却水を噴射させる。2組の冷却機構に軸方向で挟まれる配置で設置した加熱コイル211に高周波電流を負荷する。」 ウ 「 」 (2)甲9に記載された事項 上記(1)によれば、甲9には、次の事項が記載されていると認める。 「配管系の熱処理装置において、配管201の突合せ溶接部位2の外面には、配管の溶接部位2の外面を加熱するための加熱コイル211を設けるとともに、水噴射用のノズル221と水回収機構222から構成される2組の急冷機構を溶接部2を挟む領域に設置し、水噴射用のノズルから冷却水を噴射させ、加熱コイル211に高周波電流を負荷すること。」 10 甲10について (1)甲10の記載 甲10には、次の記載がある。 ア 「【0016】移動焼入装置101 は、長手方向の軸芯線W1 を中心として回転している棒状ワークWの移動焼入装置であって、棒状ワークWに接近配設されてワーク周面W2を加熱する同形の第1、第2加熱コイル10、20を有する複合加熱コイル50と、複合加熱コイル50の軸芯線W1 の方向の両側にそれぞれ配設されてワーク周面W2に焼入液を噴出する第1、第2複合ジャケット60、70と、複合加熱コイル50および第1、第2複合ジャケット60、70を一体的に結合固定する結合部材83と、結合部材83によって一体的に結合固定された複合加熱コイル50および第1、第2複合ジャケット60、70を軸芯線W1 の方向(矢印Jの方向および矢印Jと反対方向の矢印Kの方向)に移動させる移動手段80とを備えている。この移動手段80は、例えば、サーボモータと、サーボモータによって回転されるボールネジ等によって前記結合部材83を軸芯線W1 の方向に移動させるロッドとが使用される。」 イ 「 」 (2)甲10に記載された事項 上記(1)によれば、甲10には、次の事項が記載されていると認める。 「移動焼入装置101において、棒状ワークWに接近配設されてワーク周面W2を加熱する同形の第1、第2加熱コイル10、20を有する複合加熱コイル50と、複合加熱コイル50の軸芯線W1の方向の両側にそれぞれ配設されてワーク周面W2に焼入液を噴出する第1、第2複合ジャケット60、70とを備え、第1、第2複合ジャケット60、70は、第1加熱コイル10及び第2加熱コイル20よりもワーク周面W2から離間した位置に配置されること。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ・後者の「溶接部20c及びその近傍の加熱が行われる鋼板20」は、前者の「加熱対象となる板材」に相当し、以下同様に、「高周波電流が通電される」は「供給された高周波電流が流れる」に、「歪除去装置の加熱装置」は「加熱装置」に、それぞれ相当する。 ・後者の「所定の間隔Bで以て対をなして配置された2個の棒状部13f、13fと前記棒状部13fの端部を結合する接続部13eとにより一体の2股状体にて構成され、電導体からなる加熱コイル13」は、一方の「棒状部13f」が前者の「第一のコイル部」に相当し、他方の「棒状部13f」が前者の「第二のコイル部」に相当するといえる。 そうすると、後者の「溶接部20c及びその近傍の加熱が行われる鋼板20の表面に対向して加熱コイル13が配置され、前記加熱コイル13は、高周波電流が通電されることにより前記鋼板20を誘導加熱する、所定の間隔Bで以て対をなして配置された2個の棒状部13f、13fと前記棒状部13fの端部を結合する接続部13eとにより一体の2股状体にて構成され」る態様は、前者の「加熱対象となる板材の表面に対向して配置され、供給された高周波電流が流れることにより前記板材を誘導加熱する第一のコイル部と第二のコイル部とを備え」る態様に相当する。 ・後者の「前記加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間は、前記鋼板20に誘導電流に伴う発熱を生起させるための間隙Cを存して近接され」る態様は、「加熱コイル13」の一方の「棒状部13f」と他方の「棒状部13f」とから成っていることを踏まえると、前者の「前記第一のコイル部は、前記板材の表面に接触あるいは近接して配置され」る態様に相当すると共に、前者の「前記第二のコイル部は、前記板材の表面に対して、当該板材の表面に対する前記第一のコイル部の距離よりも離れて配置されると共に、前記第一のコイル部から所定の距離だけ離れた当該第一のコイル部の周囲に配置され、さらに、前記第一のコイル部を挟むよう当該第一のコイル部の両側方に位置して配置され、さらに、前記第二のコイル部は、当該第二のコイル部の前記板材の表面に対向する面が、当該板材の表面から前記第一のコイル部の前記板材の表面に対向する部位と当該板材の表面に対して最も離れた部位との中間点までの距離よりも、前記板材の表面から離れて位置するよう配置され」る態様に、「前記第二のコイル部は、前記第一のコイル部から所定の距離だけ離れて配置され、さらに、前記第一のコイル部の側方に位置して配置され」という限りにおいて一致する。 ・後者の「前記加熱コイル13の隣合って配置される一方の前記棒状部13fと他方の前記棒状部13fとは、それぞれに反対方向に電流が流れるように構成されている」態様は、前者の「隣り合って配置される前記第一のコイル部と前記第二のコイル部とは、それぞれに反対方向に電流が流れるよう構成されている」態様に相当する。 したがって、両者は、 「加熱対象となる板材の表面に対向して配置され、供給された高周波電流が流れることにより前記板材を誘導加熱する第一のコイル部と第二のコイル部とを備え、 前記第一のコイル部は、前記板材の表面に接触あるいは近接して配置され、 前記第二のコイル部は、前記第一のコイル部から所定の距離だけ離れて配置され、さらに、前記第一のコイル部の側方に位置して配置され、 隣り合って配置される前記第一のコイル部と前記第二のコイル部とは、それぞれに反対方向に電流が流れるよう構成されている、 加熱装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 第一のコイル部と第二のコイル部について、本件発明1は、「前記第二のコイル部は、前記板材の表面に対して、当該板材の表面に対する前記第一のコイル部の距離よりも離れて配置されると共に、前記第一のコイル部から所定の距離だけ離れた当該第一のコイル部の周囲に配置され、さらに、前記第一のコイル部を挟むよう当該第一のコイル部の両側方に位置して配置され、さらに、前記第二のコイル部は、当該第二のコイル部の前記板材の表面に対向する面が、当該板材の表面から前記第一のコイル部の前記板材の表面に対向する部位と当該板材の表面に対して最も離れた部位との中間点までの距離よりも、前記板材の表面から離れて位置するよう配置されて」いるのに対して、甲1発明は、「前記加熱コイル13の下面と前記鋼板20の表面との間は、前記鋼板20に誘導電流に伴う発熱を生起させるための間隙Cを存して近接され」ている点(以下、「相違点」という。)。 (2)判断 上記相違点について検討する。 甲2技術は、配管における複数の加熱部(母管溶接継手部及び枝管溶接継手部)を配管の外周に軸方向に配列して嵌装された複数個のターンより成る誘導加熱コイルで同時に加熱するものにおいて、配管に嵌装されるターンのうち特定の加熱部(母管溶接継手部)の位置で嵌装されるターンのコイルクリアランスが、該ターンよりも元来、加熱温度が高くなる位置にあるターンのコイルクリアランスよりも小さくなるようにし、特定の加熱部(母管溶接継手部)及びその近辺を所望の加熱温度の位置(最高加熱温度位置)に設定して残留応力の改善を図るものであり、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を示すものではない。 加えて、甲2技術は、複数個のターンより成る誘導加熱コイルで複数の加熱部を同時に加熱するものであり、鋼板20の表面に対向して配置された加熱コイル13により、一の加熱箇所である溶接部20c及びその近傍を加熱し、溶接部20c及びその近傍の歪み取りを行う甲1発明とは、誘導加熱コイルの形状、加熱対象及び加熱形態が異なるものであるから、甲2技術における特定の加熱部の構成に着目し、甲1発明に甲2技術を適用することは、当業者が容易になし得たことではない。 また、周知技術の例証として提出された甲3には、上記第4の3(2)の事項が記載されており、甲3に記載された事項は、誘導子1が、中心導体1aは、板材5の表面に近接して配置され、側路導体1b、1bは、前記中心導体1aから所定の距離だけ離れた当該中心導体1aの周囲に配置され、さらに、前記中心導体1aを挟むよう当該中心導体1aの両側方に位置して配置された構成を備え、板材の板幅方向に中央部分とエッジ部との均熱化を図るものであり、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項における第1のコイル部と第二のコイル部との配置構成の一部に相当する構成を示すにとどまり、また、溶接部20c及びその近傍の歪み取りを行うべく局所的な加熱を行うものである甲1発明とは、使用形態が異なるから、甲1発明において、甲3に記載された事項を適用することは、当業者が容易になし得たことではない。 また、周知技術の例証として提出された甲4には、上記第4の4(2)の事項が記載されているものの、甲4に記載された事項は上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を示すものではない。 また、周知技術の例証として提出された甲5には、上記第4の5(2)の事項が記載されているものの、甲5に記載された事項は上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を示すものではない。 さらに、周知技術の例証として提出された甲6には、上記第4の6(2)の事項が記載されているが、甲6に記載された事項は、粗バー4の幅方向の温度分布を均一にすることを図るものであり、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を示すものではなく、また、溶接部20c及びその近傍の歪み取りを行うべく局所的な加熱を行うものである甲1発明とは、使用形態が異なるから、甲1発明において、甲6に記載された事項を適用することは、当業者が容易になし得たことではない。 