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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2019600004 審決 特許
判定2019600005 審決 特許
判定2019600001 審決 特許
判定2018600029 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) H04L
管理番号 1351476
判定請求番号 判定2018-600018  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 判定 
判定請求日 2018-05-25 
確定日 2019-05-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第3796528号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,特許第3796528号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定の請求の趣旨は,イ号は特許3796528号(以下,「本件特許」という。)の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

また,本件に係る手続の経緯は,以下のとおりである。
平成11年12月28日 本件特許に係る特許出願
平成18年 4月28日 本件特許登録
平成30年 5月25日 本件判定請求
平成30年 8月 6日 答弁書(被請求人)
平成30年 9月21日 弁駁書(請求人)
平成31年 1月21日 審尋(発送;平成31年1月23日)
平成31年 2月22日 回答書(請求人)
平成31年 3月18日 上申書(被請求人)

第2 本件特許発明
請求人は,本件特許の特許請求の請求項8を「本件特許」としているから,本件特許発明は,特許明細書の記載からみて,特許請求の範囲の請求項8に記載された,次のとおりのものである。

「【請求項8】
A 発信者の装置から暗号化された状態で送信された伝達情報が,ネットワークを介して受信者の装置に受信されて復号化されたことを証明する内容証明サイト装置であって,
B 前記発信者装置から,該発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該発信者が電子署名した発信者署名データを受け取る第1の受信手段と,
C 前記受信者装置から,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータに該受信者が電子署名した受信者署名データを受け取る第2の受信手段と,
D 前記発信者装置から受け取った前記発信者署名データと前記受信者装置から受け取った前記受信者署名データとを内容証明を行うために保管する保管手段と,
E 前記内容証明の一環として,前記発信者署名データのうち,前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータと,前記受信者署名データのうち,前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータとを照合する手段と,を備え,
F 前記発信者装置が送信した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該発信者装置が送信した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られ,
G 前記受信者装置が受け取って復号化した伝達情報の内容の同一性を確認できるデータが,該受信者装置が受け取って復号化した伝達情報のダイジェスト又は該伝達情報を暗号化した暗号情報のダイジェストに限られている,
H ことを特徴とする内容証明サイト装置。」

「A」?「H」の符号は,分説のために判定請求人が付した記号であるが,便宜上そのままこれを利用する。

第3 イ号物件
判定請求人は,「イ号」について,平成30年5月25日付けの判定請求書(以下,これを「請求書」という)において,
「被請求人(以下「NTTデータ」とも言う。)が,建設業法に係るガイドライン(甲1第138?139頁)に忠実に従ってシステムの運用を行っている(甲1第100?101頁,104?105頁),契約事項が改ざんされても痕跡が残らない問題への対策としての‘原本性の確保’で‘第三者機関’での証明措置(甲1第100頁18行目,139頁19行目?20行目)として,契約者相互の電子署名で裏付けられた,契約者の意思(契約事項)の合致を示す原本性を証明する,「CECSIGN(認証局)」(甲第101頁図5.1,105頁図5.4,甲2)たる第三者機関(甲1第100頁18行目,139頁10?11行目,19行目)を,「イ号」と言う。」(5頁3行?11行)
と主張していることと,
甲2号証の,
「CECSIGN認証サービス検証者利用規約
(本規約の適用)
第1条 「CECSIGN認証サービス検証者利用規約」(以下「本規約」といいます)は,株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコム(以下「当社」といいます)が「CECSIGN認証サービス」(以下「本サービス」といいます)において発行した電子証明書(以下「本電子証明書」といいます)を当社以外から受領した者(以下「検証者」といいます)と当社の契約関係を定めるものです。」(1頁1行?7行)
という記載,同じく,甲2号証の,
第4条 検証者は,当社所定の方法により本電子証明書の真正及び有効性を確認した上で,本電子証明書に記載されている利用者の公開鍵(以下「利用者検証鍵」といいます)を用いて,指定取引に関するデジタル・データについて行われた利用者の電子署名の真正を確認することにより,当該デジタル・データが当該利用者本人の作成にかかるものであるか,また当該デジタル・データについて改変が行われていないかを確認することができます。」(2頁4行?9行)
という記載,同じく,甲2号証の,
「4. 下図のとおり,本電子証明書に記載されている情報のうち,「CommonName」の項目に記載された利用者の氏名については,電子署名法の認定制度における認定の対象であり,CPSに定める方法により真偽の確認を行っています。」それ以外の情報に関しては,同法の認定の対象外となりますが,当社はCPSに定める方法により真偽の確認を行っています。

