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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1351770
審判番号 不服2017-13271  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-07 
確定日 2019-05-15 
事件の表示 特願2015-555965「ニードルアセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日国際公開、WO2014/123475、平成28年 2月18日国内公表、特表2016-504960〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月4日(パリ条約による優先権主張 2013年2月5日 (SE)スウェーデン王国)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成29年4月25日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲について手続補正がされたものである。


II.平成29年9月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年9月7日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された(下線は、補正箇所を明示するために付したものである。)。
「【請求項1】
経皮的に体内に流体を注入するおよび/または体内から流体を取り出すためのニードルアセンブリ(100)であって、ポリマーの本体(101)と、ウイングアセンブリと、中空ニードル(104)と、を備え、
ポリマーの本体(101)は、遠近方向の通路(102)を有し、
ウイングアセンブリは、本体(101)に固定され、ウイングアセンブリは、第1および第2のウイング(103)を含み、第1および第2のウイング(103)は、それぞれ反対の方向に前記本体(101)から側方に延び、
中空ニードル(104)は、前記本体(101)から遠位に延びるように、前記通路(102)に配置され、
前記ニードル(104)は、前記通路(102)に圧入または締り嵌めされており、
前記ニードルアセンブリ(100)は、シールドアーム(105)をさらに備え、シールドアーム(105)は、開位置から閉位置に旋回可能であるように、ポリマーの本体(101)に取り付けられており、ニードル(104)の先端が閉位置ではシールドアーム(105)によって覆われるが、ニードルの先端が開位置では覆われず、
シールドアーム(105)は、前記シールドアーム(105)を前記開位置または前記閉位置のうちの1つに押圧するためのヒンジ構造(106)を介して、本体(101)に取り付けられており、
前記ヒンジ構造(106)は、少なくとも1つのトグル継手(107)および少なくとも1つのテンション部材(108)を備え、前記少なくとも1つのトグル継手(107)および少なくとも1つのテンション部材(108)は、前記シールドアーム(105)および搭載ベース(109)に接続されており、搭載ベース(109)は、同様に本体(101)に接続されており、
ポリマーの本体(101)とウイングアセンブリとは、1つの一体型ユニットに含まれ、
前記第1および第2のウイング(103)には、厚さが0.50mm未満の縦溝が設けられている、ニードルアセンブリ。」

2 補正の目的及び新規事項の追加の有無等
請求項1についての本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項である「前記第1および第2のウイング(103)の厚さは0.50mmである、または、前記第1および第2のウイング(103)には切り欠きまたは溝が設けられている」について、「第1および第2のウイング(103)には」「溝が設けられている」という事項を選択した上で、その「溝」の形状及びサイズを「厚さが0.50mm未満の縦溝」と限定するものであって、しかも、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するところはない。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。
3-1 刊行物等の記載事項
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開2003-310757号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
1a:「【請求項1】
対向する基端部と先端部とを有する針ハブと、
該針ハブの該先端部に接続された基端部と、該針ハブから先端側に突出する先端部とを有する針状カニューレと、
該針ハブから横方向に突出する翼部と、
該針ハブにヒンジ接続されるとともに、該針状カニューレが露出される第1位置と、該針状カニューレが被覆される第2位置との間を移動可能に構成された針被覆部材と、
該被覆部材が該第2位置にあるとき、該被覆部材と係止係合するように、該針状カニューレの少なくとも1つの基端位置に対応して設けられた係止手段とを備えていることを特徴とする安全針アセンブリ。」

1b:「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体採取または注入針と、医療器具を安全に包囲するヒンジ付き被覆部材を備えた医療器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】皮下注射針、血液採取針、流体処理針及びそれらのアセンブリなど、薬剤投与あるいは流体採取用の穿刺部材を備えた廃棄可能な医療器具には、安全で簡便な取り扱いが要求される。穿刺部材には、例えば、先の尖った針状カニューレあるいは鈍端カニューレなどがある。
【0003】上述した医療具には、ハブまたはハブの近傍に一対の可撓プラスチック翼部が取り付けられることが多い。翼部は互いに係合するよう折り曲げ可能であり、これによって、針状カニューレを把持操作するのに便利な握り部が形成されている。翼部は互いに離間するように回動可能であり、また、患者の肌に接するようテーピングも可能である。」

1c:「【0009】また、針アセンブリには、針ハブに対し横方向に延びる一対の可撓翼部が設けられている。翼部を針ハブと別体で形成し、針ハブの一部に取り付けてもよい。この場合、針ハブを剛性の観点から選択された第1プラスチック材料で構成し、翼部を可撓性の観点から選択された第2プラスチック材料で構成してもよい。あるいは、翼部をハブと一体で構成し、ハブに隣接した翼部の厚みの薄い部分をヒンジ部として機能させてもよい。
【0010】また、針アセンブリに、針状カニューレが使用のため露出される第1位置から、針状カニューレが被覆部材内に安全に包囲される第2位置へと回動可能に針ハブにヒンジ接続された安全被覆部材を設けてもよい。・・・・・」