そして、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項は、加熱対象の鋼板を、第一のコイル部の対向箇所を中心として広範囲で、周囲側から中心に向かって徐々に加熱強度が強くなるよう加熱する作用を可能とするものであるところ、甲1発明、甲2技術及び甲3?6に記載された事項は、いずれも、そのような作用を可能とするものとはいえない。 そうすると、甲1発明において、甲2技術及び甲3?6に記載された事項に基づき、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、「第一の加熱コイルにて局所的に加熱される鋼板の対向箇所の周囲を、加熱強度は弱いものの広範囲に誘導加熱することができる。このため、加熱対象の鋼板を、第一のコイル部の対向箇所を中心として広範囲で、周囲側から中心に向かって徐々に加熱強度が強くなるよう加熱することができる。その結果、第一のコイル部の対向箇所の周囲において過度の加熱を抑制しつつ、当該対向箇所付近を効率的に加熱することができる。すると、第一のコイル部の対向箇所付近の裏面側も効率よく加熱することができ、当該裏面側で行われた溶接による歪みの除去を効率よく行うことができる。」(本件特許の明細書の段落【0010】)、「第一のコイル部の周囲、特に、第一のコイル部を挟んで配置された第二のコイル部によって、第一のコイル部の対向箇所を中心として広範囲に、かつ、均等に、鋼板を過度に加熱することなく、より適切に加熱することができる。」(本件特許の明細書の段落【0011】)及び「鋼板の表面に対して第二のコイル部を適切な距離に配置することができ、第一のコイル部の対向箇所を中心として広範囲に、鋼板をより効率的に加熱することができる。」(本件特許の明細書の段落【0012】)という所期の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2技術及び甲3?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2?7について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記1に示した理由と同様の理由により、甲1発明、甲2技術及び甲3?6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 次に、本件発明3?7に対して提出された甲7?9、及び本件発明5?7に対して提出された甲10は、いずれも、板材を冷却する冷却部に関して引用されたものであって、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項が記載も示唆もされておらず、また、甲7?10に記載された事項は、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項のように、加熱対象の鋼板を、第一のコイル部の対向箇所を中心として広範囲で、周囲側から中心に向かって徐々に加熱強度が強くなるよう加熱する作用を可能とするものとはいえない。 そうすると、本件発明3及び4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記1に示した理由を踏まえると、甲1発明、甲2技術及び甲3?9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明5?7も、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、上記1に示した理由を踏まえると、甲1発明、甲2技術及び甲3?10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 まとめ 上記2のとおりであるから、本件特許の請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、特許法第113条第2号に該当しない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-05-13 |
出願番号 | 特願2017-108919(P2017-108919) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H05B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 根本 徳子 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
大屋 静男 槙原 進 |
登録日 | 2018-07-27 |
登録番号 | 特許第6374571号(P6374571) |
権利者 | 第一高周波工業株式会社 |
発明の名称 | 加熱装置 |
代理人 | 馬場 資博 |