」(2頁17行?26行)
という記載,同じく,甲2号証の,
「(本電子証明書の真正及び有効性の確認)
第5条 検証者は,本電子証明書の真正を確認するために,当社所定の方法により,リポジトリから当社の電子証明書及び有効なリンク証明書が公開されている場合はリンク証明書を入手した上で,本電子証明書について当社の電子署名が行われていることを確認しなければならないものとします。
2. 検証者は,前項の確認を行った後,本電子証明書の有効性を確認するために,当社所定の方法により,以下の各事項を確認しなければならないものとします。
(1)本電子証明書の受領時において,本電子証明書の有効期間が経過していないこと。
(2)本電子証明書の受領時において,本電子証明書が失効していないこと。

3. 本電子証明書の有効期間は本電子証明書の「Validity」の項目に記載されており,検証者は,本電子証明書の受領時に,当該項目により有効期間が経過していないことを確認するものとします。なお,本電子証明書の有効期間は366日もしくは761日とします。旧CA電子証明書(有効期限:2002年3月26日?2007年3月26日)と対応するCA署名鍵で署名された電子証明書の有効期間は366日または396日とします。
4. 本電子証明書は,当社が本電子証明書の失効情報を当社所定の電子証明書失効リスト(Certificate Revocation List:以下「CRL」といいます)に登録し,当該登録済みのCRLをリポジトリに公開した時点で失効します。検証者は,本電子証明書の受領時にCRLを参照し,CRLが最新の情報に更新されていることを確認した上で,本電子証明書が失効していないことを確認するものとします。なお,当社は,本サービスを停止する場合を除き24時間ごとにCRLを更新します。)」(3頁1行?24行)
という記載,当審による平成31年1月21日付けの審尋(以下,これを「審尋」という)において引用した,判定請求人が甲1号証として一部を引用している,
「株式会社NTTデータ/株式会社NTTデータ経営研究所 編著 ?企業間電子商取引のための?電子契約導入のすすめ 株式会社ソフト・リサーチ・センター 2004年4月10日 第1刷発行」の,
「4.4.2 電子実印,印鑑登録証
電子署名を行い,その署名が正しいかどうか検証を行うには,実社会で実印に相当する秘密鍵と,印鑑登録証に相当する公開鍵証明書が必要である。秘密鍵と公開鍵のペアを自分で作成し,公開鍵に対して確かにその人が作成したことを証明する公開鍵証明書を信頼できる第三者機関(認証局)から発行してもらう。
この秘密鍵は,署名者を特定するとても大事なものなので厳重に管理する必要がある。PCのハードディスク内に格納することもできるが,ハードディスクの故障や,誤操作により秘密鍵が消えてしまう危険性があり,鍵が格納されたPC以外では署名ができないという不便さもある。そのため,PCから物理的に切り離し管理することができるICカードやトークンデバイスを用いた方がよい。ICカードやトークンデバイスであれば,秘密鍵へのアクセスをパスワードや指紋等のバイオメトリクスで守ることができる。署名をする際にもICカードやトークンデバイス内で署名データを作成するため,秘密鍵が外へ流出する危険性もない。
電子署名及び認証業務に関する法律(以下,電子署名法)の施行により,証明書発行業務において,本人確認や運用規程などの一定水準を満たした認証局は,特定認証局として国の認定を受けることができる。電子契約には,このような認定を受けていない証明書を用いることも可能であるが,仮に裁判等で証明書の証拠能力が問われた場合に,認証局の運用もチェックされることになる。そのため,運用規程や本人確認方法などの業務がしっかりと定められた特定認証局を選択することが大切である。
CECTRUSTでは,株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコムが発行業務を行う「CECSIGN認証サービス」と株式会社帝国データバンクが発行業務を行う「TDB電子認証サービスType-A」に対応している。これらの認証局は,いずれも特定認証業務の認定を取得している。」(83頁1行?末行)
という記載,同じく,審尋に引用した,「電子認証局会議」のホームページの,
「特定認証業務では,“本人による電子署名が行われている”事をどのように証明すればよいのでしょうか?
電子署名法では電子署名が本人のものであるかどうかを証明する業務を「認証業務」としており,電子署名のうち,本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務を「特定認証業務」と定義します。(第2条3項)
なお,現在,「特定認証業務」の基準に採用されている認証技術は公開鍵暗号を用いたPKI技術となっています。(電子署名及び認証業務に関する法律施行規則 第2条:平成13年3月27日総務省・法務省・経済産業省令第二号)
即ち,電子署名が本人のものであるかどうかを証明するための電子証明書(公開鍵証明書)を発行する業務が「特定認証業務」であり,その業務を行う第三者機関は「電子認証局」と呼ばれています。