1d:「【0018】針ハブ36は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル酸、ポリスチレン、及びABS樹脂などのプラスチック材料によって一体成形される。針ハブ36内を流れる血液または他の流体が観察できるよう、針ハブ36は透明、または、半透明の材料で成形するのが好ましい。針ハブ36は、基端部46と、先端部48と、両端部間に延びる段付き通路(図示せず)とを有する。基端部46に隣接した通路の一部は、チューブ12の先端部28を挿入可能な寸法に形成されている。すなわち、チューブ12の先端部28は、針ハブ36の通路内に嵌入し、針ハブ36の基端部46に隣接した位置で結合されている。針ハブ36の先端部48に隣接した通路の一部は、針状カニューレ34の基端部40を摺動可能に受け入れる寸法に形成されている。すなわち、針状カニューレ34の基端部40はエポキシ樹脂及び/または機械的な接合によって針ハブ36に恒久的に接合されている。」

1e:「【0027】第6実施例は、図11、12に示すように、他の実施例と同様、針状カニューレ34と、針ハブ36と、針ハブ36から突出する翼部54、55とを有する。被覆部材110は、針状カニューレ34が露出される第1位置から、針状カニューレ34が被覆される第2位置まで移動可能になるよう針ハブ36に対しヒンジ接続されている。しかしながら、被覆部材110は針ハブ36に直接ヒンジ接続されていない。具体的に、被覆部材110は、針ハブ36の基端部40に確実に取り付けられた被覆部材の基台112にヒンジ接続されている。被覆部材の基台112には、被覆部材110が第2位置まで回動した場合に、被覆部材110と係止係合するために相対向して配置された一対のラッチ部材114が形成されている。すなわち、被覆部材110は、被覆部材の基台112とラッチ部材114とともに一体形成された構造体の一部である。一体形成された被覆部材110と基台112の構造体全体によって係止を行うことができる。さらに、針状カニューレ34に対し被覆部材110を重複して係止するカニューレフィンガー係止部を被覆部材110に設けてもよい。」

1f:「【0028】上述した発明のさまざまな様相は、針が安全に被覆される第2位置において被覆部材を係止する構造に関するものである。本発明の他の様相は、第2位置への被覆部材の移動を容易にするための構造に関するものである。すなわち、本発明の第7実施例の針アセンブリは、図13、14に示すように、前述した実施例と同様、針状カニューレ34と、針ハブ36と、翼部54、55とを有する。被覆部材20は針ハブ36にヒンジ接続されている。すなわち、被覆部材20の基端部60は符号120で表されるオーバーセンタヒンジ部材によって針ハブ36の先端部48と一体接続されている。ヒンジ部材120は、主要ヒンジ部122と、主要ヒンジ部122から離れた位置でハブ36と被覆部材20の所定位置を連結する分節脚部124とを有する。脚部124は、被覆部材20が第1位置にあるとき、互いに略直角に配置されるようになっている。被覆部材20が第1位置から第2位置に向けてヒンジ部材120回りを回動すると、脚部124は略平角になるよう付勢される。被覆部材20が第2位置に近づくと、脚部124は最大伸長位置を越えて延び、第2位置へと被覆部材20を加速するための初期直角姿勢へと付勢される。」

