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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1351718
審判番号 不服2017-5598  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-19 
確定日 2019-05-13 
事件の表示 特願2015-523415「ネットワークアクセス方法,装置,及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月31日国際公開,WO2014/206145,平成27年 9月10日国内公表,特表2015-526995〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)4月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月27日 中国)を国際出願日とする出願であって,平成27年1月9日に手続補正書が提出され,平成28年4月11日付けで拒絶理由が通知され,同年7月12日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月16日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成29年4月19日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされ,その後,当審において平成30年6月8日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年9月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,平成30年9月11日にされた手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項4に係る発明(以下,「本願発明」という。)は以下のとおりのものと認める。
「モバイルワイヤレス相互接続装置であって,
検出モジュールと,
アクセスモジュールと,
チャネル切替えモジュールと
を具備し,
前記検出モジュールは,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを検出するように構成され,
前記第1チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置と端末局との間のチャネルであり,
前記第2チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置とホットスポットアクセス装置との間のチャネルであり,
前記アクセスモジュールは,前記検出モジュールによって前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在することが検出された場合,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなって,前記端末局が前記モバイルワイヤレス相互接続装置及び前記ホットスポットアクセス装置を使用してインターネットにアクセスするよう,前記モバイルワイヤレス相互接続装置自身の送信出力を減少させるように構成され,
前記アクセスモジュールは,第1ユニットを具備し,
前記第1ユニットは,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,所定の値に従って,前記モバイルワイヤレス相互接続装置の前記送信出力を前記所定の値だけ減少させるように構成されることを特徴とするモバイルワイヤレス相互接続装置。」

ここで,補正後の請求項4は,補正前の請求項5の構成の一部に同請求項6の構成の一部を付加したものである。


3 拒絶の理由
当審拒絶理由の概要は,「理由3 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり,理由3について本件補正前の請求項5を引用する請求項6に対して,以下の5又は6が主引用例として,1が副引用例として,2,4が周知例として,引用されている。

<引用文献等一覧>
1.特開2013- 46398号公報
2.特開2012- 80192号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2012-244317号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013- 98818号公報(新たに引用する文献)
6.中国特許出願公開第102917406号明細書(新たに引用する文献)


4 引用発明等
(1)当審拒絶理由に引用された特開2013-98818号公報(以下,「引用例5」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0023】
A.第1実施例:
A1.装置構成:
図1は,本発明の可搬型ネットワーク通信装置を適用した一実施例としての可搬型ネットワーク中継装置の構成を示すブロック図である。可搬型ネットワーク中継装置10は,無線LAN(Local Area Network)インターフェイス部(以下,「無線LAN-IF部」とも表記する)40と,無線WAN(Wide Area Network)インターフェイス部(以下,「無線WAN-IF部」とも表記する)50と,移動体通信インターフェイス部(以下,「移動体通信IF部」とも表記する)60と,CPU(Central Processing Unit)20と,フラッシュROM(Read-Only Memory)34と,RAM(Random Access Memory)32とを備えている。可搬型ネットワーク中継装置10は,パーソナルコンピュータやゲーム機などの無線LANクライアントを,インターネットや,無線LANクライアントが所属する無線LANとは異なる無線LANに接続させる。
【0024】
無線LAN-IF部40は,変調器や,アンプや,アンテナを含み,例えばIEEE802.11b/g/nに準拠した無線LANのアクセスポイントとして,無線LANのクライアント(例えばパーソナルコンピュータやゲーム機)と無線通信を行う。
【0025】
無線WAN-IF部50は,変調器やアンプ,アンテナを含み,例えばIEEE802.11a/b/g/nに準拠した無線LANのクライアントとして,無線LANのアクセスポイント(例えば公衆無線LANのアクセスポイント)と無線通信を行う。無線WAN-IF部50は,受信信号強度決定部51を備えている。受信信号強度決定部51は,図示しない無線LANのアクセスポイントから出力される信号の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を決定する。
(中略)
【0032】
図2は,可搬型ネットワーク中継装置を用いた通信態様を模式的に示す説明図である。図2の通信態様では,通信端末として動作するパーソナルコンピュータ100と,可搬型ネットワーク中継装置10とは,同じ無線LAN201に接続されている。無線LAN201において,可搬型ネットワーク中継装置10は無線LANアクセスポイントとして動作し,パーソナルコンピュータ100は無線LANクライアントとして動作する。このとき,無線LAN-IF部40は,通信端末との間で無線通信を実行するネットワークインターフェイス部(端末側IF部)として動作する。
【0033】
また,図2の通信態様では,可搬型ネットワーク中継装置10と,無線LANアクセスポイント装置150とは,同じ無線LAN202に接続されている。無線LAN202において,可搬型ネットワーク中継装置10は,無線LANクライアントとして動作し,無線LANアクセスポイント装置150は,無線LANアクセスポイントとして動作する。可搬型ネットワーク中継装置10は,無線WAN-IF部50を用いて無線LANアクセスポイント装置150との無線通信を行う。無線LAN202は,図示しないISP(Internet Services Provider)のネットワークを介してインターネットINTに接続されている。