認定認証業務
また,電子署名法では「特定認証業務」の中でもさらに厳格な基準をクリアした場合に与えられる認定制度が定められています。
(I)認証業務に使用する設備が主務省令で定める基準に適合するものであり,
(II)認証業務における利用者の真偽の確認が主務省令で定める方法によって行われるものであり,
(III)認証業務が主務省令で定める基準に適合するものによって行われるもの,
であることが認められる認証業務については,主務大臣(総務大臣・法務大臣・経済産業大臣)による「特定認証業務」の認定を受けることができます。通常,認定を受けた「特定認証業務」を「認定認証業務」と呼びます。
「特定認証業務」の認定を受けるためには,前記の要件を満たしているかについて,国(及び実地調査を実施する指定調査機関)の実地調査を受ける必要があります。認定の有効期間は政令で定められています。認定を継続して受けるためには,認定の有効期間が終わるまでに,認定の更新を受けるための,国及び指定調査機関による実地調査を受ける必要があります。電子署名法では「認定認証業務」を行う事業者を「認定認証事業者」といい,一般的には「認定認証局」と呼称しています。
認定を受けることにより「認定認証局」は,厳格な基準を満たして運用していることが国によって確認されていると言えます。」(http://www.c-a-c.jp/about/law.html)
という開示事項,及び,同じく,審尋において引用した,法務省のホームページの,
「2 認証業務に関する任意的認定制度の導入

認証業務(電子署名が本人ものであること等を証明する業務)に関し,一定の基準(本人確認方法等)を満たすものは国の認定を受けることができることとし,認定を受けた業務についてその旨表示することができることとするほか,認定の要件,認定を受けた者の義務等を定める。

→ 認証業務における本人確認等の信頼性を判断する目安を提供する。

」(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji32-1.html)
という開示事項から,イ号物件は,次のとおりの構成を具備するもの認定する(以下,「構成a」などという。)。

「a 少なくとも,利用者の氏名と,前記利用者の公開鍵(利用者検証鍵)が記載されている電子証明書を発行する認定認証局であるCECSIGN(認証局)あって,
b 前記CECSIGN(認証局)は,利用者からの公開鍵登録要求を受け付ける登録受付手段と,
c 前記要求に対して,利用者の本人確認を行う,本人確認手段と,
d 前記本人確認の後,利用者に対して,少なくとも,前記利用者の氏名と,前記利用者の公開鍵とが記載され,前記CECSIGN認証(認証局)の電子署名を付した電子証明書を発行する発行手段とを,有し,
e 前記利用者が,検証者との間の指定取引に関するデジタル・データに対して,前記公開鍵と対になる利用者の秘密鍵を用いて署名し,前記電子証明書と共に,送信し,
前記検証者が,受信した前記署名されたデジタル・データの署名を検証する際に,
前記検証者が,前記電子証明書の真正を確認するために,前記電子証明書に付された,前記CECSIGN(認証局)の電子署名を検証するために用いるリンク証明書を公開し,
f 前記利用者が,前記電子証明書の有効性を確認するために用いる電子証明書失効リスト(CRL)更新する,CECSIGN(認証局)。」

第4 当事者の主張
1.判定請求人の主張
(1) 判定請求人は,各構成要件について,イ号が各構成要件を充足することを縷々述べているところ,その主張は,大要,以下のとおりである。