続いて、上記の各記載について検討する。
ア)摘記事項1bの「本発明は、流体採取または注入針と、医療器具を安全に包囲するヒンジ付き被覆部材を備えた医療器具に関するものである。・・・皮下注射針、血液採取針、流体処理針及びそれらのアセンブリなど、薬剤投与あるいは流体採取用の穿刺部材を備えた廃棄可能な医療器具・・・」の記載からみて、摘記事項1aの「安全針アセンブリ」は、薬剤投与あるいは流体採取用の安全針アセンブリといえる。
イ)摘記事項1d「針ハブ36は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル酸、ポリスチレン、及びABS樹脂などのプラスチック材料によって一体成形される。」、「針ハブ36は、基端部46と、先端部48と、両端部間に延びる段付き通路(図示せず)とを有する」の各記載によれば、からみて、摘記事項1aの「針ハブ」に関し、引用文献1には、“針ハブは、プラスチック材料によって一体成形され、基端部及び先端部との両端部間に延びる段付き通路を有する”事項が記載されているものといえる。
ウ)摘記事項1cの「針アセンブリには、針ハブに対し横方向に延びる一対の可撓翼部が設けられている」の記載によれば、摘記事項1aの「翼部」は、一対の翼部といえる。
エ)摘記事項1dの「針ハブ36の先端部48に隣接した通路の一部は、針状カニューレ34の基端部40を摺動可能に受け入れる寸法に形成されている。すなわち、針状カニューレ34の基端部40はエポキシ樹脂及び/または機械的な接合によって針ハブ36に恒久的に接合されている」の記載によれば、摘記事項1aの「針ハブ」及び「針状カニューレ」に関し、引用文献1には、“針状カニューレは、針ハブの先端部に隣接した通路に配置され、針状カニューレは、該通路に機械的に接合されている”事項が記載されているものといえる。
オ)摘記事項1fの「被覆部材20は針ハブ36にヒンジ接続されている。・・・・・被覆部材20が第1位置から第2位置に向けてヒンジ部材120回りを回動すると、脚部124は略平角になるよう付勢される。被覆部材20が第2位置に近づくと、脚部124は最大伸長位置を越えて延び、第2位置へと被覆部材20を加速するための初期直角姿勢へと付勢される」の記載及び図13、14の図示内容からみて、引用文献1には、摘記事項1aの「ヒンジ接続」に関し、“針被覆部材は、少なくとも針被覆部材を第2位置に付勢するためのヒンジ部材を介して、針ハブに取り付けられる”事項が記載されているといえる。
また、摘記事項1fの「ヒンジ部材120は、主要ヒンジ部122と、主要ヒンジ部122から離れた位置でハブ36と被覆部材20の所定位置を連結する分節脚部124とを有する」の記載及び図13、14の図示内容からみて、引用文献1には、摘記事項1aの「ヒンジ接続」に関し、“ヒンジ部材は、分節脚部および主要ヒンジ部を備え、分節脚部および主要ヒンジ部は、針被覆部材および針ハブに接続される”事項も記載されているといえる。
カ)摘記事項1bの「ハブまたはハブの近傍に一対の可撓プラスチック翼部が取り付けられることが多い。翼部は互いに係合するよう折り曲げ可能であり、これによって、針状カニューレを把持操作するのに便利な握り部が形成されている」及び摘記事項1cの「針ハブに対し横方向に延びる一対の可撓翼部が設けられている。・・・・・翼部をハブと一体で構成し、ハブに隣接した翼部の厚みの薄い部分をヒンジ部として機能させてもよい。」の各記載によれば、引用文献1には、摘記事項1aの「針ハブ」、「翼部」に関し、“針ハブと一対の翼部とは、一体で構成され、一対の翼部には、前記針ハブに隣接して厚みの薄い部分が設けられている”事項が記載されているといえる。

以上を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「薬剤投与あるいは流体採取用の安全針アセンブリであって、
対向する基端部と先端部とを有する針ハブと、
該針ハブの該先端部に接続された基端部と、該針ハブから先端側に突出する先端部とを有する針状カニューレと、
該針ハブから横方向に突出する一対の翼部と、
該針ハブにヒンジ接続されるとともに、該針状カニューレが露出される第1位置と、該針状カニューレが被覆される第2位置との間を移動可能に構成された針被覆部材と、を備え、
該針ハブは、プラスチック材料によって一体成形され、基端部及び先端部との両端部間に延びる段付き通路を有し、
該針状カニューレは、針ハブの先端部に隣接した通路に配置され、
該針状カニューレは、該通路に機械的に接合され、
該針被覆部材は、針被覆部材を前記第2位置に付勢するためのヒンジ部材を介して、前記針ハブに取り付けられており、
該ヒンジ部材は、分節脚部および主要ヒンジ部を備え、分節脚部および主要ヒンジ部は、針被覆部材および針ハブに接続されており、
該針ハブと一対の翼部とは、一体で構成され、一対の翼部には、針ハブに隣接して厚みの薄い部分が設けられている、安全針アセンブリ。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献である国際公開第2013/006134号(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、括弧内に邦訳として、対応する日本語公報である特表2014-520590号公報における該当箇所の記載を付記した。
2a:3頁2?7行
「It is an object of the present invention, considering the disadvantages mentioned above, to provide an improved needle guard which automatically protects the needle immediately after withdrawal of the needle from the skin of a patient.
It is another object of the present invention, to provide a needle guard which may be mounted on a wide range of standard needles or on the assembly consisting of a standard needle and standard syringe.」
(【0010】
前述の不利な点を考慮して、患者の皮膚からの針の抜き取りの直後に針を自動的に保護する改良された針防護具を提供することは、本発明の目的である。
【0011】
本発明の別の目的は、広範囲にわたる標準的な針上に、または標準的な針および標準的なシリンジからなるアセンブリ上に取り付けることのできる針防護具を提供することにある。)

2b:3頁29?32行
「According to yet another aspect of the present invention, the hinge structure may comprise at least one toggle joint and at least one tension member. The at least one toggle joint and the at least one tension member may be connected to the needle shield and to the mounting base.」
(【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、ヒンジ構造は、少なくとも1つのトグルジョイントおよび少なくとも1つの引張り部材を含んでよい。少なくとも1つのトグルジョイントおよび少なくとも1つの引張り部材は、針シールドおよび取付けベースに接続していてよい。)