引用例5の上記記載及びこの分野における当業者の技術常識を考慮すると,引用例5には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「可搬型ネットワーク中継装置であって,
無線LAN-IF部及び無線WAN-IF部を具備し,
無線LAN-IF部は,無線LANのアクセスポイントとして,無線LANのクライアントである通信端末と無線通信を行い,
無線WAN-IF部は,公衆無線LANのクライアントとして,公衆無線LANのアクセスポイントである無線LANアクセスポイント装置と無線通信を行う,
可搬型ネットワーク中継装置。」

なお,同様の発明が,中国特許出願公開第102917406号明細書にも記載されているが,同書に記載された発明の認定は割愛する。

(2)同じく当審拒絶理由に引用された特開2013-46398号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

「【0002】
無線端末が無線基地局と通信するためには,無線基地局からの無線電波が届く範囲(サービスエリア)に無線端末が位置する必要がある。しかし,山岳地帯や高層ビル等が建ち並ぶ市街地には障害物が多いため無線電波が届きにくい領域が存在する。また,屋外に設置された無線基地局からは,電波が届かない領域(例えば,建物の内部や地下)が多く存在する。特に,IEEE標準規格802.16eを基に規格化されたWiMAX(登録商標)(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access)等の高速無線通信方式においては,2.5GHz以上の周波数帯が使用されるが,このような高周波数帯の電波は直進性が強く障害物を回りこむ性質が弱いため,障害物の影響を強く受ける。このような電波が届かない領域をカバーするため,無線基地局と無線端末との間の無線電波を中継する無線中継装置(レピータ)が必要となる。
【0003】
無線中継装置は,サービスエリアを拡充できるという利点がある反面,無線中継装置が発する電波が他の電波との干渉を引き起こすという欠点がある。無線中継装置に起因する干渉の一つとして,無線中継装置内のドナーノード(基地局側ブロック)とサービスノード(端末側ブロック)との間の相互干渉が挙げられる。ここで,ドナーノードとは無線基地局とデータを送受信するブロックであり,サービスノードとは無線端末とデータを送受信するブロックである。
(中略)
【0007】
このような通常タイミング動作時の相互干渉を低減するための方法として,図5に示すような送受信タイミングで無線中継装置を動作させる方法が提案されている(例えば,特許文献1参照)。当該方法は,サービスノードの送受信タイミングを通常タイミングの場合の送受信タイミングから反転させた送受信タイミング(以下,「反転タイミング」と称する)とする方法である。
【0008】
このように,無線中継装置のドナーノードとサービスノードとを同じタイミングで送信させ,また同じタイミングで受信させることにより,通常タイミング動作時に問題となるドナーノードとサービスノードとの間の相互干渉を解消することができる。
(中略)
【0010】
上述したように,無線中継装置を反転タイミングで動作させることにより,ドナーノードとサービスノードとの間の相互干渉を解消することができる。
【0011】
しかしながら,無線中継装置を反転タイミングで動作させた場合は,別の経路の干渉が発生する。図5に示すように,第2期間において無線基地局は無線中継装置のドナーノードからアップリンクデータを受信する。また,第2期間において,無線中継装置のサービスノードは,無線端末にダウンリンクデータを送信する。
【0012】
この際,サービスノードが送信する電波は通信確立中の無線端末だけではなく,周辺の無線基地局にも到達する。したがって,サービスノードが使用している周波数と同一の周波数によりドナーノードからアップリンク信号を受信している無線基地局(以下「同一周波数無線基地局」という)は,サービスノードの送信電波による干渉を受ける。
(中略)
【0014】
例えば,無線中継装置が列車等の車両に設置されている場合は,無線中継装置と無線基地局との間の距離が時間とともに変動し,無線中継装置が無線基地局に近づく場合がある。このような場合に,サービスノードの送信電波による無線基地局への干渉が無線基地局の受信信号を劣化させ得るが,従来の無線中継装置はサービスノードの送信電力が固定であるため,この干渉による無線基地局の受信信号の劣化を回避することが困難となる。