ア.イ号は,被請求人自身の著作にかかる書籍「企業間電子商取引のための電子契約導入のすすめ」抜粋(甲1)において,被請求人が建設業法に係るガイドライン(甲1第138?139頁)(以下「本件ガイドライン」という)に基づいてシステムの運用を行っていると記載し宣伝している第三者機関である。

イ.よって,イ号は,本件ガイドラインに忠実に従っている限り,構成要件Eを含む各構成要件を充足する。

2.被請求人の主張
(1) イ号は,構成要件Eを充足しない。
ア.判定請求人は,CECSIGN認証サービス検証者利用規約第4条1項(甲2)の存在を以て,イ号が実施していることは,電子証明書を発行するサービスにとどまらず,同項記載の各確認作業を行っている,と主張したうえで,さらに同項の記載及びイ号が建設業法にかかるガイドラインに忠実に従っているのであるから,構成要件Eを充足する旨主張する。

イ.しかし,同項の主語は「検証者」であり,「検証者」とは,「株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコム(以下「当社」といいます)が「CECSIGN認証サービス」(以下「本サービス」といいます)において発行した電子証明書(以下「本電子証明書」といいます)を当社以外から受領した者」(同第1条1項)を指す。
したがって,「CECSIGN(認証局)」は,同4条1項にいう確認作業を行わない。ましてや,発信者の署名で裏付けされた契約書の照合値と受信者の署名で裏付けされた契約書の照合値の照会をしないし,当該照合のための手段を有しないのであるから,構成要件Eを充足しない。

ウ.なお,そのほかの構成要件の充足について,被請求人は明示的に争っていないが,答弁書および平成31年3月18日付上申書の全主張の趣旨に鑑みれば,被請求人は他の構成要件の充足についても争うことを主張しているものと解される。

第5 当審の判断
1. 本件特許発明の各構成要件の充足について
(1)構成要件A及び構成要件Hについて
イ号物件は,「認定認証局」であって,「検証者」(本件特許発明における「受信者」に相当)が,「利用者」(本件特許発明における「発信者」に相当)から受信した“署名を付されたデジタル・データ”(本件特許発明における「伝達情報」に相当)に付加された「署名」を検証するために用いられる,前記「デジタル・データ」と共に「検証者」に送信される「電子証明書」を発行するものであって,
前記「デジタル・データ」が,復号化されたことを証明することは行っていない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件Aおよび構成要件Hを充足しない。

(2)構成要件Bについて
イ号物件は,上記(1)において指摘したとおりのものであるから,「利用者」から送信された「デジタル・データ」の内容の同一性を確認できるデータに,前記「利用者」が電子署名した“利用者署名データ(本件特許発明における「発信者署名データ」に対応)”を受け取ることはしていない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件Bを充足しない。

(3)構成要件Cについて
同じく,イ号物件は,上記(1)において検討したとおりのものであるから,「受信者」が受信した,「デジタル・データ」の内容の同一性を確認できるデータに,前記「受信者」が電子署名した“検証者署名データ(本件特許発明における「受信者署名データ」に対応)”を受け取ることはしていない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件Cを充足しない。

(4)構成要件Dについて
上記(2)及び(3)において検討したとおり,イ号物件は,“利用者署名データ”及び“検証者署名データ”を受け取ってはいないので,それらのデータの保存もしていない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件Dを充足しない。

(5)構成要件Eについて
イ号物件においては,「検証者」において「署名」の検証は行われているが,「デジタル・データ」の「同一性」の確認は行っていない。
しかも,「検証者」とは,「株式会社コンストラクション・イーシー・ドットコム(以下「当社」といいます)が「CECSIGN認証サービス」(以下「本サービス」といいます)において発行した電子証明書(以下「本電子証明書」といいます)を当社以外から受領した者」(同第1条1項)を指すのであって,「CECSIGN(認証局)」を意味しない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件Eを充足しない。

(6)構成要件F及び構成要件Gについて
上記(5)において検討したとおり,イ号物件においては,「デジタル・データ」の「同一性」の確認は行っていないので,当該確認に用いられる「デジタル・データ」の「ダイジェスト」或いは「デジタル・データ」を暗号化したデータの「ダイジェスト」も用いてない。
したがって,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,構成要件F及び構成要件Gを充足しない。