2c:13頁12?23行
「The mounting base 140
The mounting base 140 may comprise means for securely fitting to and mating with a needle hub 220. Such means may be constituted by a needle hub bore 141 extending through the mounting base 140. The inner surface of the needle hub bore 141 may have essentially the same shape as the outer surface of the needle hub 220 at a section thereof onto which the mounting base 140 is fitted. The spatial extension, such as the diameter, of the needle hub bore 141 may be slightly less than the corresponding spatial extension of the needle hub 220 at a section thereof onto which the mounting base 140 is fitted. When fitted on the needle hub 220, by e.g. press fitting, the mounting base 140 is thereby securely fitted thereon and may not be moved relative the needle hub 220. The optimal difference in spatial extension of the needle hub 220 and the needle hub bore 141 for secure press fitting is well known to the one skilled in the art.」
(【0042】
[取付けベース140]
取付けベース140は、針ハブ220に確実に適合して、それと嵌合するための手段を備えてよい。この種の手段は、取付けベース140を通って延びる針ハブ孔141によって構成されてよい。針ハブ孔141の内面は、取付けベース140が適合する断面において針ハブ220の外面と同じ形状を基本的に有してよい。針ハブ孔141の空間的拡張(例えば直径)は、取付けベース140が適合する断面において針ハブ220の対応する空間的拡張よりもわずかに少なくてよい。例えば圧入によって針ハブ220上に適合されるときに、取付けベース140は、したがって、その上に確実に適合されて、針ハブ220に対して移動することができない。確実な圧入のための針ハブ220および針ハブ孔141の空間的拡張における最適の相違は、当業者にとって公知である。)