【0015】
したがって,かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は,反転タイミングで動作する無線中継装置において,サービスノードの送信電波の無線基地局への干渉による無線基地局の受信信号の劣化を防ぐことができる無線中継装置および無線通信方法を提供することにある。
(中略)
【0025】
図1は,本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略図である。無線通信システムは,無線基地局と無線端末と無線中継装置10とから構成されている。無線中継装置10は,無線基地局と無線端末との間で送受信されるデータを中継する。
【0026】
図2は,本発明の一実施形態に係る無線中継装置の概略構成を示す機能ブロック図である。無線中継装置10は,ドナーノード20とサービスノード30とを備える。
【0027】
まず,ドナーノード20の機能ブロックについて説明する。ドナーノード20は,基地局側通信部22と基地局側制御部24とを備える。
【0028】
基地局側通信部22は,アンテナを介して無線基地局とデータを送受信する。ダウンリンクデータについては,基地局側通信部22は,第1期間に無線基地局からダウンリンクデータを無線信号として受信する。基地局側通信部22は,無線信号をダウンコンバートしてベースバンド信号に変換し端末側通信部32に出力する。また,アップリンクデータについては,基地局側通信部22は,端末側通信部32からアップリンクデータをベースバンド信号として受け取る。基地局側通信部22は,第2期間にベースバンド信号をアップコンバートして無線信号に変換し無線基地局へ送信する。第1期間と第2期間とは交互に繰り返され,それに伴い基地局側通信部22は無線基地局との間でダウンリンクデータの受信とアップリンクデータの送信を繰り返し実行する。
【0029】
また,基地局側通信部22は,定期的に周辺の無線基地局からの電波を受信する。なお,「周辺の無線基地局」との用語は,周辺の無線中継装置も含んだ意味で用いる。なぜなら,通常タイミングで動作する無線中継装置のサービスノードは,無線基地局と送受信のタイミングが同じであり同様の機能を持つからである。
【0030】
基地局側制御部24は,基地局側通信部22をはじめとしてドナーノード20の全体を制御する。基地局側制御部24は,CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり,処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0031】
基地局側制御部24は,端末側制御部34からサービスノード30の使用周波数の情報を取得する。基地局側制御部24は,取得したサービスノード30の使用周波数の情報に基づいて,受信した信号の中から同一周波数無線基地局からの受信電力を抽出する。また,基地局側制御部24は,当該使用周波数の情報に基づいて,受信した信号の中から同一周波数無線基地局の下り電波情報(DCD:Downlink Channel Descriptor)を取得し,当該下り電波情報から送信電力情報を取得する。
【0032】
続いて,サービスノード30の機能ブロックについて説明する。サービスノード30は,端末側通信部32と端末側制御部34とを備える。
【0033】
端末側通信部32は,アンテナを介して無線端末とデータを送受信する。端末側通信部32は,ドナーノード20とサービスノード30との間の相互干渉を解消するため,反転タイミングにより無線端末とデータを送受信する。
【0034】
端末側通信部32は,第1期間に無線端末からアップリンクデータを受信し,第2期間に無線端末へダウンリンクデータを送信する。第1期間と第2期間とは交互に繰り返され
,それに伴い端末側通信部32は無線端末との間でアップリンクデータの受信とダウンリンクデータの送信を繰り返し実行する。
【0035】
端末側通信部32は,ダウンリンクデータについては,基地局側通信部22からダウンリンクデータをベースバンド信号として受け取り,アップコンバートして無線信号に変換して無線端末に送信する。
【0036】
端末側通信部32は,アップリンクデータについては,無線端末からアップリンクデータを無線信号として受信し,ダウンコンバートしてベースバンド信号に変換して基地局側通信部22に出力する。
【0037】