(7)小括
以上,上記(1)?上記(6)に検討したとおりであるから,イ号物件は構成要件AからGをいずれも充足しない。

2.判定請求人の主張について
上記1.において検討したとおり,イ号物件は構成要件AからGをいずれも充足しないと認められるものの,判定請求人は,本件ガイドラインに忠実に従っている限り,構成要件を充足する旨を繰り返し主張しているため,当該主張について以下,検討する。

(1)ア.判定請求人は,請求書において,
「1)利用者が管理(保管サービス利用を含む)する検証データ(甲1第101頁図5.1と同105頁図5.4に記載の「原本」)についての〔1〕‘原本性の証明に至っては,第三者機関から証明を受けることが必要であるため’,‘原本性証明を受けたいときは’,‘原本の情報を提供することにより改ざんされていないことを速やかに証明’(甲1第100頁17行目?22行目)している記載(甲1第100?101頁)と,〔2〕印紙税節減のメリットのある,建設業法に係るガイドラインに忠実に従って(甲第104頁13行?17行),契約事項が改ざんされても痕跡が残らない問題への対応策である(甲1第138頁32?34行目)原本性の確保で第三者機関での証明措置として(甲1第139頁19行目?20行目),取引に係る‘(1)公開鍵暗号方式による電子署名’に‘(2)電子的な証明書の添付’したものを,‘第三者機関において当該記録に関する記録に関する記録を保管し,原本性の証明を受けられる’措置に当たる第三者機関に係る記載(甲1第104?105頁,138?139頁)と,〔3〕甲2の記載,例えば第4条1項‘証明書に記載されている利用者の公開鍵を用いて,指定取引に関するデジタル・データについて行われた利用者の電子署名の真正を確認することにより,当該デジタル・データが当該利用者本人の作成にかかるものであるか,また当該デジタル・データについて改変が行われていないかどうか確認する’記載とは,いずれも(上記〔1〕,〔2〕,〔3〕を以下「同確認行為」と言う。),契約事項が改ざんされてもその痕跡が残らない問題(甲1第138頁33?34行目)への対応策として,取引後の随時,契約者相互の電子署名に裏付けられた,契約者相互の意思(契約事項)の合致を示す原本性を証明するCECSIGN(認証局)たる第三者機関についての記載である(甲1第100?101頁,104?105頁,甲2)。
2)CECSIGN(認証局)は,SecureSeal(原本性保証)(以下「SecureSeal(原本性保証)サーバ」と言う。)及び‘CECTRUST(送達確認)又はCECTRUST(原本保管)’(以下「CECサーバ」と言う。)と共に図示されているとこと(甲1第101頁図5.1,105頁図5.4),SecureSeal(原本性保証)サーバは,‘タイムスタンプを発行し,発行したタイムスタンプが自らが発行したものかを検証するに過ぎない装置’であり(被請求人の説明),またCECサーバは,契約完了前に‘送達確認’(甲1第101頁図5.1‘CECTRUST(送達確認)’)した後は‘契約書がCECサーバに保管された際に発行されたタイムスタンプを検証するに過ぎない装置’であり(被請求人の説明),契約完了後は使用しない(甲第100頁17行目「自社で原本を保管」)CECサーバと共に図示されている事例(甲1第100?101頁)と,契約完了後は‘契約書がCECサーバに保管された際に発行されたタイムスタンプを検証するに過ぎない装置’であるCECサーバと共に図示されている事例(甲1第104?105頁)との,いずれにおいても,契約完了後の随時,同確認行為を実施している(甲1第100頁17行目?22行目「‘原本性の証明に至っては,第三者機関から証明を受けることが必要であるため’,‘原本性証明を受けたいときは’,‘原本の情報を提供することにより改ざんされていないことを速やかに証明’」,甲1第104頁13行目?17行目「・・ガイドラインに忠実に従っている」)ことから,前記1)が裏付けられる。更に,SecureSeal(原本性保証)サーバとCECサーバは,第三者機関ではないこと,並びにガイドラインに忠実に従っているものでないこと,のいずれからも,前記1)が裏付けられる。」(5頁13行?7頁6行)
と主張している。