2d:15頁8行?16頁17行
「The hinge structure 120
The dead-center toggle function of the hinge structure 120 is so arranged that it forces the needle shield 110 with a force to one of either of two oppositely-disposed positions, the open position or the closed position. In the closed position, the needle 210 is protected by the needle shield 110. In the open position, the needle 210 is exposed and may be used to penetrate the skin of a patient. When a greater opposite external force is applied, such as the force applied by a user, to the needle shield 110 or any extension thereof, in a direction from the open position and past the dead-center position, the hinge structure 120 snaps the needle shield 110 into the closed position, unless hindered by an external object such as e.g. the skin or clothing of a patient, just after it has passed the dead-center position.
Above described dead-center toggle function of the hinge structure 120 may be achieved by various assemblies, such as for example spring loaded hinges or other "snap" mechanisms, well known in the art.
The hinge structure 120 may comprise one or several toggle joints 121 and one or several tension members 124. A dead-center toggle function of the hinge structure 120 may thus be achieved. The one or several toggle joints 121 may be connected to spatially closely related portions of the needle shield 110 and the mounting base 140. Each toggle joint 121 may preferably consist of two relatively rigid leg portions 122 that are attached together at their ends in their longitudinal direction at a toggle joint knee 123. The toggle joint knee 123 may be flexible such that the leg portions 122 may be moved relative each other to allow movement of the needle shield 110 between closed and open position. The one or several tension members 124 may be able to resiliently stretch or expand to a limited amount. When stretched or expanded, a tension member 124 is elongated and strives to retain its original shorter length. Hence, a stretched or expanded tension member 124 will impose a force in the direction opposite the direction of the stretching or expansion. The point of attachment of a tension member 124 at the needle shield 110 is preferable above the point of attachment of the corresponding toggle joint 121. The point of attachment of a tension member 124 at the mounting base 140 is preferable below the point of attachment of the corresponding toggle joint 121. A tension member 124 may preferably be mounted close to the corresponding toggle joint 121, but preferably not so close that it may touch any part of the latter, whereby the intended function of the hinge structure 120 may otherwise be compromised. The dead-center position of the hinge structure 120 corresponds to specific angle, the dead-center angle, between the longitudinal extension of the needle 210 and the longitudinal extension of the needle shield 110. If the angle between the longitudinal extension of the needle 210 and the longitudinal extension of the needle shield 110 is less than the dead-center angle, the needle shield 110 strives toward the closed position. If this angle is greater than the dead-center angle, the needle shield 110 strives toward the open position. The dead-center angle may be in the range of 45 to 170°, such as 80 to 120° or 90 to 110°. The one skilled in the art may easily configure the hinge structure 120 to achieve a desired dead-center angle. For example, longer leg portions 122 will result in an increase of the dead-center angle and moving the point of attachment of a tension member 124 further above the point of attachment of the corresponding toggle joint 121 will result in a decrease of the dead-center angle.」
(【0050】
[ヒンジ構造120]
ヒンジ構造120の中心点トグル機能は、それが力を用いて針シールド110を2つの反対に配置された位置(開位置または閉位置)のどちらか1つに移動させるように配置される。閉位置において、針210は、針シールド110によって保護されている。開位置において、針210は、露出して、患者の皮膚を貫通するために用いてよい。例えばユーザによって、針シールド110またはその任意の延長に対して開位置から中心点位置を通り過ぎる方向により大きな逆の外力が適用されるときに、それが中心点位置を通り過ぎた直後に、例えば患者の皮膚または衣類のような外部オブジェクトによって妨げられない限り、ヒンジ構造120は、針シールド110を閉位置にパチンとはめる。
【0051】
ヒンジ構造120の上記された中心点トグル機能は、従来公知のさまざまなアセンブリ(例えば、ばね付勢ヒンジまたは他の「スナップ」機構)によって達成されてよい。
【0052】
ヒンジ構造120は、1または複数のトグルジョイント121および1または複数の引張り部材124を含んでよい。ヒンジ構造120の中心点トグル機能は、したがって、達成されてよい。1または複数のトグルジョイント121は、針シールド110および取付けベース140の空間的に近い関連した部分に接続されてよい。各トグルジョイント121は、トグルジョイント膝123でそれらの長手方向の端部が一緒に取り付けられる2つの比較的堅い脚部122から好ましくは構成されてよい。閉位置と開位置との間で針シールド110の移動を許容するために脚部122が互いに移動してよいように、トグルジョイント膝123は、可撓性でもよい。1または複数の引張り部材124は、限界量まで弾性的に伸びるかまたは拡張することが可能でもよい。伸ばされるかまたは拡張されるときに、引張り部材124は、細長くなって、その最初のより短い長さを保持するように努める。それ故、伸ばされたかまたは拡張された引張り部材124は、伸びるかまたは拡張する方向の反対の方向に力を課す。針シールド110での引張り部材124の取付け位置は、対応するトグルジョイント121の取付け位置の上であることが好ましい。取付けベース140での引張り部材124の取付け位置は、対応するトグルジョイント121の取付け位置の下であることが好ましい。引張り部材124は、好ましくは対応するトグルジョイント121の近くに取り付けられてよいが、それが後者のいかなる部分も接触してよいように好ましくは近くなくてもよい。それにより、ヒンジ構造120の意図された機能は、さもなければ妥協されてよい。ヒンジ構造120の中心点位置は、針210の長手方向の延長と針シールド110の長手方向の延長との間の特定の角度(中心点角度)に対応する。針210の長手方向の延長と針シールド110の長手方向の延長との間の角度が中心点角度よりも少ない場合、針シールド110は、閉位置の方に向けて努める。この角度が中心点角度よりも大きい場合、針シールド110は、開位置の方に向けて努める。中心点角度は、45°?170°(例えば80°?120°または90°?110°)の範囲であってよい。当業者は、所望の中心点角度を達成するためにヒンジ構造120を容易に構成してよい。例えば、より長い脚部122は、中心点角度の増加に結果としてなる。そして、対応するトグルジョイント121の取付け位置よりもさらに上に引張り部材124の取付け位置を動かすことは、中心点角度の減少に結果としてなる。)