端末側制御部34は,端末側通信部32をはじめとしてサービスノード30の全体を制御する。端末側制御部34は,CPU等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり,処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP)によって構成したりすることもできる。なお,本実施形態においては,ドナーノード20が基地局側制御部24を備え,サービスノード30が端末側制御部34を備えるというように,ドナーノード20およびサービスノード30の各々が制御部を備える構成として説明したが,本発明は,この構成に限定されるわけではない。例えば,ドナーノード20とサービスノード30とを1つの制御部で制御する構成とすることもできる。
【0038】
端末側制御部34は,基地局側制御部24から,同一周波数無線基地局からの受信電力情報を受け取る。また,端末側制御部34は,基地局側制御部24から,同一周波数無線基地局の送信電力情報を受け取る。
【0039】
端末側制御部34は,基地局側制御部24から受け取った,同一周波数無線基地局からの受信電力情報,および,同一周波数無線基地局の送信電力情報から,同一周波数無線基地局から基地局側通信部22への経路の伝搬損失Lを算出する。端末側制御部34は,伝搬損失Lを以下の数式により算出する。
伝搬損失L=(同一周波数無線基地局の送信電力情報)-(同一周波数無線基地局からの受信電力情報)
【0040】
端末側制御部34は,伝搬損失Lの値に応じて,端末側通信部32の送信電力を設定する。
【0041】
端末側制御部34は,伝搬損失Lが予め定めておいた所定の閾値より小さい場合は,サービスノード30の送信電波が同一周波数無線基地局の受信信号を劣化させると判断し,伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部32の送信電力を低減させる。これにより,無線中継装置10は,サービスノード30の送信電波の干渉による同一周波数無線基地局の受信信号の劣化を防ぐことができる。
【0042】
また,端末側制御部34は,伝搬損失Lが予め定めておいた所定の閾値以上の場合は,サービスノード30の送信電波は同一周波数無線基地局の受信信号を劣化させるレベルに対して余裕があると判断し,伝搬損失Lが所定の閾値より大きい分だけ,端末側通信部32の送信電力を増加させる。これにより,無線中継装置10は,サービスノード30の送信電波の干渉による同一周波数無線基地局の受信信号の劣化を発生させることなく,サービスノード30がカバーできるサービスエリアを広げることができる。
【0043】
図3のフローチャートを参照しながら,無線中継装置10が端末側通信部32の送信電力を決定する処理を説明する。
【0044】
基地局側通信部22は,周辺の無線基地局からの電波を受信する(ステップS101)。基地局側制御部24は,端末側制御部34からサービスノード30の使用周波数情報を取得する(ステップS102)。
【0045】
基地局側制御部24は,基地局側通信部22が受信している信号から,同一周波数無線基地局からの受信電力を抽出する(ステップS103)。基地局側制御部24は,基地局側通信部22が受信している信号から,同一周波数無線基地局の送信出力情報を取得する(ステップS104)。
【0046】
端末側制御部34は,基地局側制御部24から,同一周波数無線基地局からの受信電力情報および同一周波数無線基地局の送信電力情報を受け取り,伝搬損失Lを算出する(ステップS105)。端末側制御部34は,伝搬損失Lを予め定めておいた所定の閾値と比較する(ステップS106)。
【0047】
端末側制御部34は,伝搬損失Lが所定の閾値より小さい場合,端末側通信部32の送信出力を伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ低減する(ステップS107)。端末側制御部34は,伝搬損失Lが所定の閾値以上の場合,端末側通信部32の送信出力を伝搬損失Lが所定の閾値より大きい分だけ低減する(ステップS108)。
【0048】
無線中継装置10は,図3に示す処理を定期的に実行し,端末側通信部32の送信出力を適切なレベルに調節する。
【0049】
このように,本実施形態によれば,無線中継装置10は,同一周波数無線基地局から基地局側通信部22への経路の伝搬損失Lを定期的に算出し,サービスノード30の送信電波の干渉により,同一周波数無線基地局の受信信号が劣化することを防ぐことができる。






