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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1351780
審判番号 不服2017-18212  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-07 
確定日 2019-05-16 
事件の表示 特願2015-145806「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月9日出願公開,特開2016-71332〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-145806号(以下「本件出願」という。)は,平成27年7月23日(優先権主張 平成26年9月30日)を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成29年 4月10日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月 7日差出:意見書
平成29年 9月 5日付け:拒絶査定
平成29年12月 7日差出:審判請求書
平成29年12月 7日差出:手続補正書
平成30年10月12日付け:拒絶理由通知書
平成30年12月11日差出:意見書
平成30年12月11日差出:手続補正書
(この手続補正書を,以下「本件補正書」という。)

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項7に係る発明は,本件補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された事項によって特定されるとおりものであるところ,その請求項1に係る発明は,次のものである(以下「本願発明」という。)。
「 バックライト,以下に示す複合偏光板,及び液晶セルをこの順に含み,
前記複合偏光板は,その吸収型偏光板が前記液晶セル側となるように配置され,
前記バックライトに前記液晶セルを積層し,前記バックライトを点灯した状態で測定される発光スペクトルが,400?800nmの波長域において青及び黄の2つの発光ピークからなり,
前記発光スペクトルにおいて,青色及び黄色の発光ピーク波長における発光強度をそれぞれL(Bmax)及びL(Ymax)とするとき,下記式(1):
L(Bmax)/L(Ymax)>1 (1)
を満たす液晶表示装置。
複合偏光板:
吸収型偏光板と,その上に積層される反射型偏光板とを含み,
前記吸収型偏光板は,視感度補正単体透過率が41.8?43.5%であり,
前記反射型偏光板は,波長450?550nmにおける視感度補正直交透過率が3.5%以下である,複合偏光板。」

3 当合議体の拒絶の理由
平成30年10月12日付け拒絶理由通知書によって当合議体が通知した拒絶の理由(以下「当合議体の拒絶の理由」という。)は,概略,本願発明は,その優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(引用文献1?引用文献3のいずれか)に記載された発明に基づいて,本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2003-84137号公報
引用文献2:特開2001-290024号公報
引用文献3:特開2001-228332号公報