3-2 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア)引用発明1の「薬剤投与あるいは流体採取用の安全針アセンブリ」は、その機能、形状等からみて、本願補正発明の「経皮的に体内に流体を注入するおよび/または体内から流体を取り出すためのニードルアセンブリ」に相当し、以下同様に、「一対の翼部」は「ウイングアセンブリ」に、「針状カニューレ」は「中空ニードル」に、「針被覆部材」は「シールドアーム」に、「第1位置」は「開位置」に、「第2位置」は「閉位置」に、「ヒンジ部材」は「ヒンジ構造」に、それぞれ相当する。
イ)引用発明1の「針ハブ」は、「プラスチック材料によって一体成形され」ることから、本願補正発明の「ポリマーの本体」に相当し、また、引用発明1の「基端部及び先端部との両端部間に延びる段付き通路」は、本願補正発明の「遠近方向の通路」に相当する。
ウ)引用発明1においては、「ハブと一対の翼部とは、一体で構成され」ていること、「一対の翼部」は「ハブから横方向に突出」していること、また、「一対の翼部」の各「翼部」は各々「第1のウイング」、「第2のウイング」と称することができることを、それぞれ踏まえると、引用発明1は、「ウイングアセンブリは、本体に固定され、ウイングアセンブリは、第1および第2のウイングを含み、第1および第2のウイングは、それぞれ反対の方向に前記本体から側方に延び」る点で、本願補正発明と一致する。
エ)引用発明1の「針状カニューレ」は、「針ハブの該先端部に接続された基端部と、該針ハブから先端側に突出する先端部とを有」し、「針ハブの先端部に隣接した通路に配置され」るのであるから、引用発明1は、「中空ニードルは、前記本体から遠位に延びるように、前記通路に配置され」る点で、本願補正発明と一致する。
また、引用発明1では、「針状カニューレは、該通路に機械的に接合され」ているところ、引用発明1の「圧入または締り嵌め」は機械的接合の一種であるから、本願補正発明と引用発明1とは、“ニードルは、前記通路に機械的に接合されており”という点で共通する。
オ)引用発明1は、「針ハブにヒンジ接続されるとともに、該針状カニューレが露出される第1位置と、該針状カニューレが被覆される第2位置との間を移動可能に構成された針被覆部材と、を備え」ると共に「該針被覆部材は、針被覆部材を前記第2位置に付勢するためのヒンジ部材を介して、前記針ハブに取り付けられて」いること、「ヒンジ接続」とは、一般に、旋回可能な接続であること、さらには、上記ア)の相当関係からして、引用発明1は、「ニードルアセンブリは、シールドアームをさらに備え、シールドアームは、開位置から閉位置に旋回可能であるように、ポリマーの本体に取り付けられており、ニードルの先端が閉位置ではシールドアームによって覆われるが、ニードルの先端が開位置では覆われず、シールドアームは、前記シールドアームを前記開位置または前記閉位置のうちの1つに押圧するためのヒンジ構造を介して、本体に取り付けられており、」なる事項を具備する点で本願補正発明と一致する。
カ)引用発明1の「ヒンジ部材」は、「分節脚部および主要ヒンジ部を備え、分節脚部および主要ヒンジ部は、前記被覆部材および針ハブに接続されて」いるところ、引用文献1における「脚部124は、被覆部材20が第1位置にあるとき、互いに略直角に配置されるようになっている。被覆部材20が第1位置から第2位置に向けてヒンジ部材120回りを回動すると、脚部124は略平角になるよう付勢される。被覆部材20が第2位置に近づくと、脚部124は最大伸長位置を越えて延び、第2位置へと被覆部材20を加速するための初期直角姿勢へと付勢される。」(摘記事項1f)の記載を参照すれば、引用発明1の「ヒンジ部材」は、「分節脚部」の最大伸張位置を中立位置とした所謂トグル式の切替え機構を成していることから、引用発明1の「分節脚部および主要ヒンジ部」は、本願補正発明の「少なくとも1つのトグル継手および少なくとも1つのテンション部材」に相当する。
キ)引用発明1の「針ハブと一対の翼部とは、一体で構成され」は、本願補正発明の「ポリマーの本体とウイングアセンブリとは、1つの一体型ユニットに含まれ」に相当する。
また、「溝」は、「厚みの薄い部分」に概念的に含まれるので、引用発明1の「一対の翼部には、針ハブに隣接して厚みの薄い部分が設けられている」と本願補正発明の「第1および第2のウイング(103)には、厚さが0.50mm未満の縦溝が設けられている」とは、“第1および第2のウイングには、厚みの薄い部分が設けられている」点で共通する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
(一致点)
「経皮的に体内に流体を注入するおよび/または体内から流体を取り出すためのニードルアセンブリであって、ポリマーの本体と、ウイングアセンブリと、中空ニードルと、を備え、
前記ポリマーの本体は、遠近方向の通路を有し、
前記ウイングアセンブリは、前記本体に固定され、前記ウイングアセンブリは、第1および第2のウイングを含み、該第1および第2のウイングは、それぞれ反対の方向に前記本体から側方に延び、
前記中空ニードルは、前記本体から遠位に延びるように、前記通路に配置され、
前記中空ニードルは、前記通路に機械的に接合されており、
前記ニードルアセンブリは、シールドアームをさらに備え、該シールドアームは、開位置から閉位置に旋回可能であるように、前記ポリマーの本体に取り付けられており、前記ニードルの先端が閉位置では前記シールドアームによって覆われるが、前記ニードルの先端が開位置では覆われず、
前記シールドアームは、該シールドアームを前記開位置または前記閉位置のうちの1つに押圧するためのヒンジ構造を介して、前記本体に取り付けられており、
前記ヒンジ構造は、少なくとも1つのトグル継手および少なくとも1つのテンション部材を備え、前記少なくとも1つのトグル継手および少なくとも1つのテンション部材は、前記シールドアームに接続されており、
前記ポリマーの本体とウイングアセンブリとは、1つの一体型ユニットに含まれ、
前記第1および第2のウイングには、厚みの薄い部分が設けられている、
ニードルアセンブリ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、「ニードルは、前記通路に圧入または締り嵌めされて」いるのに対し、引用発明1では、ニードルが通路に機械的に接合されてはいるものの、その接合が「圧入または締り嵌め」であるとまでの特定はない点。