上記摘記事項及び当業者の技術常識を考慮すると次のことが言える。
(i) 上記図1,2によれば,基地局側通信部と基地局側制御部,端末側通信部と端末側制御部を具備する無線中継装置が見てとれる。そして,上記【0028】,【0033】の記載によれば,基地局側通信部は,アンテナを介して無線基地局とデータを送受信し,端末側通信部は,アンテナを介して無線端末とデータを送受信するものである。そして,上記【0002】の記載及び上記図1によれば,無線中継装置は,基地局側通信部,基地局側制御部,端末側通信部,端末側制御部により,無線端末が無線中継装置及び無線基地局を使用して無線基地局が接続するネットワークにアクセスするようにしているといえ,そのための構成は「アクセスモジュール」と称することができる。

(ii) 上記【0003】,【0011】,【0012】の記載によれば,無線中継装置と無線端末との間のチャネルと,無線中継装置と無線基地局との間のチャネルとの間に干渉が存在することがあるといえる。ここで,無線中継装置と無線端末との間のチャネルを「第1のチャネル」と称し,無線中継装置と無線基地局との間のチャネルを「第2のチャネル」と称することができる。

(iii) 上記【0031】,【0039】?【0041】,【0044】?【0048】の記載によれば,基地局側制御部は,受信した信号の中から,端末側通信部の使用周波数と同一周波数の無線基地局からの受信電力を抽出し,また,前記無線基地局の送信電力情報を取得し,端末側制御部は,基地局側制御部から受け取った,前記受信電力情報,および,前記送信電力情報から,無線基地局から基地局側通信部への経路の伝搬損失Lを算出するものである。そして,端末側制御部は,伝搬損失Lが予め定めておいた所定の閾値より小さい場合は,端末側通信部の送信電波が同一周波数無線基地局の受信信号を劣化させると判断し,端末側通信部の送信電波の干渉による無線基地局の受信信号の劣化を防ぐために,伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部の送信電力を低減させるものである。これにより,無線中継装置はサービスノードの送信電波の干渉による同一周波数無線基地局の受信信号の劣化を防ぐことができるのであるから,低減する「伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分」は,「第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値」ということができる。
また,端末側制御部が,抽出した受信電力に基づいて算出した伝搬損失Lが予め定めておいた所定の閾値より小さい場合は端末側通信部の送信電波が同一周波数無線基地局の受信信号を劣化させると判断することは,「第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを判断すること」ということができ,無線中継装置の基地局側制御部及び端末側制御部における当該機能をなす部分を「判断モジュール」と称することができる。
また,上記【0048】,【0049】の記載によれば,「第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値」は定期的に算出されるといえるところ,次の算出がなされるまでは前回算出された値が既定値として使用されることは明らかである。

(iv) (i)?(iii)のとおりであるから,端末側通信部の送信電波の干渉による無線基地局の受信信号の劣化を防ぐために,伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部の送信電力を低減させることは,「判断モジュールによって第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在することが判断された場合,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなって,前記無線端末が前記無線中継装置及び前記無線基地局を使用して前記無線基地局が接続するネットワークにアクセスするよう,前記無線中継装置自身の送信出力を減少させる」,「前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,前記無線中継装置の前記送信出力を第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値だけ減少させる」ということができる。そして,無線中継装置の端末側制御部における当該機能をなす部分を「アクセスモジュールの第1ユニットモジュール」と称することができる。

したがって,引用例1には以下の発明(以下,「公知技術」という。)が記載されているものと認める。
「無線中継装置であって,
判断モジュールと,
アクセスモジュールと,
を具備し,
前記判断モジュールは,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを判断するように構成され,
前記第1チャネルは,前記無線中継装置と無線端末との間のチャネルであり,
前記第2チャネルは,前記無線中継装置と無線基地局との間のチャネルであり,
前記アクセスモジュールは,前記判断モジュールによって前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在することが判断された場合,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなって,前記無線端末が前記無線中継装置及び前記無線基地局を使用して前記無線基地局が接続するネットワークにアクセスするよう,前記無線中継装置自身の送信出力を減少させるように構成され,
前記アクセスモジュールは,第1ユニットを具備し,
前記第1ユニットは,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,前記無線中継装置の前記送信出力を第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値だけ減少させるように構成される,無線中継装置。」