第2 当合議体の判断
1 引用文献1を主引用例とした場合
(1) 引用文献1の記載
当合議体の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2003-84137号公報)は,本件優先日前に頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも片方の表面が凹凸形状を有する高分子フィルムと,反射型偏光素子と,二色性偏光素子とが,この順に同一光路上に積層されてなることを特徴とする半透過半反射性偏光素子。
…(省略)…
【請求項12】請求項1?11のいずれかに記載の半透過半反射性偏光素子,光源部材及び反射板を備え,該光源部材及び反射板がこの順で半透過半反射性偏光素子の高分子フィルム側に配置されていることを特徴とする偏光光源装置。
【請求項13】請求項12に記載の偏光光源装置,液晶セル及び前面側二色性直線偏光素子を備え,該液晶セル及び前面側二色性直線偏光素子がこの順で偏光光源装置の半透過半反射性偏光素子側に配置されていることを特徴とする半透過半反射型液晶表示装置。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,暗所においては背面より表示画面を照明し,明所においては外部環境光を利用して表示画面を照明する半透過半反射型液晶表示装置,並びに,それに好適な半透過半反射性偏光素子及び偏光光源装置に関するものである。詳しくは,光の利用効率を高め,より明るい画面を提供するとともに,バッテリーの使用可能時間を長くするための,半透過半反射性偏光素子に関するものであり,さらに,それを用いた偏光光源装置及び半透過半反射型液晶表示装置に関するものである。
…(省略)…
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は,視認性を向上させるために凹凸形状を採用するとともに,そこに輝度向上システムを適用した半透過半反射性偏光素子を提供し,それにより,半透過半反射型液晶表示装置を透過型として使用する際の明るさを向上させることにある。本発明の別の目的は,輝度向上システムが適用され,透過型としての使用を重視しながらも,僅かな反射性能を付与することで,太陽光下で反射型として使用する際の視認性を向上させることにある。本発明のさらにもう一つの目的は,このような半透過半反射性偏光素子を用いた偏光光源装置及び半透過半反射型液晶表示装置を提供することにある。
…(省略)…
【0017】
【発明の実施の形態】本発明を明確にするため,その具体例を示す図面を参照しながら,以下に詳細な説明を行う。本発明において第一の見地から特定する半透過半反射性偏光素子10は,図1に断面模式図で示すように,少なくとも片方の面が凹凸形状を有する高分子フィルム21と反射型偏光素子25と二色性偏光素子26とが同一光路上に積層されたものである。
…(省略)…
【0025】反射型偏光素子25は,特定振動方向の偏光を透過し,それと直交する偏光を反射するものである。反射型偏光素子の偏光透過軸とは,特定振動方向の偏光がこの偏光素子の垂直方向から入射したときに,透過率が最大となる方向をいい,偏光反射軸とは,それと直交する方向をいう。
…(省略)…
【0028】二色性偏光素子26は,特定振動方向の偏光光を透過し,それと直交する方向の偏光光を吸収するものである。
…(省略)…
【0031】半透過半反射性偏光素子が,その反射型としての使用において,白く明るく見えるようにするためには,外部環境光をどこかで散乱する必要がある。また,透過型としての使用において,光源装置の照度を均一化する目的で,光拡散層を付与することが好ましい場合がある。そこで,図6に示すように,凹凸形状を有する高分子フィルム21,反射型偏光素子25及び二色性偏光素子26に加えて,光拡散層27を設け,半透過半反射性偏光素子12とすることができる。光拡散層27の積層位置は特に制限されず,図6の(a)に示す高分子フィルム21と反射型偏光素子25の間,同(b)に示す反射型偏光素子25と二色性偏光素子26の間,同(c)に示す二色性偏光素子26の外側のいずれでもよい。
…(省略)…
【0038】図8における光源装置61は,サイドライト式と呼ばれるもので,光源51,導光板52及び,導光板52の背面に配置された反射板53を備えており,導光板52の側面に配置された光源51からの光は,光源51の導光板52に面しない側を覆う反射鏡54で反射されて,まず導光板52内に取り込まれ,その中を進むとともに,反射板53での反射と相まって,導光板52の前面側から均一に光が放出されるようになっている。
…(省略)…
【0051】
【実施例】以下,実施例を用いて本発明の具体的な実施の形態を示すが,本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
…(省略)…
【0056】(A)二色性偏光素子
住友化学工業株式会社から販売されているヨウ素系偏光フィルムである“スミカラン SR1862A”及び“スミカラン SR1872A”(いずれも商品名)。各二色性偏光素子の視感度補正透過率及び視感度補正偏光度は,表1のとおりである。
【0057】(B)反射型偏光素子
住友スリーエム株式会社から販売されている2種の高分子フィルムの積層体である“DBEF”(商品名)。この反射型偏光素子の視感度補正透過率及び視感度補正偏光度は,表1のとおりである。
【0058】
【表1】

…(省略)…
【0062】実施例1
プリズム形状の凹凸表面を有する高分子フィルム“BEF-III”,光拡散層となる感圧接着剤W,反射型偏光素子“DBEF”,アクリレート系感圧接着剤,及び二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”をこの順で,かつ“BEF-III”の凹凸形状面が外側となるように密着積層して,図6(a)と同様の層構成を有する半透過半反射性偏光素子とする。なお,反射型偏光素子“DBEF”と二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”とは,偏光透過軸が同一方向となるようにする。これを半透過半反射型液晶表示装置に適用すれば,プリズム形状の凹凸表面を有する高分子フィルム“BEF-III”による外部環境光の再帰反射と,反射型偏光素子“DBEF”による偏光のリサイクルシステムにより,正面付近では特に,反射型で見た場合に明るくなる。
…(省略)…
【0084】
【発明の効果】本発明により,表面に凹凸形状を有する高分子フィルム又は高反射率層を有する高分子フィルムに,反射型偏光素子と二色性偏光素子とが積層された半透過半反射性偏光素子を液晶表示装置に適用すれば,反射特性が改善されるとともに,反射型偏光素子に基づく輝度向上システムにより,透過輝度の向上が得られる。特に,高反射率層として金属酸化物や金属弗化物のような金属化合物を採用すれば,透過輝度を高い値に維持したまま,反射輝度の向上も得られる。」