(相違点2)
本願発明では、「少なくとも1つのトグル継手および少なくとも1つのテンション部材は、前記シールドアームおよび搭載ベースに接続されており、搭載ベースは、同様に本体に接続されて」いるのに対し、引用発明1は、「搭載ベース」を有しておらず、そのため、トグル継手およびテンション部材は、シールドアームには接続されるものの、搭載ベースに接続されるものではない点。

(相違点3)
「厚みの薄い部分」に関し、本願補正発明では「厚さが0.50mm未満の縦溝」であるのに対し、引用発明1では、針ハブに隣接して設けられてはいるものの、薄い部分の厚さの具体的な数値も、薄い部分の具体的な形状も不明な点。

3-3 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明1において、ニードルを通路に対し機械的に接合するに当たり、安定した機械的接合構造として普通に知られた「圧入または締り嵌め」を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
上記摘記事項2aの「広範囲にわたる標準的な針上に、または標準的な針および標準的なシリンジからなるアセンブリ上に取り付けることのできる針防護具を提供する」、同2bの「ヒンジ構造は、少なくとも1つのトグルジョイントおよび少なくとも1つの引張り部材を含んでよい。少なくとも1つのトグルジョイントおよび少なくとも1つの引張り部材は、針シールドおよび取付けベースに接続していてよい」、同2cの「取付けベース140は、針ハブ220に確実に適合して、それと嵌合するための手段を備えてよい。・・・・・圧入によって針ハブ220上に適合されるときに、取付けベース140は、したがって、その上に確実に適合されて、針ハブ220に対して移動することができない」、同2dの「ヒンジ構造120は、1または複数のトグルジョイント121および1または複数の引張り部材124を含んでよい。・・・・・1または複数のトグルジョイント121は、針シールド110および取付けベース140の空間的に近い関連した部分に接続されてよい。・・・・・取付けベース140での引張り部材124の取付け位置は、対応するトグルジョイント121の取付け位置の下であることが好ましい。」の各記載及びFig.1?2の図示内容を特に参照すれば、引用文献2には、「トグルジョイント121および引張り部材124が針シールド110および取り付けベース140に接続されており、該取り付けベース140は、針ハブ220に接続される、針防護具。」なる発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
ここで、引用発明2における「トグルジョイント121および引張り部材124」は、その機能等からみて、“トグル継手およびテンション部材”といい得るものであり、同様に、「針シールド110」は“シールドアーム”と、「取り付けベース140」は“搭載ベース”といえるものであるから、引用発明2は、「トグル継手およびテンション部材がシールドアームおよび搭載ベースに接続されており、該搭載ベースは、針ハブに接続される、針防護具。」と言い換えることができる。
他方、引用文献1には、「被覆部材110は針ハブ36に直接ヒンジ接続されていない。具体的に、被覆部材110は、針ハブ36の基端部40に確実に取り付けられた被覆部材の基台112にヒンジ接続されている。」(摘記事項1e参照)という記載もあり、引用発明1における「針被覆部材」を針ハブに対し、直接ヒンジ接続するのではなく、別部材である基台を介してヒンジ接続可能なことも示唆されている。
そうすると、引用発明1に、「流体採取または注入針と、医療器具を安全に包囲するヒンジ付き被覆部材を備えた医療器具」(摘記事項1b)という点で技術分野及び解決しようとする技術課題が共通する引用発明2を適用することにより、「シールドアーム」に対し「搭載ベース」を付加すると共に、トグル継手およびテンション部材を、その一端でシールドアームに、また、他端で搭載ベースに接続して、相違点2に係る本願補正発明に係る事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
引用発明1における「厚みの薄い部分」は、針ハブに隣接して設けられているところ、「翼部は互いに係合するよう折り曲げ可能であり、これによって、針状カニューレを把持操作するのに便利な握り部が形成されている。翼部は互いに離間するように回動可能であり、また、患者の肌に接するようテーピングも可能である。」(摘記事項1b)という引用発明1における「翼部」の機能からみて、当該「厚みの薄い部分」を、翼部の折り曲げ易いような形状として、針ハブに隣接した長手方向の「薄い部分」形状、即ち、「縦溝」形状とすることは、当業者であれば適宜なし得た程度のことである。
加えて、例えば、本件優先日前に頒布された刊行物である特表2005-530540号公報の段落【0021】に「また、舌状部2は、本体1の近傍に長手方向の溝(longitudinal groove)20を備えており、上記溝は、舌状部2を溝20に沿って折ることのできる折り目として機能する。・・・使用者が上記舌状部を握ることができる。」と、また、同様に頒布された刊行物である実願昭51-40384号(実開昭51-152892号)のマイクロフィルムの3頁15?20行に「管状部分3から2個の翼部4がのびており、この翼部は前記管状部分に関して対称形であり、管針の軸線に直角にのびており、かつ、2個の溝5により厚さが減少された部分を介して前記管状部分に接続しており、この溝5は前記減少厚部分に関して翼部が弾力性を保有するように作用する。」と記載されているように、「第1および第2のウイングに縦溝が設けられる」ことは、従来周知の技術事項にすぎない。
そうすると、引用発明1の「厚みの薄い部分」の具体的な形状として、その機能面を踏まえて「縦溝」形状を採用すること、あるいは、上記周知の技術を踏まえて「縦溝」形状を採用することは、いずれも当業者であれば容易に想到し得たものといえるところ、その採用に当たり、当該「厚み」の具体的数値を、必要とされるウイングの強度や可撓性に応じて最適化し、「厚さが0.50mm未満の縦溝」とすることも、当業者が適宜になし得た設計的事項にすぎない。