なお,当審拒絶理由で引用された特開2012-80192号公報は,請求項4に付加されなかった補正前の請求項6の構成の一部に関して引用されたものであり,同特開2012-244317号公報は,補正前の請求項5から削除された構成に関して引用されたものであるので,当該構成を備えていない本願発明の進歩性の判断に関連しないから,割愛する。


5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,
(i) 引用発明の「可搬型ネットワーク中継装置」は,「モバイルワイヤレス相互接続装置」といえる。そして,引用発明の「無線LANのクライアントである通信端末」,「公衆無線LANのアクセスポイントである無線LANアクセスポイント装置」は,それぞれ本願発明の「端末局」,「ホットスポットアクセス装置」に相当する。

(ii) 引用発明の「無線LAN-IF部」は,無線LANのアクセスポイントとして無線LANのクライアントである通信端末と無線通信を行うものであり,無線LAN-IF部と通信端末との間にチャネルが存在することは自明であるところ,当該チャネルを「第1チャネル」と称することは任意である。
してみると,本願発明と引用発明とは,「第1チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置と端末局との間のチャネルである」点で共通している。

(iii) 引用発明の「無線WAN-IF部」は,公衆無線LANのクライアントとして,公衆無線LANのアクセスポイントである無線LANアクセスポイント装置と無線通信を行うものであり,無線WAN-IF部と無線LANアクセスポイント装置との間にチャネルが存在することは自明であるところ,当該チャネルを「第2チャネル」と称することは任意である。
してみると,本願発明と引用発明とは,「第2チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置とホットスポットアクセス装置との間のチャネルである」点で共通している。

したがって,本願発明と引用発明は,以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「モバイルワイヤレス相互接続装置であって,
第1チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置と端末局との間のチャネルであり,
第2チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置とホットスポットアクセス装置との間のチャネルである,モバイルワイヤレス相互接続装置。」

(相違点)
本願発明は,
「検出モジュールと,
アクセスモジュールと,
チャネル切替えモジュールと
を具備し,
前記検出モジュールは,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを検出するように構成され,
前記第1チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置と端末局との間のチャネルであり,
前記第2チャネルは,前記モバイルワイヤレス相互接続装置とホットスポットアクセス装置との間のチャネルであり,
前記アクセスモジュールは,前記検出モジュールによって前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在することが検出された場合,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなって,前記端末局が前記モバイルワイヤレス相互接続装置及び前記ホットスポットアクセス装置を使用してインターネットにアクセスするよう,前記モバイルワイヤレス相互接続装置自身の送信出力を減少させるように構成され,
前記アクセスモジュールは,第1ユニットを具備し,
前記第1ユニットは,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,所定の値に従って,前記モバイルワイヤレス相互接続装置の前記送信出力を前記所定の値だけ減少させるように構成される」
との発明特定事項を有しているのに対し,引用発明は当該発明特定事項を有していない点。