ウ 図1,図6及び図8
図1:

図6:

図8:


(2) 引用発明1
引用文献1の【0062】には,実施例1の「半透過半反射性偏光素子」が記載されている。また,【0062】に記載された「SR1862A」及び「DBEF」の視感度補正透過率は,【0058】の【表1】の記載からみて,それぞれ43.3%及び47.0%である。
そうしてみると,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。
「 プリズム形状の凹凸表面を有する高分子フィルム“BEF-III”,光拡散層となる感圧接着剤W,反射型偏光素子“DBEF”,アクリレート系感圧接着剤,及び二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”をこの順で,かつ高分子フィルム“BEF-III”の凹凸形状面が外側となるように密着積層してなる半透過半反射性偏光素子であって,
反射型偏光素子“DBEF”と二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”とは,偏光透過軸が同一方向となるようにし,ここで,
二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”の視感度補正透過率は43.3%,反射型偏光素子“DBEF”の視感度補正透過率は47.0%である,
半透過半反射性偏光素子。」

(3) 対比
引用発明1の「反射型偏光素子“DBEF”」,「二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”」及び「半透過半反射性偏光素子」は,技術的にみて,それぞれ本願発明の「反射型偏光板」,「吸収型偏光板」及び「複合偏光板」に相当する。

また,引用発明1の「半透過半反射性偏光素子」は,「プリズム形状の凹凸表面を有する高分子フィルム“BEF-III”,光拡散層となる感圧接着剤W,反射型偏光素子“DBEF”,アクリレート系感圧接着剤,及び二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”をこの順で,かつ高分子フィルム“BEF-III”の凹凸形状面が外側となるように密着積層してなる」。
そうしてみると,引用発明1の「半透過半反射性偏光素子」は,本願発明の「複合偏光板」における,「吸収型偏光板と,その上に積層される反射型偏光板とを含み」という要件を満たす。

加えて,引用発明1の「二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”の視感度補正透過率は43.3%」である。
そうしてみると,引用発明1の「二色性偏光素子“スミカラン SR1862A”」は,本願発明の「吸収型偏光板」における「視感度補正単体透過率が41.8?43.5%であり」という要件を満たす。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明1は,次の構成で一致する。
「 吸収型偏光板と,その上に積層される反射型偏光板とを含み,
前記吸収型偏光板は,視感度補正単体透過率が41.8?43.5%である,
複合偏光板。」

イ 相違点
本願発明と引用発明1は,以下の点で相違する。
(相違点1-1)
本願発明は,「バックライト,以下に示す複合偏光板,及び液晶セルをこの順に含み」,「前記複合偏光板は,その吸収型偏光板が前記液晶セル側となるように配置され」,「前記バックライトに前記液晶セルを積層し,前記バックライトを点灯した状態で測定される発光スペクトルが,400?800nmの波長域において青及び黄の2つの発光ピークからなり」,「前記発光スペクトルにおいて,青色及び黄色の発光ピーク波長における発光強度をそれぞれL(Bmax)及びL(Ymax)とするとき」,「L(Bmax)/L(Ymax)>1」「を満たす液晶表示装置」であるのに対して,引用発明1は,「半透過半反射性偏光素子」である点。