(4)効果について
本願補正発明の効果も、引用文献1、2の記載および周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

(5)小括
よって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


III.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成29年3月31日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
経皮的に体内に流体を注入するおよび/または体内から流体を取り出すためのニードルアセンブリ(100)であって、ポリマーの本体(101)と、ウイングアセンブリと、中空ニードル(104)と、を備え、
ポリマーの本体(101)は、遠近方向の通路(102)を有し、
ウイングアセンブリは、本体(101)に固定され、ウイングアセンブリは、第1および第2のウイング(103)を含み、第1および第2のウイング(103)は、それぞれ反対の方向に前記本体(101)から側方に延び、
中空ニードル(104)は、前記本体(101)から遠位に延びるように、前記通路(102)に配置され、
前記ニードル(104)は、前記通路(102)に圧入または締り嵌めされており、
前記ニードルアセンブリ(100)は、シールドアーム(105)をさらに備え、シールドアーム(105)は、開位置から閉位置に旋回可能であるように、ポリマーの本体(101)に取り付けられており、ニードル(104)の先端が閉位置ではシールドアーム(105)によって覆われるが、ニードルの先端が開位置では覆われず、
シールドアーム(105)は、前記シールドアーム(105)を前記開位置または前記閉位置のうちの1つに押圧するためのヒンジ構造(106)を介して、本体(101)に取り付けられており、
前記ヒンジ構造(106)は、少なくとも1つのトグル継手(107)および少なくとも1つのテンション部材(108)を備え、前記少なくとも1つのトグル継手(107)および少なくとも1つのテンション部材(108)は、前記シールドアーム(105)および搭載ベース(109)に接続されており、搭載ベース(109)は、同様に本体(101)に接続されており、
ポリマーの本体(101)とウイングアセンブリとは、1つの一体型ユニットに含まれ、
前記第1および第2のウイング(103)の厚さは0.50mmである、または、前記第1および第2のウイング(103)には切り欠きまたは溝が設けられている、ニードルアセンブリ。」


IV.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された文献及びその記載事項は、前記II.3-1に記載したとおりである。


V.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、両者は、前記II.3-2に示した一致点で一致する。
また、両者は、前記II.3-2に示した相違点1、2で相違し、さらに次の点で一応相違する。
(相違点3’)
本願発明では、「第1および第2のウイング(103)の厚さは0.50mmである、または、前記第1および第2のウイング(103)には切り欠きまたは溝が設けられている」のに対し、引用発明1では、厚みの薄い部分が設けられているものの、「第1および第2のウイングの厚さは0.50mmである、または、前記第1および第2のウイングには切り欠きまたは溝が設けられている」との特定はない点。


VI.判断
1 相違点1、2について
相違点1、2については、前記II.3-3において検討したとおりである。

2 相違点3’について
(1)相違点3’における「第1および第2のウイング(103)の厚さは0.50mmである」事項について
引用発明1において、翼部の厚さを、翼部に必要とされる強度や可撓性を踏まえて最適化することは当業者による通常の創作能力の発揮にすぎない。
また、翼部の厚さの具体的数値である「0.50mm」なる値にも、特段の臨界的意義は見出せない。
(2)相違点3’における「第1および第2のウイングには切り欠きまたは溝が設けられている」事項について
引用発明1では、「第1および第2の翼部には、前記針ハブに隣接して厚みの薄い部分が設けられている」ところ、この「厚みの薄い部分」はその形状からみて、第1および第2の翼部に設けられた“切り欠き”の一種といい得るものである。
そうすると、引用発明1は、「第1および第2のウイングには切り欠き」「が設けられている」事項を具備する発明であるから、相違点3’は、実質的な相違点ではない。
(3)まとめ
よって、相違点3’における本願発明に係る事項は、引用発明1が具備している事項であるか、少なくとも引用発明1に基づいて当業者が容易に想到することができた事項である。

3 小括
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


VII.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-07 
結審通知日 2018-12-11 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2015-555965(P2015-555965)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 575- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 林 茂樹
特許庁審判官 二階堂 恭弘
関谷 一夫
発明の名称 ニードルアセンブリ  
代理人 藤田 和子  

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