上記相違点について検討する。
上記4(2)のとおり,
「無線中継装置であって,
判断モジュールと,
アクセスモジュールと,
を具備し,
前記判断モジュールは,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを判断するように構成され,
前記第1チャネルは,前記無線中継装置と無線端末との間のチャネルであり,
前記第2チャネルは,前記無線中継装置と無線基地局との間のチャネルであり,
前記アクセスモジュールは,前記判断モジュールによって前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在することが判断された場合,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなって,前記無線端末が前記無線中継装置及び前記無線基地局を使用して前記無線基地局が接続するネットワークにアクセスするよう,前記無線中継装置自身の送信出力を減少させるように構成され,
前記アクセスモジュールは,第1ユニットを具備し,
前記第1ユニットは,前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,前記無線中継装置の前記送信出力を第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値だけ減少させるように構成される,無線中継装置。」
は公知技術である。
そして,引用発明の可搬型ネットワーク中継装置についても,無線LAN-IF部と通信端末との間のチャネルと,無線WAN-IF部と無線LANアクセスポイント装置との間のチャネルとの間に,干渉が生じ得ると解されるところ,干渉の防止は通信システムにおける一般的な課題であり,当該干渉による問題を低減するため上記公知技術を適用することは,当業者が容易に想到し得ることである。
ここで,「第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値」を,定期的に算出するか,予め定めた固定値とするかは,干渉の変動の程度や干渉低減の精度等を勘案して,適宜選択し得る程度のことに過ぎない。
また,本願発明の「前記検出モジュールは,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在するか否かを検出するように構成され」は,本願明細書の【0054】によれば,「例えば,有効な信号が-70dbであり,かつ干渉プラス雑音が-50dbである場合,検出モジュール501は,第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在すると決定する。」ように構成されることを含むと解され,本願発明の「検出モジュール」と公知技術の「判断モジュール」とは,受信した信号に基づいて算出した値をしきい値処理して干渉が存在すると判断(決定)する点で共通しており,どのような値を算出してしきい値処理して干渉が存在すると決定するかは,設計上適宜選択し得る事項に過ぎない。
更に,無線LANや無線WANが複数のチャネルが使用可能であることは技術常識であることに鑑みれば,チャネル切替えを行うためのチャネル切替えモジュールは引用発明も当然に有していると解することができ,仮にそうでないとしてもチャネル切替えを行うためのチャネル切替えモジュールを備えるようにすることは当業者が容易になし得ることに過ぎない。

したがって,本願発明は,引用発明及び公知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得るものである。


(請求人の主張について)
請求人は,平成30年9月11日に提出された意見書において,以下のように主張している。
「(7)「前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,所定の値に従って,前記モバイルワイヤレス相互接続装置の前記送信出力を前記所定の値だけ減少させる」ことについて
「当該所定の値だけ減少させれば必ず第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなる値」が存在し得ないことは明らかであるものと思料いたします。
したがって,「段階的に減少させる」代わりに,「所定の値だけ減少させる」こと,すなわち,固定値で一度だけ試みることが当業者には明らかであるものと思料いたします。」,
「(3) 本願発明と引例発明との差異について
本願の補正後の独立請求項(新請求項1,4)に係る発明(以下,「本願発明」と称します。)は,「前記第1チャネルと前記第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるよう,所定の値に従って,前記モバイルワイヤレス相互接続装置の前記送信出力を前記所定の値だけ減少させる」ことを1つの特徴とし,チャネル間の干渉によるサービス劣化/中断の期間を最短化するという格別の効果を奏します。

これに対し,引用例1の段落[0041]には,「端末側制御部34は,伝搬損失Lが予め定めておいた所定の閾値より小さい場合は,サービスノード30の送信電波が同一周波数無線基地局の受信信号を劣化させると判断し,伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部32の送信電力を低減させる」との記載があります。
しかしながら,「伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部32の送信電力を低減させる」ことは,可変値による調整であり,得られる効果も本願発明とは異なるものと思料いたします。
したがいまして,本願発明と引用例1に記載された発明とはその構成及び得られる効果が異なっており,引用例1に記載された発明に如何なる引例発明を組み合わせたとしても本願発明を容易に発明することはできないものと思料いたします。」

しかしながら,本願発明における「干渉」は,チャネル間に起こり得る干渉を包含し,特定のUL/DL送信間に限定していないから,引用例1記載の公知技術における干渉の態様も含むところ,引用例1記載の公知技術においても,「伝搬損失Lが所定の閾値より小さい分だけ,端末側通信部32の送信電力を低減させる」ことで干渉による影響が防止されるものである。また,引用例1記載の公知技術は,「第1チャネルと第2チャネルとの間に干渉が存在しなくなるようにする値」は定期的に算出されるといえるところ,次の算出がなされるまでは前回算出された値が既定値として使用されることは明らかである。してみると,引用例1記載の公知技術も「チャネル間の干渉によるサービス劣化/中断の期間を最短化する」との効果を奏し得ることは自明であり,その構成及び得られる効果が本願発明と異なるとはいえない。
したがって,請求人の主張は,採用できない。


6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-04 
結審通知日 2018-12-10 
審決日 2018-12-27 
出願番号 特願2015-523415(P2015-523415)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三浦 みちる  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 菅原 道晴
羽岡 さやか
発明の名称 ネットワークアクセス方法、装置、及びシステム  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  

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