イ.上記引用の判定請求人の主張について検討する。
(ア)甲1には次の記載がある。
「大成建設株式会社では,建築工事における注文書・注文請書を電子化し,調達業務から契約・請求業務まで電子化を実現している。現在では全国の大成建設12支店と800以上の協力会社が電子契約を行っており,年間17,000件もの注文書の送信・注文請書の受信に,電子契約サービスを利用している。各支店の担当者は,平均月間120件の注文書を発行しているが,この注文書に対する注文請書の確認・受領に,月間250件程度の処理をすることになる。この件数を1件ずつWebブラウザで処理を行っていては電子化における業務改善には結び付かない。そのため,複数の電子文書へ一括で電子署名を施すAPIと電子契約サービスへ一括で送受信を行うAPIを組み込んだ原本保管システムを構築している(図5.1参照)。
国土交通省がガイドラインに示した見読性,原本性の確保を満たした原本保管システムを自社で開発し,電子契約サービスを利用せず自社で原本を保管している。原本性の証明に至っては,第三者機関から証明を受けることが必要であるため,電子契約サービスを利用して原本性証明サービスへ原本を登録し,原本性保証の証明書のみを電子契約サービスへ預けている。そして,原本性証明を受けたいときには,電子契約サービスを利用して原本に対応する原本証明の証明書を検索し,自社で保管している原本の情報を提出することにより改ざんされていないことを速やかに証明することができるようになっている。」(100頁7行?末行),
また,甲1の101頁には,「図5.1 大成建設株式会社と協力業者間のサービス利用イメージ」として,「大成建設株式会社」と,「協力会社」との間に,「CECSIGN(認証局)」,「CECTRUST(送達確認)」,「SecureSeal(原本性保証)」から構成される「サービス」を利用するイメージが開示されている。
更に,甲1には次の記載がある。
「大明株式会社が電子契約の導入を決めたことから,2003年10月より電子契約サービスCECTRUSTの利用を開始した。
・・・(中略)・・・
(2)実現方式の選定理由
国土交通省が示した,建設業法施行規則第13条の2第2項に規定する「技術的基準」に係るガイドラインに忠実に従っているASPサービスであることが要因である。契約書を扱うサービスは,その保管年数の長さからサービスを長期間行わなければならないため,暗号方式の危殆化に備えたり,その時代のニーズや法律に合わせたりしながら機能を変化される必要がある。また,法律やガイドラインによって必須機能が定められたときに,サービスの根底から構築し直さなければならないといった事態になると,再度構築投資が必要になってしまう。そのため,国が定めたガイドラインに忠実に従ったサービスであれば国の施策から外れる心配はなく,セキュリティの専門化が行うサービスを利用することで自社開発のリスクを軽減されることができるのである。
その他の選定理由としては,NTTデータがシステム運用を行っているという信頼感が挙げられる。NTTデータは大明株式会社によって最大客先であるNTTグループの一員であり,以前から受発注関係にあったため,大明株式会社にとってNTTデータが運用を行うシステムであれば,大切な契約書を預けることができるという判断があったという。」(104頁2行?末行)
加えて,甲1の105頁には,「図5.4 大明株式会社とグループ企業間のサービス利用イメージ」として,上記指摘の「図5.1」と同様の図面が開示されている。

(イ)上記に引用した甲1号証の記載内容には,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」が,「利用者」,「検証者」の双方から,“署名付のデジタル・データ”を受け取ること,当該「デジタル・データ」を保管すること,及び,当該「デジタル・データ」の「ダイジェスト」を用いて検証を行うことは,記載されておらず,甲1号証の記載内容から,読み取ることもできない。

(2)ア.当審の審尋に対する回答を善解すると,当該回答の2頁の「1」の「装置〔1〕」及び「2」の「装置〔2〕」としての機能を,認定認証局としての機能である〔3〕の他に,CECSIGN(認証局)が有している旨の主張であると解される。
上記指摘の主張の根拠として,判定請求人は,