(相違点1-2)
「反射型偏光板」が,本願発明は,「波長450?550nmにおける視感度補正直交透過率が3.5%以下である」のに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(5) 判断
反射型偏光素子としては,その反射型偏光素子としての光学性能が高いものが,より好ましい。また,引用発明1の二色性偏光素子(スミカラン SR1862A)は,430nmにおける偏光度が,540nmや610nmにおける偏光度よりも悪く,540nmにおける偏光度も,610nmにおける偏光度より悪い(引用文献3の【0043】)。加えて,引用文献1には,図8に看取されるような冷陰極管をバックライト光源とする液晶表示装置が開示されているが,本件優先日前の液晶表示装置においては,青色発光ダイオードと黄色蛍光体との組み合わせによるバックライト光源が広く用いられている。そして,反射型偏光素子としての光学性能を有効活用するという観点からしてみれば,バックライト光源の波長特性と反射型偏光素子の波長特性を整合させることが望ましい。
そうしてみると,引用発明1において,波長450?550nmを含む波長領域における視感度補正直交透過率が優れた反射型偏光素子を採用することは,青色発光ダイオードと黄色蛍光体との組み合わせによるバックライト光源,引用発明1の反射型偏光素子,及び液晶セルを用いて,画質の良い液晶表示装置を製造することを望む当業者における,通常の創意工夫の範囲内の事項といえる。なお,当業者ならば,例えば,特表平9-506837号公報や特表平9-507308号公報に記載されているような反射型偏光素子に関する知見に基づいて,「波長450?550nmにおける視感度補正直交透過率が3.5%以下である」反射型偏光素子を,難易度は高いとしても,製造することができる。

そして,以上のとおり製造してなる液晶表示装置は,上記相違点1-1及び相違点1-2に係る,本願発明の構成を全て具備したものとなる。
すなわち,当業者が,上記のごとく液晶表示装置を製造する際に,バックライト,半透過半反射性偏光素子,液晶セルをこの順に含むものとすることは,液晶表示装置を,液晶表示装置として動作させるために,当然のことである。また,半透過半反射性偏光素子の二色性偏光素子が液晶セル側となるように配置しなければ,反射型偏光素子による輝度向上効果は得られない。そして,本件優先日前に広く用いられていた青色発光ダイオードと黄色蛍光体との組み合わせによるバックライト光源を採用した液晶表示装置は,自ずと,「前記バックライトに前記液晶セルを積層し,前記バックライトを点灯した状態で測定される発光スペクトルが,400?800nmの波長域において青及び黄の2つの発光ピークからなり」,「前記発光スペクトルにおいて,青色及び黄色の発光ピーク波長における発光強度をそれぞれL(Bmax)及びL(Ymax)とするとき」,「L(Bmax)/L(Ymax)>1」「を満たす」ものとなる。

また,本願発明の効果は,「高輝度かつ高コントラストの液晶表示装置を実現することができる」(【0019】)というものであるところ,この効果は,引用発明1に基づいて以上のとおり創意工夫する当業者が期待する効果にすぎない。

したがって,本願発明は,(液晶表示装置に関する本件優先日前の技術水準を踏まえた)当業者が,引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。

2 引用文献2を主引用例とした場合
(1) 引用文献2の記載
当合議体の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2001-290024号公報)は,本件優先日前に頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを,染色し,架橋して製造される偏光板において,1枚の偏光板の光の透過率(単体透過率)と,2枚の偏光板の偏光する軸(偏光軸)を直交にした時の光の透過率(直交透過率)から算出される次の式を全て満たすことを特徴とする偏光板。
波長440nmの(単体透過率)/(直交透過率)>600
波長550nmの(単体透過率)/(直交透過率)>3000
波長610nmの(単体透過率)/(直交透過率)>11000
…(省略)…
【請求項7】請求項1?3のいずれかに記載の偏光板に接着剤又は粘着剤を用いて,輝度向上フィルムを貼り合せた偏光板。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,表示ムラの改善された液晶表示装置(以下,LCDと略称することがある。)に使用する偏光板及び液晶表示装置に関する。
…(省略)…
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,前記従来の問題を解決するため,表示ムラの改善されたLCDに使用する偏光板及び液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
…(省略)…
【0011】
【発明の実施の形態】
…(省略)…
【0012】本発明で用いる偏光板の基本的な構成は,二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルムなどからなる偏光子の片側又は両側に,適宜の接着層,例えば,ビニルアルコール系ポリマー等からなる接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。
…(省略)…
【0021】本発明による偏光板は,実用に際して他の光学層と積層した光学部材として用いることができる。その光学層については特に限定はないが,例えば反射板や半透過反射板,位相差板(1/2波長板,1/4波長板などのλ板も含む),視角補償フィルムや輝度向上フィルムなどの,液晶表示装置等の形成に用いられことのある適宜な光学層の1層又は2層以上を用いることができ,特に,前述した本発明の偏光子と保護層からなる偏光板に,更に反射板または,半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過反射板型偏光板,前述した本発明の偏光子と保護層からなる偏光板に,更に位相差板が積層されている楕円または,円偏光板,前述した本発明の偏光子と保護層からなる偏光板に,更に視角補償フィルムが積層されている偏光板,あるいは,前述した本発明の偏光子と保護層からなる偏光板に,更に輝度向上フィルムが積層されている偏光板が好ましい。
…(省略)…
【0034】前述した本発明の偏光子と保護層からなる偏光板に,輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は,通常液晶セルの裏側サイドに設けられて使用される。輝度向上フィルムは,液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光又は所定方向の円偏光を反射し,他の光は透過する特性を示すもので,輝度向上フィルムを前述した偏光子と保護層とからなる偏光板と積層した偏光板は,バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に,前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上板に再入射させ,その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フイルムを透過する光の増量を図ると共に,偏光子に吸収されにくい偏光を供給して液晶画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。
…(省略)…
【0035】前記の輝度向上フィルムとしては,例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き,所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの,コレステリック液晶層,就中コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き,左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
…(省略)…
【0045】本発明の偏光板は,高輝度のモニター用等のLCDにおいても偏光板起因のムラが見えなくなる。」

ウ 「【0046】
【実施例】以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
…(省略)…
【0049】(実施例1)クラレ製PVA(9×75RS)を用いて染色浴(ヨウ素およびKI含有の水溶液)で3.2倍延伸しつつ,染色し,その後,ほう酸の含有の架橋浴1浴目にて,1.2倍延伸を行い,さらにほう酸含有の架橋浴2浴目にて1.7倍延伸(トータル延伸倍率6.5倍)し,その後,50℃の乾燥機で乾燥し偏光子を作製した。その後,TAC(トリアセチルセルロース)フィルムとPVA系接着剤を用いて貼り合せて,視感度補正透過率43.25%で偏光度99.98%の偏光板を得た。
【0050】(実施例2)クラレ製PVA(9×75RS)を用いて染色浴(ヨウ素およびKI含有の水溶液)で3倍延伸しつつ,染色し,その後,ほう酸の含有の架橋浴1浴目にて,1.4倍延伸を行い,さらにほう酸含有の架橋浴2浴目にて1.6倍延伸(トータル延伸倍率6.72倍)し,その後,50℃の乾燥機で乾燥し偏光子を作製した。その後,TAC(トリアセチルセルロース)フィルムとPVA系接着剤を用いて貼り合せて,視感度補正透過率43.35%で偏光度99.99%の偏光板を得た。
…(省略)…
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】(評価結果)表1?4の"ムラの評価結果"をみても明らかな様に,実施例1,2は,ムラが見えない良好な偏光板が得られた。
【0057】すなわち,ほう酸含有の1浴目と2浴目の延伸倍率と,トータル延伸倍率のアップの組み合わせ,及び透過率を43.2?43.3付近にして作製し,偏光度を99.98以上にしたことにより,ムラが見えない良好な偏光板が得られた。」