(ア)被請求人作成に係る書籍(甲1)によれば,被請求人は,上記引用の建設業法に係るガイドラインに忠実に従っている。

(イ)甲1の101頁,105頁のイメージ図によれば,ガイドラインに基づいた被請求人のシステムは,「CECSIGN(認証局)」,CECサーバ,SecureSeal(原本性保証)の3つのシステムにより構成されているところ,被請求人の従前の主張(甲4,甲6)によれば,SecureSeal(原本性保証)サーバは,‘タイムスタンプを発行し,発行したタイムスタンプが自らが発行したものかを検証するに過ぎない装置’であり,CECサーバは契約完了前に,送達確認’(甲1第101頁図5.1‘CECTRUST(送達確認)’)した後は‘契約書がCECサーバに保管された際に発行されたタイムスタンプを検証するに過ぎない装置’であるから,被請求人がガイドラインに従っているのであれば,ガイドラインに記載されている原本性証明その他の確認手段を担いうるのは「CECSIGN(認証局)」しかない。

(ウ)そして,「CECSIGN(認証局)」が本件ガイドラインに忠実に従っているならば,構成要件を当然に充足する。

旨主張している。

イ.「装置〔1〕」および「装置〔2〕」としての機能をCECSIGN(認証局)が有していることの立証責任は,判定請求人にある。
しかしながら,判定請求書,弁駁書,及び,審尋回答書のいずれを参照しても,「装置〔1〕」および「装置〔2〕」としての機能をCECSIGN(認証局)が有することを立証しているとは認められない。
甲1に記載のガイドライン(判定請求人のいう「本件ガイドライン」)には,建設業者は契約の相手方に対して,「第三者機関」が発行する電子的な証明書を添付することで,認証業務を行うシステムを備えるべきこと(甲1第139頁(2)部分)及び,信頼される「第三者機関」によって,原本性の証明を受けられる措置を講じておくことが有効である(甲1第139頁(3)部分)旨の記載は存在するものの,認証業務を行う「第三者機関」及び原本性の証明を行う「第三者機関」が同一であるべきことを求める文言は存在しておらず,本件ガイドラインは,認証業務を行う第三者機関と原本性の証明を行う第三者機関とが別体である構成を排除するものではない。
また,本件ガイドライン(3)(甲1第139頁(3))の記載は,建設業者が信頼されてる第三者機関において当該記録に関する記録を保管し,原本性の証明を受けられるような措置を講じることが,「有効であると考えられる」としているに過ぎず,当該措置を講じるためのシステムの構築を必須としているものではない。
加えて,本件ガイドラインの記載に忠実に従ったならば,電子的な証明書の発行をする第三者機関が,必ず原本性証明その他の確認手段を担う構成を取らなければならないと認めるに足る証拠を判定請求人は示していない。
よって,本件ガイドラインの記載文言から解釈すると,本件ガイドラインに忠実に従っているからといって,必ずしも「CECSIGN(認証局)」が,電子的な証明書の発行と原本性証明その他の確認手段を担う構成を取らなければならないとまでは言えない。
そして,甲1の105頁の図5.4の「CECTRUST(原本保管)」という記載によれば,「CECTRUST」は,甲1の101頁の図5.1に記載の「CECTRUST(送達確認)」に加えて,「原本保管」の機能を有するよう構成できると解されるから,
甲1においては,「原本保管」は,「CECSIGN」ではなく,「CECTRUST」にされていると解釈でき,
以上の検討から,甲1からは,CECSIGN(認証局)が,「装置〔1〕」としての機能を有することを読み取ることはできない。
したがって,甲1の139頁ガイドラインの「(3)電磁的記録等の保存」の箇所に,「また,必要に応じて,信頼される第三者機関において当該記録に関する記録を保管し,原本性の証明を受けられるような措置を講じておくことも有効である。」との記載があることは認められるものの,判定請求人が提出した全証拠(甲1?8の2)を踏まえても,上記「第3 イ号物件」で前述したように,「装置〔1〕」および「装置〔2〕」としての機能をCECSIGN(認証局)が有しているとは認められない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,イ号物件である「CECSIGN(認証局)」は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
 
判定日 2019-05-16 
出願番号 特願平11-372997
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (H04L)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 石井 茂和
須田 勝巳
登録日 2006-04-28 
登録番号 特許第3796528号(P3796528)
発明の名称 内容証明を行う通信システムおよび内容証明サイト装置  
代理人 升永 英俊  
代理人 佐藤 睦  
代理人 市原 政喜  

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