(2) 引用発明2
引用文献2には,請求項7に係る発明(請求項1に記載された構成を具備するもの)として,次の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)。なお,用語の混乱を避けるため,偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせたものを,「輝度向上フィルム付偏光板」と呼ぶ。
「 偏光板に接着剤又は粘着剤を用いて,輝度向上フィルムを貼り合せてなる,輝度向上フィルム付偏光板において,
偏光板は,
ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを,染色し,架橋して製造され,
1枚の偏光板の光の透過率(単体透過率)と,2枚の偏光板の偏光する軸(偏光軸)を直交にした時の光の透過率(直交透過率)から算出される次の式を全て満たす偏光板である,
輝度向上フィルム付偏光板。
式:
波長440nmの(単体透過率)/(直交透過率)>600
波長550nmの(単体透過率)/(直交透過率)>3000
波長610nmの(単体透過率)/(直交透過率)>11000」

(3) 対比
引用発明2の「偏光板」,「輝度向上フィルム」及び「輝度向上フィルム付偏光板」は,技術的にみて,それぞれ本願発明の「吸収型偏光板」,「反射型偏光板」及び「複合偏光板」に相当する。

また,引用発明2の「輝度向上フィルム付偏光板」は,「偏光板に接着剤又は粘着剤を用いて,輝度向上フィルムを貼り合せてなる」。
そうしてみると,引用発明2の「輝度向上フィルム付偏光板」は,本願発明の「複合偏光板」における,「吸収型偏光板と,その上に積層される反射型偏光板とを含み」という要件を満たす。

(4) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明2は,次の構成で一致する。
「 吸収型偏光板と,その上に積層される反射型偏光板とを含む,
複合偏光板。」

イ 相違点
本願発明と引用発明2は,以下の点で相違する。
(相違点2-1)
「吸収型偏光板」が,本願発明は,「視感度補正単体透過率が41.8?43.5%であり」という要件を満たすものであるのに対して,引用発明2は,これを特定するものではない点。

(相違点2-2)
本願発明は,「バックライト,以下に示す複合偏光板,及び液晶セルをこの順に含み」,「前記複合偏光板は,その吸収型偏光板が前記液晶セル側となるように配置され」,「前記バックライトに前記液晶セルを積層し,前記バックライトを点灯した状態で測定される発光スペクトルが,400?800nmの波長域において青及び黄の2つの発光ピークからなり」,「前記発光スペクトルにおいて,青色及び黄色の発光ピーク波長における発光強度をそれぞれL(Bmax)及びL(Ymax)とするとき」,「L(Bmax)/L(Ymax)>1」「を満たす液晶表示装置」であるのに対して,引用発明2は,「輝度向上フィルム付偏光板」である点。

(相違点2-3)
「反射型偏光板」が,本願発明は,「波長450?550nmにおける視感度補正直交透過率が3.5%以下である」のに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(5) 判断
引用文献2に実施例として記載された,実施例1及び実施例2の偏光板(【0049】及び【0050】)の視感度補正透過率は,それぞれ,43.25%及び43.35%である。また,【0057】には,「透過率を43.2?43.3付近にして作製し,偏光度を99.98以上にしたことにより,ムラが見えない良好な偏光板が得られた」とも記載されている。
そうしてみると,引用発明2において,相違点2-1に係る本願発明の構成を採用することは,引用文献2の記載が示唆する範囲内の事項である。

相違点2-2及び相違点2-3についての判断は,前記1(5)と同様である。

本願発明は,(液晶表示装置に関する本件優先日前の技術水準を踏まえた)当業者が,引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明は,本件優先日前の(液晶表示装置に関する技術水準を踏まえた)当業者が,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明,又は引用文献2に記載された発明に基づいて,容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-15 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2015-145806(P2015-145806)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
川村 大輔
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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